(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ARグラス
(51)【国際特許分類】
G09G 5/10 20060101AFI20241008BHJP
G09G 3/36 20060101ALI20241008BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20241008BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20241008BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20241008BHJP
G06F 3/0481 20220101ALI20241008BHJP
【FI】
G09G5/10 B
G09G3/36
G09G3/20 641P
G09G3/20 642F
G09G3/20 680A
G09G5/00 550C
G06F3/01 510
G06F3/0481
(21)【出願番号】P 2021201988
(22)【出願日】2021-12-13
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 隆行
【審査官】中村 直行
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-185609(JP,A)
【文献】特開2017-125883(JP,A)
【文献】特開2019-114078(JP,A)
【文献】特表2010-521347(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0113973(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 - 5/42
G06F 3/01
G06F 3/0481
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目前の実景を目視可能に、着用者の視野範囲内に虚像を表示させる表示部と、
外光の透過率を部分的に変更可能な透過率変更部と、
前記透過率変更部のうち前記虚像に対応する部分の外光の透過率を他の部分の外光の透過率よりも低くする制御部と、
を含
み、
前記制御部は、車両が現在位置している国を表す国情報を取得し、着用者が車両の運転者である場合に、前記表示部によって表示される前記虚像を、取得した国情報が表す国に対応する表示制限エリアの外となる位置に表示させるARグラス。
【請求項2】
前記制御部は、着用者が車両の運転者以外の乗員である場合に、着用者が車両の運転者である場合と比べて、前記表示部が表示させる前記虚像の位置、数および種類の少なくとも1つを相違させる請求項1記載のARグラス。
【請求項3】
前記表示部は、互いに優先度の異なる複数種の前記虚像を表示させ、
前記制御部は、前記透過率変更部のうち前記虚像に対応する部分の外光の透過率を、個々の前記虚像の優先度に応じて、個々の前記虚像に対応する部分毎に変更する請求項1または請求項2記載のARグラス。
【請求項4】
前記制御部は、前記透過率変更部のうち着用者の眼部に太陽光線が当たる部分の外光の透過率を、前記虚像の表示の有無に拘わらず低くする請求項1~請求項3の何れか1項記載のARグラス。
【請求項5】
目前の実景を目視可能に、着用者の視野範囲内に虚像を表示させる表示部と、
外光の透過率を全面的に変更可能な透過率変更部と、
前記表示部が前記虚像を表示させる場合の前記透過率変更部の外光の透過率を、前記表示部が前記虚像を表示させていない場合の外光の透過率よりも低くする制御部と、
を含
み、
前記制御部は、車両が現在位置している国を表す国情報を取得し、着用者が車両の運転者である場合に、前記表示部によって表示される前記虚像を、取得した国情報が表す国に対応する表示制限エリアの外となる位置に表示させるARグラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はAR(Augmented Reality:拡張現実)グラスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、目前の風景を目視可能に、虚像により画像情報を提供する表示部を含み、装着者の視野範囲の固定表示領域に車速などの車両情報を表示するヘッドマウントディスプレイが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のヘッドマウントディスプレイを含む従来のARグラス(スマートグラスともいう)は、実景の上に虚像を重畳表示させるため、日射が強い昼間などの状況では、実景の光(外光)に負けて虚像が見えにくくなることがあった。
