(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】車両用外装品
(51)【国際特許分類】
B60Q 5/00 20060101AFI20241008BHJP
F21S 43/14 20180101ALI20241008BHJP
B60R 19/52 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
B60Q5/00 650B
B60Q5/00 620C
B60Q5/00 620A
B60Q5/00 630B
B60Q5/00 680A
F21S43/14
B60R19/52 Z
(21)【出願番号】P 2021181523
(22)【出願日】2021-11-05
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 匡
(72)【発明者】
【氏名】奥村 晃司
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-137758(JP,A)
【文献】再公表特許第2013/150735(JP,A1)
【文献】特開2008-186741(JP,A)
【文献】特開2019-068330(JP,A)
【文献】米国特許第10867591(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 5/00
F21S 43/14
B60R 19/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル状をなす樹脂製の車両用外装品であって、
車両に搭載されるセンサの表側に配置されるセンサカバー領域と
、音を発する発音部の表側に配置される共振パネル領域と
、光源と、を具備し、
前記共振パネル領域は
、互いに表-裏方向に離れた外壁部及び内壁部からなる二重壁と、前記外壁部と前記内壁部との間の密閉された空間に形成され前記音が透過する中間層と、を有し
、前記センサカバー領域の外側に配置され
、
前記センサカバー領域は、互いに表-裏方向に離れた第2外壁部及び第2内壁部からなる第2二重壁を有し、
前記光源は、前記第2二重壁の内部に配置されて前記第2内壁部に光を照射し、
前記第2内壁部に照射された光は、前記第2内壁部のうち表側の壁面である第2表壁面で反射する、車両用外装品。
【請求項2】
さらに、車両に取り付けるための取り付け構造部を具備し、
前記共振パネル領域は、前記取り付け構造部から5mm以上離れている、請求項
1に記載の車両用外装品。
【請求項3】
前記センサは電磁波を照射し、
前記共振パネル領域は前記センサが照射する電磁波の照射領域外にある、請求項
1又は請求項2に記載の車両用外装品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され車両室外に露出する車両用外装品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミリ波レーダ、レーザーレーダ、LiDAR(Light Detection and Ranging)、画像センサ等の各種のセンサ及び当該センサを用いたセンシングシステムを車両に搭載する試みが盛んになされている。
これらのセンサは、ユーザーや通行人から視認され難いように、また、日光や雨雪等を遮るように、樹脂製の車両用外装品によって表側から覆われるのが一般的である。
【0003】
車両に音出力装置を搭載する試みも従来からなされている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載されている車両用音出力装置は、ホーンやスピーカ等の発音部を備え、発音部の発した音を車両周囲の人に聞かせる装置である。発音部は、例えばフロントグリルやフロントバンパ等の車両用外装品によって、表側から覆われるのが一般的である。
【0004】
上記の音出力装置において、発音部の発した音は、車両用外装品に設けられた開口部を通して、車両用外装品よりもさらに表側に放出される。
