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特許7567725物体検知装置、物体検知方法、および物体検知プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】物体検知装置、物体検知方法、および物体検知プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 15/931 20200101AFI20241008BHJP
   G01S 7/526 20060101ALI20241008BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G01S15/931
G01S7/526 M
G08G1/16 C
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021142740
(22)【出願日】2021-09-01
(65)【公開番号】P2023035700
(43)【公開日】2023-03-13
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 岳人
(72)【発明者】
【氏名】峠田 篤人
(72)【発明者】
【氏名】新 康孝
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-202050(JP,A)
【文献】特開2017-124699(JP,A)
【文献】特開2008-152387(JP,A)
【文献】特開2012-088061(JP,A)
【文献】特開平07-128445(JP,A)
【文献】国際公開第2016/035287(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 -17/95
G08G 1/16
G60R21/0134
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両(C)の外部に向けて送信された探査波の物体(B)による反射波を受信するように前記自車両に搭載された複数の物体検知センサ(3)を用いて、前記自車両の周囲に存在する前記物体を検知するように構成された、物体検知装置(2)であって、
物体検知動作の実行条件の成否を判定する、条件判定部(21)と、
前記条件判定部により前記実行条件の成立が判定され、且つ、前記物体検知センサにおける前記反射波とは異なる外来ノイズの受信状態が所定の判定基準を超える高ノイズ状態が成立した場合に、前記高ノイズ状態により物体検知機能に制限が生じていることに対応するノイズ関連報知を実行する、ノイズ処理部(25)と、
を備え、
前記自車両の走行モードが前進走行モードである場合よりも後退走行モードである場合の方が、前記ノイズ関連報知が実行されやすくなるように構成された、
物体検知装置。
【請求項2】
前記ノイズ処理部は、前記走行モードが前記前進走行モードである場合には前記ノイズ関連報知を不実行とする一方、前記走行モードが前記後退走行モードである場合には前記ノイズ関連報知を実行する、
請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項3】
前記外来ノイズの前記受信状態に対応する特性値を取得する、ノイズ状態取得部(23)と、
前記特性値が前記判定基準に対応する判定閾値を超えた場合に、前記高ノイズ状態の成立を判定する、ノイズ状態判定部(24)と、
をさらに備え、
前記ノイズ状態判定部は、前記走行モードが前記前進走行モードである場合の方が、前記走行モードが前記後退走行モードである場合よりも、前記判定閾値を高くする、
請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項4】
前記ノイズ状態取得部は、前記特性値として、前記外来ノイズの受信頻度、または、当該受信頻度が所定の頻度閾値を超える状態の継続時間もしくは継続回数を取得する、
請求項3に記載の物体検知装置。
【請求項5】
前記ノイズ状態取得部は、前記特性値として、前記探査波の送信から前記反射波の受信までの伝播時間もしくは当該伝播時間により算出される測距距離である距離情報の、移動平均からの差の分散、または、当該分散が所定の閾値を超える状態の継続時間もしくは継続回数を取得する、
請求項3に記載の物体検知装置。
【請求項6】
自車両(C)の外部に向けて送信された探査波の物体(B)による反射波を受信するように前記自車両に搭載された複数の物体検知センサ(3)を用いて、前記自車両の周囲に存在する前記物体を検知するように構成された、物体検知装置(2)であって、
物体検知動作の実行条件の成否を判定する、条件判定部(21)と、
前記物体検知センサにおける前記反射波とは異なる外来ノイズの受信状態に対応する特性値を取得する、ノイズ状態取得部(23)と、
前記特性値が所定の判定基準に対応する判定閾値を超えた場合に、前記外来ノイズの受信状態が前記判定基準を超える高ノイズ状態の成立を判定する、ノイズ状態判定部(24)と、
前記条件判定部により前記実行条件の成立が判定され、且つ、前記ノイズ状態判定部により前記高ノイズ状態の成立が判定された場合に、前記高ノイズ状態により物体検知機能に制限が生じていることに対応するノイズ関連報知を実行する、ノイズ処理部(25)と、
を備え、
前記物体検知センサは、超音波センサであって、
前記ノイズ状態判定部にて、前記自車両における前部に設けられた前記物体検知センサであるフロントセンサ(3A、3B、3C、3D)についての前記高ノイズ状態の成否を判定する場合の方が、前記自車両における後部に設けられた前記物体検知センサであるリアセンサ(3E、3F、3G、3H)についての前記高ノイズ状態の成否を判定する場合よりも、前記判定閾値として、より高い値を用いることで、前記フロントセンサよりも前記リアセンサの方の前記ノイズ関連報知が実行されやすくなるように構成された、
物体検知装置。
【請求項7】
前記ノイズ状態取得部は、前記特性値として、前記外来ノイズの受信頻度、または、当該受信頻度が所定の頻度閾値を超える状態の継続時間もしくは継続回数を取得する、
請求項6に記載の物体検知装置。
【請求項8】
前記ノイズ状態取得部は、前記特性値として、前記探査波の送信から前記反射波の受信までの伝播時間もしくは当該伝播時間により算出される測距距離である距離情報の、移動平均からの差の分散、または、当該分散が所定の閾値を超える状態の継続時間もしくは継続回数を取得する、
請求項6に記載の物体検知装置。
【請求項9】
前記ノイズ処理部は、前記自車両に搭載された表示装置および/または音声出力装置であるHMI装置(5)を用いて、前記ノイズ関連報知を実行する、
請求項1~8のいずれか1つに記載の物体検知装置。
【請求項10】
自車両(C)の外部に向けて送信された探査波の物体(B)による反射波を受信するように前記自車両に搭載された複数の物体検知センサ(3)を用いて前記自車両の周囲に存在する前記物体を検知するように構成された物体検知装置(2)により実行される、物体検知プログラムであって、
前記物体検知装置が実行する処理は、
物体検知動作の実行条件の成否を判定する、条件判定処理(S402;S702)と、
前記条件判定処理により前記実行条件の成立が判定され、且つ、前記物体検知センサにおける前記反射波とは異なる外来ノイズの受信状態が所定の判定基準を超える高ノイズ状態が成立した場合に、前記高ノイズ状態により物体検知機能に制限が生じていることに対応するノイズ関連報知を実行する、ノイズ処理(S408;S708)と、
を含み、
前記自車両の走行モードが前進走行モードである場合よりも後退走行モードである場合の方が、前記ノイズ関連報知を実行しやすくした、
物体検知プログラム。
【請求項11】
前記ノイズ処理は、前記走行モードが前記前進走行モードである場合には前記ノイズ関連報知を不実行とする一方、前記走行モードが前記後退走行モードである場合には前記ノイズ関連報知を実行する、
請求項10に記載の物体検知プログラム。
【請求項12】
前記外来ノイズの前記受信状態に対応する特性値を取得する、ノイズ状態取得処理(S404;S704)と、
前記特性値が前記判定基準に対応する判定閾値を超えた場合に、前記高ノイズ状態の成立を判定する、ノイズ状態判定処理(S406;S706)と、
をさらに含み、
前記ノイズ状態判定処理は、前記走行モードが前記前進走行モードである場合の方が、前記走行モードが前記後退走行モードである場合よりも、前記判定閾値を高くする、
請求項10に記載の物体検知プログラム。
【請求項13】
前記ノイズ状態取得処理は、前記特性値として、前記外来ノイズの受信頻度、または、当該受信頻度が所定の頻度閾値を超える状態の継続時間もしくは継続回数を取得する、
請求項12に記載の物体検知プログラム。
【請求項14】
前記ノイズ状態取得処理は、前記特性値として、前記探査波の送信から前記反射波の受信までの伝播時間もしくは当該伝播時間により算出される測距距離である距離情報の、移動平均からの差の分散、または、当該分散が所定の閾値を超える状態の継続時間もしくは継続回数を取得する、