【0005】
本開示は上記事実を考慮して成されたもので、表示する虚像が外光の影響で見えにくくなることを抑制できるARグラスを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係るARグラスは、目前の実景を目視可能に、着用者の視野範囲内に虚像を表示させる表示部と、外光の透過率を部分的に変更可能な透過率変更部と、前記透過率変更部のうち前記虚像に対応する部分の外光の透過率を他の部分の外光の透過率よりも低くする制御部と、を含んでいる。
【0007】
第1の態様では、外光の透過率を部分的に変更可能な透過率変更部が設けられており、制御部は、透過率変更部のうち表示部に表示された虚像に対応する部分の外光の透過率を他の部分の外光の透過率よりも低くする。これにより、表示部に表示された虚像に対応する部分における外光のうち着用者の眼部に入射される光量が低減されるので、表示する虚像が外光の影響で見えにくくなることを抑制することができる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、前記制御部は、着用者が車両の運転者以外の乗員である場合に、着用者が車両の運転者である場合と比べて、前記表示部が表示させる前記虚像の位置、数および種類の少なくとも1つを相違させる。
【0009】
第2の態様では、ARグラスの着用者が車両の運転者である場合と車両の運転者以外の乗員である場合とで、表示部が表示させる虚像の位置、数および種類の少なくとも1つを相違させる。これにより、着用者が車両の運転者である場合および車両の運転者以外の乗員である場合にそれぞれ適した表示にすることができる。
【0010】
第3の態様は、第1の態様又は第2の態様において、前記表示部は、互いに優先度の異なる複数種の前記虚像を表示させ、前記制御部は、前記透過率変更部のうち前記虚像に対応する部分の外光の透過率を、個々の前記虚像の優先度に応じて、個々の前記虚像に対応する部分毎に変更する。
【0011】
第3の態様では、虚像に対応する部分の外光の透過率を、個々の虚像の優先度に応じて、個々の虚像に対応する部分毎に変更するので、例えば、虚像の優先度が高くなるに従って外光の透過率を低くすることにより、優先度の高い虚像が外光の影響で見えにくくなることをより確実に抑制することが可能となる。
【0012】
第4の態様は、第1の態様~第3の態様の何れかにおいて、前記制御部は、前記透過率変更部のうち着用者の眼部に太陽光線が当たる部分の外光の透過率を、前記虚像の表示の有無に拘わらず低くする。
【0013】
第4の態様では、着用者の眼部に太陽光線が当たる部分の外光の透過率を虚像の表示の有無に拘わらず低くするので、本開示に係るARグラスに防眩の機能を付加することができる。
【0014】
第5の態様に係るARグラスは、目前の実景を目視可能に、着用者の視野範囲内に虚像を表示させる表示部と、外光の透過率を全面的に変更可能な透過率変更部と、前記表示部が前記虚像を表示させる場合の前記透過率変更部の外光の透過率を、前記表示部が前記虚像を表示させていない場合の外光の透過率よりも低くする制御部と、を含んでいる。
【0015】
第5の態様では、外光の透過率を全面的に変更可能な透過率変更部が設けられており、制御部は、表示部が虚像を表示させる場合の透過率変更部の外光の透過率を、表示部が虚像を表示させていない場合の外光の透過率よりも低くする。これにより、表示部によって虚像が表示される場合に、着用者の眼部に入射される外光の光量が低減されるので、表示する虚像が外光の影響で見えにくくなることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示は、表示する虚像が外光の影響で見えにくくなることを抑制することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係るコンテンツ表示システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】ARグラスの外観の一例を示す斜視図である。
【
図3】ARグラスに設けられた液晶パネルを示す概略図である。
【
図5】ARグラス制御部で実行されるARグラス表示制御処理を示すフローチャートである。
【
図6】ARグラスの液晶パネルに対して外光の透過率を制御している状態を示す概略図である。
【
図7】運転者のARグラスにコンテンツを表示している状態の一例を示すイメージ図である。
【
図8】同乗者のARグラスにコンテンツを表示している状態の一例を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本開示の実施形態の一例を詳細に説明する。
