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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】空気の吹き出し構造
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
B60H1/34 651Z
B60H1/34 631
B60H1/34 611
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021147646
(22)【出願日】2021-09-10
(65)【公開番号】P2023040570
(43)【公開日】2023-03-23
【審査請求日】2024-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤森 健太
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/145172(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/044872(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物室内に空気を吹き出すための吹き出し構造であって、
乗物の室内意匠面を構成する内装材に沿う筒状をなし、上流側から下流側に向けて空気を流通させるダクトと、
前記ダクトの壁部のうち乗物室内側に配される室内側壁部において並んで開口し、前記ダクト内に流通された空気を乗物室内に向けて吹き出す第1吹出口および第2吹出口と、
前記ダクト内に設けられ、前記室内側壁部に沿って延びる回動軸を中心に回動可能な回動体と、を備え、
前記第1吹出口は、前記室内側壁部を前記ダクトの内面から外面にかけて前記第2吹出口側に向けて傾くように貫通して形成されており、
前記第2吹出口は、前記室内側壁部をその壁面に対して垂直に貫通して形成されており、
前記回動体は、前記第1吹出口を閉塞する閉塞位置と、前記第1吹出口を開放する開放位置との間で回動可能とされ、前記開放位置では、当該回動体の回動角度により、当該回動体と前記室内側壁部との間に形成される隙間であって前記第1吹出口へ流通する空気の流通隙間の面積が可変とされている、空気の吹き出し構造。
【請求項2】
前記第1吹出口および前記第2吹出口は、前記第1吹出口が上流側、前記第2吹出口が下流側となるように並んで形成されており、
前記ダクトは、前記第2吹出口の下流側おいて、前記室内側壁部のうち前記第2吹出口に隣接した位置から当該ダクトの内部に立ち上がって上流側から流通する空気を前記第2吹出口に向けて案内する案内壁部を備えている請求項1に記載の空気の吹き出し構造。
【請求項3】
前記回動軸は、前記第1吹出口および前記第2吹出口の間において前記ダクト内の空気の流通方向と交わる方向に沿って延びており、
前記ダクトのうち前記回動体と前記案内壁部との間に形成される空間に、上流側から下流側に流通する空気を前記案内壁部との間に流通させて前記第2吹出口に向けて案内する隙間を形成しつつ前記空間を埋める気流案内部が設けられている請求項2に記載の空気の吹き出し構造。
【請求項4】
前記回動体は、前記回動軸と直交する方向の切断面が、円形をなす円形部から上流側に向けて山形に膨出する膨出部を備える形状をなしており、
前記円形部の外面は、前記室内側壁部のうち前記第1吹出口および前記第2吹出口の間の領域に近接あるいは当接しており、
前記膨出部は、前記回動体の前記閉塞位置において前記第1吹出口を閉塞するとともに、前記開放位置において前記第1吹出口から離隔して前記室内側壁部と当該室内側壁部と対向する対向壁部との間に上流側を向いた姿勢で配されて前記流通隙間を形成する、請求項2または請求項3に記載の空気の吹き出し構造。
【請求項5】
