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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】車両管理システムおよび車両
(51)【国際特許分類】
   G06F 8/65 20180101AFI20241008BHJP
   B60W 50/00 20060101ALI20241008BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20241008BHJP
【FI】
G06F8/65
B60W50/00
B60W60/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021183945
(22)【出願日】2021-11-11
(65)【公開番号】P2023071279
(43)【公開日】2023-05-23
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長田 祐
【審査官】円子 英紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-159399(JP,A)
【文献】特開2018-132979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 8/65
B60W 50/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転が可能な車両と、
前記車両と無線通信が可能に構成されたサーバとを備え、
前記車両は、
車両プラットフォームと、
自動運転プログラムが格納された第1のメモリを有する自動運転システムと、
前記車両プラットフォームを制御する制御装置と、
信号毎に定義された所定のAPI(Application Program Interface)を実行することにより、前記自動運転システムと前記制御装置との間のインターフェイスを行う車両制御インターフェイスとを含み、
前記制御装置は、
前記自動運転システムからの要求に従って前記車両プラットフォームを制御するための制御プログラムが格納された第2のメモリを有する個別ECU(Electronic Control Unit)と、
前記個別ECUの前記制御プログラムの更新処理を制御するセントラルECUとを含み、
前記車両制御インターフェイスは、前記第1のメモリに格納された前記自動運転プログラムのバージョンを前記自動運転システムから収集するとともに、前記第2のメモリに格納された前記制御プログラムのバージョンを前記セントラルECUから収集し、収集されたバージョンを前記サーバに送信し、
前記サーバは、
前記第1のメモリに格納された前記自動運転プログラムのバージョンと、前記第2のメモリに格納された前記制御プログラムのバージョンとを取得し、
前記自動運転プログラムと前記制御プログラムとの組み合わせが適合することが確認されたバージョンである動作保証バージョンを取得し、
前記第2のメモリに格納された前記制御プログラムが前記動作保証バージョンの範囲内で更新されるように前記更新処理を管理する、車両管理システム。
【請求項2】
前記サーバとの通信が可能に構成された端末をさらに備え、
前記サーバは、前記動作保証バージョンの範囲内での前記制御プログラムの更新の可否を前記端末に問い合わせ、
前記端末は、前記車両の管理者が更新を許諾した場合に、当該許諾を前記サーバに通知し、
前記サーバは、前記端末から当該通知を受けた場合に、前記動作保証バージョンの範囲内での前記制御プログラムの更新処理を管理する、請求項に記載の車両管理システム。
【請求項3】
前記サーバは、前記動作保証バージョンの範囲内には更新可能な前記制御プログラムが存在しない場合には、前記制御プログラムの更新処理を実行しない、請求項1または2に記載の車両管理システム。
【請求項4】
無線通信によるプログラム更新処理を管理するサーバと通信可能に構成された車両であって、
車両プラットフォームと、
自動運転プログラムが格納された第1のメモリを有する自動運転システムと、
前記車両プラットフォームを制御する制御装置と、
信号毎に定義された所定のAPI(Application Program Interface)を実行することにより、前記自動運転システムと前記制御装置との間のインターフェイスを行う車両制御インターフェイスとを備え、
前記制御装置は、
前記自動運転システムからの要求に従って前記車両プラットフォームを制御するための制御プログラムが格納された第2のメモリを有する個別ECU(Electronic Control Unit)と、
