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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/24 20060101AFI20241008BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20241008BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20241008BHJP
   B60L 50/70 20190101ALI20241008BHJP
【FI】
B60H1/24 661A
B60H1/00 101S
B60H1/32 626B
B60H1/24 661Z
B60L50/70
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021122629
(22)【出願日】2021-07-27
(65)【公開番号】P2023018473
(43)【公開日】2023-02-08
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 慎
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-18740(JP,A)
【文献】特開2002-370522(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0360544(US,A1)
【文献】特開2021-91257(JP,A)
【文献】特開2009-223514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00- 3/06
B60L 50/70-50/75
G01C 21/26-21/36
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池を動力源とする燃料電池車に搭載される車両用表示装置であって、
車室外の外気に含まれる化学物質の量を取得する取得部(38)と、
取得した化学物質の量を表示する表示部(31)と、を含み、
前記取得部は、前記燃料電池への供給空気から異物を除去するフィルタに設けられ前記フィルタを通過前の空気に含まれる化学物質を検出するセンサから、外気に含まれる化学物質の量を取得する車両用表示装置。
【請求項2】
前記取得部は、車室内の内気に含まれる化学物質の量をさらに取得し、
前記表示部は、取得した外気および内気の化学物質の量を表示する請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記取得部が取得した化学物質の量が所定の判定値よりも多い場合には、警告情報を出力し、車両の窓を閉状態に制御し、外気の車室内への導入を停止するように制御する警告制御部(39)をさらに含む請求項1または2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
車両の外に位置する外部装置と通信する通信部(33)をさらに含み、
前記通信部は、
前記外部装置に前記警告情報を出力し、
前記外部装置から他の地点の前記警告情報を受信すると、受信した前記警告情報を前記警告制御部に与え、
前記警告制御部は、前記警告情報によって取得した車両の進行方向の所定範囲内の化学物質の量が前記判定値よりも多い場合、車両の窓を閉状態に制御し、外気の車室内への導入を停止するように制御する請求項3に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
車両の外部装置と通信する通信部(33)をさらに含み、
前記取得部は、前記通信部によって車両前方の設定経路の各地点における化学物質の量を取得する請求項1~のいずれか1つに記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池車両は、大気から取り込んだ空気中の酸素と水素タンクから水素とを用いて発電し、その電気でモータを駆動させて走行する。そして燃料電池車両に設けられた車両用表示装置は、航続可能距離と、水素タンクの水素ガス残量を表示している(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-106817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の車両用表示装置では、発電のために大気と取り込む構成は有するが、取り込んだ大気、または車両の周辺の大気に含まれる有害な化学物質については表示してない。大気に含まれる有害な化学物質について運転者に報知することが望ましい。