図1には実施形態に係るコンテンツ表示システム10が示されている。コンテンツ表示システム10は、車両に搭載された車両側システム50と、車両側システム50が搭載された車両(自車両)に乗車した乗員に着用されるARグラス12と、を含んでいる。ARグラス12は本開示に係るARグラスの一例である。
【0019】
詳細は後述するが、車両側システム50は、ARグラス12に表示させるテキストやマークなどのコンテンツの情報をARグラス12へ提供し、ARグラス12は、車両側システム50から提供されたコンテンツを表示する。なお、本実施形態において、ARグラス12は車両1台につき複数個用意されており、自車両の運転席に着座した乗員(以下、運転者という)に着用されると共に、自車両の運転席以外の座席に着座した乗員(以下、同乗者という)にも着用される。
【0020】
ARグラス12は、ARグラス制御部14、車内無線通信部24、表示部26、モノクロの液晶パネル28、周辺撮影カメラ30、スピーカ32およびマイク34を含んでおり、これらは内部バス36を介して相互に通信可能に接続されている。車内無線通信部24は車両側システム50と近距離の無線通信を行う。
【0021】
図2に示すように、ARグラス12は、左右のテンプル40L,40Rの基部が取り付けられたフレーム42に、光透過性を有する左右のグラス部44L,44Rが取り付けられている。表示部26は、例えば、左右のテンプル40L,40Rの基部付近に埋設されており、目前の実景を目視可能に、ARグラス12の着用者の視野範囲内に虚像を表示させる。
【0022】
すなわち、表示部26は、ARグラス12に表示させるコンテンツに応じて変調した虚像表示光(
図3参照)を、グラス部44L,44Rの内側の面(ARグラス12を着用した乗員の眼部と対向する面)へ照射することで、コンンテンツを表示可能とされている。これにより、ARグラス12を着用した乗員には、グラス部44L,44Rを通じた実視野(例えば車両の前方の実像)の範囲内に、表示部26によって表示されたコンテンツの画像(虚像)が重畳されて視認される。
【0023】
なお、ARグラス12を通じた実視野は、自車両の幅方向に、自車両のAピラーやサイドウインドウを含む範囲に及んでおり、表示部26は自車両のAピラーやサイドウインドウに対応する位置にもコンテンツの画像(虚像)を表示可能とされている。
【0024】
図3に示すように、液晶パネル28は、グラス部44L,44Rの外側の面に貼付されている。液晶パネル28は、グラス部44L,44Rの外側の面から液晶パネル28およびグラス部44L,44Rを透過してARグラス12を着用した乗員の眼部に入射される光(外光)の透過率を部分的に変更可能とされている。液晶パネル28は本開示における透過率変更部の一例である。
【0025】
ARグラス制御部14は、CPU(Central Processing Unit)16と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などのメモリ18と、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶部20と、を含んでいる。記憶部20には、ARグラス制御プログラム22が予め記憶されている。ARグラス制御部14は、ARグラス制御プログラム22が記憶部20から読み出されてメモリ18に展開され、メモリ18に展開されたARグラス制御プログラム22がCPU16によって実行されることで、
図4に示す制御部46として機能する。制御部46は、後述するARグラス表示制御処理を行うことで、液晶パネル28のうち表示部26によって虚像が表示されている部分に対応する部分の外光の透過率を、他の部分の外光の透過率よりも低くする。
【0026】
グラス部44L,44Rの外側の面には、ARグラス12を着用した乗員の視界を遮らない位置に、ARグラス12の前方を撮影する一対の周辺撮影カメラ30が取り付けられている。また、テンプル40L,40Rのうち、ARグラス12が乗員に着用された状態で乗員の耳部に対応する位置には一対のスピーカ32が設けられている。ARグラス制御部14は必要に応じてスピーカ32から音声を出力させる。
【0027】
ARグラス制御部14は、マイク34と共に、例えばフレーム42に内蔵されており、例えばテンプル40L,40Rには、バッテリ(図示省略)が内蔵され給電ジャック(図示省略)が設けられている。なお、ARグラス制御部14、マイク34、バッテリおよび給電ジャックの配置位置は上記に限定されるものではない。
【0028】
