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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】車両灯火制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/04 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
B60Q1/04 E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021212035
(22)【出願日】2021-12-27
(65)【公開番号】P2023096353
(43)【公開日】2023-07-07
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100187311
【弁理士】
【氏名又は名称】小飛山 悟史
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】生田 哲也
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0387567(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のヘッドライトのハイビームとロービームとを切り替える制御を行う車両灯火制御装置であって、
前記車両の前方の前方車両を検出する前方車両検出部と、
前記車両の前方のトンネルを認識するトンネル認識部と、
前記車両の状態が、認識された前記トンネルに到達するまでの到達時間が予め定められた基準到達時間未満の制御対象状態であるか否かを判定する制御判定部と、
前記車両が前記トンネル外を走行中において、前記前方車両が検出されている場合に前記ヘッドライトをロービームに制御するとともに前記前方車両が検出されない場合に前記ヘッドライトをハイビームに制御する第1制御と、前記車両が前記トンネル内に進入した場合に前記ヘッドライトをロービームに制御する第2制御とを実行する灯火制御部と、
を備え、
前記灯火制御部は、前記前方車両が検出されている状態から検出されない状態になった場合であっても、前記車両が前記制御対象状態であると判定されているときには、前記第1制御におけるハイビームへの切り替えを抑制し、
さらに、前記灯火制御部は、前記第1制御におけるハイビームへの切り替えを抑制してから所定時間が経過した場合、前記第1制御におけるハイビームへの切り替えを抑制してから前記車両が所定距離走行した場合、及び、前記車両が前記トンネル内に進入して前記第2制御が開始される場合の少なくともいずれかの場合に、前記第1制御におけるハイビームへの切り替えの抑制を解除する、車両灯火制御装置。
【請求項2】
車両のヘッドライトのハイビームとロービームとを切り替える制御を行う車両灯火制御装置であって、
前記車両の前方の前方車両を検出する前方車両検出部と、
前記車両の前方のトンネルを認識するトンネル認識部と、
前記車両の状態が、認識された前記トンネルの手前側に予め設定された判定地点から、前記トンネルの入口までの間の制御抑制エリア内に前記車両が位置する制御対象状態であるか否かを判定する制御判定部と、
前記車両が前記トンネル外を走行中において、前記前方車両が検出されている場合に前記ヘッドライトをロービームに制御するとともに前記前方車両が検出されない場合に前記ヘッドライトをハイビームに制御する第1制御と、前記車両が前記トンネル内に進入した場合に前記ヘッドライトをロービームに制御する第2制御とを実行する灯火制御部と、
を備え、
前記灯火制御部は、前記前方車両が検出されている状態から検出されない状態になった場合であっても、前記車両が前記制御対象状態であると判定されているときには、前記第1制御におけるハイビームへの切り替えを抑制し、
