(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/53 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
B29C45/53
(21)【出願番号】P 2021157697
(22)【出願日】2021-09-28
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】山本 康博
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】実公昭37-009365(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂原料を収容するシリンダと、
前記シリンダの内部で移動して前記樹脂原料を可塑化することで溶融樹脂とし、前記溶融樹脂を押し出すトーピードピストンと、
前記シリンダの一方の端部に配置され、前記溶融樹脂を射出する射出部と、
を備える射出成形機であって、
前記シリンダの側壁部に形成され、前記シリンダの内部に前記樹脂原料を供給する供給孔と、
前記トーピードピストンが前記樹脂原料を可塑化するために前記シリンダの他方の端部の側に移動する場合に前記トーピードピストンの移動に連動しつつ、前記供給孔を封鎖する封鎖部と、
を備える、射出成形機。
【請求項2】
前記封鎖部は、軟化した前記樹脂原料又は前記溶融樹脂が前記供給孔から逆流しないように当該供給孔を塞ぐ、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記供給孔は、(St-x)/St≦γ(但し、Stは前記トーピードピストンの下死点から上死点までのストローク量、γは予め設定された前記樹脂原料の充填率、xは前記シリンダの他方の端部から前記供給孔の中心位置までの距離)を満たす位置に配置されている、請求項1又は2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記封鎖部は、前記トーピードピストンの側面に形成されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記封鎖部は、前記トーピードピストンに対して前記シリンダの他方の端部の側に配置されている、請求項1又は2に記載の射出成形機。
【請求項6】
前記シリンダの他方の端部は、開放されており、
前記シリンダの他方の端部を介して、前記シリンダの内部に供給された前記樹脂原料を押し込むプランジャを備える、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項7】
前記シリンダにおける前記トーピードピストンに対して前記シリンダの他方の端部の側の空間と外部とを連通する排気孔と、
前記トーピードピストンの移動に連動し、前記封鎖部で前記供給孔を封鎖した場合に前記排気孔に挿入されて当該排気孔を塞ぐ挿入部と、
を備える、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項8】
前記樹脂原料は、ポリカーボネートに対してガラス転移点が低い材料である、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項9】
前記樹脂原料は、ポリプロピレンに対してガラス転移点が高い材料である、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、射出成形機及び射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の射出成形機は、先端部に射出口が形成されたバレル(シリンダ)、バレルに接続されたホッパ、バレル内を移動し、ロッドの端部が固定されたトーピードピストン、及びバレルの開放口の側に配置され、ロッドが通されたプランジャを備えている。
【0003】
このような射出成形機を用いて溶融樹脂を射出する場合、先ず、プランジャをロッドに固定した状態で当該プランジャをバレルの射出口の側に対して逆側に移動させて、バレルとホッパとの接続口(即ち、樹脂原料の供給孔)を開放し、当該供給孔から樹脂原料をバレル内におけるトーピードピストンに対してプランジャの側の空間に供給する。
【0004】
次に、プランジャとロッドとの固定状態を解除し、プランジャをバレルの射出口の側に移動させて、プランジャによってバレルの供給孔を閉鎖すると共に当該バレルの開放口を閉鎖した状態で、ロッドを介してトーピードピストンをバレル内で当該バレルの射出口の側に対して逆側に移動させる。
【0005】
このとき、樹脂原料がトーピードピストンの溝部を通過し、樹脂原料が可塑化して溶融樹脂となり、当該溶融樹脂がバレル内におけるトーピードピストンに対して射出口の側の空間に流入する。そして、トーピードピストンをバレルの射出口の側に移動させ、溶融樹脂を当該射出口から射出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願人は、以下の課題を見出した。特許文献1の射出成形機は、プランジャによってバレルの供給孔を塞ぐ構成とされている。このような構成において、例えば、供給孔の位置を射出口の側に変更した場合、バレル内におけるトーピードピストンの内部へのプランジャの突出量が大きくなる。そのため、特許文献1の射出成形機において、樹脂原料の供給孔の位置を、適宜、変更することは現実的ではない。
【0008】
本開示は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、シリンダにおける樹脂原料の供給孔の位置を、適宜、変更可能な、射出成形機及び射出成形方法を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る射出成形機は、
樹脂原料を収容するシリンダと、
前記シリンダの内部で移動して前記樹脂原料を可塑化することで溶融樹脂とし、前記溶融樹脂を押し出すトーピードピストンと、