前記個別ECUの前記制御プログラムの更新処理を制御するセントラルECUとを含み、
前記車両制御インターフェイスは、前記第1のメモリに格納された前記自動運転プログラムのバージョンを前記自動運転システムから収集するとともに、前記第2のメモリに格納された前記制御プログラムのバージョンを前記制御装置から収集し、収集されたバージョンを前記サーバに送信する、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両管理システム、サーバ、車両、および、車両の管理方法に関し、より特定的には、自動運転が可能な車両を管理または制御するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転機能を実現するための自動運転システムが提案されている。たとえば特開2018-132015号公報(特許文献1)に開示された車両には、動力システムと、電源システムと、自動運転システムとが搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-132015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動運転が可能な車両は、自動運転システムと、制御装置とを含む。自動運転システムは、自動運転プログラムが格納されたメモリを有する。制御装置は、自動運転システムからの要求に従って車両プラットフォームを制御する制御プログラムが格納されたメモリを有する。
【0005】
車載の各種プログラムを無線通信により更新するOTA(Over-The-Air)技術の開発が進められている。自動運転プログラムも制御プログラムもOTAにより更新できる。
【0006】
今後、自動運転技術が進展するなかで、車両プラットフォームと自動運転システムとが異なるメーカにより製造される状況も想定される。そのような状況下では、車両プラットフォームを制御する制御プログラムと、自動運転プログラムとが別々に更新される可能性も考えられる。当該2種類のプログラムが別々に更新される場合であっても、車両プラットフォームと自動運転システムとを適切に連携させることが望ましい。
【0007】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、車両プラットフォームと自動運転システムとを適切に連携させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本開示のある局面に従う車両管理システムは、自動運転が可能な車両と、車両と無線通信が可能に構成されたサーバとを備える。車両は、車両プラットフォームと、自動運転プログラムが格納された第1のメモリを有する自動運転システムと、自動運転システムからの要求に従って車両プラットフォームを制御するための制御プログラムが格納された第2のメモリを有する制御装置とを含む。サーバは、第1のメモリに格納された自動運転プログラムのバージョンと、第2のメモリに格納された制御プログラムのバージョンとを取得し、自動運転プログラムと制御プログラムとの組み合わせが適合することが確認されたバージョンである動作保証バージョンを取得する。サーバは、第2のメモリに格納された制御プログラムが動作保証バージョンの範囲内で更新されるように制御プログラムの更新処理を管理する。
【0009】
上記(1)の構成においては、サーバが自動運転プログラムおよび制御プログラムの各々の現在のバージョンを取得するとともに、動作保証バージョンを取得する。動作保証バージョンの範囲内であれば、上記2種類のプログラムの組み合わせが適合することが確認されている。よって、上記(1)の構成によれば、制御プログラムを動作保証バージョンの範囲内での更新に留めることによって、車両プラットフォームと自動運転システムとを適切に連携させることができる。
【0010】
(2)車両は、自動運転システムと制御装置との間のインターフェイスを行う車両制御インターフェイスをさらに含む。車両制御インターフェイスは、第1のメモリに格納された自動運転プログラムのバージョンを自動運転システムから収集するとともに、第2のメモリに格納された制御プログラムのバージョンを制御装置から収集し、収集されたバージョンをサーバに送信する。
【0011】
上記(2)の構成によれば、車両プラットフォームと自動運転システムとを適切に連携させるために使用される各種バージョン情報をサーバに取得させることができる。
【0012】
(3)車両管理システムは、サーバとの通信が可能に構成された端末をさらに備える。サーバは、動作保証バージョンの範囲内での制御プログラムの更新の可否を端末に問い合わせる。端末は、車両の管理者が更新を許諾した場合に、当該許諾をサーバに通知する。サーバは、端末から当該通知を受けた場合に、動作保証バージョンの範囲内での制御プログラムの更新処理を管理する。
