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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】測距装置の車両搭載構造及び測距装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20241008BHJP
   G01S 7/03 20060101ALI20241008BHJP
   B60K 11/04 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
G01S7/481 Z
G01S7/03 234
B60K11/04 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021166258
(22)【出願日】2021-10-08
(65)【公開番号】P2023056821
(43)【公開日】2023-04-20
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】遠山 浩平
(72)【発明者】
【氏名】別府 太郎
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-138572(JP,A)
【文献】特開2014-119302(JP,A)
【文献】特開2000-56008(JP,A)
【文献】特開2019-167015(JP,A)
【文献】特開2017-165360(JP,A)
【文献】特許第5409892(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2020/386860(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/35264(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/51
13/00 - 13/95
17/00 - 17/95
B60K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信波を照射し、前記送信波が照射された物体からの反射波を検出することにより、前記物体との距離を測定するように構成される測距装置(1,1A)と、
車両(2)の外面に形成される前記測距装置を収容可能な空間である搭載空間(21)内に、前記測距装置を取り付けるブラケット(31,34,35)と、
前記搭載空間内に前記測距装置が取り付けられた状態で、前記車両の外面側から前記搭載空間を覆う遮蔽板(32,32a,32b,32c,32d)と、
を備え、
前記搭載空間は、前記車両の前面、側面又は後面に設けられ、
前記遮蔽板は、前記車両の走行に伴う走行風を前記搭載空間に取り込むための開口を形成し、
前記開口は、前記測距装置と前記遮蔽板との間に形成された隙間である、測距装置の車両搭載構造。
【請求項2】
請求項1に記載の測距装置の車両搭載構造であって、
前記開口における幅(W)が0.5mm~4mmである、測距装置の車両搭載構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の測距装置の車両搭載構造であって、
前記開口には、前記遮蔽板(32a,32b)に形成された貫通孔(33a,33b)が含まれる、測距装置の車両搭載構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の測距装置の車両搭載構造であって、
前記遮蔽板(32c)は、前記送信波及び前記反射波を透過可能な材料で構成されており、前記搭載空間を前記測距装置が位置する領域を含めて全体的に覆う、測距装置の車両搭載構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の測距装置の車両搭載構造であって、
前記ブラケット(34)と前記遮蔽板(32d)とは単一の部品で形成されている、測距装置の車両搭載構造。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の測距装置の車両搭載構造であって、
前記測距装置(1A)は、
前記距離を測定するための構成部品を収容する内部空間を有し、前記内部空間と外部とを連通させる連通部(110)が形成された筐体(100)と、
