(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】情報提示装置、情報提示方法及び情報提示用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 50/14 20200101AFI20241008BHJP
B60W 30/16 20200101ALI20241008BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B60W50/14
B60W30/16
G08G1/16 E
(21)【出願番号】P 2021175872
(22)【出願日】2021-10-27
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100180194
【氏名又は名称】利根 勇基
(72)【発明者】
【氏名】栗橋 翠
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-092795(JP,A)
【文献】特開2018-165684(JP,A)
【文献】特開2017-021546(JP,A)
【文献】特開2013-222235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 50/14
B60W 30/16
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周囲の周辺車両に関する情報に基づいて、前記自車両の追従対象の候補である先行車候補を選択する先行車候補選択部と、
前記先行車候補への追従走行によって得られる前記自車両の延長航続距離を推定する距離推定部と、
前記延長航続距離の推定精度を算出する推定精度算出部と、
前記自車両に設けられた出力装置を介して、前記自車両が前記先行車候補に追従した場合の航続距離の延長情報として前記延長航続距離を出力する情報出力部と
、
を備え、
前記推定精度算出部は、
前記情報のうちの前記先行車候補に関する情報を取得した取得手段の違いに基づいて算出した前記先行車候補に関する情報の信頼度、前記自車両の運転支援レベル、及び、前記自車両の走行ルート上の走行環境情報を取得した取得手段の違いに基づいて算出した前記走行環境情報の信頼度の少なくとも一つに基づいて、前記推定精度を算出し、
前記先行車候補に関する情報の信頼度が高い場合には低い場合と比較して前記推定精度を高くし、前記自車両の運転支援レベルが高い場合には低い場合と比較して前記推定精度を高くし、前記走行環境情報の信頼度が高い場合には低い場合と比較して前記推定精度を高くし、
前記情報出力部は、
前記推定精度に基づいて前記延長情報の出力態様を変更する、
情報提示装置。
【請求項2】
前記推定精度算出部は前記先行車候補への追従走行による空気抵抗の低減度の第1確信度と前記先行車候補への追従走行の継続可能距離の第2確信度とに基づいて前記推定精度を算出し、
前記第1確信度は、前記先行車候補に関する情報の信頼度、前記自車両の運転支援レベル、又は、前記先行車候補に関する情報の信頼度と前記自車両の運転支援レベルとの組み合わせに応じて予め定められた値であり、
前記第2確信度は、前記先行車候補に関する情報の信頼度、前記走行環境情報の信頼度、又は、前記先行車候補に関する情報の信頼度と前記走行環境情報の信頼度との組み合わせに応じて予め定められた値であり、
前記推定精度は、前記第1確信度が高いほど高くされ、前記第2確信度が高いほど高くされる、
請求項1に記載の情報提示装置。
【請求項3】
前記情報出力部は、前記推定精度が閾値以上であるときには前記延長航続距離を前記延長情報として出力し、前記推定精度が前記閾値未満であるときには前記延長情報を出力しない、
請求項
1又は請求項2に記載の情報提示装置。
【請求項4】
前記情報出力部は、前記推定精度が閾値以上であるときには前記延長航続距離を前記延長情報として出力し、前記推定精度が前記閾値未満であるときには前記延長航続距離よりも短い距離を前記延長情報として出力する、
請求項
1又は請求項2に記載の情報提示装置。
【請求項5】
前記情報出力部は、前記推定精度が第1閾値以上であるときには前記延長航続距離を前記延長情報として出力し、前記推定精度が前記第1閾値よりも低い第2閾値以上前記第1閾値未満であるときには前記延長航続距離よりも短い距離を前記延長情報として出力し、前記推定精度が前記第2閾値未満であるときには前記延長情報を出力しない、
請求項
1又は請求項2に記載の情報提示装置。
【請求項6】
コンピュータにより実行される情報提示方法であって、
自車両の周囲の周辺車両に関する情報に基づいて、前記自車両の追従対象の候補である先行車候補を選択することと、
前記先行車候補への追従走行によって得られる前記自車両の延長航続距離を推定することと、
前記延長航続距離の推定精度を算出することと、
前記自車両に設けられた出力装置を介して、前記自車両が前記先行車候補に追従した場合の航続距離の延長情報として前記延長航続距離を出力することと
、
を含
み、
前記推定精度を算出することは、
前記情報のうちの前記先行車候補に関する情報を取得した取得手段の違いに基づいて算出した前記先行車候補に関する情報の信頼度、前記自車両の運転支援レベル、及び、前記自車両の走行ルート上の走行環境情報を取得した取得手段の違いに基づいて算出した前記走行環境情報の信頼度の少なくとも一つに基づいて、前記推定精度を算出することと、
前記先行車候補に関する情報の信頼度が高い場合には低い場合と比較して前記推定精度を高くし、前記自車両の運転支援レベルが高い場合には低い場合と比較して前記推定精度を高くし、前記走行環境情報の信頼度が高い場合には低い場合と比較して前記推定精度を高くすることをさらに含み、
前記延長情報として前記延長航続距離を出力することは、
前記推定精度に基づいて前記延長情報の出力態様を変更することをさらに含む、
情報提示方法。
【請求項7】
自車両の周囲の周辺車両に関する情報に基づいて、前記自車両の追従対象の候補である先行車候補を選択することと、
前記先行車候補への追従走行によって得られる前記自車両の延長航続距離を推定することと、
前記延長航続距離の推定精度を算出することと、
前記自車両に設けられた出力装置を介して、前記自車両が前記先行車候補に追従した場合の航続距離の延長情報として前記延長航続距離を出力することと、
前記情報のうちの前記先行車候補に関する情報を取得した取得手段の違いに基づいて算出した前記先行車候補に関する情報の信頼度、前記自車両の運転支援レベル、及び、前記自車両の走行ルート上の走行環境情報を取得した取得手段の違いに基づいて算出した前記走行環境情報の信頼度の少なくとも一つに基づいて、前記推定精度を算出することと、
前記先行車候補に関する情報の信頼度が高い場合には低い場合と比較して前記推定精度を高くし、前記自車両の運転支援レベルが高い場合には低い場合と比較して前記推定精度を高くし、前記走行環境情報の信頼度が高い場合には低い場合と比較して前記推定精度を高くすることと、
前記推定精度に基づいて前記延長情報の出力態様を変更することと、
をコンピュータに実行させる、
情報提示用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報提示装置、情報提示方法及び情報提示用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行に必要な燃料又は電力の量を低減するためには、走行時の空気抵抗を低減することが有効である。従来、走行時の空気抵抗を低減する手法として、車両を先行車に追従させる追従走行を行うことが知られている。追従走行では、先行車による風除け効果により、先行車の後方を走行する車両に作用する空気抵抗が低減される。
【0003】
斯かる追従走行の一例として、複数の車両が隊列を組んで走行する隊列走行が知られている。特許文献1に記載の走行支援装置では、自車両から視認不可能な範囲を含む自車両の周辺領域において隊列走行を行っている車群の構成台数及び位置が自車両のドライバに提示される。この結果、自車両のドライバが、車群の構成台数を考慮して、自車両が合流する車群を決定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車群の構成台数が自車両の乗員に提示されたとしても、追従走行によって得られる効果を自車両の乗員が適切に把握することは困難である。このため、自車両の乗員が追従走行を実施するモチベーションが生じにくい。
【0006】