請求項12に記載の物体検知プログラム。
【請求項15】
自車両(C)の外部に向けて送信された探査波の物体(B)による反射波を受信するように前記自車両に搭載された複数の物体検知センサ(3)を用いて前記自車両の周囲に存在する前記物体を検知するように構成された物体検知装置(2)により実行される、物体検知プログラムであって、
前記物体検知装置が実行する処理は、
物体検知動作の実行条件の成否を判定する、条件判定処理(S402;S702)と、
前記物体検知センサにおける前記反射波とは異なる外来ノイズの受信状態に対応する特性値を取得する、ノイズ状態取得処理(S404;S704)と、
前記特性値が所定の判定基準に対応する判定閾値を超えた場合に、前記外来ノイズの受信状態が前記判定基準を超える高ノイズ状態の成立を判定する、ノイズ状態判定処理(S406;S706)と、
前記条件判定処理により前記実行条件の成立が判定され、且つ、前記ノイズ状態判定処理により前記高ノイズ状態の成立が判定された場合に、前記高ノイズ状態により物体検知機能に制限が生じていることに対応するノイズ関連報知を実行する、ノイズ処理(S408;S708)と、
を含み、
前記物体検知センサは、超音波センサであって、
前記ノイズ状態判定処理にて、前記自車両における前部に設けられた前記物体検知センサであるフロントセンサ(3A、3B、3C、3D)についての前記高ノイズ状態の成否を判定する場合の方が、前記自車両における後部に設けられた前記物体検知センサであるリアセンサ(3E、3F、3G、3H)についての前記高ノイズ状態の成否を判定する場合よりも、前記判定閾値として、より高い値を用いることで、前記フロントセンサよりも前記リアセンサの方が、前記ノイズ関連報知を実行しやすくした、
物体検知プログラム。
【請求項16】
前記ノイズ状態取得処理は、前記特性値として、前記外来ノイズの受信頻度、または、当該受信頻度が所定の頻度閾値を超える状態の継続時間もしくは継続回数を取得する、
請求項15に記載の物体検知プログラム。
【請求項17】
前記ノイズ状態取得処理は、前記特性値として、前記探査波の送信から前記反射波の受信までの伝播時間もしくは当該伝播時間により算出される測距距離である距離情報の、移動平均からの差の分散、または、当該分散が所定の閾値を超える状態の継続時間もしくは継続回数を取得する、
請求項15に記載の物体検知プログラム。
【請求項18】
前記ノイズ処理は、前記自車両に搭載された表示装置および/または音声出力装置であるHMI装置(5)を用いて、前記ノイズ関連報知を実行する、
請求項10~17のいずれか1つに記載の物体検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検知センサを用いて自車両の周囲に存在する物体を検知するように構成された、物体検知装置に関する。また、本発明は、物体検知センサを用いて自車両の周囲に存在する物体を検知する、物体検知方法および物体検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、超音波センサ等の測距センサを用いて車両の周囲に存在する障害物を検知する障害物検知装置において、耐ノイズ性を向上し、誤検知を防止する技術を開示する。具体的には、車両には2つの超音波センサが搭載され、各超音波センサは外来ノイズを検知する機能を有する。障害物検知装置は、超音波を送信する前に各超音波センサに外来ノイズを検知させ、その後、一方の超音波センサに超音波を送信させる。2つの超音波センサの1つでも外来ノイズを検知した場合、障害物検知装置は、外来ノイズを検知していない超音波センサを含む全ての超音波センサの検知情報を無効とする。外来ノイズを検知していない場合、障害物検知装置は、2つの超音波センサの両方とも閾値を越える反射波を受信した場合に障害物検知有りと判断し、それ以外は障害物非検知と判断する。
【0003】
特許文献1に記載の技術によれば、2つの超音波センサの1つでも外来ノイズを検知した場合、両方の超音波センサの検知情報を無効とするので、外来ノイズを検知した超音波センサの検知情報だけを無効とする場合に比べて、耐ノイズ性を向上できる。また、両方の超音波センサが障害物検知したときのみ警告が行われるので、外来ノイズや路面上物体によって警告が行われるのを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6089585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
物体検知センサを用いて自車両の周囲に存在する物体を検知する技術において、外来ノイズにより物体検知機能が制限された場合に、その旨をユーザに通知するニーズが生じている。しかしながら、搭載位置や使用シーン等の使用状況にかかわらず一律にノイズ判定を敏感に設定すると、ノイズ判定の発生頻度が高くなり、かえってユーザの利便性が低下することとなり得る。
【0006】
本発明は、上記に例示した事情等に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、例えば、外来ノイズにより物体検知機能が制限されたことを、利便性の低下を抑制しつつ、ユーザに良好に通知することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る物体検知装置(2)は、複数の物体検知センサ(3)を用いて、自車両(C)の周囲に存在する前記物体を検知するように構成されている。前記物体検知センサは、前記自車両の外部に向けて送信された探査波の物体(B)による反射波を受信するように、前記自車両に搭載される。
請求項1に記載の物体検知装置は、
物体検知動作の実行条件の成否を判定する、条件判定部(21)と、
前記条件判定部により前記実行条件の成立が判定され、且つ、前記物体検知センサにおける前記反射波とは異なる外来ノイズの受信状態が所定の判定基準を超える高ノイズ状態が成立した場合に、前記高ノイズ状態により物体検知機能に制限が生じていることに対応するノイズ関連報知を実行する、ノイズ処理部(25)と、
を備え、
前記自車両の走行モードが前進走行モードである場合よりも後退走行モードである場合の方が、前記ノイズ関連報知が実行されやすくなるように構成されている。
請求項6に記載の物体検知装置は、
物体検知動作の実行条件の成否を判定する、条件判定部(21)と、
前記物体検知センサにおける前記反射波とは異なる外来ノイズの受信状態に対応する特性値を取得する、ノイズ状態取得部(23)と、
前記特性値が所定の判定基準に対応する判定閾値を超えた場合に、前記外来ノイズの受信状態が前記判定基準を超える高ノイズ状態の成立を判定する、ノイズ状態判定部(24)と、
前記条件判定部により前記実行条件の成立が判定され、且つ、前記ノイズ状態判定部により前記高ノイズ状態の成立が判定された場合に、前記高ノイズ状態により物体検知機能に制限が生じていることに対応するノイズ関連報知を実行する、ノイズ処理部(25)と、
を備え、
前記物体検知センサは、超音波センサであって、
前記ノイズ状態判定部にて、前記自車両における前部に設けられた前記物体検知センサであるフロントセンサ(3A、3B、3C、3D)についての前記高ノイズ状態の成否を判定する場合の方が、前記自車両における後部に設けられた前記物体検知センサであるリアセンサ(3E、3F、3G、3H)についての前記高ノイズ状態の成否を判定する場合よりも、前記判定閾値として、より高い値を用いることで、前記フロントセンサよりも前記リアセンサの方の前記ノイズ関連報知が実行されやすくなるように構成されている。
本開示に係る物体検知プログラムは、前記物体検知装置により実行されるプログラムである。
請求項10に係る物体検知プログラムは、前記物体検知装置が実行する処理として、
物体検知動作の実行条件の成否を判定する、条件判定処理(S402;S702)と、
前記条件判定処理により前記実行条件の成立が判定され、且つ、前記物体検知センサにおける前記反射波とは異なる外来ノイズの受信状態が所定の判定基準を超える高ノイズ状態が成立した場合に、前記高ノイズ状態により物体検知機能に制限が生じていることに対応するノイズ関連報知を実行する、ノイズ処理(S408;S708)と、
を含み、
前記自車両の走行モードが前進走行モードである場合よりも後退走行モードである場合の方が、前記ノイズ関連報知を実行しやすくしている。
請求項15に係る物体検知プログラムは、前記物体検知装置が実行する処理として、
物体検知動作の実行条件の成否を判定する、条件判定処理(S402;S702)と、
前記物体検知センサにおける前記反射波とは異なる外来ノイズの受信状態に対応する特性値を取得する、ノイズ状態取得処理(S404;S704)と、
前記特性値が所定の判定基準に対応する判定閾値を超えた場合に、前記外来ノイズの受信状態が前記判定基準を超える高ノイズ状態の成立を判定する、ノイズ状態判定処理(S406;S706)と、