前記連通部に設けられる呼吸フィルタ(800)と、
を備える、測距装置の車両搭載構造。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の測距装置の車両搭載構造であって、
前記測距装置は、
前記距離を測定するための構成部品を収容する筐体(100)と、
前記筐体における前記送信波及び前記反射波が通過する面以外の面に配置される、ヒートシンク(700)と、
を備える、測距装置の車両搭載構造。
【請求項8】
請求項7に記載の測距装置の車両搭載構造であって、
前記遮蔽板は、前記筐体及び前記ヒートシンクのベースが位置する部分を避けて、前記搭載空間を覆う、測距装置の車両搭載構造。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の測距装置の車両搭載構造であって、
前記ヒートシンクは、前記開口から流入する走行風の流れに沿った方向に延びるフィンを備える、測距装置の車両搭載構造。
【請求項10】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の測距装置の車両搭載構造を備える前記車両に搭載される前記測距装置である、測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測距装置の車両搭載構造及び測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送信波を照射し、照射した送信波の物体からの反射波を検出して、その物体までの距離や相対速度を検出する測距装置がある。この種の測距装置は、車両に搭載して使用され、車両の周辺に存在する様々な物体の検出に用いられる。
【0003】
特許文献1には、車両の外面に設置される測距装置で発生した熱を車室内からの空気の流れにより放熱することができる、測距装置の車両搭載構造が開示されている。具体的には、測距装置を車両の外面に取り付けるためのブラケット及び測距装置を収容するように車両の外面に設置されるハウジングにより主に構成される測距装置の車両搭載構造において、車室内の空調空気をハウジング内に取り入れるための第1開口及びファンと、ハウジング内の空気を外部へ排出するための第2開口と、を設けることが記載されている。これにより、ファンによって第1開口から車室内の空調空気がハウジング内へ取り込まれ、取り込まれた空調空気がハウジング内を流れて第2開口から外部へと排出されるように空気の流路が形成されることにより、測距装置で発生した熱が放熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2021/0063093号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、発明者の詳細な検討の結果、特許文献1の構成では、第1開口から車室内の空調空気をハウジング内へ取り込むためのファンが必要となるため、測距装置の車両搭載構造の全体的なサイズが大きくなってしまうという課題が見出された。また、ファンが必要となる分、部品点数が増加し、製造コストが増加する。
【0006】
本開示の一局面は、測距装置の車両搭載構造の全体的なサイズ及び製造コストを低減しつつ、測距装置で発生する熱の放熱性を向上できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、測距装置(1,1A)の車両搭載構造であって、測距装置と、ブラケット(31,34,35)と、遮蔽板(32,32a,32b,32c,32d)と、を備える。測距装置は、送信波を照射し、送信波が照射された物体からの反射波を検出することにより、物体との距離を測定するように構成される。ブラケットは、車両(2)の外面に形成される測距装置を収容可能な空間である搭載空間(21)内に、測距装置を取り付ける。遮蔽板は、搭載空間内に測距装置が取り付けられた状態で、車両の外面側から搭載空間を覆う。搭載空間は、車両の前面、側面又は後面に設けられる。遮蔽板は、車両の走行に伴う走行風を搭載空間に取り込むための開口を形成する。
【0008】
このような構成によれば、車両の走行に伴う走行風が開口から測距装置の搭載空間内に流入するため、測距装置の搭載空間内に外部からの空気を効率的に取り込むことができる。よって、測距装置の車両搭載構造の全体的なサイズ及び製造コストを低減しつつ、測距装置で発生する熱の放熱性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ライダ装置の外観を示す斜視図である。