そこで、上記課題に鑑みて、本発明の目的は、追従走行の効果を提示することで、自車両の乗員に追従走行の実施を促すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の要旨は以下のとおりである。
【0008】
(1)自車両の周囲の周辺車両に関する情報に基づいて、前記自車両の追従対象の候補である先行車候補を選択する先行車候補選択部と、前記先行車候補への追従走行によって得られる前記自車両の延長航続距離を推定する距離推定部と、前記自車両に設けられた出力装置を介して、前記自車両が前記先行車候補に追従した場合の航続距離の延長情報として前記延長航続距離を出力する情報出力部とを備える、情報提示装置。
【0009】
(2)前記延長航続距離の推定精度を算出する推定精度算出部を更に備え、前記情報出力部は前記推定精度に基づいて前記延長情報の出力態様を変更する、上記(1)に記載の情報提示装置。
【0010】
(3)前記推定精度算出部は、前記先行車候補に関する情報の信頼度に基づいて、前記推定精度を算出する、上記(2)に記載の情報提示装置。
【0011】
(4)前記推定精度算出部は前記自車両の運転支援レベルに基づいて前記推定精度を算出する、上記(2)又は(3)に記載の情報提示装置。
【0012】
(5)前記推定精度算出部は前記自車両の走行ルート上の走行環境情報の信頼度に基づいて前記推定精度を算出する、上記(2)から(4)のいずれか1つに記載の情報提示装置。
【0013】
(6)前記推定精度算出部は前記先行車候補への追従走行による空気抵抗の低減度の第1確信度と前記先行車候補への追従走行の継続可能距離の第2確信度とに基づいて前記推定精度を算出する、上記(2)から(5)のいずれか1つに記載の情報提示装置。
【0014】
(7)前記情報出力部は、前記推定精度が閾値以上であるときには前記延長航続距離を前記延長情報として出力し、前記推定精度が前記閾値未満であるときには前記延長情報を出力しない、上記(2)から(6)のいずれか1つに記載の情報提示装置。
【0015】
(8)前記情報出力部は、前記推定精度が閾値以上であるときには前記延長航続距離を前記延長情報として出力し、前記推定精度が前記閾値未満であるときには前記延長航続距離よりも短い距離を前記延長情報として出力する、上記(2)から(6)のいずれか1つに記載の情報提示装置。
【0016】
(9)前記情報出力部は、前記推定精度が第1閾値以上であるときには前記延長航続距離を前記延長情報として出力し、前記推定精度が前記第1閾値よりも低い第2閾値以上前記第1閾値未満であるときには前記延長航続距離よりも短い距離を前記延長情報として出力し、前記推定精度が前記第2閾値未満であるときには前記延長情報を出力しない、上記(2)から(6)のいずれか1つに記載の情報提示装置。
【0017】
(10)コンピュータにより実行される情報提示方法であって、自車両の周囲の周辺車両に関する情報に基づいて、前記自車両の追従対象の候補である先行車候補を選択することと、前記先行車候補への追従走行によって得られる前記自車両の延長航続距離を推定することと、前記自車両に設けられた出力装置を介して、前記自車両が前記先行車候補に追従した場合の航続距離の延長情報として前記延長航続距離を出力することとを含む、情報提示方法。
【0018】
(11)自車両の周囲の周辺車両に関する情報に基づいて、前記自車両の追従対象の候補である先行車候補を選択することと、前記先行車候補への追従走行によって得られる前記自車両の延長航続距離を推定することと、前記自車両に設けられた出力装置を介して、前記自車両が前記先行車候補に追従した場合の航続距離の延長情報として前記延長航続距離を出力することとをコンピュータに実行させる、情報提示用コンピュータプログラム。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、追従走行の効果を提示することで、自車両の乗員に追従走行の実施を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係る情報提示装置を含む車両制御システムの概略的な構成図である。
【
図2】
図2は、第一実施形態におけるECUのプロセッサの機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、複数の車両が自動車専用道路を走行している場面の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第一実施形態における情報提示処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、HMIに表示される画像情報の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第二実施形態におけるECUのプロセッサの機能ブロック図である。
【
図7A】
図7Aは、第二実施形態における情報提示処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【
図7B】
図7Bは、第二実施形態における情報提示処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、先行車候補への追従走行による空気抵抗の低減度の第1確信度を決定するためのテーブルの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、先行車候補への追従走行の継続可能距離の第2確信度を決定するためのテーブルの一例を示す図である。
【
図10A】
図10Aは、第三実施形態における情報提示処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【
図10B】
図10Bは、第三実施形態における情報提示処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、本発明の第三実施形態に係る情報提示装置を含むクライアントサーバシステムの概略的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0022】
<第一実施形態>
以下、
図1~
図5を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
【0023】
図1は、本発明の第一実施形態に係る情報提示装置を含む車両制御システム1の概略的な構成図である。車両制御システム1は、車両に搭載され、車両の各種制御を実行する。
【0024】
図1に示されるように、車両制御システム1は、周辺情報検出装置2、GNSS受信機3、地図データベース4、ナビゲーション装置5、車両状態検出装置6、アクチュエータ7、ヒューマンマシンインタフェース(HMI:Human Machine Interface)8、通信装置9及び電子制御ユニット((Electronic Control Unit(ECU))10を備える。周辺情報検出装置2、GNSS受信機3、地図データベース4、ナビゲーション装置5、車両状態検出装置6、アクチュエータ7、HMI8及び通信装置9は、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内ネットワーク等を介してECU10に電気的に接続される。
【0025】
周辺情報検出装置2は、車両(自車両)の周囲のデータ(画像、点群データ等)を取得し、車両の周辺情報(例えば、周辺車両、車線等)を検出する。例えば、周辺情報検出装置2は、ミリ波レーダ、カメラ(例えばステレオカメラ)、ライダ(LIDAR:Laser Imaging Detection And Ranging))、若しくは超音波センサ(ソナー)、又はこれらの任意の組み合わせを含む。周辺情報検出装置2の出力、すなわち周辺情報検出装置2によって検出された車両の周辺情報はECU10に送信される。
【0026】
GNSS受信機3は、複数(例えば3つ以上)の測位衛星から得られる測位情報に基づいて、車両の現在位置(例えば車両の緯度及び経度)を検出する。具体的には、GNSS受信機3は、複数の測位衛星を捕捉し、測位衛星から発信された電波を受信する。そして、GNSS受信機3は、電波の発信時刻と受信時刻との差に基づいて測位衛星までの距離を算出し、測位衛星までの距離及び測位衛星の位置(軌道情報)に基づいて車両の現在位置を検出する。GNSS受信機3の出力、すなわちGNSS受信機3によって検出された車両の現在位置はECU10に送信される。
【0027】
なお、GNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)は、米国のGPS、ロシアのGLONASS、欧州のGalileo、日本のQZSS、中国のBeiDou、インドのIRNSS等の衛星測位システムの総称である。すなわち、GPS受信機はGNSS受信機3の一例である。
