(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】自律走行制御システム、自律走行制御装置、自律走行装置、自律走行制御方法、自律走行制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20241008BHJP
【FI】
G05D1/43
(21)【出願番号】P 2021158060
(22)【出願日】2021-09-28
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慧
【審査官】岩▲崎▼ 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-068304(JP,A)
【文献】特開2020-114695(JP,A)
【文献】特開2016-095813(JP,A)
【文献】特開2011-240816(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0353925(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00- 1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ(102)を有し、自律走行装置(1)の自律走行を制御する自律走行制御システムであって、
前記プロセッサは、
前記自律走行装置における制動系(60)の障害を検知することと、
前記自律走行装置が前記制動系による制動制御の中断状態において停止可能な停止地点を取得することと、
前記制動系の障害が検知された場合に、前記停止地点への自律退避制御を実行することと、
を実行するように構成され
、
前記停止地点を取得することは、路面の平坦度が小平坦度範囲よりも大きい大平坦度範囲内となる候補地点から、前記自律退避制御にて想定される進行方向において前記候補地点より前方の勾配情報に基づき、前記停止地点を選択することを含む自律走行制御システム。
【請求項2】
前記停止地点を取得することは、前記障害が検知された地点から最近傍の前記候補地点を、前記停止地点として選択することを含む請求項
1に記載の自律走行制御システム。
【請求項3】
前記停止地点を取得することは、前記候補地点までの走行予定経路における勾配情報に基づき、前記停止地点を選択することを含む請求項
1又は請求項
2に記載の自律走行制御システム。
【請求項4】
前記停止地点を取得することは、周辺環境について前記自律走行装置の停止が許容される許容条件が成立する前記候補地点を、前記停止地点に選択することを含む請求項
1から請求項
3のいずれか1項に記載の自律走行制御システム。
【請求項5】
前記停止地点を取得することは、前記障害の検知前に取得された、自律走行中の複数の前記候補地点における前記自律走行装置の姿勢に関する情報に基づいて前記停止地点を選択することを含む請求項
1から請求項
4のいずれか1項に記載の自律走行制御システム。
【請求項6】
前記停止地点を取得することは、前記自律走行装置の外部に設けられたセンタから前記停止地点を取得することを含む請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の自律走行制御システム。
【請求項7】
前記停止地点までの自律退避制御中及び自律退避制御後の少なくとも一方において、前記自律走行装置の状態に関する通知をさらに実行するように構成される請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の自律走行制御システム。
【請求項8】
プロセッサ(102)を有し、自律走行装置(1)の自律走行を制御する自律走行制御装置であって、
前記プロセッサは、
前記自律走行装置における制動系(60)の障害を検知することと、
前記自律走行装置が前記制動系による制動制御の中断状態において停止可能な停止地点を取得することと、
前記制動系の障害が検知された場合に、前記停止地点への自律退避制御を実行することと、
を実行するように構成され
、
前記停止地点を取得することは、路面の平坦度が小平坦度範囲よりも大きい大平坦度範囲内となる候補地点から、前記自律退避制御にて想定される進行方向において前記候補地点より前方の勾配情報に基づき、前記停止地点を選択することを含む自律走行制御装置。
【請求項9】
プロセッサ(102)を有し、自律走行を実行可能な自律走行装置であって、
前記プロセッサは、
制動系(60)の障害を検知することと、
前記制動系による制動制御の中断状態において停止可能な停止地点を取得することと、
前記制動系の障害が検知された場合に、前記停止地点への自律退避制御を実行することと、
を実行するように構成され
、
前記停止地点を取得することは、路面の平坦度が小平坦度範囲よりも大きい大平坦度範囲内となる候補地点から、前記自律退避制御にて想定される進行方向において前記候補地点より前方の勾配情報に基づき、前記停止地点を選択することを含む自律走行装置。
【請求項10】
自律走行装置(1)の自律走行を制御するために、プロセッサ(102)により実行される自律走行制御方法であって、
前記自律走行装置における制動系(60)の障害を検知することと、
前記自律走行装置が前記制動系による制動制御の中断状態において停止可能な停止地点を取得することと、
前記制動系の障害が検知された場合に、前記停止地点への自律退避制御を実行することと、
を含
み、
前記停止地点を取得することは、路面の平坦度が小平坦度範囲よりも大きい大平坦度範囲内となる候補地点から、前記自律退避制御にて想定される進行方向において前記候補地点より前方の勾配情報に基づき、前記停止地点を選択することを含む自律走行制御方法。
