(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】織機における支持体の固定装置
(51)【国際特許分類】
D03D 49/60 20060101AFI20241008BHJP
D03D 47/30 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
D03D49/60
D03D47/30
(21)【出願番号】P 2021209840
(22)【出願日】2021-12-23
【審査請求日】2024-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】八木 大輔
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-201864(JP,A)
【文献】特開平10-60755(JP,A)
【文献】特開平7-173742(JP,A)
【文献】特開昭52-6185(JP,A)
【文献】実開平6-3536(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 49/60
D03D 47/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スレイの前面に開口する前面開口部、及び前記前面開口部より後面側に位置する溝を有するT溝に挿入され、前記溝に配置されるT形頭部、前記T形頭部から延びる軸部、及び、前記軸部の先端に形成されたねじ部を有する締結部材と、
支持対象を支持する支持体であって、厚さ方向の一面に前記前面に対向する対向面を有するとともに、前記支持体を厚さ方向に貫通する貫通孔を有する前記支持体と、を備え、
前記T形頭部が前記前面開口部を通じて前記溝に挿入されるとともに、前記対向面を前記前面に対向させた前記支持体の前記貫通孔を前記ねじ部が貫通した状態で前記締結部材を係合方向へ一定角度回転させることにより、前記T形頭部を前記溝の上壁及び下壁に係合させた係合状態とし、
前記ねじ部をナットで締め付けることにより、前記支持体と前記T形頭部で前記スレイを挟み込んで前記スレイに前記支持体を固定する織機における支持体の固定装置であって、
前記締結部材は、前記軸部の径方向に突出する突起を有し、
前記支持体は、
前記係合状態における前記突起と係合して前記T形頭部が前記係合方向と反対方向へ回転することを規制する規制面と、
前記対向面と前記規制面とを繋ぐ案内面と、を有し、
前記案内面は、前記ねじ部を前記ナットで締め付けるときに、前記T形頭部を前記係合方向に回転させるように前記突起を案内することを特徴とする織機における支持体の固定装置。
【請求項2】
前記案内面は、前記貫通孔の中心軸線周りを螺旋状に延びる螺旋面であることを特徴とする請求項1に記載の織機における支持体の固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機における支持体の固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、エアジェット織機では、サブノズルやケーブル等の複数の部品は、支持体に支持されている。支持体は、締結部材によってスレイに固定されている。例えば、特許文献1には、支持体をスレイに固定する織機における支持体の固定装置が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示の支持体の固定装置において、締結部材は、T形頭部と、T形頭部から延びる軸部と、軸部の先端に形成された螺子部と、を有する。また、締結部材は、軸部の半径方向に突出する突起を軸部に有する。締結部材の軸部は、支持体の貫通孔に挿通される。
【0004】
支持体の固定装置において、締結部材のT形頭部は、スレイのT溝の前面開口部に挿入される。締結部材を回転させると、T形頭部は、T溝の上壁及び下壁に係合する。支持体の貫通孔を貫通した軸部は、ナットによって締め付けられる。すると、支持体はスレイに固定される。
【0005】