図2】車両におけるライダ装置及び搭載空間の位置を例示した図である。
図3】フロントグリルに設置されたライダ装置を車両前方から見た図である。
図4図3におけるライダ装置及び遮蔽板の部分を拡大した図である。
図5】搭載空間に取り付けられたライダ装置を、遮蔽板を外した状態で見た斜視図である。
図6図3のVI-VI断面図である。
図7】ブラケットの概略構成を示す斜視図である。
図8】フロントグリルに設置された、開口として機能する複数の貫通孔が形成された遮蔽板及びライダ装置を、車両前方から見た図である。
図9】フロントグリルに設置された、開口として機能する複数のスリットが形成された遮蔽板及びライダ装置を、車両前方から見た図である。
図10】ライダ装置が位置する領域を含めて搭載空間を全体的に覆うように遮蔽板が設置される構成における、図6に対応する断面図である。
図11】単一の部品で形成されたブラケット及び遮蔽板の概略構成を示す斜視図である。
図12】ライダ装置の筐体に呼吸フィルタが設けられる構成における、搭載空間に取り付けられたライダ装置を、遮蔽板を外した状態で見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.構成]
図1に示すライダ装置1は、送信光を照射し、送信光が照射された物体からの反射光を検出することにより物体との距離や相対速度を測定する測距装置である。図2に示すように、ライダ装置1は、車両2に搭載して使用され、車両2の周辺に存在する様々な物体の検出に用いられる。ライダは、LiDARとも表記される。LiDARは、Light Detection and Rangingの略語である。
【0011】
車両2の外面には、ライダ装置1を収容可能な空間である搭載空間21が形成されており、ライダ装置1は、搭載空間21内に設置される。搭載空間21は、車両2の前面、側面又は後面に設けられる。なお、図2は、車両2の前面、側面及び後面における搭載空間21が設けられる位置を例示するものである。すなわち、搭載空間21は、車両2における少なくとも前面、側面又は後面に設けられており、例えば、車両2の前面及び後面の2箇所に設けられていてもよいし、車両2の前面、両側面及び後面の4箇所に設けられていてもよい。本実施形態では、搭載空間21は、後述するように車両2の前面におけるフロントグリル22内に設けられている。車両2にライダ装置1が搭載される構造、具体的には、ライダ装置1、後述するブラケット31及び遮蔽板32が搭載空間21に設置される構造であるライダ装置1の車両搭載構造の詳細については、後述する。
【0012】
図1に戻り、ライダ装置1は、筐体100と、光学窓200と、ヒートシンク700と、を備える。
筐体100は、1面が開口された直方体状に形成された樹脂製又は金属製の箱体である。
【0013】
光学窓200は、送信光及び反射光を透過する材料で形成され、筐体100の開口部を覆うように設置される。筐体100における光学窓200が設置された面は、筐体100における送信光及び反射光が通過する面であり、当該面を前面、前面とは反対側の面を背面とする。
【0014】
筐体100は、物体との距離や相対速度を測定するための構成部品を収容する内部空間を有している。距離や相対速度を測定するための構成部品とは、具体的には、投光部、受光部、スキャナ等である。投光部は、送信光を出力する。受光部は、送信光が照射された物体からの反射光を受光し、電気信号に変換する。スキャナは、回転駆動される偏向ミラーを有し、送信光及び反射光を偏向ミラーの回転角度に応じた方向に反射する。投光部から出力された送信光は、スキャナにより偏向走査され、あらかじめ設定された走査範囲内に出射される。送信光が照射された物体からの反射光は、受光部にて検出される。
【0015】
ヒートシンク700は、筐体100の内部空間に収容される部品等で発生する熱を放熱するために、筐体100の外面に設置される。ヒートシンク700は、板状のベース701の上に複数のフィン702が立設された一般的な形状を有している。なお、ヒートシンクの形状は上記フィン702が立設された形状以外であってもよく、例えば、板状のベースの上に複数のピンが立設された形状でもよい。ピンとは、ベースから離れる方向に延びる細い円柱状の部材である。ヒートシンク700は、筐体100における前面以外の面に配置される。本実施形態では、ヒートシンク700は筐体100の上面に設置されている。ヒートシンク700は、後述する開口から流入する走行風の流れに沿った方向(本実施形態では、筐体100の前面から背面に向かう方向)にフィン702が延びるように設置される。