【請求項11】
自律走行装置(1)の自律走行を制御するために記憶媒体(101)に記憶され、プロセッサ(102)に実行させる命令を含む自律走行制御プログラムであって、
前記命令は、
前記自律走行装置における制動系(60)の障害を検知させることと、
前記自律走行装置が前記制動系による制動制御の中断状態において停止可能な停止地点を取得させることと、
前記制動系の障害が検知された場合に、前記停止地点への自律退避制御を実行させることと、
を含
み、
前記停止地点を取得させることは、路面の平坦度が小平坦度範囲よりも大きい大平坦度範囲内となる候補地点から、前記自律退避制御にて想定される進行方向において前記候補地点より前方の勾配情報に基づき、前記停止地点を選択させることを含む自律走行制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自律走行可能な自律走行装置を制御する技術に、関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自律移動型ロボットの運行を管理する技術が開示されている。この技術では、特定のロボットにて移動不能になる等の異常が発生した場合、他のロボットの運行ルートが、当該周辺環境の位置を迂回するような運行ルートに設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自律走行中の自律走行装置において、制動系に障害が発生した場合、制動系による制動動作が十分に作用しない状態で停止する必要がある。しかし、勾配路を含む走行環境にて走行中の場合、勾配によって自律走行装置の停止が不可能となる虞がある。特許文献1は、異常が発生したロボット以外の他のロボットの制御について開示するのみであり、制動系に障害が発生した自律走行装置を停止させる制御については開示されていない。
【0005】
本開示の課題は、制動系に障害が発生した自律走行装置を停止可能な自律走行制御システムを、提供することにある。本開示の別の課題は、制動系に障害が発生した自律走行装置を停止可能な自律走行制御装置を、提供することにある。本開示の別の課題は、制動系に障害が発生した場合に停止可能な自律走行装置を、提供することにある。本開示のさらに別の課題は、制動系に障害が発生した自律走行装置を停止可能な自律走行制御方法を、提供することにある。本開示のさらに別の課題は、制動系に障害が発生した自律走行装置を停止可能な自律走行制御プログラムを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、課題を解決するための本開示の技術的手段について、説明する。尚、特許請求の範囲及び本欄に記載された括弧内の符号は、後に詳述する実施形態に記載された具体的手段との対応関係を示すものであり、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
本開示の第一態様は、プロセッサ(102)を有し、自律走行装置(1)の自律走行を制御する自律走行制御システムであって、
プロセッサは、
自律走行装置における制動系(60)の障害を検知することと、
自律走行装置が制動系による制動制御の中断状態において停止可能な停止地点を取得することと、
制動系の障害が検知された場合に、停止地点への自律退避制御を実行することと、
を実行するように構成され、
停止地点を取得することは、路面の平坦度が小平坦度範囲よりも大きい大平坦度範囲内となる候補地点から、自律退避制御にて想定される進行方向において候補地点より前方の勾配情報に基づき、停止地点を選択することを含む。
【0008】
本開示の第二態様は、プロセッサ(102)を有し、自律走行装置(1)の自律走行を制御する自律走行制御装置であって、
プロセッサは、
自律走行装置における制動系(60)の障害を検知することと、
自律走行装置が制動系による制動制御の中断状態において停止可能な停止地点を取得することと、
制動系の障害が検知された場合に、停止地点への自律退避制御を実行することと、
を実行するように構成され、
停止地点を取得することは、路面の平坦度が小平坦度範囲よりも大きい大平坦度範囲内となる候補地点から、自律退避制御にて想定される進行方向において候補地点より前方の勾配情報に基づき、停止地点を選択することを含む。
【0009】
本開示の第三態様は、プロセッサ(102)を有し、自律走行を実行可能な自律走行装置であって、
プロセッサは、
制動系(60)の障害を検知することと、
制動系による制動制御の中断状態において停止可能な停止地点を取得することと、
制動系の障害が検知された場合に、停止地点への自律退避制御を実行することと、
を実行するように構成され、
停止地点を取得することは、路面の平坦度が小平坦度範囲よりも大きい大平坦度範囲内となる候補地点から、自律退避制御にて想定される進行方向において候補地点より前方の勾配情報に基づき、停止地点を選択することを含む。
【0010】
本開示の第四態様は、自律走行装置(1)の自律走行を制御するために、プロセッサ(102)により実行される自律走行制御方法であって、
自律走行装置における制動系(60)の障害を検知することと、
自律走行装置が制動系による制動制御の中断状態において停止可能な停止地点を取得することと、
制動系の障害が検知された場合に、停止地点への自律退避制御を実行することと、
を含み、
停止地点を取得することは、路面の平坦度が小平坦度範囲よりも大きい大平坦度範囲内となる候補地点から、自律退避制御にて想定される進行方向において候補地点より前方の勾配情報に基づき、停止地点を選択することを含む。
【0011】
本開示の第五態様は、自律走行装置(1)の自律走行を制御するために記憶媒体(101)に記憶され、プロセッサ(102)に実行させる命令を含む自律走行制御プログラムであって、