【0005】
そこで、開示される目的は前述の問題点を鑑みてなされたものであり、運転者に外気に含まれる化学物質を表示することができる車両用表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は前述の目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0007】
ここに開示された車両用表示装置は、燃料電池を動力源とする燃料電池車に搭載される車両用表示装置であって、車室外の外気に含まれる化学物質の量を取得する取得部(38)と、取得した化学物質の量を表示する表示部(31)と、を含み、取得部は、燃料電池への供給空気から異物を除去するフィルタに設けられフィルタを通過前の空気に含まれる化学物質を検出するセンサから、外気に含まれる化学物質の量を取得する車両用表示装置である。
【0008】
このような車両用表示装置に従えば、取得部は外気に含まれる化学物質の量を取得する。そして表示部は、化学物質の量を表示するので、運転者が化学物質の量を把握することができる。これによって運転者は化学物質の量に基づいて、周囲の環境を把握し、車外の行動に活かすことができる。
【0009】
なお、前述の各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車両用表示装置10を含む車両システムを示すブロック図。
図2】表示制御部37の処理を示すフローチャート。
図3】アドバイス情報の表示例を示す図。
図4】表示制御部37の他の処理を示すフローチャート。
図5】瞬間値および累積値の表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
本開示の第1実施形態に関して、図1図5を用いて説明する。車両用表示装置10は、車両に搭載されている。車両用表示装置10は、乗員に対して運転に関する運転情報を表示する。本実施形態の車両は、燃料電池を動力源とする燃料電池車である。燃料電池は、水素ガスおよび空気などの反応ガスを電気化学反応させて発電する。生成された電力は、電動機に供給され、車両を移動させる駆動力となる。
【0012】
燃料電池に空気を供給する供給経路には、フィルタが設けられている。フィルタは、粒子状物質などの異物を除去する。粒子状物質には、たとえば工場などから排出される煤じん、物の粉砕などによって発生する粉じん、ディーゼル車の排出ガスに含まれる黒煙、および花粉がある。また粒子状物質には、粒径によってPM2.5と呼ばれる粒子も含まれる。PM2.5は、大気中に浮遊する微小な粒子であり、PMとはparticulate matterの略である。PM2.5は、直径が概ね2.5μm以下の超微小粒子である。
【0013】
またフィルタには、化学物質および粒子状物質を検出する外気成分センサが設けられている。外気成分センサは、人体に有害な化学物質として、たとえばNOx、POx、およびCOxを検出する。NOxは、窒素酸化物ともいい、POxは、燐酸化物ともいい、COxは、炭素酸化物ともいう。また外気成分センサは、花粉およびPM2.5などの粒子状物質を検出する。外気成分センサは、フィルタを通過前の空気に含まれる化学物質および粒子状物質を検出する。したがって外気成分センサは、車両周辺の空気、すなわち車室外の外気に含まれる化学物質の量および粒子状物質の量を検出する。外気成分センサは、検出した外気成分情報を車両用制御装置(EHV-ECU)11に与える。
【0014】
図1に示すように、車両には、車両用表示装置10および車両用空調装置20が搭載されている。また車両には、各部を制御する制御装置として、車両用制御装置11およびナビ用制御装置(Nav-ECU)12が搭載されている。各装置は、車載ネットワーク14に接続されており、相互に通信可能である。
【0015】
また車両に前述の外気成分センサを含むセンサ群13が搭載されている。センサ群13は、車両の走行に関する各種の情報、および車両の周辺の情報を検出する。センサ群13は、車外の情報を取得する車外センサ、および車両の走行情報を取得する車載センサを含む。センサ群13は、取得した情報を車両用制御装置11に出力する。
【0016】