前記室内側壁部は、前記内装材の一部により構成されている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の空気の吹き出し構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、乗物室内に空気を吹き出すための吹き出し構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の送風装置から送風された空気の吹き出し方向を調節するための構造として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。このものは、車両に設けられるダクトと繋がれており、ダクトを流れてきた空気を吹出口から車室内に吹き出す。吹出口には複数の板状のフィンが設けられており、これらのフィンの向きを変えることにより、風向きを調節する構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-255751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、乗物室内の意匠性を向上することへのニーズがますます高まっており、吹出口に関しても、シンプルでデザイン性が優れたものが求められている。
【0005】
本明細書に開示される技術は、空気の吹き出し方向を調節可能で、かつ、デザイン性に優れた空気の吹き出し構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本明細書に開示の技術は、乗物室内に空気を吹き出すための吹き出し構造であって、乗物の室内意匠面を構成する内装材に沿う筒状をなし、上流側から下流側に向けて空気を流通させるダクトと、前記ダクトの壁部のうち乗物室内側に配される室内側壁部において並んで開口し、前記ダクト内に流通された空気を乗物室内に向けて吹き出す第1吹出口および第2吹出口と、前記ダクト内に設けられ、前記室内側壁部に沿って延びる回動軸を中心に回動可能な回動体と、を備え、前記第1吹出口は、前記室内側壁部を前記ダクトの内面から外面にかけて前記第2吹出口側に向けて傾くように貫通して形成されており、前記第2吹出口は、前記室内側壁部をその壁面に対して垂直に貫通して形成されており、前記回動体は、前記第1吹出口を閉塞する閉塞位置と、前記第1吹出口を開放する開放位置との間で回動可能とされ、前記開放位置では、当該回動体の回動角度により、当該回動体と前記室内側壁部との間に形成される隙間であって前記第1吹出口へ流通する空気の流通隙間の面積が可変とされている。
【0007】
上記構成によれば、回動体が閉塞位置とされた状態において、ダクト内の空気は、第2吹出口から乗物室内に向けて内装材に対して垂直に吹き出される。
【0008】
一方、回動体が開放位置とされた状態において、第1吹出口から第2吹出口側に向けて吹き出される空気は、コアンダ効果により内装材の壁面に沿って進み、第2吹出口から吹き出された空気と合成される。したがって、第1吹出口から吹き出される空気と、第2吹出口から吹き出される空気の風量の割合を調節することで、合成される空気の風向きを調節することができる。
【0009】
また、上記構成によれば、第1吹出口から吹き出される空気と、第2吹出口から吹き出される空気の風量の割合は、閉塞位置とされた回動体を開放位置に回動させる際の回動角度により調節することが可能である。つまり、回動体の回動角度により、第1吹出口および第2吹出口から吹き出されて合成される空気の風向きを調節することが実現可能である。
【0010】
そしてこのような構成によれば、乗物室内側、つまり内装材には、第1吹出口および第2吹出口が開口しているだけで、従来のように風向き調節用のフィンや風向フラップ等が配されることがないから、シンプルでデザイン性に優れた空気の吹き出し構造とすることができる。また、フィンや風向フラップ等の突起物が設けられていないため、乗物衝突時の乗員の安全性が高まるとともに、乗物室内スペースの有効利用や乗物の軽量化に寄与する。
【0011】
前記第1吹出口および前記第2吹出口は、前記第1吹出口が上流側、前記第2吹出口が下流側となるように並んで形成されており、前記ダクトは、前記第2吹出口の下流側おいて、前記室内側壁部のうち前記第2吹出口に隣接した位置から当該ダクトの内部に立ち上がって上流側から流通する空気を前記第2吹出口に向けて案内する案内壁部を備えていてもよい。
【0012】