命令は、
自律走行装置における制動系(60)の障害を検知させることと、
自律走行装置が制動系による制動制御の中断状態において停止可能な停止地点を取得させることと、
制動系の障害が検知された場合に、停止地点への自律退避制御を実行させることと、
を含み、
停止地点を取得させることは、路面の平坦度が小平坦度範囲よりも大きい大平坦度範囲内となる候補地点から、自律退避制御にて想定される進行方向において候補地点より前方の勾配情報に基づき、停止地点を選択させることを含む。
【0012】
これら第一~第五態様によると、制動系の障害が検知されると、制動系による制動制御の中断状態において停止可能な停止地点への自律退避制御が実行される。故に、制動系の障害が発生したとしても、停止地点への自律退避制御が実行され、制動制御の中断状態にて自律走行装置が停止され得る。したがって、制動系に障害が発生した自律走行装置を停止可能となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第一実施形態の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】第一実施形態の適用される自律走行装置を示す模式図である。
【
図3】第一実施形態による自律走行制御システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図4】第一実施形態による自律走行制御方法を示すフローチャートである。
【
図5】第一実施形態による自律走行制御方法を示すフローチャートである。
【
図6】許容角度範囲の設定方法の一例を説明するための概念図である。
【
図7】第一実施形態における情報提示の一例を示す模式図である。
【
図8】第二実施形態による自律走行制御システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図9】第二実施形態による自律走行制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態を図面に基づき複数説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことで、重複する説明を省略する場合がある。又、各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。さらに、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。
【0015】
以下、本開示の複数の実施形態を図面に基づき説明する。
【0016】
(第一実施形態)
図1に示す第一実施形態の自律走行制御システム100は、
図2に示す自律走行装置1の走行を制御する。自律走行装置1は、例えば、道路を走行して荷物を宅配する宅配ロボットである。又は、自律走行装置1は、荷物を保管する倉庫にて当該荷物を運搬する物流ロボットであってもよい。
【0017】
自律走行装置1は、荷物を格納可能なスペースを内部に有する車体2と、車体2に設けられた複数の駆動輪3とを備える。自律走行装置1は、車体2に内蔵されたバッテリを駆動源として走行する走行体である。
【0018】
自律走行装置1には、
図1及び
図3に示すセンサ系10、通信系20、及び地図データベース(以下、「DB」)30、情報提示系40、モータコントロールユニット50、及び制動系60が搭載される。センサ系10は、自律走行制御システム100により利用可能なセンサ情報を、自律走行装置1の外界及び内界の検出により取得する。そのためにセンサ系10は、外界センサ11及び内界センサ12を含んで構成されている。
【0019】
外界センサ11は、自律走行装置1の周辺環境となる外界から、自律走行制御システム100により利用可能な外界情報を取得する。外界センサ11は、自律走行装置1の外界に存在する物標を検知することで、外界情報を取得してもよい。物標検知タイプの外界センサ11は、例えばカメラ及びLiDAR(Light Detection and Ranging / Laser Imaging Detection and Ranging)等の光学センサ、レーダ、及びソナーの少なくとも一種類を含む。又、外界センサ11は、周辺物体との接触を検出する接触センサを含んでいてもよい。
【0020】
外界センサ11は、自律走行装置1の外界に存在するGNSS(Global Navigation Satellite System)の人工衛星から測位信号を受信することで、外界情報を取得する測位タイプのセンサを含んでいてもよい。測位タイプの外界センサ11は、例えばGNSS受信機等である。
【0021】
内界センサ12は、自律走行装置1の内部環境となる内界から、自律走行制御システム100により利用可能な内界情報を取得する。内界センサ12は、自律走行装置1の内界において特定の運動物理量を検知することで、内界情報を取得してもよい。物理量検知タイプの内界センサ12は、例えば、3軸方向の加速度及び角速度を検出可能なIMUである。物理量検知タイプの内界センサ12は、走行速度センサを含んでいてもよい。物理量検知タイプの内界センサ12は、加速度センサ、及びジャイロセンサを別に備えていてもよい。
【0022】
通信系20は、自律走行制御システム100により利用可能な通信情報を、無線通信により取得する。通信系20は、自律走行装置1の外界に存在するV2Xシステムとの間において、通信信号を送受信してもよい。V2Xタイプの通信系20は、例えばDSRC(Dedicated Short Range Communications)通信機、及びセルラV2X(C-V2X)通信機等のうち、少なくとも一種類である。通信系20は、自律走行装置1の内界に存在する端末との間において、通信信号を送受信してもよい。端末通信タイプの通信系20は、例えばBluetooth(登録商標)機器、Wi-Fi(登録商標)機器、及び赤外線通信機器等のうち、少なくとも一種類である。