前記シリンダの一方の端部に配置され、前記溶融樹脂を射出する射出部と、
を備える射出成形機であって、
前記シリンダの側壁部に形成され、前記シリンダの内部に前記樹脂原料を供給する供給孔と、
前記トーピードピストンが前記樹脂原料を可塑化するために前記シリンダの他方の端部の側に移動する場合に前記トーピードピストンの移動に連動しつつ、前記供給孔を封鎖する封鎖部と、
を備える。
【0010】
上述の射出成形機において、前記封鎖部は、軟化した前記樹脂原料又は前記溶融樹脂が前記供給孔から逆流しないように当該供給孔を塞ぐことが好ましい。
【0011】
上述の射出成形機において、前記供給孔は、(St-x)/St≦γ(但し、Stは前記トーピードピストンの下死点から上死点までのストローク量、γは予め設定された前記樹脂原料の充填率、xは前記シリンダの他方の端部から前記供給孔の中心位置までの距離)を満たす位置に配置されていることが好ましい。
【0012】
上述の射出成形機において、前記封鎖部は、前記トーピードピストンの側面に形成されていることが好ましい。
【0013】
上述の射出成形機において、前記封鎖部は、前記トーピードピストンに対して前記シリンダの他方の端部の側に配置されていることが好ましい。
【0014】
上述の射出成形機において、前記シリンダの他方の端部は、開放されており、
前記シリンダの他方の端部を介して、前記シリンダの内部に供給された前記樹脂原料を押し込むプランジャを備えることが好ましい。
【0015】
上述の射出成形機は、
前記シリンダにおける前記トーピードピストンに対して前記シリンダの他方の端部の側の空間と外部とを連通する排気孔と、
前記トーピードピストンの移動に連動し、前記封鎖部で前記供給孔を封鎖した場合に前記排気孔に挿入されて当該排気孔を塞ぐ挿入部と、
を備えることが好ましい。
【0016】
上述の射出成形機において、前記樹脂原料は、ポリカーボネートに対してガラス転移点が低い材料であることが好ましい。
【0017】
上述の射出成形機において、前記樹脂原料は、ポリプロピレンに対してガラス転移点が高い材料であることが好ましい。
【0018】
本開示の一態様に係る射出成形方法は、シリンダの内部でトーピードピストンを移動させて樹脂原料を可塑化することで溶融樹脂とし、前記溶融樹脂を射出する射出成形方法であって、
前記樹脂原料を可塑化する際に、前記シリンダの側壁部に形成された前記樹脂原料の供給孔を、前記トーピードピストンの移動と連動する封鎖部によって封鎖する。
【0019】
上述の射出成形方法において、前記封鎖部は、軟化した前記樹脂原料又は前記溶融樹脂が前記供給孔から逆流しないように当該供給孔を塞ぐことが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、シリンダにおける樹脂原料の供給孔の位置を、適宜、変更可能な、射出成形機及び射出成形方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施の形態1の射出成形機を概略的に示す断面図である。
【
図3】実施の形態1の射出成形機におけるピストンを示す分解図である。
【
図4】実施の形態1の射出成形機におけるトーピードピストンを示す斜視図である。
【
図5】実施の形態1の射出成形機におけるトーピードピストンをZ軸+側から見た図である。
【
図6】実施の形態1の射出成形機において樹脂原料を可塑化するための動作を示す断面図である。
【
図7】実施の形態1の射出成形機において樹脂原料を可塑化するための動作を示す断面図である。
【
図8】実施の形態2の射出成形機を概略的に示す断面図である。
【
図9】実施の形態3の射出成形機を概略的に示す断面図である。
【
図10】実施の形態3の射出成形機におけるロッド、ピストン及び封鎖部を示す斜視図である。
【
図11】実施の形態3の射出成形機における封鎖部周辺を拡大して示す斜視図である。
【
図12】実施の形態3の射出成形機における封鎖部を示す斜視図である。
【
図13】実施の形態3の射出成形機において樹脂原料を可塑化するための動作を示す断面図である。
【
図14】実施の形態3の射出成形機において樹脂原料を可塑化するための動作を示す断面図である。
【
図15】実施の形態4の射出成形機を概略的に示す部分断面図である。
【
図16】実施の形態4の射出成形機を概略的に示す異なる部分断面図である。
【
図17】実施の形態4の射出成形機における封鎖部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本開示が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0023】
<実施の形態1>
先ず、本実施の形態の射出成形機の構成を説明する。本実施の形態の射出成形機は、例えば、ポリプロピレン(PP)やポリアミド(PA)などのABSやポリカーボネート(PC)などに比べてガラス転移点が低い樹脂原料を用いてワークを積層造形する際に好適である。
【0024】
図1は、本実施の形態の射出成形機を概略的に示す断面図であり、シリンダの内部に樹脂原料が供給された状態を示している。
図2は、
図1のII-II断面図である。なお、以下の説明では、説明を明確にするために、三次元(XYZ)座標系を用いて説明する。ここで、
図1などでは、シリンダの内部に供給された樹脂原料を簡略化して示している。
【0025】
射出成形機1は、
図1に示すように、シリンダ11、射出部12、ピストン13、第1の加熱部14及び第2の加熱部15を備えている。シリンダ11は、Z軸方向に延在しており、Z軸+側の端部が閉塞された有天筒形状を基本形態としている。
【0026】
つまり、シリンダ11は、Z軸+側に配置された閉塞部11a、及び閉塞部11aの周縁部と連続し、且つ、閉塞部11aからZ軸-側に延在する筒状の側壁部11bを備えており、シリンダ11のZ軸-側の端部が開放されている。このとき、シリンダ11の閉塞部11aのZ軸-側の面は、シリンダ11の中央から周縁部に向かうのに従ってZ軸-側に向かって傾斜する傾斜面とされているとよい。