【0028】
地図データベース4は地図情報を記憶している。ECU10は地図データベース4から地図情報を取得する。なお、地図データベースが車両の外部(例えばサーバ等)に設けられ、ECU10は車両の外部から地図情報を取得してもよい。
【0029】
ナビゲーション装置5は、GNSS受信機3によって検出された車両の現在位置、地図データベース4の地図情報、車両の乗員(例えばドライバ)による入力等に基づいて、目的地までの車両の走行ルートを設定する。ナビゲーション装置5によって設定された走行ルートはECU10に送信される。
【0030】
車両状態検出装置6は車両の状態量を検出する。車両状態検出装置6は、例えば、車両の速度を検出する車速センサ、車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサ等を含む。車両状態検出装置6の出力、すなわち車両状態検出装置6によって検出された車両の状態量はECU10に送信される。
【0031】
アクチュエータ7は車両を動作させる。例えば、アクチュエータ7は、車両の加速のための駆動装置(例えば内燃機関及び電動機の少なくとも一方)と、車両の制動(減速)のためのブレーキアクチュエータと、車両の操舵のためのステアリングモータとを含む。ECU10はアクチュエータ7を制御して車両の挙動を制御する。
【0032】
本実施形態では、車両制御システム1は、先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driving Assistant System)として機能し、アクチュエータ7を制御して所定の運転支援機能を作動させる。所定の運転支援機能は、例えば、先行車の有無に応じて車両の速度を自動的に制御するアダプティブクルーズコントロール(ACC:Adaptive Cruise Control)、車両が車線内に維持されるように車両の操舵を自動的に制御するレーンキーピングアシスト(LKA:Lane Keeping Assist)又はレーントレーシングアシスト(LTA:Lane Tracing Assist)等を含む。
【0033】
HMI8は車両と車両の乗員(例えばドライバ)との間で情報の授受を行う。HMI8は、車両の乗員に情報を出力する出力部(例えば、ディスプレイ、スピーカ、振動ユニット等)と、車両の乗員によって情報が入力される入力部(例えば、タッチパネル、操作ボタン、操作スイッチ、マイクロフォン等)とを有する。ECU10の出力はHMI8を介して車両の乗員に通知され、車両の乗員からの入力はHMI8を介してECU10に送信される。HMI8は、入力装置、出力装置又は入出力装置の一例である。なお、車両の乗員の携帯端末(スマートフォン、タブレット端末等)が、有線又は無線によってECU10と通信可能に接続され、HMI8として機能してもよい。また、HMI8はナビゲーション装置5と一体であってもよい。
【0034】
通信装置9は、車両の外部と通信可能であり、車両と車両の外部との通信を可能とする。例えば、通信装置9は、所定の周波数帯を用いて車両と周辺車両との車車間通信を可能とする車車間通信機を含む。
【0035】
ECU10は車両の各種制御を実行する。
図1に示されるように、ECU10は、通信インターフェース11、メモリ12及びプロセッサ13を備える。通信インターフェース11及びメモリ12は信号線を介してプロセッサ13に接続されている。なお、本実施形態では、一つのECU10が設けられているが、機能毎に複数のECUが設けられていてもよい。
【0036】
通信インターフェース11は、ECU10を車内ネットワークに接続するためのインターフェース回路を有する。ECU10は通信インターフェース11を介して他の車載機器に接続される。通信インターフェース11はECU10の通信部の一例である。
【0037】
メモリ12は、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。メモリ12は、プロセッサ13によって各種処理が実行されるときに使用されるコンピュータプログラム、データ等を記憶する。
【0038】
プロセッサ13は、一つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。なお、プロセッサ13は、論理演算ユニット又は数値演算ユニットのような演算回路を更に有していてもよい。
【0039】
ところで、車両の走行に必要な燃料又は電力の量を低減するためには、走行時の空気抵抗を低減することが有効である。従来、走行時の空気抵抗を低減するための手法として、車両を先行車に追従させる追従走行を行うことが知られている。追従走行では、先行車による風除け効果により、先行車の後方を走行する車両に作用する空気抵抗が低減される。
【0040】
しかしながら、車両の乗員(例えばドライバ)が、追従走行によって得られる効果を適切に把握しているとは限らない。このため、追従走行から得られる利点があったとしても、自車両の乗員が追従走行を実施するモチベーションが生じにくい。
【0041】
そこで、本実施形態では、情報提示装置が、自車両に設けられた出力装置を介して、追従走行によって得られる効果を自車両の乗員に提示する。本実施形態では、ECU10が情報提示装置として機能し、HMI8が出力装置として機能する。
【0042】
図2は、第一実施形態におけるECU10のプロセッサ13の機能ブロック図である。本実施形態では、プロセッサ13は、先行車候補選択部15、距離推定部16及び情報出力部17を有する。先行車候補選択部15、距離推定部16及び情報出力部17は、ECU10のメモリ12に記憶されたコンピュータプログラムをECU10のプロセッサ13が実行することによって実現される機能モジュールである。なお、これら機能モジュールは、それぞれ、プロセッサ13に設けられた専用の演算回路によって実現されてもよい。
【0043】
先行車候補選択部15は、自車両の周囲の周辺車両に関する情報に基づいて、自車両の追従対象の候補である先行車候補を選択する。本実施形態では、先行車候補選択部15は、自車両と周辺車両との車車間通信を介して、自車両の周囲の周辺車両に関する情報を取得する。
【0044】
図3は、複数の車両が自動車専用道路を走行している場面の一例を示す図である。
図3の例では、自車両20の周囲において5台の周辺車両30が走行している。また、自車両20から視認不可能な範囲にも、追従対象の候補となる周辺車両が存在している可能性がある。斯かる状況において、先行車候補選択部15は、車車間通信を介して、自車両20の周囲の複数の周辺車両30の各々に関する情報を取得し、複数の周辺車両30の中から先行車候補を選択する。例えば、先行車候補選択部15は、複数の周辺車両30の各々について、周辺車両30に関する情報に基づいて追従対象としての適性度を算出し、適性度が最も高い周辺車両30を先行車候補として選択する。
【0045】
自車両の乗員にはHMI8を介して様々な情報が提示される。例えば、自車両の乗員に有益な情報の一つとして、自車両の航続距離、すなわち自車両が給油及びバッテリの充電を必要とすることなく継続走行可能な距離が挙げられる。通常、追従走行が行われると、空気抵抗の低減効果により自車両の航続距離が延長される。このため、距離推定部16は、先行車候補選択部15によって選択された先行車候補への追従走行によって得られる自車両の延長航続距離を推定する。なお、自車両の延長航続距離は、航続距離の増加量であり、自車両が先行車候補に追従した場合の航続距離から、自車両が単独走行した場合の航続距離を減算した値に相当する(延長航続距離=追従走行による航続距離-単独走行による航続距離)。
【0046】
情報出力部17は、HMI8を介して、自車両が先行車候補に追従した場合の航続距離の延長情報を出力する。航続距離の延長情報は、距離推定部16によって推定された延長航続距離に基づいて作成され、本実施形態では、情報出力部17は、航続距離の延長情報として、距離推定部16によって推定された延長航続距離を出力する。したがって、本実施形態に係る情報提示装置によれば、追従走行によって得られる効果として自車両の延長航続距離が自車両の乗員に提示される。このことによって、追従走行によって得られる具体的な効果を自車両の乗員に明示することができ、ひいては自車両の乗員に追従走行の実施を促すことができる。
【0047】
以下、
図4を参照して、上述した処理の制御フローについて詳細に説明する。
図4は、第一実施形態における情報提示処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンはECU10のプロセッサ13によって所定の実行間隔で繰り返し実行される。
