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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】熱伝導機構
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/64 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
H04N5/64 511A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021519418
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(86)【国際出願番号】 JP2020018739
(87)【国際公開番号】W WO2020230745
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2019093092
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 大仁
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-283856(JP,A)
【文献】国際公開第2015/083316(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/082794(WO,A1)
【文献】特開2012-028940(JP,A)
【文献】特開2013-041934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの熱源を有する第一部材と、
放熱エレメントを有し、前記第一部材に対して変位可能な第二部材と、
前記熱源の熱を前記放熱エレメントへ伝える熱伝導シートと、
を備え、
前記熱伝導シートにおいて、前記第一部材又は前記第二部材の少なくとも一部に接触し得る部分には、保護シートが設けられており、
前記熱伝導シートは、前記熱源から前記第一部材に形成された開口部を通過して前記第一部材の外側に出ており、
前記熱伝導シートを固定しつつ、前記開口部を密閉する密閉部材を、更に備える、
伝導機構。
【請求項2】
少なくとも一つの熱源を有する第一部材と、
放熱エレメントを有し、前記第一部材に対して変位可能な第二部材と、
前記熱源の熱を前記放熱エレメントへ伝える熱伝導シートと、
を備え、
前記熱伝導シートにおいて、前記第一部材又は前記第二部材の少なくとも一部に接触し得る部分には、保護シートが設けられており、
前記保護シートは、PETシートを含む、
伝導機構。
【請求項3】
前記PETシートの厚みは、10μm以上である、
請求項に記載の熱伝導機構。
【請求項4】
前記熱伝導シートは、前記熱源から前記第一部材に形成された開口部を通過して前記第一部材の外側に出ており、
前記熱伝導シートを固定しつつ、前記開口部を密閉する密閉部材を、更に備える、
請求項2又は3に記載の熱伝導機構。
【請求項5】
前記第一部材又は前記第二部材の少なくともいずれかは、内部空間に前記熱伝導シートの少なくとも一部が固定される中間部材を備える、
請求項1~4のいずれか1項に記載の熱伝導機構。
【請求項6】
少なくとも一つの熱源を有する第一部材と、
放熱エレメントを有し、前記第一部材に対して変位可能な第二部材と、
前記熱源の熱を前記放熱エレメントへ伝える熱伝導シートと、
を備え、
前記熱伝導シートにおいて、前記第一部材又は前記第二部材の少なくとも一部に接触し得る部分には、保護シートが設けられており
前記第一部材又は前記第二部材の少なくともいずれかは、内部空間に前記熱伝導シートの少なくとも一部が固定される中間部材を備える、
熱伝導機構。
【請求項7】
前記熱伝導シートは、
前記熱源及び前記中間部材に固定される第一熱伝導シートと、
前記中間部材及び前記放熱エレメントに固定される第二熱伝導シートと、を含む、
請求項5又は6に記載の熱伝導機構。
【請求項8】
前記中間部材は、前記第一熱伝導シートの熱を前記第二熱伝導シートに伝える、
請求項に記載の熱伝導機構。
【請求項9】
前記第一熱伝導シートは、前記中間部材の端部に固定される、
請求項又はに記載の熱伝導機構。
【請求項10】
前記第二熱伝導シートを前記中間部材の少なくとも一部に当接させる弾性体を、更に備える、
請求項のいずれか1項に記載の熱伝導機構。
【請求項11】
前記第二部材は、前記中間部材を備える第三部材と、前記弾性体を備える第四部材とを備え、
前記第四部材は、前記第三部材に対して分離可能であり、
前記第三部材が前記第四部材に接続された状態で、前記弾性体は、前記第二熱伝導シートを前記中間部材の少なくとも一部に当接させる、
請求項10に記載の熱伝導機構。
【請求項12】
前記熱伝導シートは、前記第一部材又は前記第二部材の少なくともいずれかと、前記中間部材とにより区画された空間内において湾曲する、
請求項11のいずれか1項に記載の熱伝導機構。
【請求項13】
前記接触し得る部分の少なくとも一部は、前記第一部材に対する前記第二部材の変位に応じて、前記第一部材又は前記第二部材の少なくとも一部に摺動し、
前記摺動する部分の少なくとも一部には、前記保護シートが設けられている、
請求項1~12のいずれか1項に記載の熱伝導機構。
【請求項14】
前記第一部材は、前記第二部材に対してスライド又は回転して変位する、
請求項1~13のいずれか1項に記載の熱伝導機構。
【請求項15】
前記熱伝導シートは、グラファイトシートを含む、
請求項1~14のいずれか1項に記載の熱伝導機構。
【請求項16】
ユーザの眼前に配置される導光部と、前記導光部に画像を投影する投影部と、を更に備える、
請求項1~15のいずれか1項に記載の熱伝導機構。
【請求項17】
画像を撮像する撮像部を、更に備え、
前記熱源は、前記撮像部を含む、
請求項1~16のいずれか1項に記載の熱伝導機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱伝導機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば撮像装置などの各種の装置には、駆動時に発熱する各種のデバイスが搭載されている。例えば撮像装置に搭載されている撮像素子は、駆動時に発熱し、当該撮像装置の性能を低下させる場合がある。
【0003】
このため、撮像装置などの装置では、装置内に生じた熱を外部に放散するための構成が採用されている。例えば、特許文献1には、撮像素子が発生する熱を放散する熱伝導シート(放熱シート)を備えた撮像装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-28940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、構成する一部の部材が他の部材に対して変位可能となっている装置がある。このような装置においても、上記のように放熱が実現されることが望ましいと考えられる。しかし、このような装置内に放熱に用いられる熱伝導シートが設けられると、装置を構成する特定の部材が変位したときに、当該熱伝導シートにおいて、部材の一部と接触する部分が摩耗することが推測される。
【0006】
上記の特許文献1に記載の撮像装置は、熱伝導シートが摩耗する程度に各部材が変位することが想定された撮像装置ではない。従って、特許文献1に記載の技術は、部材が変位する際における熱伝導シートの摩耗を考慮した技術ではない。
【0007】
そこで、本開示では、部材が変位する際の熱伝導シートの摩耗を抑止しつつ、当該熱伝導シートにより放熱することが可能な、新規かつ改良された熱伝導機構を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示によれば、少なくとも一つの熱源を有する第一部材と、放熱エレメントを有し、前記第一部材に対して変位可能な第二部材と、前記熱源の熱を前記放熱エレメントへ伝える熱伝導シートと、を備え、前記熱伝導シートは、前記第一部材に対する前記第二部材の変位に応じて、前記第一又は第二部材の少なくとも一部に摺動し、前記熱伝導シートの前記摺動する部分の少なくとも一部は、保護シートを備える、熱伝導機構が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】HMDの全体を示す外観図である。