【0013】
上記(3)の構成においては、車両の管理者から更新の許諾を得た上で制御プログラムを更新できる。
【0014】
(4)サーバは、動作保証バージョンの範囲内には更新可能な制御プログラムが存在しない場合には、制御プログラムの更新処理を実行しない。
【0015】
上記(4)の構成においては、動作保証バージョンの範囲内には更新可能な制御プログラムが存在しない場合には制御プログラムの更新処理を実行しないことで、不要な演算処理を省略できる。
【0016】
(5)本開示の他の局面に従うサーバは、自動運転が可能な車両における制御プログラムの更新処理を管理する。車両は、車両プラットフォームと、自動運転プログラムが格納された第1のメモリを有する自動運転システムと、自動運転システムからの要求に従って車両プラットフォームを制御するための制御プログラムが格納された第2のメモリを有する制御装置とを含む。サーバは、車両との無線通信が可能に構成された通信装置と、プロセッサとを備える。プロセッサは、第1のメモリに格納された自動運転プログラムのバージョンと、第2のメモリに格納された制御プログラムのバージョンとを取得し、自動運転プログラムと制御プログラムとの組み合わせが適合することが確認されたバージョンである動作保証バージョンを取得する。プロセッサは、第2のメモリに格納された制御プログラムが動作保証バージョンの範囲内で更新されるように制御プログラムの更新処理を管理する。
【0017】
上記(5)の方法によれば、上記(1)の構成と同様に、車両プラットフォームと自動運転システムとを適切に連携させることができる。
【0018】
(6)本開示のさらに他の局面に従う車両は、無線通信によるプログラム更新処理を管理するサーバと通信可能に構成されている。車両は、車両プラットフォームと、自動運転プログラムが格納されたメモリを有する自動運転システムと、自動運転システムからの要求に従って車両プラットフォームを制御する制御プログラムが格納されたメモリを有する制御装置と、自動運転システムと制御装置との間のインターフェイスを行う車両制御インターフェイスとを備える。車両制御インターフェイスは、第1のメモリに格納された自動運転プログラムのバージョンを自動運転システムから収集するとともに、第2のメモリに格納された制御プログラムのバージョンを制御装置から収集し、収集されたバージョンをサーバに送信する。
【0019】
上記(6)の構成によれば、上記(2)の構成と同様に、車両プラットフォームと自動運転システムとを適切に連携させるために使用される各種バージョン情報をサーバに取得させることができる。
【0020】
(7)本開示のさらに他の局面に従う車両の管理方法は、自動運転が可能な車両のサーバによる管理方法である。車両は、自動運転プログラムが格納された第1のメモリを有する自動運転システムと、自動運転システムからの要求に従って車両プラットフォームを制御する制御プログラムが格納された第2のメモリを有する制御装置とを含む。管理方法は第1~第3のステップを含む。第1のステップは、第1のメモリに格納された自動運転プログラムのバージョンと、第2のメモリに格納された制御プログラムのバージョンとを取得するステップである。第2のステップは、自動運転プログラムと制御プログラムとの組み合わせが適合することが確認されたバージョンである動作保証バージョンを取得するステップである。第3のステップは、第2のメモリに格納された制御プログラムが動作保証バージョンの範囲内で更新されるように制御プログラムの更新処理を管理するステップとを含む。
【0021】
上記(7)の方法によれば、上記(1)の構成と同様に、車両プラットフォームと自動運転システムとを適切に連携させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、車両プラットフォームと自動運転システムとを適切に連携させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示の実施の形態に係る車両管理システムの概略構成を示す図である。
図2】車両の典型的なハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】自動運転システム(ADS)、車両制御インターフェイスボックス(VCIB)および電子制御ユニット(ECU)の典型的なハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】管制センタの典型的なハードウェア構成を示すブロック図である。
