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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】物体検知装置、物体検知方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021141943
(22)【出願日】2021-08-31
(65)【公開番号】P2023035255
(43)【公開日】2023-03-13
【審査請求日】2024-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福万 真澄
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀典
(72)【発明者】
【氏名】大林 幹生
(72)【発明者】
【氏名】中川 拓也
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-85037(JP,A)
【文献】特開2009-181471(JP,A)
【文献】特開2018-189422(JP,A)
【文献】特開2013-20458(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0114919(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体検知装置であって、
車両の周辺の障害物の存在および前記障害物までの距離を逐次検出する障害物検出部(32)と、
前記障害物検出部で検出された前記障害物の位置を物体位置として記憶部(31)に記憶する位置記憶部(33)と、
前記物体位置が前記障害物検出部の検出エリアから外れた後、再び前記障害物検出部の検出エリアに含まれ得る状況になった際の前記障害物検出部での前記障害物の検出状態に基づいて前記障害物が移動物体であるかを判別する物体判別部(34)と、を備え、
前記物体判別部は、鉛直方向の高さが所定値以下となる前記障害物について前記移動物体であるかを判別しない、物体検知装置。
【請求項2】
前記障害物の前記鉛直方向の高さを特定する高さ特定部(35)を備え、
前記高さ特定部は、前記障害物検出部の検出結果および車載カメラで撮像される前記障害物の撮像画像の少なくとも一方に基づいて前記障害物の前記鉛直方向の高さを特定する、請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項3】
前記所定値は、前記車両における前記障害物検出部の設置高さ以下である、請求項1または2に記載の物体検知装置。
【請求項4】
前記物体判別部は、前記物体位置が前記障害物検出部の検出エリアから外れた後、再び前記障害物検出部の検出エリアに含まれ得る状況になった際に、前記障害物検出部によって前記物体位置に前記障害物が検出されない場合に、前記障害物を前記移動物体として判別する、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の物体検知装置。
【請求項5】
前記物体判別部は、前記物体位置が前記障害物検出部の検出エリアから外れた後、再び前記障害物検出部の検出エリアに含まれ得る状況になった際に、前記障害物検出部によって前記物体位置に前記障害物が検出される場合に、前記障害物を静止物体として判別する、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の物体検知装置。
【請求項6】
前記車両の周辺に存在する前記障害物と前記車両との位置関係を定義する障害物マップを生成するマップ生成部(36)を備え、
前記マップ生成部は、前記物体判別部で前記静止物体として判別された前記障害物を前記障害物マップに登録し、前記物体判別部で前記移動物体として判別された前記障害物を前記障害物マップに登録しない、請求項5に記載の物体検知装置。
【請求項7】
前記物体判別部での判別結果を用いて駐車スペースへの前記車両の駐車を支援する駐車支援システム(1)に適用される、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の物体検知装置。
【請求項8】
物体検知方法であって、
車両の周辺の障害物の存在および前記障害物までの距離を障害物検出部(32)によって逐次検出することと、
前記障害物検出部で検出された前記障害物の位置を物体位置として記憶部(31)に記憶することと、
前記物体位置に存在する前記障害物が前記障害物検出部の検出エリアから外れた後、再び前記障害物検出部の検出エリアに含まれ得る状況になった際の前記障害物検出部での前記障害物の検出状態に基づいて前記障害物が移動物体であるかを判別することと、
前記障害物が前記移動物体であるかを判別することでは、鉛直方向の高さが所定値以下となる前記障害物について前記移動物体であるかを判別しない、物体検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物体検知装置、物体検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の周辺の障害物が移動物体であるかを判別する車載用物体判別装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の装置は、障害物が静止しているとした場合の障害物センサでの障害物の検出状態を推定し、その推定結果と障害物センサでの実施の検出結果とが乖離している場合に障害物が移動物体であると判別している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-85037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者らは、鉛直方向の高さが異なる障害物の障害物センサでの検出状態について検討した。この結果、障害物の鉛直方向の高さが小さいと、障害物センサと障害物とがある程度はなれている場合は障害物センサで障害物が検出される一方、障害物センサと障害物とが接近する場合に障害物センサで障害物が検出されなくなることが判った。このことは、障害物についての判別を間違える要因となり得る。これらは、本発明者らの鋭意検討の末に見出されたものであり、特許文献1には記載も示唆もされていない。
