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特許7567785画像表示装置の製造方法及び偏光子転写用積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】画像表示装置の製造方法及び偏光子転写用積層体
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20241008BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241008BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20241008BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20241008BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20241008BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20241008BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B27/00 L
G02F1/1335 510
G09F9/00 302
G09F9/00 309Z
G09F9/00 313
G09F9/00 342
H10K50/86
H10K59/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021522825
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2020020959
(87)【国際公開番号】W WO2020241704
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2019099663
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴野 博史
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】特許第6470829(JP,B1)
【文献】特開2012-27260(JP,A)
【文献】特開2016-118776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
G02B 5/30
G02F 1/1335 - 1/13363
G09F 9/00
H05B 33/00 - 33/28
H05B 44/00
H05B 45/60
H10K 50/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示セルの少なくとも片面に、離型性フィルム上にコート層及び偏光子がこの順で積層された偏光子転写用積層体LP1の前記偏光子が前記画像表示セル側に配置されるように、前記偏光子転写用積層体LP1を積層する工程を含む、画像表示装置の製造方法であって、
前記コート層は、前記離型性フィルムの離型面に塗布して設けられたものであり、
前記偏光子は、PVA偏光子又は液晶偏光子であり、
前記偏光子が前記PVA偏光子の場合は、前記偏光子は、下記(a)及び)のいずれかにより前記コート層上に設けられたものであり、
前記偏光子が前記液晶偏光子の場合は、前記偏光子は、下記(c)及び(d)のいずれかにより前記コート層上に設けられたものである、前記画像表示装置の製造方法。
(a)前記離型性フィルム上の前記コート層に接着剤又は粘着剤を用いて前記PVA偏光子単体を貼り合わせる方法
(b)離型性基材上の前記PVA偏光子と、前記離型性フィルムと前記コート層の積層体の前記コート層面とを接着剤又は粘着剤で貼り合わせた後、前記離型性基材を剥離して前記PVA偏光子を転写する方法
(c)前記離型性フィルム上の前記コート層上に、液晶化合物を含有する前記液晶偏光子用塗料を塗工し、前記液晶化合物を配向及び固定させる方法
(d)離型性基材上の前記液晶偏光子面に、接着剤又は粘着剤を用いて、前記離型性フィルムと前記コート層の積層体の前記コート層面を貼り合わせた後、前記離型性基材を剥離して前記液晶偏光子を転写する方法
【請求項2】
(A)画像表示セルの一方の面に、離型性フィルム上にコート層及び偏光子がこの順で積層された偏光子転写用積層体LP1の前記偏光子が前記画像表示セル側に配置されるように、前記偏光子転写用積層体LP1を積層する工程、及び
(B)前記画像表示セルの他方の面に、離型性フィルム上に偏光子が積層された偏光子転写用積層体LP2の前記偏光子が前記画像表示セル側に配置されるように、前記偏光子転写用積層体LP2を積層する工程
を含む、画像表示装置の製造方法であって、
前記偏光子転写用積層体LP1の前記コート層は、前記離型性フィルムの離型面に塗布して設けられたものであり、
前記偏光子転写用積層体LP1の前記偏光子は、PVA偏光子又は液晶偏光子であり、
前記偏光子転写用積層体LP1の前記偏光子が前記PVA偏光子の場合は、前記偏光子は、下記(a)及び)のいずれかにより前記コート層上に設けられたものであり、
前記偏光子転写用積層体LP1の前記偏光子が前記液晶偏光子の場合は、前記偏光子は、下記(c)及び(d)のいずれかにより前記コート層上に設けられたものである、前記画像表示装置の製造方法。
(a)前記離型性フィルム上の前記コート層に接着剤又は粘着剤を用いて前記PVA偏光子単体を貼り合わせる方法
(b)離型性基材上の前記PVA偏光子と、前記離型性フィルムと前記コート層の積層体の前記コート層面とを接着剤又は粘着剤で貼り合わせた後、前記離型性基材を剥離して前記PVA偏光子を転写する方法
(c)前記離型性フィルム上の前記コート層上に、液晶化合物を含有する前記液晶偏光子用塗料を塗工し、前記液晶化合物を配向及び固定させる方法
(d)離型性基材上の前記液晶偏光子面に、接着剤又は粘着剤を用いて、前記離型性フィルムと前記コート層の積層体の前記コート層面を貼り合わせた後、前記離型性基材を剥離して前記液晶偏光子を転写する方法
【請求項3】
前記偏光子転写用積層体LP1が、前記偏光子の前記コート層とは反対側に位相差層を有する、請求項1又は2に記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記偏光子転写用積層体LP2が、前記偏光子の前記離型性フィルムとは反対側に位相差層を有する、請求項2又は3に記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記偏光子転写用積層体LP2が、前記離型性フィルムと前記偏光子との間にコート層を有する、請求項2~4のいずれかに記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記偏光子転写用積層体LP1の前記コート層が、ハードコート層、反射低減層、及び帯電防止層のいずれかを含む、請求項1~5のいずれかに記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記偏光子転写用積層体LP1は、自立性の偏光子保護フィルムを有しないものである、請求項1~6のいずれかに記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記画像表示セルが液晶表示セルである請求項1~7のいずれかに記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記画像表示セルが有機EL表示セルである請求項1、3、6、及び7のいずれかに記載の画像表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置の製造方法及び偏光子転写用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶表示装置では液晶セルの視認側及び光源側の両面に偏光板が貼り合わせてあり、有機EL表示装置では有機ELセルの視認側に円偏光板が貼り合わされている。従来、これらの偏光板は偏光子に偏光子保護フィルムを貼り合わせたものであり、偏光子保護フィルムとしてはトリアセチルセルロース(TAC)、アクリル樹脂、環状ポリオレフィン(COP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの40~100μmの剛直なフィルムが用いられてきた。さらに、通常、偏光板と画像表示セルの間には、液晶表示装置であれば光学補償フィルム、有機EL表示装置であればλ/4位相差フィルムが積層される。
【0003】
近年の画像表示装置の薄型化の流れに沿い、偏光子の片面のみに偏光子保護フィルムを有する偏光板の偏光子面に粘着層を設け、偏光子と画像表示セルを直接貼り合わせる方法が提案されている(例えば、特許文献1)。しかし、偏光子の取り扱い性の点、他の物品との接触による偏光子表面の傷等を防ぐ点、水分、洗剤、環境中の有害ガス成分等による偏光子表面の劣化を防ぐ点等で偏光子保護フィルム自体は必須となっており、偏光子保護フィルム自体に数十μmの厚みがあるために、薄型の画像表示装置には十分対応しきれないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-277018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の1つの目的は、さらなる薄型化に対応しながら、偏光子の傷、劣化などを抑制することができる画像表示装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明の完成に至った。すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
項1.
画像表示セルの少なくとも片面に、離型性フィルム上にコート層及び偏光子がこの順で積層された偏光子転写用積層体LP1の偏光子が画像表示セル側に配置されるように、偏光子転写用積層体LP1を積層する工程を含む、画像表示装置の製造方法。
項2.
(A)画像表示セルの一方の面に、離型性フィルム上にコート層及び偏光子がこの順で積層された偏光子転写用積層体LP1の偏光子が画像表示セル側に配置されるように、偏光子転写用積層体LP1を積層する工程、及び
(B)画像表示セルの他方の面に、離型性フィルム上に偏光子が積層された偏光子転写用積層体LP2の偏光子が画像表示セル側に配置されるように、偏光子転写用積層体LP2を積層する工程
を含む、画像表示装置の製造方法。
項3.
偏光子転写用積層体LP1が、偏光子のコート層とは反対側に位相差層を有する、項1又は2に記載の画像表示装置の製造方法。
項4.
偏光子転写用積層体LP2が、偏光子の離型性フィルムとは反対側に位相差層を有する、項2又は3に記載の画像表示装置の製造方法。
項5.
偏光子転写用積層体LP2が、離型性フィルムと偏光子との間にコート層を有する、項2~4のいずれかに記載の画像表示装置の製造方法。
項6.
コート層が、ハードコート層、反射低減層、及び帯電防止層のいずれかを含む、項1~5のいずれかに記載の画像表示装置の製造方法。
項7.
画像表示セルが液晶表示セルである項1~6のいずれかに記載の画像表示装置の製造方法。
項8.
画像表示セルが有機EL表示セルである請求項1、3、及び6のいずれかに記載の画像表示装置の製造方法。
項9.
離型性フィルム上にコート層及び偏光子がこの順で積層された偏光子転写用積層体。
項10.