【0016】
次に、ライダ装置1の車両搭載構造について説明する。ライダ装置1の車両搭載構造は、ライダ装置1と、ブラケット31と、遮蔽板32と、を備える。以下では、本実施形態の構成である車両2の前面にライダ装置1が設置された場合を例に説明するが、ライダ装置1が車両2の前面、側面又は後面のいずれに設置される場合であっても、ライダ装置1の車両搭載構造は同様の構成である。
【0017】
図3及び図4に示すように、ライダ装置1は、車両2の前面におけるフロントグリル22内に設置される。ライダ装置1は、フロントグリル22において、送信光及び反射光が通過する筐体100の前面が車外に露出するように設置される。
【0018】
図5及び図6に示すように、フロントグリル22には、ライダ装置1の搭載空間21が形成されている。より具体的には、フロントグリル22には、ライダ装置1を収容可能な大きさの内部空間を有する凹部が設けられており、凹部の内部空間がライダ装置1の搭載空間21である。なお、図5においては、フロントグリル22における直方体状に凹んだ部分が凹部であり、搭載空間21は、凹部の内部空間である直方体状の空間である。ライダ装置1は、筐体100の前面の位置が凹部の開口部の位置と略同じになるように、搭載空間21内にブラケット31を用いて取り付けられる。また、図6の断面図においては、ライダ装置1の筐体100の内部空間に収容される部品は示していない。
【0019】
ブラケット31の構造について、図7を用いて説明する。ブラケット31は、ライダ装置1を搭載空間21内に取り付けるための部材である。ブラケット31は、ライダ装置1に当接してライダ装置1を保持する部分である保持部31aと、搭載空間21の内表面に取り付けられる部分である取付部31bと、を有する。本実施形態では、保持部31aは、ライダ装置1の両側面及び下面のそれぞれに当接する3つの板状の部分を有しており、これら3つの部分でライダ装置1を固定することにより、ライダ装置1を保持する。なお、保持部31aの形状はこれに限定されず、ブラケット31にライダ装置1を固定可能に構成されていれば形状は問わない。また、本実施形態では、取付部31bは、保持部31aの上記3つの部分のそれぞれから延出して、搭載空間21の内表面のうちブラケット31が取り付けられる面に当接する部分である。取付部31bは、搭載空間21の内表面に固定される。なお、取付部31bの形状はこれに限定されず、ブラケット31を搭載空間21の内表面に固定可能に構成されていれば形状は問わない。図5及び図6に示すように、ブラケット31の取付部31bが搭載空間21の内表面に固定され、さらに、ブラケット31の保持部31aにライダ装置1が固定されることで、ライダ装置1が搭載空間21内に取り付けられる。
【0020】
図3図4及び図6に示すように、遮蔽板32は、搭載空間21内にライダ装置1が取り付けられた状態で、車両2の外面側から搭載空間21を覆う、板状の部材である。具体的には、遮蔽板32は、外形が長方形状であって、その中央部に長方形状の孔である孔部が形成された枠形状の板材である。遮蔽板32は、外寸が搭載空間21を形成する凹部の開口部と同じか凹部の開口部よりも大きく、内寸が少なくとも光学窓200よりも大きくなるように構成される。遮蔽板32が搭載空間21を覆うように設置された状態で、遮蔽板32の孔部から少なくとも光学窓200が車外に露出する。本実施形態では、遮蔽板32の孔部の大きさが、ライダ装置1の前面における外寸よりも大きくなるように形成されている。なお、ライダ装置1の前面とは、ライダ装置1における筐体100の前面と同じ面であるが、ライダ装置1の前面における外寸は、説明上、ヒートシンク700のフィン702を含まない外寸(すなわち、ヒートシンク700のベース701までの外寸)とする。つまり、ライダ装置1の前面における外縁部は、ヒートシンク700のフィン702を含まない部分(すなわち、ヒートシンク700のベース701までの部分)の外縁部とする。具体的には、図4に示すライダ装置1の前面における外縁部は、ライダ装置1における筐体100からヒートシンク700のベース701までの部分である長方形状の部分の外縁部であり、当該長方形状の部分の外寸がライダ装置1の前面における外寸となる。このため、遮蔽板32が搭載空間21を覆うように設置された状態で、遮蔽板32の孔部からライダ装置1の前面が車外に露出する。すなわち、遮蔽板32は、ライダ装置1(より具体的には、筐体100及びヒートシンク700のベース701)が位置する部分を避けて、凹部の開口部を外面側から覆うように設置されている。換言すると、遮蔽板32は、搭載空間21におけるライダ装置1(より具体的には、筐体100及びヒートシンク700のベース701)が位置する領域を除いて、車両2の外面側から搭載空間21を覆っている。