【0048】
最初に、ステップS101において、先行車候補選択部15は、追従走行の開始条件が成立しているか否かを判定する。追従走行の開始条件は、予め定められ、例えば自車両の乗員がHMI8を介してACCの作動を要求したときに成立する。なお、追従走行の開始条件は、自車両が所定値以上の速度で自動車専用道路を走行していること等であってもよい。ステップS101において追従走行の開始条件が成立していないと判定された場合、本制御ルーチンは終了する。
【0049】
一方、ステップS101において追従走行の開始条件が成立していると判定された場合、本制御ルーチンはステップS102に進む。ステップS102では、先行車候補選択部15は、車車間通信の通信範囲内に位置する周辺車両と通信し、車車間通信を介して、周辺車両に関する情報を取得する。本実施形態では、周辺車両に関する情報として、周辺車両の位置、周辺車両の速度、周辺車両におけるACCの作動状態(オン又はオフ)、周辺車両の車幅及び車長、周辺車両の用途種別等が周辺車両から自車両に送信される。
【0050】
次いで、ステップS103において、先行車候補選択部15は、自車両により情報が取得された周辺車両の数Nを特定し、N台の周辺車両のそれぞれに車両番号(1~N)を割り当てる。
【0051】
次いで、ステップS104において、先行車候補選択部15は車両番号iに1を加算することによって車両番号iを更新する。なお、自車両のイグニッションスイッチがオンにされたときの車両番号iの初期値はゼロである。
【0052】
次いで、ステップS105において、先行車候補選択部15は、i番目の周辺車両について、周辺車両に関する情報に基づいて追従対象としての適性度を算出する。例えば、先行車候補選択部15は、周辺車両に関する情報に基づいて少なくとも一つの所定の評価パラメータを算出し、評価パラメータに基づいて適性度を算出する。
【0053】
上述したように、先行車への追従走行を行うことによって、自車両に作用する空気抵抗を低減することができる。このとき、空気抵抗の低減度が大きいほど、追従走行による燃費又は電費の改善効果が高くなる。また、自車両と周辺車両との相対速度が小さい場合には、相対速度が大きい場合と比べて、周辺車両への追従が容易となる。さらに、周辺車両の車速安定度が高いほど、追従走行時の自車両の加減速による燃料又は電力の浪費を低減することができる。このため、本実施形態では、評価パラメータとして、周辺車両への追従走行による空気抵抗の低減度と、自車両と周辺車両との相対速度と、周辺車両の車速安定度とが用いられる。
【0054】
先行車候補選択部15は、周辺車両に関する情報に基づいて、周辺車両への追従走行による空気抵抗の低減度を算出する。例えば、先行車候補選択部15は、周辺車両の車幅及び車長に基づいて周辺車両の前方投影面積の推定値を算出し、この推定値と周辺車両の速度とに基づいて空気抵抗の低減度を算出する。この場合、前方投影面積の推定値が大きいほど、空気抵抗の低減度が大きくされる。
【0055】
また、先行車候補選択部15は、周辺車両に関する情報に基づいて、自車両と周辺車両との相対速度を算出する。具体的には、先行車候補選択部15は、車両状態検出装置6の車速センサによって検出された自車両の速度と周辺車両の速度との差として自車両と周辺車両との相対速度を算出する(相対速度=|自車両の速度-周辺車両の速度|)。なお、自車両の速度として、自車両の乗員(例えばドライバ)によって設定されたACCの設定車速が用いられてもよい。
【0056】
また、先行車候補選択部15は、周辺車両に関する情報に基づいて、周辺車両の車速安定度を算出する。例えば、先行車候補選択部15は周辺車両におけるACCの作動状態に基づいて周辺車両の車速安定度を算出する。この場合、ACCの作動状態がオンである場合には、ACCの作動状態がオフである場合に比べて、周辺車両の車速安定度が高くされる。なお、先行車候補選択部15は周辺車両の車速の履歴(例えば所定時間における車速の変化量)等に基づいて周辺車両の車速安定度を算出してもよい。
【0057】
先行車候補選択部15は、マップ又は計算式を用いて、これら評価パラメータに基づいて、i番目の周辺車両についての適性度を算出する。このとき、空気抵抗の低減度が大きいほど適性度が高くされ、自車両と周辺車両との相対速度が小さいほど適性度が高くされ、周辺車両の車速安定度が高いほど適性度が高くされる。
【0058】
なお、先行車候補選択部15は、先行車の選定に関する自車両の乗員の嗜好情報に基づいて、適性度を補正してもよい。この場合、嗜好情報は、自車両の乗員によって予め登録され、ECU10のメモリ12等に記憶される。例えば、自車両の乗員は、嗜好情報として、バス又はトラックのような大型車両への追従を許容するか否か、追従走行のための自車両の車線変更を許容するか否か等をHMI8に入力する。この場合、大型車両への追従が許容されていない場合には、大型車両である周辺車両についての適性度が低くなるように適性度が補正される(例えば適性度がゼロにされる)。また、追従走行のための自車両の車線変更が許容されていない場合には、自車両とは異なる車線を走行する周辺車両についての適性度が低くなるように適性度が補正される(例えば適性度がゼロにされる)。
【0059】
次いで、ステップS106において、先行車候補選択部15は、車両番号iがN以上であるか否かを判定する。車両番号iがN未満であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS104に戻り、別の周辺車両についての適性度を算出するためにステップS104及びS105が再び実行される。
【0060】
一方、ステップS106において車両番号iがN以上であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS107に進む。ステップS107では、先行車候補選択部15は、N台の周辺車両のうち、適性度が最も高い周辺車両を先行車候補として選択する。
【0061】
なお、先行車候補選択部15は他の判断基準に基づいて先行車候補を選択してもよい。例えば、先行車候補選択部15は、適性度が所定値以上である周辺車両のうち、自車両に最も近い周辺車両を先行車候補として選択してもよい。また、先行車候補選択部15は、自車両までの距離が所定値以下である周辺車両又は自車両の前方に位置する周辺車両のうち、適性度が最も高い周辺車両を先行車候補として選択してもよい。また、先行車候補選択部15は、適性度を算出することなく、自車両の走行車線上において自車両の前方に位置する周辺車両のうち、自車両に最も近い周辺車両を先行車候補として選択してもよい。
【0062】
次いで、ステップS108において、先行車候補選択部15は車両番号iをゼロにリセットする。
【0063】
次いで、ステップS109において、距離推定部16は自車両の延長航続距離を推定する。例えば、距離推定部16は、先行車候補への追従走行による空気抵抗の低減度と、先行車候補への追従走行の継続可能距離とに基づいて延長航続距離を推定する。具体例として、自車両が電力を動力源とする車両(例えば、電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)等)である場合、距離推定部16は、先行車候補への追従走行による空気抵抗の低減度と、先行車候補への追従走行の継続可能距離とに基づいて、先行車候補への追従走行によって節約される電力消費量を算出し、この電力消費量に推定電費を乗算することによって自車両の延長航続距離を算出する。一方、自車両が燃料を動力源とする車両(例えば、ガソリン車、ディーゼル車等)である場合、距離推定部16は、先行車候補への追従走行による空気抵抗の低減度と、先行車候補への追従走行の継続可能距離とに基づいて、先行車候補への追従走行によって節約される燃料消費量を算出し、この燃料消費量に推定燃費を乗算することによって自車両の延長航続距離を算出する。
【0064】
先行車候補への追従走行による空気抵抗の低減度は、上述したように、例えば、先行車候補の前方投影面積の推定値及び先行車候補の速度に基づいて算出される。一方、先行車候補への追従走行の継続可能距離は例えば自車両の走行計画に基づいて算出される。具体例として、自車両が自動車専用道路を走行している場合、追従走行の継続可能距離は、自動車専用道路における自車両の継続走行距離、例えば、自車両の現在位置から自車両が利用予定の自動車専用道路の出口までの距離に設定される。自車両が利用予定の自動車専用道路の出口は、自車両の走行ルート、自車両の走行履歴等に基づいて特定される。
【0065】