偏光子のコート層とは反対側に位相差層を更に有する、項9に記載の偏光子転写用積層体。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、さらなる薄型化に対応可能であり、偏光子の傷、劣化などを抑制することができる画像表示装置を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施態様において、画像表示装置の製造方法は、画像表示セルの少なくとも片面に、離型性フィルム上にコート層及び偏光子がこの順で積層された偏光子転写用積層体LP1の偏光子が画像表示セル側に配置されるように、偏光子転写用積層体LP1を積層する工程を含むことが好ましい。
【0009】
また、本発明の一実施態様において、画像表示装置の製造方法は、
(A)画像表示セルの一方の面に、離型性フィルム上にコート層及び偏光子がこの順で積層された偏光子転写用積層体LP1の偏光子が画像表示セル側に配置されるように、偏光子転写用積層体LP1を積層する工程、及び
(B)画像表示セルの他方の面に、離型性フィルム上に偏光子が積層された偏光子転写用積層体LP2の偏光子が画像表示セル側に配置されるように、偏光子転写用積層体LP2を積層する工程
を含むことが好ましい。
【0010】
(偏光子転写用積層体LP1)
LP1は、離型性フィルム上にコート層及び偏光子をこの順で有することが好ましい。
【0011】
(離型性フィルム)
LP1の離型性フィルムとしては広く離型性フィルムとして用いられているものを適宜用いることができる。離型性フィルムは、単層又は多層からなり、少なくとも基材フィルムを含む。基材フィルムは樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂フィルムの樹脂としては特に限定はなく、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンなど、樹脂フィルムとなるものであれば制限なく使用できる。これらの中でも、機械的強度、耐熱性、供給安定性などの面からポリエステルが好ましく、さらにはポリエチレンテレフタレートが好ましい。また、基材フィルムは未延伸フィルムであっても延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムである場合は一軸延伸フィルムであっても二軸延伸フィルムであってもよい。中でも二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0012】
基材フィルム自体が離型性を有する場合は、基材フィルムをそのまま離型性フィルムとして用いることができる。また、基材フィルムの離型性を調節するためにコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理などの表面処理を行ってもよい。
【0013】
離型性フィルムは、基材フィルム上に離型層を有していてもよい。離型層としては、シリコーン系、アミノ樹脂系、アルキッド樹脂系、長鎖アクリル樹脂系等が挙げられ、必要な剥離力に合わせてその組成及び種類を適宜選択できる。
【0014】
離型性フィルムは、基材フィルムと離型層との間に易接着層を有していてもよい。易接着層としては、ポリエステル系、アクリル系、ポリウレタン系など各基材フィルムで従来から用いられているものを使用することができ、使用する基材フィルム及び/又は離型層に合わせて選択できる。
【0015】
(コート層)
LP1のコート層は、単層又は多層からなり、構成層(多層の場合は各層)がコーティングで形成されている限り、如何なる種類のものであってもよい。コート層は、離型性フィルムの離型面に設けられることが好ましい。コート層の厚みの上限は50μmが好ましく、30μmがより好ましく、20μmがさらに好ましい。コート層の厚みの下限は特に限定されないが、0.1μmが好ましく、0.5μmがより好ましく、1μmがさらに好ましい。コート層が複数の層で構成される場合は、複数の層の厚みの合計が、上記を満たすことが好ましい。コート層の厚みを低減することにより、画像表示装置をより一層薄型にすることができる。
【0016】
コート層は、樹脂で構成されていてもよい。樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等が挙げられるが、これらに特に限定されない。樹脂は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
前記樹脂は架橋されていてもよい。架橋剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物などが挙げられる。架橋剤は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
コート層は、アクリルモノマー及び/又はオリゴマーを硬化(熱硬化、光硬化)させたものであってもよい。
【0019】
コート層としては、例えば、反射低減層、ハードコート層、帯電防止層などが挙げられる。コート層は、反射低減機能、ハードコート機能、帯電防止機能とは別に、又はこれらの機能に加えて、偏光子の保護機能を有していてもよい。偏光子の保護機能としては、例えば、画像表示装置に組み立てるまでの傷及びダメージから偏光子を保護する機能、画像表示装置を使用する場合の他の部材や外部との接触による傷及びダメージから偏光子を保護する機能、画像表示装置を使用する環境でさらされる有害物(水、洗剤、アルコール類などの液体、SOx、NOxなどの有害ガスなど)から偏光子を保護する機能が挙げられる。
【0020】
(反射低減層)
反射低減層は、空気との界面における反射率を低減できるものであれば、如何なる種類のものであってもよい。反射低減層により外光からの反射を抑制して画像を見やすくすることができる。
【0021】
反射低減層の反射率の上限は好ましくは5%であり、より好ましくは4%であり、さらに好ましくは3%であり、特に好ましくは2%であり、最も好ましくは1.5%である。反射率を上記以下にすることで表示画面が見やすくなる。反射率の下限は特に規定されるものではないが、好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.1%である。反射率は、以下の方法により測定される:
黒色のアクリル板に、HCP高透明粘着剤転写シート9483PLを用いて、偏光子転写用積層体を貼り合わせる。貼り合わせる面は、偏光子転写用積層体の離型性フィルムとは反対側の面(偏光子面、又は偏光子上に他の層が積層されている場合は他の層の表面)及び黒色のアクリル板の表面である。貼り合わせ後、離型性フィルムを剥離したサンプルを用い、分光光度計(株式会社島津製作所製、UV-3150)を使用して、波長550nmにおける5度反射率を測定する。なお、5度反射率は、入射角をサンプルの偏光子の透過軸方向に対して5度としたときの反射率である。
【0022】
反射低減層としては、低反射層、反射防止層、防眩層など様々な種類の層が挙げられる。
【0023】
(低反射層)
低反射層は、空気との屈折率差を低減できる層である限り特に制限されず、例えば、低屈折率層が挙げられる。低反射層の場合、反射率の上限は好ましくは5%であり、より好ましくは4%であり、さらに好ましくは3%である。反射率の下限は好ましくは0.8%であり、より好ましくは1%である。
【0024】
(反射防止層)
反射防止層は、視認側界面における反射光と画像表示セル側界面における反射光とを干渉させて反射を防止できる層である限り特に制限されない。反射防止層としては、例えば、厚みが可視光の波長(400~700mn)/(低屈折率層の屈折率×4)程度である低屈折率層が挙げられる。
【0025】
反射防止層は、低屈折率層と高屈折率層の組み合わせであってもよく、このような組み合わせにおいて、低屈折率層は視認側(又は離型性フィルム側)に配置することが好ましい。反射防止層は、低屈折率層及び/又は高屈折率層を2層以上有していてもよい。このような反射防止層は多重干渉により反射防止効果をさらに高めることができる。
【0026】
反射防止層の場合、反射率の上限は好ましくは2%であり、より好ましくは1.5%であり、さらに好ましくは1.2%であり、特に好ましくは1%である。反射率の下限は好ましくは0.01%であり、より好ましくは0.1%である。
【0027】
(低屈折率層)
低屈折率層の屈折率は、1.45以下が好ましく、1.42以下がより好ましい。また、低屈折率層の屈折率は、1.20以上が好ましく、1.25以上がより好ましい。なお、低屈折率層の屈折率は、波長589nmの条件で測定される値である。
【0028】
低屈折率層の厚みは限定されないが、通常、30nm~1μm程度の範囲内から適宜設定すればよい。また、低屈折率層の視認側界面の反射と低屈折率層の画像表示セル側界面の反射とを相殺させて、より反射率を低くする目的であれば、低屈折率層の厚みは70~120nmが好ましく、75~110nmがより好ましい。
【0029】
低屈折率層としては、好ましくは(1)バインダ樹脂及び低屈折率粒子を含有する樹脂組成物からなる層、(2)低屈折率樹脂であるフッ素系樹脂からなる層、(3)シリカ又はフッ化マグネシウムを含有するフッ素系樹脂組成物からなる層、(4)シリカ、フッ化マグネシウム等の低屈折率物質の薄膜等が挙げられる。
【0030】
(1)の樹脂組成物に含有されるバインダ樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、アクリルなど特に制限なく用いることができる。中でもアクリルが好ましく、光照射により光重合性化合物を重合(架橋)させて得られたものであることが好ましい。
【0031】
光重合性化合物としては、光重合性モノマー、光重合性オリゴマー、光重合性ポリマーが挙げられ、これらを適宜調整して用いることができる。光重合性化合物としては、光重合性モノマーと、光重合性オリゴマー又は光重合性ポリマーとの組み合わせが好ましい。
【0032】
(光重合性モノマー)
光重合性モノマーは、分子量が1000未満のものであることが好ましい。また、光重合性モノマーとしては、光重合性官能基を2つ(すなわち、2官能)以上有する多官能モノマーが好ましい。
【0033】
多官能モノマーとしては、例えば、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート、イソボロニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、これらをPO、EO等で変性したものが挙げられる。
【0034】
これらの中でも硬度が高い層を得る観点からは、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)等が好ましい。光重合性モノマーは1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
(光重合性オリゴマー)
光重合性オリゴマーは、重量平均分子量が1000以上10000未満のものであることが好ましい。本明細書において、「重量平均分子量」は、THF等の溶媒に溶解して、従来公知のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算により得られる値である。光重合性オリゴマーとしては、2官能以上の多官能オリゴマーが好ましい。多官能オリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル-ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。光重合性オリゴマーは1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
(光重合性ポリマー)
光重合性ポリマーは、重量平均分子量が10000以上のものが好ましく、塗工適性及び得られる層の外観の点から、10000以上80000以下のものがより好ましく、10000以上40000以下のものがさらに好ましい。光重合性ポリマーとしては、2官能以上の多官能ポリマーが好ましい。多官能ポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、ポリエステル-ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。光重合性ポリマーは1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
(1)の樹脂組成物に含まれる低屈折率粒子としては、シリカ粒子(例えば、中空シリカ粒子)、フッ化マグネシウム粒子等が挙げられ、中でも、中空シリカ粒子が好ましい。このような中空シリカ粒子は、例えば、特開2005-099778号公報の実施例に記載の製造方法により作製できる。
【0038】
低屈折率粒子の一次粒子の平均粒子径は、5~200nmが好ましく、5~100nmがより好ましく、10~80nmがさらに好ましい。
【0039】
低屈折率粒子は、シランカップリング剤で表面処理されたものがより好ましく、中でも(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤で表面処理されたものが好ましい。低屈折率粒子は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
(1)の樹脂組成物には、上記成分の他に重合開始剤、架橋剤の触媒、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、界面活性剤などが含まれていてもよい。