【0005】
本開示は、障害物についての判別の誤りを抑制可能な物体検知装置および物体検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、
物体検知装置であって、
車両の周辺の障害物の存在および障害物までの距離を逐次検出する障害物検出部(32)と、
障害物検出部で検出された障害物の位置を物体位置として記憶部(31)に記憶する位置記憶部(33)と、
物体位置が障害物検出部の検出エリアから外れた後、再び障害物検出部の検出エリアに含まれ得る状況になった際の障害物検出部での障害物の検出状態に基づいて障害物が移動物体であるかを判別する物体判別部(34)と、を備え、
物体判別部は、鉛直方向の高さが所定値以下となる障害物について移動物体であるかを判別しない。
【0007】
請求項8に記載の発明は、
物体検知方法であって、
車両の周辺の障害物の存在および障害物までの距離を障害物検出部(32)によって逐次検出することと、
障害物検出部で検出された障害物の位置を物体位置として記憶部(31)に記憶することと、
物体位置に存在する障害物が障害物検出部の検出エリアから外れた後、再び障害物検出部の検出エリアに含まれ得る状況になった際の障害物検出部での障害物の検出状態に基づいて障害物が移動物体であるかを判別することと、
障害物が移動物体であるかを判別することでは、鉛直方向の高さが所定値以下となる障害物について移動物体であるかを判別しない。
【0008】
これらによると、鉛直方向の高さが所定値以下となる障害物について“移動物体”であるか否かを判別しないので、鉛直方向の高さが所定値以下となる障害物を“移動物体”として誤って判別することを抑制することができる。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態に係る物体検知装置を含む駐車支援システムの概略構成図である。
図2】本開示の実施形態に係る物体検知装置を搭載した車両の概略構成を示す模式的な平面図である。
図3】超音波センサの鉛直方向における物体の検出可能な範囲の一例を説明するための説明図である。
図4】自車両と障害物とが大きく離れている場合の超音波センサでの障害物の検出状態を説明するための説明図である。
図5】自車両と障害物とが近接する場合の超音波センサでの障害物の検出状態を説明するための説明図である。
図6】制御装置が実行する物体検知処理の一例を示すフローチャートである。
図7】制御装置が実行する物体判別処理の一例を示すフローチャートである。
図8】自車両の周辺に移動物体がある場合の物体検知処理を説明するための説明図である。
図9】自車両の周辺に移動物体がある場合のマップ生成処理を説明するための説明図である。
図10】自車両の周辺に低位置物体がある場合の物体検知処理を説明するための説明図である。
図11】自車両の周辺の障害物が低位置物体であった場合のマップ生成処理を説明するための説明図である。
図12】駐車スペースに輪止めがある場合の物体検知処理を説明するための説明図である。
図13】自車両に輪止めが近接している場合の物体検知処理を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の一実施形態について図1図13を参照しつつ説明する。本実施形態では、車両における駐車支援システム1に物体検知装置10を組み込んだ場合を例に挙げて説明する。なお、ここでは駐車支援システム1に物体検知装置10を組み込んでいるが、駐車支援システム1以外のシステムに組み込んでも良い。
【0012】
図1に示すように、駐車支援システム1は、周辺監視装置20、制御装置30、HMIECU40、ブレーキECU50、パワートレイン(以下、パワトレという)ECU60を有した構成とされている。周辺監視装置20は、制御装置30に直接接続されており、周辺監視装置20の監視結果が制御装置30に入力されるようになっている。また、制御装置30と、HMIECU40、ブレーキECU50、パワトレECU60との間は、車内LAN(Local Area Network)などの車載通信バス70を介して通信可能とされている。
【0013】
図示しないが、制御装置30には、車輪速センサ、舵角センサ等の車両制御用の各種センサが接続されている。なお、車輪速センサは、4つの車輪それぞれに対応して備えられ、各車輪の回転状態に応じた検出信号をパルス出力として発生させる。また、舵角センサは、ステアリング操作による操舵の向きや操作量に応じた検出信号を出力する。
【0014】
周辺監視装置20は、自身の車両(以下、自車両Vaという)の周辺環境を監視する自律センサである。例えば、周辺監視装置20は、他車両Vbなどの移動する移動物体、路上の構造物などの静止している静止物体といった自車両Vaの周辺の立体物で構成される障害物等を検知対象物として検知する。車両には、周辺監視装置20として、探査波センサ21、周辺監視カメラ22等が備えられている。
【0015】
探査波センサ21は、自車両Vaの周囲の所定範囲に探査波を送信するものである。探査波センサ21は、第1超音波センサ211、第2超音波センサ212、第3超音波センサ213、図示しないミリ波レーダ、図示しないLiDAR(Light Detection and Rangingの略称)を含んでいる。
【0016】
各超音波センサ211、212、213は、超音波を発生させるとともに、その反射波を受信し、発生させてから反射波を受信するまでの時間に基づいてセンサの指向方向に存在する物体までの距離を検知し、その結果を検出信号として出力する。なお、以下では、各超音波センサ211、212、213から物体までの距離を検知距離と呼ぶ。また、図2に示すように、第1超音波センサ211の検出エリアをRf、第2超音波センサ212の検出エリアをRr、第3超音波センサ213の検出エリアをRsとする。各検出エリアRf、Rr、Rsは、水平方向における物体の検出範囲を規定するものである。