このような構成によれば、第1吹出口は、ダクトの内面から外面にかけて下流側に向けて傾くように配されるから、回動体が開放位置とされている際には、ダクト内を流通する空気は第1吹出口にスムーズに流れ込む。一方、第2吹出口は、室内側壁部をその壁面に対して垂直に貫通して形成されているものの、空気は室内側壁部から立ち上がる案内壁部により案内されて、第2吹出口に流れ込む。つまり、第2吹出口にも十分な量の空気を送り込むことが可能になる。
【0013】
前記回動軸は、前記第1吹出口および前記第2吹出口の間において前記ダクト内の空気の流通方向と交わる方向に沿って延びており、前記ダクトのうち前記回動体と前記案内壁部との間に形成される空間に、上流側から下流側に流通する空気を前記案内壁部との間に流通させて前記第2吹出口に向けて案内する隙間を形成しつつ前記空間を埋める気流案内部が設けられていてもよい。
【0014】
上記構成によれば、ダクトのうち回動体と案内壁部との間に形成される空間内に流れ込んだ空気を、当該空間内で乱気流を起こさせることなく、第2吹出口に案内することができる。
【0015】
前記回動体は、前記回動軸と直交する方向の切断面が、円形をなす円形部から上流側に向けて山形に膨出する膨出部を備える形状をなしており、前記円形部の外面は、前記室内側壁部のうち前記第1吹出口および前記第2吹出口の間の領域に近接あるいは当接しており、前記膨出部は、前記回動体の前記閉塞位置において前記第1吹出口を閉塞するとともに、前記開放位置において前記第1吹出口から離隔して前記室内側壁部と当該室内側壁部と対向する対向壁部との間に上流側を向いた姿勢で配されて前記流通隙間を形成していてもよい。
【0016】
このような構成によれば、ダクトの上流側から流れてきた空気を、山形の膨出部により、室内側壁部に向かう方向と対向壁部に向かう方向とに圧力損失を抑制しつつ分配するとともに、室内側壁部に向かって流れる空気(流通隙間に流れる空気)を第1吹出口に案内し、対向壁部に向かって流れる空気を案内壁部ひいては第2吹出口に向けて案内することができる。また、回動体のうち円形部の外面は室内側壁部に近接あるいは当接するように配されるから、室内側壁部に向かって流れる空気を、第2吹出口側に逃がすことなく、第1吹出口に確実に案内することができる。
【0017】
前記室内側壁部は、前記内装材の一部により構成されていてもよい。内装材の一部をダクトの室内側壁部として利用することにより、ダクトの重量を減らすことができる。また、ダクト全体を内装材とは別部材で構成する場合には、ダクトに設けた吹出口と内装材に設けた吹出口の位置合わせが必要となるが、ダクトの室内側壁部を内装材の一部で構成することにより、位置合わせが不要となり、組み付け作業性が向上する。
【発明の効果】
【0018】
本明細書に開示される技術によれば、空気の吹き出し方向を調節可能で、かつ、デザイン性に優れた空気の吹き出し構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態の送風装置の一部破断平面図
図2】送風装置の垂直方向の断面図(図1のI-I断面図)
図3図2の要部拡大断面図(回動体が閉塞位置とされた場合)
図4図2の要部拡大断面図(回動体が開放位置とされた場合)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書に開示の空気の吹き出し構造を、車両の天井裏に設けた送風装置10に適用した一実施形態を図1から図4によって説明する。以下の説明においては、図1および図2における左側を前方とし、右側を後方とする。また、図1における上下方向を幅方向とする。さらに、図2における上側を上方とし、下側を下方とする。
【0021】
本実施形態の送風装置10は、送風ファン11と、ダクト21とを備えて構成されている。送風ファン11は、全体として扁平な略円柱型の本体部12を備えており、当該本体部12は、底面が上下方向を向くように車両の天井を構成する天井壁22の上面に配されている(図2参照)。送風ファン11は、上方から吸い込んだ空気を後方に向けて送風する構成とされており、後方に向けて扁平な四角筒状に突出する送風口13を備えている。送風口13は、車室内側(下側)に配されるファン側底壁14と、ファン側底壁14と対向するファン側対向壁15と、ファン側底壁14およびファン側対向壁15の前後方向に延びる側縁部間を繋ぐ2つのファン側側壁16と、から構成されている。
