(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】緩衝材
(51)【国際特許分類】
B65D 81/113 20060101AFI20241008BHJP
H01L 21/673 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B65D81/113 100A
H01L21/68 V
(21)【出願番号】P 2021137311
(22)【出願日】2021-08-25
【審査請求日】2024-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】塩貝 竜平
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-116876(JP,U)
【文献】国際公開第2004/026726(WO,A1)
【文献】特開2000-159270(JP,A)
【文献】特開平11-124181(JP,A)
【文献】特開2019-112109(JP,A)
【文献】米国特許第06499599(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/00-81/17
H01L 21/673
B65D 57/00-59/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材及び第二部材が重ね合わされて組み立てられる緩衝材であって、
前記第一部材は、組立前の状態で平板状であり、組立後の状態で被保護物の側面を囲む環状の枠部と、組立途中の状態で前記枠部の内側において前記枠部に対しヒンジ部を介して厚み方向に折り立てられて第一方向に延在する第一リブ部とを備え、
前記第二部材は、前記組立前の状態で平板状の前記第一部材に沿う形状であって、少なくとも前記組立後の状態では重ね合わされた前記第一部材及び前記第二部材の相対位置を固定する連結部を介して前記第一部材に連結され、前記組立途中の状態で前記枠部に対し前記厚み方向に立設されるとともに前記第一リブ部の延在する前記第一方向と交差する第二方向に延在する第二リブ部を備え、
前記緩衝材は、前記組立後の状態で前記第一リブ部と前記第二リブ部とが互いに係合してなる交差リブを備え、前記交差リブが前記被保護物の前記側面と交差する端面に当接する
ことを特徴とする、緩衝材。
【請求項2】
前記交差リブは、前記第一リブ部と前記第二リブ部とが互いに交差する交差部で前記端面に当接する
ことを特徴とする、請求項1に記載の緩衝材。
【請求項3】
前記第一部材は、二つの前記第一リブ部を有し、
前記第二部材は、二つの前記第二リブ部を有し、
前記交差リブは、前記緩衝材を前記厚み方向から視て井桁形状をなす
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の緩衝材。
【請求項4】
前記組立後の状態において、
前記第一リブ部は、前記枠部から前記厚み方向に離隔した位置で延在する第一中央リブ部と、前記第一中央リブ部の長手方向の両端のそれぞれに連設されて前記ヒンジ部に繋がる一対の第一脚部とを有し、
前記第二リブ部は、前記厚み方向における前記第一中央リブ部と同位置で延在する第二中央リブ部と、前記第二中央リブ部の長手方向の両端のそれぞれに連設されて前記枠部側に延出する一対の第二脚部とを有し、
前記交差リブは、前記第一中央リブ部及び前記第二中央リブ部の前記枠部側を向く面からなる主当接面と、前記第一脚部及び前記第二脚部の前記枠部の内側を向く面からなる補助面とを有し、
前記主当接面は、前記被保護物の前記端面に当接し、
前記補助面は、前記被保護物の前記側面に当接する
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の緩衝材。
【請求項5】
前記緩衝材は、組立後の状態で前記被保護物側を向く面と逆側の面の一部が前記被保護物側に向かって凹設された凹部を有する
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の緩衝材。
【請求項6】
前記第二部材は、前記組立後の状態において、前記厚み方向から視て、前記第一部材の前記枠部と重なる環状の第二枠部を有し、
前記第二リブ部は、前記組立途中の状態で前記第二枠部の内側において前記第二枠部に対し第二ヒンジ部を介して前記厚み方向に折り立てられる
ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の緩衝材。
【請求項7】
前記第一部材及び前記第二部材の少なくとも一方は、前記組立後の状態で、前記連結部が前記厚み方向に貫通される貫通孔を有し、
前記連結部は、前記組立後の状態において、前記貫通孔内に配置される柱部と、前記柱部の端部に設けられて前記第一部材及び前記第二部材の前記少なくとも一方の前記厚み方向に直交する面に当接する爪部とを有する
ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の緩衝材。
【請求項8】
前記連結部は、前記第一部材及び前記第二部材のいずれか一方に第三ヒンジ部を介して連設されている
ことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の緩衝材。
【請求項9】
前記第一部材及び前記第二部材は、表面に熱溶解された層を有する発泡オレフィンにより形成されている
ことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の緩衝材。
【請求項10】
前記被保護物は、半導体用ウェハーケースである
ことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の緩衝材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被保護物を衝撃から保護する緩衝材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被保護物を梱包箱内に収容して、運搬したり、保管したりする際に、被保護物に加わる衝撃を緩和させる緩衝材が知られている。例えば、特許文献1には、被保護物の端部を収容する収容凹部が凹設された箱状の緩衝材が開示されている。特許文献1によれば、収容凹部が形成された緩衝材の内部壁面に、収容凹部の開口部分から内部端面に向かう第1分割用溝と内部端面に第2分割用溝とを設けることで、緩衝材を簡単に小さく分割して処理できるため、緩衝材を使用した後に緩衝材が嵩張るということがなくなり、輸送コストや保管コスト等を低減できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、緩衝材は、緩衝材を使用した後に限らず、使用する前にも嵩張らないことが好ましい。特許文献1に開示の緩衝材は、緩衝材を使用した後に小さく分割することができるが、緩衝材を使用する前は分割ができないため、使用前の緩衝材を保管するためのスペースを要し、保管コストの増加を招きうる。