特に、発音部が上記の開口部の真裏またはその近傍に配置されていれば、発音部の発した音が開口部を経て車両用外装品の表側に放出され易くなる。したがってこの場合には、発音部の出力が小さくても、広範囲に亘って音を伝搬し易くなる。換言すると、上記したように車両用外装品に開口部が設けられていれば、近傍を走行する車両の乗員や歩行者に代表される車両外方の人の耳に、発音部の発する音を届け易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、車両のEV化の進展や、燃費向上の要請に伴って、車両用外装品の開口部が縮小する傾向にある。車両用外装品の開口部が縮小すると又はなくなると、大きな開口部を有する場合に比べて、発音部の発した音が車両用外装品の裏面で反射し易くなり、当該車両用外装品の表側に透過する音が減少する。このため、場合によっては、発音部の発した音を車両外方の人の耳に届け難くなる虞もある。
【0007】
本発明の発明者らは、上記の点に鑑み、車両用外装品の裏側に配置された発音部の発する音を、開口部を通過させることなく、当該車両用外装品の表側に充分に伝搬させる技術を発明し、既に出願した(特願2021-157154号)。
【0008】
特願2021-157154号には、互いに表-裏方向に離れた外壁部及び内壁部からなる二重壁と、当該外壁部と内壁部との間の密閉された空間に形成され音が透過する中間層と、有する車両用音出力装置が開示されている。当該車両用音出力装置によると、発音部の発した音を、二重壁の内壁部から中間層を介し外壁部にかけて共振すなわち共鳴させて、外壁部のさらに表側すなわち車両外方に伝搬させる。これにより、当該技術によると、開口部の小さい又は開口部のない車両用外装品であっても、発音部の発する音を、車両外方に適切に伝搬させることができ、車両外方の人の耳に充分な大きさで届けることが可能である。
【0009】
ところで、既述したように、車両にはセンサも搭載される。車両において車両用外装品を搭載し得るスペースには限りがあるため、省スペース化や見栄えを考慮すると、センサを表側から覆う車両用外装品に、上記の車両用音出力装置を一体化し当該車両用音出力装置に因るスピーカ機能を付与することが好適と考えられる。
【0010】
しかし上記の車両用音出力装置は、共振機構によるものであり、音を伝搬させるためには二重壁を振動させる必要がある。一方、各種センサの表側に配置される車両用外装品は、ミリ波や赤外線、可視光線等の電磁波に代表される各種の情報を透過させる必要があり、当該車両用外装品が振動すると、場合によっては当該電磁波等の情報の透過が阻害され、ひいては、センサのセンシング機能が阻害される虞もある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、車両用外装品に優れたセンシング機能とスピーカ機能とを付与し得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の車両用外装品は、
パネル状をなす樹脂製の車両用外装品であって、
車両に搭載されるセンサの表側に配置されるセンサカバー領域と、
音を発する発音部の表側に配置される共振パネル領域と、を具備し、
前記共振パネル領域は、
互いに表-裏方向に離れた外壁部及び内壁部からなる二重壁と、前記外壁部と前記内壁部との間の密閉された空間に形成され前記音が透過する中間層と、を有し、
前記センサカバー領域の外側に配置されている、車両用外装品である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車両用外装品によると、センシング機能とスピーカ機能とを両立させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1の車両用外装品が車両に搭載された様子を模式的に説明する説明図である。
【
図2】実施例1の車両用外装品を表側からみた模式的に説明する説明図である。
【
図3】実施例1の車両用外装品を
図2中A-A位置で切断した様子を模式的に説明する説明図である。
【
図4】実施例1の車両用外装品を
図2中B-B位置で切断した様子を模式的に説明する説明図である。
【
図5】実施例2の車両用外装品を表側からみた模式的に説明する説明図である。
【
図6】実施例2の車両用外装品を
図5中A-A位置で切断した様子を模式的に説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a~b」は、下限aおよび上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例等に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。