図2】HMDが備えるフロントブロックを構成する第一部材の熱源を説明するための図である。
図3】本開示の技術が適用されていない熱伝導機構の構成を示す参考図である。
図4】本開示の一実施形態に係る熱伝導機構の模式図である。
図5】本開示の一実施形態に係る熱伝導機構が備える第一部材が前方向にスライドした状態を示す図である。
図6】第一熱伝導シートの摺動する部分における、X軸に垂直な断面を示す図である。
図7】熱源に固定された第一熱伝導シートにおける、X軸に垂直な断面を示す図である。
図8】第1の変形例に係る熱伝導機構の模式図である。
図9】第2の変形例に係る熱伝導機構の模式図である。
図10】第3の変形例に係る熱伝導機構の模式図である。
図11】第2の実施形態に係る熱伝導機構の外観を示す図である。
図12】第2の実施形態に係る熱伝導機構の構成を示す図である。
図13】第2の実施形態に係る熱伝導機構において、第二部材が第一部材に対して時計回りに90°回転した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合もある。例えば、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成を、必要に応じてカメラ118aおよびカメラ118bのように区別する。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。例えば、カメラ118aおよびカメラ118bを特に区別する必要が無い場合には、単にカメラ118と称する。
【0011】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.第1の実施形態
1.1.ヘッドマウントディスプレイの概略構成
1.2.熱伝導機構の構成及び動作
1.3.効果
1.4.変形例
2.第2の実施形態
2.1.熱伝導機構の構成及び動作
2.2.効果
2.3.補足
3.補足
【0012】
<1.第1の実施形態>
<1.1.ヘッドマウントディスプレイの概略構成>
本開示に係る熱伝導機構は、据え置き型の各種の表示装置(例えば、据え置き型の液晶表示装置や有機EL表示装置等)として実現することも可能であるし、例えばヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display:HMD)等のウェアラブルディスプレイとして実現することも可能である。第1の実施形態では、熱伝導機構がHMDに適用されるものとして説明する。まず、図1及び図2を参照して、第1の実施形態に係るHMDの構成の概略について説明する。図1は、HMDの全体を示す外観図である。図2は、HMDが備えるフロントブロック1を構成する第一部材10の熱源を説明するための図である。
【0013】
図1に示すように、HMDは、主に、フロントブロック1、リアブロック30及び連結部材32を備える。HMDは、フロントブロック1、リアブロック30及び連結部材32がユーザの頭部を囲むことで、ユーザの頭部に装着される。
【0014】
また、以下の説明では、HMDにおけるユーザの頭部を挟んでフロントブロック1とリアブロック30とが配置される方向を、X軸方向と称する。このとき、X軸方向において、リアブロック30からフロントブロック1に向かう方向をX軸の前方向、その反対の方向を後方向とする。更に、当該X軸方向と垂直な平面内において互いに直交する2方向を、それぞれ、Y軸方向及びZ軸方向と称する。この場合、Z軸方向がユーザの背の高さに対応する方向となる。
【0015】
フロントブロック1は、第一部材10、第二部材20及びヘッド部材21を備える。第一部材10は、HMDがユーザに装着された際に、ユーザの眼前に位置し、ユーザに対して各種の画像を提示する機能を有している。第一部材10は、画像が表示されていない状態でユーザの視界を遮らない透過型のディスプレイを含んでもよいし、非透過型のディスプレイを含んでもよい。また、第一部材10は、ユーザの両眼の眼前に配置されてもよいし、片方の眼の眼前に配置されてもよい。フロントブロック1は、HMDを装着したユーザの周囲を撮影する少なくとも一つのカメラ(撮像部)を有してもよい。また、フロントブロック1に搭載されるカメラは、ユーザの視野方向、または側方を含む広範囲を撮影するカメラでもよい。
【0016】
第二部材20は、第一部材10の上部に設けられており、連結部材32によりリアブロック30と連結される外装部材200を備える。具体的には、図1に示すように、外装部材200の一方の側端部である第一側端部201aと、外装部材200において第一側端部201aとはY軸方向の反対側に位置する側端部である第二側端部201bと、のそれぞれには、連結部材32が接続される。また、ヘッド部材21は、第二部材20の後ろ側に設けられている。HMDがユーザの頭部に装着されると、ヘッド部材21は、ユーザの頭部の前方に接触する。
【0017】
リアブロック30は、HMDを駆動させるための各種の基板及びバッテリなどを備えている。このように、HMDでは、フロントブロック1とリアブロック30に設けられた各種のバッテリ又はカメラなどの熱源が設けられており、これらの熱源は駆動時に発熱する。このため、HMDは、一般的な各種のウェアラブルデバイスの中では比較的大きな発熱量を有する。従って、HMDは、当該HMDを構成する各部材の表面積を効率よく利用して放熱する必要があると考えられる。
【0018】
連結部材32a、32bは、フロントブロック1とリアブロック30とを連結する機能を有する。連結部材32a、32bの素材としては、金属材料又は樹脂材料などを用いることができ、例えば、アルミニウム合金、チタン合金、ステンレス、酢酸セルロース又はポリアミドなどを用いることができる。また、連結部材32a、32bの素材としては、例えばPC(ポリカーボネート)又はABSなど、より一般的な樹脂を用いることもできる。
【0019】
連結部材32a、32bは、外装部材200の第一側端部201a及び第二側端部201bのそれぞれから後方に延びている。第一側端部201aから後方に延びた連結部材32aは、リアブロック30の第一側端部310aと接続される。また、第二側端部201bから後方に延びた連結部材32bは、リアブロック30において第一側端部310aとはY軸方向に反対側に位置する第二側端部310bと接続される。なお、連結部材32の構成は、上記に限られず、フロントブロック1とリアブロック30とを連結できれば、いかなる構成であってもよい。
【0020】
ここで、フロントブロック1の構成についてより詳細に説明する。フロントブロック1は、少なくとも一つの熱源を備える第一部材10と、第一部材10に変位可能な第二部材20とを備える。例えば、第二部材20は、内部空間を密閉するように第一部材10に取り付けられてもよいし、内部空間の一部が外部と連通した状態で第一部材10に取付けられてもよい。なお、第二部材20が内部空間を密閉している方が、内部空間へのごみ等の侵入が抑止されるため好ましい。
【0021】
また、第一部材10は、第二部材20に対して変位可能である。具体的には、第一部材10は、第二部材20に対して、X軸の前後方向にスライド可能である。例えば、ユーザがメガネを装着している場合には、第一部材10をX軸の前方向にスライドさせてユーザの眼と第一部材10との間を広げることで、ユーザの眼と第一部材10との間にメガネを収める空間を形成できる。このため、ユーザはメガネをかけたまま、HMDを装着できる。また、第一部材10をスライドさせることで、第一部材10の位置をユーザの顔の形状に対応させることができる。より具体的には、例えば、鼻の高低、堀りの深さ又は起伏などの顔の形状における個人差に、第一部材10の位置を対応させることができる。
【0022】