前記条件判定処理により前記実行条件の成立が判定され、且つ、前記ノイズ状態判定処理により前記高ノイズ状態の成立が判定された場合に、前記高ノイズ状態により物体検知機能に制限が生じていることに対応するノイズ関連報知を実行する、ノイズ処理(S408;S708)と、
を含み、
前記物体検知センサは、超音波センサであって、
前記ノイズ状態判定処理にて、前記自車両における前部に設けられた前記物体検知センサであるフロントセンサ(3A、3B、3C、3D)についての前記高ノイズ状態の成否を判定する場合の方が、前記自車両における後部に設けられた前記物体検知センサであるリアセンサ(3E、3F、3G、3H)についての前記高ノイズ状態の成否を判定する場合よりも、前記判定閾値として、より高い値を用いることで、前記フロントセンサよりも前記リアセンサの方が、前記ノイズ関連報知を実行しやすくしている。
【0008】
なお、出願書類の各欄において、各要素に括弧付きの参照符号が付される場合がある。しかしながら、かかる参照符号は、同要素と後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を、単に示すものにすぎない。よって、本発明は、上記の参照符号の記載によって、何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る物体検知装置を含む車載システムを搭載した自車両の概略構成を示す平面図である。
図2図1に示された車載システムにおける概略的な機能構成を示すブロック図である。
図3図2に示された車載システムに備えられた複数の物体検知センサの各々における動作タイミングを示すタイムチャートである。
図4図1に示された車載システムの第一の動作例の概要を示すフローチャートである。
図5図1に示された車載システムの第一の動作例の概要を示すフローチャートである。
図6図1に示された車載システムの第二の動作例の概要を示すグラフである。
図7図1に示された車載システムの第二の動作例の概要を示すフローチャートである。
図8図1に示された車載システムの第二の動作例の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、一つの実施形態に対して適用可能な各種の変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中に挿入されると当該実施形態の理解が妨げられるおそれがある。このため、変形例は、実施形態の説明の後にまとめて記載する。
【0011】
(車載システム構成)
図1を参照すると、車載システム1は、移動体としての車両Cに搭載されている。車両Cは、地上すなわち路上を走行する、いわゆる四輪自動車であって、平面視にて略矩形状に形成された箱状の車体C1を備えている。「平面視」における車両Cの各部分の形状は、車両Cを走行可能に水平面に安定的に載置した状態で当該部分を重力作用方向と同一方向の視線で見た場合の形状を指すものである。本実施形態に係る車載システム1を搭載する車両Cを、以下「自車両」と称する。
【0012】
以下、平面視にて、自車両の車幅方向における中心を通り、且つ自車両における車両全長方向と平行な仮想直線を、車幅中心線LCと称する。なお、車幅中心線LCは、車両中心線とも称され得る。車両全長方向は、車幅方向と直交し且つ車高方向と直交する方向である。車高方向は、自車両の車高を規定する方向であって、自車両を走行可能に水平面に安定的に載置した場合の重力作用方向と平行な方向である。また、「前」「後」「左」「右」「上」を、図1中にて矢印で示された通りに定義する。すなわち、車両全長方向は、前後方向と同義である。また、車幅方向は、左右方向と同義である。
【0013】
車載システム1は、物体検知装置としての物体検知ECU2を備えている。ECUはElectronic Control UnitあるいはElectric Control Unitの略である。物体検知ECU2は、車体C1の内部に収容されている。本実施形態においては、物体検知ECU2は、いわゆる車載マイクロコンピュータであって、プロセッサ2aとメモリ2bとを備えている。プロセッサ2aは、CPUやMPUにより構成されている。メモリ2bは、ROM、RAM、不揮発性リライタブルメモリ、等の各種の非遷移的実体的記憶媒体のうち、少なくともROMまたは不揮発性リライタブルメモリを備えている。不揮発性リライタブルメモリは、電源投入中は情報を書き換え可能である一方で電源遮断中は情報を書き換え不能に保持する記憶装置であって、例えばフラッシュROM等である。物体検知ECU2は、メモリ2bに格納されたプログラムを読み出して実行することで、車載システム1の動作の全体を制御するように構成されている。
【0014】
物体検知ECU2は、複数の物体検知センサ3を用いて、自車両の周囲に存在する物体Bを検知するように構成されている。物体検知センサ3は、自車両の外部に向けて送信された探査波の物体Bによる反射波を受信するように、自車両に搭載されている。本実施形態においては、物体検知センサ3は、いわゆる測距センサであって、距離情報を取得可能に構成されている。「距離情報」は、探査波の送信から反射波の受信までの間の伝播時間、あるいは、当該伝播時間により算出される測距距離すなわち物体検知センサ3と物体Bとの間の距離推定値である。
【0015】
具体的には、物体検知センサ3は、いわゆる超音波センサであって、外部に向けて放射された超音波である探査波の物体Bによる反射波を受信することで、物体Bの有無および物体Bとの距離を検知するように構成されている。本実施形態においては、物体検知センサ3は、送受信一体型の構成を有している。すなわち、物体検知センサ3は、外部に向けて探査波を放射する送信器としての機能、および、探査波の物体Bによる反射波を含む受信波を受信する受信器としての機能を具備している。
【0016】
自車両の車体C1における前部に設けられたフロントバンパーC2には、物体検知センサ3としての、第一フロントセンサ3A、第二フロントセンサ3B、第三フロントセンサ3C、および第四フロントセンサ3Dが装着されている。同様に、自車両の車体C1における後部に設けられたリアバンパーC3には、物体検知センサ3としての、第一リアセンサ3E、第二リアセンサ3F、第三リアセンサ3G、および第四リアセンサ3Hが装着されている。
【0017】
第一フロントセンサ3Aは、自車両の左前方に向けて送信波を送信するように、フロントバンパーC2における左端部近辺に設けられている。第二フロントセンサ3Bは、自車両の略前方に向けて送信波を送信するように、車幅方向について第一フロントセンサ3Aと車幅中心線LCとの間に配置されている。第三フロントセンサ3Cは、車幅中心線LCを挟んで第二フロントセンサ3Bと略対称な位置に配置されている。第三フロントセンサ3Cは、自車両の略前方に向けて送信波を送信するように、車幅方向について車幅中心線LCと第四フロントセンサ3Dとの間に配置されている。第四フロントセンサ3Dは、車幅中心線LCを挟んで第一フロントセンサ3Aと略対称な位置に配置されている。第四フロントセンサ3Dは、自車両の右前方に向けて送信波を送信するように、フロントバンパーC2における右端部近辺に設けられている。
【0018】
第一フロントセンサ3A、第二フロントセンサ3B、第三フロントセンサ3C、および第四フロントセンサ3Dは、直接波および間接波を受信可能に設けられている。ここで、「直接波」および「間接波」を、以下のように定義する。一つのバンパー(例えばフロントバンパーC2)に装着され車幅方向に沿って配列された複数の物体検知センサ3(例えば第一フロントセンサ3A~第四フロントセンサ3D)のうちの一つを「第一測距センサ」と称し、他の一つを「第二測距センサ」と称する。第一測距センサから送信された探査波の物体Bによる反射波に起因する、第一測距センサにおける受信波を、「直接波」と称する。直接波は、典型的には、第一測距センサから送信された探査波の物体Bによる反射波を第一測距センサ自身が受信波として検知したときの当該受信波である。すなわち、直接波は、探査波を送信した物体検知センサ3と、当該探査波の物体Bによる反射波を受信波として検知した物体検知センサ3とが、同一である場合の、当該受信波である。これに対し、第一測距センサから送信された探査波の物体Bによる反射波に起因する、第二測距センサにおける受信波を、「間接波」と称する。間接波は、典型的には、第一測距センサから送信された探査波の物体Bによる反射波を第二測距センサが受信波として検知したときの当該受信波である。すなわち、間接波とは、探査波を送信した物体検知センサ3と、当該探査波の物体Bによる反射波を受信波として検知した物体検知センサ3とが、異なる場合の、当該受信波である。すなわち、第一フロントセンサ3A、第二フロントセンサ3B、第三フロントセンサ3C、および第四フロントセンサ3Dは、これらのうちの一つが送信した探査波の反射波を受信可能に設けられている。
【0019】
