(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】衛生薄葉紙製品の包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 77/00 20060101AFI20241008BHJP
B65D 75/56 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B65D77/00 B ZAB
B65D75/56
(21)【出願番号】P 2021138955
(22)【出願日】2021-08-27
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】住田 朋哉
(72)【発明者】
【氏名】谷森 信彦
(72)【発明者】
【氏名】小島 裕喜
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-160814(JP,A)
【文献】特開2008-007922(JP,A)
【文献】特開2021-054436(JP,A)
【文献】特開2018-024450(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0048994(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0370718(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0001124(US,A1)
【文献】特開2015-036309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 67/00-79/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材に第1のヒートシール層が積層されたラミネート紙を基材とする包装体本体であって、前記第1のヒートシール層が外面となるように、複数個の衛生薄葉紙製品を一纏めにして包装した包装体本体と、
紙基材に第2のヒートシール層が積層されたラミネート紙を基材とし、長手方向両端部とその間の中間部とを有する帯状の持ち手であって、前記中間部が前記包装体本体の天面に対向するように、前記両端部が前記第2のヒートシール層と前記第1のヒートシール層との接合を介して前記包装体本体の前記外面に接合された、持ち手と、
を有
し、
前記包装体本体の紙基材のMD方向が、前記包装体本体の高さ方向となり、
前記持ち手の紙基材のMD方向が、前記持ち手の長手方向となるように構成されていることを特徴とする、衛生薄葉紙製品の包装体。
【請求項2】
前記包装体本体の封止に、前記第1のヒートシール層が用いられていることを特徴とする請求項1に記載の衛生薄葉紙製品の包装体。
【請求項3】
前記持ち手の前記両端部は、前記包装体本体の前記天面に連接する側面に接合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の衛生薄葉紙製品の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレットロール、キッチンロールのようなロール状衛生薄葉紙製品、またはティシュペーパー、ワイパー等の積層状衛生薄葉紙製品を、複数個一纏めにして包装する、衛生薄葉紙製品の包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレットペーパー、キッチンペーパー等の衛生薄葉紙をロール状に巻き取ったロール状衛生薄葉紙製品や、ティシュペーパー、ワイパー等の衛生薄葉紙の積層体を箱または袋に収容した積層状衛生薄葉紙製品は、複数個を一纏めにしてプラスチックフィルムで包装した形態で販売されている。
【0003】
特許文献1から3は、この種の包装体に持ち手を設けた構成を開示している。特許文献1から3において、持ち手の基材は、長手方向両端部およびその間の中間部を有する帯状のプラスチックフィルムであり、中間部が包装体本体の天面に対向するように、両端部が包装体本体の側面に接合されている。これによって、包装体は、帯状のプラスチックフィルムの中間部を持ち手として把持することにより、簡単に持ち運べるようになっている。
【0004】
ところで、近年、世界的にプラスチックゴミ問題が深刻化しており、地球環境の改善のため、プラスチックの使用を削減することが望まれている。特許文献4は、1以上の紙製品を包装する包装体において、紙基材を含む包装基材を用いて、プラスチックの使用を削減することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-153959号公報
【文献】特開2010-275011号公報
【文献】特開2015-101388号公報
【文献】特開2021-70501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プラスチックの使用の削減のために、持ち手についても、紙基材を含む持ち手基材を用いることが考えられる。
【0007】
しかしながら、紙基材を含む持ち手基材を用いる場合、紙基材を含む包装基材と紙基材を含む持ち手基材との接合に、包装基材と持ち手基材とが共にプラスチックフィルムである場合の接合方法をそのまま単純に適用することはできない。包装基材と持ち手基材との間に十分な接合強度が得られない場合には、包装体を持ち上げたり持ち運んだりする際に、持ち手が包装体本体から不用意に外れてしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、プラスチックの使用が削減されるとともに、持ち手と包装体本体との間に十分な接合強度が得られて持ち運び時等の持ち手の不用意な外れが防止された、衛生薄葉紙製品の包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、紙基材に第1のヒートシール層が積層されたラミネート紙を基材とする包装体本体であって、第1のヒートシール層が外面となるように、複数個の衛生薄葉紙製品を一纏めにして包装した包装体本体と、紙基材に第2のヒートシール層が積層されたラミネート紙を基材とし、長手方向両端部とその間の中間部とを有する帯状の持ち手であって、中間部が包装体本体の天面に対向するように、両端部が第2のヒートシール層と第1のヒートシール層との接合を介して包装体本体の前記外面に接合された、持ち手と、を有する、衛生薄葉紙製品の包装体により、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0010】