車外センサは、車外の情報を検出する。車外センサには、例えばカメラユニット、ライダユニット、およびミリ波レーダユニット等に加えて、地図データベースと組み合わされたGNSS(Global Navigation Satellite System)受信器等が含まれている。カメラユニット、ライダユニット及びミリ波レーダユニットは、歩行者及び他車両等の移動物体、並びに交通信号、道路標識及び区画線等の静止物体を検出する。GNSS受信器は、車両の現在位置を特定するための情報として、複数の人工衛星から送信された測位信号を受信する。車載センサは、車両の状態を検出する複数のセンサである。車載センサには、例えば車速センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ等が含まれている。
【0017】
各制御装置11,12は、記憶媒体に記憶されているプログラムを実行し、各部を制御する。各制御装置11,12は、少なくとも1つの演算処理装置(CPU)と、プログラムとデータとを記憶する記憶媒体とを有する。各制御装置11,12は、たとえばコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって実現される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムおよびデータを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体である。記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクなどによって実現される。
【0018】
車両用制御装置11は、車両の走行を統合的に管理する。車両用制御装置11は、センサ群13の出力を用いて、燃料電池の発電量、および車載アクチュエータ群を制御する。車載アクチュエータ群は、車両の加減速制御及び操作制御等を実行する。車載アクチュエータ群には、例えば、駆動用及び回生用のモータジェネレータ駆動用モータ、ブレーキアクチュエータ、並びにステアリングアクチュエータ等が含まれている。
【0019】
また車両用制御装置11は、車両に搭載されたボディ系の車載機器を統合的に制御する。ボディ系の車載機器には、ヘッドライトや方向指示器などの灯火装置、サイドミラーの角度を変更するサイロミラーモータ、窓を開閉させるウインドウモータ、ドアロックモータ、ワイパーブレードモータなどが含まれる。車両用制御装置11は、ヘッドライトや方向指示器などの灯火機器の作動状態や、ワイパーの作動状態、ドアの開閉及び施錠状態を示す各種信号を車載ネットワーク14に出力する。
【0020】
また車両用制御装置11は、センサ群13から取得したセンサ情報を、車載ネットワーク14に出力する。したがって車両用制御装置11は、外気成分センサから取得した外気成分情報を車載ネットワーク14に出力する。
【0021】
ナビ用制御装置12は、センサ群13が取得した測位信号及び検出情報等に基づき、車両の現在位置を高精度に推定する。ナビ用制御装置12は、目的地までの経路を探索する経路探索処理、および目的地までの経路を案内する経路案内処理などを実行する。ナビ用制御装置12は、経路探索処理および経路案内処理の結果として、目的地までの走行経路を案内表示する案内情報を生成し、案内情報を車両用表示装置10に出力する。
【0022】
次に、車両用空調装置20に関して説明する。車両用空調装置20は、乗員によって操作されて、車室内の空気温度を設定された温度に調整する。車両用空調装置20は、図1に示すように、空調部21、空気清浄部22および空調用制御部(AC-ECU)23を含んで構成される。空調部21は、車室内に設定された温度の空調風を吹出し、車室内の空気温度を調整する。空調部21は、車室内の空気、すなわち内気を吸い込んで車室内に送風する内気循環モード、および車室外の空気、すなわち外気を吸い込んで車室内に送風する外気導入モードがある。
【0023】
空気清浄部22は、車室内の空気から異物を除去する。空気清浄部22は、図示はしないが、送風ケースと、清浄フィルタと、送風機とを備えている。清浄フィルタは、通過する空気に含まれる粒子状物質およびタバコ等の臭いを除去する装置である。清浄フィルタは、機能の互いに異なる複数の層を積層した多層構造である。本実施形態の清浄フィルタは、除塵層、抗ウィルス剤塗布層、脱臭層および帯電除塵層を備える。除塵層は、不織布ろ材を使用してホコリや花粉等を除去する。抗ウィルス剤塗布層は、ウィルスの活動を抑制する。脱臭層は、アセトアルデヒド等の排ガス臭を除去する。帯電除塵層は、細かな塵を除去する。
【0024】
