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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】被印刷物の製造方法及び被印刷物
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
B41J2/01 121
B41J2/01 123
B41J2/01 101
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021550414
(86)(22)【出願日】2020-08-19
(86)【国際出願番号】 JP2020031212
(87)【国際公開番号】W WO2021065232
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2019178387
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020034930
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸司
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 由樹子
(72)【発明者】
【氏名】尾関 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】村上 恵喜
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-511776(JP,A)
【文献】特開2012-051321(JP,A)
【文献】特表2019-520236(JP,A)
【文献】特開2003-154641(JP,A)
【文献】特開2008-188918(JP,A)
【文献】特開2008-087327(JP,A)
【文献】特開2007-269889(JP,A)
【文献】特開2012-086870(JP,A)
【文献】国際公開第2017/018283(WO,A1)
【文献】特開2020-041018(JP,A)
【文献】特開2020-019260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01- 2/215
B41M 1/00- 3/18
7/00- 9/04
B65D 23/00-25/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷領域を表面に有する被印刷物の製造方法であって、
前記被印刷物は、缶及び容器用フィルムから選択され、
前記被印刷領域の表面エネルギーE(mN/m)が30以上50以下となるように被印刷領域の表面を調整する表面調整ステップ、を含み、
前記表面調整ステップは、前記被印刷領域の少なくとも一部に受容層を形成するステップであり、
前記受容層が膨潤型受容層であり、
前記膨潤型受容層が半硬化状態である、被印刷物の製造方法。
【請求項2】
前記膨潤型受容層は、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂及びこれらのブレンド樹脂からなる群から選択されるベース樹脂を含む、請求項1に記載の被印刷物の製造方法。
【請求項3】
前記受容層は酸化チタンを含む、請求項1又は2に記載の被印刷物の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法により製造された被印刷物の被印刷領域にインクジェット画像を形成する印刷ステップ、を含む、印刷物の製造方法。
【請求項5】
前記印刷ステップは、
前記インクジェット画像を画像搬送手段上に形成する画像形成ステップ、及び
該画像搬送手段に形成したインクジェット画像を、前記被印刷領域に転写する転写ステップ、を含む、請求項4に記載の印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被印刷物の製造方法に関し、また、被印刷物に関する。より具体的には、インクジェット画像の解像度にかかわらず、被印刷物へのインクジェット印刷において印刷画像の質を向上させることができる、被印刷物の製造方法及び被印刷物を提供する。
【背景技術】
【0002】
印刷缶の製造工程においては、缶胴を形成する金属板に対して、或いは、缶胴と底とを一体成形した後に、缶胴に対して、模様や文字を印刷することが行われている。金属板、或いは缶胴への印刷は、版式印刷による場合とインクジェット印刷による場合があり、インクジェット印刷による場合には、製版を不要とするためコストがかからず、また短期間に印刷デザインを変更できるというメリットを有する。
【0003】