【0023】
地
図DB30は、自律走行制御システム100により利用可能な地図情報を、記憶する。地
図DB30は、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)を含んで構成される。地
図DB30は、自律走行装置1の自己位置を含む自己状態量を推定するロケータの、データベースであってもよい。地
図DB30は、自律走行装置1の走行経路をナビゲートするナビゲーションユニットの、データベースであってもよい。地
図DB30は、これらのデータベース等のうち複数種類の組み合わせにより、構成されていてもよい。
【0024】
地
図DB30は、例えばV2Xタイプの通信系20を介した外部センタとの通信等により、最新の地図情報を取得して記憶する。ここで地図情報は、自律走行装置1の走行環境を表す情報として、二次元又は三次元にデータ化されている。特に三次元の地図データとしては、高精度地図のデジタルデータが採用されるとよい。地図情報は、例えば道路自体の位置、形状(勾配)、及び路面状態等のうち、少なくとも一種類を表した道路情報を含んでいてもよい。地図情報は、例えば道路に付属する標識及び区画線の位置並びに形状等のうち、少なくとも一種類を表した標示情報を含んでいてもよい。地図情報は、例えば道路に面する建造物及び信号機の位置並びに形状等のうち、少なくとも一種類を表した構造物情報を含んでいてもよい。
【0025】
情報提示系40は、自律走行装置1の周辺者へ向けた報知情報を提示する。情報提示系40は、周辺者の視覚を刺激することで、報知情報を提示する視覚提示ユニット41であってもよい。視覚提示ユニット41は、例えば、映像又は画像の表示により視覚を刺激するモニタ装置である。視覚提示ユニット41は、ランプの発光により視覚を刺激する発光ユニットを含んでいてよい。
【0026】
情報提示系40は、周辺者の聴覚を刺激することで、報知情報を提示する聴覚提示ユニット42であってもよい。聴覚提示ユニット42は、例えばスピーカ、ブザー、及びバイブレーションユニット等のうち、少なくとも一種類である。
【0027】
モータコントロールユニット50は、駆動輪3を回転駆動するモータを制御する制御ユニットである。モータコントロールユニット50は、左右の駆動輪3にそれぞれ設けられ、自律走行制御システム100からの制御指令に基づいて、モータへの通電を制御する。
【0028】
制動系60は、自律走行装置1を停止させる構成である。制動系60は、駆動輪3の回転を機械的に規制する所謂メカロック機構により、自律走行装置1の停止を実現する。例えば、制動系60は、電磁ブレーキにより提供される。
【0029】
自律走行制御システム100は、例えばLAN(Local Area Network)回線、ワイヤハーネス、内部バス、及び無線通信回線等のうち、少なくとも一種類を介してセンサ系10、通信系20、地
図DB30、情報提示系40、モータコントロールユニット50、制動系60、及び操作要求スイッチ70に接続されている。自律走行制御システム100は、少なくとも一つの専用コンピュータを含んで構成されている。
【0030】
自律走行制御システム100を構成する専用コンピュータは、自律走行装置1の素行を制御する、走行制御ECU(Electronic Control Unit)であってもよい。自律走行制御システム100を構成する専用コンピュータは、自律走行装置1の走行経路をナビゲートする、ナビゲーションECUであってもよい。自律走行制御システム100を構成する専用コンピュータは、自律走行装置1の自己状態量を推定する、ロケータECUであってもよい。自律走行制御システム100を構成する専用コンピュータは、自律走行装置1の走行アクチュエータを制御する、アクチュエータECUであってもよい。自律走行制御システム100を構成する専用コンピュータは、自律走行装置1における情報提示を制御する、HCU(HMI(Human Machine Interface) Control Unit)であってもよい。自律走行制御システム100を構成する専用コンピュータは、例えばV2Xタイプの通信系20を介して通信可能な外部センタ又はモバイル端末等を構成する、自律走行装置1以外のコンピュータであってもよい。
【0031】
自律走行制御システム100を構成する専用コンピュータは、メモリ101及びプロセッサ102を、少なくとも一つずつ有している。メモリ101は、コンピュータにより読み取り可能なプログラム及びデータ等を非一時的に記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。プロセッサ102は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、RISC(Reduced Instruction Set Computer)-CPU、DFP(Data Flow Processor)、及びGSP(Graph Streaming Processor)等のうち、少なくとも一種類をコアとして含んでいる。
【0032】
自律走行制御システム100においてプロセッサ102は、自律走行装置1の挙動を制御するためにメモリ101に記憶された、自律走行制御プログラムに含まれる複数の命令を実行する。これにより自律走行制御システム100は、自律走行装置1の挙動を制御するための機能ブロックを、複数構築する。自律走行制御システム100において構築される複数の機能ブロックには、
図3に示すように検知ブロック110、候補地点取得ブロック120、停止地点取得ブロック130、走行制御ブロック140、及び通知ブロック150が含まれている。