【0005】
本件は、このような課題に鑑み案出されたもので、被保護物をしっかり固定することができるとともに、緩衝材が使用されない際には嵩張らずに保管スペースを削減することが可能な緩衝材を提供することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)ここで開示する緩衝材は、第一部材及び第二部材が重ね合わされて組み立てられる緩衝材である。前記第一部材は、組立前の状態で平板状であり、組立後の状態で被保護物の側面を囲む環状の枠部と、組立途中の状態で前記枠部の内側において前記枠部に対しヒンジ部を介して厚み方向に折り立てられて第一方向に延在する第一リブ部とを備える。前記第二部材は、前記組立前の状態で平板状の前記第一部材に沿う形状であって、少なくとも前記組立後の状態では重ね合わされた前記第一部材及び前記第二部材の相対位置を固定する連結部を介して前記第一部材に連結され、前記組立途中の状態で前記枠部に対し前記厚み方向に立設されるとともに前記第一リブ部の延在する前記第一方向と交差する第二方向に延在する第二リブ部を備える。前記緩衝材は、前記組立後の状態で前記第一リブ部と前記第二リブ部とが互いに係合してなる交差リブを備え、前記交差リブが前記被保護物の前記側面と交差する端面に当接する。
【0007】
(2)前記交差リブは、前記第一リブ部と前記第二リブ部とが互いに交差する交差部で前記端面に当接することが好ましい。
(3)前記第一部材は、二つの前記第一リブ部を有し、前記第二部材は、二つの前記第二リブ部を有し、前記交差リブは、前記緩衝材を前記厚み方向から視て井桁形状をなすことが好ましい。
【0008】
(4)前記組立後の状態において、前記第一リブ部は、前記枠部から前記厚み方向に離隔した位置で延在する第一中央リブ部と、前記第一中央リブ部の長手方向の両端のそれぞれに連設されて前記ヒンジ部に繋がる一対の第一脚部とを有することが好ましい。また、前記組立後の状態において、前記第二リブ部は、前記厚み方向における前記第一中央リブ部と同位置で延在する第二中央リブ部と、前記第二中央リブ部の長手方向の両端のそれぞれに連設されて前記枠部側に延出する一対の第二脚部とを有することが好ましい。この場合、前記組立後の状態において、前記交差リブは、前記第一中央リブ部及び前記第二中央リブ部の前記枠部側を向く面からなる主当接面と、前記第一脚部及び前記第二脚部の前記枠部の内側を向く面からなる補助面とを有し、前記主当接面は、前記被保護物の前記端面に当接し、前記補助面は、前記被保護物の前記側面に当接することが好ましい。
【0009】
(5)前記緩衝材は、組立後の状態で前記被保護物側を向く面と逆側の面の一部が前記被保護物側に向かって凹設された凹部を有することが好ましい。
(6)前記第二部材は、前記組立後の状態において、前記厚み方向から視て、前記第一部材の前記枠部と重なる環状の第二枠部を有することが好ましい。この場合、前記第二リブ部は、前記組立途中の状態で前記第二枠部の内側において前記第二枠部に対し第二ヒンジ部を介して前記厚み方向に折り立てられることが好ましい。
【0010】
(7)前記第一部材及び前記第二部材の少なくとも一方は、前記組立後の状態で、前記連結部が前記厚み方向に貫通される貫通孔を有することが好ましい。この場合、前記連結部は、前記組立後の状態において、前記貫通孔内に配置される柱部と、前記柱部の端部に設けられて前記第一部材及び前記第二部材の前記少なくとも一方の前記厚み方向に直交する面に当接する爪部とを有することが好ましい。
(8)前記連結部は、前記第一部材及び前記第二部材のいずれか一方に第三ヒンジ部を介して連設されていることが好ましい。
【0011】
(9)前記第一部材及び前記第二部材は、表面に熱溶解された層を有する発泡オレフィンにより形成されていることが好ましい。
(10)前記被保護物は、半導体用ウェハーケースであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
開示の緩衝材によれば、被保護物をしっかり固定することができるとともに、緩衝材が使用されない際には嵩張らずに保管スペースを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第一実施形態に係る緩衝材が被保護物を保護している状態を示す図であって、緩衝材及び被保護物を厚み方向から視た図と当該図のX矢視側面図とを併せて示す二面図である。
【
図4】
図2の緩衝材が有する第一部材を厚み方向から視た図である。
【
図6】組立前の状態における
図4の第一部材を示す図であって、第一部材を厚み方向から視た図と第二方向から視た図とを併せて示す二面図である。
【
図7】
図2の緩衝材が有する第二部材を厚み方向から視た図である。
【
図9】組立前の状態における
図7の第二部材を示す図であって、第二部材を厚み方向から視た図と第一方向から視た図とを併せて示す二面図である。
【
図10】第二実施形態に係る緩衝材が有する第二部材の正面図と側面図とを併せて示す二面図である。
【
図11】第二実施形態に係る緩衝材が被保護物を保護している状態を示す図であって、緩衝材及び被保護物を厚み方向から視た図である。
【
図14】
図11の緩衝材が有する第一部材の組立前の状態を示す図であって、当該第一部材を厚み方向から視た図である。
【
図15】組立前の状態における
図11の緩衝材を示す図であって、緩衝材を厚み方向から視た図と第二方向から視た図とを併せて示す二面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施形態としての緩衝材について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0015】