具体的には、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 紙基材に第1のヒートシール層が積層されたラミネート紙を基材とする包装体本体であって、第1のヒートシール層が外面となるように、複数個の衛生薄葉紙製品を一纏めにして包装した包装体本体と、紙基材に第2のヒートシール層が積層されたラミネート紙を基材とし、長手方向両端部とその間の中間部とを有する帯状の持ち手であって、中間部が包装体本体の天面に対向するように、両端部が第2のヒートシール層と第1のヒートシール層との接合を介して包装体本体の外面に接合された、持ち手と、を有する、衛生薄葉紙製品の包装体。
[2] 包装体本体の封止に、第1のヒートシール層が用いられていることを特徴とする[1]に記載の衛生薄葉紙製品の包装体。
[3] 持ち手の両端部は、包装体本体の天面に連接する側面に接合されていることを特徴とする[1]または[2]に記載の衛生薄葉紙製品の包装体。
[4] 包装体本体の紙基材のMD方向が、包装体本体の高さ方向となり、持ち手の紙基材のMD方向が、持ち手の長手方向となるように構成されていることを特徴とする[3]に記載の衛生薄葉紙製品の包装体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数個の衛生薄葉紙製品を一纏めにして包装する包装体において、プラスチックの使用が削減されるとともに、持ち手と包装体本体との間に十分な接合強度が得られて持ち運び時等の持ち手の不用意な外れが防止された、衛生薄葉紙製品の包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る衛生薄葉紙製品の包装体を示す概略斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る衛生薄葉紙製品の包装体を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。これらは例示の目的で掲げたものであり、これらにより本発明を限定するものではない。
【0014】
(第1の実施形態)
[包装体]
図1および
図2は、それぞれ、本発明の実施形態に係る、衛星薄葉紙製品の包装体の概略斜視図である。包装体1は、複数個の衛生薄葉紙製品を一纏めにして包装する包装体本体10と、包装体本体10の外面に接合された持ち手20と、を含む。
【0015】
[衛生薄葉紙製品]
本発明の包装体に包装される衛生薄葉紙製品の例には、トイレットペーパー、キッチンペーパー等の衛生薄葉紙をロール状に巻き取ったロール状衛生薄葉紙製品、およびティシュペーパー、ワイパー等の衛生薄葉紙の積層体を箱または袋に収容した積層状衛生薄葉紙製品が挙げられる。
【0016】
図1に示される包装体1には、複数個の積層状衛生薄葉紙製品として、5箱の箱入りティシュペーパーが包装されている。また、
図2に示される包装体1には、複数個のロール状衛生薄葉紙製品として、2ロールのトイレットロール(ロール状トイレットペーパー)が包装されている。
【0017】
包装体1に包装される衛生薄葉紙製品の数は、包装体本体10および衛生薄葉紙製品の寸法や重さなどによる持ち運び易さ、重さと包装体本体10および持ち手20の基材16,26の強度および接合強度との関係、製品販売戦略等により決定されてもよい。包装体1は、例えば、2から5箱の積層状衛生薄葉紙製品、または2から8ロールのロール状衛生薄葉紙製品を含んでいてもよい。
【0018】
[包装体本体]
包装体本体10は、紙基材12にヒートシール層(第1のヒートシール層)14が積層されたラミネート紙16を基材とする。
図1に示されるように、包装体本体10は、ラミネート紙16のヒートシール層14が包装体本体10の外面となるようにして、被包装物を包装している。
図1の例では、互いの天面と底面とを対接させて上下方向に積み重ねた5箱の衛生薄葉紙製品が被包装物となっている。包装体本体10は、底面と、底面に対向する天面と、底面および天面に連接する側面(周面)とを有し、包装体本体10の側面は、被包装物の側面を取り囲んでいる。
【0019】
[持ち手]
持ち手20は、紙基材22にヒートシール層(第2のヒートシール層)24が積層されたラミネート紙26を基材とする。持ち手20は、帯状であり、長手方向両端部とその間の中間部とを有する。持ち手20の両端部のヒートシール層(第2のヒートシール層)24が、包装体本体10の外面のヒートシール層(第1のヒートシール層)14との接合面となる。
【0020】
[持ち手と包装体本体との接合]
持ち手20は、包装体本体10に対して、持ち手20の両端部が包装体本体10の外面に接合され、および持ち手20の中間部が包装体本体10の外面に接合されずに包装体本体10の天面に対向するように配置される。
【0021】
本発明の実施形態において、持ち手20と包装体本体10とは、ヒートシール層同士(第1のヒートシール層および第2のヒートシール層)14,24のヒートシール(熱融着)により、接合される。ヒートシール処理には、知られているヒートシーラーを用いることができる。ヒートシール処理により、持ち手20と包装体本体10との接合部となる領域には、熱と圧力が加えられ、対接する各ヒートシール層14,24のヒートシール性の材料が軟化および溶融する。本実施形態では、接合されるラミネート紙26,16の両方が、対接される接合面にヒートシール性の材料を有するヒートシール層を有するため、ヒートシール処理の結果、ヒートシール層における材料のミクロの食い込みや混合一体化が生じ、強固な接合が得られる。