図5】本実施の形態におけるプログラム更新処理の概要を説明するための第1の図である。
図6】本実施の形態におけるプログラム更新処理の概要を説明するための第2の図である。
図7】プログラム更新処理において、制御プログラムのバージョン情報を取得するまでの処理の流れを示すシーケンス図である。
図8】プログラム更新処理において、制御プログラムのバージョン情報を取得してから制御プログラムを更新するまでの処理の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0025】
[実施の形態]
<システム構成>
図1は、本開示の実施の形態に係る車両管理システムの概略構成を示す図である。車両管理システム100は、管制センタ1と、車両センタ2と、複数の車両3A,3B,3Cとを備える。以下では、説明の便宜上、車両3A,3B,3Cのうちのいずれか1台の車両を車両3と記載する。なお、図1には3台の車両3を示すが、車両3の台数は任意である。
【0026】
管制センタ1は、車両3に搭載されたECU(Electronic Control Unit)6(図2および図3参照)の制御プログラムを提供する事業者のサーバである。この例では、ECU6の制御プログラムが車両メーカによって提供される。管制センタ1は、本開示に係る「サーバ」に相当する。
【0027】
車両センタ2は、たとえば、車両3の運行を管理する事業者(タクシー事業者、ライドシェアサービス事業者など)の自社サーバである。車両センタ2は、当該事業者を含む複数の事業者で共有されるシェアードサーバであってもよい。車両センタ2は、クラウドサーバ管理会社が提供するクラウドサーバであってもよい。車両センタ2は、車両3の運行管理者による操作を受け付ける。運行管理者とは、たとえば、車両3の運行を管理する事業体に勤務し、車両3の制御プログラムを更新する権限を有する職員である。
【0028】
複数の車両3の各々は自動運転車両である。各車両3は、たとえば車両センタ2の事業者が提供するサービスに用いられる。車両3の種類(車種)は、事業者により提供されるサービスに応じて適宜選択される。車両センタ2と管制センタ1と各車両3とは、有線または無線のネットワークNWを介して互いに通信可能に接続されている。
【0029】
なお、車両センタ2は必須ではない。車両3が業務用ではなく個人所有である場合には、車両管理システム100は、車両センタ2に代えて、車両3のユーザ端末(パーソナルコンピュータ、スマーホンなど)を含んでもよい。車両センタ2および/またはユーザ端末は、本開示に係る「端末」に相当する。
【0030】
<車両のハードウェア構成>
図2は、車両3の典型的なハードウェア構成を示すブロック図である。車両3は、自動運転システム(ADS:Autonomous Driving System)4と、車両制御インターフェイスボックス(VCIB:Vehicle Control Interface Box)5と、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)6と、DCM(Data Communication Module)7と、センサ群8と、車両プラットフォーム(VP:Vehicle Platform)9とを備える。車両3の構成要素(上記の各システム)は、CAN(Controller Area Network)、イーサネット(Ethernet)(登録商標)などの有線の車載ネットワークにより互いに接続されている。ADS4とECU6とはVCIB5を介して相互に通信可能に構成されている。
【0031】
ADS4は、車両3の自動運転を実現するための各種制御要求を出力したり、車両状態(VP9の状態)を示す各種信号を受けたりする。より具体的には、車両3の走行計画を作成する。ADS4は、走行計画に従って車両3を走行させるための制御要求を、制御要求毎に定義されたAPI(Application Program Interface)に従って、VCIB5を介してECU6に出力する。また、ADS4は、車両状態を示す信号を、信号毎に定義されたAPIに従ってECU6からVCIB5を介して受ける。そして、ADS4は、車両状態を走行計画に反映する。
【0032】
加えて、ADS4は、自動運転プログラムを無線通信により更新するように構成されている。この例では、自動運転プログラムがADSメーカによって提供される。ADS4は、ADSメーカからDCM7を介して自動運転プログラムを受信(ダウンロード)する。ADS4は、ダウンロードした自動運転プログラムを適切なタイミングでADS4のメモリ42(図3参照)に格納(インストール)する。そして、ADS4は、インストールされた自動運転プログラムを適切なタイミングで有効化(アクティベート)する。