実施形態の緩衝材は、被保護物を梱包箱内に収容する際に、梱包箱と被保護物との間に介装されて被保護物に加わる衝撃を緩和させるものである。緩衝材は、被保護物を保護している状態(以下、「使用状態」という)で、被保護物の側面とこの側面に交差する端面とに当接する。すなわち、緩衝材は、使用状態で上記の被保護物の端面側の一部を収容する深さを有するものである。緩衝材は、緩衝材が使用されずに保管されている状態(以下、「不使用状態」という)では、深さ方向の寸法が使用状態での同寸法よりも小さくなる。これにより、嵩張らずに保管スペースを削減することができる。
【0016】
緩衝材は、第一部材と第二部材とが重ね合わされて組み立てられるものであり、少なくとも不使用状態では、第一部材及び第二部材がいずれも平板形状である。これら二つの部材は、その厚み方向において積層され、互いに連結され組み立てられる。以下、これら二つの部材が組み立てられた状態を「組立後の状態」とよび、これら二つの部材が組み立てられていない状態を「組立前の状態」とよぶ。なお、組立後の状態には使用状態が含まれ、組立前の状態には使用前の不使用状態と使用後の不使用状態との双方が含まれる。また、上記の深さ方向は、第一部材及び第二部材の厚み方向に相当することから、以下、深さ方向を「厚み方向」とよぶ。
【0017】
[1.第一実施形態]
[1-1.構成]
図1は、使用状態における第一実施形態の緩衝材1及び被保護物7を厚み方向から視た図と当該図のX矢視側面図とを併せて示す二面図である。
図1では、緩衝材1と被保護物7との区別を容易にするために、被保護物7を点線で示す。
図1に示すように、緩衝材1は、一つの被保護物7に対して一対設けられる。一対の緩衝材1は互いに同一の構成を有し、厚み方向に反転させた状態で被保護物7に装着される。
【0018】
被保護物7は、互いに逆方向を向くとともに一対の緩衝材1のそれぞれに当接する一対の端面71と、端面71に交差して二つの端面71同士を繋ぐ側面72とを備える。本実施形態の端面71は、
図1中の側面図での上面及び下面であって、それぞれ矩形状に形成される。側面72は、互いに逆方向を向く一対の略八角形の第一側面73と、一対の端面71同士及び一対の第一側面73同士を繋ぐ第二側面74とを有する。つまり、本実施形態の被保護物7は、略八角柱を横向きに載置した外形を持つ。第一側面73は、端面71に対して直交する方向に延在する。第二側面74は、端面71に対して直交する方向に延在する部分と、その両側(上下の端面71側)で端面71に対して傾斜する部分(以下、傾斜面75とよぶ)とを有する。被保護物7は、例えば、半導体のウェハーを収容する半導体用ウェハーケースである。
【0019】
緩衝材1は、使用状態で、それぞれ一様な厚みを持つ第一部材2及び第二部材3の二つの部材が重ね合わされて組み立てられるものであり、被保護物7の側面72を囲う第一枠部20(枠部)と、第一枠部20に対して厚み方向に立設されて被保護物7の端面71に当接する交差リブ10とを備える。このように、緩衝材1は、被保護物7の端面71側の部分を覆うように配置されることで、端面71側への衝撃だけでなく、側面72側への衝撃をも緩和させる。第二部材3は、第一部材2及び第二部材3を厚み方向に貫通するピン部4(連結部)を介して、第一部材2に取り付けられる。
【0020】
交差リブ10は、第一部材2の後述する第一リブ部21と第二部材3の後述する第二リブ部31とが互いに交差して係合されて形成されたものであり、被保護物7の端面71に当接する主当接面11を有する。本実施形態の交差リブ10は、主当接面11と第一枠部20との間で、被保護物7の側面72に当接する補助面12をさらに備える。また、本実施形態では、第一リブ部21と第二リブ部31とが二つずつ設けられており、交差リブ10は、厚み方向から視て井桁をなす。
【0021】
緩衝材1は、例えば、発泡ポリエチレンや発泡ポリプロピレンなどの発泡オレフィンにより形成される。緩衝材1の表面には熱溶解されたスキン層が形成される。スキン層が設けられることで、緩衝材1の強度を高めることができるとともに、スキン層を残すハーフカット(ヒンジ加工)を施すことで、緩衝材1が持つ後述の各部材を折り曲げ可能に構成することができる。
【0022】
図2は
図1の緩衝材1の斜視図であり、
図3は
図2の緩衝材1の分解斜視図である。また、
図4~
図6には第一部材2を示し、
図7~
図9には第二部材3を示す。
図2及び
図3に示すように、第一部材2は、環状の第一枠部20と、第一枠部20に対して厚み方向に立設される第一リブ部21とを備える。第一枠部20は、一様な厚み(第一部材2の厚み)を有する板状の部位であって、
図4に示すように、角部が面取りされた略矩形状の外形を有する。第一枠部20は、第一枠部20の中央において厚み方向に貫通した広い空間S1を形成する内側面20aを有する。使用状態で、内側面20aには、被保護物7の側面72が当接する。さらに、本実施形態の第一枠部20は、厚み方向に貫設された第一貫通孔20hを備える。第一貫通孔20hは、ピン部4を挿通させるための孔である。本実施形態において、第一貫通孔20hは、第一枠部20の四隅のそれぞれに設けられている。
【0023】
第一リブ部21は、組立後の状態で、厚み方向に対して直交する方向に延在する。本実施形態の第一部材2は、互いに同一形状の二つの第一リブ部21を備える。以下、組立後の状態で、第一リブ部21が延在する方向を第一方向とよぶ。第一リブ部21は、
図5に示すように、第一枠部20から厚み方向に離隔した位置で延在する第一中央リブ部22と、第一中央リブ部22の長手方向(第一方向)の両端のそれぞれに連設されて第一枠部20に繋がる一対の第一脚部23とを有する。すなわち、第一リブ部21は、組立後の状態で第一枠部20側に開口するチャンネル形状をなす。
【0024】
第一中央リブ部22の第一枠部20側を向く内側面22aは、厚み方向に対して垂直に延在する。内側面22aと逆側を向く外側面22bには、外側面22bの一部を第一枠部20側に向かって凹ませてなる三つの凹みが設けられている。当該三つの凹みのうち、第一方向の両側に位置する二つの凹みは、第二部材3の後述する第二リブ部31と係合する係合部22cとして機能する。また、当該三つの凹みのうち、係合部22cの間に位置する一つは、使用状態で、被保護物7の端面71側にかかる衝撃を効率よく吸収するための凹部22dとして機能する。本実施形態では、