【0021】
遮蔽板32は、車両2の走行に伴う走行風を搭載空間21内に取り込むための開口を形成する。遮蔽板32により形成される開口について、以下に説明する。
本実施形態では、ライダ装置1との間に隙間33が形成されるように遮蔽板32が構成されており、遮蔽板32とライダ装置1との間に形成される隙間33が開口として機能する。上述したように、本実施形態では遮蔽板32の孔部がライダ装置1の前面における外寸よりも大きいため、遮蔽板32の内縁部(すなわち、孔部の外周部)とライダ装置1との間に隙間33が形成されている。具体的には、遮蔽板32に対して垂直な方向(本実施形態の場合は、車両2の前方)から見て、ライダ装置1の周囲の全周において遮蔽板32とライダ装置1との間に所定の幅Wの隙間33が形成されている。遮蔽板32とライダ装置1との間の隙間33とは、より具体的には、図4及び図6に示すように、遮蔽板32の内縁部と、ライダ装置1の前面における外縁部との間の隙間33である。すなわち、ライダ装置1におけるヒートシンク700の配置面(本実施形態では、ライダ装置1の上面)においては、遮蔽板32とヒートシンク700のベース701との間に幅Wの隙間33が形成される。ライダ装置1におけるヒートシンク700の配置面以外の面においては、遮蔽板32と筐体100との間に幅Wの隙間33が形成される。なお、図4及び図6では、遮蔽板32とライダ装置1との間に幅Wの隙間33が形成されることを説明する上で理解を容易にするため、隙間33の幅Wを広めに示している。すなわち、遮蔽板32及びライダ装置1の構成によっては、遮蔽板32とヒートシンク700のベース701との間の隙間33の幅Wの長さがフィン702の長さよりも短く、遮蔽板32に対して垂直な方向から見て、遮蔽板32とフィン702とが一部重なっている場合もある。この場合は、遮蔽板32に対して垂直な方向から見て、隣り合う2つのフィン702の間の、遮蔽板32とヒートシンク700のベース701との間の隙間33が、ヒートシンク700の配置面における遮蔽板32とライダ装置1との間の隙間33である。図6と対応する後述する図10においても、図4及び図6と同様に、貫通孔33cの幅Wを広めに示している。
遮蔽板32とライダ装置1との間に形成される隙間33は、必ずしもライダ装置1の周囲の全周において形成されていなくてもよい。例えば、遮蔽板に対して垂直な方向から見て、ライダ装置1の周囲のうち上面側となる部分(すなわち、ヒートシンク700の配置面側の部分)においてのみ遮蔽板とライダ装置1との間に所定の幅Wの隙間が形成されるように、遮蔽板が構成されていてもよい。
【0022】
本実施形態では、上述したように、遮蔽板32とライダ装置1との間に形成される隙間33が開口として機能するが、遮蔽板に形成された貫通孔が開口として機能する構成であってもよい。なお、遮蔽板に形成された貫通孔が開口として機能する場合は、遮蔽板とライダ装置1との間に開口として機能する隙間が形成されていなくてもよい。例えば、図8に示すように、遮蔽板32aとライダ装置1との間に開口として機能する隙間は形成されていないが、遮蔽板32aに複数の貫通孔33aが形成されており、これらの複数の貫通孔33aが開口として機能する構成でもよい。図8に示す遮蔽板32aは、直径Wの円形状の貫通孔33aを複数有しており、遮蔽板32aに対して垂直な方向から見て、複数の貫通孔33aがライダ装置1の外周に沿って並ぶように構成されている。また、遮蔽板に形成された貫通孔は、図9に示すように、遮蔽板32bに形成されたスリット33bであってもよい。図9に示す遮蔽板32bは、所定の幅Wのスリット33bを複数有しており、遮蔽板32bに対して垂直な方向から見て、上下方向に延びるスリット33bが左右方向に一定の間隔を開けて並ぶように構成されている。なお、図9に示す構成においても、遮蔽板32bとライダ装置1との間に開口として機能する隙間は形成されておらず、遮蔽板32bに形成された複数のスリット33bが開口として機能する。