次いで、図2を参照して、第一部材10が有する熱源について説明する。図2に示すように、第一部材10は、例えばOLED(Organic Light Emitting Diode)114、基板112に設けられたIC(Integrated Circuit)116及びカメラ(撮像部)118a~dなどの熱源を備えている。基板112に搭載されたICは、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の各種の公知のICであってもよい。カメラ118は、基板112に搭載された各種のICによる処理に基づき、画像を撮像する機能を有している。当該撮像された画像に基づき、例えばOLED(投影部)114により、ディスプレイ(導光部)104a、bに画像が表示される。このように、HMDでは、OLED114、IC116及びカメラ118などの主要熱源が第一部材10に集約されており、これらの熱源は駆動時に発熱する。
【0023】
ここで、これらの熱源の位置関係について説明する。光学系(OLED114とディスプレイ104)は、HMDの特性上、ユーザの眼前に存在している必要がある。また、HMDの性能を担保するためにカメラ118と光学系の相対位置の関係がずれないことを配慮すると、カメラ118と光学系は同一部材あるいは隣接した高剛性の部材に取り付けられることが望ましい。これに伴い、各種の接続(例えば、基板112とカメラ118との接続、又は基板112と光学系との接続など)が必要であるため、基板112は、カメラ118又は光学系などに近い位置に必然的に設置される。このように、HMDでは、上記接続などのため、第一部材10に各種の熱源が必然的に集約される。
【0024】
<<1.2.熱伝導機構の構成及び動作>>
第1の実施形態に係る熱伝導機構について説明する前に、図3を参照して、参考までに、本開示の技術が適用されていない熱伝導機構9について説明する。ここでは、一般的なHMDの内部構造の特徴について説明する。図3は、本開示の技術が適用されていない熱伝導機構9の構成を示す参考図である。熱伝導機構9は、第一部材80及び第二部材90を備える。つまり、熱伝導機構9は、上記フロントブロック1に対応する。熱伝導機構9において下側に位置する第一部材80は、主に、外部材(バイザー)800と、上記説明した各種熱源と、内部構造部材とで構成されている。第一部材80は、保護のために透明の外部材800で覆われている。第一部材80に設けられたカメラ818及びディスプレイ804などを、ごみ又は汚れなどから保護するためには、第一部材80の構造は、図3に示すような外部材800で密閉されている構造であることが望ましい。その場合、第一部材80の構造は、図3に示すように、内部構造部材と外部材800の二重構造となる。
【0025】
熱伝導機構9が有する内部構造部材は、カメラ818及びOLED814を支持する第一支持部材808、基板812を支持する第二支持部材803、及び第一部材80の内部に配設された各種の熱源及び部材などを支持する第三支持部材806などである。第一部材80の内部構造部材は、外部材800に覆われているため、外部の空気に触れることができない。このため、第一部材80で放熱に利用できる領域は、各部材の配置及び構造などに基づき限定されている。第一部材80のうち、外部の空気に触れることができる領域は、例えば第一支持部材802付近の破線で示された領域である。このように、第一部材80において放熱できる領域は、第一部材80の大きさを考慮すると狭い。このため、第一部材80の内部で発生した熱を、第一部材80で効率的に外部に放散することは難しいと考えられる。なお、第一部材80はなるべく小さい方がデザイン性に優れている場合があるが、第一部材80が小さくなるほど、効率的に放熱できる第一部材80の設計が困難になる。
【0026】
第二部材90は、外装部材900、接合部材902及び底部材904が接合されることにより、内部空間を形成している。また、第二部材90は、熱源を有していない。第二部材90における外部の空気に触れる面積は、第一部材80が有する外部の空気に触れている面積よりも広い。例えば、第二部材90では、第二部材90を構成する各部材の外側(第二部材90の外周に破線で示す領域)は、外部の空気に触れることができるため、効率よく放熱することができる。このため、第一部材80よりも第二部材90の方が、広い範囲で放熱をすることができると考えられる。
【0027】
また、第一部材80がX軸の前後方向にスライドできる構造となっているため、熱伝導機構9(すなわち、フロントブロック)は第一部材80と第二部材90の二つの部材に分割されている必要がある。分割された2つの部材(第一部材80と第二部材90)をまたがない放熱手法では、第一部材80で発生した熱を第一部材80で放熱する必要がある。そのため、外観で見えるフロントブロックの大きさに対して、実際に放熱に使用できる面積は小さく、熱源による高発熱量を効率的に外部に放散することが困難である。
【0028】
以上、HMDの構成の特徴について説明した。以下では、上記のHMDの特徴を満たしつつ、より効率的な放熱を実現できる熱伝導機構を説明する。
【0029】
以下、図4図7を参照しながら、本開示の一実施形態に係る熱伝導機構2について説明する。図4は、本開示の一実施形態に係る熱伝導機構2の模式図である。図5は、本開示の一実施形態に係る熱伝導機構2が備える第一部材12が前方向にスライドした状態を示す図である。図6は、第一熱伝導シート40の摺動する部分における、X軸に垂直な断面を示す図である。図7は、熱源130に固定された第一熱伝導シート40における、X軸に垂直な断面を示す図である。
【0030】
本実施形態に係る熱伝導機構2は、少なくとも一つの熱源130を有する第一部材12と、前部材(放熱エレメント)220を有し、第一部材12に対して変位可能な第二部材22と、熱源130の熱を前部材220へ伝える第一熱伝導シート40及び第二熱伝導シート41と、を備える。なお、本明細書において、第一部材12に対する第二部材22の変位とは、第二部材22に対する第一部材12の変位をも意味する。
【0031】
第一熱伝導シート40は第一グラファイトシート400及び保護シート402を備えている。より具体的には、第一熱伝導シート40において、第二部材22の少なくとも一部に接触し得る部分には、保護シート402が設けられている。また、第二熱伝導シート41は第二グラファイトシート410を備えている。これらの熱伝導シートの構成の詳細については後述する。
【0032】
本実施形態に係る第一部材12は、第二部材22に対して、X軸の前後方向にスライドできる。具体的には、図4に示す熱伝導機構2において、第一部材12をX軸の前方向(すなわち、図中の左方向)にスライドさせると、図5に示すように第一部材12が第二部材22に対して左方向に変位する。
【0033】
図4に示すように、第一部材12は、第一部材12の内部を保護するための外部材(バイザー)120と、第一部材12の内部構造を形成する内部材124と、熱源130を備える。第一部材12の構造は、外部材120及び内部材124で構成された2重構造である。第一部材10の内部空間に設けられた熱源130は、上述したカメラ、各種IC又はOLEDなどであり得る。なお、図4には、熱源130が1つだけ示されているが、第一部材12が有する熱源130の数は2つ以上であってもよい。熱源が2つ以上配設される場合には、熱源の数に応じて、複数の第一熱伝導シート40等が配設されていてもよい。
【0034】
第二部材22は、前部材220と、後部材222と、中間部材224とを備える。前部材220及び後部材222が接合されることにより、第二部材22の内部空間が形成される。中間部材224は、例えばアルミニウム板などで構成され、後部材222の一部からX軸の前方向に向かって伸びて形成されている。なお、中間部材224は、アルミニウム板に限らず、熱伝導性の高い板状の部材であればよい。具体的には、中間部材224の素材は、アルミニウム以外にも、銅又はマグネシウムなどであってもよい。中間部材224の上側の空間には、必要に応じて、各種の部品を配設することができる。また一般的に、熱の輸送距離が短いほど、熱伝導性が高まる傾向がある。このため、本実施形態に係る熱伝導機構2では、中間部材224の必要な剛性が確保される範囲で中間部材224の厚みが薄いほど、第一熱伝導シート40から第二熱伝導シート41への熱伝導性が高まるので好ましい。また、第二部材22は、前部材220と後部材222とで形成された開口部221を備えている。
【0035】