【0017】
各超音波センサ211、212、213は、鉛直方向DRgにおける高さが略同じ高さとなるように自車両Vaに設置されている。また、各超音波センサ211、212、213は、センサの指向方向が水平方向または斜め上方となるように自車両Vaに設置されている。なお、各超音波センサ211、212、213の鉛直方向DRgにおける高さは、全て同じである必要はなく、少なくとも一部が異なっていてもよい。また、各超音波センサ211、212、213の指向方向は、水平方向や斜め上方に限定されず、例えば、斜め下方となっていてもよい。
【0018】
具体的には、第1超音波センサ211は、自車両Vaの前方を検出エリアRfとして、自車両Vaの前方の障害物を検出する。第1超音波センサ211は、自車両Vaの前方において自車両Vaの幅方向に沿って並ぶ4つの検出部SF1、SF2、SF3、SF4を含んでいる。第1超音波センサ211の検出部SF1、SF2、SF3、SF4は、例えば、フロントバンパやフロントグリルに設置されている。なお、第1超音波センサ211の検出部SF1、SF2、SF3、SF4は、4つに限定されず、任意の数とすることができる。
【0019】
第2超音波センサ212は、自車両Vaの後方を検出エリアRbとして、自車両Vaの後方の障害物を検出する。第2超音波センサ212は、自車両Vaの後方において自車両Vaの幅方向に沿って並ぶ4つの検出部SB1、SB2、SB3、SB4を含んでいる。第2超音波センサ212の検出部SB1、SB2、SB3、SB4は、例えば、リアバンパに設置されている。なお、第2超音波センサ212の検出部SB1、SB2、SB3、SB4は、4つに限定されず、任意の数とすることができる。
【0020】
第3超音波センサ213は、自車両Vaの左側方および右側方を検出エリアRsl、Rsrとして、自車両Vaの側方の障害物を検出する。第3超音波センサ213は、自車両Vaの左側方および右側方それぞれにおいて自車両Vaの進行方向に沿って並ぶ2つの検出部SS1、SS2、SS3、SS4を含んでいる。なお、第3超音波センサ213の検出部SS1、SS2、SS3、SS4は、4つに限定されず、任意の数とすることができる。
【0021】
周辺監視カメラ22は、自車両Va周囲の所定範囲を撮像する車載カメラである。周辺監視カメラ22は、自車両Va周囲を撮像した撮像データを撮像結果として出力する。周辺監視カメラ22は、フロントカメラCF、バックカメラCB、左サイドカメラCL、右サイドカメラCR等を含んでいる。
【0022】
フロントカメラCFは、例えば、車両のフロントマスクを構成するフロントバンパまたはフロントグリルに設けられている。バックカメラCBは、例えば、リアバンパまたはリアバンパ近傍に設けられている。左サイドカメラCLは、例えば、左サイドミラーMLまたは左サイドミラーML近傍に設けられている。右サイドカメラCRは、例えば、右サイドミラーMRまたは右サイドミラーMR近傍に設けられている。
【0023】
制御装置30は、駐車支援システム1における駐車支援方法を実現するための各種制御を行うためのECU(電子制御装置)を構成するものであり、CPU、記憶部31、I/Oなどを備えたマイクロコンピュータによって構成されている。
【0024】
記憶部31は、ROM、RAM、EEPROM等を含んでいる。すなわち、記憶部31は、RAM等の揮発性メモリと、EEPROM等の不揮発性メモリとを有している。記憶部31は、非遷移有形記録媒体で構成されている。例えば、記憶部31は、探査波センサ21および周辺監視カメラ22から得られた各種情報を時系列で所定容量分保持する。
【0025】
制御装置30は、上記した周辺監視装置20の監視結果に基づいて物体検知処理を含む駐車支援制御を実行する。この駐車支援制御では、自車両Vaの周辺に存在する“静止物体”などの障害物を認識し、障害物を避けるように車両が駐車する際の移動経路を算出し、その移動経路に沿って車両を移動させる支援を行う。認識した障害物が“移動物体”である場合には、“移動物体”を認識した後、車両が駐車を始めようとするときに既に“移動物体”が存在していない状況になり得る。このため、例えば、“移動物体”を障害物から除外して移動経路を算出するなどの処理が行われるようになっている。そして、移動経路に沿って車両を移動させる支援が行われる際には、例えば移動経路を視覚的にドライバに把握できるようにしたり、車両を移動経路に沿って直接移動させるような制駆動力制御が行われたりする。このため、その制御を実行すべく、制御装置30から車載通信バス70を通じて、HMIECU40、ブレーキECU50、パワトレECU60に制御信号が伝えられるようになっている。
【0026】
具体的には、制御装置30には、記憶部31に加えて、機能部として、障害物検出部32、位置記憶部33、物体判別部34、高さ特定部35、マップ生成部36、および支援制御部37が備えられている。
【0027】
障害物検出部32は、各超音波センサ211、212、213のセンサ出力に基づいて自車両Vaの周辺の障害物の存在および障害物までの距離を逐次検出する。そして、障害物検出部32は、各超音波センサ211、212、213のセンサ出力に基づく検知距離から移動三角測量法により障害物がどこにあるかを特定する。
【0028】
ここで、移動三角測量法では、例えば、自車両Vaが前方に移動したときに検知距離が短くなる場合には障害物が自車両Vaの前方位置、検知距離が変化しない場合には障害物が自車両Vaの側方位置に存在するなどの測量を行う。なお、障害物検出部32における障害物検出は、移動三角測量法以外の方法によって実現されていてもよい。
【0029】
位置記憶部33は、障害物検出部32で検出された障害物の位置を物体位置として記憶部31に記憶する。例えば、位置記憶部33は、障害物検出部32で検出された障害物の自車両Vaに対する相対位置を物体位置として記憶部31に記憶する。