遮蔽板に形成される貫通孔の形状は、上述した円形状やスリットに限定されず任意の形状にすることができる。例えば、貫通孔の形状は、フロントグリル22のデザインに合わせた形状にする等、意匠性を考慮した形状にしてもよいし、放熱性能を考慮した形状にしてもよい。
【0023】
遮蔽板32,32a,32bは、開口における幅Wが0.5mm~4mmとなるように構成される。開口における幅Wとは、開口の大きさを表す寸法のうち最小となる寸法である。例えば、開口が一定の幅で延びる形状(例えば、図4に示すような遮蔽板32とライダ装置1との間に形成される所定の幅の隙間33、図9に示すような遮蔽板32bに形成された所定の幅のスリット33b等)である場合は、当該一定の幅の長さが開口の幅である。また、開口が一定の幅で延びる形状でない場合、例えば、遮蔽板に形成された貫通孔が開口として機能する場合であって、図8に示すような円形状の貫通孔33aの場合は、貫通孔33aの直径の長さが開口の幅である。楕円形状の貫通孔の場合は、貫通孔の短径の長さが開口の幅である。すなわち、開口における幅Wが0.5mm~4mmであるとは、換言すると、開口の大きさが、直径が0.5mmの球が通過可能な大きさであって、かつ、直径が4mmよりも大きい球が通過できない大きさであるように構成されることを意味する。
【0024】
[2.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)ライダ装置1の車両搭載構造は、ライダ装置1と、ブラケット31と、遮蔽板32と、を備える。ライダ装置1は、車両2の前面、側面又は後面に設けられる搭載空間21内に、ブラケット31により取り付けられる。搭載空間21内にライダ装置1が取り付けられた状態で、車両2の外面側から搭載空間21を覆うように遮蔽板32が設置される。遮蔽板32は、車両2の走行に伴う走行風を搭載空間21に取り込むための開口を形成する。このような構成によれば、車両2の走行に伴う走行風が開口からライダ装置1の搭載空間21内に流入するため、ライダ装置1の搭載空間21に外部からの空気を効率的に取り込むことができる。また、遮蔽板32に開口を設けるという簡易な構成であるため、例えば、先行技術文献に記載の測距装置の車両搭載構造のようにライダ装置の搭載空間内に外部からの空気を取り込むためのファンを備える構成と比較して、部品点数を少なくでき、車両搭載構造の全体的なサイズが増加することを抑制できる。よって、ライダ装置1の車両搭載構造の全体的なサイズ及び製造コストを低減しつつ、ライダ装置1で発生する熱の放熱性を向上できる。
【0025】
(2b)遮蔽板32,32a,32bは、開口における幅Wが0.5mm~4mmとなるように構成される。このような構成によれば、開口の大きさが、搭載空間21内への異物の侵入を抑制できる程度に小さく、かつ、放熱性を向上できる程度に走行風を搭載空間21内に取り入れられる大きさであるため、異物の侵入を抑制しつつ、効率的に放熱効果を得ることができる。なお、開口の幅Wを0.5mm~2mmとした場合に、特に放熱効率が良くなる。また、開口が小さく形成されるため、開口が形成されることによる意匠性への影響を低減できる。
【0026】
(2c)開口は、遮蔽板32a,32bに形成された貫通孔33a,33bであってもよい。このような構成によれば、開口の形状を所望の形状にすることができる。例えば、貫通孔の形状をフロントグリルのデザインに合わせて変更することにより、開口の形状を種々のフロントグリルのデザインに合わせた形状にすることができる。開口をフロントグリルのデザインに合わせた形状にすることで、搭載空間21への走行風の取り込みによる放熱効果を得つつ、意匠性を高めることができる。また、貫通孔の形状を変更して開口の形状を放熱性能が高まるような形状にする等、開口の形状を目的に応じて変更することができる。
【0027】
(2d)ライダ装置1は、筐体100における前面以外の面に配置されるヒートシンク700を備える。このような構成によれば、ヒートシンク700により、筐体100の内部空間に収容される部品で発生した熱が搭載空間21へと放熱されやすくなる。よって、上述した開口からの搭載空間21への走行風の取り込みと併せて、筐体100の内部空間に収容される部品の放熱性をより向上できる。