清浄フィルタは、送風機の吸い込み側に設けられている。送風機は、清浄フィルタを通過することで清浄された空気を吸い込み、車室内に向かって吐き出す。清浄フィルタと送風機とは、送風ケースの内部に収納されている。
【0025】
送風機の送風量を増やすことでフィルタを通過する空気の量が増加する。このため、送風機の送風量を多くするほど、多くの空気を清浄することができる。送風ケースには、外気導入口と内気導入口とが設けられている。外気導入口は、外気を送風ケースの内部に導入するための導入口である。内気導入口は、内気を送風ケースの内部に導入して車内で循環するための導入口である。
【0026】
送風ケースには、内外気切り替えドアが設けられている。内外気切り替えドアは、外気導入口と内気導入口との2つの導入口の開閉を制御するためのドア装置である。外気導入モードでは、内外気切り替えドアが外気導入口を開放し、内気導入口を閉塞する。内気循環モードでは、内外気切り替えドアが外気導入口を閉塞し、内気導入口を開放する。
【0027】
外気導入モードと内気循環モードのどちらであっても、車内に吹き出される空気は、清浄フィルタで清浄された後の空気となる。外気導入モードよりも内気循環モードの方が空気清浄を効率的に実行しやすい。これは、清浄フィルタを用いて内気を繰り返し空気清浄可能であることによる。ただし、車内にタバコ等の汚染源が存在する場合には、外気導入モードによって、車内に外気を積極的に導入する方が車内の空気をきれいな状態としやすい。また、外気が極めてきれいな空気である場合には、外気導入モードによって、車内に外気を積極的に導入する方が車内の空気をきれいな状態としやすい。
【0028】
空調用制御部23は、空調部21および空気清浄部22を制御する。空調用制御部23は、空調部21を制御して、車内に吹き出す空調風の風量および温度を制御する。また、空調用制御部23は、送風機の回転数を制御して、清浄フィルタを通過する空気の量を制御する。また空調用制御部23は、外気導入モードと内気循環モードとのどちらのモードで空調運転を行うかを制御する。また空調用制御部23は、車両用表示装置10に車両用空調装置20の情報を表示するための表示情報を出力する。
【0029】
次に、車両用表示装置10に関して説明する。車両用表示装置10は、図1に示すように、表示部31、記憶部32、通信部33、アドバイス生成部34、音響信号処理部35、スピーカ36および表示制御部37を含んで構成される。
【0030】
通信部33は、車両の外に位置する外部装置と通信する。通信部33は、車両に関する情報を他の車両に送信する。また、通信部33は、他の車両からその車両に関する情報を受信する。通信部33は、具体的には、車外の通信ネットワークと無線通信可能である。通信ネットワークには、車両の外部に位置する外部装置として、たとえばクラウドサーバ等に構築された監視システム、多数の車両の運行を管理する管理センタ等が接続されている。通信部33は、監視システムおよび管理センタとの間で情報を送受信する。通信部33は、たとえば監視システムを介して、気象庁などが発表した気象データを取得することができる。
【0031】
アドバイス生成部34は、アドバイス情報を生成し、生成したアドバイス情報を表示制御部37に出力する。アドバイス情報は、外気成分情報に基づいて乗員に伝えるアドバイスであり、たとえば外気に含まれる化学物質が所定の判定値よりも多いときに警戒を促すアドバイス情報を生成する。アドバイス情報は、化学物質に応じて生成され、たとえばNOxが判定値よりも多い場合には、「車外に出る際は、マスクを着用して下さい。NOx濃度が高いです。」と出力するための情報である。またアドバイス情報は、たとえば花粉が判定値よりも多い場合には、「車外に出る際は、マスクを着用して下さい。花粉症の方は注意して下さい。」と出力するための情報である。
【0032】
音響信号処理部35は、表示制御部37からの情報を音声データに変換して、スピーカ36に与える。また音響信号処理部35は、表示制御部37からアドバイス情報が与えられると、アドバイス情報を音声データに変換して、スピーカ36に与える。スピーカ36は、音声出力によって、情報を通知する。スピーカ36は、音響信号処理部35によって出力される音が制御される。スピーカ36は、音声メッセージおよび音を乗客に向けて出力する。スピーカ36は、たとえば経路を案内する音声、およびアドバイス情報に基づく音声を出力する。
【0033】
記憶部32は、各種の設定および取得した情報が記憶されている。記憶部32は、たとえば外気成分センサが取得した外気成分情報を、取得時刻と共に記録する。これによって記憶部32には、いわゆる瞬間値が記憶されるので、瞬間値を合計することで累積値を求めることができる。