【0033】
検知ブロック110は、制動系60の障害を検知する。制動系60の障害とは、自律走行装置1の制動制御が不可能、又は正常時と比較して制動力が十分に出力できない状態である。制動系60に電磁ブレーキが含まれる場合、検知ブロック110は、電磁コイルの電流値異常、電磁コイルに吸引されるアーマチュアの動作異常等が検出された場合に、制動系60の障害を検知すればよい。
【0034】
候補地点取得ブロック120は、後述の停止地点の候補となる候補地点を取得する。候補地点取得ブロック120は、自律走行中に、複数の候補地点を逐次取得する。候補地点取得ブロック120は、各候補地点におけるピッチ角及び自己位置を、各候補地点に関する地点情報として逐次取得する。
【0035】
停止地点取得ブロック130は、制動系60による制動制御の中断状態において自律走行装置1が停止可能な停止地点を取得する。具体的には、停止地点取得ブロック130は、候補地点取得ブロック120にて取得された複数の候補地点の中から、自律走行装置1が停止可能な条件を満たす地点を、停止地点として選択する。自律走行装置1が停止可能な条件については後述する。
【0036】
走行制御ブロック140は、モータコントロールユニット50を制御することにより、自律走行装置1の走行制御を実行する。制動系60の障害が未検知の状態において、走行制御ブロック140は、目的地点までの自律走行制御を実行する。目的地点は、例えばセンタからその情報が送信され、通信系20を介して取得される。走行制御ブロック140は、外界情報、内界情報、通信情報及び地図情報等に基づいて目的地点までの走行経路を設定し、当該走行経路に沿った走行を実施するようにモータコントロールユニット50を制御すればよい。
【0037】
又、走行制御ブロック140は、制動系60の障害が検知されると、停止地点への自律退避制御を実行することで、停止地点への退避走行を行う。自律退避制御は、上述の自律走行制御における目的地点を停止地点に置き換えた走行制御とされる。尚、自律退避制御において、走行制御ブロック140は、制動系60の障害未検知時の自律走行制御よりも走行速度を制限してもよい。停止地点に到達又は接近すると、走行制御ブロック140は、モータコントロールユニット50の駆動制御を中断することで、制動系60による制動制御を中断状態にて自律走行装置1の停止を実施する。走行制御ブロック140は、駆動モータによる回生制動等、制動系60以外の構成による制動制御を実行してもよい。
【0038】
加えて、走行制御ブロック140は、制動系60の障害が検知され、且つ停止地点を取得不可能な場合には、停止地点を探索する探索走行制御を実行する。探索走行制御において、走行制御ブロック140は、目的地点への自律走行を継続し、且つ走行時の各時点において現在地点を停止地点として選択可能か否かを逐次判定する。現在地点を停止地点として選択可能と判定すると、走行制御ブロック140は、現在地点にて自律走行装置1を停止させ、探索走行制御を終了する。探索走行制御による自律走行は、停止地点を取得不能な状態で実施される退避走行であると表現することもできる。
【0039】
通知ブロック150は、退避走行中に、退避走行に関連した通知(退避通知)を実行する。退避通知は、自律退避制御及び探索走行制御の実行中に、実施される。退避通知において、通知ブロック150は、自律走行装置1の周辺者に対する通知と、自律走行装置1の管理センタへの通知とを実行する。
【0040】
ここまで説明した複数のブロック110,120,130,140,150,160の共同により、自律走行制御システム100が自律走行装置1を制御する自律走行制御方法のフロー(以下、自律走行制御フローという)を、
図4,5に従って以下に説明する。本処理フローは、自律走行装置1の起動中に繰り返し実行される。尚、本処理フローにおける各「S」は、自律走行制御プログラムに含まれた複数命令によって実行される複数ステップを、それぞれ意味している。
【0041】
まず、制動系60に障害が発生していない状態での自律走行において実行される処理について、
図4に従って説明する。
図4のS10では、走行制御ブロック140が、目標地点を取得したか否かを判定する。取得したと判定されるまで本ステップは継続的に繰り返される。目標地点を取得したと判定すると、本フローがS20へと移行する。
【0042】
S20では、候補地点取得ブロック120が、目標地点への走行開始前に、初期ピッチ角、及び自律走行装置1の初期位置を、初期情報として取得する。続くS30では、走行制御ブロック140が、目標地点への自律走行制御を開始する。
【0043】
次に、S40では、候補地点取得ブロック120が、候補地点に到達したか否かを判定する。候補地点は、前回の候補地点から特定距離走行した位置であってもよい。又は、候補地点は、前回の候補地点の通過から特定期間走行した時点での位置であってもよい。又は、候補地点は、予め設定された特定地点であってもよい。候補地点に到達していないと判定されると、本フローは後述のS80へと移行する。
【0044】
一方で、S40にて候補地点に到達したと判定された場合には、本フローがS50へと移行する。S50では、候補地点取得ブロック120が、候補地点でのピッチ角を取得する。具体的には、候補地点取得ブロック120は、初期位置でのピッチ角に、走行中のピッチレートと当該ピッチレートで走行したとみなす走行時間とを乗算した値を逐次加算していくことで、ピッチ角を推定する。すなわち、任意の候補地点でのピッチ角をθ
n、初期位置でのピッチ角(初期ピッチ角)をθ
0、ピッチレートをΔθ
k、走行時間をΔtとすると、候補地点でのピッチ角は、以下の数式(1)にて表される。
【数1】
【0045】