【0041】
低屈折率層(又は(1)の樹脂組成物)における低屈折率粒子の含有量は、バインダ樹脂100質量部に対して10~250質量部が好ましく、50~200質量部がより好ましく、100~180質量部がさらに好ましい。
【0042】
(2)のフッ素系樹脂としては、少なくとも分子中にフッ素原子を含む重合性化合物又はその重合体を用いることができる。重合性化合物としては特に限定されないが、例えば、光重合性官能基、熱硬化極性基等の硬化反応性基を有する化合物が好ましく、これら複数の硬化反応性基を同時に併せ持つ化合物であってもよい。
【0043】
光重合性官能基を有する化合物としては、例えば、エチレン性不飽和結合を有するフッ素含有モノマーを広く用いることができる。
【0044】
低屈折率層には、耐指紋性を向上させる目的で、公知のポリシロキサン系又はフッ素系の防汚剤を適宜添加することも好ましい。ポリシロキサン系防汚剤の好ましい例としては、例えば、アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルシロキサン、アクリル基を有するポリエステル変性ジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサンなどが挙げられる。フッ素系防汚剤は、低屈折率層の形成又は低屈折率層との相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。該置換基は、1個又は複数個あってもよく、複数個の置換基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。好ましい置換基の例としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。
【0045】
(高屈折率層)
高屈折率層の屈折率は1.55~1.85とすることが好ましく、1.56~1.70とすることがより好ましい。なお、高屈折率層の屈折率は、波長589nmの条件で測定される値である。
【0046】
高屈折率層の厚みは、30~200nmあることが好ましく、50~180nmであることがより好ましい。高屈折率層は複数の層であってもよいが、2層以下が好ましく、単層がより好ましい。高屈折率層が複数の層で構成される場合は、複数の層の厚みの合計が、上記範囲内であることが好ましい。
【0047】
高屈折率層を2層とする場合は、低屈折率層側の高屈折率層の屈折率をより高くすることが好ましく、具体的には、低屈折率層側の高屈折率層の屈折率は1.60~1.85であることが好ましく、他方の高屈折率層の屈折率は1.55~1.70であることが好ましい。
【0048】
高屈折率層は高屈折率粒子及び樹脂を含む樹脂組成物からなることが好ましい。高屈折率粒子としては、五酸化アンチモン粒子(1.79)、酸化亜鉛粒子(1.90)、酸化チタン粒子(2.3~2.7)、酸化セリウム粒子(1.95)、スズドープ酸化インジウム粒子(1.95~2.00)、アンチモンドープ酸化スズ粒子(1.75~1.85)、酸化イットリウム粒子(1.87)、酸化ジルコニウム粒子(2.10)等が好ましい。なお、上記かっこ内は、各粒子の材料の屈折率を示す。これらの中でも酸化チタン粒子及び/又は酸化ジルコニウム粒子が好適である。
【0049】
高屈折率粒子は1種類のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。特に、第1の高屈折率粒子とそれより表面電荷量が少ない第2の高屈折率粒子とを組み合わせることも凝集を防ぐためには好ましい。また、高屈折率粒子は表面処理されていることも分散性の面から好ましい。
【0050】
高屈折率粒子の一次粒子の好ましい平均粒子径は、低屈折率粒子と同様である。
【0051】
高屈折率粒子の含有量は、樹脂100質量部に対して、30~400質量部であることが好ましく、50~200質量部であることがより好ましく、80~150質量部であることがさらに好ましい。
【0052】
高屈折率層に用いられる樹脂としては、フッ素系樹脂を除いて低屈折率層で挙げた樹脂と同じものが挙げられる。
【0053】
高屈折率層及び低屈折率層は、例えば、光重合性化合物を含む樹脂組成物を、離型性フィルムに塗布し、乾燥させた後、塗膜状の樹脂組成物に紫外線等の光を照射して、光重合性化合物を重合(架橋)させることにより形成することができる。なお、離型性フィルムに高屈折率層及び低屈折率層を設ける場合、離型性フィルム側が低屈折率層となるようにすることが好ましい。
【0054】
高屈折率層及び低屈折率層(又はそれらを構成する樹脂組成物(塗料))には、必要に応じて、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、溶剤、重合開始剤、分散剤、界面活性剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、易滑剤等を添加していてもよい。
【0055】
(防眩層)
防眩層は表面の凹凸により乱反射させることが可能な層である限り特に制限されない。防眩層により、外光が表面で反射する場合の光源の形の映り込みを防止したり、眩しさを低減したりすることができる。
【0056】
防眩層の表面には、防眩性表面の傾斜角度(表面角度)が0.05°以上である領域が50%以上存在することが好ましく、55%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。また、表面角度が0.05°以上である領域の割合の上限は、95%であることが好ましく、90%であることがより好ましい。表面角度が上記範囲にあると、防眩性表面自体の干渉による虹斑を低減することができる。
【0057】
防眩層の表面の二乗平均平方根傾斜(RΔq)は、0.004以下であることが好ましい。
【0058】
防眩層の表面のクルトシス(Rku)は、好ましくは5以下であり、より好ましくは4以下であり、さらに好ましくは3以下である。Rkuは、好ましくは2以上である。
【0059】
防眩層の表面のスキューネス(RSk)は、好ましくは-1.0~1.0であり、より好ましくは-0.5~0.5であり、さらに好ましくは-0.3~0.3である。
【0060】
防眩層の表面の凹凸の平均傾斜角(θa)は、好ましくは0.01~1.5°であり、より好ましくは0.04~1.2°であり、さらに好ましくは0.1~0.5°である。
【0061】
防眩層の表面の凹凸の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは0.02~0.25μmであり、より好ましくは0.02~0.15μmであり、さらに好ましくは0.02~0.12μmである。
【0062】
防眩層の表面の凹凸の十点平均粗さ(Rzjis)は、好ましくは0.15~2.00μmであり、より好ましくは0.20~1.20μmであり、さらに好ましくは0.30~0.80μmである。
【0063】
RΔq、Rku、RSk、θa、Ra、及びRzjisの値が下限以上であると、より効果的に外光の映り込みを抑制することができる。RΔq、Rku、RSk、θa、Ra、及びRzjisの値が上限以下であると、輝度及びコントラストに優れる。
【0064】
防眩性表面の凹凸の平均間隔(RSm)は、好ましくは50~600μmであり、より好ましくは100~400μmであり、さらに好ましくは120~300μmであり、特に好ましくは150~280μmである。RSmの値が下限以上であると、凝集の制御が容易である。RSmの値が上限以下であると、映像の細やかさを再現することができる。
【0065】
RΔq、Rku、RSk、θa、Ra、Rzjis、及びRSmは、JIS B0601-1994又はJIS B0601-2001に準拠して、接触型粗さ計を用いて測定される粗さ曲線から算出される。
【0066】
防眩層の表面(離型性フィルム側の面)に凹凸を設ける方法としては、例えば、離型性フィルムの離型面に対応する凹凸を設ける方法が挙げられ、具体的には、(1)離型性フィルムの基材フィルムに凹凸を設ける、(2)塗工(又は塗布)により基材フィルムに凹凸を有する層を設ける等の方法が挙げられる。なお、本明細書において、塗工は、塗料を塗工固化させるウエットプロセスだけでなく、蒸着、スパッタ、CVDなどのドライプロセスも含むものとする。
【0067】
(1)の方法としては、サンドブラスト処理;ケミカルエッチング;離型性フィルムを凹凸構造を有する金型に接触させる;離型性フィルムに粒子を添加する等の方法が挙げられる。
【0068】
(2)の方法としては、基材フィルムに、粒子等フィラーを含有し、フィラーの粒径よりも厚みの薄い層を設ける;凹凸転写用塗料(硬化性組成物、好ましくは光硬化性組成物)を基材フィルムに塗工後、凹凸を有する金型に接触させて硬化させる;凹凸転写用塗料(硬化性組成物、好ましくは光硬化性組成物)を凹凸を有する金型に塗工後、基材フィルムと重ねて硬化させる等の方法が挙げられる。
【0069】
防眩層の厚みの下限は、好ましくは0.1μmであり、より好ましくは0.5μmである。防眩層の厚みの上限は、好ましくは100μmであり、より好ましくは50μmであり、さらに好ましくは20μmである。
【0070】
防眩層の屈折率は、好ましくは1.20~1.80であり、より好ましくは1.40~1.70である。防眩層自体の屈折率を低くして低反射効果を求める場合、防眩層の屈折率は、1.20~1.45が好ましく、1.25~1.40がより好ましい。低屈折率層と防眩層とを組み合わせる場合、特に離型性フィルム上に低屈折率層及び防眩層をこの順で積層する場合、防眩層の屈折率は、1.50~1.80が好ましく、1.55~1.70がより好ましい。なお、防眩層の屈折率は、波長589nmの条件で測定される値である。
【0071】
(ハードコート層)
ハードコート(HC)層は、広くハードコート層として用いられているものを適宜用いることができる。ハードコート層の鉛筆硬度はH以上が好ましく、2H以上がより好ましい。ハードコート層は、例えば、熱硬化性樹脂又は放射線硬化性樹脂を含有する組成物(ハードコート層用塗料)を塗布、硬化させて設けることができる。
【0072】
熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。組成物には、これら硬化性樹脂に、必要に応じて硬化剤が添加される。
【0073】
放射線硬化性樹脂は、放射線硬化性官能基を有する化合物であることが好ましく、放射線硬化性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基、エポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。これらのうち、エチレン性不飽和結合基を有する化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する化合物がより好ましく、中でも、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する多官能性(メタ)アクリレート系化合物が更に好ましい。多官能性(メタ)アクリレート系化合物としては、モノマーであってもオリゴマーであってもポリマーであってもよい。
【0074】
放射線硬化性樹脂の具体例としては、低屈折率層におけるバインダ樹脂として例示したものが挙げられる。放射線硬化性樹脂は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
ハードコートとしての硬度を達成するためには、放射線硬化性官能基を有する化合物中、2官能以上のモノマーが50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。さらには、放射線硬化性官能基を有する化合物中、3官能以上のモノマーが50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0076】
ハードコート層の厚みは、0.1~100μmの範囲が好ましく、0.8~20μmの範囲がより好ましい。
【0077】
ハードコート層の屈折率は、1.45~1.70であることがより好ましく、1.50~1.60であることがさらに好ましい。なお、ハードコート層の屈折率は、波長589nmの条件で測定される値である。
【0078】
ハードコート層の屈折率を調整する方法としては、樹脂の屈折率を調整する方法、粒子を添加する場合は粒子の屈折率を調整する方法等が挙げられる。粒子の具体例としては、防眩層の粒子として例示したものが挙げられる。
【0079】
ハードコート層は単独の層としてもよく、反射低減層等と組み合わせることも好ましい形態である。ハードコート層と反射低減層を組み合わせる場合、離型性フィルム上に反射低減層及びハードコート層をこの順で積層することが好ましい。なお、本明細書において、ハードコート層と反射低減層をあわせて1つの部材とみなし、その部材を反射低減層と称する場合がある。
【0080】
(帯電防止層)
帯電防止層は、帯電防止剤を含む層である限り特に制限されない。帯電防止剤としては、4級アンモニウム塩などのカチオン性帯電防止剤;ポリアニリン、ポリチオフェンなどの導電性高分子;針状金属フィラー;スズドープ酸化インジウム微粒子、アンチモンドープ酸化スズ微粒子などの導電性高屈折率微粒子が挙げられる。帯電防止剤は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