インクジェット印刷を用いた印刷缶への印刷技術としては、例えば特許文献1の図5に、ホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各インキに対応するインクジェットヘッドから、順次各インキの液滴を噴射し、マンドレルに装着されたシームレス缶上に印刷画像を形成する技術が開示されている。
【0004】
一方で、撥液性の高い被記録媒体の場合、液滴同士が合一するため、均一な膜厚でベタ画像を形成することができないという問題があり、このような問題を解決するため、被吐出媒体の表面エネルギーと、液滴の表面エネルギーとを特定の関係とし、且つ、着弾ドットの直径と解像度ピッチの最大距離とを特定の関係とする技術が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-86870号公報
【文献】特許第4903024号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
印刷の際に考慮すべき事項として、特許文献2のように均一な膜厚の画像を形成することの他、印刷された画像を形成するインクの濡れ広がりやインクはじき等により生じる、画質の低下を抑制することも重要である。本発明は、缶及び容器用フィルムから選択される被印刷物へのインクジェット画像印刷において、印刷画像の質を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが検討したところ、缶及び容器用フィルムから選択される被印刷物へのインクジェット印刷において印刷画像の質を向上させるためには、インクジェット画像の解像度にかかわらず、被印刷物表面の表面における被印刷領域の自由エネルギーを一定の範囲内に調整することが重要であることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、被印刷領域を表面に有する被印刷物の製造方法であって、
前記被印刷物は、缶及び容器用フィルムから選択され、
前記被印刷領域の表面エネルギーE(mN/m)が30以上50以下となるように被印刷領域を調整する表面調整ステップ、を含む、被印刷物の製造方法、である。
【0009】
また、前記表面調整ステップは、前記被印刷領域の少なくとも一部に受容層が形成される形態が好ましく、受容層の具体例としては、空隙型受容層や膨潤型受容層が好ましい。
更に受容層は、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、及びこれらのブレンド樹脂からなる群から選択されるベース樹脂を含むことが好ましく、また、半硬化状態であることが好ましく、受容層が酸化チタンを含むことが好ましい。
また、前記表面調整ステップは、前記被印刷領域の少なくとも一部が表面改質手段により処理される形態が好ましい。
また、上記製造方法により製造された被印刷物の被印刷領域に、インクジェット画像を形成する印刷ステップ、を含む形態であってもよく、前記印刷ステップは、インクジェット画像を画像搬送手段上に形成する画像形成ステップ、及び該画像搬送手段に形成したインクジェット画像を、前記被印刷領域に転写する転写ステップ、を含む形態であることが、好ましい。
【0010】
また、本発明の別の形態は、被印刷領域を表面に含む、缶または容器用フィルムであって、前記被印刷領域の表面エネルギーE(mN/m)が、30以上50以下である、被印刷物、である。
前記被印刷領域はその表面に受容層を備え、該受容層は酸化チタンを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、インクジェット画像の解像度にかかわらず、被印刷物へのインクジェット印刷において印刷画像の質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】印刷システムの構成の一例を示す概略図である。
図2】印刷システムの構成の別の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態は、被印刷領域を表面に有する被印刷物の製造方法であって、前記被印刷領域の表面エネルギーE(mN/m)が30以上50以下となるように被印刷領域を調整する表面調整ステップ、を含む。
被印刷物は、インクの濡れ広がりやインクはじきが生じやすい、缶及び容器用フィルムから選択される。容器用フィルムとしては、容器に用いるものであれば限定されず、パウチ用であってよく、ラベル用フィルムであってよい。
【0014】
本実施形態では、インクジェット画像を缶などの被印刷物へ印刷するに際し、印刷画像の質を向上させるため、前記被印刷物が有する被印刷領域の表面エネルギーE(mN/m)を上記範囲に調整する。インクジェット画像印刷においては、印刷するインクジェット画像の解像度によって、インクジェットノズルから被印刷領域に着弾するインクジェットインクの液滴の径を異ならせることが可能となるが、本発明者らの検討によれば、着弾するインクジェットインクの液滴の径によらず、すなわちインクジェット画像の解像度によらず、印刷画像の質を向上させるためには、被印刷領域の表面エネルギーが重要であることを見出した。
