(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】中子造形装置、及び中子造形方法
(51)【国際特許分類】
B22C 9/10 20060101AFI20241008BHJP
B22C 13/12 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B22C9/10 G
B22C13/12
(21)【出願番号】P 2021165851
(22)【出願日】2021-10-08
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 健久
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-069301(JP,A)
【文献】特開2017-087243(JP,A)
【文献】特開2014-004611(JP,A)
【文献】特開2013-180300(JP,A)
【文献】特開2019-072768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 9/10
B22C 13/08,13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中子の原料を混練するための混練槽と、
前記混練槽に前記原料を供給する原料供給ユニットと、
前記混練槽内において混練された前記原料からなる混練材を収容し、前記中子を造形する金型と、
前記混練槽内の前記混練材を前記金型に射出するピストンと、
前記原料供給ユニットから前記混練槽への前記原料の供給量を制御する制御部と、を備える中子造形装置であって、
前記制御部は、
予め定められた前記射出完了時の前記中子造形装置内における前記混練材の全体基準容量
V
Mstd
から、前記射出後の前記混練槽内に残存する前記混練材の混練槽容量
V
T
を差分することによって、前記射出後の前記中子造形装置内における前記混練材の全体容量変化量
ΔVを算出し、
前記全体容量変化量
ΔVに、前記造形された中子の密度
ρ
n
を乗じて、前記原料の供給量
M
S1
を決定する、
中子造形装置。
【請求項2】
前記混練槽と前記金型とに間に設けられ、前記混練材が通過可能な通過孔を有する射出プレートをさらに備え、
前記ピストンは、前記混練槽内の前記混練材を前記射出プレートの前記通過孔を通過させて前記金型に射出し、
前記制御部は、
前記射出プレートの前記通過孔が混錬材を収容する容量
Vpと、
前記金型が混練材を収容する容量
Vnと、
予め定められた前記射出完了時の前記混練槽内における前記混練材の混練槽内基準容量
V
Tstd
との和を求めることによって、前記混練材の全体基準容量
V
Mstd
を算出する、請求項1に記載の中子造形装置。
【請求項3】
前記ピストンの位置を検出する位置センサをさらに備え、
前記制御部は、
前記混練槽内基準容量
V
Tstd
とに基づく射出完了時の前記ピストンの基準位置
Lstdと、前記検出された射出完了時の前記ピストンの位置
Lpstとの差分
ΔLに基づいて、前記混練槽内基準容量
V
Tstd
と前記混練槽容量
V
T
との差分である混練槽内容量変化量
ΔV
T
を求め、
前記混練槽内容量変化量
ΔV
T
と、前記射出プレートの前記通過孔が混錬材を収容する容量
Vpと、前記金型が混練材を収容する容量
Vnとに基づいて、前記全体容量変化量
ΔVを算出する、
請求項2に記載の中子造形装置。
【請求項4】
混練槽に中子の原料を供給するステップと、
前記混練槽内において前記原料を混練するステップと、
前記混練槽内において混練された前記原料からなる混練材をピストンによって金型に射出し、前記中子を造形するステップと、
予め定められた前記射出完了時の中子造形装置内における前記混練材の全体基準容量
V
Mstd
から、前記射出後の前記混練槽内に残存する前記混練材の混練槽容量
V
T
を差分することによって、前記射出後の前記中子造形装置内における前記混練材の全体容量変化量
ΔVを算出するステップと、
前記全体容量変化量
ΔVに、前記造形された中子の密度
ρ
n
を乗じて、前記原料の供給量
M
S1
を決定するステップと、を備えた、
中子造形方法。
【請求項5】
前記中子を造形するステップにおいて、
前記混練槽内において混練された前記原料からなる混練材をピストンによって射出プレートの通過孔を通過させて金型に射出し、前記中子を造形し、
前記射出後の前記中子造形装置内における前記混練材の全体容量変化量
ΔVを算出するステップの前において、