帯電防止層は、帯電防止剤に加えて、バインダ樹脂を含むことが好ましい。バインダ樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、アクリルなどが用いられる。バインダ樹脂は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
なお、ハードコート層に帯電防止剤を添加し、ハードコート層が帯電防止層として機能してもよい。ハードコート層に添加する帯電防止剤としては、前記例示の成分、例えば、第4級アンモニウム塩等のカチオン性帯電防止剤、スズドープ酸化インジウム(ITO)等の微粒子、導電性高分子等を用いることができる。
【0083】
帯電防止剤の含有量は、帯電防止層(ハードコート層が帯電防止機能を有する場合はハードコート層)の全固形分の合計質量に対して、1~30質量%であることが好ましい。
【0084】
(偏光子)
偏光子(偏光板、偏光膜、偏光層等とも称する)としては、例えば、一軸延伸されたポリビニルアルコール(PVA)にヨウ素又は有機系の二色性色素を吸着させたもの(PVA偏光子)、液晶化合物と二色性色素からなる組成物を塗工し配向させたもの(液晶偏光子)、ワイヤーグリッド偏光子などを用いることができる。
【0085】
コート層上に偏光子を設ける方法の例として、PVA偏光子の場合は(a)及び(b)の方法が挙げられる。
(a)PVA偏光子単体を貼り合わせる方法。
(b)離型性基材上のPVA偏光子を転写する方法。
【0086】
(a)の方法としては、接着剤又は粘着剤を用いてPVA偏光子単体を貼り合わせる方法が挙げられ、離型性フィルム上のコート層に接着剤又は粘着剤を用いてPVA偏光子を貼り合わせる方法が好ましい。このタイプの偏光子の厚みとしては、5~50μmが好ましく、さらには10~30μmが好ましく、特には12~25μmが好ましい。接着剤又は粘着剤の厚みは、1~10μmが好ましく、さらに好ましくは2~5μmである。
【0087】
(b)の方法において、離型性基材としては、離型性フィルムとして挙げたもの等が挙げられ、PET又はポリプロピレンなどの未延伸又は一軸延伸のフィルムが好ましい。離型性基材上にPVA偏光子を積層する方法としては、離型性基材にPVAを塗工し、離型性基材と共に延伸してPVAにヨウ素又は有機系の二色性色素を吸着させた後、ホウ素化合物で配向を固定化する方法が挙げられる。なお、本明細書において、離型性基材とPVA偏光子との積層体を「PVA偏光子転写用積層体」と呼ぶことがある。
【0088】
さらに、転写方法としては、PVA偏光子転写用積層体の偏光子面(離型性基材が積層されていない面)と、離型性フィルムとコート層の積層体のコート層面とを接着剤又は粘着剤で貼り合わせ、必要により離型性基材を剥離する方法が挙げられる。このタイプの偏光子の厚みとしては、1~10μmが好ましく、さらには2~8μmが好ましく、特には3~6μmが好ましい。接着剤又は粘着剤の厚みは、1~10μmが好ましく、さらに好ましくは2~5μmである。
【0089】
貼り合わせる際の接着剤としては、ポリビニルアルコール系接着剤、アクリル、エポキシなどの紫外線硬化型接着剤、エポキシ、イソシアネート(ウレタン)などの熱硬化型接着剤が好ましく用いられる。また、接着剤はホットメルト接着剤でもよい。粘着剤としては、アクリル系、ウレタン系、ゴム系などが挙げられる。また、粘着剤としては、アクリル系の基材レスの光学用透明粘着剤シートを用いることも好ましい。
【0090】
コート層上に偏光子を設ける方法の例として、液晶偏光子の場合は(c)及び(d)の方法が挙げられる。
(c)液晶偏光子用塗料を塗工する方法。
(d)離型性基材上の液晶偏光子を転写する方法。
【0091】
(c)の方法としては、コート層上に、液晶化合物を含有する液晶偏光子用塗料を塗工し、液晶化合物を配向及び固定させる方法が挙げられる。液晶化合物を配向及び固定させる方法としては、コート層をラビング処理し、この上に液晶偏光子用塗料を塗工し、加熱して配向させた後、紫外線で硬化して固定させる方法;液晶偏光子用塗料の塗工後に偏光の紫外線を照射して液晶化合物を配向させながら固定させる方法等が挙げられる。また、液晶偏光子用塗料を塗工する前にコート層上に配向制御層を設ける、すなわち、コート層上に配向制御層を介して液晶偏光子を積層することも好ましい方法である。
【0092】
(d)の方法としては、上記の方法(c)に準じて離型性基材上に液晶偏光子を積層し、この液晶偏光子面に接着剤又は粘着剤を用いてコート層を貼り合わせ、必要により離型性基材を剥離する方法が挙げられる。貼り合わせる際の接着剤及び粘着剤は前述のものが挙げられる。離型性基材は、PVA偏光子転写用積層体の離型性基材として挙げたもの、金属ベルトなどを用いることができる。なお、本明細書において、離型性基材と液晶偏光子の積層体を「液晶偏光子転写用積層体」と呼ぶことがある。
【0093】
液晶偏光子の厚みとしては、0.1~7μmが好ましく、さらには0.3~5μmが好ましく、特には0.5~3μmが好ましい。接着剤又は粘着剤の厚みは、1~10μmが好ましく、さらに好ましくは2~5μmである。
【0094】
さらに、配向制御層と液晶偏光子に関して詳しく説明する。
(配向制御層)
液晶偏光子用塗料はコート層又は離型性基材に直接塗工してもよいが、予め配向制御層を設け、この配向制御層上に塗工する方法も好ましい。なお、本明細書において、配向制御層と液晶偏光子をあわせて1つの部材とみなし、その部材を液晶偏光子と呼ぶことがある。配向制御層と組み合わせる液晶偏光子は、総称としての液晶偏光子と明確に区別するため、液晶偏光層と呼ぶことがある。
【0095】
配向制御層としては、液晶化合物を所望の配向状態にすることができるものであれば、どのような配向制御層でもよい。表面をラビング処理したラビング処理配向制御層、及び偏光の光照射により分子を配向させて配向機能を生じさせる光配向制御層が、配向制御層の好適な例として挙げられる。
【0096】
(ラビング処理配向制御層)
ラビング処理配向制御層の材料には、通常、ポリマーが用いられる。ポリマーとしては、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリイミド及びその誘導体、アクリル樹脂、ポリシロキサン誘導体などが好ましく用いられる。ポリマーは1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
ラビング処理配向制御層の形成方法は、上記のポリマー及び溶剤を含むラビング処理配向制御層用塗料をコート層又は離型性基材の離型面上に塗布して得られる塗膜の表面をラビング処理する工程を含むことが好ましい。ラビング処理配向制御層用塗料は架橋剤を含んでいてもよい。
【0098】
ラビング処理配向制御層用塗料の溶剤としては、ポリマー材料を溶解するものであれば制限なく用いることができる。具体例としては、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、セロソルブなどのアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル、ガンマーブチロラクトンなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;トルエン又はキシレンなどの芳香族炭化水素溶剤;テトラヒドロフラン又はジメトキシエタンなどのエーテル系溶剤などが挙げられる。溶剤は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0099】
ラビング処理配向制御層用塗料中のポリマーの濃度は、ポリマーの種類や製造しようとする配向制御層の厚みによって適宜調節できるが、固形分濃度で表して、0.2~20質量%とすることが好ましく、0.3~10質量%の範囲が特に好ましい。
【0100】
塗布する方法としては、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法及びアプリケータ法などの塗布法、フレキソ法などの印刷法などの公知の方法を採用することができる。
【0101】
塗布後は乾燥(例えば加熱乾燥)を行うことが好ましい。乾燥温度は、離型性フィルムの素材にもよるが、PETの場合30℃~170℃が好ましく、より好ましくは50~150℃、さらに好ましくは70~130℃である。乾燥温度がこのような範囲にあれば、乾燥時間を長く取る必要がなく生産性に優れ、転写用配向フィルムの熱伸長及び熱収縮がなく設計通りの光学機能が達成でき、平面性にも優れる。乾燥時間は、例えば0.5~30分であり、1~20分がより好ましく、さらには2~10分がより好ましい。
【0102】
ラビング処理配向制御層の厚さは、0.01~10μmであることが好ましく、さらには0.05~5μm、特には0.1μm~1μmであることが好ましい。
【0103】
ラビング処理は、一般には、表面を紙又は布で一定方向に擦ることにより実施することができる。ラビング処理は、ナイロン、ポリエステル、アクリルなどの繊維の起毛布のラビングローラーを用いる方法であることが好ましい。ラビング方向は、長尺状のフィルムの長手方向に対して斜めの所定方向に配向する配向制御層を設ける場合、当該方向に合った角度にすることが好ましい。角度の調整は、ラビングローラーとフィルムとの角度調整、フィルムの搬送速度とローラーの回転数の調整等で合わせることができる。
【0104】
(光配向制御層)
光配向制御層は、光反応性基を有するポリマー及び/又はモノマーと溶剤とを含む光配向制御層用塗料をコート層又は離型性基材に塗布し、偏光、好ましくは偏光紫外線を照射することによって配向規制力を付与した配向膜であることが好ましい。光反応性基は、光照射により液晶配向能を生じる基であることが好ましく、具体的には、光を照射することで生じる分子の配向誘起又は異性化反応、二量化反応、光架橋反応、あるいは光分解反応のような、液晶配向能の起源となる光反応を生じる基であることが好ましい。当該光反応性基の中でも、二量化反応又は光架橋反応を起こすものが、配向性に優れ、スメクチック液晶状態を保持する点で好ましい。以上のような反応を生じうる光反応性基としては、不飽和結合、特に二重結合であると好ましく、C=C結合、C=N結合、N=N結合、C=O結合からなる群より選ばれる少なくとも一つを有する基が特に好ましい。
【0105】
C=C結合を有する光反応性基としては、例えば、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾ-ル基、スチルバゾリウム基、カルコン基、シンナモイル基などが挙げられる。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基及び芳香族ヒドラゾンなどの構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基、ホルマザン基、アゾキシベンゼンを基本構造とするものなどが挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基、マレイミド基などが挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリ-ル基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、ハロゲン化アルキル基などの置換基を有していてもよい。置換基の数は、特に制限されないが、例えば、1、2、3、又は4個である。
【0106】
中でも、光二量化反応を起こしうる光反応性基が好ましく、シンナモイル基及びカルコン基が、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性及び経時安定性に優れる光配向制御層が得られやすいため好ましい。さらに、光反応性基を有するポリマーとしては、当該ポリマー側鎖の末端部が桂皮酸構造となるようなシンナモイル基を有するものが特に好ましい。主鎖の構造としては、ポリイミド、ポリアミド、(メタ)アクリル、ポリエステル等が挙げられる。
【0107】
具体的な配向制御層としては、例えば、特開2006-285197号公報、特開2007-76839号公報、特開2007-138138号公報、特開2007-94071号公報、特開2007-121721号公報、特開2007-140465号公報、特開2007-156439号公報、特開2007-133184号公報、特開2009-109831号公報、特開2002-229039号公報、特開2002-265541号公報、特開2002-317013号公報、特表2003-520878号公報、特表2004-529220号公報、特開2013-33248号公報、特開2015-7702号公報、特開2015-129210号公報に記載の配向制御層が挙げられる。
【0108】
光配向制御層用塗料の溶剤としては、光反応性基を有するポリマー及びモノマーを溶解するものであれば制限なく用いることができる。具体例としてはラビング処理配向制御層の形成方法で挙げたものが例示できる。光配向制御層用塗料には、光重合開始剤、重合禁止剤、各種安定剤を添加することも好ましい。また、光配向制御層用塗料には、光反応性基を有するポリマー及びモノマー以外のポリマー、光反応性基を有するモノマーと共重合可能な光反応性基を有しないモノマーを加えてもよい。
【0109】
光配向制御層用塗料のポリマー又はモノマーの濃度、塗布方法、乾燥条件もラビング処理配向制御層の形成方法で挙げたものが例示できる。厚みもラビング処理配向制御層の好ましい厚みと同様である。
【0110】
偏光は、配向前の光配向制御層面の方向から照射することが好ましい。