突起は、貫通孔を画定する規制面に係合する。この係合により、T形頭部の前面開口部から外れる方向への回転が規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された支持体の固定装置において、T形頭部は、当該T形頭部の長手をT溝の長手に一致させて前面開口部に挿入される。その後、T形頭部をT溝に係合させるため、締結部材は回転される。このとき、締結部材と共に支持体も回転させる必要がある。このため、支持体をスレイに固定する際に、支持体がスレイ上に固定された他の部品と干渉する虞がある。そのため、支持体をスレイに固定する作業は、既に取り付けられた他の部品との干渉を避けて行う必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための織機における支持体の固定装置は、スレイの前面に開口する前面開口部、及び前記前面開口部より後面側に位置する溝を有するT溝に挿入され、前記溝に配置されるT形頭部、前記T形頭部から延びる軸部、及び、前記軸部の先端に形成されたねじ部を有する締結部材と、支持対象を支持する支持体であって、厚さ方向の一面に前記前面に対向する対向面を有するとともに、前記支持体を厚さ方向に貫通する貫通孔を有する前記支持体と、を備え、前記T形頭部が前記前面開口部を通じて前記溝に挿入されるとともに、前記対向面を前記前面に対向させた前記支持体の前記貫通孔を前記ねじ部が貫通した状態で前記締結部材を係合方向へ一定角度回転させることにより、前記T形頭部を前記溝の上壁及び下壁に係合させた係合状態とし、前記ねじ部をナットで締め付けることにより、前記支持体と前記T形頭部で前記スレイを挟み込んで前記スレイに前記支持体を固定する織機における支持体の固定装置であって、前記締結部材は、前記軸部の径方向に突出する突起を有し、前記支持体は、前記係合状態における前記突起と係合して前記T形頭部が前記係合方向と反対方向へ回転することを規制する規制面と、前記対向面と前記規制面とを繋ぐ案内面と、を有し、前記案内面は、前記ねじ部を前記ナットで締め付けるときに、前記T形頭部を前記係合方向に回転させるように前記突起を案内することを要旨とする。
【0009】
これによれば、ナットの締め付けに伴い、突起が案内面によって案内され、T形頭部が係合方向へ回転する。そして、突起は、案内面から離れると、規制面に接触する。突起と規制面の接触は、係合方向と反対方向への締結部材の回転を規制する。したがって、締結部材は係合状態になる。よって、ねじ部をナットで締め付けるだけで、支持体を変位させることなく、T形頭部だけを変位させて係合状態にすることができる。このため、例えば、部品を新たにスレイに取り付ける際であっても、既に取り付けられた他の部品に支持体が干渉することがないため、他の部品の取付位置をずらす必要がない。したがって、支持体をスレイに固定する作業の作業性を向上させることができる。
【0010】
支持体の固定装置について、前記案内面は、前記貫通孔の中心軸線周りを螺旋状に延びる螺旋面であってもよい。
これによれば、例えば、案内面がテーパ面である場合に比べて、突起を滑らかに案内することができる。そのため、突起が案内面に摺接する際の突起に加わる力が大きくなりにくい。したがって、案内面が突起を案内する際の信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、支持体をスレイに固定する作業の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】支持体がスレイに固定されている状態を示す正面図である。
【
図8】締結部材及び支持体の締結状態を示す模式図である。
【
図9】締結部材及び支持体の締結状態を示す模式図である。
【
図10】締結部材及び支持体の締結状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、織機における支持体の固定装置をエアジェット織機における支持体の固定装置に具体化した一実施形態を
図1~
図10にしたがって説明する。なお、本願明細書においては、
図2の右側を後、左側を前とし、上側及び下側をそれぞれ上、下として説明する。
【0014】
<エアジェット織機>
図1及び
図2に示すように、エアジェット織機10は、筬11と、スレイ20と、図示しない緯入れ用のメインノズルと、複数の緯入れ用のサブノズル12と、を有する。筬11と、図示しない緯入れ用のメインノズルと、複数の緯入れ用のサブノズル12とは、スレイ20に固定されている。また、エアジェット織機10には、ケーブル13が配策されている。