内部材124は、外部材120の内部空間から第二部材22の開口部221を通過して第二部材22の内部空間に向かって伸びて形成された筒部125を備えている。当該筒部125は、当該筒部125の内部空間(すなわち、内部材124の内部空間)と第二部材22の内部空間とを連通する内開口部126を有している。
【0036】
次いで、第1の実施形態に係る第一熱伝導シート40及び第二熱伝導シート41について説明する。第1の実施形態に係る熱伝導機構2では、第一部材12が備える熱源130で発生した熱を第二部材22(より具体的には、前部材220)へ伝えるために、第一部材12及び第二部材22の内部空間に、第一熱伝導シート40及び第二熱伝導シート41が設けられている。
【0037】
第一熱伝導シート40の一端は、固定部材408により、熱源130に固定されている。固定部材408は、例えば、極薄(例えば、10μm程度、又は10μm未満の厚み)の両面テープなどにより構成されてもよい。両面テープの厚みが薄いほど、熱源130から第一熱伝導シート40への熱伝導性を高めることができる。なお、両面テープの厚みは、極薄に限られない。両面テープの厚みは、第一熱伝導シート40を接着の対象(熱源130又は中間部材224など)に接着させる両面テープに求められる接着力に応じて、適宜選択され得る。従って、両面テープの厚みを10μmより厚くすることで、接着力が高められる。例えば、両面テープの厚みは、例えば30μm、50μm、100μm又は200μmなどであってもよい。なお、両面テープが厚いほど接着力が向上するが、接着の対象と第一熱伝導シート40との間の熱伝導性が損なわれる。例えば、熱源130から第一熱伝導シート40への熱伝導性が損なわれる。また、両面テープの素材として、一般的に用いられる素材に加えて、熱伝導性の高い素材が用いられてもよい。両面テープに採用される厚み及び素材は、上記HMDなどの製品設計を行う際に検討され、適宜決定される。なお、以下で説明する各固定部材についても、極薄の両面テープなどにより構成されてもよいし、10μmよりも厚みのある両面テープで構成されてもよい。第一熱伝導シート40は、筒部125の内開口部126を通過して第一部材12の外側に出ている。より具体的には、第一熱伝導シート40は、筒部125の内開口部126を通過して第二部材22の内部空間に挿入されている。
【0038】
また、第一熱伝導シート40は、筒部125の内開口部126において、密閉部材128により固定されている。密閉部材128は、筒部125の内開口部126を密閉することにより、第二部材22の内部空間に存在するごみなどの、第一部材12の内部空間への侵入を防いでいる。密閉部材128は、例えばウレタン系のクッション材などにより、第一熱伝導シート40を挟み込むように構成されていてもよい。第一熱伝導シート40の熱源130と反対側の端部は、固定部材404により中間部材224に固定されている。より具体的には、第一熱伝導シート40は、中間部材224の端部225に固定されている。このため、第一熱伝導シート40は、第一部材12のスライドに応じて可動となっている。
【0039】
第二熱伝導シート41は、中間部材224に固定部材412により固定されている。さらに、第二熱伝導シート41は、前部材220の少なくも一部に、より具体的には前部材220の傾斜した部分に、固定部材414により固定されている。
【0040】
ここで、熱伝導機構2が備える第一熱伝導シート40及び第二熱伝導シート41による放熱のメカニズムについて説明する。第一熱伝導シート40が第一部材12の内部空間に設けられた熱源130から熱を受け取ると、当該熱は中間部材224を介して、第二熱伝導シート41に伝わる。第二熱伝導シート41は、中間部材224から伝えられた熱を、前部材220に伝える。前部材220は、第二熱伝導シート41から受け取った熱を外部に放散する。従って、前部材220は、熱源130の熱を外部に放散する放熱エレメントとしての機能を有する。このようにして、第1の実施形態に係る熱伝導機構2は、第一部材12に設けられた熱源130の熱を、第一熱伝導シート40及び第二熱伝導シート41、及び前部材(放熱エレメント)220を介して、外気へ放散することができる。
【0041】
以下、第1の実施形態に係る第一熱伝導シート40及び第二熱伝導シート41の構造についてより詳細に説明する。第一熱伝導シート40が中間部材224に固定される面積は、第二熱伝導シート41への熱伝導性に寄与する。具体的には、当該面積が広いほど、第一熱伝導シート40から第二熱伝導シート41への熱伝導性が向上する。また、第二熱伝導シート41が中間部材224に貼り付けられている面積、及び第二熱伝導シート41が前部材220に貼り付けられている面積は、ともにできる限り広い方が熱伝導性は向上する。さらに、これらの面積は、Y軸の正負の方向にもできる限り広い方が熱伝導性は向上し、放熱効率が向上する。
【0042】
また、第一熱伝導シート40は、第一部材12のスライドに応じて、第一部材12とともにスライドする。より具体的には、第一熱伝導シート40は、X軸の前後の方向に、最大で、筒部125の左端と開口部221の左端との間の距離L1だけスライドできる。このスライドを実現するためには、第一熱伝導シート40は、第二部材22の内部空間でスライドできるだけの余長部分が必要となる。
【0043】
また、第1の実施形態では、第一熱伝導シート40は、第二部材22の一部に接触し得る部分を有する。より具体的には、第一熱伝導シート40は、後部材222及び中間部材224に接触し得る。第一熱伝導シート40におけるこれらの部材に接触し得る部分の構成については後述する。
【0044】
第1の実施形態では、第一熱伝導シート40は、第一部材12のスライドに応じて、第二部材22の内部空間において、第二部材22の少なくとも一部と摺動する。より具体的には、第一熱伝導シート40は、第二部材22の内部空間で、後部材222と中間部材224とで区画された空間(以下、「摺動空間」とも称する。)内で後部材222の底部223の少なくとも一部と摺動する。このため、第一熱伝導シート40が動く範囲は、第一熱伝導シート40が摺動する面により規定されているため、第一熱伝導シート40が意図しない方向に動くことが抑止されている。
【0045】
第1の実施形態に係る第一熱伝導シート40は、摺動空間において湾曲部401を有し、U字状に湾曲した状態で摺動する。なお、本明細書において、U字状とは、互いに向かい合う第一熱伝導シート40が平行である場合に限らず、平行である状態からずれた状態も含むものとする。このように、第1の実施形態では、摺動空間において、第一熱伝導シート40が湾曲しているため、第一熱伝導シート40が小さく第二部材22の内部で収まっている。ここで、摺動空間のサイズの取り方は特に限定されないが、摺動空間のZ軸方向の長さL2は、たとえば第一熱伝導シート40がU字状に湾曲し、円滑に動ける程度の長さであって良い。また、摺動空間のX軸方向の長さL4は、第一部材12の摺動する長さの半分(L1/2)と、湾曲部401の半径の半分(L2/2)と、適宜マージン量との和で表される長さであってもよい。
【0046】
第一熱伝導シート40における摺動空間に収納される部分は、第一熱伝導シート40がスライドするための余長部分に相当し、部材などに固定されておらず自由に動ける必要がある。余長部分が確保される範囲で、摺動空間のZ軸方向の長さL2を長くすることができる。なお、摺動空間以外における第一熱伝導シート40の部分は、固定されていることが好ましい。摺動空間以外において第一熱伝導シート40が固定されていないと、第一熱伝導シート40における動くべき部分以外の部分が第一部材12又は第二部材22の内部空間で動き、意図通りの動作が実現されない可能性があり得る。
【0047】
第1の実施形態に係る熱伝導機構2には、1つの熱伝導シートではなく、2つの第一熱伝導シート40及び第二熱伝導シート41が設けられている。この構成は、熱伝導シートの加工性と熱伝導機構2の組立性とを考慮した構成である。熱伝導性のみを考慮すると、1枚の熱伝導シートが熱源130から前部材220まで連続して繋がっている状態が理想的である。しかしながら、この場合、熱伝導シートが非常に長くなり、当該熱伝導シートを作製するための加工が難しくなる場合がある。さらに、第二部材22の組立時(例えば、前部材220と後部材222との接合時)には、常に長い熱伝導シートが第二部材22などに固定された状態で組立作業をしなければならず、作業性が著しく悪くなってしまうと考えられる。第1の実施形態では、熱伝導シートが2つに分割されており、第一熱伝導シート40は中間部材224の端部225に固定されている。このため、前部材220を後部材222に接続する際には、第一熱伝導シート40が固定されているため、当該接続の作業性が向上する。