【0030】
物体判別部34は、記憶部31に記憶された物体位置が障害物検出部32の検出エリアRから外れた後、再び障害物検出部32の検出エリアRに含まれ得る状況になった際の障害物検出部32での障害物の検出状態に基づき障害物が“移動物体”であるかを判別する。
【0031】
物体判別部34は、物体位置が障害物検出部32の検出エリアRから外れた後、再び障害物検出部32の検出エリアRに含まれ得る状況になった際に障害物検出部32によって物体位置に障害物が検出されない場合に障害物を“移動物体”として判別する。また、物体判別部34は、物体位置が障害物検出部32の検出エリアRから外れた後、再び障害物検出部32の検出エリアRに含まれ得る状況になった際に障害物検出部32によって物体位置に障害物が検出される場合に障害物を“静止物体”として判別する。
【0032】
本実施形態の物体判別部34は、障害物検出部32にて新たな障害物が検出された場合、当該障害物をとりあえず“静止物体”として判別する。また、物体判別部34は、物体位置が障害物検出部32の検出エリアRから外れてから、再び障害物検出部32の検出エリアRに含まれ得る状況になるまでの期間、障害物検出部32で検出された障害物をとりあえず“静止物体”として判別する。これによると、“静止物体”を誤って“移動物体”として判別することを避けることができる。なお、ここでいう障害物検出部32の検出エリアRは、各超音波センサ211、212、213の検出エリアをRf、Rr、Rsl、Rsrと同じである。
【0033】
ここで、図3は、各超音波センサ211、212、213の鉛直方向DRgにおける物体の検出可能な範囲の一例を示している。各超音波センサ211、212、213は、センサからの距離が大きくなるに伴って、鉛直方向DRgにおける物体の検出可能な範囲が大きくなり、センサからの距離が小さくなるに伴って、鉛直方向DRgにおける物体の検出可能な範囲が小さくなる特性がある。
【0034】
このため、鉛直方向DRgの高さが大きい障害物OHは、当該障害物OHと各超音波センサ211、212、213との距離Lによらず、障害物検出部32で検出することができる。
【0035】
また、鉛直方向DRgの高さが小さい障害物OLは、図4に示すように、当該障害物OHと各超音波センサ211、212、213との距離Lが大きい場合、障害物検出部32で検出可能である。
【0036】
しかし、鉛直方向DRgの高さが小さい障害物OLと各超音波センサ211、212、213との距離Lが小さい場合は、図5に示すように、当該障害物OLを障害物検出部32で検出することができない。
【0037】
このように、鉛直方向DRgの高さが小さい障害物OLについては、障害物OLと各超音波センサ211、212、213との距離Lによって、障害物検出部32での障害物の検出状態が変化する。このことは、障害物が“静止物体”および“移動物体”のいずれであるかの判別を間違える要因となり得る。これらは、本発明者らの鋭意検討の末に見出されたものである。
【0038】
これらを加味して、物体判別部34は、鉛直方向DRgの高さが所定値Hth以下となる障害物について移動物体であるかを判別しない。所定値Hthは、自車両Vaにおける障害物検出部32の設置高さHs以下である。また、所定値Hthは、車両が乗り越えられる高さ、例えば、一般的な車両のバンパの下面の高さ(例えば、10~30cm)程度になっていることが望ましい。なお、以下では、鉛直方向DRgの高さが所定値Hth以下となる障害物を低位置物体LOとも呼ぶ。低位置物体LOは、例えば、縁石、輪止め等を想定している。
【0039】
高さ特定部35は、自車両Vaの周辺の障害物の鉛直方向DRgの高さを特定する。高さ特定部35は、障害物検出部32の検出結果および周辺監視カメラ22で撮像される障害物の撮像画像の少なくとも一方に基づいて障害物の鉛直方向DRgの高さを特定する。高さ特定部35は、例えば、周辺監視カメラ22を介して得られる自車両Vaの周辺の撮像画像に映る障害物を特定し、特定した障害物の形状から当該障害物の高さを推定する。
【0040】
ここで、各超音波センサ211、212、213が受信する反射波の強度と障害物の高さとの間には一定の相関性がある。具体的には、障害物の高さが大きいと、各超音波センサ211、212、213が受信する反射波の強度が大きくなり、障害物の高さが小さいと、各超音波センサ211、212、213が受信する反射波の強度が小さくなる傾向がある。このため、高さ特定部35は、各超音波センサ211、212、213が受信する反射波の強度に基づいて、障害物の高さを特定するようになっていてもよい。また、高さ特定部35は、周辺監視カメラ22で撮像される障害物の撮像画像および各超音波センサ211、212、213が受信する反射波の強度の双方に基づいて障害物の高さを特定するようになっていてもよい。
【0041】
マップ生成部36は、自車両Vaの周辺に存在する障害物と自車両Vaとの位置関係を定義する障害物マップMPを生成する。マップ生成部36は、例えば、SLAM技術によって、障害物検出部32の検出結果および物体判別部34の判別結果等に基づいて障害物マップMPを生成する。マップ生成部36は、例えば、二次元の障害物マップMPまたは三次元の障害物マップMPを生成する。なお、SLAMは、Simultaneous Localization and Mappingの略称である。
【0042】
ここで、障害物検出部32で検出された障害物が“移動物体”である場合、自車両Vaが駐車を始めようとするときに既に自車両Vaの周囲に“移動物体”が存在していない状況になり得る。このため、マップ生成部36は、“移動物体”を障害物マップMPから除外する。具体的には、マップ生成部36は、物体判別部34で“静止物体”と判別された障害物を障害物マップMPに登録し、物体判別部34で“移動物体”と判別された障害物を障害物マップMPに登録しない。
【0043】