【0016】
本発明の車両用外装品は、
パネル状をなす樹脂製の車両用外装品であって、
車両に搭載されるセンサの表側に配置されるセンサカバー領域と、
音を発する発音部の表側に配置される共振パネル領域と、を具備し、
前記共振パネル領域は、
互いに表-裏方向に離れた外壁部及び内壁部からなる二重壁と、前記外壁部と前記内壁部との間の密閉された空間に形成され前記音が透過する中間層と、を有し、
前記センサカバー領域の外側に配置されている、車両用外装品である。
【0017】
本発明の車両用外装品のうち、センサカバー領域は、既述した「センサを表側から覆う車両用外装品」に相当する。また、共振パネル領域は、既述した「車両用音出力装置」に相当する。
【0018】
本発明の車両用外装品は、上記のセンサカバー領域と共振パネル領域とを具備するものであるが、共振パネル領域をセンサカバー領域の外側、すなわち、センサのセンシング機能を阻害しない位置に配置することにより、センサのセンシング機能と、共振パネル領域に因るスピーカ機能とを両立させることが可能である。
以下、本発明の車両用外装品を具体的に説明する。
【0019】
本発明の車両用外装品は車両の外装品であれば良く、例えば、フロントグリル、バンパ、エンブレム、灯体のカバー、各種センサ用のカバー、各種ガーニッシュ等として好適に具現化できるが、この限りではない。本発明の車両用外装品は、例えば、車両のドアやボデー等も含み得る。
【0020】
本発明の車両用外装品は、樹脂製でありパネル状をなす。
本発明の車両用外装品に用いる樹脂の種類は特に限定されず、共振パネル領域で伝搬すべき音の波長や共振パネル領域の形状、センサカバー領域の裏側に配置されるセンサが検知する情報の種類、例えば電磁波の波長等に応じて適宜適切に選択すれば良い。
本発明の車両用外装品の形状や厚さ等もまた、特に限定しない。
【0021】
本発明の車両用外装品の裏側に配置されるセンサは特に限定しないが、例えば、ミリ波レーダ、レーザーレーダ、LiDAR(Light Detection and Ranging)、画像センサ等の電磁波を検知するものまたは電磁波を照射し検知するものの一種又は複数種を、用途に応じて選択し、用いれば良い。なお、センサは情報として電磁波を利用するものに限らず、例えば、音波等を利用するものであっても良い。以下、本明細書では電磁波に代表される各種の情報を包括して電磁波等と称する。
【0022】
本発明の車両用外装品は、センサカバー領域及び共振パネル領域を具備する。
このうちセンサカバー領域は、本発明の車両用外装品のうちセンサの表側に配置される領域である。本発明の車両用外装品は当該センサカバー領域を一つのみ有しても良いし複数有しても良い。例えば本発明の車両用外装品が一種類のみのセンサの表側に配置される場合、本発明の車両用外装品は一つのセンサカバー領域のみを有しても良い。また、本発明の車両用外装品が複数種のセンサの表側に配置される場合、本発明の車両用外装品は複数のセンサカバー領域を有しても良い。
【0023】
センサが電磁波等を照射し検知するものである場合、センサカバー領域はセンサにおける電磁波等の照射領域の全体を表側から覆うのが好ましい。
【0024】
センサカバー領域の材料や形状は特に限定されず、センサの種類に応じて、当該センサの検知する及び必要に応じて当該センサの照射する電磁波等に干渉しないような材料及び形状を適宜適切に選択すれば良い。例えば、センサカバー領域の材料は共振パネル領域と同じ材料であっても良いし異なる材料であっても良い。センサカバー領域の材料と共振パネル領域の材料とが異なる材料である場合、センサカバー領域と共振パネル領域とは、二色成形法やインサート成形法等により一体に成形しても良いし、別体で成形したのちに接着や溶着、ネジ止め等の方法によって一体化しても良い。
【0025】
本発明の車両用外装品における共振パネル領域は、本発明の車両用外装品のうち発音部の表側に配置される領域である。本発明の車両用外装品は当該共振パネル領域を一つのみ有しても良いし複数有しても良い。例えば本発明の車両用外装品が一種類のみの発音部の表側に配置される場合、本発明の車両用外装品は一つの共振パネル領域のみを有しても良い。また、本発明の車両用外装品が複数種の発音部の表側に配置される場合、本発明の車両用外装品は複数の共振パネル領域を有しても良い。