【0022】
送風ファン11の後方には、送風口13から連なるとともに車両の前後方向に延びるダクト21が形成されている。ダクト21は、上述したファン側底壁14と連なる底壁(室内側壁部の一例)24と、底壁24と対向するとともにファン側対向壁15と連なる対向壁(対向壁部の一例)25と、底壁24および対向壁25の前後方向に延びる側縁部間を繋ぐとともにファン側側壁16と連なる2つの側壁26と、対向壁25の後端部から湾曲しつつ底壁24に向けて延びるとともに2つの側壁26と連なり、ダクト21の後端部を塞ぐ後壁(案内壁部の一例)27と、を備えている。これらのうち、底壁24は、車両の内装材において天井に配される天井壁22の一部分により構成されている。底壁24以外の部分、すなわち、対向壁25、側壁26、および後壁27は、底壁24(天井壁22)とは別部材である合成樹脂製のダクト形成部材23により構成されている。
【0023】
このように内装材の天井壁22およびダクト形成部材23により形成されたダクト21は、図1に示す平面視において、前方部分が送風ファン11の送風口13から後方に向けて車両幅方向に徐々に拡径し、後方部分は一定の幅寸法とされて2つの側壁26が平行に対向して延びている。またダクト21は、図2に示す側面視において、前方部分が送風ファン11の送風口13から後方に向かうにつれて底壁24(内装材の天井壁22)からの高さ寸法が徐々に低くなるように対向壁25が下方に向けて傾斜しており、後方部分においては一定の高さ寸法とされている。さらにダクト21は、上述したように、後壁27が対向壁25の後端から底壁24側(下方)に向けて断面が略1/4円形状の扇形に湾曲する湾曲形状とされており、その後端が後壁27により塞がれている(図2参照)。なお、後壁27のうち底壁24と隣接する下方部分は、底壁24から垂直に立ち上がっている。
【0024】
ダクト21の2つの側壁26および後壁27のうち底壁24と連なる下縁部には、外側に向けて張り出すフランジ部28が設けられている。内装材の天井壁22の上面には、フランジ部28を内側に嵌め入れて位置決めするための枠状部29が上方に突出して設けられている。フランジ部28が天井壁22の上面に重ね合わされるとともに固定されることにより、ダクト形成部材23が天井壁22に対して固定されている。また、対向壁25および側壁26の前端は、送風ファン11の送風口13の外面に重ね合わされる寸法に設定されている。これにより、送風ファン11の送風口13から連なり一端が閉塞された筒状のダクト21が形成されている。
【0025】
ダクト21の後方部分における底壁24には、第1吹出口31および第2吹出口32が開口している。第1吹出口31は、車両幅方向(空気の流通方向と交差する方向)に延びて帯状に開口する所謂スリット状とされている。また第2吹出口32は、第1吹出口31の後方側であって、底壁24のうち後壁27との境界部分において、車両幅方向に延びて帯状に開口するスリット状とされている。つまり、第2吹出口32は、第1吹出口31と前後方向において平行に並んで設けられている。
【0026】
第1吹出口31は、底壁24をダクト21の内面から外面にかけて第2吹出口32側(後方)に向けて傾くように貫通して形成されている(図3および図4参照)。第1吹出口31の底壁24に対する傾斜角度は、約25~45度とされている。第1吹出口31の内周面のうち、後方かつダクト21の外側(車室内側)に配される角部は、面取りされて丸みを帯びた形状とされている。つまり、第1吹出口31の内周面と底壁24(天井壁22)の下面とは、滑らかに連続して連なっている。
【0027】
一方、第2吹出口32は、底壁24をその板面に対して垂直に貫通して形成されている。第2吹出口32の内周面のうち、前方かつダクト21の内側に配される角部は、面取りされて丸みを帯びた形状とされている(図3および図4参照)。
【0028】