支援制御部37は、障害物マップMPにある障害物に関する情報に基づき、障害物を避けて駐車が行えるように駐車支援制御を行う。例えば、支援制御部37は、移動物体については駐車する際には既に移動して存在していないものとして障害物から除外し、障害物のうちの静止物体を避けるべき障害物として、障害物を避ける移動経路を算出する。そして、その移動経路に沿って車両を移動させられるように支援を行うべく、車載通信バス70を通じて、HMIECU40、ブレーキECU50、パワトレECU60に対して適宜制御信号を出力する。
【0044】
HMIECU40は、HMI(Human Machine Interfaceの略)を構成する表示部41およびスピーカ等の音声出力部42を有する。表示部41は、視覚的な態様で情報を利用者にて提供する機器である。表示部41は、例えば、表示機能と操作機能が一体化されたタッチパネル式のディスプレイ、透明なガラス素子に情報を投影するヘッドアップディスプレイによって構成される。
【0045】
HMIECU40は、例えば、周辺監視カメラ22が撮像した自車両Vaの周辺の画像データを受け取り、自車両Vaを示す仮想車両画像とともに表示部41に表示させる制御を行っている。HMIECU40は、例えば、自車両Vaを示した俯瞰画像中に自車両Vaの駐車予定位置を明示したり、移動経路を矢印で示したり、障害物を強調表示したりする処理を行う。HMIECU40は、車速表示やエンジン回転数表示など、各種メータ表示を行うための制御を行う。HMIECU40は、支援制御部37からの制御信号を受け取ると、表示部41に駐車支援に関わる情報を表示したり、音声出力部42から警報音や駐車支援に関わる情報のアナウンスを行ったりする。例えば、HMIECU40は、表示部41または音声出力部42を通じて、「前進します」や「バックします」などの車両の予定動作を示したり、「シフトポジションを『D』にしてください」などの自動駐車を行う準備のための指示を出したりする。
【0046】
ブレーキECU50は、様々なブレーキ制御を行う制動制御装置を構成するものであり、ブレーキ液圧制御用のアクチュエータを駆動することで自動的にブレーキ液圧を発生させ、ホイールシリンダを加圧して制動力を発生させる。支援制御部37からの制御信号をブレーキECU50が受け取ると、ブレーキECU50は、移動経路に沿って車両を移動させるように、各車輪の制動力を制御する。
【0047】
パワトレECU60は、様々な駆動力制御を行う駆動力制御装置を構成するものであり、エンジンもしくはモータ回転数を制御したり、トランスミッションを制御したりすることで、所望の駆動力を発生させる。支援制御部37からの制御信号をパワトレECU60が受け取ると、パワトレECU60は、移動経路に沿って車両を移動させるように、駆動輪の駆動力を制御する。
【0048】
なお、ここでは自動駐車を行うことができるシステムとして、ブレーキECU50やパワトレECU60を含めている。また、俯瞰画像の表示や駐車支援に関わる表示を行うためにHMIECU40を含めている。しかしながら、これらについては必須のものではなく、必要に応じて適宜選択的に用いられる。
【0049】
以上のようにして、本実施形態にかかる駐車支援システム1が構成されている。駐車支援システム1には、物体検知装置10が含まれている。駐車支援システム1は、物体検知装置10が実行する物体検知処理によって自車両Vaの周辺に存在する物体が“移動物体”および“静止物体”のいずれであるかを特定し、自車両Vaの周辺における障害物に関する情報を得る。そして、駐車支援システム1は、支援制御部37にて、物体検知装置10で取得された障害物に関する情報に基づき、障害物を避けて駐車が行えるような駐車支援制御が行われる。
【0050】
ここで、本実施形態の物体検知装置10は、探査波センサ21、周辺監視カメラ22、記憶部31、障害物検出部32、位置記憶部33、物体判別部34、高さ特定部35、マップ生成部36を含んで構成されている。以下、物体検知装置10が実行する物体検知処理の概要について図6のフローチャートを参照しつつ説明する。物体検知装置10は、例えば、自車両Vaのイグニッションスイッチ等の起動スイッチがオンされると、周期的または不定期に毎に物体検知処理を実行する。なお、本フローチャートに示される各処理は、物体検知装置10の各機能部によって実現される。また、本処理を実現する各ステップは、物体検知方法を実現する各ステップとしても把握される。
【0051】
図6に示すように、物体検知装置10は、ステップS100にて、各種情報を読み込む。物体検知装置10は、例えば、探査波センサ21、周辺監視カメラ22、車輪速センサ、舵角センサ等のセンサ出力を逐次読み込む。
【0052】
続いて、物体検知装置10は、ステップS110にて、障害物検出部32にて障害物が検出されたかを判定する。この判定の結果、障害物が検出されなかった場合、物体検知装置10は、後述のステップS150の物体判別処理に移行する。一方、障害物が検出された場合、物体検知装置10は、ステップS120に移行する。
【0053】
物体検知装置10は、ステップS120にて、記憶部31に障害物に関する各種情報を障害物情報として記憶する。具体的には、物体検知装置10は、障害物検出部32で検出された障害物の位置を物体位置として記憶部31に記憶する。この処理は、位置記憶部33によって行われる。また、物体検知装置10は、障害物の鉛直方向DRgの高さを特定し、特定した障害物の高さを物体高さとして記憶部31に記憶する。この処理は、高さ特定部35によって行われる。
【0054】
続いて、物体検知装置10は、ステップS130にて、障害物検出部32で検出された障害物をとりあえず“静止物体”として特定する。この処理では、障害物が“移動物体”であるかは判別しないので、実際には障害物が“移動物体”である可能性もある。なお、既に、“移動物体”として判別された障害物に関しては、“静止物体”ではなく“移動物体”として特定する。
【0055】
続いて、物体検知装置10は、ステップS140にて、障害物検出部32で検出された障害物の高さが所定値Hth以下であるかを判定する。換言すれば、物体検知装置10は、障害物検出部32で検出された障害物が低位置物体LOであるかを判定する。