【0027】
シリンダ11の閉塞部11aには、当該閉塞部11aをZ軸方向に貫通する貫通孔11cが形成されている。シリンダ11の側壁部11bには、供給孔11dが形成されており、当該供給孔11dに樹脂原料Mが収容されたホッパが接続されている。
【0028】
ここで、供給孔11dの配置に関しては、後述する。シリンダ11の側壁部11bにおけるZ軸-側の端部には、シリンダ11の径方向外側に突出するフランジ部11eが形成されている。
【0029】
射出部12は、シリンダ11から押し出される溶融樹脂を射出することができるように、シリンダ11に対してZ軸-側に配置されている。射出部12は、溶融樹脂を射出する射出口12a、及び溶融樹脂を射出口12aに導く連通路12bを備えている。
【0030】
このような射出部12は、リテーリングナット16を介してシリンダ11のフランジ部11eに固定されている。このとき、
図1に示すように、連通路12bのZ軸+側の端部は、シリンダ11の内部と連通する。
【0031】
ここで、射出部12は、射出口12aが形成される第1のプレート12cと、連通路12bが形成される第2のプレート12dと、に分割されており、詳細な機能は後述するが、第2のプレート12dがセラミックプレートなどの熱伝導性に優れた材料で構成されているとよい。
【0032】
ピストン13は、シリンダ11の内部を移動可能に当該シリンダ11の内部に配置されている。
図3は、本実施の形態の射出成形機におけるピストンを示す分解図である。
図4は、本実施の形態の射出成形機におけるトーピードピストンを示す斜視図である。
図5は、本実施の形態の射出成形機におけるトーピードピストンをZ軸+側から見た図である。
【0033】
ピストン13は、
図3に示すように、トーピードピストン13a、逆止リング13b、ストッパ13c、加圧ピストン13d及び付勢部材13eを備えている。トーピードピストン13aは、トーピードピストン13aのZ軸+側の端部が閉塞された有天筒形状を基本形態としており、大凡、シリンダ11の内周形状と略等しい外周形状を有する。
【0034】
つまり、トーピードピストン13aは、Z軸+側に配置された閉塞部13f、及び閉塞部13fの周縁部と連続し、且つ、閉塞部13fからZ軸-側に延在する筒状の側壁部13gを備えており、トーピードピストン13aのZ軸-側の端部が開放されている。
【0035】
トーピードピストン13aの閉塞部13fには、
図4に示すように、閉塞部13fをZ軸方向に貫通する貫通孔13hが形成されている。このとき、閉塞部13fのZ軸+側の面は、シリンダ11の閉塞部11aのZ軸-側の面の形状と対応するように、トーピードピストン13aの中央から周縁部に向かうのに従ってZ軸-側に向かって傾斜する傾斜面とされているとよい。
【0036】
トーピードピストン13aの側壁部13gには、
図3乃至
図5に示すように、封鎖部13i及び溝部13jが形成されている。封鎖部13iは、ピストン13がシリンダ11の内部のZ軸方向の所定の範囲に配置されている期間において、当該シリンダ11の供給孔11dを封鎖する。
【0037】
封鎖部13iは、
図2に示すように、Z軸方向から見て、トーピードピストン13aの側壁部13gにおけるシリンダ11の供給孔11dと対応する領域に配置されている。そして、封鎖部13iの外周形状は、シリンダ11の内周形状と対応する。このような封鎖部13iは、Z軸方向に延在しており、例えば、トーピードピストン13aの側壁部13gにおけるZ軸方向の略全域に配置されているとよい。
【0038】
溝部13jは、Z軸方向に延在しており、トーピードピストン13aの側壁部13gにおける封鎖部13iが形成された領域に対して他の領域において、トーピードピストン13aの周方向に略等しい間隔で配置されている。
【0039】
但し、溝部13jは、後述するように、シリンダ11におけるピストン13に対してZ軸+側の第1の空間S1(
図1を参照)に供給された樹脂原料Mが溝部13jを通過する際に、樹脂原料Mを可塑化させて溶融樹脂とし、当該溶融樹脂をシリンダ11におけるピストン13に対してZ軸-側の第2の空間S2に流入させることができる形状及び配置であればよい。
【0040】
逆止リング13bは、
図3に示すように、シリンダ11の内周形状と略等しい外周形状を有する環形状である。そして、逆止リング13bの径方向の幅寸法は、溝部13jの深さ以上の長さを有する。このような逆止リング13bは、トーピードピストン13aに対してZ軸-側に配置されている。
【0041】
ストッパ13cは、逆止リング13bをトーピードピストン13aのZ軸-側の端部に保持する。詳細には、ストッパ13cは、例えば、
図3に示すように、リング部13k及び引っ掛け部13lを備えている。
【0042】
リング部13kは、トーピードピストン13aの内周形状と略等しい外周形状を有する。引っ掛け部13lは、Z軸に対して直交する方向から見て略L字形状であり、引っ掛け部13lの鉛直部分のZ軸+側の端部がリング部13kに固定されている。
【0043】
引っ掛け部13lの水平部分は、
図3に示すように、引っ掛け部13lの鉛直部分のZ軸-側の端部からリング部13kの外側に向かって突出している。引っ掛け部13lは、リング部13kの周方向に略等しい間隔で配置されている。
【0044】
リング部13k、及び引っ掛け部13lの鉛直部分が逆止リング13bの貫通孔に通された状態で、リング部13kがトーピードピストン13aのZ軸-側の端部の開放口に嵌合されている。これにより、逆止リング13bは、ストッパ13cを介してトーピードピストン13aのZ軸-側の端部に保持されている。
【0045】
このとき、引っ掛け部13lの鉛直部分のZ軸方向の長さは、逆止リング13bのZ軸方向の厚さに対して長い。これにより、逆止リング13bは、シリンダ11のZ軸-側の端部と引っ掛け部13lの水平部分との間でZ軸方向に移動可能である。但し、ストッパ13cは、逆止リング13bをZ軸方向に移動可能にシリンダ11のZ軸-側の端部に保持できる構成であればよい。