【0028】
なお、本実施形態では、ライダ装置1が測距装置に相当し、送信波が送信光に相当し、反射波が反射光に相当する。
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0029】
(3a)上記実施形態では、遮蔽板32,32a,32bは、開口における幅Wが0.5mm~4mmとなるように構成されるが、開口の大きさはこれに限定されるものではない。例えば、開口の幅を0.4mmや4.5mmとしてもよい。
【0030】
(3b)上記実施形態では、遮蔽板32とライダ装置1との間に形成される隙間33が開口として機能する場合と、遮蔽板32a,32bに形成された貫通孔33a,33bが開口として機能する場合と、を例示した。しかし、開口の構成はこれに限定されるものではない。例えば、遮蔽板とライダ装置との間に形成される隙間と、遮蔽板に形成された貫通孔と、の両方が開口として機能するように設けられる構成でもよい。
【0031】
(3c)上記実施形態では、遮蔽板32は、搭載空間21におけるライダ装置1が位置する領域を除いて、車両2の外面側から搭載空間21を覆うように構成される。しかし、遮蔽板の構成はこれに限定されるものではない。例えば、図10に示すように、遮蔽板32cは、送信光及び反射光を透過可能な材料で構成されており、搭載空間21をライダ装置1が位置する領域を含めて全体的に覆うように構成されていてもよい。すなわち、ライダ装置1全体が遮蔽板32cにより隠蔽されるように、遮蔽板32cは、遮蔽板32cに対して垂直な方向から見て、搭載空間21におけるライダ装置1が位置する領域が少なくとも覆われるようにして、搭載空間21を覆っている。具体的には、遮蔽板32cは、搭載空間21全体を覆う板状の部材に貫通孔33cが形成されたものであり、貫通孔33cは、遮蔽板32cに対して垂直な方向から見て、搭載空間21におけるライダ装置1が位置する領域以外の領域に形成される。ライダ装置1が位置する領域とは、より具体的には、ライダ装置1におけるヒートシンク700のフィン702以外の部分が位置する領域である。遮蔽板32cにおいて、貫通孔33cが開口として機能する。図10に例示する遮蔽板32cの貫通孔33cの形状をより具体的に説明すると、貫通孔33cは、遮蔽板32cに対して垂直な方向から見て、上記実施形態における遮蔽板32とライダ装置1との間に形成される所定の幅Wの隙間と同じ位置に形成されている。すなわち、遮蔽板32cに対して垂直な方向から見て、ライダ装置1の周囲の略全周において所定の幅Wの貫通孔33cが形成されている。なお、遮蔽板32cにおける貫通孔33cの外側の部分と貫通孔33cの内側の部分とは、一部において繋がっている。このような構成によれば、搭載空間21に設置されたライダ装置1全体を遮蔽板32cにより隠蔽しつつ、車両2の走行に伴う走行風を開口から搭載空間21に取り込むことができる。よって、ライダ装置1を車外から見えにくいように隠して車両2に搭載することができ、意匠性が高まるとともに、放熱性能も高めることができる。
【0032】
(3d)上記実施形態では、ブラケット31と遮蔽板32とは別体であったが、例えば図11に示すように、ブラケット34と遮蔽板32dとが単一の部品で形成されていてもよい。図11に示すブラケット34は、上記実施形態のブラケット31と同じ形状の、ライダ装置1を保持する部分である保持部34aと、搭載空間21の内表面に取り付けられる部分である取付部34bと、を有する。さらに、ブラケット34は、保持部34aにおける遮蔽板32dに近接する端部から延出して、遮蔽板32dの裏面に接続されている部分である接続部34cを有する。すなわち、接続部34cにより遮蔽板32dとブラケット34とが繋がっており、遮蔽板32dとブラケット34とが単一の部品として形成されている。なお、遮蔽板32dは、裏面が接続部34cと接続されている以外は、上記実施形態の遮蔽板32と同じ形状である。ブラケット34の保持部34aにライダ装置1が設置され、ライダ装置1が固定された状態でブラケット34の取付部34bが搭載空間21の内表面に取り付けられることで、ライダ装置1、ブラケット34及び遮蔽板32dが車両2に取り付けられる。このような構成によれば、ブラケット34と遮蔽板32dとが単一の部品で形成されるため、部品点数を削減できる。
【0033】