【0048】
また、第一熱伝導シート40及び第二熱伝導シート41は、中間部材224の両面の各々に貼り付けられている。中間部材224は、アルミニウムなどの高い熱伝導性を有する素材で構成されているため、第一熱伝導シート40の熱を第二熱伝導シート41に高効率で伝えることができる。このようにして、第1の実施形態では、第一熱伝導シート40と第二熱伝導シート41との間に生じる熱抵抗の低減が図られている。
【0049】
また、本実施形態では、第一熱伝導シート40において、第二部材22の一部に接触し得る部分には、保護シート402が設けられている。例えば、第二部材22において、中間部材224に接触し得る部分には、保護シート402が設けられている。保護シート402は、例えばPET(ポリエチレンテレフタラート)シートなどで構成されてもよい。一般的に、グラファイトシートは脆く、摺動などの動作により摩耗して粉状に剥がれる場合がある。第一熱伝導シート40における中間部材224に接触し得る部分は、第一部材12のスライドに応じて、中間部材224に接触したり離れたりする。このときに、保護シート402により、第一熱伝導シート40における中間部材224に接触し得る部分の摩耗が抑止される。
【0050】
また、第一グラファイトシート400は、導電性を有する。保護シート402が第一グラファイトシート400の表面に貼り付けられることで、第一グラファイトシート400と、他の部材(例えば、後部材222)とが通電することが抑止される。なお、図4には示していないが、第一グラファイトシート400の保護シート402が貼り付けられていない領域にも、必要に応じて、例えばPETなどで構成された極薄フィルム(例えば、10μm程度、又は10μm未満の厚みを有するPETシート)などが貼り付けられていてもよい。これにより、第一グラファイトシート400の摩耗又は通電などが抑止される。なお、以下では、極薄フィルムを単に「フィルム」とも称する。
【0051】
また、第1の実施形態では、第一熱伝導シート40は、後部材222にも接触し得る。さらに、第一熱伝導シート40は、第一部材12のスライドに応じて、後部材222の底部223に摺動する。第一熱伝導シート40における当該摺動する面にも、保護シート402が貼り付けられている。これにより、第一熱伝導シート40が後部材222の底部223に摺動する際に、第一グラファイトシート400が摩耗することが抑止される。
【0052】
次いで、図6を参照して、第一熱伝導シート40の摺動する部分の構成について、より詳細に説明する。図6に示すように、第一グラファイトシート400の下側の面(すなわち、底部223に摺動する摺動面405)には保護シート402が貼り付けられ、第一グラファイトシート400の上側の面にはフィルム406が貼り付けられている。
【0053】
第1の実施形態では、第一熱伝導シート40及び第二熱伝導シート41を構成する薄くて面方向の熱伝導性に優れた材料として、グラファイトシートが用いられている。このため、第一熱伝導シート40及び第二熱伝導シート41は、高い熱伝導性を有し、高効率で伝熱することができる。ただし、高い熱伝導性を有する薄い素材であれば、用途に応じて、グラファイトシートの代わりに、銅箔又はアルミ箔などを使用できると考えられる。通常、グラファイトシートは、その表面を保護又は絶縁するために、フィルムが貼り付けられた状態で使用されることが多い。しかし、本実施形態のように、第一熱伝導シート40を摺動させながら使用するためには、フィルムだけでは弾性が足りず、様々な不具合が生じる可能性が考えられる。例えば、第一熱伝導シート40を摺動させたときの力の伝達が不十分となる可能性、第一熱伝導シート40が各部材の内部でよれることで意図しない位置で第一熱伝導シート40が曲がってたわんでしまう可能性、及び第一熱伝導シート40が摺動を繰り返した際に摩耗する可能性が考えられる。
【0054】
そこで、本実施形態では、摺動面405に保護シート402として、フィルム406より厚みのあるPETシートを用いる。これにより、第一熱伝導シート40の弾性が増すことで、第一部材12のスライド時における第一熱伝導シート40の動きの安定性が向上し、さらに第一熱伝導シート40の耐久性も向上する。保護シート402を構成するPETシートの厚みは、10μm以上であることが好ましい。これにより、第一熱伝導シート40の摺動に対する耐性をより向上させることができる。また、PETシートの厚みが厚いほど、第一熱伝導シート40の耐久性が向上する。例えば、熱伝導機構2の設計検討において、50μm、100μm又は200μmなどの厚みを選択することができ、勿論これらの厚み以外の厚みを選択することもできる。このとき、保護シート402には、目的を満たすための弾性及び耐久性を有する厚みの素材が選択される。なお、保護シート402及びフィルムの素材は、PETのほか、用途に応じて、PC又はポリイミドなどを使用することもできる。
【0055】
第一熱伝導シート40に弾性を持たせることで、第一熱伝導シート40の密閉部材128により固定された部分の動作(スライドする動作)が第一熱伝導シート40内に正確に伝わり、保護シート402の弾性力によって湾曲部401の形状が安定化されている。また、第1の実施形態では、この第一グラファイトシート400における保護シート402と反対側の面には、第一熱伝導シート40の湾曲性が損なわれないように、保護シート402ではなくフィルム406が貼り付けられている。第一グラファイトシート400の両面に硬い素材または厚みのある素材などが貼り付けられていると、湾曲部401で第一熱伝導シート40にシワや折れが発生する可能性がある。すると、発生した形状(シワ、折れ)がクセとなってしまうことで、第一熱伝導シート40が安定して動作できなくなる場合がある。
【0056】
次いで、図7を参照して、熱源130付近における第一熱伝導シート40の構成について説明する。第一グラファイトシート400が固定部材408により熱源130と固定される部分(破線で示された部分)には、フィルム407が貼り付けられておらず、第一グラファイトシート400と熱源130とが直接固定されることが、伝熱効率を向上させるためには好ましい。しかし、第一部材12などの各種の部材の加工上の理由などで、直接第一グラファイトシート400と熱源130とを固定できない場合がある。この場合には、破線部分には例えばフィルムが貼り付けられ、第一グラファイトシート400がフィルムを介して熱源130に固定されてもよい。なお、第一グラファイトシート400の熱源130と反対側には、フィルム409が貼り付けられることで、通電の抑止及び耐久性の向上が図られてもよい。
【0057】
なお、第一熱伝導シート40に使用される第一グラファイトシート400及び第二熱伝導シート41に使用される第二グラファイトシート410の層は、単層でも積層でもよい。しかし、伝熱効率を向上させるために、これらのグラファイトシートの積層枚数を重ねすぎると、熱伝導シートの厚みが厚くなり、熱伝導シートの湾曲性が損なわれる場合がある。このため、第一熱伝導シート40の余長部分を収納するスペースを確保できる空間(摺動空間)の大きさ、一枚当たりのグラファイトシートの厚み、グラファイトシートの層間の両面テープの厚みなどによって、積層枚数は適宜設計される。
【0058】
次いで、図4に戻って、第一熱伝導シート40が保護シート402を備える範囲について、より詳細に説明する。図4に示すように、摺動空間に位置する第一熱伝導シート40には、保護シート402が貼り付けられている。より具体的には、摺動空間において、湾曲部401における第一グラファイトシート400の外側(すなわち、第一熱伝導シート40が後部材222に摺動する側)には保護シート402、内側にはフィルムが貼り付けられている。
【0059】