さらに、前記灯火制御部は、前記第1制御におけるハイビームへの切り替えを抑制してから所定時間が経過した場合、前記第1制御におけるハイビームへの切り替えを抑制してから前記車両が所定距離走行した場合、及び、前記車両が前記トンネル内に進入して前記第2制御が開始される場合の少なくともいずれかの場合に、前記第1制御におけるハイビームへの切り替えの抑制を解除する、車両灯火制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両のヘッドライトの制御を行う車両灯火制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のヘッドライトの点灯を制御する各種の装置がある。例えば、特許文献1には、車両がトンネル内に進入した場合に、ヘッドライトを点灯させる装置が記載されている。また、他の例として、前方車両が検出されている場合に車両のヘッドライトをロービームに制御し、前方車両が検出されない場合にヘッドライトをハイビームに制御する装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-39210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、上述した前方車両の有無によってヘッドライトを制御する機能と、トンネル内への進入に基づいてヘッドライトを点灯させる機能とを組み合わせることが考えられる。その際、トンネル内にはトンネル灯が設置されていることによって周辺を認識するのに十分な明るさがあるため、トンネル内ではヘッドライトをハイビームではなくロービームに制御する。
【0005】
この構成において、トンネルの手前で前方車両を検出し、ヘッドライトをロービームで点灯させている状態から、道路のカーブ等によってトンネルの入口手前で前方車両が検出されなくなることがある。この場合、ヘッドライトがロービームからハイビームに切り替えられるが、車両がトンネル内に進入することによってすぐにロービームからハイビームに切り替えられる。これにより、周囲の人(例えば対向車両の乗員)にとっては、パッシング(ハイビームを一瞬だけ点灯すること)をされたように見え、煩わしく感じることがある。
【0006】
このため、本開示は、ヘッドライトの制御を適切に行うことができる車両灯火制御装置について説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、車両のヘッドライトのハイビームとロービームとを切り替える制御を行う車両灯火制御装置であって、車両の前方の前方車両を検出する前方車両検出部と、車両の前方のトンネルを認識するトンネル認識部と、車両の状態が、認識されたトンネルに到達するまでの到達時間が予め定められた基準到達時間未満の制御対象状態であるか否かを判定する制御判定部と、車両がトンネル外を走行中において、前方車両が検出されている場合にヘッドライトをロービームに制御するとともに前方車両が検出されない場合にヘッドライトをハイビームに制御する第1制御と、車両がトンネル内に進入した場合にヘッドライトをロービームに制御する第2制御とを実行する灯火制御部と、を備え、灯火制御部は、前方車両が検出されている状態から検出されない状態になった場合であっても、車両が制御対象状態であると判定されているときには、第1制御におけるハイビームへの切り替えを抑制する。
【0008】
この車両灯火制御装置では、前方車両が検出されなくなった場合であっても、トンネルまでの到達時間が基準到達時間未満の場合、第1制御におけるヘッドライトのロービームからハイビームへの切り替えが行われず、ロービームの状態が維持される。そして、車両灯火制御装置は、ロービームの状態のまま車両をトンネル内に進入させ、トンネル内では第2制御によってロービームの状態とすることができる。つまり、トンネルの入口手前で前方車両が検出さなくなることによるハイビームへの切り替え及びトンネル内への進入によるロービームへの切り替えが行われない。これにより、トンネルの入口手前で周囲の人がパッシングをされたと感じることが抑制される。このように、車両灯火制御装置は、ヘッドライトの制御を適切に行うことができる。
【0009】
本開示の他の一態様は、車両のヘッドライトのハイビームとロービームとを切り替える制御を行う車両灯火制御装置であって、車両の前方の前方車両を検出する前方車両検出部と、車両の前方のトンネルを認識するトンネル認識部と、車両の状態が、認識されたトンネルの手前側に予め設定された判定地点から、トンネルの入口までの間の制御抑制エリア内に車両が位置する制御対象状態であるか否かを判定する制御判定部と、車両がトンネル外を走行中において、前方車両が検出されている場合にヘッドライトをロービームに制御するとともに前方車両が検出されない場合にヘッドライトをハイビームに制御する第1制御と、車両がトンネル内に進入した場合にヘッドライトをロービームに制御する第2制御とを実行する灯火制御部と、を備え、灯火制御部は、前方車両が検出されている状態から検出されない状態になった場合であっても、車両が制御対象状態であると判定されているときには、第1制御におけるハイビームへの切り替えを抑制する。
【0010】