【0034】
表示制御部37は、車両用表示装置10の各部を制御する。表示制御部37は、各制御装置11,12と同様に構成である。表示制御部37は、ナビ用制御装置12からの案内情報、および車両用空調装置20からの表示情報を表示するように表示部31を制御する。また表示制御部37は、案内情報および表示情報を音声出力するように音響信号処理部35を制御する。
【0035】
表示制御部37は、機能ブロックとして取得部38および警告制御部39を備える。取得部38は、外気成分センサを介して、車室外の外気に含まれる化学物質の量を取得する。また取得部38は、通信部33によって車両前方の設定経路の各地点における化学物質の量を取得する。そして表示制御部37は、取得部38が取得した外気の化学物質の量を表示するように表示部31を制御する。
【0036】
警告制御部39は、化学物質の量が所定の判定値よりも多い場合には、警告情報を出力する。所定の判定値と比較する化学物質の量は、後述する瞬間値であってもよく、累積値であってもよい。また化学物質の量は、化学物質の濃度であってもよく、化学物質の質量であってもよい。警告制御部39は、警告情報をアドバイス生成部34に与えて、警告情報を用いたアドバイス情報がアドバイス生成部34によって生成される。また警告制御部39は、化学物質の量が所定の判定値よりも多い場合には、車両の窓を閉状態に制御し、外気の車室内への導入を停止するように制御する。判定値は、化学物質の種類毎に設定される。また判定値は、乗員によって個別に変更可能にしてもよい。たとえば乗員が花粉に過敏な場合には、花粉の判定値を通常よりも低くしてもよい。
【0037】
表示部31は、車両の乗員に対して情報を表示する。また表示部31は、タッチパネルを備え、乗員からの入力を受け取る。表示部31は、たとえば運転席および助手席に向かい合う位置に配置される。表示部31は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等によって実現される。表示部31は、たとえば案内情報、車両用空調装置20からの表示情報、アドバイス情報、警戒情報および化学物質の量を表示する。
【0038】
また通信部33は、警告制御部39が出力した警告情報を、外部装置に出力する。警告情報には、化学物質の量、取得した位置、取得した時刻の情報が含まれる。これによって管理センタには、複数の車両からの警告情報が蓄積される。
【0039】
また通信部33は、外部装置から他の地点の警告情報を受信すると、受信した警告情報を警告制御部39に与える。警告制御部39は、他の地点の警告情報を記憶部32に記憶するように制御する。これによって地図データに他の地点の警告情報を表示することができる。
【0040】
さらに通信部33は、外部装置から現在地点および他の地点の気象データを受信すると、受信した気象データを記憶部32に保存する。表示制御部37は、現在地点および他の地点の気象データ、たとえば花粉飛散量なども合わせて表示することができる。
【0041】
また警告制御部39は、警告情報によって取得した車両の進行方向の所定範囲内の化学物質の量が判定値よりも多い場合、車両の窓を閉状態に制御し、外気の車室内への導入を停止するように制御する。通信部33によって、他の地点の警告情報を取得することができるので、現在地点だけでなく他の地点の警告情報も取得することができる。したがって他の地点の警告情報を用いて、化学物質が多い地点に至る前に、化学物質が車室内に取り込まれることを抑制することができる。
【0042】
次に、表示制御部37の制御に関して、フローチャートを用いて説明する。図2および図4のフローチャートは、車両用表示装置10が電源投入状態において、表示制御部37によって短時間に繰り返し実行される。
【0043】
ステップS1では、外気成分センサの瞬間値を取得し、ステップS2に移る。外気成分センサは、所定のセンサ周期毎、たとえば数m秒毎に外気成分を検出するので、センサ周期で検出された化学物質の量が瞬間値となる。
【0044】
ステップS2では、取得した瞬間値を用いて、アドバイス情報を生成し、ステップS3に移る。アドバイス情報は、瞬間値の化学物質の量の応じて異なる内容である。たとえば外気に含まれる化学物質が所定の判定値よりも多いときに警戒を促すアドバイス情報を生成する。
【0045】
ステップS3では、生成したアドバイス情報を出力して、本フローを終了する。これによって表示部31には、アドバイス情報が表示され、スピーカ36からアドバイス情報を音声出力される。