【0015】
また、エアジェット織機10は、ケーブル13を支持する支持体40と、支持体40をスレイ20に固定するための締結部材30と、を有する。エアジェット織機10は、支持体40の固定装置1を備える。支持体40の固定装置1は、支持体40と、締結部材30と、を含む。
【0016】
<スレイ>
スレイ20は、傾斜面21と、T溝22を有する。傾斜面21はスレイ20の前面20a側に位置する。スレイ20は、スレイ20の短手方向における前面20aと反対側に後面20bを有する。また、スレイ20において、筬11が突出する側をスレイ20の上側とし、反対側をスレイ20の下側とする。傾斜面21は、鉛直方向に対して傾斜する平面である。傾斜面21は、スレイ20の長手方向全体に亘って設けられている。T溝22は、傾斜面21にて開口する。T溝22は、スレイ20の長手方向全体に亘って傾斜面21にて開口する。
【0017】
図2及び
図3に示すように、T溝22は、前面開口部22aと、溝22bと、を有する。T溝22は、スレイ20を長手方向の端から見てT字状である。前面開口部22aは、スレイ20の前面20aに開口する。
【0018】
溝22bは、前面開口部22aよりスレイ20の後面20b側に位置する。溝22bは、上壁23と、下壁24と、上前壁25と、下前壁26と、後壁27と、から形成されている。上壁23と下壁24とは平行である。上前壁25及び下前壁26と、後壁27とは平行である。溝22bの溝幅W1は、上壁23と下壁24とを最短距離で結ぶ直線の長さである。
【0019】
前面開口部22aは、上壁23と下壁24との間の中心位置において、傾斜面21から溝22bに対して直交するように貫通する。前面開口部22aは、上下方向に対向する開口形成面220aの間に画定されている。前面開口部22aの開口幅W2は、対向する開口形成面220a同士を最短距離で結ぶ直線の長さである。開口幅W2は、溝幅W1より小さい。T溝22は、スレイ20の全長に亘って形成されている。
【0020】
<締結部材>
図3、
図4、及び
図5に示すように、締結部材30は、T形頭部31、軸部32、及びねじ部33を有する。締結部材30において、軸部32の延びる方向を軸線方向とする。
【0021】
T形頭部31は、T溝22の前面開口部22aを通過させて溝22bに挿入される。T形頭部31は、軸線方向から見て平行四辺形である。T形頭部31は、一対の短縁31aと、一対の長縁31bと、を有する。一対の長縁31b同士を最短距離で結ぶ直線の長さをT形頭部31の第1長さL1とする。一対の短縁31a同士を最短距離で結ぶ直線の長さを、T形頭部31の第2長さL2とする。
【0022】
T形頭部31の第1長さL1は、前面開口部22aの開口幅W2よりも僅かに短い。これにより、T形頭部31は、前面開口部22aに挿入可能である。そして、T形頭部31が前面開口部22aを通じて溝22bに挿入された位置を締結部材30の挿入位置とする。
【0023】
T形頭部31の第2長さL2は、前面開口部22aの開口幅W2よりも長く、かつ溝22bの溝幅W1よりも僅かに短い。これにより、T形頭部31がT溝22の溝22b内に挿入された後、軸部32の軸心を回転中心として所定の角度回転すると、一方の短縁31aが上壁23に係合するとともに、他方の短縁31aが下壁24に係合する。つまり、T形頭部31が係合状態となる。T形頭部31が溝22bの内面に係合する状態を係合状態とする。また、T形頭部31を溝22bの内面に係合させて、係合状態とするために締結部材30を回転させる方向を係合方向R1とする。
【0024】
軸部32は、T形頭部31から延びる。軸部32の直径は、開口幅W2より僅かに小さい。このため、軸部32は、前面開口部22aを通過可能である。軸部32は、2つの突起34を有する。2つの突起34の各々は、軸部32の外周面から軸部32の径方向に突出する。したがって、締結部材30は、軸部32の径方向に突出する突起34を有する。2つの突起34の各々は、締結部材30の軸線方向に長手が延びる薄板状である。2つの突起34の各々は、締結部材30の軸線方向において、T形頭部31とねじ部33との間に配置されている。2つの突起34の各々は、短縁31aに対し直交するように軸部32から突出している。2つの突起34は、軸部32を挟んで反対側に配置されている。締結部材30を軸線方向に見た場合、長縁31bは、突起34に対して傾斜している。2つの突起34の各々は、長手方向の両端のうち、ねじ部33に近い端縁に接触縁34aを有する。接触縁34aは、後述する。