図4に示すように、第一枠部20の外形を形成する外側面20bの一部(第一枠部20の短辺の一部)にも、空間S1の内側に向かって凹む凹部20dが設けられる。
【0025】
一対の第一脚部23は、第一枠部20の内側を向く内側面23aを有する。第一脚部23は、
図6に太線で示すように、第一部材2に上述のハーフカットが施されることにより形成された第一折線B1(ヒンジ部)を介して第一枠部20に連設される。つまり、第一枠部20及び第一リブ部21は、一つの平板状の部材から形成される。組立前の状態で、第一リブ部21は、第一枠部20の空間S1に嵌る。組立前の状態から組立後の状態に移るまでの組立途中の状態で、第一リブ部21は第一折線B1を介して厚み方向に折り立てられる。
【0026】
第二部材3は、
図2及び
図3に示すように、環状の第二枠部30と、第二枠部30に対して厚み方向に立設されて第一リブ部21と交差する第二リブ部31とを備える。第二枠部30は、一様な厚み(第二部材3の厚み)を有する板状の部位であって、
図1に示すように、組立後の状態で第一枠部20と重なる。
図7に示すように、第二枠部30は、第一枠部20と同様に、第二枠部30の中央において厚み方向に貫通した広い空間S2を形成する内側面30aを備えるとともに、その四隅に厚み方向に貫設された第二貫通孔30hを備える。第二貫通孔30hは、組立後の状態で、第一貫通孔20hと重なる位置に設けられ、第一貫通孔20hと同様、ピン部4が挿通される。
【0027】
第二部材3は、互いに同一形状の二つの第二リブ部31を備える。第二リブ部31は、組立後の状態で、厚み方向に対して直交する方向、且つ、第一方向に交差する方向に延在する。本実施形態の第二リブ部31の延在方向は、第一方向に直交する方向である。以下、組立後の状態で、第二リブ部31が延在する方向を第二方向とよぶ。第二リブ部31は、
図8に示すように、第二枠部30から厚み方向に離隔した位置で延在する第二中央リブ部32と、第二中央リブ部32の長手方向(第二方向)の両端のそれぞれに連設されて第二枠部30に繋がる一対の第二脚部33とを有する。なお、上述の通り、緩衝材1は第二部材3及び第一部材2が重ね合わされて組み立てられることから、第二脚部33は、組立後の状態で、第二中央リブ部32の長手方向の端部に連設されて第一部材2の第一枠部20側に向かって延出しているともいえる。第二リブ部31も、第一リブ部21と同様に、組立後の状態で第二枠部30側に開口するチャンネル形状をなす。
【0028】
第二中央リブ部32の第二枠部30側を向く内側面32aは、厚み方向に対して垂直に延在する。内側面32aには、内側面32aの一部を第二枠部30から離れる方向に向かって凹ませてなる二つの係合部32cが設けられる。第二中央リブ部32の内側面32aと逆側を向く外側面32bには、外側面32bの一部を第二枠部30側に向かって凹ませてなる一つの凹部32dが設けられる。凹部32dは、第一部材2の凹部22dと同様に、使用状態で被保護物7の端面71側にかかる衝撃を効率よく吸収するために設けられる。本実施形態では、
図7に示すように、第二枠部30の外形を形成する外側面30bの一部(第二枠部30の短辺の一部)にも同様の機能を持つ凹部30dが設けられる。
【0029】
一対の第二脚部33は、第一枠部20の内側を向く内側面33aを有する。第二脚部33は、
図9に太線で示すように、第二部材3に上述のハーフカットが施されることにより形成された第二折線B2(第二ヒンジ部)を介して第二枠部30に連設される。つまり、第一部材2と同様に、第二枠部30及び第二リブ部31は、一つの平板状の部材から形成される。第二リブ部31は、組立前の状態で第二枠部30の空間S2に嵌り、組立途中の状態で第二折線B2を介して厚み方向に折り立てられる。
【0030】
ピン部4は、
図1及び
図3に示すように、第一部材2と第二部材3とを互いに組み付けるための部材である。本実施形態のピン部4は、第一部材2及び第二部材3のいずれとも別体で設けられ、第一貫通孔20h及び第二貫通孔30hの双方に嵌め込まれることで第一部材2及び第二部材3を一体化する。本実施形態のピン部4は、組立後の状態において第一貫通孔20h及び第二貫通孔30h内に配置される柱部41と、柱部41の端部に設けられた爪部42とを有する。本実施形態の爪部42は、柱部41の両端のそれぞれに設けられる。
【0031】
爪部42は、ピン部4の柱部41が二つの嵌通孔20h,30hから抜け落ちないようにするためのストッパの機能を有する。本実施形態の爪部42は、例えば、組立途中の状態(例えば
図3の状態)において、第一方向から視て、第二方向に延在する二つの底面を有する略等脚台形状に形成されており、少なくとも柱部41に連続する側の底面の長さが柱部41の第二方向に沿う寸法よりも長い。つまり、爪部42の当該底面の面積は、両貫通孔20h,30hの面積よりも大きい。また、爪部42は弾性変形可能に設けられている。これにより、爪部42は、組立時に変形しながら両貫通孔20h,30hに挿通され、組立後の状態では、第一貫通孔20h及び第二貫通孔30hのいずれにも嵌らず、第一部材2及び第二部材3の厚み方向に直交する面に当接する。
【0032】
組立前の状態において、第一部材2及び第二部材3はいずれも一様な厚みを持つ平板状をなす。なお、両者の厚み寸法は、必ずしも互いに同一でなくてよい。第二部材3は、第一部材2に沿うように配置されて、第一貫通孔20h及び第二貫通孔30hを貫通するピン部4を介して第一部材2に取り付けられる。これにより、第一部材2及び第二部材3の相対位置が固定される。このとき、緩衝材1の厚み方向の寸法は、第一部材2の厚み寸法と第一部材3との厚み寸法との和となる。
【0033】
次に、上述した緩衝材1を、組立前の状態から使用状態にするまでの手順の一例を説明する。まず、上述したとおり、第一部材2と第二部材3とを厚み方向に重ね合わせ、各貫通孔20h,30hにピン部4を嵌め込んで両部材2,3を一体化する。次に、第一部材2の第一リブ部21を第一枠部20に対して厚み方向に折り立てて、さらに第二部材3の第二リブ部31を第一枠部20に対して同方向に折り立てる。これにより、緩衝材1は、
図2に示す組立後の状態となる。組み立てられた緩衝材1の全体形状は、お椀形状に準えることができる。
【0034】
組立後の緩衝材1では、