この車両灯火制御装置では、前方車両が検出されなくなった場合であっても、判定地点よりもトンネルの入口に近い位置を車両が走行している場合、第1制御におけるヘッドライトのロービームからハイビームへの切り替えが行われず、ロービームの状態が維持される。そして、車両灯火制御装置は、ロービームの状態のまま車両をトンネル内に進入させ、トンネル内では第2制御によってロービームの状態とすることができる。つまり、トンネルの入口手前で前方車両が検出さなくなることによるハイビームへの切り替え及びトンネル内への進入によるロービームへの切り替えが行われない。これにより、トンネルの入口手前で周囲の人がパッシングをされたと感じることが抑制される。このように、車両灯火制御装置は、ヘッドライトの制御を適切に行うことができる。
【0011】
上記の車両灯火制御装置において、灯火制御部は、第1制御におけるハイビームへの切り替えを抑制してから所定時間が経過した場合、第1制御におけるハイビームへの切り替えを抑制してから車両が所定距離走行した場合、及び、車両がトンネル内に進入して第2制御が開始される場合の少なくともいずれかの場合に、第1制御におけるハイビームへの切り替えの抑制を解除してもよい。この場合、車両灯火制御装置は、第1制御におけるハイビームへの切り替えを抑制することを、適切なタイミングで解除することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示の種々の態様によれば、ヘッドライトの制御を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、一実施形態に係る車両灯火制御装置の全体構成を示すブロック図である。
図2図2は、第1制御におけるハイビームへの切り替えを抑制する場合における各部の状況等を説明するための図である。
図3図3は、第1制御におけるハイビームへの切り替えを抑制する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一又は相当する要素同士には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1に示される車両灯火制御装置1は、車両Vに搭載され、車両VのヘッドライトLのハイビームとロービームとを切り替える制御を行う。なお、車両灯火制御装置1の一部が車両Vの外部に設けられていてもよい。車両Vは、自動で走行する自動運転車両であってもよく、運転者によって運転操作が行われる手動運転車両であってもよい。ヘッドライトLは、車両Vの前方を照射するライトである。ヘッドライトLは、例えば、車両Vの前端の左側及び右側の位置にそれぞれ設けられている。以下、車両灯火制御装置1が行うヘッドライトLの制御として、ヘッドライトLのハイビームとロービームとの切り替えの制御を中心に説明する。
【0016】
車両灯火制御装置1は、外部センサ2、内部センサ3、地図データベース4、及び灯火制御ECU[Electronic Control Unit]5を備えている。
【0017】
外部センサ2は、車両Vの外部環境を検出する検出機器である。外部センサ2は、カメラ、レーダセンサのうち少なくとも一つを含む。
【0018】
カメラは、車両Vの外部環境を撮像する撮像機器である。カメラは、車両Vのフロントガラスの裏側に設けられ、車両前方を撮像する。カメラは、車両Vの外部環境に関する撮像情報を灯火制御ECU5へ送信する。カメラは、単眼カメラであってもよく、ステレオカメラであってもよい。
【0019】
レーダセンサは、電波(例えばミリ波)又は光を利用して、少なくとも車両Vの前方を含む車両Vの周辺の物体を検出する検出機器である。レーダセンサには、例えば、ミリ波レーダ又はライダー[LIDAR:Light Detection and Ranging]が含まれる。レーダセンサは、電波又は光を両Vの周辺に送信し、物体で反射された電波又は光を受信することで物体を検出する。レーダセンサは、検出した物体情報を灯火制御ECU5へ送信する。
【0020】
内部センサ3は、車両Vの状態を検出する車載センサである。内部センサ3は、例えば、GPS[Global Positioning System]センサ、IMU[Inertial Measurement Unit]、及び車速センサ等を含んでいる。GPSセンサは、3個以上のGPS衛星から信号を受信することにより、車両Vの位置(例えば車両Vの緯度及び経度)を測定する。GPSセンサは、測定した車両Vの位置情報を灯火制御ECU5へ送信する。
【0021】