【0056】
障害物の高さが所定値Hth以下でない場合、物体検知装置10は、ステップS150の物体判別処理に移行する。物体判別処理は、障害物検出部32での障害物の検出状態に基づいて障害物が“移動物体”であるかを判別する。ステップS140の判定処理およびステップS150の物体判別処理は、物体判別部34によって行われる。
【0057】
一方、障害物の高さが所定値Hth以下である場合、物体検知装置10は、ステップS150の物体判別処理をスキップする。換言すれば、物体判別部34は、鉛直方向DRgの高さが所定値Hth以下となる障害物について“移動物体”であるかを判別しない。
【0058】
以下、物体判別処理について、図7を参照しつつ説明する。物体判別処理は、図7に示すように、物体検知装置10は、ステップS200にて、記憶部31に記憶された物体位置が再び障害物検出部32の検出エリアRに含まれる状況であるか否かを判定する。
【0059】
記憶部31に記憶された物体位置が再び障害物検出部32の検出エリアRに含まれる状況である場合、物体検知装置10は、ステップS210にて、記憶部31に記憶された物体位置に障害物があるか否かを判定する。この結果、記憶部31に記憶された物体位置に障害物がある場合、物体検知装置10は、ステップS220にて、物体位置にある障害物を“静止物体”であると判別して本処理を抜ける。一方、記憶部31に記憶された物体位置に障害物がない場合、物体検知装置10は、ステップS230にて、物体位置にある障害物を“移動物体”であると判別して本処理を抜ける。
【0060】
記憶部31に記憶された物体位置が再び障害物検出部32の検出エリアRに含まれる状況でない場合、物体検知装置10は、ステップS240にて、記憶部31に記憶された物体位置に障害物があるか否かを判定する。
【0061】
この結果、記憶部31に記憶された物体位置に障害物がある場合、物体検知装置10は、ステップS220にて、物体位置にある障害物を“静止物体”であると判別して本処理を抜ける。一方、記憶部31に記憶された物体位置に障害物がない場合、現在位置において障害物検出部32によって障害物が一度も検出されておらず、判別の対象となる障害物が存在しないと考えられる。このため、物体検知装置10は、障害物なしてとして、そのまま本処理を抜ける。
【0062】
このようにして、物体判別処理が実施された後、物体検知装置10は、図6のステップS160のマップ生成処理に移行する。物体検知装置10は、ステップS160にて、障害物マップMPを生成して、物体検知処理を抜ける。具体的には、物体検知装置10は、物体判別部34で“静止物体”と判別された障害物を障害物マップMPに登録し、物体判別部34で“移動物体”と判別された障害物を障害物マップMPに登録しない。物体検知装置10は、障害物マップMPを記憶部31に記憶する。なお、ステップS160の処理は、マップ生成部36によって行われる。
【0063】
ここで、2台の他車両Vb、Vcの間にある駐車スペースSPに自車両Vaを後ろ向きで自動駐車させる際の物体検知処理の具体例について図8および図9を参照しつつ説明する。なお、図8では、2台の他車両Vb、Vcのうち、一方の他車両Vcが出庫するタイミングで、駐車スペースSPに自車両Vaを自動駐車させるものを例示している。
【0064】
自車両Vaが図8の左側に示す位置にある状態では、2台の他車両Vb、Vcそれぞれが障害物検出部32の検出エリアRに含まれる。このため、物体検知装置10は、2台の他車両Vb、Vcそれぞれを障害物として検出するとともに、2台の他車両Vb、Vcの位置を物体位置として記憶部31に記憶する。
【0065】
この段階では、物体検知装置10は、2台の他車両Vb、Vcそれぞれを“静止物体”として判別し、この判別結果を基に、障害物マップMPを生成する。この障害物マップMPは、例えば、図9の右側に示すように、自車両Vaの周囲の領域を小領域(例えば網目状)に分割したグリッドマップに“静止物体”である2台の他車両Vb、Vcに対応する情報が付加されたものとなる。
【0066】
その後、駐車支援制御による切り返しによって自車両Vaが図8の中央に示す位置に移動すると、2台の他車両Vb、Vcそれぞれが障害物検出部32の検出エリアRから外れる。これにより、2台の他車両Vb、Vcそれぞれが障害物検出部32によって検出されなくなる。この際、2台の他車両Vb、Vcのうち、一方の他車両Vcが出庫する。
【0067】
一方の他車両Vcの出庫後、駐車支援制御によって自車両Vaが図8の右側に示す位置に移動すると、2台の他車両Vb、Vcの位置として記憶部31に記憶された物体位置が再び障害物検出部32の検出エリアRに含まれる状況となる。
【0068】
この際、一方の他車両Vcの位置として記憶部31に記憶された物体位置には、他車両Vcがない。このため、物体検知装置10は、他車両Vcを“移動物体”であると判別する。他方の他車両Vbの位置として記憶部31に記憶された物体位置には、他車両Vbがある。このため、物体検知装置10は、他車両Vbを“静止物体”であると判別する。
【0069】
その後、物体検知装置10は、上記の判別結果を基に、障害物マップMPを生成する。障害物マップMPは、例えば、図9の右側に示すように、グリッドマップに“静止物体”である他方の他車両Vbに対応する情報が付加されたものとなる。すなわち、障害物マップMPは、図9の左側に示すものから“移動物体”である一方の他車両Vbに対応する情報が削除されたものとなる。
【0070】
続いて、縁石等の低位置物体LOと他車両Vbとの間にある駐車スペースSPに自車両Vaを後ろ向きで自動駐車させる際の物体検知処理の具体例について図10および図11を参照しつつ説明する。
【0071】
自車両Vaが図10の左側に示す位置にある状態では、低位置物体LOおよび他車両Vbそれぞれが障害物検出部32の検出エリアRに含まれる。このため、物体検知装置10は、低位置物体LOおよび他車両Vbそれぞれを障害物として検出するとともに、低位置物体LOおよび他車両Vbの位置を物体位置として記憶部31に記憶する。