図2に示すように、第一中央リブ部22の係合部22cと、第二中央リブ部32の係合部32cとが互いに嵌り合い交差部13が形成される。第一リブ部21及び第二リブ部31は、交差部13で互いに係合して、互いの折り立てられた状態が維持される。なお、第一リブ部21及び第二リブ部31の折り立てられる順番が逆であってもよい。また、組立後の状態で、緩衝材1の厚み方向の寸法は、第一リブ部21及び第二リブ部31が折り立てられた分、組立前の状態よりも大きくなり、被保護物7の一部を収容可能な高さ(深さ)となる。
【0035】
その後、第一枠部20の空間S1内に被保護物7が配置されることで、緩衝材1は使用状態となる。このとき、第一枠部20の内側面20aには、被保護物7の側面72が当接する。具体的には、第一枠部20の長辺側の内側面20aには第一側面73が当接し、第一枠部20の短辺側の内側面20aには第二側面74の一部が当接する。また、第一中央リブ部22の内側面22aと第二中央リブ部32の内側面32aとは、厚み方向に対して垂直な平面状になり、交差リブ10の主当接面11を形成する。主当接面11を形成する部分には、上述の交差部13も含まれる。さらに、第一脚部23の内側面23aと第二脚部33の内側面33aとが、補助面12を形成して、被保護物7の側面72に当接する。具体的には、第一脚部23の内側面23aは第一側面73に当接し、第二脚部33の内側面33aは傾斜面75に当接する。
【0036】
使用状態の緩衝材1を組立前の状態に戻す手順は、上述の手順の逆を追うだけである。すなわち、被保護物7を緩衝材1から取り外し、第一リブ部21及び第二リブ部31を折り戻せばよい。さらに、ピン部4を外して、ピン部4による第一部材2と第二部材3との連結状態を解除し、第一部材2と第二部材3とを個別に保管してもよい。この場合、第一部材2及び第二部材3の配置によっては、緩衝材1の厚み方向の寸法が第一部材2の厚み寸法と第二部材3の厚み寸法との和よりもさらに小さくできる。
【0037】
[1-2.作用,効果]
(1)緩衝材1は、組立後の状態において、第一枠部20に対して厚み方向に折り立てられた第一リブ部21及び第二リブ部31が互いに係合してなる交差リブ10を備える。使用状態で、交差リブ10は被保護物7の端面71に当接し、第一枠部20は被保護物7の側面72を囲む。このように、組立後の状態の緩衝材1は、被保護物7の端面71及び側面72に当接する深さを有することから、被保護物7をしっかり固定し、保護することができる。
【0038】
上記の緩衝材1は、重ね合わされた二つの部材2,3がピン部4を介して連結されることで構成される。これに対し、上記のような深さを有する緩衝材1を構成する別の方法として、被保護物7の側面72に当接する部材と被保護物7の端面71に当接する部材とを熱貼りなどにより接着させて構成する方法が考えられる。しかし、この別の方法では、熟練した作業者による熱貼り作業が必要となり、製造工程の増加や製造コストの増大を招き得る。一方で、上記の緩衝材1であれば、ピン部4によって簡単に二つの部材2,3を連結できるため、熱貼りなどの熟練作業を要さず、製造工程の短縮及びコストダウンを図ることができる。
【0039】
また、第一リブ部21と第二リブ部31とは、組立後の状態で、互いに異なる第一方向と第二方向とに延在して交差し係合するため、それぞれの折り下がる方向への変位が相互に規制される。これにより、組立後の状態における緩衝材1の形状を安定させることができる。言い換えれば、緩衝材1は、係る構成により使用状態で変形しにくくなるため、被保護物7を安定して保護することができる。
【0040】
緩衝材1は、その組立後の状態に対して組立前の状態では、第一リブ部21と第二リブ部31とのそれぞれが折り下げられて、第一部材2及び第二部材3がいずれも一様な厚みを持つ平板状をなす。これにより、組立前の状態における緩衝材1の厚み方向の寸法は、組立後の状態における緩衝材1の厚み方向の寸法よりも小さくなる。したがって、緩衝材1は、不使用状態で、嵩張らずに保管スペースの削減を図ることができる。また、ピン部4による第一部材2と第二部材3との連結状態を解除すれば、第一部材2と第二部材3とを個別に保管することができるため、保管スペースをより削減することができる。さらに、組立前の状態の緩衝材1は、第一リブ部21及び第二部材31の双方を折り立てて互いに係合させるだけで組立後の状態となるため、簡単に組み立てることができる。
【0041】
(2)主当接面11を形成する部分には、交差部13が含まれる。このように、交差リブ10は、第一リブ部21と第二リブ部31とが互いに交差する交差部13で被保護物7の端面71に当接することで、第一部材2と第二部材3との双方によって端面71側にかかる衝撃を吸収することができるため、緩衝材1の衝撃吸収力を高めることができる。
【0042】
(3)第一部材2には二つの第一リブ部21が設けられ、第二部材3には二つの第二リブ部31が設けられる。これにより、使用状態において、被保護物7の端面71側にかかる衝撃を四つのリブ部(二つの第一リブ部21と二つの第二リブ部31と)に分散させて吸収することができるため、緩衝材1の衝撃吸収力をより高めることができる。
【0043】
また、組立後の状態において、交差リブ10は、厚み方向から視て井桁形状をなす。言い換えれば、各第一リブ部21は二つの第二リブ部31と係合し、各第二リブ部31は二つの第一リブ部21と係合する。これにより、組立後の状態で、各リブ部21,31の折り下がる方向への変位がより規制されるため、緩衝材1の形状をより安定させることができる。さらに、上述のように主当接面11を形成する部分に交差部13が含まれる場合には、四つの交差部13が、被保護物7の端面71に対して面状に当接するため、より確実に被保護物7を保護することができる。
【0044】
(4)交差リブ10は、第一脚部23の内側面23a及び第二脚部33の内側面33aにより形成される補助面12を有する。補助面12は、使用状態で被保護物7の側面72に当接する。このように、緩衝材1は、使用状態で、第一枠部20だけでなく、補助面12でも被保護物7の側面72に当接して被保護物7の側面72側にかかる衝撃を吸収することができるため、被保護物7をよりしっかり保護することができる。
【0045】
また、第一脚部23及び第二脚部33が設けられることで、組立後の状態で第一中央リブ部22及び第二中央リブ部32は、第一枠部20から厚み方向に離隔した位置で主当接面11を形成することができるため、被保護物7を深くしっかり固定することができる。