車速センサは、車両Vの速度を検出する検出器である。車速センサとしては、車両Vの車輪又は車輪と一体に回転するドライブシャフトなどに対して設けられ、各車輪の回転速度を検出する車輪速センサを用いることができる。車速センサは、検出した車速情報(車輪速情報)を灯火制御ECU5に送信する。
【0022】
地図データベース4は、地図情報を記録するデータベースである。地図データベース4は、例えば、車両Vに搭載されたHDDなどの記録装置内に形成されている。地図情報には、道路の位置情報、道路形状の情報(例えば曲率情報)、及びトンネルの情報などが含まれる。トンネルの情報には、少なくともトンネルの出入口の位置情報が含まれている。地図データベース4は、車両Vと通信可能なサーバに構成されていてもよい。
【0023】
灯火制御ECU5は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]等を有する電子制御ユニットである。灯火制御ECU5では、例えば、ROM又はRAMに記録されているプログラムをCPUで実行することにより各種の機能が実現される。灯火制御ECU5は、複数の電子ユニットから構成されていてもよい。
【0024】
灯火制御ECU5は、機能的には、前方車両検出部11、トンネル認識部12、制御判定部13、及び灯火制御部14を備えている。
【0025】
前方車両検出部11は、車両Vの前方の前方車両V1(図2参照)を検出する。ここで、前方車両V1には、車両Vの前方を走行する先行車両、及び車両Vに向って走行してくる対向車両を含む。前方車両検出部11は、種々の方法によって前方車両V1を検出することができる。例えば、前方車両検出部11は、外部センサ2のカメラによって撮像された撮像画像に基づいて、周知の方法によって前方車両V1を認識し、前方車両V1を検出する構成であってもよい。また、前方車両検出部11は、外部センサ2のレーダセンサの検出結果に基づいて、周知の方法によって前方車両V1を認識し、前方車両V1を検出する構成であってもよい。
【0026】
トンネル認識部12は、車両Vの前方のトンネルT(図2参照)を認識するとともに、トンネルTまでの距離を算出する。トンネル認識部12は、種々の方法によって、車両Vの前方のトンネルTの認識及びトンネルTの入口までの距離を算出することができる。例えば、トンネル認識部12は、外部センサ2のカメラによって撮像された撮像画像に基づいて、周知の方法によってトンネルTの認識及びトンネルTの入口までの距離を算出してもよい。また、例えば、トンネル認識部12は、内部センサ3のGPSセンサで測定された車両Vの位置情報と地図データベース4に記憶されたトンネルの情報とに基づいて、トンネルTの認識及びトンネルTの入口までの距離を算出してもよい。なお、トンネル認識部12は、車両Vの前方の道路の形状(カーブ等)を考慮して、トンネルTの入口までの距離を算出することができる。また、トンネル認識部12は、車両Vの前方のトンネルTとして、車両Vの前方の予め定められた距離以内に存在するトンネルTを認識する。
【0027】
さらに、トンネル認識部12は、車両VがトンネルT内に進入したか否かを認識する。すなわち、トンネル認識部12は、車両VがトンネルT内を走行中であるか否かを認識する。トンネル認識部12は、トンネル内への進入の有無の認識を、上述したトンネルTの認識と同様の方法によって行うことができる。
【0028】
制御判定部13は、車両Vの状態が、制御対象状態であるか否かを判定する。本実施形態において、制御対象状態とは、トンネル認識部12で認識されたトンネルTに車両Vが到達するまでの到達時間(トンネルTに到達するまでに要する時間)が、予め定められた基準到達時間未満の状態である。ここでは、制御判定部13は、例えば、トンネル認識部12で算出されたトンネルTまでの距離と車両Vの速度とに基づいて、トンネルTに車両Vが到達するまでの到達時間を算出することができる。また、制御判定部13は、車両Vの速度として、例えば、内部センサ3の車速センサの検出結果を用いることができる。制御判定部13は、算出された到達時間と基準到達時間とを比較することにより、制御対象状態であるか否かを判定する。
【0029】
灯火制御部14は、ヘッドライトLに対して指示を行うことにより、ヘッドライトLのハイビームとロービームとを切り替える制御を行う。また、灯火制御部14は、ハイビームとロービームとを切り替える制御として、第1制御と、第2制御とを実行する。
【0030】
第1制御は、車両VがトンネルT外を走行中に実行される制御である。灯火制御部14は、第1制御として、車両VがトンネルT外を走行中において、前方車両検出部11によって前方車両V1が検出されている場合にヘッドライトLをロービームに制御し、前方車両V1が検出されない場合にヘッドライトLをハイビームに制御する。