【0033】
VCIB5は、CAN等を通じてADS4と通信可能に構成されている。VCIB5は、信号毎に定義された所定のAPIを実行することにより、ADS4から制御要求を受信したり、車両状態をADS4に出力したりする。VCIB5は、ADS4から制御要求を受信すると、その制御要求に対応する制御指令をECU6を介して、その制御指令に対応するシステムに出力する。また、VCIB5は、各システムからECU6を介して車両状態を示す信号を取得し、その信号をADS4に出力する。
【0034】
ECU6は、ADS4からの制御要求およびセンサ群8からの信号などに応じて、車両3の動作に関わる機器類(VP9に含まれる各システム)を制御する。さらに、ECU6は、DCM7を介して、車両状態を示す様々な情報(車両情報)を車両センタ2に送信したり、様々な要求を車両センタ2に送信したりする。また、ECU6は、車両センタ2からDCM7を介して指令または通知を受信する。ECU6は、本開示に係る「制御装置」に相当する。
【0035】
加えて、ECU6は、VP90の制御プログラムを無線通信により更新するように構成されている。より具体的には、ECU6は、管制センタ1からDCM7を介して制御プログラムを受信(ダウンロード)する。ECU6は、ダウンロードした制御プログラムを適切なタイミングでECU6のメモリ(後述)に格納(インストール)する。そして、ECU6は、インストールされた制御プログラムを適切なタイミングで有効化(アクティベート)する。
【0036】
DCM7は、車載通信モジュールである。DCM7は、ECU6と車両センタ2との双方向のデータ通信が可能、かつ、ECU6と管制センタ1との双方向のデータ通信が可能に構成されている。
【0037】
センサ群8は、車両3の外部状況を検出するように構成されたセンサを含むとともに、車両3の走行状態に応じた情報ならびに操舵操作、アクセル操作およびブレーキ操作を検出するように構成されたセンサ(いずれも図示せず)を含む。具体的には、センサ群8は、たとえば、カメラ、レーダー(Radar)、ライダー(LIDAR:Laser Imaging Detection and Ranging)、車速センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ(いずれも図示せず)を含み得る。なお、センサ群8の一部または全部がADS4に含まれていてもよいし、VP9に含まれていてもよい。
【0038】
VP9は、ADS4からの制御要求に従って各種車両制御を実行する各種システムを含む。より具体的には、VP9は、ブレーキシステム91と、ステアリングシステム92と、パワートレーンシステム93と、アクティブセーフティシステム94と、ボディシステム95とを含む。
【0039】
ブレーキシステム91は、VP9の各車輪に設けられた制動装置(図示せず)を制御するように構成されている。制動装置は、たとえば、アクチュエータによって調整される油圧に応じて動作するディスクブレーキシステムを含む。
【0040】
ステアリングシステム92は、車両3の操舵輪の操舵角を操舵装置を用いて制御するように構成されている。操舵装置は、たとえば、アクチュエータにより操舵角の調整が可能な電動パワーステアリング(EPS:Electric Power Steering)を含む。
【0041】
パワートレーンシステム93は、たとえば、電動パーキングブレーキ(EPB:Electric Parking Brake)システムと、パーキングロック(P-Lock)システムと、シフトレンジを選択可能に構成されたシフト装置(いずれも図示せず)とを含む。
【0042】
アクティブセーフティシステム94は、カメラ、レーダ、センサなどを用いて車両3の前方または後方の障害物(歩行者、自転車、駐車車両、電柱など)を検出する。アクティブセーフティシステム94は、車両3と障害物との間の距離、および、車両3の移動方向に基づいて、車両3が障害物と衝突する可能性があるかどうかを判定する。アクティブセーフティシステム94は、衝突の可能性があると判定した場合、制動力が増加するようにブレーキシステム91に制動指令を出力する。
【0043】
ボディシステム95は、たとえば、車両3の走行状態または環境等に応じて、方向指示器、ホーン、ワイパーなどの部品(いずれも図示せず)を制御するように構成されている。
【0044】
<ADS、VCIBおよびECUのハードウェア構成>
図3は、ADS4、VCIB5およびECU6の典型的なハードウェア構成を示すブロック図である。ECU6は、セントラルECU60と、個別ECU61~69とを含む。なお、図3に示された個別ECUの個数は例示に過ぎず、ECU6は、任意の個数の個別ECUを含み得る。
【0045】