続くS60では、候補地点取得ブロック120が、候補地点の位置情報を取得する。候補地点取得ブロック120は、GNSS受信機の測位信号に基づき位置情報を推定してもよい。又は、候補地点取得ブロック120は、内界センサ12の検出情報に基づくデッドレコニング(Dead Reckoning/自律航法)にて位置情報を推定してもよい。又は、候補地点取得ブロック120は、外界センサ11の検出情報と地図情報とのマッチングにて自己位置情報を推定してもよい。又は、候補地点取得ブロック120は、上述した複数の自己位置推定手法を組み合わせて位置情報を推定してもよい。
【0046】
そして、S70では、候補地点取得ブロック120が、取得したピッチ角及び位置情報を、地点情報としてメモリ101等の記憶媒体に格納する。
【0047】
次に、S80では、走行制御ブロック140が、目標地点に到着したか否かを判定する。目標地点に未達であると判定された場合には、本フローがS40へと戻る。目標地点に到達したと判定された場合には、本フローが終了し、自律走行装置1が停止される。
【0048】
次に、制動系60の障害発生に対応する処理フローを、
図5に従って以下に説明する。
図5のフローは、自律走行装置1の自律走行中に、
図4のフローと並行して繰り返し実行される。
【0049】
まず、S100では、検知ブロック110が、制動系60の障害を検知したか否かを判定する。制動系60の障害を検知していないと判定すると、本フローが終了する。制動系60の障害を検知したと判定すると、本フローがS105へと移行する。
【0050】
S105では、停止地点取得ブロック130が、変数Nを0に設定する。続くS110では、停止地点取得ブロック130が、現在地点に近い側からN番目の候補地点に関する地点情報を、格納先から読み出す等により準備する。読み出された候補地点は、以下のS115~S130の判定処理にて、停止地点として選択できるか否かの判定対象とされる。尚、Nが0の場合は、停止地点取得ブロック130は、現在地点を判定対象とする。
【0051】
S115では、停止地点取得ブロック130が、候補地点のピッチ角が許容角度範囲内であるか否かを判定する。ピッチ角が許容角度範囲内であると判定されると、本フローがS120へと移行する。ここで、許容角度範囲は、ピッチ角が閾値以下又は閾値未満となる数値範囲である。ピッチ角は、「平坦度」の一例である。ピッチ角が小さいほど、平坦度は大きくなる。平坦度が大きい路面ほど、より水平に近い路面である、ということもできる。許容角度範囲は、「大平坦度範囲」の一例である。又、許容角度範囲外の角度範囲、すなわちピッチ角が閾値以上又は閾値より大きい角度範囲は、「小平坦度範囲」の一例である。
【0052】
許容角度範囲の設定方法の一例について
図6を参照しながら説明する。まず、自律走行装置1の走行抵抗(転がり抵抗)Fは、駆動輪3の転がり摩擦係数μ、積載荷重と車体本体の荷重との合計荷重Wを用いて、以下の数式(2)にて表すことができる。
【数2】
【0053】
対して、自律走行装置1に作用する重力のうち路面と平行の成分F
gは、水平面に対するピッチ角をθとすると、以下の数式(3)にて表すことができる。尚、数式(3)におけるgは、重力加速度である。
【数3】
【0054】
以上により、成分F
gが走行抵抗Fよりも小さくなる地点は、停車可能であると推定できる。すなわち、以下の数式(4)が成立するピッチ角θの範囲を、許容角度範囲として設定することができる。尚、許容角度範囲は、メモリ101等の記憶媒体に予め格納されていてもよいし、通信により取得されてもよい。
【数4】
【0055】
図5に戻り、S120では、停止地点取得ブロック130が、候補地点までの経路勾配条件が成立するか否かを判定する。経路勾配条件が成立したと判定されると、本フローがS125へと移行する。ここで、経路勾配条件は、現在地点から候補地点までの走行予定経路における勾配情報に基づく条件である。
【0056】
例えば、経路勾配条件は、走行予定経路における勾配の大きさが許容勾配範囲内であることであってもよい。又は、経路勾配条件は、走行予定経路のうち候補地点から所定の距離範囲内の部分における勾配の大きさが許容勾配範囲内であることであってもよい。停止地点取得ブロック130は、地図情報に格納された勾配情報に基づき、経路勾配条件の成立有無を判定してもよい。又は、停止地点取得ブロック130は、判定対象の候補地点と現在地点との間に他の候補地点が存在する場合、他の候補地点に関する勾配情報に基づき、経路勾配条件の成立有無を判定してもよい。
【0057】
S125では、停止地点取得ブロック130が、候補地点より先の勾配に関する地点先勾配条件が成立するか否かを判定する。地点先勾配条件が成立したと判定されると、本フローがS130へと移行する。ここで、地点先勾配条件は、自律退避制御にて想定される進行方向において候補地点よりも前方の勾配情報に基づく条件である。
【0058】
例えば、地点先勾配条件は、候補地点から所定の距離範囲内の、候補地点よりも前方の路面における勾配の大きさが許容勾配範囲内であることとされればよい。停止地点取得ブロック130は、地図情報に格納された勾配情報に基づき、地点先勾配条件の成立有無を判定してもよい。又は、停止地点取得ブロック130は、判定対象の候補地点より前方の候補地点に関する勾配情報が存在する場合、当該情報に基づき地点先勾配条件の成立有無を判定してもよい。
【0059】