(3e)図12に示すように、ライダ装置1Aは、筐体100において距離を測定するための構成部品を収容する内部空間と外部とを連通させる連通部110が形成されており、連通部110に呼吸フィルタ800が設けられている構成であってもよい。呼吸フィルタ800は、連通部110を塞ぐように筐体100に取り付けられており、筐体100の内部空間に液体が入り込むのを抑制しつつ、連通部110を介した内部空間と外部との通気が可能に構成されている。液体としては、たとえば雨水、洗車に用いられる水、車両が走行時に巻き上げた水、融雪剤として用いられる塩化カルシウムの融雪による溶液、ブレーキオイルなどの有機系溶剤が想定される。なお、呼吸フィルタ800は、ベントフィルタとも称される。ブラケット35は、上記実施形態のブラケット31と基本的には同じ形状の、ライダ装置1Aを保持する部分である保持部35aと、搭載空間21の内表面に取り付けられる部分である取付部35bと、を有するが、保持部35aが呼吸フィルタ800を覆わないように構成される。例えば、図12に示す構成のように呼吸フィルタ800が筐体100の側面に設けられる場合、保持部35aは、呼吸フィルタ800が位置する部分を避けて呼吸フィルタ800が設けられた側面に当接するように形成されている。このような構成によれば、外部からの液体の筐体100内への侵入を防ぎつつ、開口から搭載空間21へ流入した走行風を、呼吸フィルタ800から筐体100の内部空間に取り込むことができる。このため、筐体100の内部空間に収容される部品の放熱性をより向上できる。また、筐体100の内部空間にかかる圧力を外部に逃がすことができ、筐体100の内部空間に収容される各部品にかかる応力を低減することができる。このため、筐体100の内部空間に収容される各部品に応力がかかることによる測距精度の低下を抑制することができる。例えば、ライダ装置の場合、上記応力により光学系にゆがみなどが発生すると測距精度が低下することが懸念されるが、このような構成によれば、上記応力による測距制度の低下を抑制することが可能となる。
【0034】
(3f)上記実施形態では、ヒートシンク700は筐体100の上面に設置されているが、ヒートシンク700の配置面はこれに限定されるものではない。例えば、ヒートシンク700は、筐体100の側面、下面又は背面に配置されていてもよい。放熱効率がよいのは、ヒートシンク700を筐体100の背面以外の面に設ける配置である。また、ヒートシンク700は、開口から流入する走行風の流れに沿った方向にフィン702が延びるように設置されることが、放熱効率を高める上で好ましい。
【0035】
また例えば、ヒートシンク700は、筐体100の上面及び側面、筐体100の上面及び下面等、筐体100の前面を除く複数の面に配置されていてもよい。
(3g)ライダ装置の車両搭載構造において、搭載空間21内に対流を促進する形状を設けてもよい。具体的には、搭載空間21の内表面(すなわち、車両2)及びブラケット31のうち少なくとも一方に、対流を促進させる形状を設けてもよい。例えば、対流を促進する形状として、搭載空間21の角部にC面取り加工やR面取り加工を施した部分である面取り部を設けてもよい。また例えば、搭載空間21における走行風の流入方向に沿った面に、走行風の流入方向に対して直交する方向に延びるリブが走行風の流入方向に複数個並んだ構造であるリブ構造を設けてもよい。当該リブ構造における複数のリブは、例えば、隣り合う2つのリブの対向面が、リブの先端に向かうにつれて互いに離れるように、なだらかに傾斜しており、隣り合う2つのリブの間で空気の流れが生じるように構成されていてもよい。このような対流を促進する形状を設けることにより、搭載空間21内の空気の対流が促進され、放熱効果が高まることが期待できる。
【0036】
(3h)上記実施形態では、測距装置としてライダ装置1を例示したが、測距装置の種類はこれに限定されるものではない。例えば、測距装置は、ミリ波レーダ装置であってもよい。
【0037】
(3i)上記実施形態では、筐体100がヒートシンク700を備える構成であるが、筐体はヒートシンク700を備えない構成でもよい。
(3j)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1,1A…ライダ装置、2…車両、21…搭載空間、31,34,35…ブラケット、32,32a,32b,32c,32d…遮蔽板。
図1
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図12