【0022】
[ラミネート紙]
本明細書において、ラミネートとは、薄い層状のものが重なり合って一体化された構成をいう。ラミネート紙16,26は、紙基材12,22とヒートシール層14,24とを含み、ヒートシール層14,24は紙基材12,22上に積層され、紙基材12,22に重なり合って一体化されている。
【0023】
[紙基材]
紙基材12,22は、パルプを主原料として、当技術分野において知られている製紙技術により得られる。紙基材12,22は、例えば、抄紙機を用いてパルプ成分を含むスラリーを抄紙することによって製造することができる。抄紙機には、ツインワイヤフォーマ方式、円網フォーマ方式、サクションプレストフォーマ方式、クレセントフォーマ方式等の知られている抄紙機が用いられてもよい。抄紙された紙基材には、ヤンキードライヤによる乾燥処理や、カレンダーによる平滑化処理などの処理が施されてもよい。
【0024】
[パルプ]
紙基材12,22の主原料となるパルプ成分としては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプのような古紙パルプを挙げることができる。
【0025】
木材パルプとしては例えば、広葉樹パルプ(広葉樹クラフトパルプ(LKP))、針葉樹パルプ(針葉樹クラフトパルプ(NKP))、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプが挙げられるが、特に限定されない。
【0026】
非木材パルプとしてはコットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられるが、特に限定されない。
【0027】
古紙パルプとしては古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。例えば、新聞紙、チラシ、ザラ紙系雑誌、コート紙系雑誌、感熱記録紙、感圧記録紙、模造紙、色上質紙、コピー用紙、コンピューターアウトプット用紙、またはこれらを任意に組み合わせた混合古紙のような、従来知られている古紙パルプなどが挙げられる。
【0028】
パルプ成分は上記の1種が単独で用いられていてもよいし、2種以上混合されていてもよい。これらパルプ成分は紙基材の品質に大きく影響するので、要求品質に合わせて所定の種類および配合割合で適宜配合される。
【0029】
例えば、針葉樹クラフトパルプ(NKP)および/または広葉樹クラフトパルプ(NKP)を、好ましくは50~100:50~0、より好ましくは70~100:30~0、さらに好ましくは90~100:10~0の配合率(質量%)で用いてもよい。
【0030】
針葉樹クラフトパルプの配合率が高くなると、概して、得られる紙基材の縦方向(MD方向)の引張強度が向上し、ひいては、MD方向に力が作用した際の不用意な破断が生じにくくなる。そのため、包装体1において力が作用しやすい方向に紙基材12,22のMD方向が一致するような配向でラミネート紙16,26を用いることにより、包装体1の破断しやすさ等を防止し得る。
【0031】
[任意成分]
紙基材12,22には、要求品質および製造時の操業の安定のために、任意成分として、一般的に用いられている様々な薬品が添加されていてもよい。任意成分としては、例えば、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、柔軟剤、嵩高剤、染料、香料、分散剤、濾水向上剤、ピッチコントロール剤、歩留向上剤等を挙げることができる。
【0032】
乾燥紙力剤としては、例えば、カチオン化澱粉、ポリアクリルアミド(PAM)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を挙げることができる。湿潤紙力剤としては、通常用いられる公知のものの中から選択して使用することができる。例えば、ポリアミド・ポリアミン系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、メラミン系樹脂等を挙げることができ、特には、ポリアミドエピクロロヒドリン、尿素、メラミン、熱架橋性ポリアクリルアミド等を挙げることができる。柔軟剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等を挙げることができる。上記の任意成分は1種が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0033】
包装体本体10の紙基材12と、持ち手20の紙基材22とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0034】
[グラシン紙]
包装体本体10の紙基材12としては、例えば、グラシン紙を好ましく用いることができる。グラシン紙とは、化学パルプを高度に叩解して抄造した原紙をカレンダーに通して熱と圧力をかけ、繊維間の隙間を潰して製造した、坪量が20g/m2から50g/m2程度の薄葉紙である。グラシン紙は、平滑度が高く、光沢があり、高密度で、透気度が高く(すなわち、紙の一定面積を一定量の空気が一定圧力の下で通過するのにかかる時間が長く、換言すると、透気性が低い)、半透明を呈する等の性質を有する。
【0035】
グラシン紙を包装体本体10の紙基材12に用いることにより、例えば次のような利点がある。
(1)包装体1の外観から、透明または半透明のヒートシール層14および半透明のグラシン紙を透かして、包装体本体10に包装されている衛生薄葉紙製品を容易に判別することができる。また、包装体本体10の内面となるグラシン紙の面に印刷した文字や図形を包装体本体10の外側から見ることもできる。
(2)グラシン紙は高い透気度を有するため、包装体本体10に包装されている被包装物である衛生薄葉紙製品が、外部の湿気の影響を受けにくくなる。
【0036】
[純白紙]