【0072】
この段階では、物体検知装置10は、低位置物体LOおよび他車両Vbそれぞれを“静止物体”として判別し、この判別結果を基に、障害物マップMPを生成する。この障害物マップMPは、例えば、図11の左側に示すように、グリッドマップに“静止物体”である低位置物体LOおよび他車両Vbに対応する情報が付加されたものとなる。
【0073】
そして、駐車支援制御による切り返しによって自車両Vaが図10の中央に示す位置に移動すると、低位置物体LOおよび他車両Vbそれぞれが障害物検出部32の検出エリアRから外れる。これにより、低位置物体LOおよび他車両Vbそれぞれが障害物検出部32によって検出されなくなる。
【0074】
その後、駐車支援制御によって自車両Vaが図10の右側に示す位置に移動すると、低位置物体LOおよび他車両Vbの位置として記憶部31に記憶された物体位置が再び障害物検出部32の検出エリアRに含まれる状況となる。
【0075】
この際、他車両Vbの位置として記憶部31に記憶された物体位置には、他車両Vbがある。このため、物体検知装置10は、他車両Vbを“静止物体”であると判別する。また、物体検知装置10は、低位置物体LOについては、物体判別処理を実施しない。すなわち、低位置物体LOは、障害物検出部32の検出状態によらず、“静止物体”として特定される。
【0076】
その後、物体検知装置10は、上記の判別結果等を基に、障害物マップMPを生成する。障害物マップMPは、例えば、図11の右側に示すように、グリッドマップに“静止物体”である低位置物体LOおよび他車両Vbに対応する情報が付加されたものとなる。すなわち、障害物マップMPは、図11の左側に示すものと同じものとなる。
【0077】
続いて、2台の他車両Vb、Vcの間にあり、且つ、低位置物体LOとして輪止めSTPが設置された駐車スペースSPに自車両Vaを後ろ向きで自動駐車させる際の物体検知処理の具体例について図12を参照しつつ説明する。
【0078】
自車両Vaが図12の左側に示す位置にある状態では、2台の他車両Vb、Vcそれぞれが障害物検出部32の検出エリアRに含まれる。このため、物体検知装置10は、2台の他車両Vb、Vcそれぞれを障害物として検出するとともに、2台の他車両Vb、Vcの位置を物体位置として記憶部31に記憶する。この段階では、物体検知装置10は、2台の他車両Vb、Vcそれぞれを“静止物体”として判別し、この判別結果を基に、障害物マップMPを生成する。
【0079】
そして、駐車支援制御によって自車両Vaが図12の中央に示す位置に移動すると、輪止めSTPが障害物検出部32の検出エリアRに入る。このため、物体検知装置10は、輪止めSTPを障害物として検出するとともに、輪止めSTPの位置を物体位置として記憶部31に記憶する。
【0080】
その後、駐車支援制御によって自車両Vaが図12の右側に示す位置に移動すると、図13に示すように、自車両Vaと輪止めSTPとが接近することで、障害物検出部32で輪止めSTPが検出されなくなる。
【0081】
しかし、本実施形態の物体検知装置10は、低位置物体LOについて、物体判別処理を実施しない。このため、輪止めSTPは、“移動物体”と判別されず、“静止物体”として特定される。
【0082】
以上説明した物体検知装置10は、自車両Vaの周辺の障害物の存在および障害物までの距離を障害物検出部32によって逐次検出するとともに、障害物検出部32で検出された障害物の位置を物体位置として記憶部31に記憶する。物体検知装置10は、物体位置に存在する障害物が障害物検出部32の検出エリアRから外れた後、再び障害物検出部32の検出エリアRに含まれ得る状況になった際の障害物検出部32での障害物の検出状態に基づいて障害物が“移動物体”であるかを判別する。物体検知装置10は、障害物が移動物体であるかを判別することでは、鉛直方向DRgの高さが所定値Hth以下となる障害物について“移動物体”であるかを判別しない。これによると、鉛直方向DRgの高さが所定値Hth以下となる障害物について“移動物”であるか否かを判別しないので、鉛直方向DRgの高さが所定値Hth以下となる障害物を“移動物体”として誤って判別することを抑制することができる。
【0083】
また、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0084】
(1)物体検知装置10は、障害物の鉛直方向DRgの高さを特定する高さ特定部35を備える。この高さ特定部35は、障害物検出部32の検出結果および周辺監視カメラ22で撮像される障害物の撮像画像の少なくとも一方に基づいて障害物の鉛直方向DRgの高さを特定する。これによると、高さ特定部35によって特定された障害物の鉛直方向DRgの高さに基づいて、障害物の鉛直方向DRgの高さが所定値Hth以下であるかを判定することができる。
【0085】
(2)上記の所定値Hthは、自車両Vaにおける障害物検出部32の設置高さHs以下である。これによると、自車両Vaにおける障害物検出部32の設置高さHsよりも低い障害物を“移動物体”として誤って判別することを抑制することができる。なお、所定値Hthは、例えば、一般的な車両のバンパの下面の高さ(例えば、10~30cm)とすることができる。
【0086】
(3)物体判別部34は、物体位置が障害物検出部32の検出エリアRから外れた後、再び障害物検出部32の検出エリアRに含まれ得る状況になった際に、障害物検出部32によって物体位置に障害物が検出されない場合に、障害物を“移動物体”として判別する。これによると、障害物が“移動物体”であるかを適切に判別することができる。
【0087】
(4)物体判別部34は、物体位置が障害物検出部32の検出エリアRから外れた後、再び障害物検出部32の検出エリアRに含まれ得る状況になった際に、障害物検出部32によって物体位置に障害物が検出される場合に、障害物を“静止物体”として判別する。これによると、障害物が“静止物体”であるかを適切に判別することができる。
【0088】