ADS4は、プロセッサ41と、メモリ42とを含む。メモリ42は、ROM(Read Only Memory)421と、RAM(Random Access Memory)422と、フラッシュメモリ423とを含む。フラッシュメモリ423(第1のメモリ)には、プロセッサ41により実行される自動運転プログラムが格納されている。自動運転プログラムはOTAによって更新可能である。
【0046】
VCIB5は、プロセッサ51と、メモリ52とを含む。メモリ52は、ROM521と、RAM522と、フラッシュメモリ523とを含む。
【0047】
セントラルECU60は、プロセッサ601と、メモリ602とを含む。メモリ602は、ROM602Aと、RAM602Bと、フラッシュメモリ602Cとを含む。個別ECU61は、プロセッサ611と、メモリ612とを含む。メモリ612は、ROM612Aと、RAM612Bと、フラッシュメモリ612Cとを含む。残りの個別ECU62~69についても同様であるため、説明は繰り返さない。
【0048】
個別ECU61~69の構成は基本的に同等であるため、以下では個別ECU61について代表的に説明する。個別ECU61のフラッシュメモリ612C(第2のメモリ)には、個別ECU61のプロセッサ611により実行される制御プログラムが格納されている。この制御プログラムもOTAによって更新可能である。個別ECU61は、当該制御プログラムを用いて、VP9に含まれる各種システムのうちの対応するシステムを制御する。セントラルECU60は、個別ECU61に格納された制御プログラムの更新処理(OTA)を制御する。
【0049】
<管制センタのハードウェア構成>
図4は、管制センタ1の典型的なハードウェア構成を示すブロック図である。管制センタ1は、プロセッサ11と、メモリ12と、入力装置13と、ディスプレイ14と、通信インターフェイス(IF)15とを備える。メモリ12は、ROM121と、RAM122と、データベース123とを含む。
【0050】
プロセッサ11は、管制センタ1の全体的な動作を制御する。メモリ12(ROM121)は、プロセッサ11により実行される、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムを記憶する。入力装置13は、管制センタ1の管理者の入力を受け付ける。入力装置13は、典型的にはキーボード、マウスである。ディスプレイ14は情報を表示する。通信IF15は、車両センタ2および車両3との通信を行うためのインターフェイスである。
【0051】
本実施の形態において、データベース123には、車両3の個別ECU61~69の制御プログラムを格納するための様々な情報(後述する各種バージョン情報)が格納されている。管制センタ1は、データベース123を参照することで、制御プログラムの更新処理で使用される情報をセントラルECU60に提供できる。
【0052】
<プログラムの適合性>
前述のように、本実施の形態では、ADS4の自動運転プログラムはADSメーカによって提供される一方で、個別ECU61の制御プログラムは車両メーカによって提供される。つまり、ADS4の自動運転プログラムと個別ECU61の制御プログラムとが異なる事業者から提供される。そのため、自動運転プログラムの更新タイミングと制御プログラムの更新タイミングとが異なり得る。そうすると、自動運転プログラムと制御プログラムとの組み合わせによっては、当該2種類のプログラムが十分に適合しない可能性がある。その結果、ADS4とVP9(より詳細には個別ECU61の制御プログラムを用いて制御されるVP9内のシステム)とが適切に連携できなくなり得る。
【0053】
そこで、本実施の形態においては、管制センタ1が自動運転プログラムおよび制御プログラムの各々のバージョン情報を取得する。そして、管制センタ1は、別途実施された検証作業の結果、動作保証が得られた当該2種類のプログラムの組み合わせの範囲内で個別ECU61の制御プログラムを更新する。理解を容易にするため、以下、本実施の形態におけるプログラム更新処理の具体例について説明する。
【0054】
図5は、本実施の形態におけるプログラム更新処理の概要を説明するための第1の図である。この例では、ADS4の自動運転プログラムの現在のバージョンが1.00であり、個別ECU61の制御プログラムの現在のバージョンが2.00であるとする。また、ADS4の自動運転プログラムの最新バージョンが1.50であり、個別ECU61の制御プログラムの最新バージョンが3.00であるとする。
【0055】