第一リアセンサ3Eは、自車両の左後方に向けて送信波を送信するように、リアバンパーC3における左端部近辺に設けられている。第二リアセンサ3Fは、自車両の略後方に向けて送信波を送信するように、車幅方向について第一リアセンサ3Eと車幅中心線LCとの間に配置されている。第三リアセンサ3Gは、車幅中心線LCを挟んで第二リアセンサ3Fと略対称な位置に配置されている。第三リアセンサ3Gは、自車両の略後方に向けて送信波を送信するように、車幅方向について車幅中心線LCと第四リアセンサ3Hとの間に配置されている。第四リアセンサ3Hは、車幅中心線LCを挟んで第一リアセンサ3Eと略対称な位置に配置されている。第四リアセンサ3Hは、自車両の右後方に向けて送信波を送信するように、リアバンパーC3における右端部近辺に設けられている。第一リアセンサ3E、第二リアセンサ3F、第三リアセンサ3G、および第四リアセンサ3Hは、直接波および間接波を受信可能に設けられている。
【0020】
以下図1に加えて図2を参照すると、車載システム1は、物体検知ECU2および物体検知センサ3に加えて、車両状態センサ4と、HMI装置5と、運転制御装置6とを備えている。HMIはヒューマン・マシン・インタフェースの略である。なお、図示の簡略化のため、図1に示された、物体検知センサ3としての第一フロントセンサ3A~第四リアセンサ3Hは、図2においては、物体検知センサ3として一纏めに示されている。物体検知ECU2は、車載の情報通信回線を介して、物体検知センサ3、車両状態センサ4、HMI装置5、および運転制御装置6と、信号あるいは情報を授受可能に接続されている。
【0021】
車両状態センサ4は、自車両の運転状態に関連する諸量に対応する情報あるいは信号を取得して、物体検知ECU2に出力するように設けられている。「運転状態に関連する諸量」は、例えば、アクセル操作量、ブレーキ操作量、シフトポジション、操舵角、等の、運転操作状態に関連する諸量を含む。また、「運転状態に関連する諸量」は、例えば、車速、角速度、前後方向加速度、左右方向加速度、等の、自車両の挙動に関連する物理量を含む。すなわち、車両状態センサ4は、シフトポジションセンサ、車速センサ、アクセル開度センサ、操舵角センサ、角速度センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ、等の、車両運転制御に必要な周知のセンサ類を、図示および説明の簡略化のために総称したものである。
【0022】
HMI装置5は、自車両に搭載された表示装置および/または音声出力装置を備え、ドライバ等の乗員に対して各種の情報を提供するように構成されている。具体的には、HMI装置5は、計器や表示機器等の表示装置と、スピーカ等の音声出力装置と、ドライバ等の乗員からの入力を受け付ける入力デバイスとを備えている。
【0023】
運転制御装置6は、自車両の縦方向および/または横方向の運動制御を実行するように構成されている。すなわち、運転制御装置6は、駆動制御装置、制動制御装置、操舵制御装置、等の、自車両の縦方向および/または横方向の運動制御を実行するための構成を、図示および説明の簡略化のために総称したものである。
【0024】
このように、車載システム1は、物体検知センサ3を用いて自車両の周囲の物体Bすなわち障害物を検知し、その検知結果に基づいて各種の車両制御動作(例えば、衝突回避動作、駐車支援動作、等)を実行するように構成されている。また、車載システム1は、障害物検知結果やこれに伴う車両制御動作に関する、報知動作や警告動作を、HMI装置5により実行するように構成されている。
【0025】
(物体検知装置:第一実施形態)
物体検知ECU2は、メモリ2bに格納されたプログラムを読み出して起動することで、物体検知動作を実行するように構成されている。物体検知ECU2は、プログラムの実行により車載マイクロコンピュータ上に実現される機能構成として、条件判定部21と、受信結果取得部22と、ノイズ状態取得部23と、ノイズ状態判定部24と、ノイズ処理部25と、物体検知処理部26とを有している。以下、本実施形態に係る物体検知ECU2における各機能構成について説明する。
【0026】
条件判定部21は、物体検知動作の実行条件の成否を判定するようになっている。「実行条件」は、例えば、シフトポジションが後退を含む走行ポジションであること(すなわちPレンジやNレンジではないこと)、および、車速が所定の低速域であることを含む。「実行条件」は、物体検知センサ3の動作条件とも称され得る。受信結果取得部22は、物体検知動作の実行条件が成立して物体検知センサ3にて送受信動作が実行された場合に、物体検知センサ3による受信波の受信結果を、当該物体検知センサ3から取得すなわち受信するようになっている。また、受信結果取得部22は、取得した複数の物体検知センサ3の各々における受信結果を、所定期間あるいは所定容量分、保持する(すなわちRAMまたは不揮発性リライタブルメモリに格納する)ようになっている。
【0027】
ノイズ状態取得部23は、受信結果取得部22にて取得した受信結果に基づいて、外来ノイズの受信状態に対応する特性値を取得すなわち算出するようになっている。ここで、「外来ノイズ」は、自車両から送信された探査波の物体Bによる反射波以外の超音波受信によるノイズであって、他車両から送信された探査波や、トラックのエアブレーキによって発生する超音波等を含む。「特性値」は、物体検知センサ3にて受信した超音波である受信波における、外来ノイズの存在状態に対応する値である。具体的には、「特性値」は、例えば、外来ノイズの受信頻度である。「受信頻度」は、探査波の送信直前に設けられたノイズモニタ期間にて外来ノイズを受信した頻度である。より詳細には、「受信頻度」は、ノイズモニタ期間にて外来ノイズを1回でも受信した場合を1カウントとした場合のカウント数である。あるいは、「特性値」は、例えば、外来ノイズの受信頻度が所定の頻度閾値を超える状態の継続時間または継続回数である。
【0028】
ノイズ状態判定部24は、外来ノイズの受信状態が所定の判定基準を超える高ノイズ状態が成立するか否かを判定するようになっている。具体的には、ノイズ状態判定部24は、特性値が判定基準に対応する判定閾値を超えた場合に、物体検知センサ3における高ノイズ状態の成立を判定するようになっている。本実施形態においては、判定閾値は、走行モードが前進走行モードである場合の方が、走行モードが後退走行モードである場合よりも高い値に設定されている。すなわち、ノイズ状態判定部24は、前進走行モードの方が後退走行モードよりも判定閾値を高くするようになっている。ここで、「前進走行モード」とは、シフトポジションが、走行ポジションのうちの後退以外のポジション(例えばDレンジ)である状態をいうものとする。これに対し、「後退走行モード」とは、シフトポジションが後退ポジション(すなわちRレンジ)である状態をいうものとする。
【0029】
ノイズ処理部25は、ノイズ状態判定部24により高ノイズ状態の成立が判定された場合に、高ノイズ状態により物体検知機能に制限が生じていることに対応するノイズ関連報知を実行するようになっている。すなわち、ノイズ処理部25は、条件判定部21により物体検知動作の実行条件の成立が判定され、且つ、高ノイズ状態の判定が成立した場合に、HMI装置5を用いてノイズ関連報知を実行するようになっている。そして、本実施形態においては、物体検知ECU2は、上述のように高ノイズ状態の判定閾値を設定することで、自車両の走行モードが前進走行モードである場合よりも後退走行モードである場合の方が、ノイズ関連報知が実行されやすくなるように構成されている。
【0030】
物体検知処理部26は、条件判定部21により物体検知動作の実行条件の成立が判定され、且つ、高ノイズ状態の判定が不成立の場合に、受信波に基づいて、物体Bの有無や物体Bとの距離を検知するようになっている。また、物体検知処理部26は、物体Bの検知結果を、HMI装置5を用いてドライバ等の乗員に報知するとともに、運転制御装置6に出力するようになっている。
【0031】
(動作概要)
以下、本実施形態に係る物体検知ECU2の動作概要、ならびに、かかる物体検知ECU2により実行される物体検知方法および物体検知プログラムの概要について、これらにより奏される効果とともに、各図面を参照しつつ説明する。以下、本実施形態に係る物体検知ECU2と、これにより実行される物体検知方法および物体検知プログラムとを、「本実施形態」と総称する。
【0032】
物体検知ECU2は、物体検知動作の実行条件の成立中、所定周期(例えば100msec周期)で、物体検知動作を繰り返し実行する。具体的には、前進走行モードにおいて低速走行中、第一フロントセンサ3A~第四フロントセンサ3Dのうちの一つから探査波を送信し、第一フロントセンサ3A~第四フロントセンサ3Dの各々にて反射波を受信する。同様に、後退走行モードにおいて低速走行中、第一リアセンサ3E~第四リアセンサ3Hのうちの一つから探査波を送信し、第一リアセンサ3E~第四リアセンサ3Hの各々にて反射波を受信する。そして、直接波の距離情報と間接波の距離情報とを用いた三角測量に基づいて、物体Bの自車両に対する相対位置を算出することが可能である。探査波の送信元、すなわち、探査波を送信する物体検知センサ3は、所定周期で切り替えられる。
【0033】