【0026】
発音部は、音を生じるものであれば良く、発する音の周波数や用途は特に問わない。例えば、発音部は、車両外方の人に向けて警告音を発するホーンとしての機能、車両外方の人の自車両の接近を知らせる接近通報装置としての機能、人の声や楽器音などを音として発するスピーカとしての機能等を有し得る。本発明においては、これらを総称してスピーカ機能と称する。
【0027】
共振パネル領域は発音部の表側に配置されればよく、表-裏方向における発音部と共振パネル領域との距離は特に問わないが、当該発音部と共振パネル領域との距離の好適な範囲として、350mm以下、300mm以下、200mm以下、150mm以下、100mm以下、50mm以下、20mm以下、または10mm以下を例示できる。
【0028】
本発明の車両用外装品における共振パネル領域は、単に発音部が生じた音に共振することで音を表側に伝搬するものであっても良いし、共鳴透過現象によって発音部が生じた所定周波数の音を選択的に透過させるものであっても良い。本発明の車両用外装品は既述した開口部を有さない又は小さな開口部のみを有するものであるのが好適であり、このような本発明の車両用外装品に設ける共振パネル領域としては、共鳴透過現象によって発音部が生じた所定周波数の音を選択的に透過させるものであるのが特に好適である。
【0029】
共振パネル領域は、外壁部及び内壁部からなる二重壁を有する。
内壁部及び外壁部の材料や形状等は特に問わないが、発音部が発した音に共振可能な程度の厚さであるのが好ましい。
【0030】
具体的には、内壁部及び外壁部の厚さは、本発明の車両用外装品におけるセンサカバー領域の厚さ、具体的には、センサカバー領域における一般板厚よりも薄いのが好ましい。内壁部及び外壁部の厚さの好ましい範囲として、センサカバー領域の厚さの80%以下または75%以下を例示できる。センサカバー領域における一般板厚は、センサカバー領域における厚さの中央値と読み替えることもでき、当該中央値としては、センサカバー領域における任意の10点で板厚を測定したときの中央値を用いれば良い。
【0031】
中間層は、二重壁を構成する外壁部と内壁部との間の密閉された空間に形成される。つまり、外壁部のうち裏側の壁面である裏壁面と、内壁部のうち表側の壁面である表壁面と、の間には、中間層となる密閉空間を区画形成するための区画部が介在する。区画部は、外壁部及び内壁部とは別体で形成されていても良いし、外壁部又は内壁部と一体に形成されていても良い。
【0032】
中間層の厚さ、すなわち、表-裏方向における外壁部と内壁部との距離、表-裏方向における裏壁面と表壁面との距離は、発音部の発する音の周波数に合わせて適宜適切に設計すれば良く、例えば、当該音を内壁部から外壁部にかけて透過させる共鳴透過現象が生じるように設計するのが好ましい。中間層の体積についても同様である。
具体的には、中間層は、下記の式(1)に従って設計し得る。
【0033】
【0034】
上記式(1)において、frmdは発音部の発する音の周波数[Hz]であり、dは中間層の厚み[mm]であり、ρは中間層に封入されるガスの密度[kg/m3]であり、cは中間層内のガスの音速[m/s]であり、m1は内壁部の面密度[kg/m2]であり、m2は外壁部の面密度[kg/m2]である。尚、中間層が空気層であれば、ρは1.2[kg/m3]であり、cは343.7[m/s]である。
【0035】
本発明の車両用外装品において、共振パネル領域は、センサカバー領域の外側に配置されている。センサカバー領域の外側とは、センサカバー領域の領域外ということを意味し、例えば、共振パネル領域の表面とセンサカバー領域の表面とは連続的にまたは面一に設けられても良いし、そうでなくても良い。具体的には、共振パネル領域の表面とセンサカバー領域の表面とは、前後方向に異なる位置にあっても良い。または、共振パネル領域の表面とセンサカバー領域の表面との間に凹溝が設けられる等、共振パネル領域の表面とセンサカバー領域の表面とが非連続であっても良い。
【0036】
何れの場合にも、共振パネル領域をセンサカバー領域の外側に配置することで、共振パネル領域が生じる振動がセンサカバー領域に及ぼす影響を抑制でき、センサのセンシング機能と、共振パネル領域に因るスピーカ機能とを両立させることが可能である。
【0037】