前記射出プレートの前記通過孔が混錬材を収容する容量
Vpと、
前記金型が混練材を収容する容量
Vnと、
予め定められた前記射出完了時の前記混練槽内における前記混練材の混練槽内基準容量
V
Tstd
との和を求めることによって、前記混練材の全体基準容量
V
Mstd
を算出するステップをさらに備えた、
請求項4に記載の中子造形方法。
【請求項6】
前記射出後の前記中子造形装置内における前記混練材の全体容量変化量
ΔVを算出するステップは、
前記混練槽内基準容量
V
Tstd
に基づく射出完了時の前記ピストンの基準位置
Lstdと、射出完了時のピストンの位置
Lpstとの差分
ΔLに基づいて、前記混練槽内基準容量
V
Tstd
と前記混練槽容量
V
T
との差分である混練槽内容量変化量
ΔV
T
を求めるステップと、
前記混練槽内容量変化量
ΔV
T
と、前記射出プレートの前記通過孔が混錬材を収容する容量
Vpと、前記金型が混練材を収容する容量
Vnとに基づいて、前記全体容量変化量
ΔVを算出するステップとをさらに備えた、
請求項5に記載の中子造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中子造形装置、及び中子造形方法に関し、特に、鋳造用の中子を造形するための中子造形装置、及び中子造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される中子造形装置は、混練槽内の混練材を金型に射出するピストンを備える。当該中子造形装置は、予め定められた射出ピストンの基準位置と、射出後の射出ピストンの位置との差分とを求める。当該中子造形装置は、その求めた差分と、砂比重(密度)と、混練槽断面積との積を算出することによって、中子砂の供給量を求める。当該基準位置は、例えば、実験によって求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者等は、以下の課題を発見した。
射出前の中子砂の密度と、射出後の中子の密度とは、密度が異なる場合がある。また、上記した積は、射出前後における混練槽内の混練材の容量変化に相当する。このような場合、射出完了時のピストンの位置が、想定された位置から大きく変動することがある。そのため、中子の原料の供給量を算出する精度が低下するおそれがあった。
【0005】
本発明は、上述した課題を鑑み、中子の原料の供給量の算出精度の低下するおそれを抑制することができる中子造形装置、及び中子造形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る中子造形装置は、
中子の原料を混練するための混練槽と、
前記混練槽に前記原料を供給する原料供給ユニットと、
前記混練槽内において混練された前記原料からなる混練材を収容し、前記中子を造形する金型と、
前記混練槽内の前記混練材を前記金型に射出するピストンと、
前記原料供給ユニットから前記混練槽への前記原料の供給量を制御する制御部と、を備える中子造形装置であって、
前記制御部は、
予め定められた前記射出完了時の前記中子造形装置内における前記混練材の全体基準容量から、前記射出後の前記混練槽内に残存する前記混練材の混練槽容量を差分することによって、前記射出後の前記中子造形装置内における前記混練材の全体容量変化量を算出し、
前記全体容量変化量に、前記造形された中子の密度を乗じて、前記原料の供給量を決定する。
【0007】
このような構成によれば、射出後における造形された中子の密度、及び、射出後における中子造形装置全体内の混練材の容量変化を用いて、原料の供給量を求める。そのため、射出前後の中子の密度変化による中子の原料の供給量の算出精度への影響が無い。よって、中子の原料の供給量の算出精度の低下するおそれを抑制することができる。
【0008】
また、前記混練槽と前記金型とに間に設けられ、前記混練材が通過可能な通過孔を有する射出プレートをさらに備え、
前記ピストンは、前記混練槽内の前記混練材を前記射出プレートの前記通過孔を通過させて前記金型に射出し、
前記制御部は、
前記射出プレートの前記通過孔が混錬材を収容する容量と、
前記金型が混練材を収容する容量と、
予め定められた前記射出完了時の前記混練槽内における前記混練材の混練槽内基準容量との和を求めることによって、前記混練材の全体基準容量を算出してもよい。
【0009】
このような構成によれば、予め算出可能な、射出プレート及び金型における混練材の容量と、混練槽内基準容量とを用いて、混練材の全体基準容量を算出することができる。そのため、中子の原料の供給量の算出精度の向上を図ることができる。