【0111】
偏光の波長は、光反応性基を有するポリマー又はモノマーの光反応性基が、光エネルギーを吸収できる波長領域のものが好ましい。具体的には、波長250~400nmの範囲の紫外線が好ましい。偏光の光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArFなどの紫外光レ-ザ-などが挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプが好ましい。
【0112】
偏光は、例えば、前記光源からの光を偏光子に通すことにより得られる。偏光子の偏光角を調整することにより、偏光の方向を調整することができる。偏光子は、偏光フィルター、グラントムソン、グランテ-ラ-等の偏光プリズム、ワイヤーグリッドタイプの偏光子が挙げられる。偏光は、実質的に平行光であることが好ましい。
【0113】
照射する偏光の角度を調整することにより、光配向制御層の配向規制力の方向を任意に調整することができる。
【0114】
照射強度は重合開始剤や樹脂(モノマー)の種類や量で異なるが、例えば365nm基準で10~10000mJ/cmが好ましく、さらには20~5000mJ/cmが好ましい。
【0115】
(液晶偏光子)
液晶偏光子は一方向のみの光を通過させる偏光子としての機能を有し、二色性色素を含むことが好ましい。
【0116】
<二色性色素>
二色性色素は、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する有機色素であることが好ましい。
【0117】
二色性色素は、300~700nmの範囲に吸収極大波長(λMAX)を有するものが好ましい。このような二色性色素は、例えば、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素、アントラキノン色素などが挙げられるが、中でもアゾ色素が好ましい。アゾ色素は、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、スチルベンアゾ色素などが挙げられ、好ましくはビスアゾ色素及び/又はトリスアゾ色素である。二色性色素は単独でも、2種類以上を組み合わせてもよいが、色調を調整(無彩色)するため、2種以上を組み合わせることが好ましい。特には3種類以上を組み合わせるのが好ましい。特に、3種類以上のアゾ化合物を組み合わせるのが好ましい。
【0118】
好ましいアゾ化合物としては、特開2007-126628号公報、特開2010-168570号公報、特開2013-101328号公報、特開2013-210624号公報に記載の色素が挙げられる。
【0119】
二色性色素はアクリルなどのポリマーの側鎖に導入された二色性色素ポリマーであることも好ましい形態である。二色性色素ポリマーとしては、特開2016-4055号公報で挙げられるポリマー、特開2014-206682号公報の[化6]~[化12]の化合物が重合されたポリマーが例示できる。
【0120】
液晶偏光子中の二色性色素の含有量は、二色性色素の配向を良好にする観点から、液晶偏光子中、0.1~30質量%が好ましく、0.5~20質量%がより好ましく、1.0~15質量%がさらに好ましく、2.0~10質量%が特に好ましい。
【0121】
液晶偏光子には、膜強度、偏光度、膜均質性の向上のため、さらに重合性液晶化合物が含まれていることが好ましい。なお、重合性液晶化合物は膜として重合後の物も含まれる。
【0122】
<重合性液晶化合物>
重合性液晶化合物は、重合性基を有し、かつ、液晶性を示す化合物であることが好ましい。重合性基は、重合反応に関与する基を意味し、光重合性基であることが好ましい。ここで、光重合性基とは、後述する光重合開始剤から発生した活性ラジカル、酸などによって重合反応し得る基をいう。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。液晶性を示す化合物は、サーモトロピック液晶でもリオトロピック液晶でもよい。また、サーモトロピック液晶は、ネマチック液晶でもスメクチック液晶でもよい。
【0123】
重合性液晶化合物は、より高い偏光特性が得られるという点でスメクチック液晶化合物が好ましく、高次スメクチック液晶化合物がより好ましい。重合性液晶化合物が形成する液晶相が高次スメクチック相であると、配向秩序度のより高い液晶偏光子を製造することができる。
【0124】
具体的な好ましい重合性液晶化合物としては、例えば、特開2002-308832号公報、特開2007-16207号公報、特開2015-163596号公報、特表2007-510946号公報、特開2013-114131号公報、WO2005/045485号公報、Lub et al. Recl.Trav.Chim.Pays-Bas,115, 321-328(1996)などに記載のものが挙げられる。
【0125】
液晶偏光子中の重合性液晶化合物の含有割合は、重合性液晶化合物の配向性を高くするという観点から、液晶偏光子中70~99.5質量%が好ましく、より好ましくは75~99質量%、さらに好ましくは80~97質量%であり、特に好ましくは83~95質量%である。
【0126】
液晶偏光子は液晶偏光子用塗料を塗工して設けることができる。液晶偏光子用塗料は、添加剤、例えば、溶剤、重合開始剤、増感剤、重合禁止剤、レベリング剤、重合性非液晶化合物、架橋剤等を含んでもよい。添加剤は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0127】
溶剤としては、配向制御層用塗料の溶剤として挙げたものが好ましく用いられる。
【0128】
重合開始剤は、重合性液晶化合物を重合させるものであれば限定はされないが、光により活性ラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。重合開始剤としては、例えばベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩、スルホニウム塩などが挙げられる。
【0129】
増感剤としては、光増感剤が好ましく、例えば、キサントン化合物、アントラセン化合物、フェノチアジン、ルブレン等が挙げられる。
【0130】
重合禁止剤としては、ハイドロキノン類、カテコール類、チオフェノール類が挙げられる。
【0131】
重合性非液晶化合物としては、重合性液晶化合物と共重合するものが好ましく、例えば、重合性液晶化合物が(メタ)アクリロイルオキシ基を有する場合は(メタ)アクリレート類が挙げられる。(メタ)アクリレート類は単官能であっても多官能であってもよい。多官能の(メタ)アクリレート類を用いることで、偏光子の強度を向上させることができる。重合性非液晶化合物を用いる場合、その含有量は、偏光度の低下を抑制するため、液晶偏光子中に1~15質量%とすることが好ましく、さらには2~10質量%、特には3~7質量%にすることが好ましい。
【0132】
架橋剤としては、重合性液晶化合物、重合性非液晶化合物の官能基と反応しうる化合物が挙げられ、イソシアネート化合物、メラミン、エポキシ樹脂、オキサゾリン化合物などが挙げられる。
【0133】
液晶偏光子用塗料をコート層上、離型性基材上、又は配向制御層上に塗工後、必要により乾燥、加熱、硬化することにより、液晶偏光子を作製することができる。
【0134】
塗工方法としては、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法及びアプリケータ法などの塗布法や、フレキソ法などの印刷法などの公知の方法を採用することができる。
【0135】
乾燥は、乾燥機(温風乾燥機、赤外線乾燥機など)で30~170℃の温度で行われることが好ましい。乾燥温度は、より好ましくは50~150℃、さらに好ましくは70~130℃であり、乾燥時間は0.5~30分が好ましく、1~20分がより好ましく、さらには2~10分がより好ましい。
【0136】
液晶偏光子中の二色性色素及び重合性液晶化合物をより強固に配向させるために、加熱を行うことができる。加熱温度は、重合性液晶化合物が液晶相を形成する温度範囲にすることが好ましい。
【0137】
液晶偏光子用塗料に重合性液晶化合物が含まれる場合、硬化するのが好ましい。硬化方法としては、加熱及び光照射が挙げられ、光照射が好ましい。硬化により二色性色素を配向した状態で固定することができる。硬化は、重合性液晶化合物に液晶相を形成させた状態で行うのが好ましく、液晶相を示す温度で光照射して硬化してもよい。光照射における光は、可視光、紫外光及びレーザー光が挙げられる。取り扱いやすい点で、紫外光が好ましい。
【0138】
照射強度は重合開始剤や樹脂(モノマー)の種類や量で異なるが、例えば365nm基準で100~10000mJ/cmが好ましく、さらには200~5000mJ/cmが好ましい。
【0139】
液晶偏光子は、液晶偏光子用塗料を配向制御層上に塗布することで、色素が配向層の配向方向に沿って配向し、所定方向の偏光透過軸を有することになるが、配向制御層を設けない場合は、偏光を照射して液晶偏光子用塗料を硬化させることで、液晶偏光子を配向させることもできる。
【0140】
偏光子を設ける方法としてはいずれであってもよいが、特には(b)、(c)、(d)の方法が好ましい。
【0141】
(位相差層)
LP1が、偏光子のコート層とは反対側に位相差層を有することも好ましい形態である。位相差層としては、液晶表示装置の場合に偏光子と画像表示セルの間に光学補償のために設けられるもの、有機EL表示装置、マイクロLED表示装置などの場合に反射防止のために設けられるもの(λ/4位相差層、λ/2位相差層等)が代表的なものとして挙げられる。
【0142】
位相差層は、位相差用塗料の塗工により設けられた層が好ましく、液晶化合物又は高分子化合物を含有する塗料の塗工により設けられた層であることがより好ましい。位相差層は、目的に合わせて、正又は負のAプレート、正又は負のCプレート、Oプレートなどを適宜選択できる。Cプレートとしては、ディスコティック液晶化合物を水平配向させたもの(特開2008-40309号公報)、棒状液晶化合物にカイラル剤を添加してねじれらせん構造配向としたもの、高分子化合物層が好ましく、特にはディスコティック液晶化合物を水平配向させたものが好ましい。Aプレートとしては、棒状液晶化合物を水平配向させたものが挙げられ、配向方向(遅相軸方向)は偏光子の透過軸と平行であることが好ましい。
【0143】
高分子化合物としては、繰り返し単位に少なくとも1種の芳香族環を有するポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリエステルイミドなどのポリマーが挙げられる。
【0144】
液晶化合物としては、配向状態を固定できるという面で、二重結合などの重合性基を持つ重合性液晶化合物であることが好ましい。また、液晶化合物としては、棒状液晶化合物、ディスコティック液晶化合物などを使用することができる。
【0145】
棒状液晶化合物の例としては、特開2002-030042号公報、特開2004-204190号公報、特開2005-263789号公報、特開2007-119415号公報、特開2007-186430号公報、及び特開平11-513360号公報に記載された重合性基を有する棒状液晶化合物が挙げられる。
【0146】
具体的な棒状液晶化合物としては、
CH=CHCOO-(CH-O-Ph1-COO-Ph2-OCO-Ph1-O-(CH-OCO-CH=CH
CH=CHCOO-(CH-O-Ph1-COO-NPh-OCO-Ph1-O-(CH-OCO-CH=CH
CH=CHCOO-(CH-O-Ph1-COO-Ph2-OCH
CH=CHCOO-(CH-O-Ph1-COO-Ph1-Ph1-CHCH(CH)C
(式中、
m及びnは2~6の整数であり、
Ph1及びPh2は1,4-フェニレン基(Ph2は2位にメチル基が置換されていてもよい)であり、
NPhは2,6-ナフチレン基である)
が挙げられる。
【0147】
これらの棒状液晶化合物は、BASF社製からLC242等として市販されており、それらを利用することができる。
【0148】
これらの棒状液晶化合物は複数種を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0149】
ディスコティック液晶化合物としては、ベンゼン誘導体、トルキセン誘導体、シクロヘキサン誘導体、アザクラウン系、フェニルアセチレン系マクロサイクル等が挙げられる。ディスコティック液晶化合物は、特開2001-155866号公報にも様々なものが記載されており、これらが好適に用いられる。
【0150】
中でもディスコティック液晶化合物として、下記一般式(1)で表されるトリフェニレン環を有する化合物が好ましく用いられる。
【化1】
式中、R~Rはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、アルキル基、又は-O-Xで示される基(ここで、Xは、アルキル基、アシル基、アルコキシベンジル基、エポキシ変性アルコキシベンジル基、アクリロイルオキシ変性アルコキシベンジル基、アクリロイルオキシ変性アルキル基である)である。R~Rは、下記一般式(2)で表されるアクリロイルオキシ変性アルコキシベンジル基(mは4~10の整数)であることが好ましい。
【0151】
【化2】
【0152】