持ち手20の紙基材22としては、例えば、純白紙を好ましく用いることができる。純白紙とは、一方の面は平滑度が高くツルツルとした艶面であり、他方の面は平滑度が低くてザラザラとした非艶面である、いわゆる片艶の、白色度の高い、坪量が30g/m2から65g/m2程度の薄葉紙である。純白紙は、紙力が強く、印刷適性に優れるといった性質を有する。純白紙は、ヤンキーマシン(円網抄紙機)を用いて製造することができる。
【0037】
純白紙を持ち手20の紙基材22に用いることにより、例えば次のような利点がある。
(1)紙基材22の紙力が強いため、持ち手20が破れにくい。
(2)紙基材22の艶面は、光沢があり、白色度も高いため、印刷を施した場合に、発色に優れた見栄えのよい印刷が得られる。
(3)紙基材22の非艶面は表面凹凸が多いため、非艶面にヒートシール層24を積層することにより、紙基材22の表面凹凸にヒートシール層24を構成する材料が入り込んで嵌合状態となるアンカー効果が生じ、紙基材22とヒートシール層24との間に高い接着力が得られる。そのため、包装体1の持ち運び時等に持ち手20に引張力が掛かった場合に、紙基材22とヒートシール層24との間で剥離が生じることが防止される。
【0038】
[ヒートシール層]
ラミネート紙16,26を平面視した際に、本例において、ヒートシール層14,24は、紙基材12,22の全面に設けられている。しかしながら、本発明において、包装体本体10の基材であるラミネート紙16のヒートシール層14が、持ち手20の基材であるラミネート紙26が接合されることとなる部分に設けられ、持ち手20の基材であるラミネート紙26のヒートシール層24が、包装体本体10の基材であるラミネート紙16に接合されることとなる部分に設けられている限りは、ヒートシール層14,24は、紙基材12,22の全面ではなく、表面の一部のみに設けられていてもよい。この限りにおいて、ラミネート紙16,26の紙基材12,22の表面においてヒートシール層14,24が設けられる部分の位置、大きさ、およびヒートシール層14,24が占める割合は、適宜設定することができる。
【0039】
ヒートシール層14,24が紙基材12,22の全面に設けられている場合、包装体1の製造工程において包装体本体10の包装および持ち手20の取り付けにあたって位置ずれが生じても、接合しようとする部分にヒートシール層14,24が存在しないことによる接合の不具合が起きないという利点がある。また、ヒートシール層14,24が紙基材12,22の全面に設けられていることにより、表面の一部のみに設けられている場合と比べて、基材であるラミネート紙16,26に、強度の補強効果が得られる。
【0040】
ヒートシール層14,24が紙基材12,22の表面の一部のみに設けられている場合、全面に設けられている場合と比べて、ラミネート紙16,26におけるヒートシール層14,24の割合が低くなり、紙基材12,22の割合が高くなる。そのため、ラミネート紙16,26におけるプラスチックの使用削減効果が高まり得る。
【0041】
[ヒートシール層の材料]
ヒートシール層14,24を構成する材料としては特に限定されず、ヒートシール性を発現する任意の材料を使用することができる。例えば、ポリオレフィン系樹脂や、他の熱可塑性樹脂を使用することができ、これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。このような材料としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、アイオノマー、非晶性ポリエステル、ポリプロピレン、スチレン-アクリル共重合体、プロピレン-エチレン共重合体(好ましくはエチレン含有量が10モル%以下の共重合体)、または、ポリプロピレンに不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、エステル単量体等をグラフト重合または共重合したポリプロピレン系樹脂、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。ヒートシール層14,24を構成する材料は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ヒートシール層14,24を構成する材料は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0042】
ヒートシール層14,24は、例えば、以下に挙げるような通常用いられる方法を用いて形成することができる。
(1)紙基材12,22上に、ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂を含有する組成物を、押出法によって製膜する方法。
(2)知られているヒートシール加工装置(貼合処理装置)を用いて、紙基材12,22に熱可塑性樹脂からなるフィルムまたは熱可塑性樹脂を含有するフィルムを貼り付ける方法。
(3)熱可塑性樹脂もしくは熱可塑性樹脂組成物を水に溶解もしくは分散させた水系ヒートシール剤、または熱可塑性樹脂もしくは熱可塑性樹脂組成物を溶剤に溶解もしくは分散させた溶剤系ヒートシール剤を、ロールコート、グラビアロールコート、キスコート等の知られている方法で、紙基材12,22上に塗工する方法。
【0043】
[坪量]
[ラミネート紙の坪量]
ラミネート紙16,26の坪量(ラミネート紙16,26を構成する紙基材12,22およびヒートシール層14,24の合計坪量)は、30g/m2以上80g/m2以下であることが好ましく、40g/m2以上70g/m2以下であることがより好ましい。ラミネート紙16,26の坪量が30g/m2未満であると、ラミネート紙16,26が破れやすく、坪量が80g/m2を超えると、ヒートシール処理時に熱伝達が不十分となってヒートシール層の加熱温度が低下して良好な接合強度を得ることができない場合がある。ラミネート紙16,26の坪量は、例えば、日本工業規格JIS P8124の規定に準じて測定される。
【0044】
[ヒートシール層の坪量]