図3は、所定周期で物体検知動作を繰り返す様子を示す。図3において、FRは第四フロントセンサ3Dを示し、FRCは第三フロントセンサ3Cを示し、FLCは第二フロントセンサ3Bを示し、FLは第一フロントセンサ3Aを示す。また、RRは第四リアセンサ3Hを示し、RRCは第三リアセンサ3Gを示し、RLCは第二リアセンサ3Fを示し、RLは第一リアセンサ3Eを示す。また、タイムチャート中において、「N」はノイズモニタ期間を示し、「R」は受信期間を示し、「T/R」は送受信期間を示す。
【0034】
図3に示されているように、前進走行モードにおいて低速走行中に物体検知動作が開始されると、まず、第二フロントセンサ3B(すなわち図3におけるFLC)にて探査波が送信される。探査波の送信元ではない、第一フロントセンサ3A、第三フロントセンサ3C、および第四フロントセンサ3Dにおいては、探査波の送信時刻から所定期間tr、反射波の受信のための受信処理が行われる。一方、探査波が送信された第二フロントセンサ3Bにおいては、探査波の送信時刻から残響が充分収束するまでの待機期間が経過するまで受信処理が待機され、待機期間経過後に直接波の受信が可能となる。探査波の送信元は、第二フロントセンサ3B→第三フロントセンサ3C→第一フロントセンサ3Aおよび第四フロントセンサ3D→第二フロントセンサ3B…のように順に切り替えられる。送信元の切り替え周期Tcは上記の「所定周期」である。そして、サイクル周期Ts(例えば500msec)毎に、一つのバンパーに装着された複数の物体検知センサ3(例えばフロントバンパーC2に装着された第一フロントセンサ3A~第四フロントセンサ3D)の各々を送信元とする物体検知動作が実行される。同様に、後退走行モードにおいて低速走行中、探査波の送信元は、第二リアセンサ3F→第三リアセンサ3G→第一リアセンサ3Eおよび第四リアセンサ3H→第二リアセンサ3F…のように順に切り替えられる。
【0035】
図3に示されているように、探査波の送信時刻の直前に、送受信用(すなわち図中「T/R」)および受信用(すなわち図中「R」)の物体検知センサ3の各々において、ノイズモニタ期間tnが設けられる。ノイズモニタ期間tnにおいては、自車両に搭載された複数の物体検知センサ3のうちのいずれにおいても、探査波は送信されていない。また、ノイズモニタ期間tnは、その直前に送信された探査波の、所定の物体検知範囲(例えば10m)内に存在する物体Bからの反射波が到達する時間帯でもない。このため、ノイズモニタ期間tnにて受信された、探査波の周波数を含む所定の周波数帯域内の超音波は、外来ノイズであることとなる。
【0036】
そこで、ノイズ状態取得部23は、ノイズモニタ期間tnにおける外来ノイズの受信状態を取得する。そして、ノイズ状態判定部24は、外来ノイズの受信状態が所定の判定基準を超える高ノイズ状態が成立するか否かを判定する。例えば、ノイズ状態取得部23は、外来ノイズの受信頻度を取得する。具体的には、ノイズ状態取得部23は、ノイズモニタ期間tnにて外来ノイズを1回でも受信した場合を1カウントとした場合のカウント数を、複数の物体検知センサ3の各々について計数する。そして、ノイズ状態判定部24は、過去k回のノイズモニタ期間tnのうちのk1回以上で外来ノイズが検知された場合、高ノイズ状態の成立を判定する。あるいは、例えば、ノイズ状態判定部24は、過去k回のノイズモニタ期間tnのうちのk1回以上で外来ノイズが検知された場合、ノイズフラグをセットする。そして、ノイズ状態判定部24は、ノイズフラグがセットされた状態が所定の時間あるいは回数継続した場合、高ノイズ状態の成立を判定する。ノイズ処理部25は、ノイズ状態判定部24により高ノイズ状態の成立が判定された場合に、HMI装置5を用いてノイズ関連報知を実行する。
【0037】
ところで、主として第一フロントセンサ3A~第四フロントセンサ3Dの使用シーンである前進走行モードは、主として第一リアセンサ3E~第四リアセンサ3Hの使用シーンである後退走行モードよりも、使用頻度が高い。また、前進走行モードにおいては、対向車等の他車両とのすれ違いシーン等において、当該他車両との間での混信が発生しやすい。一方、後退走行モードは、駐車シーンや後退出庫シーン等、使用シーンが限定される。
【0038】
さらに、前進走行モードにおいては、ユーザすなわちドライバは、自車両の前方の状況を視認することが比較的容易である。よって、高ノイズ状態により物体検知機能に制限が生じていることを、いちいちドライバに報知すると、かえってドライバが煩わしさを感じることがあり得る。これに対し、後退走行モードにおいては、ドライバは、自車両の後方の状況を視認することが比較的困難である。よって、高ノイズ状態により物体検知機能に制限が生じている場合、これをドライバに報知することが好ましい。
【0039】
このため、前進走行モードにおいては、過剰な高ノイズ状態の判定や報知を回避することが好ましい。一方、後退走行モードにおいては、高ノイズ状態の判定を相対的に敏感にすることが好ましい。そこで、本実施形態は、前進走行モードの方が後退走行モードよりも判定閾値を高くする。このように高ノイズ状態の判定閾値を設定することで、自車両の走行モードが前進走行モードである場合よりも後退走行モードである場合の方が、ノイズ関連報知が実行されやすくなる。これにより、外来ノイズにより物体検知機能が制限されたことを、利便性の低下を抑制しつつ、ユーザに良好に通知することが可能となる。
【0040】
(動作例)
以下、本実施形態に係る一動作例について、図1図3に加えて図4および図5に示されているフローチャートを参照しつつ説明する。なお、図示されたフローチャートにおいて、「S」は「ステップ」の略である。後述の図7および図8においても同様である。
【0041】
プロセッサ2aは、メモリ2bから図4に示されているルーチンに対応するプログラムを読み出して、所定タイミングで起動する。かかるプログラムが起動されると、まず、ステップ401にて、プロセッサ2aは、高ノイズ状態フラグFNがリセット状態(すなわちFN=0)であるか否かを判定する。高ノイズ状態フラグFNは、高ノイズ状態であることが判定された場合にセットされる(すなわち値が1に設定される)フラグであって、上述のノイズフラグとは異なる。高ノイズ状態フラグFNが既にセットされている場合(すなわちステップ401=NO)、プロセッサ2aは、ステップ402以降の処理をすべてスキップして、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、高ノイズ状態フラグFNがリセット状態である場合(すなわちステップ401=YES)、プロセッサ2aは、処理をステップ402に進行させる。
【0042】
ステップ402にて、プロセッサ2aは、物体検知動作の実行条件すなわち物体検知センサ3の動作条件が成立しているか否かを判定する。物体検知動作の実行条件が成立していない場合(すなわちステップ402=NO)、プロセッサ2aは、ステップ403以降の処理をすべてスキップして、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、物体検知動作の実行条件が成立している場合(すなわちステップ402=YES)、プロセッサ2aは、処理をステップ403以降に進行させる。
【0043】
ステップ403にて、プロセッサ2aは、複数の物体検知センサ3の各々に送受信処理を実行させる。具体的には、前進走行モードの場合、プロセッサ2aは、第一フロントセンサ3A~第四フロントセンサ3Dを、図3に示された態様で動作させる。また、後退走行モードの場合、プロセッサ2aは、第一リアセンサ3E~第四リアセンサ3Hを、図3に示された態様で動作させる。かかる「送受信処理」には、上述のノイズモニタ期間tnにおける外来ノイズの受信状態を取得するノイズモニタ処理も含まれる。
【0044】
ステップ404にて、プロセッサ2aは、複数の物体検知センサ3の各々における、ノイズモニタ処理の結果すなわちノイズモニタ期間tnにおける外来ノイズの受信状態を、複数の物体検知センサ3の各々から取得すなわち受信する。また、プロセッサ2aは、取得した受信状態に基づいて、外来ノイズの受信状態に対応する特性値を算出する。具体的には、プロセッサ2aは、外来ノイズの受信頻度Rnを算出する。また、プロセッサ2aは、受信頻度Rnが所定の頻度閾値Rn_th1を超える状態(すなわち上述のノイズフラグがセットされた状態)の継続時間もしくは継続回数である継続特性値Snを算出する。
【0045】
ステップ405にて、プロセッサ2aは、ノイズモニタ処理およびその結果の取得、すなわち、ステップ403およびステップ404の処理が、所定回数Na回以上行われたか否かを判定する。回数がNa回未満である場合(すなわちステップ405=NO)、プロセッサ2aは、処理をステップ402に戻す。回数がNa回以上である場合(すなわちステップ405=YES)、プロセッサ2aは、処理をステップ406に進行させる。
【0046】