【0046】
加圧ピストン13dは、
図3に示すように、加圧ピストン13dのZ軸-側の端部が閉塞された有底筒形状であり、例えば、加圧ピストン13dのZ軸-側の端面は、XY平面と平行な略平坦面である。そして、加圧ピストン13dの外周形状は、トーピードピストン13aの内周形状と略等しい。
【0047】
加圧ピストン13dは、トーピードピストン13aと加圧ピストン13dとの間がシール部材13mで塞がれた状態で当該トーピードピストン13aの内部に移動可能に挿入されている。そのため、加圧ピストン13dがトーピードピストン13aに対してZ軸方向に移動することで、トーピードピストン13aに対するシリンダ11の第2の空間S2への突出量が変化する。
【0048】
このとき、詳細な機能は後述するが、
図3に示すように、加圧ピストン13dのZ軸-側の端面には、溶融樹脂が侵入する侵入部13nが形成されているとよい。侵入部13nは、例えば、加圧ピストン13dのZ軸-側の端面に形成された溝部であり、Z軸に対して直交する方向に延在している。
【0049】
但し、侵入部13nは、加圧ピストン13dのZ軸-側の端面が射出部12のZ軸+側の端部に接触した状態で、加圧ピストン13dのZ軸-側の端面と射出部12のZ軸+側の端部との間に溶融樹脂を侵入させることができる形状であればよい。
【0050】
付勢部材13eは、加圧ピストン13dをトーピードピストン13aに対してシリンダ11の第2の空間S2の側に付勢する。付勢部材13eは、例えば、
図3に示すように、コイルバネなどの弾性部材である。
【0051】
付勢部材13eは、加圧ピストン13dの内部に配置されており、付勢部材13eのZ軸+側の端部がトーピードピストン13aのZ軸+側の端部に接触し、付勢部材13eのZ軸-側の端部が加圧ピストン13dのZ軸-側の端部に接触している。
【0052】
このようなピストン13のZ軸+側の端部には、
図1に示すように、ロッド17のZ軸-側の端部が接続されている。ロッド17には、ロッド17をZ軸方向に貫通する貫通孔17aが形成されており、トーピードピストン13aの貫通孔13hとロッド17の貫通孔17aとが連通している。
【0053】
ロッド17は、ピストン13を駆動させるための駆動装置の一構成部品であり、シリンダ11の貫通孔11cに通されている。そして、ロッド17は、例えば、駆動装置の一構成部品であるボールネジのスライダに接続されており、ボールネジのネジ軸をモータで回転駆動させることで、スライダを介してZ軸方向に移動する。但し、ロッド17をZ軸方向に移動させる手段は限定されない。
【0054】
第1の加熱部14は、例えば、ヒートヒータなどを備えており、シリンダ11の側壁部11bにおけるZ軸-側の部分に巻き付けられている。但し、第1の加熱部14は、シリンダ11の内部の樹脂原料を加熱したり、溶融樹脂を保温したり、することができる構成であればよい。
【0055】
第2の加熱部15は、例えば、ヒータ線などを備えており、射出部12の第2のプレート12dに設けられている。但し、第2の加熱部15は、射出部12から射出される溶融樹脂を予め設定された範囲内の温度に加熱することができる構成であればよい。
【0056】
次に、本実施の形態の射出成形機1おけるシリンダ11の供給孔11dのZ軸方向の位置を説明する。シリンダ11の供給孔11dは、少なくともシリンダ11の第1の空間S1で樹脂原料Mを可塑化する際に、軟化した樹脂(例えば、弾性体や半溶融体となった樹脂)や溶融樹脂がシリンダ11の供給孔11dから逆流しないように、ピストン13の封鎖部13iで封鎖することができる位置に配置されているとよい。
【0057】
例えば、シリンダ11の供給孔11dは、以下の<式1>を満たすシリンダ11のZ軸方向の位置に配置されているとよい。
<式1>(St-x)/St≦γ
但し、Stはトーピードピストン13aが最もZ軸-側に配置された位置(即ち、下死点)から最もZ軸+側に配置された位置(即ち、上死点)までのストローク量、γは予め設定された樹脂原料Mの充填率、xはシリンダ11の閉塞部11aのZ軸-側の端部から供給孔11dの中心位置までの距離である。
【0058】
このとき、充填率γとして、例えば、ピストン13が最もZ軸-側に配置された状態でのシリンダ11の第1の空間S1の容積、及び当該状態でのシリンダ11の第1の空間S1に供給される樹脂原料Mの容積に基づいて設定することができる。
【0059】
例えば、樹脂原料Mとしてポリプロピレンやポリアミドなどを用い、充填率γとして0.5(即ち、50%)に設定した場合、ピストン13のZ軸方向の位置が当該ピストン13のストローク量Stの半分の位置に到達すると、樹脂原料Mがピストン13による圧縮と共に第1の加熱部14の加熱によって軟化し始めるので、ピストン13のZ軸+側へのストローク量の半分以下の位置に供給孔11dが配置される。
【0060】
これにより、ピストン13がZ軸+側に移動して樹脂原料Mの充填率が1(即ち、100%)になる前に供給孔11dをトーピードピストン13aの封鎖部13iで封鎖することができる。そのため、軟化した樹脂がシリンダ11の供給孔11dから逆流することを抑制できる。
【0061】
次に、本実施の形態の射出成形機1を用いてワークを成形する流れを説明する。
図6及び
図7は、本実施の形態の射出成形機において樹脂原料を可塑化するための動作を示す断面図である。先ず、ピストン13が最もZ軸+側に配置された状態から、ロッド17を介してピストン13をZ軸-側に移動させつつ、シリンダ11の供給孔11dから当該シリンダ11の第1の空間S1にペレット状の樹脂原料Mを供給する。
【0062】
そして、
図1に示すように、ピストン13が最もZ軸-側に到達すると、樹脂原料Mの供給を停止する。このとき、樹脂原料Mは、上述の充填率γでシリンダ11の第1の空間S1に供給される。また、ピストン13の加圧ピストン13dは、射出部12に接触してトーピードピストン13aの内部に押し込まれた状態であり、それに伴って、付勢部材13eが圧縮した状態である。
【0063】