包装体本体10の基材であるラミネート紙16におけるヒートシール層(第1のヒートシール層)14の坪量は、10g/m2以上20g/m2以下であることが好ましく、12g/m2以上18g/m2以下であることがより好ましい。また、持ち手20の基材であるラミネート紙26におけるヒートシール層(第2のヒートシール層)24の坪量は、10g/m2以上20g/m2以下であることが好ましく、12g/m2以上18g/m2以下であることがより好ましい。
【0045】
ヒートシール層14,24の坪量を、10g/m2以上とすることで、ヒートシール層14,24の両方のヒートシール性の材料の融着による強固な接合強度を得ることができる。また、ヒートシール層14,24の坪量を、20g/m2以下とすることで、ラミネート紙16,26におけるヒートシール層14,24の割合が適度に抑えられ、包装基材および持ち手基材としてのラミネート紙16,26の強度を確保することができる。
【0046】
ヒートシール層14,24の坪量は、例えば次に示す方法などにより、基材(紙基材12,22上にヒートシール層14,24が積層されたラミネート紙16,26)からヒートシール層14,24を採取して質量を測定することにより、求めることができる。
【0047】
まず、0.1M酢酸水溶液と0.1M酢酸ナトリウム水溶液を調製する。約830gの0.1M酢酸水溶液と約160gの0.1M酢酸ナトリウム水溶液とを混合してpHが4となるようにし、これを酢酸緩衝液とする。この酢酸緩衝液にセルラーゼオノヅカp1500(ヤクルト社製)を添加量が1質量%となるように添加する。
【0048】
セルラーゼオノヅカp1500を添加した酢酸緩衝液50mlと基材(紙基材上にヒートシール層が積層されたラミネート紙)0.5gとをバイアル瓶に入れて、しっかりと蓋をする。180rpm、40℃の条件で24時間振とうした後、バイアル瓶からヒートシール層を採取し、ヒートシール層部分の質量を測定する。基材(紙基材上にヒートシール層が積層されたラミネート紙)の質量(0.5g)と、採取したヒートシール層の質量から、下記式(I)により、ヒートシール層の坪量を算出する。
【0049】
ヒートシール層の坪量=基材の坪量×(ヒートシール層の質量/基材の質量)・・・(I)
【0050】
[紙基材の坪量]
包装体本体10の基材であるラミネート紙16における紙基材12の坪量、および持ち手20の基材であるラミネート紙26における紙基材22の坪量の坪量は、20g/m2以上60g/m2以下であることが好ましく、28g/m2以上52g/m2以下であることがより好ましい。
【0051】
紙基材12,22の坪量が20g/m2未満であると、十分な強度が得られず、ラミネート紙16,26が破れやすくなる場合がある。紙基材12,22の坪量が60g/m2を超えると、ラミネート紙16,26のしなやかさや柔らかさが低下して包装体1の形成時に加工性が低下し、また、紙厚が厚くなるなどによりヒートシール処理時に熱伝達が不十分となってヒートシール層の加熱温度が低下して良好な接合強度を得ることができない場合がある。
【0052】
紙基材12,22の坪量は、例えば、上述のヒートシール層の坪量の求め方を適用して、次のようにして求めることができる。
【0053】
まず、0.1M酢酸水溶液と0.1M酢酸ナトリウム水溶液を調製する。約830gの0.1M酢酸水溶液と約160gの0.1M酢酸ナトリウム水溶液とを混合してpHが4となるようにし、これを酢酸緩衝液とする。この酢酸緩衝液にセルラーゼオノヅカp1500(ヤクルト社製)を添加量が1質量%となるように添加する。
【0054】
セルラーゼオノヅカp1500を添加した酢酸緩衝液50mlと基材(紙基材上にヒートシール層が積層されたラミネート紙)0.5gとをバイアル瓶に入れて、しっかりと蓋をする。180rpm、40℃の条件で24時間振とうした後、バイアル瓶からヒートシール層を採取し、ヒートシール層部分の質量を測定する。基材(紙基材上にヒートシール層が積層されたラミネート紙)の質量(0.5g)と、採取したヒートシール層の質量から、下記式(II)により、紙基材の坪量を算出する。
【0055】
紙基材の坪量=基材の坪量×{(基材の質量-ヒートシール層の質量)/基材の質量}・・・(II)
【0056】
[包装形式]
包装体本体10の形成には、ラミネート紙16のヒートシール層14が包装体本体10の外面となるように包装することが可能な、知られている任意の包装形式を採用することができる。特には、いわゆるキャラメル包装形式を好ましく採用することができる。
【0057】
[キャラメル包装]
キャラメル包装形式とは、キャラメルのようなソフトキャンディの個別包装や箱たばこのパッケージなどで知られている包装形式である。キャラメル包装は、例えば、以下に示す工程を含む方法により行うことができる。
(1) 定尺の包装基材(ラミネート紙16)で被包装物(複数個の衛生薄葉紙製品)を巻き込み、合わせ目を接合して筒状に包装する工程。
(2) 次いで、筒状の包装の両端部のそれぞれにおいて、被包装物の周面からはみ出た包装基材の部分を、2対の対向するフラップ状部分が形成されるように互いに折り畳み、被包装物の端面に沿わせて接合して、包封する工程。
【0058】
ここで、工程(1)において、定尺の包装基材を準備するステップは、包装基材で被包装物を巻き込む前、間および後のいずれの段階で行われてもよい。定尺の包装基材を準備するステップは、ロール状に巻き取られた長尺の包装基材を所定の長さに切断するステップを含んでいてもよい。
【0059】
工程(1)における合わせ目の接合には、接合する部分の全部または一部に対してヒートシール性を発現する任意の材料(ヒートシール層)を用いたヒートシール接合、任意の接着剤(接着層)を用いた接着接合、またはそれらの組み合わせ等の知られている方法を、必要に応じて任意選択的に用いることができる。
【0060】
工程(2)において、被包装物の周面からはみ出た包装基材の部分を、2対の対向するフラップ状部分が形成されるように互いに折り畳むステップにおいて、形成されるフラップ状部分の折り畳みの順番は問わない。すなわち、まず1対の対向するフラップ状部分を折り畳み、次いで別の1対の対向するフラップ状部分を折り畳んでもよい。また、まず1対の対向するフラップ状部分のうちの1つを折り畳み、次いで別の1対の対向するフラップ状部分のうちの1つを折り畳むといったように、交互に、またはランダムな順番で折り畳んでもよい。