位相差の程度は、液晶表示装置の光学補償として用いられる場合は、液晶セルのタイプ、液晶セルに用いられる液晶化合物の性質により適宜設定される。例えば、TNタイプの場合はディスコティック液晶を用いて厚み方向に傾斜角を変化させていく傾斜配向が好ましく用いられる。VAタイプ又はIPSタイプの場合、棒状液晶化合物又はディスコティック液晶化合物を用いたCプレート層又はAプレート層が好ましく用いられる。また、λ/4位相差層及びλ/2位相差層の場合は、棒状化合物を用いて、Aプレート層とすることが好ましい。これらの位相差層は単層で用いてもよく、複数の位相差層を組み合わせて用いてもよい。
【0153】
位相差層を形成する方法は、位相差層用塗料を偏光子上に塗工する方法であってもよく、離型性基材上の位相差層(位相差層転写用積層体)を偏光子に転写する方法であってもよい。また、離型性基材上の偏光子(例えば、PVA偏光子、液晶偏光子)及び位相差層(偏光子及び位相差層転写用積層体)をコート層に転写してもよい。位相差層転写用積層体、並びに、偏光子及び位相差層転写用積層体の離型性基材は、PVA偏光子転写用積層体の離型性基材で挙げたもの等を用いることができる。
【0154】
位相差層用塗料は、溶剤、重合開始剤、増感剤、重合禁止剤、レベリング剤、重合性非液晶化合物、架橋剤等を含んでもよい。これらは、配向制御層又は液晶偏光子で説明したものを用いることができる。
【0155】
位相差層の液晶化合物を配向させる方法としては、上述の液層偏光子の配向と同様の方法を採ることができる。すなわち、位相差層用塗料を偏光子又は離型性基材に直接塗工して偏光紫外線を照射する方法、偏光子又は離型性基材をラビング処理する方法、偏光子と位相差層との間に配向制御層を設ける方法などが挙げられる。これらの条件も配向制御層又は液晶偏光子で説明した条件が好ましい条件として用いられる。
【0156】
位相差層は複数設けてもよい。この場合、1つの離型性基材上に複数の位相差層を有する積層体を用いて、複数の位相差層を偏光子に転写してもよい。また、1つの離型性基材上に1つの位相差層を有する積層体を複数用いて、位相差層を1つずつ偏光子に転写してもよい。塗工方法と転写方法を組み合わせてもよい。
【0157】
位相差層は画像表示セルのタイプにより適宜選択できる。以下、代表的な液晶セルに用いる位相差層について説明する。
【0158】
(TNタイプ液晶セル用の位相差層)
TNタイプ液晶セルにおいて、位相差層としては、ディスコティック液晶化合物で形成された層が好ましく、ディスコティック液晶化合物のディスコティック構造単位の円盤面が位相差層の厚み方向で徐々に傾斜角を変えながら配向された層であることが特に好ましい。
【0159】
ディスコティック液晶化合物のディスコティック構造単位の円盤面と位相差層の平面とがなす角度の下限は好ましくは5度であり、より好ましくは10度である。この角度の上限は好ましくは85度であり、より好ましくは80度である。
【0160】
ディスコティック液晶化合物のディスコティック構造単位の円盤面と位相差層の平面とがなす角度の最小値と最大値の差の下限は好ましくは10度であり、より好ましくは15度である。この差の上限は好ましくは60度であり、より好ましくは55度である。
【0161】
位相差層の平面方向でのディスコティック液晶化合物の配向方向は、ディスコティック液晶化合物のディスコティック構造の円盤面が立った状態で偏光子の吸収軸と平行になっている方向になるように調整することが好ましい。
【0162】
位相差層の厚み方向のレタデーションRth(((nx+ny)/2-nz)×d)の下限は好ましくは20nmであり、より好ましくは50nmであり、さらに好ましくは100nmである。Rthの上限は好ましくは400nmであり、より好ましくは380nmであり、さらに好ましくは350nmである。
【0163】
位相差層は特定の光軸を持たず、法線方向から傾いた方向にレタデーションの絶対値の最小値を有することが好ましい。レタデーションの絶対値が最小となる方向と法線方向との角度の下限は好ましくは5度であり、より好ましくは10度である。この角度の上限は好ましくは50度であり、より好ましくは40度である。
【0164】
位相差層の特性を上記のようにすることにより、画像表示装置を斜めから見た場合の光漏れ及び色調の変化を効果的に防止し、視野角を広げることができる。
【0165】
一般的に、TNタイプの液晶セルに用いる偏光子は吸収軸が液晶セルの辺に対して45度となるようにすることが好ましい。偏光子転写用積層体を巻き取った状態のロール状物とすると、液晶セルへの貼り合わせの利便性の点では、偏光子の吸収軸の方向を、ロール状に巻き取った偏光子転写用積層体の長手方向(例えばフィルム流れ方向又はロールの巻き取り方向)に対して45度になるようにすることが好ましい。この場合、位相差層は、偏光子の吸収軸方向に合わせてロール状の偏光子転写用積層体に積層されていることが好ましい。
【0166】
このような吸収軸が斜めになったロール状の偏光子転写用積層体においては、製造の容易さから、偏光子は液晶偏光子であることが好ましい。
【0167】
偏光子転写用積層体は、偏光子の吸収軸を長手方向に対して平行又は垂直の方向となるようにし、ロール状の偏光子転写用積層体を長手方向に対して斜めに切り出し、これを用いて液晶セルに転写してもよい。
【0168】
液晶セルの視認側及び光源側に位相差層を設ける場合、視認側位相差層及び光源側位相差層は、全体で光学補償される限り特に制限されず、視認側と光源側の位相差層が同じでなくてもよい。例えば、視認側位相差層をディスコティック液晶の傾斜配向層とする場合、光源側位相差層を設けないか、光源側位相差層をAプレート層又はCプレート層、これらの複合層にすることも好ましい形態である。また、視認側位相差層と光源側位相差層を同じ位相差層にすることも好ましい形態である。
【0169】
(VAタイプ液晶セル用の位相差層)
VAタイプ液晶セルにおいて、位相差層の屈折率楕円体は、厚みを持った円盤状(例えばアンパン状)~楕円板状(例えばハンバーグ状)であることが好ましい。
【0170】
位相差層の面内レタデーション(Re)は0~200nmが好ましく、厚み方向のレタデーション(Rth)は70~400nmであることが好ましく、Re<Rthを満たすことが好ましい。
【0171】
Reの下限はより好ましくは10nmであり、さらに好ましくは20nmである。Reの上限はより好ましくは100nmであり、さらに好ましくは70nmである。
【0172】
Rthの下限はより好ましくは100nmであり、さらに好ましくは120nmである。Rthの上限はより好ましくは350nmであり、さらに好ましくは300nmであり、特に好ましくは250nmである。
【0173】
Rth-Reの下限は好ましくは20nmであり、より好ましくは40nmであり、さらに好ましくは50nmである。上限は好ましくは300nmであり、より好ましくは250nmであり、さらに好ましくは200nmである。
【0174】
Re、Rth、及び差(Rth-Re)を上記の範囲にすることにより、角度により光漏れが生じたり、階調性の低下、色調のズレが生じたりするのを効果的に低減することができる。
【0175】
位相差層は、ディスコティック液晶化合物又は棒状液晶化合物で形成された位相差層が好ましい。また、位相差層の好適な例としては、具体的には、Cプレート層(例えば負のCプレート層)のみ、Aプレート層(例えば正のAプレート層)のみ、Cプレート層とAプレート層の組み合わせ、Aプレート層の直交組み合わせなどが挙げられる。
【0176】
液晶セルの視認側及び光源側に位相差層を設ける場合、視認側位相差層及び光源側位相差層は、全体で光学補償される限り特に制限されず、視認側と光源側の位相差層が同じでなくてもよい。例えば、Aプレート層及びCプレート層の組み合わせで光学補償をする場合、視認側位相差層をAプレート層及びCプレート層の組み合わせとして光源側位相差層を設けないか、視認側位相差層をAプレートとし、光源側位相差層をCプレート層にするか、視認側位相差層をCプレートとし、光源側位相差層をAプレート層にすることも好ましい形態である。また、視認側位相差層と光源側位相差層を同じ位相差層にすることも好ましい形態である。
【0177】
偏光子(複合偏光子の場合、例えば吸収型偏光子)の吸収軸は液晶セルの辺に対して平行又は垂直となるようにすることが好ましい。偏光子(例えばロールフィルム)の吸収軸は長手方向(例えばフィルム流れ方向又はロールの巻き取り方向)に対して平行又は垂直となるようにすることが好ましい。
【0178】
(IPSタイプ液晶セル用の位相差層)
IPSタイプ液晶セルの場合、位相差層を設けないことが好ましいが、位相差層を設けてもよい。IPSタイプ液晶セルでは、液晶セルの液晶化合物の影響は少ないが、ディスプレイを斜め方向から見た場合に光源側偏光子の吸収軸と視認側偏光子の吸収軸が90度からずれて光漏れが発生するため、位相差層を用いる場合はこの角度のずれを修正するものであることが好ましい。
【0179】
位相差層のReは絶対値で0~360nmの範囲から、また、位相差層のRthは絶対値で0~360nmの範囲から、設計思想に合わせて適宜選択されることが好ましい。位相差層は、複数の屈折率楕円体(例えばハンバーグ状のもの)を水平方向に並べたような、正のCプレートと正のAプレートの組み合わせが好ましい。各プレートにおいて、nx>nz≧ny又はnz>nx>nyであることが好ましい。
【0180】
複数の位相差層を組み合わせて垂直方向に積層することも好ましい。位相差層は、少なくとも正のCプレート層を有することが好ましい。正のCプレート層のReは-10~10nmであることが好ましく、さらには-5~5nmであることが好ましい。正のCプレート層のRthは-220~-50nmであることが好ましく、さらには-200~-60nmであることが好ましい。正のCプレート層は棒状液晶化合物を垂直配向させたものであることが好ましい。
【0181】
正のCプレート層は、正のAプレート層と組み合わせることが好ましい。正のAプレート層のReは50~230nmが好ましく、さらには80~220nmが好ましい。正のAプレート層のRthは30~150nmが好ましく、さらには60~130nmが好ましい。正のAプレート層のnz((nx-nz)/(nx-ny))は0.8~1.2が好ましく、さらには0.9~1.1が好ましい。正のAプレート層は棒状液晶化合物を水平配向させたものであることが好ましく、配向方向(遅相軸方向)は偏光子の透過軸と平行であることが好ましい。
【0182】
正のCプレート層と正のAプレート層の積層順は限定するものではないが、正のCプレート層を液晶セル側とすることが好ましい。また、正のCプレート層と正のAプレート層の組み合わせを液晶セルの視認側の位相差層として用い、液晶セルの光源側には位相差層を設けないことが好ましいが、別途位相差層を設けてもよい。また、正のCプレート層を光源側及び視認側のいずれか一方の側に用い、正のAプレート層を他方の側に用いてもよい。この場合は適宜光学特性を調整しうる。
【0183】
IPSタイプ液晶セル用の場合も、VAタイプ液晶セル用と同様に、偏光子(例えばロールフィルム)の吸収軸は、長手方向(例えばフィルム流れ方向又はロールの巻き取り方向)に対して平行又は垂直となるよう配向されたものであることが好ましい。
【0184】
なお、上記各タイプの液晶セル用の位相差層の説明で角度(45度、平行、垂直)は好ましくは5度、より好ましくは3度、さらに好ましくは2度の誤差を含むものとする。
【0185】
(有機EL表示装置)
有機EL表示装置は、反射防止の目的で、有機ELセルの視認側に円偏光板を有することが好ましい。円偏光板における位相差層はλ/4位相差層であることが好ましい。以下、λ/4位相差層について詳しく説明する。
【0186】
(λ/4位相差層)
λ/4位相差層は、偏光子を通過した直線偏光を円偏光に変換し、有機ELセル内の配線、ガラス基板などで反射された円偏光を入射した直線偏光とは90度ずれた直線偏光に変換することができる。λ/4位相差層は単層のλ/4位相差層であってもよく、λ/4位相差層とλ/2位相差層との複合λ/4位相差層であってもよい。λ/4位相差層には、Cプレート層などが設けられていてもよい。本明細書において、単層の位相差層と複合λ/4位相差層をあわせてλ/4位相差層と称する場合がある。
【0187】
λ/4位相差層の面内レタデーションは100~180nmが好ましく、さらに好ましくは120~150nmである。λ/2位相差層の面内レタデーションは200~360nmが好ましく、さらに好ましくは240~300nmである。
【0188】
(λ/4位相差層の遅相軸の角度)
単層のλ/4位相差層の場合、λ/4位相差層の配向軸(遅相軸)と偏光子の透過軸がなす角度は35~55度が好ましく、より好ましくは40度~50度、さらに好ましくは42~48度である。
【0189】
λ/4位相差層とλ/2位相差層を組み合わせた複合λ/4位相差層の場合、各位相差層の配向軸(遅相軸)は、両層でλ/4の位相差となるような角度に配置されることが好ましい。具体的には、λ/2位相差層の配向軸(遅相軸)と偏光子の透過軸がなす角度(θ)は5~20度が好ましく、より好ましくは7度~17度である。λ/2位相差層の配向軸(遅相軸)とλ/4位相差層の配向軸(遅相軸)がなす角度は、2θ+45度±10度の範囲が好ましく、より好ましくは2θ+45度±5度の範囲であり、さらに好ましくは2θ+45度±3度の範囲である。
【0190】
λ/4位相差層の例としては、特開2008-149577号公報、特開2002-303722号公報、WO2006/100830号公報、特開2015-64418号公報、特開2018-10086号公報等を参考とすることができる。
【0191】