ステップ406にて、プロセッサ2aは、受信頻度Rnが頻度閾値Rn_th1を超えるか否かを判定する。具体的には、プロセッサ2aは、過去Na回のノイズモニタのうち外来ノイズが受信された回数が所定回数を超えるか否かを判定する。換言すれば、プロセッサ2aは、上述のノイズフラグがセットされているか否かを判定する。Naは上述のkに相当し、Rn_th1は上述のk1に相当する。ここで、本例においては、頻度閾値Rn_th1として、前進走行モードと後退走行モードとで異なる値を用いる。具体的には、頻度閾値Rn_th1は、走行モードが前進走行モードである場合の方が、走行モードが後退走行モードである場合よりも高い値に設定される。受信頻度Rnが頻度閾値Rn_th1以下である場合(すなわちステップ406=NO)、プロセッサ2aは、ステップ407以降の処理をすべてスキップして、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、受信頻度Rnが頻度閾値Rn_th1を超える場合(すなわちステップ406=YES)、プロセッサ2aは、処理をステップ407に進行させる。
【0047】
ステップ407にて、プロセッサ2aは、継続特性値Snが継続閾値Sn_th1を超えるか否かを判定する。具体的には、プロセッサ2aは、過去Na回のノイズモニタのうち外来ノイズが受信された回数が所定回数を超える状態が、所定の回数あるいは時間を超えて継続しているか否かを判定する。本例においては、継続閾値Sn_th1として、前進走行モードと後退走行モードとで異なる値を用いる。具体的には、継続閾値Sn_th1は、走行モードが前進走行モードである場合の方が、走行モードが後退走行モードである場合よりも高い値に設定される。
【0048】
継続特性値Snが継続閾値Sn_th1以下である場合(すなわちステップ407=NO)、プロセッサ2aは、ステップ408以降の処理をすべてスキップして、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、継続特性値Snが継続閾値Sn_th1を超える場合(すなわちステップ407=YES)、プロセッサ2aは、ステップ408およびステップ409の処理を実行した後、本ルーチンを一旦終了する。ステップ408にて、プロセッサ2aは、HMI装置5を用いてノイズ関連報知を実行する。ステップ409にて、プロセッサ2aは、高ノイズ状態フラグFNをセットする(すなわちFN=1)。
【0049】
プロセッサ2aは、メモリ2bから図5に示されているルーチンに対応するプログラムを読み出して、所定タイミングで起動する。かかるプログラムが起動されると、まず、ステップ501にて、プロセッサ2aは、高ノイズ状態フラグFNが既にセットされている状態(すなわちFN=1)であるか否かを判定する。高ノイズ状態フラグFNがリセット状態である場合(すなわちステップ501=NO)、プロセッサ2aは、ステップ502以降の処理をすべてスキップして、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、高ノイズ状態フラグFNが既にセットされている場合(すなわちステップ501=YES)、プロセッサ2aは、処理をステップ502に進行させる。
【0050】
ステップ502~ステップ504の処理内容は、図4におけるステップ402~ステップ404の処理内容と同一である。よって、ステップ502~ステップ504の処理内容については、説明を省略する。ステップ505にて、プロセッサ2aは、ノイズモニタ処理およびその結果の取得、すなわち、ステップ503およびステップ504の処理が、所定回数Nb回以上行われたか否かを判定する。Nbは上述のNaと同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。回数がNb回未満である場合(すなわちステップ505=NO)、プロセッサ2aは、処理をステップ502に戻す。回数がNb回以上である場合(すなわちステップ505=YES)、プロセッサ2aは、処理をステップ506に進行させる。
【0051】
ステップ506にて、プロセッサ2aは、受信頻度Rnが頻度閾値Rn_th2以下であるか否かを判定する。具体的には、プロセッサ2aは、過去Nb回のノイズモニタのうち外来ノイズが受信された回数が所定回数以下であるか否かを判定する。本例においては、頻度閾値Rn_th2として、前進走行モードと後退走行モードとで異なる値を用いる。具体的には、頻度閾値Rn_th2は、走行モードが前進走行モードである場合の方が、高ノイズ状態の判定がより早く解除されるように、走行モードが後退走行モードである場合よりも低い値に設定される。受信頻度Rnが頻度閾値Rn_th2を超える場合(すなわちステップ506=NO)、プロセッサ2aは、ステップ507以降の処理をすべてスキップして、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、受信頻度Rnが頻度閾値Rn_th2以下である場合(すなわちステップ506=YES)、プロセッサ2aは、処理をステップ507に進行させる。
【0052】
ステップ507にて、プロセッサ2aは、継続特性値Snが継続閾値Sn_th2以上であるか否かを判定する。具体的には、プロセッサ2aは、過去Nb回のノイズモニタのうち外来ノイズが受信された回数が所定回数以下である状態が、所定の回数あるいは時間以上継続しているか否かを判定する。本例においては、継続閾値Sn_th2として、前進走行モードと後退走行モードとで異なる値を用いる。具体的には、継続閾値Sn_th2は、走行モードが前進走行モードである場合の方が、高ノイズ状態の判定がより早く解除されるように、走行モードが後退走行モードである場合よりも低い値に設定される。
【0053】
継続特性値Snが継続閾値Sn_th2を超える場合(すなわちステップ507=NO)、プロセッサ2aは、ステップ508以降の処理をすべてスキップして、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、継続特性値Snが継続閾値Sn_th2以上である場合(すなわちステップ507=YES)、プロセッサ2aは、ステップ508およびステップ509の処理を実行した後、本ルーチンを一旦終了する。ステップ508にて、プロセッサ2aは、正常時の処理、すなわち、高ノイズ状態ではない場合の処理を実行する。具体的には、プロセッサ2aは、HMI装置5を用いたノイズ関連報知を終了するとともに、必要に応じて、HMI装置5を用いて、物体検知動作が有効に実行可能あるいは実行中であることを示す報知を実行する。ステップ509にて、プロセッサ2aは、高ノイズ状態フラグFNをリセットする(すなわちFN=0)。
【0054】
(第二実施形態)
以下、第二実施形態について説明する。なお、以下の第二実施形態の説明においては、主として、上記第一実施形態と異なる部分について説明する。また、第一実施形態と第二実施形態とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一符号が付されている。したがって、以下の第二実施形態の説明において、第一実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記第一実施形態における説明が適宜援用され得る。後述の第三実施形態以降についても同様である。
【0055】
本実施形態に係る車載システム1の構成は、上記第一実施形態と同様である。すなわち、本実施形態に係る車載システム1は、図1および図2に示された構成を有している。但し、本実施形態は、動作態様およびこれに対応する機能構成が上記第一実施形態とは若干異なる。
【0056】
図6は、距離情報Dの時間経過を示すグラフである。図6において、上側のグラフは外来ノイズの受信がない場合を示し、下側のグラフは外来ノイズの受信がある場合を示す。探査波の物体Bによる反射波は、探査波の送信時刻を基準として、物体検知センサ3と物体Bとの間の距離に対応する伝播時間の経過後に受信される。これに対し、外来ノイズは、送信時刻に対して非同期で受信される。このため、図6に示されているように、外来ノイズの受信がない場合、距離情報Dの値の、グラフ中にて直線で示す移動平均からの差は小さい。一方、外来ノイズの受信がある場合、距離情報Dの値の、移動平均からの差は、大きくなる。
【0057】
このように、距離情報Dの、移動平均からの差は、外来ノイズの受信状態を判定する際の指標となり得る。そこで、本実施形態は、特性値として、距離情報Dの移動平均からの差の分散、または、かかる分散が所定の閾値を超える状態の継続時間もしくは継続回数を取得する。そして、本実施形態は、走行モードが前進走行モードである場合の方が、走行モードが後退走行モードである場合よりも、高ノイズ状態の判定閾値を高くする。これにより、上記第一実施形態と同様の効果が奏され得る。
【0058】
(動作例)
以下、本実施形態に係る一動作例について、図7および図8に示されているフローチャートを参照しつつ説明する。
【0059】
プロセッサ2aは、メモリ2bから図7に示されているルーチンに対応するプログラムを読み出して、所定タイミングで起動する。ステップ701およびステップ702の処理内容は、図4におけるステップ401およびステップ402の処理内容と同一である。よって、ステップ701およびステップ702の処理内容については、説明を省略する。