ここで、共振パネル領域は、センサカバー領域に隣接していても良いが、センサカバー領域に対して所定の間隔を空けて配置するのが好ましい。共振パネル領域で生じた振動が減衰せず直接センサカバー領域に伝搬することを抑制するためである。
【0038】
具体的には、共振パネル領域とセンサカバー領域との間隔は、5mm以上、10mm以上、30mm以上または50mm以上あるのが好適である。
【0039】
本発明の車両用外装品は、センサカバー領域及び共振パネル領域以外の部分を有しても良い。本発明の車両用外装品におけるセンサカバー領域及び共振パネル領域以外の部分として、例えば、既述した中間層用の区画部や、センサカバー領域と共振パネル領域とをつなぐ一般領域、センサ及び発音部以外の車両搭載機器の表側に配置され何らかの機能を生じる機能領域、本発明の車両用外装品を車両に取り付けるための取り付け構造部を例示できる。
【0040】
本発明の車両用外装品は、センサ及び発音部に加え、それ以外の車両搭載機器の表側に配置されても良い。例えば、本発明の車両用外装品の裏側には車両搭載機器としての光源を配置しても良い。この場合、本発明の車両用外装品には灯体としての機能が付与される。
【0041】
本発明の車両用外装品の裏側に光源を配置する場合、車両用外装品のうち光源の表側に配置される機能領域は、センサカバー領域及び共振パネル領域とは異なる領域であっても良いし、場合によっては、センサカバー領域または共振パネル領域であっても良い。
特に、車両用外装品の表側に向けて、光源からの直接光を出射させるのではなく、反射光を出射させる場合には、当該光源はセンサカバー領域の裏側に配置するのが好適である。
【0042】
つまりこの場合、センサカバー領域は、互いに表-裏方向に離れた第2外壁部及び第2内壁部からなる第2二重壁を有する構造とし、このうち第2内壁部に光源からの光を照射すれば良い。この場合、光源から照射され第2内壁部で反射した反射光が、第2外壁部を透過し、車両用外装品の表側に出射する。
当該態様の本発明の車両用外装品は、光源を具備しても良いし、具備しなくても良い。
【0043】
既述したように、本発明の車両用外装品は、当該車両用外装品を車両に取り付けるための取り付け構造部を具備しても良い。この場合、取り付け構造部は共振パネル領域の外側にあるのが好適である。共振パネル領域の振動が取り付け構造部に伝搬することで、取り付け構造部が振動して、異音を発したり、取り付け構造が緩んだりすることを抑制又は回避するためである。
【0044】
この場合の共振パネル領域と取り付け構造部との距離は特に限定しないが、好ましい範囲として5mm以上、10mm以上、20mm以上、30mm以上、50mm以上の各範囲を例示できる。共振パネル領域と取り付け構造部との距離に上限はないが、車両用外装品の限られたスペースを有効に利用することを考慮すると、200mm以下とするのが好適である。
【0045】
以下、具体例を挙げて本発明の車両用外装品を説明する。
【0046】
(実施例1)
実施例1の車両用外装品では、車両用外装品として、車両のフロントグリルを採用した。実施例1の車両用外装品が車両に搭載された様子を模式的に説明する説明図を
図1に示す。実施例1の車両用外装品を表側からみた模式的に説明する説明図を
図2に示す。実施例1の車両用外装品を
図2中A-A位置で切断した様子を模式的に説明する説明図を
図3に示す。実施例1の車両用外装品を
図2中B-B位置で切断した様子を模式的に説明する説明図を
図4に示す。
【0047】
実施例1の車両用外装品1は、センサ80としてのミリ波レーダ及び発音部81としてのホーンの表側に配置されるものである。
車両用外装品1は、ポリカーボネート製であり、
図2に示すようにパネル状をなす。
【0048】
図1に示すように、実施例1の車両用外装品1は、車両90のフロントグリルであり、車両90における進行方向先側に配置され、センサ80(
図2参照)及び発音部81(
図2参照)を車両進行方向先側から隠す。つまり実施例1の車両用外装品1において、車両90の進行方向の先側が表側に相当し、進行方向後側が裏側に相当する。
【0049】
図2に示すように、車両用外装品1は、センサカバー領域10と共振パネル領域15とを具備する。センサカバー領域10は、車両用外装品1の略中央部分に設けられた領域であり、センサ80の表側に配置される。
【0050】
実施例1の車両用外装品1は、さらに、LED光源を具備する。LED光源はセンサ80の上側に配置され、当該センサ80とともにセンサカバー領域10の裏側に配置される。