なお、車車間通信を介して取得される先行車候補の用途種別情報に基づいて、追従走行の継続可能距離が補正されてもよい。この場合、用途種別情報に基づいて定められる所定係数を自車両の継続可能距離に乗算することによって追従走行の継続可能距離が算出される。例えば、先行車候補が、長距離走行を行う可能性が高い旅客運送事業用自動車又は貨物運送事業用自動車である場合には所定係数が1に設定され、先行車候補が自家用自動車である場合には、所定係数が1未満の値(例えば0.5)に設定される。
【0066】
また、先行車候補への追従走行の継続可能距離は自車両の走行ルート上の走行環境情報に基づいて補正されてもよい。この場合、自車両による追従走行を妨げるような走行環境情報、例えば、渋滞、工事、事故、悪天候(雨、雪、強風、濃霧等)等の情報が取得された場合には、その発生地点に応じて追従走行の継続可能距離が短くされる。
【0067】
また、延長航続距離を算出するための推定電費又は推定燃費として、例えば、現在位置までの所定距離における平均電費又は平均燃費が用いられる。なお、自車両の走行ルート上の走行環境情報(例えば、道路勾配、平均車速、交通流(例えば渋滞の有無)等)に基づいて推定電費又は推定燃費が補正されてもよい。
【0068】
次いで、ステップS110において、情報出力部17は、HMI8を介して、自車両が先行車候補に追従した場合の航続距離の延長情報として延長航続距離を出力する。例えば、情報出力部17は、自車両の乗員に視覚的な情報を提供すべく、航続距離の延長情報を含む画像情報をHMI8に表示する。
【0069】
図5は、HMI8に表示される画像情報の一例を示す図である。
図5の例では、先行車候補が車両アイコンとして表示され、画像情報は、航続距離の延長情報と、先行車候補の位置情報と、先行車候補の追従対象としての適性度を示す情報とを含む。
【0070】
図5の例では、航続距離の延長情報として、距離推定部16によって推定された延長航続距離(この例では+40km)が、数値、地図表示及びバー表示として自車両の乗員に提示される。地図表示では、単独走行時の航続距離によって自車両が到達可能な範囲を示す小円と、追従走行時の航続距離によって自車両が到達可能な範囲を示す大円とが自車両の車両アイコンを中心として描かれ、小円と大円との間の距離が延長航続距離に相当する。なお、自車両が到達可能な範囲が勾配等の地形データに基づいてより詳細に推定され、推定された範囲が多角形等によって示されてもよい。バー表示では、単独走行時の航続距離(この例では200km)に対する延長分として延長航続距離が示される。なお、単独走行時の航続距離は、自車両の残電力量に推定電費を乗算することによって又は自車両の残燃料量に推定燃費を乗算することによって算出される。
【0071】
また、
図5の例では、先行車候補の位置情報として、自車両に対する先行車候補の方向(この例では後方)及び自車両と先行車候補との車間距離(この例では280m)が示される。なお、自車両及び先行車候補の車両アイコンが表示され、先行車候補に関する位置情報として、自車両に対する先行車候補の相対的な位置関係が示されてもよい。
【0072】
また、
図5の例では、先行車候補の追従対象としての適性度を示す情報として、適性度の高さを示すランクが示される。例えば、ランクとしてA+~C-が用いられる。この場合、ランクがA+である場合に適性度が最も高くなり、ランクがC-である場合に適性度が最も低くなる。
【0073】
なお、情報出力部17は、自車両の乗員に聴覚的な情報を提供すべく、画像情報に加えて又は画像情報の代わりに、航続距離の延長情報を含む音声情報をHMI8から出力してもよい。また、先行車候補の追従対象としての適性度を示す情報が、HMI8を介して出力される情報から省略されてもよい。ステップS110の後、本制御ルーチンは終了する。
【0074】
なお、ステップS102において、先行車候補選択部15は、周辺情報検出装置2の出力に基づいて、自車両の周囲の周辺車両に関する情報を取得してもよい。例えば、先行車候補選択部15は、周辺情報検出装置2の出力に基づいて、周辺車両の速度、周辺車両の車幅及び車高等を推定する。この場合、ステップS105において、先行車候補選択部15は、空気抵抗の低減度を算出するために、周辺車両の車幅に周辺車両の車高を乗算することによって周辺車両の前方投影面積の推定値を推定する。
【0075】
また、周辺車両において、追従走行に関する車両のパラメータが追従走行用のアプリケーションに予め登録され、ステップS102において、先行車候補選択部15は、追従走行用のアプリケーションを介して、自車両の周囲の周辺車両に関する情報を取得してもよい。この場合、例えば、追従走行用のアプリケーションがインストールされた携帯端末が各車両のECUに接続され、キャリア網による広域通信を介して、追従走行用のアプリケーションに登録された情報が車両間で送受信される。
【0076】
例えば、追従走行用のアプリケーションに登録されるパラメータとして、車両の速度、車幅、車高、前方投影面積、空気抵抗係数(Cd値)、目的地、残燃料量、バッテリの充電率(SOC:State Of Charge)等)等が挙げられる。この場合、ステップS105において、先行車候補選択部15は、周辺車両の車幅に周辺車両の車高を乗算することによって算出される前方投影面積、周辺車両から送信された前方投影面積、又は空気抵抗係数(Cd値)に基づいて空気抵抗の低減度を算出する。また、ステップS109において、先行車候補への追従走行の継続可能距離が、先行車候補の目的地と、残燃料量又はバッテリのSOCとに基づいて算出される。例えば、自動車専用道路上の自車両及び先行車候補の重複走行区間の距離が先行車候補への追従走行の継続可能距離として算出され、先行車候補の残燃料量又はバッテリのSOCに基づいて継続可能距離が補正される。この場合、先行車候補の残燃料量又はバッテリのSOCが少ないほど、継続可能距離が短くされる。
【0077】
<第二実施形態>
第二実施形態に係る車両制御システムの構成及び制御は、以下に説明する点を除いて、基本的に第一実施形態に係る車両制御システムの構成及び制御と同様である。このため、以下、本発明の第二実施形態について、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0078】
図6は、第二実施形態におけるECU10のプロセッサ13の機能ブロック図である。第二実施形態では、プロセッサ13は、先行車候補選択部15、距離推定部16及び情報出力部17に加えて、推定精度算出部18を有する。先行車候補選択部15、距離推定部16、情報出力部17及び推定精度算出部18は、ECU10のメモリ12に記憶されたコンピュータプログラムをECU10のプロセッサ13が実行することによって実現される機能モジュールである。なお、これら機能モジュールは、それぞれ、プロセッサ13に設けられた専用の演算回路によって実現されてもよい。
【0079】
通常、HMI8を介して自車両の航続距離が通知される場合には、自車両の乗員(例えばドライバ)は残電力量又は残燃料量だけでなく航続距離を考慮してバッテリの充電タイミング又は燃料の補給タイミングを決定する。このため、航続距離の延長情報として自車両の乗員に提示される延長航続距離の値が実際の値から乖離すると、バッテリの充電タイミング又は燃料の補給タイミングを変更する必要が生じるおそれがある。
【0080】
このため、第二実施形態では、推定精度算出部18は、距離推定部16によって推定された延長航続距離の推定精度を算出し、情報出力部17は延長航続距離の推定精度に基づいて航続距離の延長情報の出力態様を変更する。このことによって、延長航続距離の誤差による自車両の運転計画への影響を低減することができる。
【0081】
例えば、情報出力部17は、延長航続距離の推定精度が閾値以上であるときには延長航続距離を航続距離の延長情報として出力し、延長航続距離の推定精度が閾値未満であるときには航続距離の延長情報を出力しない。このことによって、信頼度が低い延長航続距離が自車両の乗員に提示されることを抑制することができる。
【0082】
図7A及び
図7Bは、第二実施形態における情報提示処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンはECU10のプロセッサ13によって所定の実行間隔で繰り返し実行される。
【0083】
ステップS201~S209は
図4のステップS101~S109と同様に実行される。ステップS209の後、ステップS210において、推定精度算出部18は、ステップS209において距離推定部16によって推定された延長航続距離の推定精度EAを算出する。
【0084】