【0061】
工程(2)において、被包装物の周面からはみ出た包装基材の部分の接合は、はみ出た部分が被包装物の端面に沿うように折り畳まれることによって重ね合わされる部分の全部または一部に対する、ヒートシール剤(ヒートシール層)を用いたヒートシール、接着剤(接着層)を用いた接着、またはそれらの組み合わせ等の知られている方法によって行うことができる。
【0062】
[作用効果]
本発明の第1の実施形態の包装体1は、紙基材12に第1のヒートシール層14が積層されたラミネート紙16を基材とする包装体本体10と、紙基材22に第2のヒートシール層24が積層されたラミネート紙26を基材とする包装体本体10の外面に接合された持ち手20と、を備え、包装体本体10と持ち手20とは、それぞれのヒートシール層14,24の接合を介して、互いに接合されている。
【0063】
かかる構成では、包装体1の製造工程において、包装体本体10と持ち手20のヒートシール層14,24が対接して接合される部分に、ヒートシール処理による加熱による、ヒートシール性の材料の軟化および溶融、ならびに圧着による、相対する溶着面(対接する接合面)における、軟化したヒートシール性の材料のミクロの食い込みおよび溶融したヒートシール性の材料の混合一体化などの現象が生じ得る。その結果、ヒートシール層14,24間に強固な接合が得られ、それにより、ラミネート紙16,26間に十分な接合強度が得られる。
【0064】
本実施形態の構成によれば、複数個の衛生薄葉紙製品を一纏めにして包装する包装体1において、従来一般的なプラスチックを基材とする代わりに、紙基材12,22にヒートシール層14,24が積層されたラミネート紙16,26を基材とすることにより、プラスチックの使用が削減される。また、持ち手20および包装体本体10の両方のヒートシール層14,24を介して持ち手20と包装体本体10との結合なされるため、持ち手20と包装体本体10との間に十分な接合強度が得られ、持ち運び時等の持ち手の不用意な外れが防止された、包装体1を提供することができる。
【0065】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。特段の記載のない限り、第1の実施形態に適用可能な構成は、本実施形態に適用可能である。
【0066】
第2の実施形態は、包装体本体10の封止に、第1のヒートシール層14が用いられることを特徴とする。
【0067】
上述の第1の実施形態において、包装体本体10の包装形式および形成方法について説明した。その中で、筒状の包装を形成する工程(1)における筒状の包装の合わせ目の接合、および筒状の包装の両端部を折り畳んで包装体本体の包封を行う工程(2)における筒状の包装の両端部における包封には、接合する部分に対してヒートシール性を発現する任意の材料(ヒートシール層)を用いたヒートシール接合、任意の接着剤(接着層)を用いた接着接合、またはそれらの組み合わせ等の知られている方法を任意選択的に用いることができることを述べた。
【0068】
また、上述の第1の実施形態では、包装体本体10の形成に、ラミネート紙16のヒートシール層14が包装体本体10の外面となるように包装することが可能な、知られている任意の包装形式を採用することができることを述べた。
【0069】
その1つの包装形式として、本発明において好ましい包装形式であるキャラメル包装を採用する場合、当該包装形式の1つの特徴として、筒状の包装を形成する工程(1)において、合わせ目は、ラミネート紙16の一方の面と他方の面とが(すなわち外面と内面が)対接するように重ね合わされてなる。このとき、合わせ目部分において、ラミネート紙16のヒートシール層14に同一のラミネート紙16の紙基材12が対接するように、ラミネート紙16の両縁部が重なり合う形となる。この部分に熱および圧力をかけてヒートシールすることにより、他のヒートシール剤(層)、接着剤(層)等を別途用いることなく、ヒートシール層14によって、合わせ目部分の接合が可能となる。
【0070】
また、本発明において好ましい包装形式であるキャラメル包装を採用する場合、かかる包装形式の別の1つの特徴として、包装体本体の包封を行う工程(2)において、筒状の包装の両端部に、折り畳まれることによって重ね合わされる部分が生じる。かかる部分には、ラミネート紙16のヒートシール層14が存在し得るため、ヒートシール層14を用いた当該部分のヒートシールが可能となる。ヒートシール層14を用いて包装体本体10の包封を行う場合、包装体本体10の封止のためおよび封止部分に所望の接合強度を得るために必要となる、ヒートシール剤(層)、接着剤(層)のような付加的な材料を、低減または排除することができる。したがって、本実施形態によれば、低コストでの生産を実現し得るという格別な効果を奏し得る。
【0071】
そこで、第2の実施形態では、包装体本体10形成時に筒状部分の合わせ目部分が同一のラミネート紙16の一方の面と他方の面とが対接するように重ね合わされてなる包装形式を採用する。このような包装形式の例には、例えば、キャラメル包装形式が挙げられる。
【0072】
[作用効果]
第2の実施形態では、包装体本体10形成時に筒状部分の合わせ目部分が同一のラミネート紙16の一方の面と他方の面とが対接するように重ね合わされてなる包装形式による構成において、包装体本体10の封止に、包装体本体10の基材であるラミネート紙16のヒートシール層14が用いられることを特徴とする。
【0073】
本実施形態によれば、包装体本体10の基材であるラミネート紙16のヒートシール層14を用いることによって、包装体本体10を封止するために必要とされる付加的な材料(ヒートシール剤、接着剤等)の排除または削減が可能となる。付加的な材料の排除が可能な場合は、封止のための付加的な材料自体だけでなく、付加的な層形成工程/剤付与工程が不要となる。また、封止のために付加的な材料が必要な場合であっても、ラミネート紙16のヒートシール層14の存在により、所望の封止状態を得るために必要となる付加的な材料の量を低減することができ、低コストでの生産を実現し得るという格別な効果を奏し得る。