【0010】
また、前記ピストンの位置を検出する位置センサをさらに備え、
前記制御部は、
前記混練槽内基準容量に基づく射出完了時の前記ピストンの基準位置と、前記検出された射出完了時の前記ピストンの位置との差分に基づいて、前記混練槽内基準容量と前記混練槽容量との差分である混練槽内容量変化量を求め、
前記混練槽内容量変化量と、前記射出プレートの前記通過孔が混錬材を収容する容量と、前記金型が混練材を収容する容量とに基づいて、前記全体容量変化量を算出してもよい。
【0011】
このような構成によれば、ピストンの位置に基づいて、全体容量変化量を算出することができる。そのため、中子の原料の供給量を容易に射出毎に算出することができる。
【0012】
本発明の一態様に係る中子造形方法によれば、
混練槽に中子の原料を供給するステップと、
前記混練槽内において前記原料を混練するステップと、
前記混練槽内において混練された前記原料からなる混練材をピストンによって金型に射出し、前記中子を造形するステップと、
予め定められた前記射出完了時の中子造形装置内における前記混練材の全体基準容量から、前記射出後の前記混練槽内に残存する前記混練材の混練槽容量を差分することによって、前記射出後の前記中子造形装置内における前記混練材の全体容量変化量を算出するステップと、
前記全体容量変化量に、前記造形された中子の密度を乗じて、前記原料の供給量を決定するステップと、を備える。
【0013】
このような構成によれば、射出後における造形された中子の密度、及び、射出後における中子造形装置全体内の混練材の容量変化を用いて、原料の供給量を求める。そのため、射出前後の中子の密度変化による中子の原料の供給量の算出精度への影響を抑制する。よって、中子の原料の供給量の算出精度の低下するおそれを抑制することができる。
【0014】
また、前記中子を造形するステップにおいて、
前記混練槽内において混練された前記原料からなる混練材をピストンによって射出プレートの通過孔を通過させて金型に射出し、前記中子を造形し、
前記射出後の前記中子造形装置内における前記混練材の全体容量変化量を算出するステップの前において、
前記射出プレートの前記通過孔が混錬材を収容する容量と、
前記金型が混練材を収容する容量と、
予め定められた前記射出完了時の前記混練槽内における前記混練材の混練槽内基準容量との和を求めることによって、前記混練材の全体基準容量を算出するステップをさらに備える。
【0015】
このような構成によれば、予め求めることができる、射出プレート及び金型における混練材の容量と、混練槽内基準容量とを用いて、混練材の全体基準容量を算出することができる。そのため、中子の原料の供給量の算出精度の向上を図ることができる。
【0016】
また、前記射出後の前記中子造形装置内における前記混練材の全体容量変化量を算出するステップは、
前記混練槽内基準容量に基づく射出完了時の前記ピストンの基準位置と、射出完了時のピストンの位置との差分に基づいて、前記混練槽内基準容量と前記混練槽容量との差分である混練槽内容量変化量を求めるステップと、
前記混練槽内容量変化量と、前記射出プレートの前記通過孔が混錬材を収容する容量と、前記金型が混練材を収容する容量とに基づいて、前記全体容量変化量を算出するステップとをさらに備える。
【0017】
このような構成によれば、ピストンの位置に基づいて、全体容量変化量を算出することができる。そのため、中子の原料の供給量を容易に射出毎に算出することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、中子の原料の供給量の算出精度の低下するおそれを抑制することができる中子造形装置、及び中子造形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施の形態1に係る中子造形装置の断面図である。
【
図2】実施の形態1に係る中子造形装置の断面図である。
【
図3】実施の形態1に係る中子造形装置の断面図である。
【
図4】実施の形態1に係る中子造形方法を示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態1に係る中子造形装置の一具体例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0021】
(実施の形態1)
図1~
図3を参照して実施の形態1について説明する。
図1~
図3は、実施の形態1に係る中子造形装置の断面図である。
【0022】
なお、当然のことながら、