例えば、推定精度算出部18は先行車候補に関する情報(以下、「先行車情報」とも称する)の信頼度に基づいて延長航続距離の推定精度EAを算出する。この場合、先行車情報の信頼度が高いほど、延長航続距離の推定精度EAが高くされる。
【0085】
例えば、推定精度算出部18は、延長航続距離の算出のために用いられる先行車情報の取得手段に基づいて、先行車情報の信頼度を決定する。先行車情報の取得手段の具体例として、追従走行用のアプリケーション(キャリア網を介した広域通信)、車車間通信及び周辺情報検出装置2が挙げられる。先行車候補において追従走行用のアプリケーションが起動されている場合には追従走行用のアプリケーションを介して先行車情報が取得され、先行車候補が車車間通信機を有し且つ先行車候補において追従走行用のアプリケーションが起動されていない場合には車車間通信を介して先行車情報が取得される。一方、先行車候補が自車両との通信手段を有していない場合には、周辺情報検出装置2を介して先行車情報が取得される。
【0086】
追従走行用のアプリケーションには、延長航続距離を算出するために必要なパラメータが予め登録されており、車車間通信による情報通信では、予め定められた車車間通信用のデータセットに含まれるパラメータのみが先行車候補から自車両に送信される。また、先行車情報の取得手段として周辺情報検出装置2が用いられる場合には、延長航続距離を算出するために必要なパラメータが周辺情報検出装置2の出力に基づいて推定される。このため、これら取得手段のうち、追従走行用のアプリケーションに対応する先行車情報の信頼度が最も高くなり、周辺情報検出装置2に対応する先行車情報の信頼度が最も低くなる。
【0087】
本実施形態では、先行車情報の信頼度が三段階(例えば、レベル0、レベル1及びレベル2)に分類される。この場合、先行車情報の信頼度は、周辺情報検出装置2が用いられる場合にレベル0に設定され、車車間通信が用いられる場合にレベル1に設定され、追従走行用のアプリケーションが用いられる場合にレベル2に設定される。
【0088】
なお、先行車情報の取得手段が二種類である場合、例えば先行車情報の取得手段として追従走行用のアプリケーションが用いられないような場合には、先行車情報の信頼度が二段階に設定されてもよい。また、先行車情報の信頼度はより細かく分類されてもよい。例えば、追従走行用のアプリケーションに登録されたパラメータの数が周辺車両間で異なる場合には、追従走行用のアプリケーションを介して先行車情報が取得される場合の先行車情報の信頼度が、追従走行用のアプリケーションに登録されたパラメータの数が多いほど高くされてもよい。また、車車間通信によって送信されるパラメータの数が周辺車両間で異なる場合には、車車間通信を介して先行車情報が取得される場合の先行車情報の信頼度が、車車間通信によって送信されるパラメータの数が多いほど高くされてもよい。また、周辺車両の位置等に応じて周辺情報検出装置2の出力に基づいて推定可能なパラメータの数が周辺車両間で異なる場合には、周辺情報検出装置2を介して先行車情報が取得される場合の先行車情報の信頼度が、推定可能なパラメータの数が多いほど高くされてもよい。
【0089】
また、追従走行によって得られる延長航続距離は、先行車に対する自車両の位置によっても変動する。例えば、自車両と先行車との車間距離が長くなるほど又は先行車に対する自車両の横位置がずれるほど、空気抵抗の低減効果が小さくなり、延長航続距離が短くなる。このため、先行車に対する自車両の位置が追従走行中に変動する可能性が高い場合には、延長航続距離の推定精度が低下する。また、基本的に、運転支援機能によって自車両の挙動が自動的に制御される場合には、手動運転によって自車両の挙動が手動で制御される場合と比べて、追従走行の安定性が高くなる。
【0090】
このため、推定精度算出部18は、自車両の運転支援レベルに基づいて延長航続距離の推定精度EAを算出してもよい。この場合、自車両の運転支援レベルが高いほど、延長航続距離の推定精度EAが高くされる。なお、自車両の運転支援レベルとは、自車両における運転支援機能の作動状況を示す指標であり、SAE(Society of Automotive Engineers)によって定義される自動運転レベルとは異なる。
【0091】
例えば、運転支援レベルは運転支援機能の作動状況に応じて三段階(例えば、レベル0、レベル1及びレベル2)に分類される。この場合、自車両において運転支援機能が作動されていない場合には、運転支援レベルがレベル0に設定される。一方、自車両においてACCが作動されている場合、すなわち自車両において加速及び減速(制動)が自動的に制御されている場合には運転支援レベルがレベル1に設定され、自車両においてACCに加えてLKA又はLTAが作動されている場合、すなわち自車両において加速、減速(制動)及び操舵が自動的に制御されている場合には運転支援レベルが2に設定される。なお、ACCとLKA又はLTAとのいずれか一方が作動されている場合に、運転支援レベルがレベル1に設定されてもよい。
【0092】
また、渋滞、工事、事故、悪天候(雨、雪、強風、濃霧等)等の走行環境の変化によって追従走行が中断されることも考えられる。追従走行の中断によって追従走行の距離が想定距離よりも短くなった場合には、推定された延長航続距離が実際の値よりも短くなる。このため、推定精度算出部18は自車両の走行ルート上の走行環境情報の信頼度に基づいて延長航続距離の推定精度EAを算出してもよい。この場合、走行環境情報の信頼度が高いほど、延長航続距離の推定精度EAが高くされる。
【0093】
例えば、推定精度算出部18は、走行環境情報の取得手段に基づいて、走行環境情報の信頼度を決定する。走行環境情報の取得手段の具体例として、車車間通信及びナビゲーション装置5が挙げられる。例えば、自車両と車車間通信可能な周辺車両が自車両の走行ルート上に位置している場合には、車車間通信を介して周辺車両の速度が取得され、周辺車両の速度に基づいて渋滞等の走行環境情報が推定される。また、自車両では、VICS(登録商標)(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム)情報のような道路交通情報が、FM多重放送、電波ビーコン、光ビーコン等を介して自車両のナビゲーション装置5に送信される。車車間通信では、ほぼリアルタイムの情報が自車両に送信されるため、ナビゲーション装置5と比べて、走行環境情報の信頼度が高くなる。
【0094】
本実施形態では、走行環境情報の信頼度が三段階(例えば、レベル0、レベル1及びレベル2)に分類される。この場合、走行環境情報の信頼度は、車車間通信を介して走行環境情報が取得された場合にはレベル2に設定され、ナビゲーション装置5を介して走行環境情報が取得された場合にはレベル1に設定され、通信環境等により走行環境情報が取得不可能な場合にはレベル0に設定される。なお、広域通信機(例えばデータ通信モジュール(DCM:Data Communication Module))を用いて自車両の外部のサーバと自車両との広域通信を介して走行環境情報が取得される場合、すなわち走行環境情報の取得手段が広域通信である場合に、走行環境情報の信頼度がレベル2に設定されてもよい。
【0095】
また、走行環境情報の信頼度はより細かく分類されてもよい。例えば、車車間通信を介して走行環境情報が取得される場合、走行ルート上に位置する車車間通信可能な周辺車両の数が多いほど、走行環境情報の信頼度が高くされてもよい。また、ナビゲーション装置5を介して走行環境情報が取得される場合、走行環境情報が取得された時期が現在に近いほど、走行環境情報の信頼度が高くされてもよい。
【0096】
また、推定精度算出部18は、マップ又は計算式を用いて、先行車情報の信頼度、自車両の運転支援レベル及び走行環境情報の信頼度の任意の組合せに基づいて、延長航続距離の推定精度EAを算出してもよい。すなわち、推定精度算出部18は、先行車情報の信頼度、自車両の運転支援レベル及び走行環境情報の信頼度の少なくとも一つに基づいて、延長航続距離の推定精度EAを算出する。
【0097】
また、上述したように、距離推定部16は、先行車候補への追従走行による空気抵抗の低減度と、先行車候補への追従走行の継続可能距離とに基づいて延長航続距離を推定する。このため、推定精度算出部18は、先行車候補への追従走行による空気抵抗の低減度の第1確信度と、先行車候補への追従走行の継続可能距離の第2確信度とに基づいて延長航続距離の推定精度EAを算出してもよい。この場合、第1確信度が高いほど推定精度EAが高くされ、第2確信度が高いほど推定精度EAが高くされる。
【0098】
第1確信度及び第2確信度は、それぞれ、例えば、
図8及び
図9に示されるようなテーブル(表)を用いて決定される。