さらに、第一脚部23の内側面23a及び第二脚部33の内側面33aは、被保護物7の側面72の形状に合わせてその形状を設定することができる。このため、緩衝材1は、複雑な形状の被保護物7(例えば、第一枠部20に当接する側面72の部分と端面71との間に、傾斜面75が設けられた被保護物7や、段差が設けられた被保護物7など)であってもしっかり固定することができる。
【0046】
(5)緩衝材1には、使用状態で被保護物7側を向く内側面20a,22a,30a,32aと逆側の外側面20b,22b,30b,32bの一部が被保護物7側に向かって凹設された凹部20d,22d,30d,32dを有する。衝撃が加わる側の面(外側面20b,22b,30b,32b)の一部を凹ませてその表面積を小さくすることで、衝撃がかかった際に緩衝材1が変形しやすくなるため、効率よく衝撃を吸収することができる。
【0047】
(6)第二部材3には、組立後の状態で、厚み方向から視て第一枠部20に重なる第二枠部30が設けられる。これにより、使用状態で、第二枠部30が第一枠部20とともに被保護物7の側面72に係る衝撃を吸収できるため、緩衝材1の衝撃吸収力をさらに高めることができる。
(7)ピン部4には爪部42が設けられているため、組立後の状態における、第一部材2及び第二部材3の連結状態の意図しない解除を抑制することができる。これにより、組立後の状態における緩衝材1の形状が安定するため、使用状態で被保護物7を安定して保護することができる。
【0048】
(8)上記の緩衝材1は、発泡オレフィンにより形成されている。これに対し、緩衝材が例えばウレタンにより形成されている場合、ウレタンは発泡オレフィンよりも材料費が嵩む上に、同じ衝撃吸収力を得るために必要な素材の厚みが大きくなる。このため、緩衝材の外寸が大きくなり、緩衝材の保管に係る費用も嵩みうる。対して、上記のとおり、緩衝材1は、発泡オレフィンにより形成されるため、要求される衝撃吸収力を確保しながら緩衝材1の外寸を小さくすることができるとともに、緩衝材1にかかる費用を抑えることができる。
さらに、緩衝材1には、その表面に熱溶解されたスキン層が設けられているため、第一折線B1及び第二折線B2を簡単に形成することができる。
【0049】
(9)被保護物7は、半導体用ウェハーケースである。半導体のウェハーは、衝撃によりウェハーチップが欠け落ちることがある。また、ウェハーチップの脱落は、その後の半導体の後工程に影響しうる。一般的にウェハーは半導体用ウェハーケースに収容されて運搬されるが、このとき半導体用ウェハーケースには、上記の理由から過度な衝撃がかからないことが求められる。緩衝材1により半導体用ウェハーケースを保護することで、より確実に半導体用ウェハーケースを保護することができ、延いては、ウェハーからのウェハーチップの欠けを抑制することができる。
【0050】
[2.第二実施形態]
[2-1.構成]
上述した緩衝材1では、第二部材3が環状の第二枠部30を有する構成を例示したが、第二部材3の第二枠部30は省略されてもよい。また、上述した緩衝材1では、連結部としてのピン部4が第一枠部20と第二枠部30との双方を貫通する構成を例示したが、連結部は、第一部材及び第二部材の一方に連設されて、第一部材及び第二部材の他方のみを貫通するものであってもよい。
【0051】
以下、第二実施形態の緩衝材1′について説明する。第二実施形態の緩衝材1′は、主に、ピン部4′(連結部)が第三折線B3(第三ヒンジ部)を介して第二リブ部31′に連設されている点、及び、第二部材3′が環状の第二枠部を備えない点で、第一実施形態の緩衝材1と異なる。すなわち、本実施形態の第二部材3′は、ピン部4′が一体化された第二リブ部31′のみを備える。以下の説明では、上述した第一実施形態と異なる構成をおもに説明し、第一実施形態の構成と対応する構成については第一実施形態の符号にダッシュ(′)を付し、重複する説明は省略する。なお、本実施形態の緩衝材1′が保護する被保護物7は、第一実施形態の被保護物7と同様である。
【0052】
図10は、本実施形態の第二部材3′の組立後の状態における正面図及び側面図を併せて示した二面図である。
図10の側面図では、組立後の状態の第二部材3′に重ねて、組立前の状態の第二部材3′を二点鎖線で示している。第二部材3′は、上述した第二部材3のように、同等の厚み寸法を有する線状の部材であって、
図10に太線で示す第三折線B3を軸として、
図10の白抜き矢印で示すようにピン部4′に対して揺動可能に構成される。第三折線B3は、例えば、第二部材3′に上述のハーフカットが施されることにより形成される。
【0053】
図11は、使用状態における第二実施形態の緩衝材1′及び被保護物7を厚み方向から視た図(
図1の上側の図に対応する図)であり、
図12は
図11のX′矢視側面図であり、
図13は
図11のY′矢視側面図である。
図11~
図13では、緩衝材1′と被保護物7との区別を容易にするために、被保護物7を点線で示す。また、
図12及び
図13では、後述する第一枠部20′の凹部20d′を省略して示す。緩衝材1′は、一つの被保護物7に対して一対設けられる。一対の緩衝材1′は互いに同一の構成を有し、厚み方向に反転させた状態で被保護物7に装着される。
【0054】
本実施形態の緩衝材1′は、第一実施形態の緩衝材1と同様に、使用状態で、第一部材2′と第二部材3′との二つの部材が重ね合わされて組み立てられるものであり、被保護物7の側面72を囲う環状の第一枠部20′と、第一枠部20′に対して厚み方向に立設された交差リブ10′とを備える。緩衝材1′は、二つの第一リブ部21′が設けられた一つの第一部材2′と、一つの第二リブ部31′がそれぞれ設けられた二つの第二部材3′を有し、これら第一部材2′と二つの第二部材3′とが組み合わされてなる交差リブ10′は、厚み方向から視て井桁をなす。交差リブ10′は、第一リブ部21′及び第二リブ部31′が互いに係合して形成される主当接面11′と補助面12′とを有する。主当接面11′は被保護物7の端面71に当接し、補助面12′は被保護物7の側面72に当接する。
【0055】
第一部材2′の第一枠部20′は、
図11及び