車両側システム50は、車載センサ群52、車外無線通信部54、車内無線通信部56、コンテンツ提供装置58およびHUD(Head Up Display)60を含んでおり、これらはシステムバス62を介して相互に通信可能に接続されている。
【0029】
車載センサ群52は、車両の車速を検出する車速センサと、車両の加速度を検出する加速度センサと、車両の現在位置を検出するGNSS(Global Navigation Satellite System)センサと、を含んでいる。また、車載センサ群52は、車両の周囲に存在する歩行者、他車両などの物体をレーダなどにより検出・監視する周辺監視センサ、自車両の周囲を撮影するカメラなどを含んでいる。
【0030】
車外無線通信部54は、自車両の周囲に存在する他車両や図示しないサーバなどとの無線通信を行う。また、車内無線通信部56は、ARグラス12の車内無線通信部56との近距離の無線通信を行う。
【0031】
コンテンツ提供装置58は、車載センサ群52などから収集した情報に基づき、ARグラス12で虚像として表示させるコンテンツを生成する。また、コンテンツ提供装置58は、生成したコンテンツに対して用途(運転者用か同乗者用か共用か)を設定する。運転者用のコンテンツは、運転者が着用しているARグラス12のみに表示させるコンテンツであり、同乗者用のコンテンツは、同乗者が着用しているARグラス12のみに表示させるコンテンツであり、共用のコンテンツは、運転者が着用しているARグラス12および同乗者が着用しているARグラス12に各々表示させるコンテンツである。
【0032】
さらに、コンテンツ提供装置58は、運転者が着用しているARグラス12に表示させるコンテンツ(運転者用のコンテンツおよび共用のコンテンツ)に対し、表示の優先度を各々設定する。そしてコンテンツ提供装置58は、運転者が着用しているARグラス12からコンテンツが要求された場合は、運転者用のコンテンツおよび共用のコンテンツを要求元のARグラス12へ提供する。また、コンテンツ提供装置58は、同乗者が着用しているARグラス12からコンテンツが要求された場合は、同乗者用のコンテンツおよび共用のコンテンツを要求元のARグラス12へ提供する。
【0033】
コンテンツ提供装置58が生成するコンテンツの一例を挙げると、コンテンツ提供装置58は、例えば、車載センサ群52に含まれる車速センサから車速を取得し、取得した車速を表示する車速表示コンテンツを、例えば、運転者用のコンテンツとして生成する。また、車速は運転者にとって重要度の高い情報であるので、コンテンツ提供装置58は、車速表示コンテンツに対し表示の優先度として比較的高い優先度を設定する。
【0034】
また例えば、コンテンツ提供装置58は、車載センサ群52に含まれるGNSSセンサから自車両の現在位置および方位を取得し、取得した現在位置および方位を地図情報と照合することで、自車両の前方に存在する建物の情報を特定する。そして、コンテンツ提供装置58は、特定した建物の情報を表示する建物情報表示コンテンツを、例えば共用のコンテンツとして生成する。なお、自車両の前方に存在する建物の情報は、運転者にとって車速よりも重要度の低い情報であるので、コンテンツ提供装置58は、建物情報表示コンテンツに対し、表示の優先度として車速表示コンテンツよりも低い優先度を設定する。
【0035】
また例えば、コンテンツ提供装置58は、車載センサ群52に含まれる周辺監視センサから自車両の周囲に存在する他車両の情報を取得し、車載センサ群52に含まれるカメラから取得した前記他車両の画像に対してパターンマッチングなどを行うことで、自車両の周囲に存在する他車両の車名などを特定する。そして、コンテンツ提供装置58は、特定した他車両の車名などを表示する他車両情報表示コンテンツを、例えば共用のコンテンツとして生成する。なお、自車両の周囲に存在する他車両の情報は、運転者にとって車速よりも重要度の低い情報であるので、コンテンツ提供装置58は、他車両情報表示コンテンツに対し、表示の優先度として車速表示コンテンツよりも低い優先度を設定する。
【0036】
なお、上述した各コンテンツは、コンテンツ提供装置58が生成するコンテンツの一例に過ぎない。例えば、コンテンツ提供装置58は、車載センサ群52に含まれる周辺監視センサによって検出される自車両と歩行者、他車両との距離が所定値以下になったなどの場合に、「歩行者 注意!」などのコンテンツを、例えば運転者用のコンテンツとして生成するようにしてもよい。
【0037】
また、コンテンツ提供装置58は、例えば、自車両が走行している目的地までのルートのうち、交差点を曲がる箇所に自車両が差し掛かっているなどの場合に、「この先 右折!」などのコンテンツ、例えば運転者用のコンテンツとして生成するようにしてもよい。また、コンテンツ提供装置58は、例えば、自車両が目的地に間もなく到着するなどの場合に、「目的地 すぐ!」などのコンテンツを、例えば運転者用のコンテンツとして生成するようにしてもよい。