【0031】
第2制御は、車両VがトンネルT内に進入した場合(トンネルT内を走行中の場合)に実行される制御である。灯火制御部14は、第2制御として、車両VがトンネルT内に進入した場合に、ヘッドライトLをロービームに制御する。
【0032】
さらに、灯火制御部14は、トンネルTに接近した際に、所定の場合に、第1制御におけるロービームからハイビームへの切り替えを抑制する。ここでのロービームからハイビームへの切り替えを抑制することとは、ロービームからハイビームへの切り替えを行わず、ロービームの状態を維持することである。
【0033】
具体的には、灯火制御部14は、前方車両V1が検出されている状態から検出されない状態になった場合であっても、車両Vが制御対象状態であると判定されているときには、第1制御におけるハイビームへの切り替えを抑制する。
【0034】
また、灯火制御部14は、第1制御におけるハイビームへの切り替えの抑制を、所定の場合に解除する。ここでは、灯火制御部14は、第1制御におけるハイビームへの切り替えを抑制してから所定時間が経過した場合に解除してもよい。また、灯火制御部14は、第1制御におけるハイビームへの切り替えを抑制してから車両Vが所定距離走行した場合に解除してもよい。さらに、灯火制御部14は、車両VがトンネルT内に進入して第2制御が開始された場合に解除してもよい。すなわち、灯火制御部14は、第1制御におけるハイビームへの切り替えの抑制を一旦行った後は、解除すべき状況となるまで、前方車両V1の検出状態に関わらずハイビームへの切り替えを抑制する。
【0035】
ここで、第1制御におけるハイビームへの切り替えを抑制する場合における各部の状況等について図2を用いて説明する。図2に示される例では、車両VがトンネルTの入口Taに向って走行している。また、車両灯火制御装置1の前方車両検出部11は、車両Vの前方の前方車両V1を検出している状態(前方車両の検出:あり)とする。このため、灯火制御部14は、第1制御としてヘッドライトLをロービーム(Lo)に制御する。
【0036】
車両VがトンネルTに向って走行し、地点P1において、トンネルT(入口Ta)までの到達時間が基準到達時間未満となったとする。つまり、地点P1において、制御判定部13は、車両Vの状態が制御対象状態になったと判定する(制御対象状態:YES)。さらに車両Vが走行し、地点P2において、前方車両検出部11による前方車両V1の検出ができなくなったとする(前方車両の検出:なし)。例えば、道路のカーブ等の影響により、前方車両検出部11によって前方車両V1が検出されなくなることが考えられる。
【0037】
この場合、灯火制御部14は、前方車両V1が検出されなくなったとしても、車両Vが制御対象状態であるため、地点P2以降において第1制御におけるハイビームへの切り替えを制御する。さらに車両Vが走行し、トンネルTの入口Taの地点P3に到達すると、制御判定部13は、制御対象状態でないと判定する(制御対象状態:NO)。そして、トンネル認識部12は、車両VがトンネルT内に進入したと認識する(トンネル内:YES)。これにより、灯火制御部14は、トンネルT内に進入した地点P3以降において、第2制御としてヘッドライトLをロービームに制御する。ここでは、地点P2において前方車両V1が検出されなくなったとしても、車両Vが制御対象状態であるため、地点P3に到達したときにヘッドライトLはロービームの状態となっている。このため、灯火制御部14は、地点P3において引き続きロービームの状態を維持する。
【0038】
このように、灯火制御部14は、トンネルTの手前において制御対象状態であると判定されている場合(地点P1から地点P3の間)、地点P2において前方車両V1が検出されなくなったとしても、ハイビームへの切り替えを抑制する。その後、灯火制御部14は、上述したように所定の場合に、第1制御におけるハイビームへの切り替えの抑制を解除する。
【0039】
次に、車両灯火制御装置1において行われる、第1制御におけるハイビームへの切り替えを抑制する処理の流れについて、図3のフローチャートを用いて説明する。なお、図3に示される処理は、処理がエンドに至った場合、所定時間後にスタートから処理が開始される。図3に示されるように、トンネル認識部12は、車両Vの前方のトンネルTを認識する処理を行う(S101)。トンネルが認識されない場合(S102:NO)、エンドへ進む。
【0040】