図12に示すように、第一枠部20′の中央において厚み方向に貫通した広い空間S1′を形成する内側面20a′を備えるとともに、第二部材3′のピン部4′が貫通する第一貫通孔20h′を備える。第一貫通孔20h′は、第一方向において、後述する第一中央リブ部22′の係合部22c′が設けられる位置と同位置に設けられる。また、第一枠部20′の外形を形成する外側面20b′には、外側面20b′の一部を空間S1′の内側に向かって凹ませてなる凹部20d′が複数設けられる。ここでは、第一枠部20′の辺のうち、第一方向に延在する一対の辺のそれぞれに3つずつ、第二方向に延在する一対の辺のそれぞれに1つずつ、合計8個の凹部20d′が設けられた第一枠部20′を例示する。
【0056】
第一部材2′の第一リブ部21′は、組立後の状態で、第一枠部20′に対して厚み方向に立設されて第一方向に延在する。第一リブ部21′は、第一枠部20′から厚み方向に離隔した位置で延在する第一中央リブ部22′と、第一中央リブ部22′の長手方向の両端のそれぞれに連設されて第一枠部20′に繋がる一対の第一脚部23′とを有する。第一中央リブ部22′は、組立後の状態で、第一枠部20′側を向く内側面22a′を有する。内側面22a′と逆側を向く外側面22b′を含む部分には、第二部材3′の第二リブ部31′と係合する二つの係合部22c′と、被保護物7にかかる衝撃を効率よく吸収するための凹部22d′とが設けられている。係合部22c′及び凹部22d′はいずれも、外側面22b′の一部を第一枠部20′側に向かって凹ませてなる。
【0057】
第一脚部23′は、第一枠部20′の内側を向く内側面23a′を有する。
図14は、組立前の状態の第一部材2′を厚み方向から視た図である。
図14に太線で示すように、第一脚部23′は、第一部材2′にハーフカットが施されることにより形成された第一折線B1′(ヒンジ部)を介して第一枠部20′に連設される。組立前の状態で、第一部材2′は、第一リブ部21′が第一枠部20′の空間S1′に嵌ることで、一様な厚みを持つ平板状をなす。組立途中の状態で、第一リブ部21′は、第一折線B1′を介して厚み方向に折り立てられる。
【0058】
第二部材3′は、組立後の状態で、第一枠部20′に対して厚み方向に立設されて第二方向に延在する第二リブ部31′を備える。第二リブ部31′は、
図13に示すように、第一枠部20′から厚み方向に離隔した位置で延在する第二中央リブ部32′と、第二中央リブ部32′の長手方向(第二方向)の両端のそれぞれに連設されてピン部4′に繋がる一対の第二脚部33′と、を有する。
【0059】
第二中央リブ部32′は、組立後の状態で、第一枠部20′側を向く内側面32a′を有する。第二中央リブ部32′の内側面32a′には、内側面32a′の一部を第一枠部20′から離れる方向に向かって凹ませてなる二つの係合部32c′が設けられる。第二中央リブ部32′の内側面32a′と逆側を向く外側面32b′には、外側面32b′の一部を第一枠部20′側に向かって凹ませてなる一つの凹部32d′が設けられる。一対の第二脚部33′は、第一枠部20′の内側を向く内側面33a′を有する。また、本実施形態の第二脚部33′には、内側面33a′と逆側を向く外側面33b′に、外側面33b′の一部を第一枠部20′の内側に向かって凹ませてなる凹部33d′が設けられる。
【0060】
ピン部4′は、第一部材2′と第二部材3′とを互いに組み付けるための部材である。本実施形態のピン部4は、上述の通り、第三折線B3を介して第二部材3′に連設されており、第一貫通孔20h′に嵌め込まれることで第一部材2′及び第二部材3′を一体化する。ピン部4′は、
図12及び
図13に示すように、組立後の状態において第一貫通孔20h′内に配置される柱部41′と、柱部41′の端部に設けられた爪部42′とを有する。本実施形態の爪部42′は、柱部41′の第二リブ部31′と接続しない側の端部に設けられる。爪部42′は、例えば、組立後の状態において第一方向から視て、第二方向に延在する二つの底面を有する略等脚台形状に形成され、組立後の状態で第一部材2′の厚み方向に直交する面に当接する。
【0061】
図15は、組立前の状態における緩衝材1′を厚み方向から視た図と第二方向から視た図とを併せて示す二面図である。
図15に示すように、第二部材3′は、組立前の状態で、ピン部4′に対して屈曲された状態をなし、ピン部4′が第一部材2′の第一貫通孔20h′に貫通させられることで、第一部材2′に沿うように配置される。これにより、緩衝材1′は、第一方向の中央部分が厚み方向に凹んだ略平板状をなす。
【0062】
緩衝材1′を組立前の状態から使用状態にするまでの手順の一例を説明する。まず、上述のように、ピン部4′に対して第二部材3′が屈曲された状態で、第一貫通孔20h′にピン部4′を嵌め込んで両部材2′,3′を一体化する。次に、第一リブ部21′と第二リブ部31′とを厚み方向に折り立てる。これにより、緩衝材1′は、組立後の状態となる。組立後の緩衝材1′では、
図11~
図13に示すように、第一中央リブ部22′の係合部22c′と、第二中央リブ部32′の係合部32c′とが互いに嵌り合い交差部13′が形成される。
【0063】
さらに、被保護物7が第一枠部20′の空間S1′内に配置されることで、緩衝材1′は使用状態となる。このとき、第一枠部20′の内側面20a′には、被保護物7の側面72が当接する(
図12参照)。また、第一中央リブ部22′の内側面22a′と第二中央リブ部32′の内側面32a′とは、厚み方向に対して垂直な平面状になり、交差リブ10′の主当接面11′を形成する(
図12及び
図13参照)。主当接面11′を形成する部分には、上述の交差部13′も含まれる。加えて、第一脚部23′の内側面23a′と第二脚部33′の内側面33a′とが、補助面12′を形成して、被保護物7の側面72に当接する。具体的には、第一脚部23′の内側面23a′は傾斜面75に当接し(
図12参照)、第二脚部33′の内側面33a′は第一側面73に当接する(
図13参照)。
【0064】
[2-2.作用,効果]
第二実施形態の緩衝材1′においても、第一実施形態の緩衝材1から得られる作用,効果の(1)~(5)及び(7)~(9)と同様の作用,効果を得ることができる。
すなわち、緩衝材1′は、組立前の状態で、平板状の第一部材2′と第一部材2′に沿う形状の第二部材3′とを備えることで、嵩張らずに保管スペースの削減を図ることができるとともに、組立後の状態では、二つのリブ部21′,31′が折り立てられて互いに交差し、係合することで交差リブ10′が形成されるため、被保護物7をしっかり固定し、保護することができる。
【0065】