ダクト21の内部には、第1吹出口31および第2吹出口32の間において、底壁24に沿って車両の幅方向(空気の流通方向と交わる方向)に延びる回動軸41を中心に回動可能な回動体42が設けられている。回動体42は、回動軸41に沿って延びる棒状とされ、回動軸41と直交する方向の切断面が、例えば図3に示すように、円形をなす円形部43から車両前方(空気の流通方向における上流側)に向けて山形に膨出する膨出部44を備える略涙型をなしている。
【0029】
より詳細には、回動体42の切断面は、円形部43から当該円形部43の2本の接線が前方側において互いに交差する方向に延びるとともに、それら接線が交差することで形成される角部が面取りされて丸みを帯びた、略涙型とされている。以下、回動体42のうち、上述した切断面における円形部43が構成する外面であって弧状に湾曲する面を湾曲部45、円形部43の接線が構成する外面であって平面状に延びる面を平面部46、2つの平面部46を繋ぐ部分(交差する部分)を頂部47と称することとする。さらに、2つの平面部46のうち、頂部47が前方を向いた状態において下方に配される平面部46を第1平面部461、上方に配される平面部46を第2平面部462として説明する。
【0030】
上述した回動体42の回動軸41は、円形部43の中心を通っており、ダクト21に対して相対的に位置が固定されている。また、上述した第2吹出口32および後壁27は、回動体42から後方に離隔した位置に配されるように設定されている。
【0031】
回動体42は、回動軸41を中心として、第1吹出口31を閉塞状態とする閉塞位置と、第1吹出口31を開放状態とする開放位置との間で回動可能とされている。具体的には、回動体42は、閉塞位置においては、図3に示すように、第1平面部461が底壁24の上面に重ね合わされるとともに、第1吹出口31を塞ぐ構成とされている。この状態において、回動体42の上端は、対向壁25から下方にやや離れた位置に配されており、対向壁25との間に隙間を形成している。
【0032】
この状態から、頂部47が上方に移動するように回動体42を回動させると、第1平面部461が底壁24から離れるのに伴って、第1吹出口31が徐々に開放される(開放位置、図4参照)。本実施形態において回動体42は、第2平面部462が対向壁25と平行に配される位置まで回動可能とされている(図3の二点破線参照、いずれも開放位置)。このよう構成は、例えば、対向壁25の下面に第2平面部462に当接して回動体42のそれ以上の回動を規制する突部(図示せず)を設けることにより実現可能である。
【0033】
なお、回動体42は、サーボモーターによる自動制御もしくはダイヤルを用いた手動調整等により回動可能とされている。また回動体42は、軽量化の観点から、ガスインジェクション成形品とすることが好ましい。
【0034】
このように、回動体42は、頂部47が前方を向く範囲内で回動可能とされている。つまり、ダクト21の底壁24のうち第1吹出口31の下流側の縁部に隣接した位置には、常時、回動体42の湾曲部45が近接あるいは当接した状態とされている。また、回動体42は、常時、湾曲部45がダクト21の後方側を向くようになっている。
【0035】
回動体42の湾曲部45とダクト21との間に形成されるダクト21の後方側の空間S、すなわち、湾曲部45と、底壁24と、対向壁25と、側壁26と、後壁27とで囲まれた空間Sには、気流案内部材(気流案内部の一例)51が配されている。気流案内部材51は、図3および図4に示すように、底壁24の上面に設置されており、その外面が、ダクト21の対向壁25および後壁27との間に空気の流通路となる所定の隙間G1を形成した状態で空間Sを埋めるように設定されている。
【0036】
気流案内部材51の背面は、第2吹出口32の内周面のうち前方側に配される部分と同一面上に配されるように設定されている。つまり、気流案内部材51は、第2吹出口32において吹き出される空気に圧力損失が生じ難い構成とされている。一方、気流案内部材51の前面は、回動体42の湾曲部45に沿う凹形状とされ、かつ、湾曲部45から僅かに離れた位置に配されるように設定されている。これにより、回動体42の湾曲部45と気流案内部材51の前面とが回動体42の回動に伴って摺動することが回避されている。
【0037】