第一部材12のスライドに応じて、第一熱伝導シート40は第一部材12と共にスライドする。このとき、第二部材22の内部に位置する第一グラファイトシート400に貼り付けられた保護シート402が、摺動空間内で後部材222の底部223に摺動する。第一部材12がスライドしているとき、第一熱伝導シート40の保護シート402は、後部材222の底部223に摺動する。このとき、第一グラファイトシート400が保護シート402により保護されているため、第一熱伝導シート40の摺動に対する耐性(すなわち、表面強度及び耐久性)が向上している。また、第一熱伝導シート40の湾曲部401における内側には、保護シート402が貼り付けられていないため、第一熱伝導シート40にシワ又は折れなどが発生しにくくなる。このため、第一熱伝導シート40では、良好な耐久性と安定した動作性とが両立されている。
【0060】
また、第一部材12のスライドに応じて、第一熱伝導シート40の一部は、中間部材224に接触したり離れたりする。これにより、第一熱伝導シート40における中間部材224に接触し得る部分も摩耗する可能性がある。第1の実施形態では、第一熱伝導シート40のうち、中間部材224に接触する部分にも保護シート402が貼り付けられている。これにより、第一熱伝導シート40は、中間部材224に接触する部分においても、耐性(表面強度、耐久性)を有している。
【0061】
なお、図4に示す保護シート402の範囲以外には、保護シート402が貼り付けられる必要はない。一方、図4に示す保護シート402の範囲は、スライド時に中間部材224又は後部材222に接触し得る部分になるので、保護シート402が貼り付けられている必要がある。特に、第一熱伝導シート40のうちの摺動する部分に保護シート402が貼り付けられていないと、第一グラファイトシート400が底部223に摺動して摩耗してしまう。
【0062】
また、第二熱伝導シート41においては、保護シートが全域において貼り付けられていなくてもよい。例えば、第二グラファイトシート410の両面には、フィルムのみが貼り付けられていてもよい。特に、第二熱伝導シート41において、固定部材414により前部材220に固定されている部分には、できるだけ薄いフィルムが貼り付けられている方が、第二熱伝導シート41が前部材220の湾曲した面に、より密着して張り付け易くなるため好ましい。また、第二熱伝導シート41の固定部材414により固定されている部分の下端における折れ曲がった部分についても、できるだけ薄いフィルムが貼り付けられている方が、滑らかに折れ曲がることができるため好ましい。
【0063】
また、第一熱伝導シート40における保護シート402が貼り付けられている範囲以外の領域及び第二熱伝導シート41の全域についても、製造上の理由や、これらの熱伝導シートの保護を目的として保護シートが貼り付けられていてもよい。本開示の熱伝導機構の発展形において、熱伝導シートの複数箇所が摺動する場合、又は熱伝導シートが触れる部分以外の箇所を保護する場合などにおいて、保護シートによる保護範囲が拡大されてもよい。
【0064】
また、第1の実施形態では、第二熱伝導シート41は、第二部材22の内部空間において比較的広い空間に配設されている。従って、第二熱伝導シート41については、第二グラファイトシート410の厚みに対する制限が小さい。このため、熱伝導機構2の各部材の加工または組立が可能な範囲の枚数であれば、第二グラファイトシート410には、積層したグラファイトシートを用いることもできる。
【0065】
<<1.3.効果>>
以上、本開示の一実施形態に係る熱伝導機構2の構成及び動作について説明した。ここで、第1の実施形態に係る熱伝導機構2の効果について説明する。第1の実施形態に係る熱伝導機構2では、第一熱伝導シート40及び第二熱伝導シート41が、第一部材12が有する熱源130の熱を第二部材22が備える前部材220に伝える。これにより、熱源130の熱が外部に放散される。その結果、第一部材12に搭載された各種の熱源130の温度上昇を抑止することが可能となる。これにより、第一部材12に搭載されたカメラ、OLED又はICなどの各種の熱源130における温度上昇を抑止することができる。
【0066】
また、第一熱伝導シート40において、第二部材22の後部材222及び中間部材224に接触し得る部分には、保護シート402が設けられている。このため、第一部材12が第二部材22に対して変位する際の第一熱伝導シート40の摩耗を抑止しつつ、当該第一熱伝導シート40及び第二熱伝導シート41により放熱することが可能である。
【0067】
さらに、第二部材22に対する第一部材12の変位(スライド)に応じて、第一熱伝導シート40は、第二部材22の一部(具体的には、後部材222の底部223)と摺動する。第一熱伝導シート40が摺動する部分には保護シート402が設けられているため、摺動による第一熱伝導シート40の摩耗が抑止される。このように、第1の実施形態に係る熱伝導機構2によれば、熱源130の熱を外部に放散しつつ、摺動による第一熱伝導シート40の摩耗を抑止することができる。
【0068】
また、第1の実施形態では、2枚の熱伝導シート(第一熱伝導シート40及び第二熱伝導シート41)が、それぞれ中間部材224に固定されている。第1の実施形態に係る熱伝導機構2は、このような構造を有しているため、第二部材22の組立性が向上している。また、第一部材12と第二部材22とを連通する内開口部126が、密閉部材128により密閉されているため、第二部材22の内部空間に存在するごみ又は汚れなどが第一部材12の内部に侵入することが抑止されている。
【0069】
このように、第1の実施形態に係る熱伝導機構2では、互いに変位可能な第一部材12と第二部材22とにおいて、組立性や密閉性を確保しつつ、当該2つの部材をまたいだ放熱を実現される。
【0070】
<1.4.変形例>
以下では、上記実施形態に係る熱伝導機構2の3つの変形例について説明する。変形例に係る熱伝導機構では、主に、熱伝導シート及び第二部材の構成が上記実施形態に係る熱伝導シート及び第二部材22の構成と異なるため、その点を中心に説明する。
【0071】
(第1の変形例)
第1の変形例では、上記実施形態と異なり、熱伝導機構3を構成する熱伝導シート44の枚数が一枚である。図8を参照して、第1の変形例に係る熱伝導機構3の構成について説明する。図8は、第1の変形例に係る熱伝導機構3の模式図である。
【0072】
第1の変形例に係る熱伝導機構3は、上記実施形態に係る熱伝導機構2と同様に、第一部材12及び第二部材22を備えている。しかし、第1の変形例に係る熱伝導シート44は、一枚で構成されている。当該熱伝導シート44の一端は、固定部材408により、内部材124の内部空間に存在する熱源130に固定されている。熱伝導シート44は、内部材124の内部空間から筒部125の内開口部126を通過して、第二部材22の内部空間に挿入されている。また、熱伝導シート44は、摺動空間においてU字状に湾曲した湾曲部441を有しており、前部材220に固定部材444により固定されている。さらに、熱伝導シート44の途中は、筒部125の内開口部126において密閉部材128により固定され、中間部材224に固定部材444によりされている。このため、熱伝導シート44が摺動する範囲がコントロールされ、熱伝導シート44が意図しない動作をすることが抑止される。
【0073】
また、第1の変形例に係る熱伝導シート44においても、第一部材12のスライドに応じてグラファイトシート440が摺動する部分、及び中間部材224などに接触し得る部分には、保護シート442が貼り付けられている。これにより、熱伝導シート44の摩耗が抑止されている。
【0074】
さらに、第1の変形例に係る熱伝導シート44は一枚で構成されているため、上記実施形態のような第一熱伝導シート40と第二熱伝導シート41との間に生じる熱抵抗が生じないため、効率がより高い熱伝導を実現することができる。
【0075】
なお、第1の変形例に係る熱伝導機構3では、中間部材224を介して伝熱する必要がない。このため、中間部材224の素材は、高熱伝導の材料である必要はなく、樹脂等の各種の材料であってもよい。
【0076】
(第2の変形例)