次に、ロッド17を介してピストン13をZ軸+側に移動させる。このとき、第1の空間S1での樹脂原料Mの充填率が100%に到達している状態では、樹脂原料Mがピストン13と、シリンダ11の閉塞部11aと、シリンダ11の側壁部11bと、で圧縮されると共に、第1の加熱部14によって加熱されて軟化する。
【0064】
そして、第1の空間S1での樹脂原料Mの充填率が100%に到達している状態では、
図6に示すように、ピストン13の封鎖部13iがシリンダ11の供給孔11dに到達しており、封鎖部13iが供給孔11dを封鎖する。これにより、軟化した樹脂が供給孔11dから逆流することを抑制できる。
【0065】
第1の空間S1での樹脂原料Mの充填率が100%に到達した状態からさらにピストン13がZ軸+側に移動するのに伴って、樹脂原料Mがピストン13の溝部13jを通過しつつ可塑化して溶融樹脂となり、シリンダ11の第2の空間S2に流入する。
【0066】
このとき、ピストン13の逆止リング13bがZ軸-側に押され、トーピードピストン13aのZ軸-側の端部と逆止リング13bとの隙間を介して当該逆止リング13bの貫通孔から溶融樹脂をシリンダ11の第2の空間S2に良好に流入させることができる。
【0067】
また、ピストン13のトーピードピストン13aのZ軸+側の面がトーピードピストン13aの中央から周縁部に向かうのに従ってZ軸-側に向かって傾斜する傾斜面に形成されている場合、ピストン13がZ軸+側に移動する際に、樹脂原料Mをピストン13のトーピードピストン13aの溝部13jに良好に誘導することができる。
【0068】
ここで、ピストン13がZ軸+側に移動するのに伴って、付勢部材13eの付勢力によってトーピードピストン13aから加圧ピストン13dが突出する。このとき、ピストン13がZ軸+側に移動するのに伴って、シリンダ11の第1の空間S1の容積の減少量が第2の空間S2の容積の増加量以上となるように、加圧ピストン13dの形状や付勢部材13eの付勢力などが設定されているとよい。これにより、ピストン13がZ軸+側に移動する際にシリンダ11の第2の空間S2への気体の流入を抑制することができる。
【0069】
次に、
図7に示すように、ピストン13が最もZ軸+側に到達すると、ロッド17を介してピストン13をZ軸-側に移動させる。これにより、溶融樹脂Rがピストン13で押し込まれ、溶融樹脂Rが射出部12の連通路12b及び射出口12aを介して射出される。
【0070】
ここで、ピストン13がZ軸-側に移動するのに伴って、シリンダ11の第2の空間S2の圧力が上昇して溶融樹脂Rが加圧ピストン13dの侵入部13nに侵入し、加圧ピストン13dがZ軸+側に移動してトーピードピストン13aの内部に押し込まれる。
【0071】
このとき、トーピードピストン13aの内部の気体を、トーピードピストン13aの貫通孔13h及びロッド17の貫通孔17aを介して射出成形機1の外部に排気することができ、加圧ピストン13dをスムーズに移動させることができる。
【0072】
また、ピストン13がZ軸-側に移動する際に、ピストン13の逆止リング13bがZ軸+側に押され、逆止リング13bによってトーピードピストン13aの溝部13jが塞がれるので、トーピードピストン13aの溝部13jを介して溶融樹脂Rがシリンダ11の第1の空間S1に逆流することを抑制できる。
【0073】
しかも、ピストン13がZ軸-側に移動する際に、Z軸方向においてシリンダ11の供給孔11dと第2の空間S2との間に封鎖部13iが配置されるので、溶融樹脂Rがシリンダ11の第1の空間S1に逆流することをさらに抑制できる。
【0074】
また、第2のプレート12dが上述のようにセラミックプレートなどの熱伝導性に優れた材料で構成されている場合、第2の加熱部15の熱を効率良く溶融樹脂に伝えることができる。しかも、第2の加熱部15が損傷した場合、リテーリングナット16を緩めると第2のプレート12dを交換することができ、第2の加熱部15の交換作業が容易である。
【0075】
上述の樹脂原料Mの可塑化と溶融樹脂Rの射出とを繰り返しつつ、例えば、射出成形機1を移動させたり、射出成形機1に対してZ軸-側に配置されたテーブルを移動させたり、することで、所望のワークを積層造形することができる。
【0076】
このように本実施の形態の射出成形機1及び射出成形方法は、トーピードピストン13aが樹脂原料Mを可塑化するためにZ軸+側に移動する際に、トーピードピストン13aの移動に連動しつつ、シリンダ11の供給孔11dを封鎖する封鎖部13iを備えている。そのため、軟化した樹脂がシリンダ11の供給孔11dから逆流することを抑制でき、樹脂原料Mを良好にシリンダ11の第1の空間S1に供給できる。
【0077】
このとき、封鎖部13iは、トーピードピストン13aの移動に連動するので、樹脂原料Mが軟化する際にシリンダ11の供給孔11dが封鎖部13iで封鎖されるように、シリンダ11の供給孔11dの位置を、適宜、変更することができる。
【0078】
例えば、上述のように供給孔11dの位置を設定することで、ピストン13がZ軸+側に移動して樹脂原料Mの充填率が100%になった状態で供給孔11dを封鎖部13iで封鎖することができる。そのため、樹脂原料Mとしてガラス転移点が低い材料を用いる場合、樹脂原料Mが第1の加熱部14によって加熱されて軟化した樹脂がシリンダ11の供給孔11dから逆流することを抑制できる。
【0079】
また、本実施の形態では、封鎖部13iをトーピードピストン13aの側壁部13gに形成しているため、シリンダ11によって第2の空間S2の溶融樹脂Rを押し出す際に、Z軸方向においてシリンダ11の供給孔11dと第2の空間S2との間に封鎖部13iを配置することができる。そのため、溶融樹脂Rがシリンダ11の第1の空間S1に逆流することを抑制でき、その結果、溶融樹脂Rがシリンダ11の供給孔11dから逆流することを抑制できる。
【0080】
<実施の形態2>