(5)物体検知装置10は、自車両Vaの周辺に存在する障害物と自車両Vaとの位置関係を定義する障害物マップMPを生成するマップ生成部36を備える。マップ生成部36は、物体判別部34で“静止物体”として判別された障害物を障害物マップMPに登録し、物体判別部34で“移動物体”として判別された障害物を障害物マップMPに登録しない。これによると、自車両Vaの周辺に存在する物体のうち“静止物体”を障害物として障害物マップMPへ早期に反映することができる。
【0089】
ここで、低位置物体LOは、初めに検出された段階で“静止物体”として特定されるので、物体判別部34で“移動物体”および“静止物体”のいずれであるかが判別されないものの、障害物として障害物マップMPに登録される。
【0090】
(6)物体検知装置10は、物体判別部34での判別結果を用いて駐車スペースSPへの自車両Vaの駐車を支援する駐車支援システム1に適用される。本開示の物体検知装置10によれば、“静止物体”を“移動物体”として誤って判別することが抑制される。このため、物体検知装置10を駐車支援システム1に適用することで、自車両Vaの駐車を適切に支援することが可能となる。なお、本開示の物体検知装置10は、駐車支援システム1以外にも、例えば、自動ブレーキシステムにも適用可能である。但し、この場合は、縁石や輪止め等の鉛直方向DRgの高さが小さく、車体と直に接触し難い障害物に接近する場合も自動的にブレーキが作動することになる点に留意する必要がある。
【0091】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。上述の実施形態では、物体検知装置10の詳細な構成、物体検知処理の詳細な内容、物体判別処理の詳細な内容について説明したが、これらに限定されず、これらの一部が異なっていてもよい。
【0092】
上述の実施形態の如く、物体検知装置10は、障害物検出部32の検出結果および周辺監視カメラ22で撮像される障害物の撮像画像の少なくとも一方に基づいて障害物の鉛直方向DRgの高さを特定するようになっていることが望ましいが、これに限定されない。物体検知装置10は、例えば、障害物検出部32および車載カメラ以外の専用機器によって、障害物の高さを検出するようになっていてもよい。
【0093】
上述の実施形態の如く、物体判別部34は、物体位置が障害物検出部32の検出エリアRから外れた後、再び障害物検出部32の検出エリアRに入った際に、物体位置に障害物がない場合、障害物を“移動物体”と判別することが望ましいが、これに限定されない。物体判別部34は、上記のものとは異なる手法で障害物が“移動物体”であるかを判別するようになっていてもよい。
【0094】
上述の実施形態の如く、物体判別部34は、物体位置が障害物検出部32の検出エリアRから外れた後、再び障害物検出部32の検出エリアRに入った際に、物体位置に障害物がある場合、障害物を“静止物体”と判別することが望ましいが、これに限定されない。物体判別部34は、上記のものとは異なる手法で障害物が“静止物体”であるかを判別するようになっていてもよい。
【0095】
上述の実施形態の物体検知装置10は、障害物検出部32にて初めて検出された障害物をとりあえず“静止物体”としているが、これに限定されない。物体検知装置10は、例えば、障害物検出部32にて初めて検出された障害物を“未判別物体”として障害物マップMPに登録するようになっていてもよい。
【0096】
上述の実施形態の如く、物体検知装置10は、障害物を“静止物体”および“移動物体”のいずれかに判別した後、障害物マップMPを作成することが望ましいが、これに限定されない。物体検知装置10は、例えば、障害物マップMPの作成の代わりに、障害物の判別結果を表示部41および音声出力部42の少なくとも一方を通じて利用者に通知するようになっていてもよい。
【0097】
上述の実施形態では、自車両Vaを後ろ向きで駐車スペースSPに駐車する場合の自車両Vaの周辺の物体が“移動物体”および“静止物体”のいずれであるかを判別する例ついて説明したが、物体検知装置10は、これに限定されない。物体検知装置10は、自車両Vaを前向きで駐車スペースSPに駐車する場合の自車両Vaの周辺の障害物が“移動物体”および“静止物体”のいずれであるかを判別するようになっていてもよい。
【0098】
上述の実施形態では、本開示の物体検知装置10を駐車支援システム1に組み込んだものを例示したが、これに限らず、物体検知装置10は、例えば、衝突防止システム等の他のシステムに組み込むことも可能である。すなわち、物体検知装置10は、上述したもの以外にも適用可能である。
【0099】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0100】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0101】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【0102】
上述の実施形態において、センサから車両の外部環境情報を取得することが記載されている場合、そのセンサを廃し、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報を受信することも可能である。あるいは、そのセンサを廃し、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報に関連する関連情報を取得し、取得した関連情報からその外部環境情報を推定することも可能である。
【0103】
本開示の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせで構成された一つ以上の専用コンピュータで、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0104】
10 物体検知装置
31 記憶部
32 障害物検出部
33 位置記憶部
34 物体判別部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13