S130では、停止地点取得ブロック130が、候補地点の周辺環境について自律走行装置1の停止が許容される許容条件が成立するか否かを判定する。許容条件が成立したと判定されると、本フローがS135へと移行する。許容条件は、停止しても交通の妨げにならない周辺環境であることとされる。ここでの周辺環境は、候補地点を含む特定領域とされればよい。例えば、許容条件は、候補地点の道幅が閾値以上又は閾値より大きいことを含む。許容条件は、交通法規により停止が禁止される周辺環境ではないことを含む。交通法規により停止が禁止される周辺環境は、例えば、横断歩道、緊急車両の出入口等である。許容条件は、バス停等の特定ポイントが周辺環境に存在しないことを含んでいてもよい。許容条件は、以上に挙げた複数の詳細条件が全て成立することであってもよいし、少なくとも1つが成立することであってもよい。
【0060】
S135では、停止地点取得ブロック130が、S115~S130の全条件が成立した候補地点を、停止地点に設定する。続くS140では、走行制御ブロック140が、停止地点まで走行する自律退避制御を実行する。
【0061】
一方で、S115~S130のいずれかの条件が不成立であると判定されると、本フローがS145へと移行する。S145では、停止地点取得ブロック130が、停止地点に設定できるか否かについて未判定の候補地点が残っているか否かを判定する。候補地点が残っていると判定された場合には、S150にて、停止地点取得ブロック130が、変数NをN+1とし、S110へと戻る。これにより、判定対象とされる候補地点が、徐々に現在地点から遠い位置のものとなる。
【0062】
一方で、S145にて、未判定の候補地点が残っていないと判定された場合には、本フローがS155へと移行する。S155では、走行制御ブロック140が、停止地点の探索走行制御を実行する。探索走行制御において、走行制御ブロック140は、目的地点への自律走行を継続する。加えて、走行制御ブロック140は、自律走行中に、停止地点として利用可能な現在地点を逐次探索する。すなわち、走行制御ブロック140は、自律走行中の現在地点を候補地点として、上述のS115~S130における全条件が成立する候補地点に到達するまで、目的地点までの自律走行を継続する。
【0063】
さらに、S220では、通知ブロック150が、退避通知を実行する。退避通知において、通知ブロック150は、周辺者に対して、情報提示系40を介した情報提示により、自律走行装置1が退避走行中であることを通知する。この通知において、通知ブロック150は、例えば、視覚提示ユニット41及び聴覚提示ユニット42のそれぞれに情報提示を実行させる。
【0064】
視覚提示ユニット41における情報提示の一例において、通知ブロック150は、状態表示アイコンIC1、現在位置アイコンIC2、停止地点アイコンIC3、及び経路アイコンIC4を、表示させる(
図7参照)。状態表示アイコンIC1は、自律走行装置1の現在の状態を示す表示オブジェクトである。例えば、状態表示アイコンIC1は、制動系60に障害が発生していること、及び退避走行中であることをメッセージにて表示する。現在位置アイコンIC2は、自律走行装置1の現在の位置を示す表示オブジェクトである。現在位置アイコンIC2は、地図上に重畳された自律走行装置1を示すアイコンとされる。停止地点アイコンIC3は、停止地点を示す表示オブジェクトである。停止地点アイコンIC3は、地図上に重畳された停止地点を示すアイコンとされる。尚、探索走行制御の実行中には、停止地点アイコンIC3は非表示とされる。経路アイコンIC4は、現在位置から停止地点までの走行予定の経路を示す表示オブジェクトである。経路アイコンIC4は、現在位置アイコンIC2と停止地点アイコンIC3とを繋ぐ線状のオブジェクトとされる。尚、探索走行制御の実行中には、経路アイコンIC4は現在地点から目的地点までの経路を示す表示オブジェクトとされる。
【0065】
聴覚提示ユニット42における情報提示の一例において、通知ブロック150は、退避走行中である旨を示す音声を出力させる。又は、通知ブロック150は、警報を出力させてもよい。
【0066】
以上の第一実施形態によれば、制動系60の障害が検知されると、制動系60による制動制御の中断状態において停止可能な停止地点への自律退避制御が実行される。故に、制動系60の障害が発生したとしても、停止地点への自律退避制御が実行され、制動制御の中断状態にて自律走行装置1が停止され得る。したがって、制動系60に障害が発生した自律走行装置1を停止可能となり得る。又、制動系60に障害が発生しても停止可能となるため、制動系60を複数種類設ける必要性が小さくなる。したがって、コストの低減も可能となり得る。
【0067】
さらに、第一実施形態によれば、路面の平坦度が大平坦度範囲内となる候補地点から、停止地点が選択される。故に、制動系60の制動制御の中断状態においても比較的自律走行装置1が停止し易い、平坦度が大平坦度範囲内となる地点までの自律退避制御が可能となり得る。したがって、制動系60に障害が発生した自律走行装置1の停止が一層確実に可能となり得る。
【0068】
又、第一実施形態によれば、障害が検知された地点から最近傍の候補地点が、停止地点として選択される。故に、制動系60に障害が発生した状態での走行距離を、比較的短くすることが可能となり得る。
【0069】
さらに、第一実施形態によれば、候補地点までの走行予定経路における勾配情報に基づき、停止地点が選択される。故に、走行予定経路までの勾配情報を考慮して停止地点を選択可能となるので、一層確実な自律走行装置1の停止が可能となり得る。
【0070】
加えて、第一実施形態によれば、自律退避制御にて想定される進行方向において候補地点より前方の勾配情報に基づき、停止地点が選択される。故に、停止地点にて停止できずに通過した場合における路面の勾配情報を考慮して停止地点を選択可能となり得る。したがって、一層確実な自律走行装置1の停止が可能となり得る。
【0071】
又、第一実施形態によれば、周辺環境について自律走行装置1の停止が許容される許容条件が成立する候補地点が、停止地点に選択される。故に、停止を許容されない地点を停止地点として選択することを、回避可能となり得る。