図1及びその他の図面に示した右手系XYZ座標は、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものである。通常、Z軸プラス向きが鉛直上向き、XY平面が水平面であり、図面間で共通である。
【0023】
図1に示すように、中子造形装置100は、混練槽20、原料供給ユニット30、制御部40、ピストン50、シリンダ60、及び金型70を備える。本実施の形態に係る中子造形装置100は、射出プレート80をさらに備える。
【0024】
混練槽20は、上部が開口していると共に底部を有する円筒状部材である。当該円筒状部材の内側空間の断面積である混練槽断面積A
Tは、軸方向において一定の大きさであるとよい。貫通孔21が混練槽20の底部に設けられている。
図1に示すように、混練槽20には、混練材S2が供給されている。例えば、砂、水、水ガラス、界面活性剤などの液状の添加剤を適宜、混練することによって、混練材S2を得ることができる。砂の具体例としては、エスパール(山川産業社製)、ルナモス(花王クエーカー社製)、グリンビーズ(キンセイマテック社製)、ACアルミナサンド(瓢屋社製)などを挙げることができる。なお、水ガラスはバインダである。バインダは、水ガラスに限定されるものではなく、適宜選択可能である。
【0025】
原料供給ユニット30は、混練材S2を混練槽20に供給する。具体的には、まず、原料供給ユニット30は、砂、水、水ガラス、界面活性剤などの液状の添加剤を混練槽20に供給する。より具体的には、原料供給ユニット30は、所定の質量の砂を混練槽20に供給する。また、原料供給ユニット30は、中子を造形する度に、混練槽20に供給する砂の質量を変更することができるとよい。原料供給ユニット30は、混練槽20内において砂、水、水ガラス、界面活性剤などの液状の添加剤を混練して、混練材S2を混練槽20に供給する。
【0026】
図2、及び
図3に示すように、ピストン50は、シリンダ60によって鉛直方向(Z軸方向)に移動することができる。ここで、ピストン50が前進するとは、ピストン50が鉛直下向き(Z軸方向マイナス側)に移動することであり、ピストン50が後退するとは、ピストン50が鉛直上向き(Z軸方向プラス側)に移動することである。
図2に示すように、ピストン50が前進することにより、混練槽20内の混練材S2が金型70に射出される。
【0027】
金型70は、ピストン50が射出した混練材S2を収容し、中子を造形する。金型70は、開閉可能な第1の型71、及び第2の型72を備える。
図1に示すように、第1の型71、及び第2の型72が閉まると、内側空間73が形成される。内側空間73は、キャビティやランナー等を含む。当該キャビティは、上記造形された中子と略同
じ形状である。金型70が混練材S2を収容する容量Vnは、内側空間73の体積と略同じ大きさである。第1の型71、及び第2の型72が開くと、内側空間73に相当する空間が外側に露出する。
【0028】
本実施の形態に係る射出プレート80は、混練槽20と金型70とに間に設けられている。射出プレート80は、混練材S2が通過可能な通過孔81を有する。混練槽20の貫通孔21と、射出プレート80の通過孔81と、金型70の内側空間73とが連続している。混練材S2は、混練槽20の内側から、貫通孔21と通過孔81とを通過して、金型70の内側空間73に到達する。混練材S2は、通過孔81及び内側空間73に収容される。通過孔81は、所定の容量Vpの混練材S2を収容することができる。
【0029】
シリンダ60は、シリンダ本体61とシリンダロッド62とから構成されている。シリンダロッド62の先端にピストン50が取り付けられている。
また、シリンダ60には例えばリニアエンコーダなどの位置センサ63が内蔵されている。そのため、シリンダ60からピストン位置を示す位置信号pstが制御部40に出力される。位置センサ63がシリンダ60に内蔵されているため、外付けの場合に比べて、耐久性に優れている。但し、位置センサ63は、シリンダ60に内蔵されている必要はない。
【0030】
制御部40は、演算装置と、メモリとを備える。メモリは、所定のプログラムを記録する。演算装置は、メモリに記録されたプログラムを読み込んで実行する。制御部40は、CPU(Central Processing Unit)、ROM、RAM、インタフェース(I/F)等からなるコンピュータを中心にして、ハードウェア構成されている。CPU、ROM、RAM及びインタフェースは、データバス等を介して相互に接続されている。
【0031】