さらに、斜めから見た場合の着色の変化などを低減するため、λ/4位相差層の上にCプレート層を設けることも好ましい形態である。Cプレート層としては、λ/4位相差層及びλ/2位相差層の特性に合わせ、正又は負のCプレート層が選択される。
【0192】
複合λ/4位相差層において、λ/4位相差層とλ/2位相差層の積層方法としては、例えば、
・偏光子上にλ/2位相差層を転写により設け、その上にλ/4位相差層を転写により設ける方法
・偏光子上にλ/2位相差層を転写により設け、その上にλ/4位相差層を塗工により設ける方法
・偏光子上にλ/2位相差層を塗工により設け、その上にλ/4位相差層を転写により設ける方法
・偏光子上にλ/2位相差層及びλ/4位相差層を塗工により設ける方法
・離型性基材上にλ/4位相差層及びλ/2位相差層をこの順に設け、これらを偏光子上に転写する方法
が挙げられる。
【0193】
λ/4位相差層上にCプレート層を積層する方法としては、偏光子上のλ/4位相差層の上にCプレート層を転写により設ける方法、離型性基材の上にCプレート層を設け、さらにこの上に単層のλ/4位相差層又は複合λ/4位相差層(λ/2位相差層及びλ/4位相差層)を設けて、これらを偏光子に転写する方法など、様々な方法が採用できる。
【0194】
位相差層のレタデーションを測定する方法としては、例えば、自動複屈折計(KOBRAシリーズ、王子計測(株)など)を用いて、位相差層の表面を法線方向に対して0度の位置から面内の光学軸方向に10度おきに50度まで傾けて測定し、付属のソフトに膜厚及び平均屈折率naを入力して算出する方法が挙げられる。
【0195】
また、他の方法としては、例えば、法線方向から前述の自動複屈折計などでレタデーション(R0=Re)を測定し、さらに位相差層の表面を法線方向から面内の光学軸方向に40度傾けてレタデーション(R40)を測定し、これらのレタデーションの値、位相差層の厚みd、及び位相差層の平均屈折率naから、下記数式(2)、(3)、及び(4)によりnx、ny及びnzを求め、これらを数式(1)に代入して、Rthを算出することができる。
Rth=[(nx+ny)/2-nz]×d (1)
R0=(nx-ny)×d (2)
R40=(nx-ny')×d/cos(φ) (3)
(nx+ny+nz)/3=na (4)
なお、
φ=sin-1〔sin(40°)/na〕
ny’=ny×nz/〔ny×sin(φ)+nz×cos(φ)〕1/2
【0196】
平均屈折率naは、例えば、以下の方法で求めた値を使用することができる。
・位相差層用塗料の溶媒を除去した後、非晶状態で紫外線を照射して得た薄膜切片を用い、アッベ屈折率計で測定した値
・類似の組成物からなる位相差層の値又はそれらの平均的な数値
・面内に光学軸を持つように配向させてReを測定し、膜厚からnxとnyを算出し、nzはnx(負のAプレート)又はny(正のAプレート)と同じ値とした場合に計算される値
【0197】
位相差層のレタデーション測定用サンプルは、例えば、ガラスフィルムに同じ条件で位相差層を設けたもの;離型性基材に同じ条件で位相差層を設け、これをガラス板に転写したものが挙げられる。
【0198】
(層間保護層)
LP1は、任意の2つの層の間(例えば、偏光子と位相差層の間、位相差層の偏光子が積層されていない面、複数の位相差層の間、接着剤又は粘着剤と偏光子又は位相差層との間)に、層間保護層を有していてもよい。層間保護層は、各層の成分又は使用溶剤が隣接する他の層に移行し、偏光度の低下又は位相差の変化が起こることを防ぐことができる。層間保護層は、位相差層及び/又は偏光子と共に離型性基材上に設けて対象物に転写してもよい。
【0199】
層間保護層としては、例えば、透明樹脂層などが挙げられる。透明樹脂としては、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスチレン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられるが、これらに特に限定されない。透明樹脂は架橋剤により架橋して架橋構造としてもよい。また、ハードコートのようなアクリルなどの硬化性(例えば光硬化性)組成物を硬化(例えば光硬化)させたものであってもよい。また、層間保護層を配向フィルム上に設けた後、層間保護層をラビング処理し、その上に配向制御層を設けることなく、液晶化合物配向層(液晶偏光子、位相差層など)を設けてもよい。
【0200】
偏光子に直接又は層間保護層を介して位相差層が設けられていることが好ましい。なお、偏光子に直接位相差層が設けられているとは、偏光子と位相差層が接触しているだけではなく、偏光子と位相差層が接着剤又は粘着剤で貼り合わされていることも含む。貼り合わせる際の接着剤又は粘着剤は前述のものが挙げられる。
【0201】
(偏光子転写用積層体LP2)
LP2は、離型性フィルム上に偏光子を有することが好ましい。また、LP2は、偏光子の離型性フィルムとは反対側に位相差層を有することが好ましく、離型性フィルムと偏光子との間にコート層を有することが好ましい。
【0202】
LP2に用いられる離型性フィルムは、LP1で説明したものと同様である。LP2で用いられる離型性フィルムは、LP1で用いられる離型性フィルムと同じものであっても異なるものであってもよい。
【0203】
LP2に用いられるコート層は、LP1で説明したものと同様である。LP2で用いられるコート層は、LP1で用いられるコート層と同じものであっても異なるものであってもよい。
【0204】
LP2に用いられる偏光子はLP1で説明したものと同様である。LP2で用いられる偏光子は、LP1で用いられる偏光子と同じものであっても異なるものであってもよい。
【0205】
なお、LP2が離型性フィルムと偏光子の間にコート層を有しない場合には、LP1で述べた偏光子及び配向制御層を設ける方法の説明で、「コート層」を「離型性フィルム」と、「離型性フィルムとコート層の積層体のコート層面」を「離型性フィルムの離型面」と読み替えることができる。
【0206】
LP2に用いられる位相差層はLP1で説明したものと同様である。LP2で用いられる位相差層は、LP1で用いられる位相差層と同じものであっても異なるものであってもよい。
【0207】
LP1及びLP2は、画像表示セルを積層する側の面(偏光子面又は位相差層面等)を保護するため、その面にマスキングフィルムが貼り合わされているものであってもよい。マスキングフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどの基材に、アクリル系、ゴム系、ポリオレフィン系などの粘着層を設けたものが好ましく用いられる。マスキングフィルの代わりに、偏光子又は位相差層等を転写する際に用いられた離型性基材が残存したものであってもよい。
マスキングフィルム及び離型性基材は、画像表示セルに貼り合わせる直前、又は、粘着剤層又は接着剤層を設ける直前に剥離されることが好ましい。
また、LP1及びLP2は、偏光子面又は位相差層面等に画像表示セルを貼り合わせるための接着剤層又は粘着剤層を設けたものであってもよく、さらにはこれら接着剤層又は粘着剤層の上にセパレータを積層したものであってもよい。セパレータは、PVA偏光子転写用積層体の離型性基材で挙げたもの等を用いることができる。
【0208】
LP1及びLP2は、構成層として製造工程用フィルム以外に自立性フィルムを有しないことが好ましい。ここで自立性フィルムは、フィルムとして独立して製造されたものである。自立性フィルムとしては、例えば、偏光子保護フィルムが挙げられる。製造工程用フィルムとは、偏光子転写用積層体の製造のために用いられるが画像表示装置では最終的に除去される部材であり、例えば、離型性フィルム、離型性基材、マスキングフィルム、セパレータ等が挙げられる。
【0209】
LP1及びLP2を構成する各層は塗工によって設けられるか、転写によって設けられることが好ましい。これにより更なる薄型化及び軽量化を図ることができる。
【0210】
(画像表示セル及び画像表示装置)
一般的に、液晶表示装置などで電極を有するガラス板などに液晶化合物を封止した状態ものが液晶セル、有機EL表示装置などで電極を有するガラス板などに有機発光体を封止した状態ものが有機ELセルと呼ばれている。本発明では、このように偏光板を設ける前の状態のものを画像表示セルとする。
【0211】
また、一般的に、画像表示セルに偏光板を設け、信号を入力すれば画像が表示できる状態のもの、これにタッチパネルなどの部材を積層した状態のものを画像表示パネルと呼び、さらに、画像を表示するための信号のコントローラーと共に、画像表示パネルを筐体などに組み込んだものを画像表示装置と呼ぶことがある。本発明の画像表示装置は、画像表示パネル、すなわち、信号を入力すれば画像が表示できる状態のものを含むことが好ましい。
【0212】
(液晶表示装置)
液晶表示装置は液晶セルの両側に偏光子が設けられることが好ましい。液晶表示パネルの少なくとも片面の偏光子は前記偏光子であることが好ましく、両面の偏光子が前記偏光子であることが好ましい。液晶セルに偏光子を設ける順番は視認側が先であっても光源側が先であってもよく、同時であってもよい。
【0213】
(LP1の貼り合わせ)
液晶表示装置は、液晶セルの視認側にLP1を有することが好ましい。液晶セルの視認側にLP1を貼り合わせる方法としては、液晶セルの視認側面と、LP1の離型性フィルムとは反対側の面(偏光子面、又は偏光子上に他の層が積層されている場合は他の層の表面)とを接着剤又は粘着剤を用いて貼り合わせる方法が挙げられる。接着剤又は粘着剤としては、LP1の各層を貼り合わせる接着剤又は粘着剤が好ましく用いられる。接着剤又は粘着剤は、予めLP1に設けておいてもよく、貼り合わせる直前にLP1又は液晶セルに塗工してもよい。
【0214】
貼り合わせに接着剤を用いる場合には、接着剤の種類により、加熱又は放射線を照射して接着剤を硬化させることが好ましい。
【0215】
貼り合わせの際に、LP1は必要な長さに切り出した枚葉物を用いてもよい。また、LP1がロールフィルムの場合、LP1を巻きだしながら、液晶セルに貼り合わせる直前又は貼り合わせながら必要な長さに切り出してもよい。例えば、LP1が位相差層上に基材レスの光学用透明粘着剤シートを積層したロールフィルムの場合、LP1を巻きだしながら光学用透明粘着剤シートの離型層を剥離して端部から液晶セルに貼り合わせるか、必要な長さに切った後に全面に貼り合わせるか、全面に貼り合わせた後に必要な長さにカットすればよい。カットは刃物やレーザーなどを用いることができる。
【0216】
液晶表示装置が据え置き型のVAタイプ又はIPAタイプの場合には偏光子の吸収軸が水平方向になるようにLP1を貼り合わせることが好ましい。
【0217】
LP1を貼り合わせた後、離型性フィルムを剥離してもよい。離型性フィルムの剥離は、貼り合わせた直後に行ってもよく、次工程又はそれ以降、搬送での傷付きを防ぐために最終形態に組み立てる直前又は最終形態に組み立てた後に剥離してもよい。また、画像表示装置が最終の消費者に渡った後、最終消費者が剥離してもよい。
【0218】
(LP2の貼り合わせ)
液晶表示装置は、液晶セルの光源側にLP2を有することが好ましい。LP2の貼り合わせの方法は、LP1の貼り合わせ方法と同じであっても異なっていてもよい。但し、液晶表示装置が据え置き型のVAタイプ又はIPAタイプの場合、LP2は偏光子の吸収軸が垂直方向になるように貼り合わせることが好ましい。
【0219】
LP2は層構成がLP1と同じである場合には、LP1の偏光子転写用積層体をLP2として用いてもよい。但し、一般的に液晶表示装置では視認側の偏光子の吸収軸方向と光源側の偏光子の吸収軸方向は直交するように設けられるため、LP1とLP2では液晶表示セルの大きさに合わせて、幅及び長さを変えることが好ましい。
【0220】
LP2の離型性フィルムはLP1と同様に剥離されてもよいが、最終形態に組み立てる前に剥離されることが好ましい。
【0221】
液晶表示装置は、光源側偏光子と光源ユニットとの間に反射型偏光板を有することが好ましい。反射型偏光板としては、例えば3M社から販売されている輝度向上フィルムDBEFシリーズが挙げられる。反射型偏光板は、離型性フィルムを剥離した後、偏光子面又はコート面に接着剤又は粘着剤を用いて貼り合わされていてもよい。
【0222】
(有機EL表示装置)
有機EL表示装置は、有機ELセルの視認側にLP1を有することが好ましい。
【0223】
LP1を貼り合わせた後、離型性フィルムを剥離してもよい。離型性フィルムの剥離は、貼り合わせた直後に行ってもよく、最終形態に組み立てるまでの途中段階、又は最終形態に組み立てた後に剥離してもよい。また、画像表示装置が最終の消費者に渡った後、最終消費者が剥離してもよい。
有機EL表示装置はフォルダブル型(折り畳み型)又はローラブル型(巻き取り型)のものであってもよい。本発明の有機EL表示装置は薄型化が可能であり、折り畳み性や巻取り性が良好である。
【実施例
【0224】
以下、実施例を参照して本発明をより具体的に説明する。本発明は、下記実施例に限定されず、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能である。それらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0225】
実施例の積層体における位相差層のレタデーション測定は、以下の通りである。
【0226】
(位相差層のレタデーション測定)