トンネルTが認識された場合(S102:YES)、トンネル認識部12は、トンネルTの入口Taまでの距離を算出する。そして、制御判定部13は、トンネルT(入口Ta)に車両Vが到達するまでの到達時間を算出する(S103)。制御判定部13は、算出された到達時間が基準到達時間未満か否かを判定する(S104)。到達時間が基準到達時間未満でない場合(S104:NO)、エンドへ進む。
【0041】
到達時間が基準到達時間未満である場合(S104:YES)、灯火制御部14は、車両Vが制御対象状態であると判定する(S105)。そして、灯火制御部14は、第1制御におけるロービームからハイビームへの切り替えを抑制する(S106)。これにより、前方車両V1が検出されなくなっても、ロービームの状態が維持される。
【0042】
以上のように、この車両灯火制御装置1では、前方車両V1が検出されなくなった場合であっても、トンネルTまでの到達時間が基準到達時間未満の場合、第1制御におけるヘッドライトLのロービームからハイビームへの切り替えが行われず、ロービームの状態が維持される。そして、車両灯火制御装置1は、ロービームの状態のまま車両VをトンネルT内に進入させ、トンネルT内では第2制御によってロービームの状態とすることができる。つまり、トンネルTの入口Taの手前で前方車両V1が検出さなくなることによるハイビームへの切り替え及びトンネルT内への進入によるロービームへの切り替えが行われない。これにより、トンネルTの入口手前で周囲の人がパッシングをされたと感じることが抑制される。このように、車両灯火制御装置1は、ヘッドライトLの制御を適切に行うことができる。
【0043】
灯火制御部14は、第1制御におけるハイビームへの切り替えを抑制してから所定時間が経過した場合、第1制御におけるハイビームへの切り替えを抑制してから車両Vが所定距離走行した場合、及び、車両VがトンネルT内に進入して第2制御が開始される場合の少なくともいずれかの場合に、第1制御におけるハイビームへの切り替えの抑制を解除する。この場合、車両灯火制御装置1は、第1制御におけるハイビームへの切り替えを抑制することを、適切なタイミングで解除することができる。
【0044】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、制御判定部13は、トンネルTへの到達時間を用いて制御対象状態であるか否かを判定することに限定されない。例えば、制御判定部13は、車両Vの位置に基づいて制御対象状態であるか否かを判定することもできる。具体的には、制御判定部13は、トンネルTの手前側に設定された制御抑制エリア内に車両Vが位置する場合、制御対象状態であると判定する。この制御対象エリアとは、トンネル認識部12で認識されたトンネルTの手前側に予め設定された判定地点から、トンネルTの入口Taまでの間のエリアである。このように、制御判定部13は、車両Vの状態が、制御抑制エリア内に車両が位置する制御対象状態であるか否かを判定することもできる。この場合であっても、車両灯火制御装置1は、上述した実施形態と同様に、ヘッドライトLの制御を適切に行うことができる。
【0045】
また、車両灯火制御装置1は、ヘッドライトLのハイビームとロービームとの切り替え以外にも、ヘッドライトの配光を制御するAHS(アダプティブ・ハイビーム・システム)の配光制御の切り替えを抑制することもできる。また、車両灯火制御装置1は、ヘッドライトL以外のランプの切り替えを抑制することもできる。
【0046】
車両灯火制御装置1は、トンネルT内への進入時以外にも、特定のエリアに進入する際にハイビームへの切り替えを抑制してもよい。この特定のエリアとは、例えば、街灯が設置されているために明るい市街地であってもよい。この場合、車両灯火制御装置1は、市街地に進入する際に前方車両V1が検出されなくなってもハイビームへの切り替えを抑制することにより、市街地に進入する際に瞬間的にハイビームが点灯することを抑制できる。
【0047】
また、車両灯火制御装置1は、前方車両V1が検出されなくなった場合以外にも、例えば、明るいエリアに進入する直前に予め定められた作動車速以上になる場合にハイビームへの切り替えを抑制することで、瞬間的にハイビームが点灯することを抑制できる。
【0048】
以上に記載された実施形態及び種々の変形例の少なくとも一部が任意に組み合わせられてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…車両灯火制御装置、11…前方車両検出部、12…トンネル認識部、13…制御判定部、14…灯火制御部、L…ヘッドライト、T…トンネル、Ta…入口、V…車両、V1…前方車両。
図1
図2
図3