次いで、図9を参照して、第2の変形例に係る熱伝導機構4の構成について説明する。図9は、第2の変形例に係る熱伝導機構4の模式図である。図9に示すように、第2の変形例に係る熱伝導機構4の構成は、第二部材23において、第1の変形例に係る熱伝導機構3の構成から、中間部材224が除去された構造となっている。すなわち、第2の変形例に係る熱伝導シート45は、中間部材に固定されていない点で、第1の変形例に係る熱伝導シート44と異なる。
【0077】
第2の変形例に係る熱伝導機構4では、中間部材が存在しないため、熱伝導シート45の動作に支障のない十分な空間が第二部材22の内部に確保されることを条件として、熱伝導機構4を構成する部品の数を低減することができる。
【0078】
また、第一部材12が左方向へスライドするとき、熱伝導シート45の湾曲部451辺りの部分が下方向へ引き込まれる。このため、スライド時に熱伝導シート45が摺動する面に対して保護シート452による保護が必要となる。保護が必要なグラファイトシート450の長さは、第一部材12がスライドする前の状態での余長部分の取り方(長さ又は形状など)、又は開口部221の構造などに影響を受ける。しかし、保護が必要なグラファイトシート450の長さは、少なくとも、スライドする前の状態(すなわち、第一部材12が右端に位置する状態)で、熱伝導シート45において既に後部材222などに接触している部分の長さと、スライド量と、マージンとを足した長さ以上であることが望ましい。このように、第2の変形例においても、熱伝導シート45の摺動する部分に保護シート452が設けられることで、摺動による熱伝導シート45の摩耗を抑止しつつ、熱源130の熱を外部に放散することができる。
【0079】
なお、第2の変形例に係る熱伝導機構4は、熱伝導シート45は、第二部材23の内部空間において、前部材220以外で固定されていない。従って、第2の変形例に係る熱伝導シート45は、第1の変形例に係る熱伝導シート44に比べて、動き得る範囲が広くなっている。このため、第二部材22の内部には、第2の変形例に係る熱伝導シート45が動けるだけの十分な広さの空間が存在する必要がある。
【0080】
(第3の変形例)
次いで、図10を参照して、第3の変形例に係る熱伝導機構5について説明する。図10は、第3の変形例に係る熱伝導機構5の模式図である。第3の変形例に係る熱伝導機構5は、第二部材24が備える前部材(第三部材)240が、後部材(第四部材)242に対して分離可能に構成されている。従って、第3の変形例に係る熱伝導機構5では、後部材242から前部材240を取り外すことが可能である。なお、第3の変形例に係る第一部材12及び第一熱伝導シート46の構成は、図4に示した第一部材12及び第一熱伝導シート40の構成と実質的に同一であるため、ここでは説明を省略する。
【0081】
第3の変形例に係る前部材240の天井部243における下側の面には、弾性体276が設けられている。第二熱伝導シート47は、前部材240の傾斜部241に固定部材474により固定されている。さらに、第二熱伝導シート47は、前部材240に固定された状態で弾性体276に接触している。前部材240が後部材242に接続されると、第二熱伝導シート47は、弾性体276により押さえられることで、直接的に中間部材244に当接する。これにより、第二熱伝導シート47が中間部材244に密着し、第一熱伝導シート46の熱が、中間部材244を介して、第二熱伝導シート47に伝わるようになる。
【0082】
このように、本開示に係る技術は、熱伝導機構の一部が分離可能であっても適用できる。また、第3の変形例に係る熱伝導機構5のように、前部材240に弾性体276を設け、第二熱伝導シート47を中間部材244に当接させることにより、第一熱伝導シート46から第二熱伝導シート47に伝熱することができる。このように、本開示に係る技術は、分離可能な熱伝導機構5を含む、多様な構造を有する熱伝導機構に適用することができる。
【0083】
なお、第3の変形例では、前部材240が後部材242に対して完全に分離可能であるものとして説明したが、前部材240が後部材242に対して開閉可能であっても、第3の変形例に係る技術を適用できる。
【0084】
<2.第2の実施形態>
<<2.1.熱伝導機構の構成及び動作>>
上記実施形態で説明した熱伝導機構は、第一部材12が第二部材に対してスライドする機構である。本開示に係る技術は、スライドする機構を有する熱伝導機構以外にも適用され得る。例えば、本開示に係る技術は、特定の部材が他の部材に対して回転する機構を有する、第2の実施形態に係る熱伝導機構6にも適用され得る。以下、第2の実施形態に係る熱伝導機構6の構成について、図11図13を参照して説明する。図11は、第2の実施形態に係る熱伝導機構6の外観を示す図である。図12は、第2の実施形態に係る熱伝導機構6の構成を示す図である。図13は、第2の実施形態に係る熱伝導機構6において、第二部材60が第一部材50に対して時計回りに90°回転した状態を示す図である。
【0085】
第2の実施形態に係る熱伝導機構6は、図11に示すように、互いに回転可能に接続されている第一部材50と第二部材60とを有している。より具体的には、図12に示すように、第2の実施形態に係る熱伝導機構6は、熱源504を有する第一部材50と、第二壁部(放熱エレメント)600を有し、第一部材50に対して変位可能な第二部材60と、熱源504の熱を第二壁部600へ伝える第一及び第二熱伝導シート48、49と、を備える。第一部材50と第二部材60とは、回転軸602により、互いに回転可能に接続されている。このように、第2の実施形態に係る熱伝導機構6は、第二部材60が第一部材50に対して回転可能なヒンジ構造を有している。
【0086】
第一部材50は、主に、第一壁部500、中間部材502及び熱源504を備えている。第一壁部500は、第一部材50の外周を形成している部材である。また、中間部材502は、第一壁部500の一部から、第一部材50の内部に向かって伸びて形成されている。第二部材60は、第二壁部600と回転軸602とで構成されている。第二壁部600は、第二部材60の外周を形成している部材である。
【0087】
第2の実施形態に係る熱伝導機構6は、第一熱伝導シート48及び第二熱伝導シート49の2つの熱伝導シートを有している。第一熱伝導シート48は、第一グラファイトシート480を備えている。第一グラファイトシート480の両面には、必要な範囲で上記フィルムが貼り付けられていてもよい。第一熱伝導シート48の一部は、固定部材482により、熱源504に固定されている。また、第一熱伝導シート48における熱源504と反対側の端部は、固定部材484により中間部材502に固定されている。
【0088】
第二熱伝導シート49は、第二グラファイトシート490及び、当該第二グラファイトシート490の一部に貼り付けられた保護シート492を備えている。具体的には、第二熱伝導シート49において、第一部材50が備える中間部材502及び第一壁部500に接触し得る部分には、保護シート492が設けられている。また、図12には図示しないが、第二グラファイトシート490の保護シート492が貼り付けられていない部分には、必要な範囲でフィルムが貼り付けられていてもよい。第二熱伝導シート49の一端は、固定部材494により、中間部材502の端部503に固定されている。また、第二熱伝導シート49の中間部材502に固定されている部分と反対側の部分は、固定部材496により、第二壁部600の内側の一部に固定されている。
【0089】
第2の実施形態に係る熱伝導機構6において、第一熱伝導シート48は、熱源504から熱を受け取り、当該熱を中間部材502に伝える。中間部材502は、第一熱伝導シート48の熱を第二熱伝導シート49に伝える。さらに、第二熱伝導シート49は、中間部材502から受け取った熱を第二壁部600に伝え、当該熱は外部の空気に放散される。このようにして、第2の実施形態に係る熱伝導機構6では、熱源504の熱が外部に放散される。
【0090】
第2の実施形態に係る熱伝導機構6では、第二部材60が第一部材50に対して回転する際に、第二熱伝導シート49が摺動する。より具体的には、第二部材60が回転するとき、第二熱伝導シート49のU字状の湾曲部498が伸縮し、当該伸縮に伴い第二熱伝導シート49の一部が第一壁部500における右側壁501の内側に摺動する。
【0091】