図8は、先行車候補への追従走行による空気抵抗の低減度の第1確信度を決定するためのテーブルの一例を示す図である。
図8の例では、横軸に先行車情報の信頼度の値が記載され、縦軸に自車両の運転支援レベルの値が記載されている。すなわち、推定精度算出部18は先行車情報の信頼度及び自車両の運転支援レベルに基づいて第1確信度を決定する。
【0099】
先行車情報の信頼度は、上述したように、例えば先行車情報の取得手段に基づいて決定される。追従走行用のアプリケーションが用いられる場合には、空気抵抗の低減度を算出するための先行車情報として、例えば、先行車候補の速度と、先行車候補の車幅及び車高、前方投影面積、又は空気抵抗係数(Cd値)とが取得される。車車間通信が用いられる場合には、空気抵抗の低減度を算出するための先行車情報として、例えば、先行車候補の速度、車幅及び車長が取得される。周辺情報検出装置2が用いられる場合には、空気抵抗の低減度を算出するための先行車情報として、例えば、周辺情報検出装置2の出力に基づいて推定された先行車候補の速度、車幅及び車高が取得される。また、自車両の運転支援レベルは、上述したように、例えば、自車両における運転支援機能の作動状況に応じて決定される。
【0100】
図8の例では、第1確信度がランクとして定められ、ランクとしてA~Eが用いられている。この場合、ランクがAである場合に第1確信度が最も高くなり、ランクがEである場合に第1確信度が最も低くなる。
図8に示されるように、第1確信度は、先行車情報の信頼度が高いほど高くされ、自車両の運転支援レベルが高いほど高くされる。なお、推定精度算出部18は先行車情報の信頼度及び自車両の運転支援レベルのいずれか一方に基づいて第1確信度を決定してもよい。
【0101】
図9は、先行車候補への追従走行の継続可能距離の第2確信度を決定するためのテーブルの一例を示す図である。
図9の例では、横軸に先行車情報の信頼度の値が記載され、縦軸に走行環境情報の信頼度の値が記載されている。すなわち、推定精度算出部18は先行車情報の信頼度及び走行環境情報の信頼度に基づいて第2確信度を決定する。
【0102】
先行車情報の信頼度は、上述したように、例えば先行車情報の取得手段に基づいて決定される。追従走行用のアプリケーションが用いられる場合には、追従走行の継続可能距離を算出するための先行車情報として、例えば、先行車候補のSOC又は残燃料量と、先行車候補の目的地とが取得される。車車間通信が用いられる場合には、追従走行の継続可能距離を算出するための先行車情報として、例えば、先行車候補の用途種別情報が取得される。周辺情報検出装置2が用いられる場合には、例えば、追従走行の継続可能距離が、自動車専用道路における自車両の継続可能距離に設定される。また、走行環境情報の信頼度は、上述したように、例えば、走行環境情報の取得手段に基づいて決定される。
【0103】
図9の例では、第2確信度がランクとして定められ、ランクとしてA~Eが用いられている。この場合、ランクがAである場合に第2確信度が最も高くなり、ランクがEである場合に第2確信度が最も低くなる。
図9に示されるように、第2確信度は、先行車情報の信頼度が高いほど高くされ、走行環境情報の信頼度が高いほど高くされる。なお、推定精度算出部18は先行車情報の信頼度及び走行環境情報の信頼度のいずれか一方に基づいて第2確信度を決定してもよい。
【0104】
次いで、ステップS211において、情報出力部17は、延長航続距離の推定精度EAが所定の閾値TH以上であるか否かを判定する。閾値THは、予め定められ、例えば、先行車情報の信頼度、自車両の運転支援レベル及び走行環境情報の信頼度のいずれか一つに基づいて推定精度EAが算出される場合には、レベル1又はレベル2に設定される。また、第1確信度及び第2確信度に基づいて延長航続距離の推定精度EAが算出される場合には、例えば、閾値THは、第1確信度及び第2確信度の両方又は少なくとも一方が所定値(例えば、B-、C+又はC)以上であるときに推定精度EAが閾値TH以上となるように設定される。
【0105】
ステップS211において推定精度EAが閾値TH以上であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS212に進む。ステップS212では、
図4のステップS110と同様に、情報出力部17はHMI8を介して延長航続距離を航続距離の延長情報として出力する。ステップS212の後、本制御ルーチンは終了する。
【0106】
一方、ステップS211において推定精度EAが閾値TH未満であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS213に進む。ステップS213では、情報出力部17は航続距離の延長情報を出力しない。この場合、情報出力部17は、HMI8を介して、航続距離の延長情報以外の情報、例えば先行車候補の位置情報及び先行車候補の追従対象としての適性度を示す情報、又は先行車候補の位置情報を出力する。ステップS213の後、本制御ルーチンは終了する。
【0107】
なお、情報出力部17は、延長航続距離の推定精度が閾値以上であるときには、延長航続距離を距離航続距離の延長情報として出力し、延長航続距離の推定精度が閾値未満であるときには延長航続距離よりも短い距離を航続距離の延長情報として出力してもよい。このことによって、延長航続距離による誤差の影響を低減しつつ、自車両の乗員に追従走行を促すことができる。この場合、航続距離の延長情報として出力される延長航続距離よりも短い距離は、延長航続距離に1未満の所定係数を乗算することによって算出され、所定係数は、例えば、1/4~3/4、好ましくは1/2に設定される。所定係数が1/2である場合、
図5の例では、延長航続距離の推定精度が閾値未満であるときに、延長情報として+20kmが表示される。
【0108】
<第三実施形態>
第三実施形態に係る車両制御システムの構成及び制御は、以下に説明する点を除いて、基本的に第二実施形態に係る車両制御システムの構成及び制御と同様である。このため、以下、本発明の第三実施形態について、第二実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0109】
第三実施形態では、情報出力部17は、延長航続距離の推定精度が第1閾値以上であるときには延長航続距離を距離航続距離の延長情報として出力し、延長航続距離の推定精度が第1閾値よりも低い第2閾値以上第1閾値未満であるときには延長航続距離よりも短い距離を航続距離の延長情報として出力し、延長航続距離の推定精度が第2閾値未満であるときには航続距離の延長情報を出力しない。このことによって、延長航続距離による誤差の影響を低減しつつ、自車両の乗員に追従走行を促すことができる。
【0110】
図10A及び
図10Bは、第三実施形態における情報提示処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンはECU10のプロセッサ13によって所定の実行間隔で繰り返し実行される。
【0111】
ステップS301~S310は
図7A及び
図7BのステップS201~S210と同様に実行される。ステップS310の後、ステップS311において、情報出力部17は、延長航続距離の推定精度EAが所定の第1閾値TH1以上であるか否かを判定する。第1閾値TH1は、予め定められ、例えば、先行車情報の信頼度、自車両の運転支援レベル及び走行環境情報の信頼度のいずれか一つに基づいて推定精度EAが算出される場合には、レベル2に設定される。また、第1確信度及び第2確信度に基づいて延長航続距離の推定精度EAが算出される場合には、例えば、第1閾値TH1は、第1確信度及び第2確信度の両方が所定値(例えば、B-、C+又はC)以上であるときに推定精度EAが第1閾値TH1以上となるように設定される。
【0112】
ステップS311において推定精度EAが第1閾値TH1以上であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS312に進む。ステップS312では、
図4のステップS110と同様に、情報出力部17はHMI8を介して延長航続距離を航続距離の延長情報として出力する。ステップS312の後、本制御ルーチンは終了する。
【0113】
一方、ステップS311において推定精度EAが第1閾値TH1未満であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS313に進む。ステップS313では、情報出力部17は、延長航続距離の推定精度EAが所定の第2閾値TH2以上であるか否かを判定する。第2閾値TH2は、予め定められ、例えば、先行車情報の信頼度、自車両の運転支援レベル及び走行環境情報の信頼度のいずれか一つに基づいて推定精度EAが算出される場合には、レベル1に設定される。また、第1確信度及び第2確信度に基づいて延長航続距離の推定精度EAが算出される場合には、例えば、第2閾値TH2は、第1確信度及び第2確信度の少なくとも一方が所定値(例えば、B-、C+又はC)以上であるときに推定精度EAが第2閾値TH2以上となるように設定される。