また、交差リブ10′が、第一リブ部21′と第二リブ部31′とが互いに交差する交差部13′で被保護物7の端面71に当接するため、緩衝材1′の衝撃吸収力を高めることができる。
さらに、二つの第一リブ部21′と二つの第二リブ部31′とにより、交差リブ10′は、厚み方向から視て井桁形状をなすため、緩衝材1′の衝撃吸収力をより高めることができるとともに、緩衝材1′の形状をより安定させることができる。
【0066】
交差リブ10′は、第一脚部23′の内側面23a′及び第二脚部33′の内側面33a′により形成される補助面12′を有するため、被保護物7をよりしっかり保護することができる。また、第一脚部23′及び第二脚部33′により、第一中央リブ部22′及び第二中央リブ部32′が、第一枠部20′から厚み方向に離隔した位置で主当接面11′を形成することができるため、被保護物7を深くしっかり固定することができる。
緩衝材1′は、凹部20d′,22d′,30d′,32d′,33d′を有するため、効率よく衝撃を吸収することができる。
【0067】
ピン部4′に設けられた爪部42′が、組立後の状態における、第一部材2′及び第二部材3′の連結状態の解除を抑制するため、使用状態で被保護物7を安定して保護することができる。
緩衝材1′は発泡オレフィンにより形成されるため、緩衝材1′の外寸を小さくすることができるとともに、緩衝材1′にかかる費用を抑えることができる。さらに、緩衝材1′の表面にスキン層が設けられているため、第一折線B1′及び第三折線B3を簡単に形成することができる。
緩衝材1′により被保護物7である半導体用ウェハーケースを保護することで、半導体用ウェハーケースを確実に保護し、ウェハーからのウェハーチップの欠けを抑制することができる。
【0068】
(10)第二実施形態の緩衝材1′では、ピン部4′が第二部材3′に第三折線B3を介して連設されているため、緩衝材1′の部品点数を少なくすることができる。
【0069】
[3.その他]
第一実施形態の緩衝材1及び第二実施形態の緩衝材1′の構成は一例である。第一実施形態においてピン部4(連結部)は第一枠部20及び第二枠部30を貫通するものであったが、第二実施形態のような第三折線B3(第三ヒンジ部)を介して連結部(ピン部4′)が第一枠部20又は第二枠部30のいずれか一方に連設されていてもよい。この場合、第一実施形態の緩衝材1の部品点数を少なくすることができる。また、連結部は、第一部材2,2′及び第二部材3,3′を厚み方向に重ねた状態で連結できるものであればよく、上述したピン状の部材に限らない。
【0070】
組立後の状態で、第二枠部30が、被保護物7の側面72に当接していてもよい。この場合、緩衝材1に衝撃吸収力をさらに高めることができる。また、第一実施形態の緩衝材1において、二つの第二リブ部31は、第二枠部30とは異なる部位に第二折線B2を介して連設されてもよい。上記の異なる部位としては、例えば、同等の厚み寸法を有する直線状の部位が挙げられる。また、緩衝材1,1′に設けられた凹部は、省略されてもよく、上述の位置と異なる箇所に設けられていてもよい。
【0071】
第一リブ部21,21′及び第二リブ部31,31′の形状は、上述のものに限らない。例えば、第一脚部23,23′の内側面23a,23a′及び第二脚部33,33′の内側面33a,33a′のいずれか一方だけが、組立後の状態で被保護物7の側面72に当接するように構成されてもよい。また、この双方が、組立後の状態で被保護物7の側面72に当接しない構成であってもよい。
【0072】
第一部材2,2′は、少なくとも一つの第一リブ部21,21′を備えていればよく、三つ以上の第一リブ部を備えていてもよい。同様に、第二部材3,3′は、少なくとも一つの第二リブ部31,31′を備えていればよく、三つ以上の第二リブ部を備えていてもよい。第一リブ部21,21′と第二リブ部31,31′とは、使用状態で被保護物7の端面71に当接しない位置で互いに交差していてもよい。また、第一リブ部21,21′と第二リブ部31,31′とは、組立後の状態で互いに異なる方向に延在して交差すればよく、直交していなくてもよい。
【0073】
第一部材2,2′及び第二部材3,3′が、発泡オレフィン以外の素材で構成されてもよい。例えば、第一部材及び第二部材は、ウレタンであってもよく、複数枚の段ボール材が厚み方向に重ねられた素材であってもよい。第一折線B1,B1′と第二折線B2と第三折線B3とは、ハーフカットにより形成されてものでなくてもよく、例えば、テープ状の部材を用いて構成されてもよいし、罫線とカット線とを組み合わせて構成されてもよい。
【0074】
被保護物には、少なくとも側面とこの側面に交差する端面とが設けられていればよく、その形状は上述のものに限らない。例えば、被保護物は、三角柱以上の多角柱状や円柱状であってもよく、上述のものよりも複雑な構造であってもよい。また、被保護物は半導体用ウェハーケース以外のものでもよい。緩衝材1,1′は、一つの被保護物に対して一対設けられる場合に限らず、単数で使用されてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1,1′ 緩衝材
2,2′ 第一部材
3,3′ 第二部材
4,4′ ピン部(連結部)
7 被保護物
10,10′ 交差リブ
11,11′ 主当接面
12,12′ 補助面
13,13′ 交差部
20,20′ 第一枠部(枠部)
20a,20a′ 内側面
20b,20b′ 外側面
20d,20d′ 凹部
20h,20h′ 第一貫通孔
21,21′ 第一リブ部
22,22′ 第一中央リブ部
22a,22a′ 内側面
22b,22b′ 外側面
22c,22c′ 係合部
22d,22d′ 凹部
23,23′ 第一脚部
23a,23a′ 内側面
30 第二枠部
30a 内側面
30b 外側面
30d 凹部
30h 第二貫通孔
31,31′ 第二リブ部
32,32′ 第二中央リブ部
32a,32a′ 内側面
32b,32b′ 外側面
32c,32c′ 係合部
32d,32d′ 凹部
33,33 第二脚部
33a,33a′ 内側面
33b′ 外側面
33d′ 凹部
41,41′ 柱部
42,42′ 爪部
71 端面
72 側面
73 第一側面(側面)
74 第二側面(側面)
75 傾斜面(側面)
B1,B1′ 第一折線(ヒンジ部)
B2 第二折線(第二ヒンジ部)
B3 第三折線(第三ヒンジ部)
S1,S1′ 空間
S2 空間