【0038】
また、コンテンツ提供装置58は、例えばカーナビゲーション装置と連携し、カーナビゲーション装置に対して目的地が設定された場合に、図示しないサーバから目的地の天気情報などを受信し、「名古屋 晴天!」などのコンテンツを、例えば共用のコンテンツとして生成するようにしてもよい。
【0039】
また、コンテンツ提供装置58は、例えば同乗者からのリクエストなどに応じて、映画などの映像コンテンツを、例えば同乗者用コンテンツとして生成(再生)するようにしてもよい。
【0040】
次に本実施形態の作用として、
図5を参照し、ARグラス12の電源がオンされている間、ARグラス12で行われるARグラス表示制御処理について説明する。
【0041】
ARグラス表示制御処理のステップ100において、制御部46は、周辺撮影カメラ30によって撮影されたARグラス12の前方の画像(周辺撮影画像)を周辺撮影カメラ30から取得する。ステップ102において、制御部46は、ステップ100で取得した周辺撮影画像の中に輝度が閾値以上の高輝度領域が存在するか否かに基づいて、ARグラス12を着用している着用者の眼部にARグラス12を通じて太陽光線(所定光量以上の外光)が入射しているか否かを判定する。
【0042】
周辺撮影画像の中に高輝度領域が存在していた場合には、ステップ102の判定が肯定されてステップ104へ移行する。ステップ104において、制御部46は、液晶パネル28のうち周辺撮影画像の中の高輝度領域に対応する部分、すなわち所定光量以上の外光が入射している部分における外光の透過率を低下させる(
図6に符号「70」で示す部分も参照)。これにより、ARグラス12を通じて着用者の眼部に入射する外光の光量が低減されることで、着用者の眩しさが軽減される。なお、ステップ102の判定が否定された場合はステップ104をスキップする。
【0043】
次のステップ106において、制御部46は、ARグラス12の着用者が運転席に着座している運転者か否か判定する。ステップ106の判定は、一例として、ステップ100で取得した周辺撮影画像中の所定の位置に、ステアリングホイールやメータなどに対応する画像領域が存在しているか否かを判断することで行うことができる。ステップ106の判定が肯定された場合はステップ108へ移行する。
【0044】
ステップ108において、制御部46は、車両側システム50のコンテンツ提供装置58に対し、運転者のARグラス12に表示させる運転者用のコンテンツおよび共用のコンテンツを要求し、これらのコンテンツの情報をコンテンツ提供装置58から取得する。
【0045】
ステップ110において、制御部46は、ステップ108で取得したコンテンツの情報の中からコンテンツの情報を1つ取り出す。ステップ112において、制御部46は、ステップ110で情報を取り出したコンテンツを、当該コンテンツの優先度に従い必要に応じて加工した上で、表示部26により、予め設定された表示制限エリア74(
図7参照)の外となる表示位置に虚像として表示させる。
【0046】
表示制限エリア74は、
図7に示すように、運転者の実視野の範囲内のうち、運転時に運転者が頻繁に目視する物体(例えば道路、他車両、歩行者など)が存在するエリアを含むエリアに設定されている。このため、コンテンツの表示位置を表示制限エリア74の外にすることにより、例として
図7に示す車速表示コンテンツ76、建物情報表示コンテンツ78および他車両情報表示コンテンツ80が、運転者による運転の妨げになることが抑制される。
【0047】
なお、表示制限エリア74は、例えば国毎に相違していてもよい。この場合、制御部46は、自車両が現在位置している国を表す国情報を車両側システム50から取得し、取得した国情報が表す国に対応する表示制限エリア74を適用する処理を行うようにしてもよい。
【0048】
また、本実施形態では、
図7に示す他車両情報表示コンテンツ80の優先度が、車速表示コンテンツ76の優先度よりも低く設定されている。このため、本実施形態では、運転者のARグラス12に表示させる他車両情報表示コンテンツ80を、その優先度に従い加工(同乗者のARグラス12に表示させる他車両情報表示コンテンツ84(
図8参照)よりも表示を簡素化)して表示している。なお、
図7では、他車両情報表示コンテンツ80の表示の簡素化を、テキストのフォントサイズの縮小およびテキストを修飾する吹き出しの省略によって実現している。これにより、他車両情報表示コンテンツ80が運転者による運転の妨げになることが抑制される。