【0060】
ステップ703にて、プロセッサ2aは、複数の物体検知センサ3の各々に送受信処理を実行させる。なお、本実施形態においては、かかる「送受信処理」には、ノイズモニタ処理は含まれない。すなわち、本実施形態は、ノイズモニタ期間tnすなわちノイズモニタ処理は用いない。
【0061】
ステップ704にて、プロセッサ2aは、複数の物体検知センサ3の各々における受信波の受信結果を、複数の物体検知センサ3の各々から取得すなわち受信する。また、プロセッサ2aは、取得した受信結果に基づいて、外来ノイズの受信状態に対応する特性値を算出する。具体的には、プロセッサ2aは、距離情報Dの移動平均からの差の分散Dpを算出する。また、プロセッサ2aは、分散Dpが所定の分散閾値Dp_th1を超える状態の継続時間もしくは継続回数である、継続特性値Snを算出する。
【0062】
ステップ705にて、プロセッサ2aは、送受信処理およびその結果の取得、すなわち、ステップ703およびステップ704の処理が、所定回数Na回以上行われたか否かを判定する。回数がNa回未満である場合(すなわちステップ705=NO)、プロセッサ2aは、処理をステップ702に戻す。回数がNa回以上である場合(すなわちステップ705=YES)、プロセッサ2aは、処理をステップ706に進行させる。
【0063】
ステップ706にて、プロセッサ2aは、分散Dpが分散閾値Dp_th1を超えるか否かを判定する。具体的には、プロセッサ2aは、過去Na回の送受信処理において、外来ノイズが受信されることで分散Dpが大きくなったか否かを判定する。本例においては、分散閾値Dp_th1として、前進走行モードと後退走行モードとで異なる値を用いる。具体的には、分散閾値Dp_th1は、走行モードが前進走行モードである場合の方が、走行モードが後退走行モードである場合よりも高い値に設定される。分散Dpが分散閾値Dp_th1以下である場合(すなわちステップ706=NO)、プロセッサ2aは、ステップ707以降の処理をすべてスキップして、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、分散Dpが分散閾値Dp_th1を超える場合(すなわちステップ706=YES)、プロセッサ2aは、処理をステップ707に進行させる。
【0064】
ステップ707にて、プロセッサ2aは、継続特性値Snが継続閾値Sn_th1を超えるか否かを判定する。具体的には、プロセッサ2aは、過去Na回の送受信処理において、外来ノイズが受信されることで分散Dpが大きくなった状態が、所定回数あるいは所定時間を超えて継続しているか否かを判定する。本例においては、継続閾値Sn_th1として、前進走行モードと後退走行モードとで異なる値を用いる。具体的には、継続閾値Sn_th1は、走行モードが前進走行モードである場合の方が、走行モードが後退走行モードである場合よりも高い値に設定される。
【0065】
継続特性値Snが継続閾値Sn_th1以下である場合(すなわちステップ707=NO)、プロセッサ2aは、ステップ708以降の処理をすべてスキップして、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、継続特性値Snが継続閾値Sn_th1を超える場合(すなわちステップ707=YES)、プロセッサ2aは、ステップ708およびステップ709の処理を実行した後、本ルーチンを一旦終了する。ステップ708にて、プロセッサ2aは、HMI装置5を用いてノイズ関連報知を実行する。ステップ709にて、プロセッサ2aは、高ノイズ状態フラグFNをセットする(すなわちFN=1)。
【0066】
プロセッサ2aは、メモリ2bから図8に示されているルーチンに対応するプログラムを読み出して、所定タイミングで起動する。ステップ801およびステップ802の処理内容は、図5におけるステップ501およびステップ502の処理内容と同一である。また、ステップ803およびステップ804の処理内容は、図7におけるステップ703およびステップ704の処理内容と同一である。さらに、ステップ805の処理内容は、図5におけるステップ505の処理内容と同一である。よって、ステップ801~ステップ805の処理内容については、説明を省略する。
【0067】
ステップ806にて、プロセッサ2aは、分散Dpが分散閾値Dp_th2以下であるか否かを判定する。本例においては、分散閾値Dp_th2として、前進走行モードと後退走行モードとで異なる値を用いる。具体的には、分散閾値Dp_th2は、走行モードが前進走行モードである場合の方が、高ノイズ状態の判定がより早く解除されるように、走行モードが後退走行モードである場合よりも低い値に設定される。分散Dpが分散閾値Dp_th2を超える場合(すなわちステップ806=NO)、プロセッサ2aは、ステップ807以降の処理をすべてスキップして、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、分散Dpが分散閾値Dp_th2以下である場合(すなわちステップ806=YES)、プロセッサ2aは、処理をステップ807に進行させる。
【0068】
ステップ807にて、プロセッサ2aは、継続特性値Snが継続閾値Sn_th2以上であるか否かを判定する。本例においては、継続閾値Sn_th2として、前進走行モードと後退走行モードとで異なる値を用いる。具体的には、継続閾値Sn_th2は、走行モードが前進走行モードである場合の方が、高ノイズ状態の判定がより早く解除されるように、走行モードが後退走行モードである場合よりも低い値に設定される。
【0069】
継続特性値Snが継続閾値Sn_th2を超える場合(すなわちステップ807=NO)、プロセッサ2aは、ステップ808以降の処理をすべてスキップして、本ルーチンを一旦終了する。これに対し、継続特性値Snが継続閾値Sn_th2以上である場合(すなわちステップ807=YES)、プロセッサ2aは、ステップ808およびステップ809の処理を実行した後、本ルーチンを一旦終了する。ステップ808にて、プロセッサ2aは、正常時の処理、すなわち、高ノイズ状態ではない場合の処理を実行する。具体的には、プロセッサ2aは、HMI装置5を用いたノイズ関連報知を終了するとともに、必要に応じて、HMI装置5を用いて、物体検知動作が有効に実行可能あるいは実行中であることを示す報知を実行する。ステップ809にて、プロセッサ2aは、高ノイズ状態フラグFNをリセットする(すなわちFN=0)。
【0070】
(第三実施形態)
以下、第三実施形態について説明する。本実施形態においては、ノイズ処理部25は、走行モードが前進走行モードである場合にはノイズ関連報知を不実行とする一方、走行モードが後退走行モードである場合にはノイズ関連報知を実行する。本実施形態によっても、上記第一実施形態等と同様の効果が奏され得る。
【0071】
具体的には、本実施形態は、以下のような態様で実現され得る。例えば、ノイズ状態取得部23は、走行モードが前進走行モードである場合には、外来ノイズの受信状態に対応する特性値の取得すなわち算出は行わない。あるいは、例えば、ノイズ状態判定部24は、走行モードが前進走行モードである場合には、高ノイズ状態が成立するか否かの判定は行わない。あるいは、例えば、ノイズ状態判定部24は、走行モードが前進走行モードである場合には、判定閾値すなわち頻度閾値Rn_th1や分散閾値Dp_th1を、通常超え得ない程度に充分高い値(例えば4桁の16進数の場合はFFFF)に設定する。
【0072】
(第四実施形態)
以下、第四実施形態について説明する。上記第一~第三実施形態においては、走行モードが前進走行モードであるか後退走行モードであるかに応じてノイズ判定に差異を設けることで、前進走行モードよりも後退走行モードの方が、ノイズ関連報知が実行されやすくなるようにしていた。これに対し、本実施形態においては、第一フロントセンサ3A~第四フロントセンサ3Dよりも、第一リアセンサ3E~第四リアセンサ3Hの方が、ノイズ関連報知が実行されやすくなるようにしている。すなわち、第一フロントセンサ3A~第四フロントセンサ3Dよりも、第一リアセンサ3E~第四リアセンサ3Hの方が、高ノイズ状態の判定が相対的に敏感にされる。本実施形態によっても、上記第一実施形態等と同様の効果が奏され得る。
【0073】
具体的には、本実施形態は、以下のような態様で実現され得る。なお、以下の説明において、「フロントセンサ」は、第一フロントセンサ3A~第四フロントセンサ3Dを総称したものである。同様に、「リアセンサ」は、第一リアセンサ3E~第四リアセンサ3Hを総称したものである。
【0074】
例えば、ノイズ状態判定部24は、フロントセンサについての高ノイズ状態の成否を判定する場合の方が、リアセンサについての高ノイズ状態の成否を判定する場合よりも、判定閾値として、より高い値を用いる。この場合の「判定閾値」は、頻度閾値Rn_th1、分散閾値Dp_th1、および、継続閾値Sn_th1である。すなわち、図4図5図7、および図8のフローチャートに関する説明において、「前進走行モード」を「フロントセンサ」と読み替え、「後退走行モード」を「リアセンサ」と読み替えることで、本実施形態が実現され得る。