【0025】
ねじ部33は、軸部32の先端に形成されている。ねじ部33には、ナット35がねじ込み可能になっている。
<支持体>
図3、
図6、及び
図7に示すように、支持体40は、本体部41と、クランプ部42と、貫通孔50と、を有する。本体部41は、略直方体のブロック状である。
【0026】
支持体40を貫通孔50が貫通する方向を支持体40の厚さ方向X1とする。本体部41は、厚さ方向X1の一方面に前面40aを有するとともに、厚さ方向X1の他方面に後面40bを有する。支持体40は、前面40aを傾斜面21に対向させてスレイ20に固定される。したがって、前面40aは、支持体40の対向面である。
【0027】
クランプ部42は、本体部41の下方に配置されている。クランプ部42は、2つの挟持部43を有する。挟持部43は、ケーブル13を保持する。これにより、ケーブル13は、支持体40によって支持される。したがって、ケーブル13は、支持体40の支持対象である。挟持部43は、支持体40の後面40b側からケーブル13をクランプするように形成されている。
【0028】
<貫通孔>
図6に示すように、貫通孔50は、支持体40の本体部41を貫通している。貫通孔50の直径は、締結部材30の軸部32、及びねじ部33の直径より僅かに大きい。貫通孔50は、中心軸線A1を中心とし、かつ半径Rの第1仮想円C1に沿う孔である。第1仮想円C1の周方向を支持体40の周方向とする。
【0029】
<規制面>
支持体40は、2つの規制面52を有する。2つの規制面52の各々は、貫通孔50に繋がる面である。2つの規制面52の各々は、支持体40の厚さ方向X1の途中から支持体40の後面40bに至る。2つの規制面52の各々は、支持体40の厚さ方向X1に長手が延びる長四角形状である。2つの規制面52は、貫通孔50の中心軸線A1を挟んでほぼ反対側に位置している。
【0030】
<自由空間>
図6及び
図7に示すように、支持体40は、突起34を変位可能とする2つの自由空間53を有する。自由空間53は、支持体40の周方向に幅を有するとともに、支持体40の厚さ方向X1に延びる空間である。自由空間53は、支持体40の後面40bで開口する。自由空間53は、貫通孔50に連通する空間である。また、2つの自由空間53は、貫通孔50を挟んで径方向に対向する。
【0031】
自由空間53は、規制面52と、第1画定面54と、第2画定面55とによって画定されている。2つの第1画定面54の各々は、支持体40の厚さ方向X1の全長に亘って延びる。2つの第1画定面54の各々は、支持体40の前面40aと後面40bとを繋ぐ。2つの第1画定面54の各々は、支持体40の厚さ方向X1に長手が延びる長四角形状である。2つの第1画定面54は、貫通孔50の中心軸線A1を挟んでほぼ反対側に位置している。規制面52と第1画定面54とは周方向に離れている。
【0032】
2つの第2画定面55の各々は、周方向に隣り合う規制面52と第1画定面54とを繋ぐ。2つの第2画定面55の各々は、支持体40の厚さ方向X1に延びる。支持体40を厚さ方向X1に見て、中心軸線A1を中心とし、かつ2つの第2画定面55を通過する仮想円を第2仮想円C2とする。第2仮想円C2の直径は、第1仮想円C1より大きい。2つの第2画定面55は、貫通孔50の中心軸線A1を挟んでほぼ反対側に位置している。自由空間53は、貫通孔50から外側に凹んだ空間である。
【0033】
<案内面>
支持体40は、2つの案内面51を有する。2つの案内面51の各々は、貫通孔50に繋がる面である。2つの案内面51の各々は、支持体40の前面40aと規制面52を繋ぐ面である。2つの案内面51の各々は、支持体40の前面40aから、支持体40の厚さ方向X1の途中まで延びている。2つの案内面51の各々は、支持体40の前面40aから周方向に沿って厚さ方向X1の中央に向けて延びている。2つの案内面51の各々は、中心軸線A1周りを螺旋状に延びる螺旋面である。
【0034】
各案内面51の第1端51aは、支持体40の前面40aに繋がっている。各案内面51の第2端51bは規制面52に繋がっている。案内面51の第1端51aは、第2端51bに対して貫通孔50の周方向へほぼ90度ずれた位置にある。