制御部40は、予め定められた射出完了時の中子造形装置100内における混練材S2の全体基準容量VMstdから、射出後の混練槽20内に残存する混練材S31の混練槽容量VTを差分することによって、射出後の中子造形装置100内における混練材S2の全体容量変化量ΔVを算出する。なお、射出後の中子造形装置100内における混練材S2は、後述する成形体S30に相当する。混練槽容量VTと全体容量変化量ΔVとの関係式(1)を以下に示す。
ΔV=VMstd-VT …(1)
【0032】
さらに、制御部40は、全体容量変化量ΔVに、造形された中子の密度ρnを乗じて、原料の供給量MS1を決定する。中子の密度ρnは、予め、実験等によって計測することによって、求めることができる。
原料の供給量MS1と、全体容量変化量ΔVと、造形された中子の密度ρnとの関係式(2)を以下に示す。
MS1=ΔV×ρn …(2)
【0033】
なお、制御部40は、射出プレート80の通過孔81が混練材S2を収容する容量Vpと、金型70が混練材S2を収容する容量Vnと、予め定められた射出完了時の混練槽20内における混練材S2の混練槽内基準容量VTstdとの和を求めることによって、混練材S2の全体基準容量VMstdを算出してもよい。全体基準容量VMstdと、通過孔81の容量Vpと、金型70が混練材S2を収容する容量Vnと、混練槽内基準容量VTstdとの関係式(3)を以下に示す。
VMstd=Vp+Vn+VTstd …(3)
【0034】
また、制御部40は、混練槽内基準容量VTstdに基づく射出完了時のピストン50の基準位置Lstdと、検出された射出完了時のピストン50の位置Lpstとの差分ΔLに基づいて、混練槽内基準容量VTstdと混練槽容量VTとの差分である混練槽内容量変化量ΔVTを求めてもよい。基準位置Lstdと、射出完了時のピストン50の位置Lpstと、混練槽内容量変化量ΔVTと、混練槽断面積ATとの関係式(4)を以下に示す。
ΔVT=(Lpst-Lstd)×AT …(4)
ここで、混練槽内容量変化量ΔVTと、混練槽容量VTと、混練槽内基準容量VTstdとの関係式(5)を以下に示す。
ΔVT=VT-VTstd …(5)
【0035】
さらに、制御部40は、混練槽内容量変化量ΔVTと、射出プレート80の通過孔81が混練材S2を収容する容量Vpと、金型70が混練材S2を収容する容量Vnとに基づいて、全体容量変化量ΔVを算出してもよい。なお、容量Vpは、後述する成形体S32の体積と同じである。また、容量Vnは、後述する成形体S33の体積と同じである。
上記した数式(1)~(5)に基づいて、原料の供給量MS1を算出可能な式(6)を導出することができる。
MS1=ΔV×ρn
=(VMstd-VT)×ρn
=(Vp+Vn-(VT-VTstd)×ρn
=(Vp+Vn-ΔVT)×ρn
=[Vp+Vn-(Lpst-Lstd)×AT]×ρn …(6)
【0036】
射出完了時のピストン50の基準位置Lstdは、予め定められた射出完了時の混練槽20内における混練材S2の混練槽内基準容量VTstdに基づく。混練槽内基準容量VTstdは、一定であるとよい。具体的には、混練槽内基準容量VTstdは、ピストン50が混練材S2を射出する度に変動しないことが望ましい。混練槽内基準容量VTstdは、例えば実験により求めることができる。具体的には、例えば混練槽内基準容量VTstdをある値に設定し、実際に中子を造形した際の射出完了時のピストン50の位置を測定する。そして、目標とする射出完了時のピストン50の位置とのずれに基づいて、混練槽内基準容量VTstdの値を修正する。このような工程を少なくとも1回行って混練槽内基準容量VTstdを決定することができる。混練槽内基準容量VTstdを決定することによって、射出完了時のピストン50の基準位置Lstdを決定することができる。
【0037】
なお、適宜、バインダ供給量、界面活性剤供給量、及び水供給量を考慮して、原料の供給量MS1の大きさを調整してもよい。
【0038】
(中子造形方法)
次に、
図4を参照して、実施の形態1に係る中子造形方法について説明する。
図4は、実施の形態1に係る中子造形方法を示すフローチャートである。
図4の説明に当たっては、
図1~
図3も参照する。
【0039】
原料供給ユニット30から中子の原料を所定の質量分、秤量する(ステップST1)。初回に供給する原料の質量は、造形する中子の質量よりも大きく、例えば倍~数倍程度である。
【0040】
次いで、この秤量した原料を用いて、混練材S2を製造し、混練槽20に供給する(ステップST2)。具体的には、混練槽20内で混練羽根等を用いて原料を混練し、混練材S2を製造する。