センサカバー領域10は、略中央部分である透過領域11を有する。透過領域11はセンサ80に対面する。
【0051】
共振パネル領域15は、センサカバー領域10の下側に配置されている。共振パネル領域15は二つの発音部81を表側から覆う。共振パネル領域15はセンサカバー領域10の外側に配置され、センサカバー領域10と共振パネル領域15との間には隙間が設けられている。
【0052】
実施例1の車両用外装品1において、センサカバー領域10と共振パネル領域15との間の隙間の長さの最小値は5mm程度であり、後述する透過領域11と共振パネル領域15との間の隙間の長さの最小値もまた5mm程度である。
【0053】
図4に示すように、センサカバー領域10及び共振パネル領域15の各々は、二重壁を有する。共振パネル領域15に含まれる二重壁を単に二重壁15dと称し、センサカバー領域10に含まれる二重壁を第2二重壁10dと称する。
【0054】
図4に示すように共振パネル領域15の二重壁15dは、略パネル状をなす外壁部15o及び内壁部15iからなる。外壁部15oと内壁部15iとは表-裏方向に離れている。外壁部15oと内壁部15iとの外周部は、立壁状をなす区画部15pによって周方向に囲まれている。外壁部15oの裏壁面と、内壁部15iの表壁面と、区画部15pの内周面とによって、密閉空間15cが区画形成されている。当該密閉空間15cに、空気層である中間層15mが形成されている。
【0055】
外壁部15oの厚さは内壁部15iの厚さと同程度であり、外壁部15oの厚さ及び内壁部15iの厚さは、第2外壁部10oの厚さ及び第2内壁部10iの厚さよりも薄い。
【0056】
発音部81は内壁部15iよりもさらに裏側に配置されている。発音部81が発した音は、内壁部15i、中間層15m、外壁部15oの順に裏側から表側に向けて伝搬し、これらが共振することにより、外壁部15oのさらに表側に伝搬する。
【0057】
図2に示すように、実施例1の車両用外装品1は、車両90に取り付けるための取り付け構造部30を具備する。取り付け構造部30は、係合爪及びネジ止め構造を含み、車両用外装品1におけるセンサカバー領域10の外側かつ共振パネル領域15の外側に配置されている。実施例1の車両用外装品1において、取り付け構造部30と共振パネル領域15とは、5mm以上離れている。センサカバー領域10と共振パネル領域15とも、5mm以上離れている。
【0058】
図3に示すようにセンサカバー領域10の第2二重壁10dは、略パネル状をなす第2外壁部10o及び第2内壁部10iからなる。第2内壁部10iの周縁部は、表側に延びて第2外壁部10oに接合している。したがって、第2外壁部10oと第2内壁部10iとは箱状をなすともいい得る。第2内壁と第2外壁との間には空気層である第2中間層10mが形成されている。
【0059】
センサ80は、第2内壁部10iよりもさらに裏側に配置されている。センサ80は、既述したとおりミリ波レーダであり、ミリ波を照射するとともに対象に反射したミリ波を検知する。当該センサ80の照射領域は、センサカバー領域10の内側であり、より具体的には透過領域11の内側である。
センサ80が照射したミリ波は、センサカバー領域10(より具体的には透過領域11)内において、内壁部15i、第2中間層10m、外壁部15oの順に裏側から表側に向けて進み、車両用外装品1の表側に出射する。
【0060】
図3に示すように、光源40は、第2二重壁10dの内部に配置され、透過領域11の外側から第2内壁部10iにおける表側の壁面に光を照射する。当該第2内壁部10iにおける表側の壁面を第2表壁面10isと称する。
【0061】
光源40が第2表壁面10isに照射した光は、第2表壁面10isで反射し、第2中間層10m及び第2外壁部10oを透過して、実施例1の車両用外装品1のうちセンサカバー領域10の表側に出射する。
【0062】
実施例1の車両用外装品1において、センサカバー領域10における第2内壁部10iは黒色であり、第2表壁面10isに照射された光を全反射する。また、実施例1の車両用外装品1において、センサカバー領域10における第2外壁部10oは透明であり、第2表壁面10isが反射した光を損失なくまたは損失少なく透過する。参考までに、実施例1の車両用外装品1において、センサカバー領域10における第2外壁部10o以外の部分は不透明である。