【0114】
ステップS313において推定精度EAが第2閾値TH2以上であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS314に進む。ステップS314では、情報出力部17はHMI8を介して、延長航続距離よりも短い距離を航続距離の延長情報として出力する。延長航続距離よりも短い距離は、延長航続距離に1未満の所定係数を乗算することによって算出され、所定係数は、例えば、1/4~3/4、好ましくは1/2に設定される。ステップS314の後、本制御ルーチンは終了する。
【0115】
一方、ステップS313において推定精度EAが第2閾値TH2未満であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS315に進む。ステップS315では、情報出力部17は航続距離の延長情報を出力しない。この場合、情報出力部17は、HMI8を介して、航続距離の延長情報以外の情報、例えば先行車候補の位置情報及び先行車候補の追従対象としての適性度を示す情報、又は先行車候補の位置情報を出力する。ステップS315の後、本制御ルーチンは終了する。
【0116】
<第四実施形態>
第四実施形態に係る車両制御システムの構成及び制御は、以下に説明する点を除いて、基本的に第一実施形態に係る車両制御システムの構成及び制御と同様である。このため、以下、本発明の第四実施形態について、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0117】
図11は、本発明の第三実施形態に係る情報提示装置を含むクライアントサーバシステム100の概略的な構成図である。クライアントサーバシステム100はサーバ40及び複数の車両50を備える。サーバ40はキャリア網又はインターネット網のような通信ネットワーク60と無線基地局70とを介して複数の車両50の各々と通信可能である。すなわち、サーバ40は広域通信を介して複数の車両50の各々と通信可能である。
【0118】
図12は、サーバ40の構成を概略的に示す図である。サーバ40は、通信インターフェース41、ストレージ装置42、メモリ43及びプロセッサ44を備える。通信インターフェース41、ストレージ装置42及びメモリ43は、信号線を介してプロセッサ44に接続されている。なお、サーバ40は、キーボード及びマウスのような入力装置、ディスプレイのような出力装置等を更に備えていてもよい。また、サーバ40は複数のコンピュータから構成されていてもよい。
【0119】
通信インターフェース41は、サーバ40を通信ネットワーク60に接続するためのインターフェース回路を有する。サーバ40は通信ネットワーク60を介してサーバ40の外部(例えば複数の車両50)と通信する。通信インターフェース41はサーバ40の通信部の一例である。
【0120】
ストレージ装置42は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SDD)又は光記録媒体及びそのアクセス装置を有する。ストレージ装置42は、各種データを記憶し、例えば、地図情報、複数の車両50の情報(識別情報、位置情報等)、プロセッサ44が各種処理を実行するためのコンピュータプログラム等を記憶する。ストレージ装置42はサーバ40の記憶部の一例である。
【0121】
メモリ43は不揮発性の半導体メモリ(例えばRAM)を有する。メモリ43は、例えばプロセッサ44によって各種処理が実行されるときに使用される各種データ等を一時的に記憶する。メモリ43はサーバ40の記憶部の別の一例である。
【0122】
プロセッサ44は、一つ又は複数のCPU及びその周辺回路を有し、各種処理を実行する。なお、プロセッサ44は、論理演算ユニット、数値演算ユニット又はグラフィック処理ユニットのような他の演算回路を更に有していてもよい。
【0123】
第四実施形態では、サーバ40がECU10の代わりに情報提示装置として機能し、サーバ40のプロセッサ44が、先行車候補選択部15、距離推定部16及び情報出力部17を有する。先行車候補選択部15、距離推定部16及び情報出力部17は、サーバ40のストレージ装置42に記憶されたコンピュータプログラムをサーバ40のプロセッサ44が実行することによって実現される機能モジュールである。
【0124】
したがって、第四実施形態では、
図4の情報提示処理の制御ルーチンがサーバ40のプロセッサ44によって実行される。この場合、ステップS101において、先行車候補選択部15は、複数の車両50のうちのいずれかの車両50において、追従走行の開始条件が成立しているか否かを判定する。この判定が肯定された場合、以下の処理ステップにおいて、追従走行の開始条件を満たした車両50が自車両として認識される。
【0125】
ステップS102では、先行車候補選択部15は、広域通信を介して、自車両の周囲の所定範囲(例えば自車両との車間距離が所定値以下の範囲)に位置する周辺車両に関する情報を取得する。次いで、ステップS103において、先行車候補選択部15は、サーバ40により情報が取得された周辺車両の数Nを特定し、N台の周辺車両のそれぞれに車両番号(1~N)を割り当てる。
【0126】
次いで、ステップS104において、先行車候補選択部15は車両番号iに1を加算することによって車両番号iを更新する。なお、車両番号iの初期値はゼロである。
【0127】
次いで、ステップS105~S109が、第一実施形態に関して上述したように実行される。ステップS109の後、ステップS110において、情報出力部17は、自車両のECU10に指示を送信し、自車両のHMI8を介して、自車両が先行車候補に追従した場合の航続距離の延長情報を出力する。例えば、航続距離の延長情報を含む画像情報がHMI8に表示される場合には、斯かる画像情報がサーバ40から自車両に送信される。
【0128】
なお、複数の車両50において、追従走行に関する車両のパラメータが追従走行用のアプリケーションに予め登録され、ステップS102において、先行車候補選択部15は、追従走行用のアプリケーションを介して、自車両の周囲の周辺車両に関する情報を取得してもよい。
【0129】
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。例えば、車両制御システム1が設けられる車両は、運転支援機能を有しない手動運転車両であってもよい。また、先行車候補選択部15が複数の先行車候補を選択し、情報出力部17は、複数の先行車候補の各々について、自車両が先行車候補に追従した場合の航続距離の延長情報を出力してもよい。
【0130】
また、ECU10のプロセッサ13又はサーバ40のプロセッサ44が有する各部の機能をコンピュータに実現させるコンピュータプログラムは、コンピュータによって読取り可能な記録媒体に記憶された形で提供されてもよい。コンピュータによって読取り可能な記録媒体は、例えば、磁気記録媒体、光記録媒体、又は半導体メモリである。
【0131】
また、上述した実施形態は、任意に組み合わせて実施可能である。第二実施形態と第四実施形態とが組み合わされる場合には、
図7A及び
図7Bの情報提示処理の制御ルーチンがサーバ40のプロセッサ44によって実行され、第三実施形態と第四実施形態とが組み合わされる場合には、
図10A及び
図10Bの情報提示処理の制御ルーチンがサーバ40のプロセッサ44によって実行される。これらの場合、例えば、先行車情報の信頼度及び走行環境情報の信頼度が以下のように決定される。
【0132】
先行車情報の信頼度は、先行車情報の取得手段として追従走行用のアプリケーションが用いられる場合にレベル2に設定され、先行車情報の取得手段として追従走行用のアプリケーションが用いられない場合にはレベル1に設定される。また、走行環境情報の信頼度は、走行環境情報の取得手段としてサーバ40と車両との広域通信が用いられる場合にはレベル1に設定され、通信環境等により走行環境情報が取得不可能な場合にはレベル0に設定される。
【符号の説明】
【0133】
8 ヒューマンマシンインタフェース(HMI)
10 電子制御ユニット(ECU)
13 プロセッサ
15 先行車候補選択部
16 距離推定部
17 情報出力部
20 自車両
30 周辺車両
40 サーバ
44 プロセッサ