厚さ50μmのポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製コスモシャイン(TM)A4100)の非易接着層面に、後述の実施例と同じ条件で、配向制御層及び位相差層を設け、これをガラス板(35mm×35mm)に転写して測定用サンプルとした。転写には、紫外線硬化型接着剤を用いた。
サンプルを自動複屈折計(KOBRA―WR、王子計測(株))を用い、使用波長を590nmとした場合に垂直方向から測定したレタデーション値(Re)を測定し、さらに、位相差層用塗料Bを用いた位相差層の場合はフィルム面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)として、位相差層用塗料A及びCを用いた位相差層の場合はフィルム面内の任意の方向を傾斜軸として、フィルム法線方向に対して0度から10度おきに50度まで傾けて同様にレタデーション値を測定し、この値、厚み、及び平均屈折率からRthを求めた。
厚みは、フィルムをエポキシ樹脂に包埋し、断面切片を切り出し、偏光顕微鏡で観察して求めた。
平均屈折率は、位相差層用塗料B及びCを用いた位相差層の場合は1.60、位相差層用塗料Aを用いた位相差層の場合は1.66を用いた。
【0227】
実施例の積層体における各層について、以下に説明する。
【0228】
(離型性フィルム)
離型性フィルムは厚さ50μmのポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製コスモシャイン(TM)A4100)を用い、非易接着層面を離型面とした。なお、非離型面には予めコロナ処理を行い、剥離力を調整した。
【0229】
【0230】
【0231】
(偏光子)
(1)PVA偏光子転写用積層体
熱可塑性樹脂基材として、極限粘度0.62dl/dのポリエチレンテレフタレートを押出機で溶融・混練後、冷却ロール上にシート状に押出し、厚さ100μmの未延伸フィルムを作製した。この未延伸フィルムの片面に、重合度2400、ケン化度99.9モル%のポリビニルアルコールの水溶液を塗布し乾燥して、PVA層を形成した。
得られた積層体を、120℃で周速の異なるロール間で長手方向に2倍に延伸して巻き取った。次に、得られた積層体を4%のホウ酸水溶液で30秒間処理した後、ヨウ素(0.2%)とヨウ化カリウム(1%)の混合水溶液で60秒間浸漬し染色し、引き続き、ヨウ化カリウム(3%)とホウ酸(3%)の混合水溶液で30秒間処理した。
さらに、この積層体を72℃のホウ酸(4%)とヨウ化カリウム(5%)混合水溶液中で長手方向に一軸延伸し、引き続き、4%ヨウ化カリウム水溶液で洗浄し、エアナイフで水溶液を除去した後に80℃のオーブンで乾燥し、両端部をスリットして巻き取り、幅50cm、長さ1000mのPVA偏光子転写用積層体を得た。合計の延伸倍率は6.5倍で、PVA偏光子の厚みは5μmであった。なお、厚みはPVA偏光子転写用積層体をエポキシ樹脂に包埋して切片を切り出し、光学顕微鏡で観察して読み取った。このPVA偏光子は表1ではPVA(転写)と標記した。
【0232】
(2)液晶偏光子
特表2007-510946号公報の[0134]段落の記載及びLub et al.Recl.Trav.Chim.Pays-Bas,115,321-328(1996)に準じて下記化合物(d)及び(e)を合成した。
【化3】
【化4】
特開昭63-301850号公報の実施例1に準じて下記色素(f)を合成した。
【化5】
特公平5-49710号公報の実施例2に準じて下記色素(g)を合成した。
【化6】
特公昭63-1357号公報の一般式(1)の化合物の製造方法に準じて下記色素(h)を合成した。
【化7】
【0233】
(d)75質量部、(e)25質量部、(f)2.5質量部、(g)2.5質量部、(h)2.5質量部、IRGACURE(商標)369E(BASF社製)6質量部、及びオルトキシレン250質量部を混合、溶解し、液晶偏光子用塗料を作製した。この塗料を塗工して得られた液晶偏光子は表1では液晶塗工と標記した。
【0234】
(実施例1)
幅50cmの離型性フィルムのコロナ処理面に低屈折率層用塗料を塗布し、オーブン中で90℃で乾燥させて溶剤を蒸発させた後に紫外線を照射し、厚さ0.5μmの低屈折率層を形成した。さらに低屈折率層の上にハードコート層用塗料を塗布し、オーブン中で90℃で乾燥させて溶剤を蒸発させた後に紫外線を照射し、厚み3μmのハードコート層を形成した。引き続き、ハードコート層面にアクリル系の紫外線硬化型接着剤を塗布し、PVA偏光子転写用積層体の偏光子面(PVA面)と重ね合わせ、離型性フィルム面から紫外線を照射して接着剤を硬化させて、偏光子転写用積層体(LPPVA0)を得た。長さ1000mのロールフィルムとして巻き取った。
【0235】
(実施例2)
実施例1で得られた偏光子転写用積層体(LPPVA0)を長さ70cmに切り出し、熱可塑性樹脂基材を剥離し、この面に配向制御層用塗料を塗布し、100℃で乾燥させ、厚さ0.5μmの配向制御層を設けた。さらに配向制御層をナイロン製の起毛布が巻かれたラビングロールで処理した。ラビング方向はフィルムの流れ方向に行った。引き続き、ラビング処理を施した面に位相差層用塗料Aを塗布後、125℃で3分間加熱して溶剤を蒸発させると共に、ディスコティック液晶性化合物を配向させた。引き続き、80℃の環境下で紫外線を30秒間照射し、偏光子転写用積層体(LPPVA1)を得た。
【0236】
(実施例3)
実施例2と同様にして配向制御層を設け、配向制御層をナイロン製の起毛布が巻かれたラビングロールで処理した。ラビング方向はフィルムの流れ方向に対して直交方向に行った。引き続き、位相差層用塗料Bを塗布後、110℃で3分間加熱して溶剤を蒸発させると共に、棒状液晶性化合物を配向させた。さらに、110℃の環境下で紫外線を30秒間照射し、偏光子転写用積層体(LPPVA2)を得た。
【0237】
(実施例4)
配向制御層に対するラビング方向をフィルムの流れ方向に対して45度にした以外は、実施例3と同様にして偏光子転写用積層体(LPPVA3)を得た。
【0238】
(実施例5)
(位相差層転写用積層体の作製)
離型性基材として、幅50cm及び厚み38μmのポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製コスモシャイン(TM)A4100)を使用した。離型性基材の非易接着層面に配向制御層用塗料を塗布し、100℃で乾燥させ、厚さ0.5μmの配向制御層を設けた。さらに配向制御層をナイロン製の起毛布が巻かれたラビングロールで処理した。ラビングはフィルムをラビングロールに斜めに掛け、ラビングロールの方向とフィルムの走行速度、ラビングロールの回転数を調整して、ラビング方向がフィルムの流れ方向に対して45度となるよう行った。引き続き、位相差層用塗料Bを塗布後、110℃で3分間加熱して溶剤を蒸発させると共に、棒状液晶性化合物を配向させた。さらに110℃の環境下で紫外線を30秒間照射し、長さ200mの位相差層転写用積層体を得た。
【0239】
実施例1で得られた偏光子転写用積層体(LPPVA0)、及び上記の位相差層転写用積層体を巻きだし、LPPVA0の偏光子面と位相差層転写用積層体の位相差層面とをUV硬化型接着剤を用いて貼り合わせた後に巻き取り、長さ200mの偏光子転写用積層体(LPPVA4)を得た。
【0240】
(実施例6)
離型性フィルムのコロナ処理面に低屈折率層用塗料を塗布し、オーブン中で90℃で乾燥させて溶剤を蒸発させた後に紫外線を照射して、厚さ86nmの低屈折率層を形成した。さらに低屈折率層の上に高屈折率層用塗料を塗布し、オーブン中で90℃で乾燥させて溶剤を蒸発させた後に紫外線を照射して、厚さ130nmの高屈折率層を形成した。なお、厚みはエリプソメーター(堀場製作所製、自動薄膜計測装置 Smart SE)を用いて測定した。引き続き、実施例1と同様にしてハードコート層及び偏光子を設けて、偏光子転写用積層体を得た。さらに、実施例4と同様に位相差層を設け、偏光子転写用積層体(LPPVA5)を得た。
【0241】
(実施例7)
幅50cmのポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製コスモシャイン(TM)A4300)の片面に凹凸転写用塗料を塗工し、160℃で3分加熱硬化させ塗工量1.0g/mの硬化膜を設けた。硬化膜は表面に粒子に由来する凹凸構造(Ra0.7μm)を有していた。
【0242】
この得られた硬化膜を有するフィルムを離型性フィルムとした以外は実施例1と同様にして、硬化膜面上に低屈折率層、ハードコート層及び偏光子を設け、偏光子転写用積層体(LPPVA6)を得た。
【0243】
(実施例8)
実施例3で得られた偏光子転写用積層体(LPPVA2)の位相差層上に層間保護コート層用塗料を塗布・乾燥後、紫外線を照射して乾燥膜厚0.5μmの層間保護コート層を設けた。引き続き、位相差層用塗料Cを塗布・乾燥後、38℃で紫外線を80秒照射して液晶化合物が垂直配向された位相差層を得た。
【0244】
(実施例9)
実施例1で作製した低屈折層及びハードコート層が積層されたフィルムを長さ70cmに切り出し、ハードコート層面を長辺方向にラビング処理し、このラビング処理面に液晶偏光膜用塗料を塗布した。さらに、110℃で3分間乾燥し、厚み2μmの膜を形成し、引き続き紫外線を照射して、偏光子転写用積層体(LPLC0)を得た。
【0245】
(実施例10)
偏光子転写用積層体(LPPVA0)の代わりに実施例9で得られた偏光子転写用積層体(LPLC0)を用いたこと、及び配向制御層のラビング方向をフィルムの流れ方向に対して45度にしたこと以外は、実施例3と同様にして偏光子転写用積層体(LPLC1)を得た。
【0246】
(実施例11)
実施例10と同様にして配向制御層を設け、ラビング処理を行った配向制御層上に液晶位相差層用塗布液Dを塗布し、120℃で乾燥の後さらに3分間加熱、液晶の熟成を行ってディスコティック化合物を配向させた。引き続き、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ1.8μmの位相差層を作製することにより、偏光子転写用積層体(LPLC2)を得た。
【0247】
(実施例12)
実施例1で作製した低屈折率層及びハードコート層が積層されたフィルムの代わりに、実施例6で作製した低屈折率層、高屈折率層、及びハードコート層が積層されたフィルムを用いた以外は実施例10と同様にして、偏光子転写用積層体(LPLC3)を得た。
【0248】
実施例1~12の層構成を表1に示す。
【表1】
【0249】
(液晶表示装置での評価)
市販の各タイプ(IPS、VA、TN)の液晶表示セルの視認側偏光板及び光源側偏光板を剥がし、代わりに偏光子転写用積層体を液晶表示セルの大きさに切り取り、光学用粘着剤を用いて貼り合わせ、その後偏光子転写用積層体の離型性フィルムを剥離した。貼り合わせは元の液晶表示装置の偏光板の吸収軸と偏光子転写用積層体の吸収軸が同じ方向になるようにした。なお、LPPVA4は液晶セルと貼り合わせる直前に位相差層転写用積層体の離型性基材を剥離した。
【0250】
(画像表示性)
液晶表示装置に風景画を表示させ、正面から画像の表示状態を観察したところ、すべて元の表示装置と同等の画質の画像が表示された。
【0251】
(視野角特性)
画像を上下、左右、右上、右下方向に向けて、正面から各方向に動いて観察した。IPS及びVAタイプの液晶セルでは、視認側、光源側の両方にLPPVA0を用いたもの、TNタイプの液晶セルでは視認側、光源側の両方にLPPVA0を用いたものと比較して視野角の改善効果がある場合を○、変わらない場合は×とした。
【0252】
(映り込み)
液晶表示装置を斜め方向から(法線方向から約45度傾けて室内の蛍光灯が映り込む状態で)蛍光灯の映り込み状態を観察した。液晶表示装置の上に厚さ50μmのポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製コスモシャイン(TM)A4100)の非易接着層面を上にして置き、このポリエステルフィルム面の映り込みと比較して、すべて映り込みが少なかった。
【0253】
(傷付き性)
液晶表示画面をスチールウールで50往復こすった後、偏光子の剥がれを観察したが、偏光子の剥がれは観察されず、傷付き性にも優れていた。
【0254】
液晶表示装置での評価結果のまとめを表2に示す。
【表2】
【0255】
(有機EL表示装置での評価)
市販の有機EL表示装置の円偏光板を剥がし、代わりに偏光子転写用積層体を液晶表示セルの大きさに切り取り、光学用粘着剤を用いて貼り合わせ、その後偏光子転写用積層体の離型性フィルムを剥離した。貼り合わせは元の表示装置の円偏光板の吸収軸と偏光子転写用積層体の吸収軸が同じ方向になるようにした。
【0256】
(反射防止性)
室内で背後に蛍光灯が来るようにして画面を観察し、反射防止効果を確認したところ、すべて元の有機EL表示装置と同等の反射防止効果が認められた。
【0257】
(映り込み)
有機EL表示装置を斜め方向から(法線方向から約45度傾けて室内の蛍光灯が映り込む状態で)蛍光灯の映り込み状態を観察した。有機EL表示装置の上に厚さ50μmのポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製コスモシャイン(TM)A4100)の非易接着層面を上にして置き、このポリエステルフィルム面の映り込みと比較して、すべて映り込みが少なかった。
【0258】
(傷付き性)
有機EL表示画面をスチールウールで50往復こすった後、偏光子の剥がれを観察したが、偏光子の剥がれは観察されず、傷付き性にも優れていた。
【0259】
有機EL表示装置での評価結果のまとめを表3に示す。
【表3】