管制センタ1は、ADS4の自動運転プログラムと個別ECU61の制御プログラムとの適合性に関する検証結果を有する。より詳細に説明すると、車両メーカは、自動運転プログラムのバージョンと制御プログラムのバージョンとの組み合わせ毎に、その組み合わせでVP9の動作に何らかの不具合が生じず、ADS4とVP9とが適切に連携可能かどうか、予め定められた様々な項目について検証作業を実施する。管制センタ1は、車両メーカによる検証結果を車両メーカから取得する。図に示す例では、自動運転プログラムのバージョン1.50と制御プログラムのバージョン2.50との組み合わせまでは検証作業が完了しており、ADS4とVP9とが適切に連携可能との検証結果が得られている。言い換えると、車両メーカは、上記の組み合わせまでは動作保証を行っている。以下、動作保証されたバージョンを「動作保証バージョン」と記載する。動作保証バージョンに関する情報はデータベース123(図4参照)に格納されている。
【0056】
ADS4の自動運転プログラムおよび個別ECU61の制御プログラムの各々を最新バージョンまで更新することも考えられる。この例では、自動運転プログラムをバージョン1.00から1.50に更新するとともに、制御プログラムをバージョン2.00から3.00に更新することも考えられる。しかしながら、動作保証バージョンを超過するバージョンについては検証作業が完了していないので、最新バージョンへの更新が行われた場合、ADS4とVP9とが適切に連携できない可能性がある。
【0057】
本実施の形態においては、管制センタ1は、個別ECU61の制御プログラムを最新バージョンまでは更新せず、動作保証バージョンまでの更新に留める。この例では、管制センタ1は、個別ECU61の制御プログラムをバージョン2.00から2.50までしか更新しない。一方、ADS4の自動運転プログラムについては最新バージョン(1.50)まで動作保証が得られているので、バージョン1.00から1.50への更新が行われる。
【0058】
図6は、本実施の形態におけるプログラム更新処理の概要を説明するための第2の図である。この例は、個別ECU61の制御プログラムの動作保証バージョンが2.50に代えて2.00である点において、図にて説明した例と異なる。つまり、この例では、制御プログラムについては現在のバージョンまでしか動作保証が得られていない。この場合、管制センタ1は、個別ECU61の制御プログラムについては現在のバージョンのまま更新しない。一方、ADS4の自動運転プログラムについては最新バージョンへの更新が行われる。
【0059】
<処理シーケンス>
図7は、プログラム更新処理において、制御プログラムのバージョン情報を取得するまでの処理の流れを示すシーケンス図である。このシーケンス図は、予め定められた条件成立時(たとえば管制センタ1が新たな制御プログラムを提供可能な場合)に実行される。図中、左から右に順に、管制センタ1により実行される処理、VCIB5により実行される処理、セントラルECU60により実行される処理、ADS4により実行される処理を示す。
【0060】
なお、図7のシーケンス図に含まれる各シーケンスは、管制センタ1、車両センタ2または車両3(ECU6もしくはVCIB5)によるソフトウェア処理により実現されるが、ハードウェア(電気回路)により実現されてもよい。後述する図8のシーケンス図に関しても同様である。以下、シーケンスをSQと略す。
【0061】
SQ11において、管制センタ1は、車両メーカによる検証結果に基づく動作保証バージョン情報を車両メータから取得してデータベース123に格納する。動作保証バージョン情報の取得先は車両メーカに特に限定されず、たとえばADSメーカであってもよいし、車両メーカともADSメーカとも異なる第3者機関(適合性に関する検査機関、認証機関など)であってもよい。
【0062】
SQ12において、管制センタ1は、ADS4の自動運転プログラムの現在のバージョン(フラッシュメモリ423に格納された自動運転プログラムのバージョン)と、個別ECU61~69の各々の制御プログラムの現在のバージョン(フラッシュメモリ602C~692Cに格納された制御プログラムのバージョン)とに関する情報を通信IF15経由でVCIB5に要求する。以下、これらのバージョン情報を「現バージョン情報」とも記載する。
【0063】
VCIB5は、管制センタ1から要求を受けると、ADS4の自動運転プログラムの現バージョン情報をADS4に要求する(図示せず)とともに、各個別ECU61~69の制御プログラムの現バージョン情報をセントラルECU60に要求する(SQ13)。
【0064】
ADS4は、VCIB5からの要求に応答して、自動運転プログラムの現バージョン情報をVCIB5に出力する(SQ14)。同様に、セントラルECU60は、VCIB5からの要求に応答して、各個別ECU61~69の制御プログラムの現バージョン情報をVCIB5に出力する(SQ15)。これにより、すべてのプログラムの現バージョン情報がVCIB5に収集される。なお、VCIB5は、管制センタ1からの要求の有無に拘わらず、たとえば定期的に現バージョン情報を収集してもよい。