ここで、第二熱伝導シート49が摺動する部分の長さについて説明する。回転軸602の中心から第二グラファイトシート490までの距離をrとする。第二部材60が回転するときに、第二熱伝導シート49が摺動する部分の長さは、稼働前の状態(すなわち、図12に示す状態)において第二熱伝導シート49が第一壁部500に接触している部分の長さと、第二熱伝導シート49が伸縮する長さと、の和である。ここで、伸縮する長さは、(第二部材60の回転角度[°]/360)と(2πr)との積で表される。この伸縮する長さは、上記実施形態のスライドする機構を有する熱伝導機構におけるスライド量に相当するといえる。例えば、第二部材60が90°回転する場合には、伸縮する長さは、πr/2となる。さらに、保護シート492により第二熱伝導シート49を保護すべき範囲は、稼働前の状態において第二熱伝導シート49が第一壁部500に接触している部分と、第二熱伝導シート49が伸縮する長さ分と、マージンとを足し合わせた範囲になる。
【0092】
<<2.2.効果>>
第2の実施形態に係る第二熱伝導シート49において、保護シート492が第一部材50の第一壁部500又は中間部材502に接触し得る部分に貼り付けられている。より具体的には、保護シート492は、第二グラファイトシート490における、U字状の湾曲部498から回転軸602周囲付近までの部分に貼り付けられている。これにより、第二熱伝導シート49は、保護シート492により保護されながら、各部材に接触及び摺動することができるため、第二熱伝導シート49の摩耗が抑止される。
【0093】
このように、第2の実施形態に係る熱伝導機構6によれば、第二部材60が第一部材50に対して回転可能な構造を有する熱伝導機構においても、熱伝導シートの摩耗を抑止しながら、熱源の熱を放散することができる。
【0094】
<<2.3.補足>>
第2の実施形態に係る熱伝導機構6は、例えば、メガネ型のHMDに用いることができる。具体的には、第一部材50をメガネのディスプレイ、第二部材60をメガネのフレームとして、第2の実施形態に係る熱伝導機構6を適用することができる。この場合、熱源504は、例えば、ディスプレイに画像を表示するための各種の公知のデバイスであり得る。
【0095】
ここで、第2の実施形態に係る熱伝導機構6について補足する。第2の実施形態に係る熱伝導機構6は、第一熱伝導シート48及び第二熱伝導シート49を用いて、熱源504の熱を外部に放散する構成を有している。これに限らず、第2の実施形態に係る熱伝導機構6のようにヒンジ機構を有する熱伝導機構も、上記第1の変形例に係る熱伝導機構3のように、1枚の熱伝導シートで放熱できる機構を有していてもよい。この場合、当該熱伝導シートの一端が熱源504に固定され、当該熱伝導シートのもう一端は第二部材60の第二壁部600の一部に固定されてもよい。これにより、伝熱効率を高めることができる。この場合、さらに、当該熱伝導シートの途中は、中間部材502の一部(例えば、図12において、第二熱伝導シート49が固定されている部分)に固定されていていてもよい。これにより、熱伝導シートが動く範囲が規定され、熱伝導シートが意図しない動作をすることが抑止される。
【0096】
また、第2の実施形態に係る熱伝導機構6のようにヒンジ機構を有する熱伝導機構においても、上記第3の実施形態のように、中間部材502を備えず、1枚の熱伝導シートで放熱できる機構を有していてもよい。この場合、熱伝導機構を構成する部品の数を低減することができる。
【0097】
<3.補足>
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0098】
例えば、上記実施形態では、主に、HMDに用いられる熱伝導機構について説明したが、本技術はかかる例に限定されない。本開示の技術は、互いに変位可能な2つの部材を含む各種の装置又は部材などに適用され得る。
【0099】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0100】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)
少なくとも一つの熱源を有する第一部材と、
放熱エレメントを有し、前記第一部材に対して変位可能な第二部材と、
前記熱源の熱を前記放熱エレメントへ伝える熱伝導シートと、
を備え、
前記熱伝導シートにおいて、前記第一部材又は前記第二部材の少なくとも一部に接触し得る部分には、保護シートが設けられている、
熱伝導機構。
(2)
前記接触し得る部分の少なくとも一部は、前記第一部材に対する前記第二部材の変位に応じて、前記第一部材又は前記第二部材の少なくとも一部に摺動し、
前記摺動する部分の少なくとも一部には、前記保護シートが設けられている、
前記(1)に記載の熱伝導機構。
(3)
前記第一部材又は前記第二部材の少なくともいずれかは、内部空間に前記熱伝導シートの少なくとも一部が固定される中間部材を備える、
前記(1)又は(2)に記載の熱伝導機構。
(4)
前記熱伝導シートは、
前記熱源及び前記中間部材に固定される第一熱伝導シートと、
前記中間部材及び前記放熱エレメントに固定される第二熱伝導シートと、を含む、
前記(3)に記載の熱伝導機構。
(5)
前記中間部材は、前記第一熱伝導シートの熱を前記第二熱伝導シートに伝える、
前記(4)に記載の熱伝導機構。
(6)
前記第一熱伝導シートは、前記中間部材の端部に固定される、
前記(4)又は(5)に記載の熱伝導機構。
(7)
前記第二熱伝導シートを前記中間部材の少なくとも一部に当接させる弾性体を、更に備える、
前記(4)~(6)のいずれか1項に記載の熱伝導機構。
(8)
前記第二部材は、前記中間部材を備える第三部材と、前記弾性体を備える第四部材とを備え、
前記第四部材は、前記第三部材に対して分離可能であり、
前記第三部材が前記第四部材に接続された状態で、前記弾性体は、前記第二熱伝導シートを前記中間部材の少なくとも一部に当接させる、
前記(7)に記載の熱伝導機構。
(9)
前記熱伝導シートは、前記第一部材又は前記第二部材の少なくともいずれかと、前記中間部材とにより区画された空間内において湾曲する、
前記(3)~(8)のいずれか1項に記載の熱伝導機構。
(10)
前記熱伝導シートは、前記熱源から前記第一部材に形成された開口部を通過して前記第一部材の外側に出ており、
前記熱伝導シートを固定しつつ、前記開口部を密閉する密閉部材を、更に備える、
前記(1)~(9)のいずれか1項に記載の熱伝導機構。
(11)
前記第一部材は、前記第二部材に対してスライド又は回転して変位する、
前記(1)~(10)のいずれか1項に記載の熱伝導機構。
(12)
前記保護シートは、PETシートを含む、
前記(1)~(11)のいずれか1項に記載の熱伝導機構。
(13)
前記PETシートの厚みは、10μm以上である、
前記(12)に記載の熱伝導機構。
(14)
前記熱伝導シートは、グラファイトシートを含む、
前記(1)~(13)のいずれか1項に記載の熱伝導機構。
(15)
ユーザの眼前に配置される導光部と、前記導光部に画像を投影する投影部と、を更に備える、
前記(1)~(14)のいずれか1項に記載の熱伝導機構。
(16)
画像を撮像する撮像部を、更に備え、
前記熱源は、前記撮像部を含む、
前記(1)~(15)のいずれか1項に記載の熱伝導機構。
【符号の説明】
【0101】
2、3、4、5、6 熱伝導機構
10、12、50 第一部材
20、22、23、24、60 第二部材
40、46、48 第一熱伝導シート
41、47、49 第二熱伝導シート
44、45 熱伝導シート
104 ディスプレイ
114 OLED
116 IC
118 カメラ
124 内部材
126 内開口部
128 密閉部材
130、504 熱源
200 外装部材
220、240 前部材
222、242 後部材
223 底部
224、244、502 中間部材
225、503 端部
276 弾性体
401、451 湾曲部
402、424、452、492 保護シート
405 摺動面
406、407、409、426 フィルム
400、480 第一グラファイトシート
410、490 第二グラファイトシート
440、450 グラファイトシート
441、498 湾曲部
500 第一壁部
600 第二壁部
602 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13