【0074】
なお、包装体の包装形式として、筒状の包装を形成する工程において、筒状の包装の内面となる包装基材の面の両縁部が対接するように合わせ目を重ね合わせる包装形式(例えば、ピロー包装やガゼット包装等として知られている包装形式)も広く一般に用いられている。そのような包装形式によっても、ラミネート紙16の、包装体本体10と持ち手20との接合に用いられるヒートシール層14が、包装体本体10の外面となるように包装を行うことはできる。そのため、かかる構成に基づく、包装体本体10と包装体本体10に接合される持ち手20との間に十分な接合強度を得るという本発明の作用効果を得ることが可能であり、そのような包装形式は、本発明の第1の実施形態に適用し得る。
【0075】
しかしながら、そのような包装形式においては、包装体本体10の封止のために用いられるヒートシール層は、包装体本体の内面側に設けられている必要がある。つまり、筒状の包装の内面となる包装基材の面の両縁部が対接するように合わせ目を重ね合わせる包装形式においては、包装体本体10と持ち手20との接合に用いられるヒートシール層14の他に、包装体本体10の筒状の包装の合わせ目を接合するための任意の接合手段を別途設ける必要がある。したがって、そのような包装形式は、第2の実施形態に適用されない。
【0076】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。特段の記載のない限り、第1および第2の実施形態に適用可能な構成は、本実施形態に適用可能である。
【0077】
図1の(a)から(c)を参照して、本実施形態では、包装体1において、持ち手20の両端部は、包装体本体10の天面に連接する側面(周面)に接合されていることを特徴とする。詳細には、持ち手20の両端部は、包装体本体10の周面の対向する位置に接合されており、持ち手20の中間部は、包装体本体10の天面の中央部を横切っている。
【0078】
図1を参照して、包装体1の持ち手20は、持ち手20を把持して包装体1を持ち上げたり持ち運んだりするために用いられる。包装体1の持ち運び時等に、包装体本体10は、持ち手20と包装体本体10との接合面(接合部)を介して、持ち手20から吊り下げられることとなる。
【0079】
このとき、持ち手20と包装体本体10との接合面には、包装体本体10の自重によって鉛直方向に作用する荷重により、引張力が生じる。本発明において、持ち手20は、包装体本体10の外面に接合するものであり、天面や側面など接合面を問わないが、持ち手20を、天面ではなく特に側面(周面)に設ける第3の実施形態によれば、次のような作用効果を奏し得る。
【0080】
[作用効果]
持ち手20の両端部を包装体本体10の天面に接合して持ち手20と包装体本体10との接合面を包装体本体10の天面に設けた場合には、持ち手20と包装体本体10との接合面は略水平を成すのに対し、包装体1の持ち運び時等に、持ち手20には、包装体本体10の自重による鉛直方向の荷重が作用する。そのため、持ち手20と包装体本体10との接合面には、接合面に対して略垂直の、接合を引きはがそうとする方向の力(剥離力)が作用する。
【0081】
これに対し、持ち手20の両端部を包装体本体10の側面(周面)に接合して持ち手20と包装体本体10との接合面を包装体本体10の側面(周面)に設けた場合には、持ち手20と包装体本体10との接合面の向きは、略鉛直となる。包装体1の持ち運び時等に、持ち手20には、包装体本体10の自重による鉛直方向の荷重が作用するが、接合面の向きと荷重の作用する方向が略同方向であるため、持ち手20と包装体本体10との接合面には、接合面に対して略平行の力(剪断力)が作用することとなる。
【0082】
したがって、持ち手20の両端部を包装体本体10の側面(周面)に接合して持ち手20と包装体本体10との接合面を、包装体本体10の天面に対して角度を有する包装体本体10の側面に設けた本実施形態によれば、持ち手20と包装体本体10との接合を引き剥がそうとする方向に作用する力(剥離力)が、持ち手20を天面に設けた場合と比べて相対的に小さくなり、持ち運び時等の持ち手の不用意な外れのさらなる防止効果を奏し得る。
【0083】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。特段の記載のない限り、上述の実施形態に適用可能な構成は、本実施形態に適用可能である。
【0084】
第4の実施形態は、第3の実施形態のバリエーションであり、包装体1において、持ち手20の両端部は、包装体本体10の天面に連接する側面(周面)に接合されていることに加え、さらに、包装体1は、包装体本体10の紙基材12のMD方向Cが、包装体本体10の高さ方向となり、持ち手20の紙基材22のMD方向Aが、持ち手20の長手方向となるように構成されていることを特徴とする。
【0085】
[持ち手および包装体本体に作用する力]
包装体1の持ち運び時等に、持ち手20には包装体本体10の自重による荷重による引張力が作用し、および包装体本体10には持ち手20による吊り下げにより、その応力が作用する。これらの力によって、
(1)持ち手20の把持部分、
(2)持ち手20と包装体本体10との接合面(接合部)、
(3)包装体本体10における持ち手20と包装体本体10との接合面(接合部)の周辺部分、
といった部分には、基材16,26の破れや裂けによる破断、接合の剥がれによる持ち手20の不用意な外れ等の不具合等が生じやすい。
【0086】
上記(1)の「持ち手20の把持部分」に関し、本実施形態において、持ち手20は帯状であって、その長手方向における両端部が包装体本体10との接合部となり、包装体本体10とは非接合の中間部が把持部となっている。この構成において、持ち運び時等に持ち手20に包装体本体10の自重が掛かると、持ち手20の把持部分では、長手方向に引張力が作用することとなる。
【0087】
[基材の異方性]