本実施形態の送風装置10は上述した通りであって、次に、送風ファン11から送風された空気(気流)の流れ方について説明する。図3および図4に示すように、送風ファン11の送風口13から後方に向けて送風された空気(気流)は、ダクト21内を後方に向けて進み、回動体42に衝突する。
【0038】
この時、図3に示すように、回動体42が第1吹出口31を塞ぐ閉塞位置とされている場合には、回動体42に衝突した気流は、上方に向けて傾斜する第2平面部462に沿って上方に進み、回動体42とダクト21の対向壁25との間の隙間を通って、ダクト21の対向壁25および後壁27と気流案内部材51との間に形成された隙間G1を進み、第2吹出口32から下方(車室内)に向けて放出される。つまり気流は、第2吹出口32からエアカーテンのように車両の下方に向けて車両幅方向に延びる平面状に吹き出される。このようなエアカーテンのような気流は、区画による温度の区分けや、飛沫感染症対策等に利用することができる。以下、第2吹出口32から吹き出された気流を第2気流A2として説明する。
【0039】
一方、回動体42が閉塞位置から、頂部47が上方に移動するように回動し、第1吹出口31を開放する開放位置とされている場合には、回動体42の回動角度(頂部47が配される位置)によって、送風装置10から送風される気流の方向(風向き)が変化する。例えば図4に示すように、回動体42の頂部47がダクト21の高さ寸法における中央部分に配されている場合には、送風ファン11から送風されて後方(下流)に流れる気流は、回動体42の頂部47に衝突することにより、ダクト21の上方部分および下方部分へ分配される。この時、頂部47は前方(上流)に向けて膨出する山形とされているため、気流分配時の圧力損失が低減される。
【0040】
頂部47から第2平面部462に沿って上方へ進んだ気流は、回動体42が閉塞位置とされた場合と同様に、回動体42とダクト21の対向壁25との間の隙間を通って、ダクト21の対向壁25および後壁27と気流案内部材51との間に形成された隙間G1を進み、第2吹出口32から下方に向けて放出される。一方、頂部47から第1平面部461に沿って下方へ進んだ気流は、開放された状態の第1吹出口31から放出される。以下、第1吹出口31から吹き出された気流を第1気流をA1と称する。
【0041】
この時、第1吹出口31は後方へ向けて傾斜する孔状とされているから、第1吹出口31には第1平面部461に沿って進んだ空気がスムーズに流れ込み、第1吹出口31から後方へ向けて吹き出される。また、第1吹出部の内周面のうち、後方かつ車室内側に配される角部は、上述したように、面取りされて底壁24(天井壁22)の下面と滑らかに連なっているため、吹き出された第1気流A1は、コアンダ効果により底壁24(内装材の天井壁22)の下面に引き寄せられつつ後方へ向けて進む。そして、第2吹出口32まで到達した第1気流A1は、第2吹出口32から下方に向けて吹き出された第2気流A2と衝突し、合成された気流(合成気流AMとする)となって、斜め下方かつ後方に向けて進む。
【0042】
合成気流AMの進む方向は、第1気流A1および第2気流A2の風量の割合により変化する。つまり、第1気流A1の風量が比較的に少ない場合には、第2気流A2の方向成分が強くなるため、垂直方向に近い方向の合成気流AMとなる。一方、第1気流A1の風量が比較的に多い場合には、第1気流A1の方向成分が強くなるため、水平方向に近い方向の合成気流AMとなる。つまり、第1気流A1および第2気流A2の吹出量を調節することにより、合成気流AMを所望の風向きとすることができる。
【0043】
第1吹出口31および第2吹出口32から吹き出される空気の量(風量)は、回動体42の回動角度により調節することができる。すなわち、回動体42の頂部47が閉塞位置に近い状態(底壁24に近い状態)とされた場合には、回動体42の第1平面部461と底壁24との間に形成される隙間(流通隙間)G2が小さいため、第1気流A1の吹出量の割合が少なくなる。一方、回動体42の頂部47が対向壁25に近い状態とされた場合には、回動体42の第1平面部461と底壁24との間に形成される隙間G2が大きくなり、第1気流A1の吹出量の割合を大きくすることができる。