【0072】
さらに、第一実施形態によれば、障害の検知前に取得された、自律走行中の複数の候補地点における自律走行装置1の姿勢に関する情報に基づいて停止地点が選択される。故に、停止地点の選択において実際に通過した候補地点における自律走行装置1の姿勢に関する情報が考慮される。したがって、実際に当該候補地点にて停止できる可能性の高い停止地点が、確実に選択され得る。
【0073】
加えて、第一実施形態によれば、停止地点までの自律退避制御中及び自律退避制御後の少なくとも一方において、自律走行装置1の状態に関する通知が実行される。これによれば、制動系60に障害が発生した自律走行装置1の状態が、外部に確実に通知される。
【0074】
(第二実施形態)
図8及び
図9に示す第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。第二実施形態の自律走行制御システム100は、
図8に示すように、検知ブロック110、停止地点取得ブロック130、停止判定ブロック135、及び走行制御ブロック140を備える。
【0075】
第二実施形態において、停止地点取得ブロック130は、自律走行装置1の外部に設けられたセンタから、停止地点を取得する。センタは、例えば、自律走行装置1の運行を管理する管理センタである。センタは、複数の停止地点を、記憶媒体に予め格納している。自律走行装置1に障害が発生すると、自律走行装置1から最も近い停止地点に関する地点情報がセンタから送信される。停止地点取得ブロック130は、通信系20を介して停止地点を取得する。
【0076】
停止判定ブロック135は、取得した停止地点へと到着した自律走行装置1について、実際に停止地点にて停止したか否かを判定する。例えば、停止判定ブロック135は、停止地点に到着後に、走行速度が停止判定速度内である状態が所定期間継続した場合に、停止したと判定すればよい。実際に停止地点にて停止しないと判定した場合、停止判定ブロック135は、別の停止地点をセンタへと要求する。
【0077】
次に、第二実施形態において自律走行制御システム100が自律走行装置1を制御する自律走行制御フローを、
図9に従って以下に説明する。
【0078】
まず、S200では、第一実施形態のS100と同様に、検知ブロック110が、制動系60の障害検知の有無を判定する。制動系60の障害を検知したと判定すると、S205にて、通知ブロック150が、障害の発生をセンタへと通知する。続くS210では、停止地点取得ブロック130が、センタから停止地点を取得する。
【0079】
次に、S215では、走行制御ブロック140が、取得した停止地点への自律退避制御を実行し、S220にて、通知ブロック150が、退避通知を実行する。
【0080】
続くS225では、停止判定ブロック135が、停止地点にて自律走行装置1が実際に停止したか否かを判定する。停止したと判定すると、S230にて、走行制御ブロック140が、自律退避制御を終了する。一方で、停止地点にて実際には停止していないと判定された場合には、本フローがS235へと進む。S235では、停止地点取得ブロック130が、別の停止地点をセンタから取得できたか否かを判定する。別の停止地点が取得されると、本フローがS215へと戻る。
【0081】
一方で、S235にて別の停止地点が取得されなかった場合には、本フローがS240へと進む。S240では、走行制御ブロック140が、探索走行制御を実行する。
【0082】
以上の第二実施形態によれば、自律走行装置1の外部に設けられたセンタから停止地点が取得される。故に、自律走行装置1にて予め候補地点に関する情報を収集する必要を回避できる。したがって、自律走行装置1における演算及び記憶の少なくとも一方に関する内部リソースを節約可能となり得る。
【0083】
(他の実施形態)
以上、複数の実施形態について説明したが、本開示は、当該説明の実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
【0084】
変形例において、停止地点取得ブロック130は、地図情報等に予め格納された走路の勾配の大きさが許容範囲内となる地点を、停止地点として取得してもよい。
【0085】
変形例において、停止地点取得ブロック130は、車止め等、自律走行装置1を停止可能な構造物がある地点を、停止地点として取得してもよい。
【0086】
変形例において自律走行制御システム100を構成する専用コンピュータは、デジタル回路及びアナログ回路のうち、少なくとも一方をプロセッサとして有していてもよい。ここでデジタル回路とは、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System on a Chip)、PGA(Programmable Gate Array)、及びCPLD(Complex Programmable Logic Device)等のうち、少なくとも一種類である。又こうしたデジタル回路は、プログラムを記憶したメモリを、有していてもよい。
【0087】
ここまでの説明形態の他、上述の実施形態及び変化例による自律走行制御システム100は、自律走行装置1に搭載の処理装置(例えば処理ECU等)である自律走行制御装置として、実施されてもよい。又、上述の実施形態及び変化例は、自律走行制御システム100のプロセッサ102及びメモリ101を少なくとも一つずつ有した半導体装置(例えば半導体チップ等)として、実施されてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1:自律走行装置、60:制動系、100:自律走行制御システム、101:メモリ(記憶媒体)、102:プロセッサ