【0041】
次いで、
図1、及び
図2に示すように、混練槽20内の混練材S2をピストン50によって金型70に射出し、成形体S30を造形する(ステップST3)。なお、混練槽20を金型70上に移送した後、ステップST3を実施するとよい。成形体S30は、混練材S31と、成形体S32と、成形体S33とを含む。混練材S31は、混練槽20に残存する。成形体S32は、射出プレート80の通過孔81に残存する。成形体S33は、金型70の内側空間73に残存する。
【0042】
次いで、制御部40は、射出後における成形体S30の全体容量変化量ΔVを算出し、この算出した全体容量変化量ΔVに、造形された中子の密度ρnを乗じて、原料の供給量MS1を決定する(ステップST4)。
【0043】
次いで、
図3に示すように、金型70から射出後における成形体S32、S33を取り出す(ステップST5)。具体的には、第1の型71及び第2の型72を開き、射出後における成形体S32、S33を金型70から取り出す。射出後における混練材S31は、混練槽20に残存する。さらに、成形体S33から不要な部分をトリミングすることによって、中子を得ることができる。
【0044】
次に、目標射出回数に到達していなければ(ステップST6:NO)、ステップST1に戻り、ステップST4において決定した供給量の原料を秤量する。一方、目標射出回数に到達していれば(ステップST6:YES)、中子を連続的に造形することを終了する。
【0045】
以上より、上記した中子の造形方法によれば、射出後における造形された中子の密度ρn、及び、射出後における中子造形装置100全体内の混練材S2の全体容量変化量ΔVを用いて、原料の供給量MS1を求める。そのため、射出前後の中子の密度変化による中子の原料の供給量MS1の算出精度への影響が無い。よって、中子の原料の供給量MS1の算出精度の低下するおそれを抑制することができる。
【0046】
また、上記した中子の造形方法によれば、予め求めることができる、射出プレート80
及び金型70における混練材S2の容量Vp、Vnと、混練槽内基準容量VTstdを用いて、混練材の全体基準容量VMstdを算出することができる。そのため、中子の原料の供給量MS1の算出精度の向上を図ることができる。
【0047】
また、上記した中子の造形方法によれば、ピストンの位置Lpstに基づいて、全体容量変化量ΔVを算出することができる。そのため、中子の原料の供給量MS1を容易に射出毎に算出することができる。
【0048】
(一具体例)
図5を参照して、実施の形態1に係る中子造形装置の一具体例について説明する。
図5は、
図1-
図3に示す中子造形装置の一具体例の断面図である。
【0049】
図5に示すように、中子造形装置100aは、
図1に示す中子造形装置100の構成に加えて、弁22、混練羽根23、及び回転ロッド24を備える。中子造形装置100aは、
図1に示す原料供給ユニット30の一具体例である原料供給ユニット30aを備える。
【0050】
混練槽20には、開口している上部から中子の原料となる砂S1、水、水ガラス、界面活性剤などの液状の添加剤が供給される。
【0051】
貫通孔21には、例えばゴム状の弁22が取り付けられている。弁22により、混練槽20に供給された砂S1などの原料や混練後の混練材S2が混練槽20から漏れることを抑制することができる。他方、弁22の中央部は、例えば平面視+(プラス)状であって、上下方向(Z軸方向)に貫通した切り込みが設けられている。そのため、
図1、及び
図2に示すように、混練槽20内の混練材S2を加圧して射出する際には、切り込みによって弁22が開口することができる。
【0052】
図5に示すように、混練槽20は、例えば上面が水平な台座10上に載置されている。台座10の上面には、混練槽20の底部に設けられた貫通孔21と嵌合する凸部11が形成されている。すなわち、混練槽20の貫通孔21に台座10の凸部11が嵌合し、貫通孔21に取り付けられた弁22を下側から支持している。このような構成により、例えば混練中においても、混練材S2が混練槽20から漏れることを抑制することができる。
【0053】
混練槽20に供給された砂S1などの原料を混練羽根23により混練することにより、混練材S2が得られる。混練羽根23は鉛直方向(Z軸方向)に延設された回転ロッド24に固定された単数又は複数の板状部材から構成されている。混練羽根23を構成する板状部材の法線方向は、いずれもZ軸方向と垂直である。回転ロッド24は図示しないモータなどの駆動源に連結されており、回転ロッド24を軸として混練羽根23が回転する。ここで、回転ロッド24の中心軸と、混練槽20の中心軸とは一致していることが好ましい。