このため実施例1の車両用外装品1におけるセンサカバー領域10は、反射光により明るく光り浮かび上がって見える。つまり実施例1の車両用外装品1において、光源40はセンサカバー領域10を反射光により間接照明する。
【0063】
実施例1の車両用外装品1では、共振パネル領域15をセンサカバー領域10の外側に配置したことで、共振パネル領域15が振動することによりセンサ80のセンシング機能が阻害される不具合を回避できる。これにより、実施例1の車両用外装品1は、センサカバー領域10と共振パネル領域15との両方を具備するにも拘わらず、センサ80のセンシング機能と、共振パネル領域15に因るスピーカ機能とを両立させることが可能である。
【0064】
(実施例2)
実施例2の車両用外装品は、二つの異なるセンサの表側に配置される点、及び、光源がセンサカバー領域の外部に配置されている点において、実施例1の車両用外装品と大きく相違する。以下、実施例1の車両用外装品との相違点を中心に、実施例2の車両用外装品を説明する。
実施例2の車両用外装品を表側からみた模式的に説明する説明図を
図5に示す。実施例2の車両用外装品を
図5中A-A位置で切断した様子を模式的に説明する説明図を
図6に示す。
【0065】
実施例2の車両用外装品1は、発音部81及び二つのセンサ80、85を車両進行方向先側から隠す。センサ80は、実施例1同様にミリ波レーダであり、センサ85はLiDARである。センサ85はセンサ80の下側に配置されている。
【0066】
実施例2の車両用外装品1は二つのセンサカバー領域を具備する。二つのセンサカバー領域10の一方を第1センサカバー領域10と称し、他方を第2センサカバー領域12と称する。
【0067】
第2センサカバー領域12は第1センサカバー領域10の下側に配置されている。第1センサカバー領域10はセンサ80の表側に配置され、第2センサカバー領域12はセンサ85の表側に配置されている。第1センサカバー領域10及び第2センサカバー領域12は各々一重構造であり面一となるように連続している。
【0068】
共振パネル領域15は、上下方向に直交する左右方向に向けて二分割され、第2センサカバー領域12の左右に各々配置されている。各共振パネル領域15の裏側には各々発音部81が配置されている。
【0069】
実施例2の車両用外装品1における第1センサカバー領域10及び第2センサカバー領域12は不透明であり、センサ80が照射するミリ波及びセンサ85が照射する赤外光を透過するものの、可視光は透過しない。かわりに、実施例2の車両用外装品1では、第1センサカバー領域10の上側に透明な領域が設けられている。当該透明な領域を可視光透過領域13と称する。
【0070】
図6に示すように、光源40は、可視光透過領域13の裏側に配置され、当該可視光透過領域13に向けて光を照射する。このため実施例2の車両用外装品1における可視光透過領域13は、直接光により明るく光る。つまり実施例2の車両用外装品1において、光源40は可視光透過領域13を直接光により直接照明する。
【0071】
図5に示すように、共振パネル領域15は、第1センサカバー領域10及び第2センサカバー領域12の外側に配置されている。したがって、実施例2の車両用外装品1でも、共振パネル領域15が振動することによりセンサ80及びセンサ85のセンシング機能が阻害される不具合を回避できる。これにより、実施例2の車両用外装品1もまた、センサカバー領域10、第2センサカバー領域12、共振パネル領域15を具備するにも拘わらず、センサ80及びセンサ85のセンシング機能と、共振パネル領域15に因るスピーカ機能とを両立させることが可能である。
【0072】
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。また、実施形態を含む本明細書に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施できる。
【符号の説明】
【0073】
1:車両用外装品 10:センサカバー領域
10o:第2外壁部 10i:第2内壁部
10d:第2二重壁 12:第2センサカバー領域(センサカバー領域)
15:共振パネル領域 15o:外壁部
15i:内壁部 15d:二重壁
15m:中間層 30:取り付け構造部
40:光源 80:センサ
81:発音部 85:センサ
90:車両