【0075】
また、ノイズ処理部25は、フロントセンサにて高ノイズ状態が成立した場合にはノイズ関連報知を不実行とする一方、リアセンサにて高ノイズ状態が成立した場合にはノイズ関連報知を実行するようになっていてもよい。具体的には、例えば、ノイズ状態取得部23は、フロントセンサについては、外来ノイズの受信状態に対応する特性値の取得すなわち算出は行わない。あるいは、例えば、ノイズ状態判定部24は、フロントセンサについては、高ノイズ状態が成立するか否かの判定は行わない。あるいは、例えば、ノイズ状態判定部24は、フロントセンサについては、判定閾値すなわち頻度閾値Rn_th1や分散閾値Dp_th1を、通常超え得ない程度に充分高い値(例えば4桁の16進数の場合はFFFF)に設定する。
【0076】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。故に、上記実施形態に対しては、適宜変更が可能である。以下、代表的な変形例について説明する。以下の変形例の説明においては、上記実施形態との相違点を主として説明する。また、上記実施形態と変形例とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一の符号が付されている。したがって、以下の変形例の説明において、上記実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記実施形態における説明が適宜援用され得る。
【0077】
本発明は、上記実施形態に示された具体的な装置構成に限定されるものではない。例えば、物体検知センサ3は、フロントバンパーC2およびリアバンパーC3にそれぞれ3個ずつ装着されていてもよい。あるいは、例えば、物体検知センサ3は、フロントバンパーC2および/またはリアバンパーC3に5個以上装着されていてもよい。
【0078】
送受信一体型の物体検知センサ3の具体的構成についても、特段の限定はない。すなわち、例えば、物体検知センサ3は、1個の筐体に送信用の超音波素子と受信用の超音波素子とを個別に設けた構成であってもよい。
【0079】
物体検知ECU2の全部または一部は、上記のような動作を可能に構成されたデジタル回路、例えばASICあるいはFPGAを備えた構成であってもよい。ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略である。FPGAはField Programmable Gate Arrayの略である。すなわち、物体検知ECU2において、車載マイクロコンピュータ部分とデジタル回路部分とは併存し得る。
【0080】
上記実施形態にて説明した、各種の動作、手順、あるいは処理を実行可能とする、本発明に係るプログラムは、V2X通信を介して、ダウンロードあるいはアップグレードされ得る。V2XはVehicle to Xの略である。あるいは、かかるプログラムは、車両Cの製造工場、整備工場、販売店、等に設けられた端末機器を介して、ダウンロードあるいはアップグレードされ得る。かかるプログラムの格納先は、メモリーカード、光学ディスク、磁気ディスク、等であってもよい。
【0081】
このように、上記の各機能構成および処理は、コンピュータプログラムにより具体化された一つあるいは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、上記の各機能構成および処理は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、上記の各機能構成および処理は、一つあるいは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移的実体的記憶媒体に記憶されていてもよい。すなわち、上記の各機能構成および処理は、これを実現するための手順を含むコンピュータプログラム、あるいは、当該プログラムを記憶した非遷移的実体的記憶媒体としても表現可能である。
【0082】
したがって、図2に示された条件判定部21~物体検知処理部26は、あくまで、本発明の内容の理解に資するために便宜的に設定した機能構成ブロックである。したがって、これらの機能構成ブロックが実際にルーチンあるいはハードウェアとして物体検知ECU2の内部に実現されていなくても、本発明所定の機能あるいは処理が実現されていれば、本発明の要件は充足され得る。
【0083】
本発明は、上記実施形態に示された具体的な動作態様に限定されない。すなわち、例えば、第一リアセンサ3E~第四リアセンサ3Hは、前進走行モードにおいても送受信動作してもよい。同様に、例えば、第一フロントセンサ3A~第四フロントセンサ3Dは、後退走行モードにおいても送受信動作してもよい。これらの場合に対しても、本発明は良好に適用され得る。
【0084】
ステップ406およびステップ407のうちの片方のみは、省略され得る。あるいは、例えば、前進走行モードの場合にはステップ407を省略しない一方で、後退走行モードの場合にはステップ407を省略するようにしてもよい。これにより、自車両の走行モードが前進走行モードである場合よりも後退走行モードである場合の方が、ノイズ関連報知が実行されやすくなる。ステップ706およびステップ707についても同様である。
【0085】
Rn_th2は、Rn_th1と同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。同様に、Sn_th2は、Sn_th1と同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。同様に、Dp_th2は、Dp_th1と同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0086】
図5の処理は、省略され得る。この場合、図4におけるステップ401およびステップ409の処理も省略される。同様に、図8の処理は、省略され得る。この場合、図7におけるステップ701およびステップ709の処理も省略される。
【0087】
ステップ506およびステップ507のうちの片方のみは、省略され得る。あるいは、例えば、前進走行モードの場合にはステップ507を省略する一方で、後退走行モードの場合にはステップ507を省略しないようにしてもよい。これにより、自車両の走行モードが前進走行モードである場合よりも後退走行モードである場合の方が、ノイズ関連報知が実行されやすくなる。ステップ806およびステップ807についても同様である。
【0088】
なお、上記の各例においては、前進走行モードと後退走行モードとで、高ノイズ状態の成立判定条件を変えていた。すなわち、上記の各例は、前進走行モードよりも後退走行モードの方が、高ノイズ状態判定が成立しやすくしていた。しかしながら、本発明は、かかる態様に限定されない。すなわち、例えば、ノイズ処理部25は、走行モードが前進走行モードである場合には、高ノイズ状態の成立が判定されてもノイズ関連報知を実行しないようになっていてもよい。あるいは、例えば、物体検知ECU2は、走行モードが前進走行モードである場合には、図4等に示されたルーチンを起動しないようになっていてもよい。
【0089】
「超える」と「以上」とは互いに置換可能である。同様に、「未満」と「以下」とは互いに置換可能である。「取得」「算出」「検知」「検出」等の互いに類似の概念も、技術的に矛盾あるいは不都合がない限り、互いに置換可能である。
【0090】
上記実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、構成要素の個数、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数値に限定される場合等を除き、その特定の数値に本発明が限定されることはない。同様に、構成要素等の形状、方向、位置関係等が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に特定の形状、方向、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、方向、位置関係等に本発明が限定されることはない。
【0091】
変形例も、上記の例示に限定されない。例えば、複数の実施形態が、技術的に矛盾しない限り、互いに組み合わされ得る。また、複数の変形例が、技術的に矛盾しない限り、互いに組み合わされ得る。さらに、上記実施形態の全部または一部と、変形例の全部または一部とが、技術的に矛盾しない限り、互いに組み合わされ得る。
【符号の説明】
【0092】
1 車載システム
2 物体検知ECU(物体検知装置)
201 条件判定部
203 ノイズ状態取得部
204 ノイズ状態判定部
205 ノイズ処理部
3 物体検知センサ
5 HMI装置
B 物体
C 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8