【0044】
なお、ダクト21の上流から流れる空気が回動体42により上方(対向壁25側)と下方(底壁24側)に分配される際の分配割合は、ダクト21を回動体42の頂部47を通る位置において幅方向に切断した際の断面の、頂部47により分割される上方および下方の断面積の割合とされる。
【0045】
このように、本実施形態によれば、回動体42の頂部47の位置(回動体の回動角度)を上下方向において調節することにより、送風装置10から車室内に送風する風(合成気流AM)の風向きを調節することが可能である。
【0046】
次に、作用効果について説明する。本実施形態の送風装置10は、車両の室内意匠面を構成する天井壁22に沿う筒状をなし、上流側から下流側に向けて空気を流通させるダクト21と、ダクト21の壁部のうち乗物室内側に配される底壁24において並んで開口し、ダクト21内に流通された空気を車室内に向けて吹き出す第1吹出口31および第2吹出口32と、ダクト21内に設けられ、底壁24に沿って延びる回動軸41を中心に回動可能な回動体42と、を備え、第1吹出口31は、底壁24をダクト21の内面から外面にかけて第2吹出口32側に向けて傾くように貫通して形成されており、第2吹出口32は、底壁24をその壁面に対して垂直に貫通して形成されており、回動体42は、第1吹出口31を閉塞する閉塞位置と、第1吹出口31を開放する開放位置との間で回動可能とされ、開放位置では、回動体42の回動角度により、回動体42と底壁24との間に形成される隙間であって第1吹出口31へ流通する空気の流通隙間G2の面積が可変とされている。
【0047】
このような構成によれば、回動体42が閉塞位置とされた状態において、ダクト21内の空気は、第2吹出口32から車室内に向けて天井壁22に対して垂直に吹き出される。
【0048】
一方、回動体42が開放位置とされた状態において、第1吹出口31から第2吹出口32側に向けて吹き出される空気は、コアンダ効果により天井壁22の壁面に沿って進み、第2吹出口32から吹き出された空気と合成される。したがって、第1吹出口31から吹き出される空気と、第2吹出口32から吹き出される空気の風量の割合を調節することで、合成される空気の風向きを調節することができる。
【0049】
また、上記構成によれば、第1吹出口31から吹き出される空気と、第2吹出口32から吹き出される空気の風量の割合は、閉塞位置とされた回動体42を開放位置に回動させる際の回動角度により調節することが可能である。つまり、回動体42の回動角度により、第1吹出口31および第2吹出口32から吹き出されて合成される空気の風向きを調節することが実現可能である。
【0050】
そしてこのような構成によれば、車室内側、つまり天井壁22には、第1吹出口31および第2吹出口32が開口しているだけで、従来のように風向き調節用のフィンや風向フラップ等が配されることがないから、シンプルでデザイン性に優れた空気の吹き出し構造とすることができる。また、フィンや風向フラップ等の突起物が設けられていないため、車両衝突時の乗員の安全性が高まるとともに、車室内スペースの有効利用や車両の軽量化に寄与する。
【0051】
第1吹出口31および第2吹出口32は、第1吹出口31が上流側、第2吹出口32が下流側となるように並んで形成されており、ダクト21は、第2吹出口32の下流側おいて、底壁24のうち第2吹出口32に隣接した位置からダクト21の内部に立ち上がって上流側から流通する空気を第2吹出口32に向けて案内する後壁27を備えている。
【0052】
このような構成によれば、第1吹出口31は、ダクト21の内面から外面にかけて下流側に向けて傾くように配されるから、回動体42が開放位置とされている際には、ダクト21内を流通する空気は第1吹出口31にスムーズに流れ込む。一方、第2吹出口32は、底壁24をその壁面に対して垂直に貫通して形成されているものの、空気は底壁24から立ち上がる後壁27により案内されて、第2吹出口32に流れ込む。つまり、第2吹出口32にも十分な量の空気を送り込むことが可能になる。
【0053】