【0015】
表面エネルギーEが30mN/mを下回る場合、被印刷領域の表面が濡れにくくなることでインク液滴を過度に弾くため、画質が低下する。一方で、表面エネルギーが50mN/mを上回る場合、被印刷領域の表面が濡れ易くなることでインキ液滴が滲みやすく、画像輪郭が曖昧となったり、色が混濁し、画質が低下する。表面エネルギーEは35mN/m以上50mN/m以下であることが好ましい。
【0016】
本実施形態では、着弾するインクジェットインクの液滴の径、すなわちインクジェット印刷画像の解像度によらず、印刷画像の質を向上させることができるが、インクジェット印刷画像の解像度は通常300dpi以上のことが多いが、それに限定されない。
なお、表面調整ステップにおいて調整する被印刷領域は、缶表面全面であってもよく、缶表面の一部分であってもよい。缶表面の一部の表面を調整する場合、インクジェット印刷を施す被印刷領域を調整することが好ましい。
【0017】
本実施形態では、表面調整ステップにおいて被印刷領域の表面自由エネルギーEを、上記好適な範囲とするためには、例えば被印刷領域の少なくとも一部に受容層を設ける方法、表面改質手段により被印刷領域の少なくとも一部を改質する方法、などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
受容層は、インクジェット印刷ができない、或いは困難である素材に対し、インクジェット印刷を可能とする層であり、典型的には、表面が透明な膨潤型受容層と、表面が白っぽい空隙型受容層とが存在する。
【0019】
膨潤型受容層は、インクを吸いやすい樹脂で構成されており、吸収されたインクが樹脂層を膨潤させて受容層に留まることで、印刷が可能となる。
膨潤型受容層に含まれるベース樹脂としては、インクを吸いやすい樹脂であれば限定されないが、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、これらのブレンド樹脂、などがあげられ、これらのうち、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂及びこれらのブレンド樹脂から選択される1種以上を含むことが好ましい。なお、ブレンド樹脂とする際の、各樹脂の割合は特に限定されず、2種のブレンドであっても、3種以上のブレンドであってもよい。
膨潤型受容層は、その機能を阻害しない範囲でこれら以外の樹脂を含有してもよい。
【0020】
膨潤型受容層に含まれるベース樹脂は、樹脂が硬化した状態ではインクを吸収して膨潤する機能が低下する場合があるため、半硬化状態であることが好ましい。
【0021】
空隙型受容層は、無機微粒子を含有することで空隙を形成しており、インキが該空隙に浸透して受容層に留まることで、印刷が可能となる。空隙型受容層に含まれる無機微粒子としては、空隙を形成できれば限定されないが、シリカ、アルミナ、チタニア(酸化チタン)、窒化ホウ素などがあげられ、シリカ及びアルミナから選択されることが好ましい。
無機微粒子の粒子径は特段限定されないが、平均一次粒子径が通常10nm以上であり、50nm以上であってよく、また通常50μm以下であってよい。平均一次粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置等により粒度分布を測定し、その結果から求めることができるが、市販品についてはカタログ値を採用してもよい。
なお、受容層の厚みは特段限定されず、当業者が適宜設定できる。
【0022】
受容層には、白色顔料が含まれていてもよく、酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛(亜鉛華)、リトポン(硫化亜鉛+硫酸バリウム)等があげられ、特に酸化チタンが好ましい。受容層に白色顔料が含まれることにより、受容層の上に形成されるデザインなどの絵柄層がより鮮明に認識できる。
【0023】
表面改質手段により表面を改質する方法は、被印刷領域を改質し、表面自由エネルギーEを上記の範囲とできるものであれば特段限定されず、例えばケイ素化合物を含む燃焼炎を吹き付けることで表面改質を行うことがあげられる。ケイ素化合物を含む燃焼炎を吹き付けることで、被印刷領域に酸化ケイ素膜を形成することができ、上記範囲を充足し得る表面自由エネルギーEとすることができる。
【0024】
ケイ素化合物は特に限定されず、典型的にはアルキルシランやアルコキシシラン等のシラン化合物があげられるが、これらに限られない。これらのシラン化合物は、窒素、塩素等のハロゲン、ビニル基、アミノ基等を有してもよい。
表面改質手段として、コロナ処理、プラズマ処理、グロー放電処理、アーク放電処理、などを用いてもよい。