【0046】
図3は、表示部31に表示されるアドバイス情報の一例を示している。図3に示す例では、NOxの量が設定値よりも多い場合であり、目的地に到着したときに、または駐車場に停車したときに、マスクの着用を促すアドバイス情報が表示される。また化学物質の量が多い地点であるので、今後、この地点を目的地とする場合には、事前に警告するための選択肢も表示される。たとえば「YES」を選択した場合には、次回から目的地として現在地点を設定したときに、目的地を設定した時に警告情報を出力する。
【0047】
同様に、表示制御部37は、目的地が設定された場合には、目的地の警戒情報を通信部33によって取得している場合には、表示することが好ましい。これによって乗員は、目的地の化学物質の量を事前に把握することができるので、目的地の変更の参考にすることができる。
【0048】
次に、図4のフローチャートを用いて説明する。図4に示すフローチャートは、表示部31に表示する内容に関する処理である。ステップS11では、外気成分センサの瞬間値を取得し、ステップS12に移る。
【0049】
ステップS12では、記憶部32に記憶される過去の瞬間値と、ステップS1で取得した最新の瞬間値に基づいて、累積値を算出し、ステップS13に移る。累積する累積期間は適宜、設定することができ、たとえば直近の30分および1時間であってもよく、現在の走行のためのイグニッションのオンにしてからの期間であってもよい。また累積期間は、現在位置を中心にした所定の範囲内、たとえば数キロ内の期間であってもよい。
【0050】
ステップS13では、瞬間値と累積値とを出力し、本フローを終了する。これによって表示部31には、瞬間値と累積値とが表示される。
【0051】
図5は、表示部31に表示される瞬間値と累積値の一例を示している。図5に示すように、NOx、POx、およびCOxの瞬間値を、指針を用いた指針画像41によってそれぞれ表示する。また累積値は、Totalの文字とともに数字を用いた数字画像42によってそれぞれ表示する。
【0052】
また図5では、車両を示す車両画像43を表示し、車両画像43の後方には排出した空気量をイメージする円形画像44を表示する。排出した空気量は、燃料電池を通過して排出された空気量を示している。排出した空気量が増えると、円形画像44の数が増加する。燃料電池車両は、発電のために走行時に空気と取り入れ、取り入れた空気をフィルタできれいにして排出する。したがって排出された空気量は、燃料電池車両によってきれいになった空気量である。
【0053】
また車両画像43の先方には、進行方向の前方を示す左向き矢印の矢印画像45が表示される。矢印画像45は、通信部33が取得した車両の設定経路における各地点の化学物質の量に応じて色が変わるように制御される。化学物質の量が多くなるにつれて、より濃く、より赤色となるように制御され、化学物質の量が少なくなるにつれて、より薄く、より青色になるように制御される。これによって運転者は、矢印画像45の色によって、進行方向における化学物質の量を直感的に把握することができる。
【0054】
また車両画像43の周囲には、車両がおよび図を覆う膜のような楕円画像46が表示される。楕円画像46は、外気成分センサが取得した化学物質の量に応じて色が変わるように制御される。化学物質の量、すなわち瞬間値が多くなるにつれて、より濃く、より赤色となるように制御され、化学物質の量が少なくなるにつれて、より薄く、より青色になるように制御される。これによって運転者は、楕円画像46の色によって、現在位置における化学物質の量を、指針画像41と共に直感的に把握することができる。
【0055】
また楕円画像46は、各化学物質の量に応じて色を変えるように制御してもよい。たとえばNOxは黄色、POxは赤、およびCOxは青として、その量の比率に応じて、色の割合を変更するように表示してもよい。
【0056】
図5にて画像の一例を示したが、他の画像、他の色または静止画ではなく動画を用いて化学物質の量を表示してもよい。たとえば他の画像として、人、動物およびキャラクター画像を用いてもよく、円グラフ、棒グラフおよび折れ線グラフなどのグラフ画像であってもよい。また乗員が表示画像を変更できるようにしてもよい。また指針画像41の分解能、累積値の累積期間、瞬間値の更新インターバルなどの表示のパラメータは乗員によって変更可能であってもよい。
【0057】