回動軸41は、第1吹出口31および第2吹出口32の間においてダクト21内の空気の流通方向と交わる方向に沿って延びており、ダクト21のうち回動体42と底壁24との間に形成される空間Sに、上流側から下流側に流通する空気を後壁27との間に流通させて第2吹出口32に向けて案内する隙間を形成しつつ空間Sを埋める気流案内部材51が設けられている。
【0054】
このような構成によれば、ダクト21のうち回動体42と後壁27との間に形成される空間S内に流れ込んだ空気を、当該空間S内で乱気流を起こさせることなく、第2吹出口32に案内することができる。
【0055】
回動体42は、回動軸41と直交する方向の切断面が、円形をなす円形部43から上流側に向けて山形に膨出する膨出部44を備える形状をなしており、円形部43の外面は、底壁24のうち第1吹出口31および第2吹出口32の間の領域に近接あるいは当接しており、膨出部44は、回動体42の閉塞位置において第1吹出口31を閉塞するとともに、開放位置において第1吹出口31から離隔して底壁24と当該底壁24と対向する対向壁25との間に上流側を向いた姿勢で配されて流通隙間を形成している。
【0056】
このような構成によれば、ダクト21の上流側から流れてきた空気を、山形の膨出部44により、底壁24に向かう方向と対向壁25に向かう方向とに圧力損失を抑制しつつ分配するとともに、底壁24に向かって流れる空気(流通隙間に流れる空気)を第1吹出口31に案内し、対向壁25に向かって流れる空気を後壁27ひいては第2吹出口32に向けて案内することができる。また、回動体42のうち円形部43の外面は底壁24に近接あるいは当接するように配されるから、底壁24に向かって流れる空気を、第2吹出口32側に逃がすことなく、第1吹出口31に確実に案内することができる。
【0057】
底壁24は、天井壁22の一部により構成されている。内装材の天井壁22の一部をダクト21の底壁24として利用することにより、ダクト21の重量を減らすことができる。また、ダクト21全体を天井平22(内装材)とは別部材で構成する場合には、ダクト21に設けた吹出口31,32と内装材に設けた吹出口の位置合わせが必要となるが、ダクト21の底壁24を内装材の天井壁22の一部で構成することにより、位置合わせが不要となり、組み付け作業性が向上する。
【0058】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0059】
(1)第1吹出口および第2吹出口は、空気の流通路に沿う方向に延びる構成とすることもできる。
【0060】
(2)上記実施形態では、ダクト21の後壁27が上流から流れてきた空気を第2吹出口32に案内する機能を有する(案内壁部の一例)構成を示したが、ダクト21の内部に、空気の流通路を構成する壁部とは別に、案内壁部を設ける構成とすることもできる。あるいは、案内壁部は省略することもできる。
【0061】
(3)気流案内部材51は、必ずしも設けなくてもよい。
【0062】
(4)上記実施形態では、回動体42を涙型とした例を示したが、回動体は上記実施形態に限るものではなく、任意の形状とすることができる。要は、回動させることにより第1吹出部を閉塞したり開放したりすることができる形状であればよい。
【0063】
(5)上記実施形態では、ダクト21の一部を内装材の天井壁22により構成する例を示したが、ダクトは、全体を同一の部材で構成してもよい。そのような場合には、内装材の一部に第1吹出口および第2吹出口に連通する内装材側吹出口を設ける構成とすればよい。
【0064】
(6)送風装置は、乗物の天井に限らず、例えば側壁や床上等、乗物室内の天井以外の部分にも設置することができる。
【符号の説明】
【0065】
10:送風装置、11:送風ファン、13:送風口、21:ダクト、22:天井壁(内装材)、23:ダクト形成部材、24:底壁(室内側壁部)、25:対向壁(対向壁部)、26:側壁、27:後壁(案内壁部)、31:第1吹出口、32:第2吹出口、41:回動軸、42:回動体、43:円形部、44:膨出部、45:湾曲部、46:平面部、47:頂部、51:気流案内部材(気流案内部)、461:第1平面部、462:第2平面部、A1:第1気流、A2:第2気流、AM:合成気流、G1:隙間、G2:隙間(流通隙間)、S:空間
図1
図2
図3
図4