図8は、本実施の形態の射出成形機を概略的に示す断面図である。本実施の形態の射出成形機21は、実施の形態1の射出成形機1と略等しい構成とされているため、重複する説明は省略し、等しい部材には等しい符号を用いて説明する。
【0081】
本実施の形態の射出成形機21は、
図8に示すように、シリンダ22のZ軸+側の端部が開放しており、シリンダ22の開放口22aを介してプランジャ23が第1の空間S1に供給された樹脂原料MをZ軸-側に押し込み、ピストン13とプランジャ23とで樹脂原料Mを圧縮することができる構成とされている。
【0082】
プランジャ23は、柱形状を基本形態としている。そして、プランジャ23の中央には、Z軸方向に貫通する貫通孔23aが形成されており、当該貫通孔23aにロッド17が通されている。このとき、プランジャ23のZ軸-側の面は、トーピードピストン13aのZ軸+側の端部の形状に対応するように傾斜面とされているとよい。
【0083】
このような射出成形機21は、例えば、ピストン13だけではなく、ピストン13とプランジャ23とによって樹脂原料Mを圧縮することができる。そのため、シリンダ22の第1の空間S1での充填率が低い材料を樹脂原料Mとして用いる場合であっても、樹脂原料Mを良好に可塑化することができる。
【0084】
<実施の形態3>
図9は、本実施の形態の射出成形機を概略的に示す断面図であり、シリンダの内部に樹脂原料が供給された状態を示している。
図10は、本実施の形態の射出成形機におけるロッド、ピストン及び封鎖部を示す斜視図である。
図11は、本実施の形態の射出成形機における封鎖部周辺を拡大して示す斜視図である。
図12は、本実施の形態の射出成形機における封鎖部を示す斜視図である。
【0085】
本実施の形態の射出成形機31は、実施の形態1の射出成形機1と略等しい構成とされているため、重複する説明は省略し、等しい部材には等しい符号を用いて説明する。本実施の形態の射出成形機31は、例えば、ABSやポリカーボネートなどのポリプロピレンやポリアミドなどに比べてガラス転移点が高い樹脂原料を用いてワークを積層造形する際に好適である。
【0086】
そのため、シリンダ11の第1の空間S1に供給された樹脂原料Mが第1の加熱部14による加熱などによって軟化し難く、大凡、ピストン32におけるトーピードピストン32aの溝部32bを通過する際のせん断のみによって軟化するため、第1の空間S1に樹脂原料Mが良好に供給されるように、供給孔11dがシリンダ11の側壁部11bにおけるZ軸+側の端部近傍に形成されている。
【0087】
そして、本実施の形態のピストン32は、実施の形態1のピストン13と略等しい構成とされているが、トーピードピストン32aの側壁部の全周に溝部32bが形成されている。そのため、トーピードピストン32aの溝部32bがシリンダ11の供給孔11dに到達することなく、封鎖部33によって供給孔11dを封鎖することができるように、封鎖部33がピストン32に対してZ軸+側に配置されている。
【0088】
封鎖部33は、
図9乃至
図11に示すように、ピストン32と別部材として構成されている。封鎖部33は、
図12に示すように、封鎖壁33a、リング部33b及び係合片33cを備えている。封鎖壁33aは、厚みを有する板体を基本形態としており、Z軸方向に延在している。そして、封鎖壁33aの外周形状は、シリンダ11の内周形状と対応する。
【0089】
封鎖壁33aのZ軸方向の高さは、シリンダ11の供給孔11dのZ軸方向の高さに対して長い。つまり、封鎖壁33aの外周面は、シリンダ11の内周面に沿って供給孔11dの全域を覆うことが可能な形状とされている。
【0090】
封鎖壁33aのZ軸-側の面は、トーピードピストン32aのZ軸+側の端部の形状に対応するように傾斜面とされている。このとき、封鎖壁33aのZ軸+側の端部は、ピストン32の周方向において時計回り又は反時計回りの側に向かうのに従ってZ軸-側に向かって傾斜する傾斜面を備えているとよい。
【0091】
リング部33bは、封鎖壁33aのY軸-側の端部に固定されている。リング部33bは、Z軸方向に貫通する貫通部を有し、当該貫通部の内周形状はロッド17の外周形状に対して、若干、大きい。係合片33cは、封鎖壁33aからZ軸-側に突出しており、トーピードピストン32aの溝部32bに係合可能な形状とされている。
【0092】
このような封鎖部33をピストン32に固定する場合、リング部33bをロッド17に通し、封鎖壁33aをトーピードピストン32aに載置すると共に係合片33cをトーピードピストン32aの溝部32bに係合する。
【0093】
そして、例えば、ロッド17のZ軸-側の部分に雄ねじが形成されている場合、ロッド17に通したナット34をロッド17の雄ねじにねじ込み、ナット34とトーピードピストン32aとでリング部33bを挟み込むことで、封鎖部33をピストン32に固定することができる。但し、封鎖部33をピストン32に対してZ軸+側に固定することができれば、固定手段は限定されない。
【0094】
次に、本実施の形態の射出成形機31を用いてワークを成形する流れを説明する。
図13及び
図14は、本実施の形態の射出成形機において樹脂原料を可塑化するための動作を示す断面図である。
【0095】
先ず、ピストン32が最もZ軸+側に配置された状態から、ロッド17を介してピストン32をZ軸-側に移動させつつ、シリンダ11の供給孔11dから当該シリンダ11の第1の空間S1に樹脂原料Mを供給する。
【0096】
そして、
図9に示すように、ピストン32が最もZ軸-側に到達すると、樹脂原料Mの供給を停止する。次に、
図13に示すように、ロッド17を介してピストン32をZ軸+側に移動させる。
【0097】
これにより、樹脂原料Mがピストン32と、シリンダ11の閉塞部11aと、シリンダ11の側壁部11bと、で圧縮され、トーピードピストン32aの溝部32bを通過しつつ可塑化して溶融樹脂Rとなり、シリンダ11の第2の空間S2に流入する。ここで、封鎖部33における封鎖壁33aのZ軸+側の面に傾斜面を備えている場合、樹脂原料Mをトーピードピストン32aの溝部32bに良好に誘導することができる。