【0035】
支持体40は、開放空間56を有する。開放空間56は、支持体40の厚さ方向X1において前面40aから案内面51に至るまでの空間である。また、開放空間56は、自由空間53に連通する。
【0036】
2つの突起34の接触縁34aの各々は、案内面51に接触可能である。また、2つの突起34の各々は、自由空間53に挿入可能である。
<スレイに対する支持体の固定方法及び作用>
以下、スレイ20に対する支持体40の固定方法を作用とともに説明する。なお、
図8、
図9、及び
図10を用いて説明するが、図示する都合上、ナット35を図示していない。
【0037】
まず、作業者は、支持体40の挟持部43にケーブル13を保持させる。次に、作業者は、T形頭部31の長縁31bが前面開口部22aの開口形成面220aと平行になるようにT形頭部31を位置させる。作業者は、締結部材30をスレイ20側に移動させる。T形頭部31は前面開口部22aを通じ、溝22b内に挿入される。このときにT形頭部31が配置される位置を締結部材30の挿入位置とする。
【0038】
図3の二点鎖線に示すように、挿入位置では、T形頭部31の長縁31bは、上壁23及び下壁24に対しほぼ平行である。なお、T形頭部31の挿入位置では、軸部32は、下側の開口形成面220a上に支持される。また、T形頭部31の挿入位置では、一対の突起34は、スレイ20の長手方向へ軸部32からそれぞれ突出している。
【0039】
図8に示すように、次に、作業者は、軸部32及びねじ部33を貫通孔50に挿通するとともに、ねじ部33を支持体40の後面40bから突出させる。このとき、支持体40の挟持部43が本体部41の下方に位置するように配置する。つまり、支持体40は、スレイ20に取り付けられる位置に配置される。このとき、一対の突起34の各々は、開放空間56に対向する。また、一対の突起34は、支持体40の前面40aよりもスレイ20側に位置している。
【0040】
なお、上記では、T形頭部31をT溝22に挿入した後、締結部材30に支持体40を組付けたが、これに限らない。つまり、軸部32及びねじ部33を貫通孔50に挿通するとともに、ねじ部33を支持体40の後面40bから突出させて、締結部材30に支持体40を組付けた後、T形頭部31をT溝22に挿入してもよい。
【0041】
次に、作業者は、支持体40から突出したねじ部33にナット35をねじ込んで、ねじ部33をナット35で締め付ける。すると、締結部材30がナット35に引き寄せられる。このとき、突起34の接触縁34aが案内面51に摺接することにより、締結部材30の軸線方向への直線的な移動の一部が回転に変換される。つまり、ナット35の締め付けに伴い、突起34が案内面51によって案内される。このため、T形頭部31は係合方向R1へ回転していく。また、突起34は開放空間56に配置される。
【0042】
そして、
図10に示すように、締結部材30が一定角度回転した後に、突起34が規制面52に達する。さらに、ねじ部33をナット35で締め付けると、締結部材30は、規制面52に沿って直線的に移動する。その結果、T形頭部31は上前壁25及び下前壁26に近づく。
【0043】
同時に、締結部材30は、案内面51から離れるように締結部材30の軸線方向へ直線的に移動する。このとき、突起34は、案内面51から離れるように自由空間53を移動する。そして、締結部材30が係合状態になると、突起34は、規制面52に隣り合うため、係合方向R1と反対方向への締結部材30の回転が規制される。さらに、ねじ部33をナット35で締め付けると、T形頭部31が、上前壁25と下前壁26に接触する。その結果、T形頭部31と支持体40とでスレイ20が挟み込まれるため、スレイ20に支持体40が固定される。
【0044】
<実施形態の効果>
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)支持体40は、規制面52と、案内面51と、を有する。これによれば、ねじ部33をナット35で締め付けると、締結部材30がナット35に引き寄せられる。このとき、突起34が案内面51に案内されることにより、締結部材30の軸線方向への直線的な移動の一部が回転に変換される。このため、T形頭部31は係合方向R1へ回転していく。
【0045】