【0065】
SQ16において、VCIB5は、収集された自動運転プログラムの現バージョン情報および制御プログラムの現バージョン情報をDCM7経由で管制センタ1に送信する。管制センタ1は、VCIB5から上記2つの現バージョン情報を取得すると、取得された現バージョン情報をデータベース123に格納する(SQ17)。
【0066】
図8は、プログラム更新処理において、制御プログラムのバージョン情報を取得してから制御プログラムを更新するまでの処理の流れを示すシーケンス図である。このシーケンス図は、図7に示したシーケンス図の実行後に実行される。図中、左から右に順に、管制センタ1により実行される処理、車両センタ2により実行される処理、車両3(セントラルECU60)により実行される処理を示す。
【0067】
SQ21において、管制センタ1は、データベース123に格納された現バージョン情報と動作保証バージョン情報とを比較し、動作保証が得られた範囲内のどのバージョンまで制御プログラムを更新するかを決定する。図4および図5にて説明したように、管制センタ1は、動作保証が得られた範囲内で最新バージョンに最も近いバージョンまで制御プログラムを更新すると決定することが望ましい。
【0068】
SQ22において、管制センタ1は、SQ21にて決定されたバージョンへの制御プログラムの更新の可否を車両センタ2に問い合わせる。問合せを受けた車両3の運行管理者は、更新を許諾する操作(たとえば「更新」アイコンの押下操作)をキーボード、マウス等の入力装置(図示せず)に対して行う(SQ23)。そうすると、運行管理者が制御プログラムの更新を許諾した旨が車両センタ2から管制センタ1へと通知される。なお、運行管理者が更新を拒否した場合(たとえば運行管理者が「いいえ」アイコンを押下操作した場合)、そのことが管制センタ1に通知され、以降の更新処理は実行されない。
【0069】
SQ24において、管制センタ1は、SQ21にて決定されたバージョン(=運行管理者の許諾が得られたバージョン)の制御プログラムを車両3に送信する。セントラルECU60は、個別ECU61の制御プログラムの更新処理を実行する。すなわち、セントラルECU60は、管制センタ1から制御プログラムを受信(ダウンロード)して個別ECU61のフラッシュメモリ612Cに格納(インストール)する。そして、セントラルECU60は、インストールされた制御プログラムを適切なタイミングで有効化(アクティベート)する。個別ECU61の制御プログラムの更新処理が正常に完了すると、セントラルECU60は、そのことを管制センタ1および車両センタ2に通知する(SQ26)。
【0070】
以上のように、本実施の形態においては、個別ECU61~69に格納された制御プログラムをOTAにより更新する際に、単に最新バージョンに更新するのに代えて、車両メーカ等により動作保証が得られたバージョン(動作保証バージョン)への更新に留める。自動運転プログラムと制御プログラムとの動作保証バージョンの組み合わせに関しては、車両メーカ等による検証作業の結果、自動運転プログラムと制御プログラムとが十分に適合することが確認されている。よって、本実施の形態によれば、VP9とADS4とを不具合なく適切に連携させることができる。
【0071】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0072】
100 車両管理システム、1 管制センタ、11 プロセッサ、12 メモリ、121 ROM、122 RAM,123 データベース、13 入力装置、14 ディスプレイ、15 通信IF、2 車両センタ、3,3A,3B,3C 車両、4 自動運転システム(ADS)、5 車両制御インターフェイスボックス(VCIB)、6 電子制御ユニット(ECU)、60 セントラルECU、61~69 個別ECU、41,51,601,611 プロセッサ、42,52,602,612 メモリ、421,521,602A~612A ROM、422,522,602B~612B RAM、423,523,602C~612C フラッシュメモリ、7 DCM、8 センサ群、9 車両プラットフォーム(VP)、91 ブレーキシステム、92 ステアリングシステム、93 パワートレーンシステム、94 アクティブセーフティシステム、95 ボディシステム、NW ネットワーク。
図1
図2
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図7
図8