【0098】
このとき、上述のように、本実施の形態の樹脂原料Mは、大凡、トーピードピストン32aの溝部32bを通過する際のせん断のみによって軟化するため、第1の加熱部14による加熱などによって軟化し難い。そのため、
図13の状態において、大凡、シリンダ11の供給孔11dから軟化した溶融樹脂Rが逆流することがない。
【0099】
さらに、ロッド17を介してピストン32をZ軸+側に移動させると、
図14に示すように、ピストン32がシリンダ11の供給孔11dに到達することなく、封鎖部33が供給孔11dに到達し、封鎖部33が供給孔11dを封鎖する。
【0100】
このようにピストン32がシリンダ11の供給孔11dに到達することなく、封鎖部33が供給孔11dを封鎖するので、樹脂原料Mがトーピードピストン32aの溝部32bを通過して可塑化された溶融樹脂Rが供給孔11dから逆流することを抑制できる。
【0101】
次に、ピストン32が最もZ軸+側に到達すると、ロッド17を介してピストン32をZ軸-側に移動させる。これにより、溶融樹脂Rがピストン32で押し込まれ、溶融樹脂Rが射出部12の連通路12b及び射出口12aを介して射出される。
【0102】
このとき、ピストン32がZ軸-側に移動する際に、Z軸方向においてシリンダ11の供給孔11dと第2の空間S2との間でトーピードピストン32aの溝部32bに封鎖部33の係合片33cが係合されているので、溶融樹脂Rがシリンダ11の第1の空間S1に逆流することを抑制できる。
【0103】
このように本実施の形態の射出成形機31及び射出成形方法も、トーピードピストン32aが樹脂原料Mを可塑化するためにZ軸+側に移動する際に、封鎖部33がトーピードピストン32aの移動に連動するので、樹脂原料Mが軟化する際にシリンダ11の供給孔11dが封鎖部33で封鎖されるように、シリンダ11の供給孔11dの位置を、適宜、変更することができる。
【0104】
なお、本実施の形態では、封鎖部33をシリンダ11に対してZ軸+側に配置した形態を説明したが、実施の形態1のピストン13を用いても同様に実施することができる。
【0105】
<実施の形態4>
図15は、本実施の形態の射出成形機を概略的に示す部分断面図であり、シリンダの排気孔を挿入部で塞ぐ前の状態を示している。
図16は、本実施の形態の射出成形機を概略的に示す部分断面図であり、シリンダの排気孔を挿入部で塞いだ後の状態を示している。
図17は、本実施の形態の射出成形機における封鎖部を示す斜視図である。
【0106】
本実施の形態の射出成形機41は、実施の形態3の射出成形機31と略等しい構成とされているため、重複する説明は省略し、等しい部材には等しい符号を用いて説明する。本実施の形態の射出成形機41は、例えば、ポリプロピレンやポリアミドなどのABSやポリカーボネートなどに比べてガラス転移点が低い樹脂原料Mが気流によってシリンダ11の第1の空間S1に供給される場合に好適である。
【0107】
例えば、樹脂原料Mが気流によってシリンダ11の第1の空間S1に供給される場合、シリンダ11の第1の空間S1から気体を排気する必要がある。その一方で、軟化した樹脂が排気と共に排出されないようにする必要がある。
【0108】
また、第1の空間S1に樹脂原料Mが良好に供給されるように、供給孔11dがシリンダ11の側壁部11bにおけるZ軸+側の端部近傍に形成されている場合、第1の空間S1での樹脂原料Mの充填率が100%に到達した状態で供給孔11dを封鎖している必要がある。
【0109】
そこで、本実施の形態の射出成形機41は、上述の要件を満たすシリンダ11及び封鎖部42の構成とされている。シリンダ11は、
図15及び
図16に示すように、実施の形態3の射出成形機31のシリンダ11と略等しい構成とされているが、シリンダ11の閉塞部11aをZ軸方向に貫通する排気孔11fが当該閉塞部11aに形成されている。
【0110】
封鎖部42は、
図17に示すように、封鎖壁42a、誘導部42b、リング部42c及び係合片42dを備えている。封鎖壁42aは、厚みを有する板体を基本形態としており、Z軸方向に延在している。
【0111】
封鎖壁42aの外周形状は、シリンダ11の内周形状と対応する。そして、封鎖壁42aは、Z軸方向から見て、シリンダ11の排気孔11fに挿入可能な位置に配置されており、排気孔11fの周形状と略等しい周形状を有する。
【0112】
封鎖壁42aのZ軸方向の高さは、例えば、ピストン43がZ軸+側に移動してシリンダ11の第1の空間S1での樹脂原料Mの充填率が100%に到達する前から当該ピストン43が最もZ軸+側の位置に到達するまで供給孔11dを封鎖することができ、且つ、封鎖壁42aが供給孔11dを封鎖して予め設定された期間(例えば、直後)を経過後からシリンダ11の排気孔11fに挿入することができる高さを有する。
【0113】
ここで、本実施の形態のピストン43は、
図15に示すように、トーピードピストン43a、逆止リング43b及びストッパ43cを備えている。トーピードピストン43aは、柱形状を基本形態としており、トーピードピストン43aのZ軸+側の端部にロッド44のZ軸-側の端部が固定されている。ここで、ロッド44は、実施の形態1のロッド17の貫通孔17aに相当する貫通孔を省略することができる。
【0114】
トーピードピストン43aの周面には、溝部43dが形成されている。溝部43dは、Z軸方向に延在しており、トーピードピストン43aの周方向に略等しい間隔で配置されている。
【0115】
逆止リング43bは、シリンダ11の内周形状と略等しい外周形状を有する環形状であり、トーピードピストン43aに対してZ軸-側に配置されている。ストッパ43cは、逆止リング43bをトーピードピストン43aのZ軸-側の端部に保持する。
【0116】
ストッパ43cは、例えば、トーピードピストン43aのZ軸-側の端部から突出する柱部43e、及び柱部43eのZ軸-側の端部から当該柱部43eを中心として放射状に分岐する分岐部43fを備えている。
【0117】