ここで、包装体本体10の基材は、紙基材12上にヒートシール層14が積層されたラミネート紙16である。また、持ち手20の基材は、紙基材22上にヒートシール層24が積層されたラミネート紙26である。
【0088】
紙基材12,22は、その製法(抄紙)に起因する原料パルプ繊維の配向性を有する。具体的には、原料パルプ繊維は、概して、抄紙機による抄紙方向である縦方向(MD方向)に配向する。それにより、紙基材12,22は、引張強度、耐折強度、引裂強度、曲げこわさ、破裂強度のような強度に異方性を有し、同一の紙において、縦方向(MD方向)C,Aに関して測定した引張強度は、横方向(CD方向)B,Dに関して測定した引張強度よりも高くなる。
【0089】
このような紙基材12,22上にヒートシール層14,24が積層されたラミネート紙16,26には、かかる紙基材12,22の物性が反映される。すなわち、ラミネート紙16,26(基材)の縦方向(MD方向)C,Aに関して測定した引張強度は、横方向(CD方向)D,Bに関して測定した引張強度よりも高くなる。
【0090】
そこで、本実施形態では、引張強度が相対的に高い紙基材22の縦方向(MD方向)Aが、包装体本体10の自重による荷重により引張力が作用することとなる持ち手20の長手方向となるような配向で、持ち手20の基材となる帯状のラミネート紙26を設ける。
【0091】
この構成によれば、上記(1)の「持ち手20の把持部分」における基材26の不用意は破れや裂け等の発生を効果的に防止することができる。
【0092】
また、上記(2)の「持ち手20と包装体本体10との接合面(接合部)」に関し、本実施形態では、包装体1において、持ち手20の両端部は、包装体本体10の天面に連接する側面(周面)に接合されている。第3の実施形態で上述したように、かかる構成によれば、持ち運び時等に持ち手20と包装体本体10との接合を引き剥がそうとする方向に作用する力(剥離力)を相対的に小さくすることが可能となり、したがって、接合の剥がれ等の不具合を防止し、持ち手の不用意な外れを防止することができる。
【0093】
また、上記(3)の「包装体本体10における持ち手20と包装体本体10との接合面(接合部)の周辺部分」に関し、本実施形態において、持ち手20は包装体本体10の天面に連接する側面(周面)に接合されている。
【0094】
この構成において、持ち運び時等に持ち手20に包装体本体10の自重よる略鉛直方向の荷重が作用すると、持ち手20には引張力が作用し、包装体本体10における持ち手20と包装体本体10との接合面(接合部)の周辺部分には、持ち手20による引張力の応力が、主に略鉛直方向に作用することとなる。従って、包装体1の持ち運び時等に、包装体本体10における持ち手20と包装体本体10との接合面の周辺部分には、主に略鉛直方向の力が作用して、これにより基材16の破れや裂けによる破断が生じやすくなっている。
【0095】
そこで、本実施形態では、引張強度が相対的に高い紙基材12の縦方向(MD方向)Cが、包装体本体10の自重よって持ち手20に作用する引張力の応力が作用することとなる方向(鉛直方向)、すなわち、包装体1における包装体本体10の高さ方向となるような配向で、包装体本体10の基材となるラミネート紙16を準備し、被包装物たる衛生薄葉紙製品を包装して、包装体本体10を形成する。
【0096】
この構成によれば、上記(3)の「包装体本体10における持ち手20と包装体本体10との接合面(接合部)の周辺部分」における基材の不用意は破れや裂け等の発生を効果的に防止することができる。
【0097】
[作用効果]
第4の実施形態に係る包装体1は、包装体本体10の紙基材12のMD方向Cが包装体本体10の高さ方向となるように包装体本体10が構成され、持ち手20の両端部が、包装体本体10の天面に連接する側面(周面)に接合され、かつ、持ち手20の紙基材22のMD方向Aが持ち手20の長手方向となるように、持ち手20と包装体本体10とが接合された構成を有する。
【0098】
かかる構成を備える本実施形態によれば、包装体1の持ち運び時等に力が作用する方向における基材の引張強度が高く、また、包装体1の持ち運び時等に作用する力に対して接合部に剥がれが生じにくい。そのため、持ち手20の把持部分、持ち手20と包装体本体10との接合面(接合部)、および包装体本体10における持ち手20と包装体本体10との接合面(接合部)の周辺部分といった部分における、基材16,26の破れや裂けによる破断、接合の剥がれによる持ち手20の不用意な外れ等が効果的に防止された包装体1を得ることができる。
【0099】
[その他]
本発明の1つの実施形態では、ラミネート紙16,26の層構成において、ラミネート紙16.26は、紙基材12,22とヒートシール層14,24に加え、他の層を含んでいてもよい。包装体本体10と持ち手20との強固な接合のために、包装体本体10の基材であるラミネート紙16および持ち手20の基材であるラミネート紙26は、それぞれ、その層構成の最外層にヒートシール層14,24を有することが好ましいい。
【0100】
ラミネート紙16,26が含んでいてもよい他の層の例としては、例えば、水蒸気バリア層、酸素バリア層、印刷層、印刷適性向上層、オーバープリント層、遮光層のような機能性を有する層が挙げられる。これら他の層は、例えば、紙基材12,22とヒートシール層14,24との間、紙基材12,22のヒートシール層14,24が設けられる面とは反対側の面等に設けることができる。他の層は、ヒートシール層14,24のうち接合に用いられる領域部分のヒートシール性を損なわないように、ヒートシール層14,24の上面に設けられていてもよい。他の層は、1層であってもよく、2以上の複数層であってもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 包装体
10 包装体本体
12 包装体本体の紙基材
14 包装体本体のヒートシール層(第1のヒートシール層)
16 包装体本体の基材(ラミネート紙)
20 持ち手
22 持ち手の紙基材
24 持ち手のヒートシール層(第2のシートシール層)
26 持ち手の基材(ラミネート紙)
A,C 縦方向(MD方向)
B,D 横方向(CD方向)