そして、締結部材30が一定角度回転した後に、突起34が規制面52に達する。さらに、ねじ部33をナット35で締め付けると、締結部材30は、規制面52に沿って直線的に移動して、T形頭部31はスレイ20に近づく。
【0046】
同時に、締結部材30は、案内面51から離れるように締結部材30の軸線方向へ直線的に移動する。そして、締結部材30が係合状態になると、突起34は、規制面52に隣り合うため、係合方向R1と反対方向への締結部材30の回転が規制される。さらに、ねじ部33をナット35で締め付けると、支持体40とT形頭部31でスレイ20が挟み込まれるため、スレイ20に支持体40が固定される。
【0047】
したがって、支持体40の固定装置1によれば、ねじ部33をナット35で締め付けるだけで、案内面51によって、支持体40を変位させることなく、T形頭部31だけを変位させて係合状態にすることができる。さらに、規制面52によって、係合方向R1と反対方向へ締結部材30が回転することを規制できる。したがって、係合状態を維持できる。
【0048】
このため、例えば、部品を新たにスレイ20に取り付ける際であっても、既に取り付けられた他の部品に支持体40が干渉することがない。そのため、他の部品の取付位置をずらす必要がない。したがって、支持体40をスレイ20に固定する作業の作業性を向上させることができる。
【0049】
(2)案内面51は、貫通孔50の中心軸線A1周りを螺旋状に延びる螺旋面である。これによれば、例えば、案内面51がテーパ面である場合に比べて、突起34の接触縁34aを滑らかに案内することができる。そのため、突起34の接触縁34aが案内面51に摺接する際の突起34に加わる力が大きくなりにくい。したがって、案内面51は、突起34を案内する際の信頼性を向上させることができる。
【0050】
(3)支持体40の固定装置1によれば、ねじ部33をナット35で締め付けるだけで、支持体40を変位させることなく、T形頭部31だけを変位させて係合状態にすることができる。つまり、ねじ部33をナット35で締め付ける作業だけで、T形頭部31を変位させる作業と、T形頭部31の係合方向R1と反対方向への回転を規制する作業と、支持体40をスレイ20に固定する作業を完了できる。したがって、支持体40の固定装置1は、支持体40をスレイ20に固定する作業の作業性を一層向上させる。
【0051】
(4)支持体40は、本体部41の下方にクランプ部42を有する。この支持体40は、貫通孔50からクランプ部42までの寸法が大きい部材である。このような支持体40が中心軸線A1を回転中心として変位すると、その回転半径が大きくなるため、他の部品に干渉しやすい。しかし、支持体40の固定装置1は、支持体40を変位させないため、貫通孔50からクランプ部42までの寸法が大きい支持体40に対して非常に有効である。
【0052】
<変更例>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0053】
○ 案内面51は、前面40aから規制面52にまで延びる螺旋溝であってもよい。この場合、開放空間56は形成されない。また、突起34は、螺旋溝に入り込み可能な柱状とされる。
【0054】
○ 案内面51は、前面40aから規制面52にまで斜めに延びる傾斜面であってもよい。
○ 突起34の形状は、特に限定されない。突起34が案内面51を摺接できるような形状であればよい。
【0055】
○ 締結部材30は、突起34を、1つ有していてもよい。この場合、案内面51は1つだけでもよいし、2つ設けられていてもよい。
○ 支持体40の支持対象は、ケーブルに限らず、例えば、サブノズルや緯糸フィーラ等であってもよい。
【0056】
○ 織機は、エアジェット織機に限らず、ウォータジェット織機、レピア織機、プロジェクタイル織機に適用してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…固定装置、10…エアジェット織機、13…支持対象であるケーブル、20…スレイ、20a…前面、20b…後面、22…T溝、22a…前面開口部、22b…溝、23…上壁、24…下壁、30…締結部材、31…T形頭部、32…軸部、33…ねじ部、34…突起、35…ナット、40…支持体、40a…対向面である前面、50…貫通孔、51…案内面、52…規制面、R1…係合方向、X1…厚さ方向。