そして、柱部43eが逆止リング43bの貫通孔に通された状態で、逆止リング43bがトーピードピストン43aのZ軸-側の端部と分岐部43fとの間に配置されている。このとき、逆止リング43bがZ軸方向に移動できるように、柱部43eのZ軸方向の長さは逆止リング43bのZ軸方向の厚さに対して長い。
【0118】
誘導部42bは、シリンダ11の第1の空間S1の樹脂原料Mをトーピードピストン32aの溝部32bに誘導する。誘導部42bは、
図17に示すように、封鎖壁42aのZ軸-側の部分と一体的に形成された不連続な筒形状を基本形態としている。誘導部42bの外周形状は、シリンダ11の内周形状と対応する。
【0119】
誘導部42bのZ軸+側の面は、ピストン32の周方向において反時計回り(但し、時計回りであってもよい)の側に向かうに従ってZ軸-側に向かって螺旋状に傾斜する傾斜面を備えている。また、誘導部42bのZ軸-側の面は、トーピードピストン32aのZ軸+側の端部の形状に対応するように傾斜面とされている。
【0120】
このような誘導部42bのZ軸+側の面から封鎖壁42aのZ軸+側の部分がZ軸+側に突出しており、当該封鎖壁42aのZ軸+側の部分はシリンダ11の排気孔11fに挿入された状態で当該排気孔11fを塞ぐ挿入部として機能する。
【0121】
リング部42cは、誘導部42bの内部に固定されている。リング部42cは、Z軸方向に貫通する貫通部を有し、当該貫通部の内周形状はロッド17の外周形状に対して、若干、大きい。係合片42dは、封鎖壁42aからZ軸-側に突出しており、トーピードピストン43aの溝部43dに係合可能な形状とされている。
【0122】
上述の構成の封鎖部42をピストン43に固定する場合、リング部42cをロッド17に通し、誘導部42bをトーピードピストン43aに載置すると共に係合片42dをトーピードピストン43aの溝部43dに係合する。そして、ロッド17にリング部42cを固定することで、封鎖部42をピストン43に固定することができる。但し、封鎖部42をピストン43に対してZ軸+側に固定する手段は限定されない。
【0123】
このような射出成形機41を用いて溶融樹脂Rを射出する場合、ピストン43をZ軸+側に移動させ、第1の空間S1での樹脂原料Mの充填率が100%に到達する直前の状態になると、封鎖壁42aが供給孔11dを封鎖する。これにより、軟化した樹脂が供給孔11dから逆流することを抑制できる。
【0124】
このとき、ピストン43がZ軸+側への移動を開始してから、封鎖壁42aによる供給孔11dの閉鎖状態が予め設定された期間を経過するまでは、シリンダ11の排気孔11fが開放しているので、第1の空間S1に樹脂原料Mを供給するために当該第1の空間S1に流れ込んだ気体を良好に排出することができる。
【0125】
そして、ピストン43をZ軸+側にさらに移動させると、封鎖壁42aのZ軸+側の部分、すなわち、挿入部がシリンダ11の排気孔11fに挿入されて当該排気孔11fを塞ぐ。これにより、軟化した樹脂が排気孔11fから排出されることを抑制できる。
【0126】
その後、ピストン43をZ軸-側に移動させると、溶融樹脂Rがピストン43で押し込まれ、溶融樹脂Rが射出部12の連通路12b及び射出口12aを介して射出される。このとき、封鎖壁42aは、シリンダ11の排気孔11fから抜去される。
【0127】
このようにピストン43をZ軸方向で往復させることで、上述のように樹脂原料Mの可塑化と溶融樹脂Rの射出とを繰り返すことができるが、その都度、封鎖壁42aのシリンダ11の排気孔11fへの挿入及び抜去が繰り返される。そのため、シリンダ11の排気孔11fが固化した樹脂で閉塞されることを抑制できる。
【0128】
なお、本実施の形態では、排気孔11fをシリンダ11の閉塞部11aに形成したが、実施の形態2のプランジャ23に形成してもよい。また、本実施の形態では、挿入部を封鎖壁42aで形成したが、実施の形態1のトーピードピストン13aからZ軸+側に突出するように設けてもよい。
【0129】
本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
例えば、上記実施の形態の射出成形機は、一つのシリンダ及びピストンなどを備えているが、複数のシリンダ及びピストンなどを備えていてもよい。
例えば、上記実施の形態の射出成形機は、第1の加熱部14及び第2の加熱部15を備えているが、省略してもよい。また、例えば、加圧ピストン13dなどを省略してもよい。
例えば、樹脂原料の供給孔の位置及び封鎖部の形状や配置は、上述の限りではなく、要するに、トーピードピストンの移動に連動して封鎖部が移動した際に、軟化した樹脂原料や溶融樹脂が供給孔から逆流しないように、供給孔を封鎖することができる構成であればよい。
【符号の説明】
【0130】
1 射出成形機
11 シリンダ、11a 閉塞部、11b 側壁部、11c 貫通孔、11d 供給孔、11e フランジ部、11f 排気孔
12 射出部
12a 射出口、12c 第1のプレート
12b 連通路、12d 第2のプレート
13 ピストン
13a トーピードピストン、13f 閉塞部、13g 側壁部、13h 貫通孔、13i 封鎖部、13j 溝部
13b 逆止リング
13c ストッパ、13k リング部、13l 引っ掛け部
13d 加圧ピストン、13n 侵入部
13e 付勢部材
13m シール部材
14 第1の加熱部
15 第2の加熱部
16 リテーリングナット
17 ロッド、17a 貫通孔
21 射出成形機
22 シリンダ、22a 開放口
23 プランジャ、23a 貫通孔
31 射出成形機
32 ピストン
32a トーピードピストン、32b 溝部
33 封鎖部
33a 封鎖壁
33b リング部
33c 係合片
34 ナット
41 射出成形機
42 封鎖部
42a 封鎖壁
42b 誘導部
42c リング部
42d 係合片
43 ピストン
43a トーピードピストン、43d 溝部
43b 逆止リング
43c ストッパ、43e 柱部、43f 分岐部
44 ロッド
M 樹脂原料
R 溶融樹脂
S1 第1の空間
S2 第2の空間