以上説明したように本実施形態の車両用表示装置10では、取得部38が外気に含まれる化学物質の量を取得する。そして表示部31は、化学物質の量を表示するので、運転者が化学物質の量を把握することができる。これによって運転者は化学物質の量に基づいて、周囲の環境を把握し、車外の行動に活かすことができる。
【0058】
また本実施形態では、取得部38が取得した化学物質の量が所定の判定値よりも多い場合には、警告情報を出力し、車両の窓を閉状態に制御し、外気の車室内への導入を停止するように制御する。これによって化学物質が車室内に入ることを抑制することができる。
【0059】
さらに本実施形態では、車両の進行方向の所定範囲内の化学物質の量が判定値よりも多い場合、車両の窓を閉状態に制御し、外気の車室内への導入を停止するように制御する。通信部33によって現在位置だけでなく、車両の進行方向の所定範囲内の化学物質の量も取得することできるので、化学物質の量が多い地域に入る前に対応することができる。これによってより化学物質が車室内に入ることを抑制することができる。
【0060】
また本実施形態では、外気成分センサは、燃料電池への供給空気から異物を除去するフィルタに設けられ、フィルタを通過前の空気に含まれる化学物質を検出する。これによってフィルタで異物を除去しつつ、外気に含まれる化学物質を検出することができる。
【0061】
さらに本実施形態では、車両前方の設定経路の各地点における化学物質の量を表示するので、運転者が事前に設定経路の化学物質の量を把握することができる。これによって、たとえば化学物質の量の多い設定経路であれば、化学物質の量が少ない経路に変更することができ、利便性を向上することができる。
【0062】
(その他の実施形態)
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は前述した実施形態に何ら制限されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0063】
前述の実施形態の構造は、あくまで例示であって、本開示の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本開示の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0064】
前述の第1実施形態では、外気成分センサによって外気に含まれる化学物質の量を取得しているが、さらに内気に含まれる化学物質の量を取得してもよい。したがって内気成分センサをさらに設けて、表示部31は内気に含まれる化学物質の量を表示することで、運転者が外気だけでなく内気の化学物質の量の把握することができる。そして空気清浄部22を内気の化学物質の量に応じて、自動的に稼動させることで内気をより効率的に浄化することができる。
【0065】
前述の第1実施形態では、清浄フィルタは、PM2.5および花粉の両方を除去しているが、それぞれ別々の構成であってもよい。すなわち、PM2.5を除去する装置と、花粉を除去する装置を別々に構成して、内気成分センサの検出値に応じて、少なくともいずれか一方を稼動させてもよい。
【0066】
前述の第1実施形態において、各制御装置11,12および各制御部23,37によって実現されていた機能は、前述のものとは異なるハードウェアおよびソフトウェア、またはこれらの組み合わせによって実現してもよい。各制御装置11,12および各制御部23,37は、たとえば他の制御装置と通信し、他の制御装置が処理の一部または全部を実行してもよい。各制御装置11,12および各制御部23,37が電子回路によって実現される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、またはアナログ回路によって実現することができる。
【0067】
前述の第1実施形態では、車両用表示装置10は車両で用いられているが、車両に搭載された状態に限定されるものではなく、少なくとも一部が車両に搭載されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10…車両用表示装置 11…車両用制御装置 12…ナビ用制御装置
13…センサ群 14…車載ネットワーク 20…車両用空調装置 21…空調部
22…空気清浄部 23…空調用制御部 31…表示部 32…記憶部
33…通信部 34…アドバイス生成部 35…音響信号処理部 36…スピーカ
37…表示制御部 38…取得部 39…警告制御部 41…指針画像
42…数字画像 43…車両画像 44…円形画像
45…矢印画像 46…楕円画像
図1
図2
図3
図4
図5