【0049】
ステップ114において、制御部46は、ARグラス12の液晶パネル28のうち、ステップ112で虚像として表示させたコンテンツに対応する部分の外光の透過率を、虚像として表示させたコンテンツの優先度に応じて低下させる(
図6に符号「72」で示す部分も参照)。具体的には、制御部46は、コンテンツの優先度が高くなるに従って、液晶パネル28の対応する部分の外光の透過率を低くする。
【0050】
例えば、
図7では、液晶パネル28のうち、車速表示コンテンツ76に対応する部分の外光の透過率を、建物情報表示コンテンツ78および他車両情報表示コンテンツ80に対応する部分の外光の透過率よりも低くしている。これにより、日射が強い昼間などの状況で、外光に負けて虚像(コンテンツ)が見えにくくなることを抑制することができる。また、優先度の高い虚像(コンテンツ)が外光の影響で見えにくくなることをより確実に抑制することができる。
【0051】
ステップ116において、制御部46は、ステップ108で取得したコンテンツの情報から全てのコンテンツの情報を取り出したか否か判定する。ステップ116の判定が否定された場合はステップ110へ戻り、ステップ116の判定が肯定される迄、ステップ110~ステップ116を繰り返す。これにより、運転者のARグラス12は、一例として
図7に示すように、車速表示コンテンツ76、建物情報表示コンテンツ78および他車両情報表示コンテンツ80などが虚像として表示された表示状態になる。そして、ステップ116の判定が肯定されるとステップ128へ移行する。
【0052】
一方、ステップ106において、ARグラス12の着用者が同乗者である場合には、ステップ106の判定が否定されてステップ118へ移行する。ステップ118において、制御部46は、車両側システム50のコンテンツ提供装置58に対し、同乗者のARグラス12に表示させる同乗者用のコンテンツおよび共用のコンテンツを要求し、これらのコンテンツの情報をコンテンツ提供装置58から取得する。
【0053】
ステップ120において、制御部46は、ステップ118で取得したコンテンツの情報の中からコンテンツの情報を1つ取り出す。ステップ122において、制御部46は、ステップ110で情報を取り出したコンテンツを、表示部26によりARグラス12に虚像として表示させる。なお、同乗者用のARグラス12では、着用者(同乗者)が車両の運転を行わないので、本実施形態では表示制限エリア74が設定されておらず、コンテンツの表示位置は表示制限エリア74と無関係に設定され、コンテンツの表示の簡素化も行われない。
【0054】
ステップ124において、制御部46は、ARグラス12の液晶パネル28のうち、ステップ122で虚像として表示させたコンテンツに対応する部分の外光の透過率を低下させる。これにより、日射が強い昼間などの状況で、外光に負けて虚像(コンテンツ)が見えにくくなることを抑制することができる。なお、本実施形態において、同乗者用のARグラス12では、虚像として表示させたコンテンツに対応する部分の外光の透過率を全て一律に低下させる。
【0055】
ステップ126において、制御部46は、ステップ118で取得したコンテンツの情報から全てのコンテンツの情報を取り出したか否か判定する。ステップ126の判定が否定された場合はステップ120へ戻り、ステップ126の判定が肯定される迄、ステップ120~ステップ126を繰り返す。これにより、同乗者のARグラス12は、一例として
図8に示すように、建物情報表示コンテンツ82および他車両情報表示コンテンツ84などが虚像として表示された状態になる。
図8を
図7と比較しても明らかなように、本実施形態では、運転者のARグラス12と同乗者のARグラス12とで、表示させる虚像(コンテンツ)の位置、数および種類を各々相違させている。そして、ステップ126の判定が肯定されるとステップ128へ移行する。
【0056】
ステップ128において、制御部46は、ARグラス12の電源がオフされたなどにより、ARグラス12にコンテンツを虚像として表示させる処理を終了するか否かを判定する。ステップ128の判定が否定された場合はステップ100に戻り、ステップ100以降の処理を繰り返す。また、ステップ128の判定が肯定された場合はARグラス表示制御処理を終了する。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係るARグラス12は、目前の実景を目視可能に、着用者の視野範囲内に虚像を表示させる表示部26と、外光の透過率を部分的に変更可能な液晶パネル28と、を含んでいる。そして制御部46は、液晶パネル28のうち前記虚像に対応する部分の外光の透過率を他の部分の外光の透過率よりも低くする。これにより、表示部26に表示された虚像に対応する部分における外光のうち着用者の眼部に入射される光量が低減されるので、表示する虚像が外光の影響で見えにくくなることを抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態において、制御部46は、ARグラス12の着用者が同乗者である場合に、ARグラス12の着用者が運転者である場合と比べて、表示部26が表示させる前記虚像の位置、数および種類を相違させている。これにより、ARグラス12の着用者が運転者である場合および同乗者である場合にそれぞれ適した表示にすることができる。