【0054】
また、混練羽根23は回転ロッド24と共に、鉛直方向(Z軸方向)に移動することができる。
図5には、混練羽根23が上方(Z軸プラス側)に退避し、回転していない状態が模式的に示されている。混練羽根23が下降して(Z軸マイナス側に移動して)、混練槽20に挿入したまま、回転することができる。
【0055】
原料供給ユニット30は、ホッパ31、シャッタ32、秤量皿33、秤量計34、砂投入シュート35、ポンプ36~38を備えている。
ホッパ31は、混練槽20に供給するための砂S1が貯蔵されている。ホッパ31の排出口31aには、開閉自在なシャッタ32が取り付けられており、排出口31aから秤量皿33へ投下する砂S1の量を調整することができる。シャッタ32の開閉及び開度は、制御部40から出力される制御信号ctr1により制御される。
【0056】
秤量皿33は秤量計34上に載置されており、秤量皿33上に投下された砂S1の質量が計測される。秤量計34には例えばロードセルが内蔵されており、秤量計34によって計測された質量が、電気信号である質量信号msとして制御部40に出力される。すなわち、制御部40は、質量信号msに基づいて制御信号ctr1を生成し、シャッタ32の開閉及び開度をフィードバック制御している。
【0057】
具体的には、制御部40は、例えば以下のような制御を行う。秤量皿33への砂S1の投下が開始される際、制御部40はシャッタ32を全開にするための制御信号ctr1を出力する。その後、秤量計34から出力される質量信号msが、制御部40が決定しておいた供給量に近付いたら、制御部40はシャッタ32の開度を小さくするための制御信号ctr1を出力する。そして、秤量計34から出力される質量信号msが、制御部40が決定しておいた供給量に到達したら、制御部40はシャッタ32を閉じるための制御信号ctr1を出力する。
【0058】
秤量皿33上に投下された砂S1の質量が、制御部40が決定しておいた供給量に到達したら、例えば秤量皿33がY軸周りに傾転し、秤量皿33上の砂S1が砂投入シュート35を介して混練槽20に供給される。
【0059】
ポンプ36~38は、それぞれ水、水ガラス、界面活性剤を混練槽20に供給するためのダイアフラムポンプである。ポンプ36から供給される水の量は、制御部40から出力される制御信号ctr2により制御される。同様に、ポンプ37から供給される水ガラスの量は、制御部40から出力される制御信号ctr3により制御される。同様に、ポンプ38から供給される界面活性剤の量は、制御部40から出力される制御信号ctr4により制御される。例えば、制御信号ctr2~ctr4はパルス信号であって、パルス信号の回数に応じた量の水、水ガラス、界面活性剤が、ダイアフラムポンプであるポンプ36~38から供給される。
【0060】
台座10上に載置された混練槽20内において砂S1などの原料を混練した後、混練材S2を収容した混練槽20は、台座10上から金型70上に移送される。
図5において、金型70上の混練槽20は二点鎖線で示されている。
【0061】
なお、上記したプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0062】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。また、本発明は、上記実施の形態やその一例を適宜組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0063】
100、100a 中子造形装置
10 台座 11 凸部
20 混練槽 21 貫通孔
22 弁 23 混練羽根
24 回転ロッド
30、30a 原料供給ユニット
31 ホッパ 31a 排出口
32 シャッタ 33 秤量皿
34 秤量計 35 砂投入シュート
36、37、38 ポンプ
40 制御部 50 ピストン
60 シリンダ 61 シリンダ本体
62 シリンダロッド 63 位置センサ
70 金型 71 第1の型
72 第2の型 73 内側空間
80 射出プレート 81 通過孔
ctr1、ctr2、ctr3、ctr4 制御信号
Lpst 射出完了時のピストン50の位置
Lstd 射出完了時のピストン50の基準位置
ΔL 差分
ms 質量信号 pst 位置信号
S1 砂 S2、S31 混練材
S30 成形体 S32、S33 成形体
ST1、ST2、ST3、ST4、ST5、ST6 ステップ