【0059】
また、本実施形態において、表示部26は、互いに優先度の異なる複数種の前記虚像を表示させ、制御部46は、液晶パネル28のうち前記虚像に対応する部分の外光の透過率を、個々の前記虚像の優先度に応じて、個々の前記虚像に対応する部分毎に変更する。これにより、優先度の高い虚像が外光の影響で見えにくくなることをより確実に抑制することが可能となる。
【0060】
また、本実施形態において、制御部46は、液晶パネル28のうち着用者の眼部に太陽光線が当たる部分の外光の透過率を、前記虚像の表示の有無に拘わらず低くする。これにより、ARグラス12の着用者の眩しさ感じることを軽減することができる。
【0061】
なお、上記の実施形態では、ARグラス12の着用者が同乗者である場合に、ARグラス12の着用者が運転者である場合と比べて、表示部26が表示させる虚像(コンテンツ)の位置、数および種類を各々相違させる態様を説明した。しかし、本開示はこれに限定されるものではなく、ARグラス12の着用者が同乗者である場合に、ARグラス12の着用者が運転者である場合と比べて相違させるパラメータを、虚像(コンテンツ)の位置、数および種類の少なくとも1つとしてもよい。
【0062】
また、上記の実施形態では、ARグラス12に一旦表示したコンテンツの消去について特に説明していないが、例えば、ARグラス12を着用している乗員の眼部を撮影して乗員の視線を検出する視線カメラをARグラス12に設け、例えば乗員が所定時間以上視認したコンテンツ(特に優先度の低いコンテンツ)は表示を消去するようにしてもよい。
【0063】
また、上記の実施形態では、運転者のARグラス12に表示させるコンテンツの優先度をコンテンツ提供装置58が設定する態様を説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、コンテンツの優先度はARグラス12側で設定するようにしてもよい。
【0064】
また、上記の実施形態では、同乗者のARグラス12については虚像として表示するコンテンツに優先度を設定せず、液晶パネル28のうち虚像として表示したコンテンツに対応する部分の外光の透過率を全て一律に低下させる態様を説明した。しかし、本開示はこれに限定されるものではなく、同乗者のARグラス12についても、虚像として表示するコンテンツに優先度を設定し、液晶パネル28のうち各コンテンツに対応する部分の外光の透過率をコンテンツの優先度に応じて低下させるようにしてもよい。
【0065】
さらに、上記の実施形態では、透過率変更部の一例として、外光の透過率を部分的に変更可能な液晶パネル28を用いた態様を説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、透過率変更部は外光の透過率を全面的に変更可能な構成であってもよい。これにより、透過率変更部を、外光の透過率を部分的に変更可能な構成にする場合と比較して、透過率変更部を低コストに構成することができる。そして、この場合、制御部46を、表示部26が虚像を表示させる場合の透過率変更部の外光の透過率を、表示部26が虚像を表示させていない場合の外光の透過率よりも低くする構成とすることで、表示する虚像が外光の影響で見えにくくなることを抑制することができる。
【0066】
また、上記の実施形態ではARグラス制御プログラム22が記憶部20に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、ARグラス制御プログラム22はHDD、SSD、DVD等の非一時的記録媒体に記録されている形態で提供することも可能である。
【符号の説明】
【0067】
12 ARグラス
14 ARグラス制御部
26 表示部
28 液晶パネル
30 周辺撮影カメラ
46 制御部
50 車両側システム
58 コンテンツ提供装置
74 表示制限エリア
76 車速表示コンテンツ
78 建物情報表示コンテンツ
80 他車両情報表示コンテンツ
82 建物情報表示コンテンツ
84 他車両情報表示コンテンツ