また、上記被印刷領域の調整によって、被印刷物へのインク密着性を向上させる効果も奏する。
【0025】
本実施形態において被印刷物を製造した後、被印刷物が缶である場合、インクジェット画像を、缶に印刷する印刷ステップを有してもよい。また、被印刷物が容器用フィルムである場合、インクジェット画像を、容器用フィルムに印刷する印刷ステップを有してもよい。印刷ステップは特段限定されず、インクジェットノズルから缶又は容器用フィルム表面の被印刷領域に直接インクジェット印刷を行ってよく、インクジェットノズルからブランケットなどに一度インクジェット画像を印刷した後、該インクジェット画像を被印刷領域に転写するオフセット印刷であってもよい。以下、本発明の実施形態を適用し得るインクジェット印刷システムの一例を説明する。
【0026】
図1は、缶表面の被印刷領域にインクジェット画像を形成するインクジェット印刷システム1の構成を示す概略図である。
シームレス缶の少なくとも胴部外面に印刷を行う場合、マンドレルホイール上に形成されたマンドレルにシームレス缶を自転可能に固定して、マンドレルホイールに沿って設置された印刷ステーションによってインクジェット印刷を行う印刷システムが、生産性に優れている。インクジェット印刷システム1は、マンドレルホイール2上に複数個のマンドレル3が均等に配置されており、マンドレルホイール2は時計回りに間欠的に公転し、マンドレル3は各ステーションで時計回りに自転する。マンドレル3に設置された缶4が、矢印に沿って搬送されることで、各ホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色のインクを吐出する複数のノズルヘッド5により、画像が印刷される。なお、色の順番は特に限定されないし、インクの色はこれらに限定されるものではない。そのため、クリアインクでもよい。また、各印刷ステーションにおいてインクジェットヘッドがそれぞれ2つ設置されていてもよく、このような形態とすることで、印刷速度が速いとともに、網点密度を高くして解像度を上げることができ、網点を精度よく重ね塗りすることによりインクの厚みが増し、濃度感の高い印刷画像を得ることが可能となる。また、インクの種類も特に限定されず、水性インクであってもよく、紫外線硬化性インクであってもよい。
【0027】
画像が印刷された缶4は、仮焼付部6により仮焼付けを行った後、ニス塗布装置7により、缶表面にニスが塗布され、印刷缶が製造される。
また、印刷システム1中に、缶表面に受容層を形成する受容層形成手段(塗布手段と受容層乾燥手段を含む)を設置してもよく、缶表面の表面改質を行う表面改質手段を設置してもよい。例えば、ノズルヘッド5の上流側に、受容層形成手段や表面改質手段を設置してもよい。
また、印刷システム1に入る前工程で受容層形成手段または表面改質手段を設置してもよい。
【0028】
また、図2は、インクジェット印刷システム100の構成を示す概略図である。
インクジェット印刷システム100は、画像形成手段である印刷ステーション10、画像搬送手段である搬送ベルト20、転写手段である転写ステーション30、缶搬送手段であるマンドレルホイール40及びマンドレル42、洗浄手段である洗浄ステーション50、及び、被覆手段であるオーバーコートステーション60を備える。インクジェット印刷システム100は、これら以外の構成を備えていてもよい。
【0029】
印刷ステーション10は、印刷ユニット11を備え、印刷ユニット11が備えるインクジェットプリンタヘッドにより、搬送ベルト20が備えるブランケット23上にインクジェット画像14(図示せず)が形成される。印刷ユニット11は印刷ステーション10内に1つのみ有してもよく、複数有してもよい。印刷ユニット11を複数有することで、高速印刷への対応が可能となり、またパス数が多い印刷方法にも対応が可能となることから、印刷画像のクオリティーが向上し、高精細のインクジェット画像14をブランケット23上に形成することができる。
【0030】
印刷ユニット11が備えるインクジェットプリンタヘッドは、典型的にはホワイト(W)、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各色のインクを吐出する複数のノズルヘッド12が含まれる。なお、色の順番は特に限定されないし、インクの色はこれらに限定されるものではない。そのため、クリアインクでもよい。
【0031】
印刷ユニット11には、プライマー層(Pr)を吐出するノズルベッドを備えていてもよく、その場合にはインクジェットプリンタヘッドよりも下流に位置することで、形成したインクジェット画像14をプライマー層によって被覆することができる。
印刷ユニット11には、更に硬化手段として、UV照射部13が備えられてもよい。インクジェットプリンタヘッドが吐出するインクがUV硬化性のインクである場合、UV照射により半硬化させることで、転写ステーションでインクジェット画像14を缶41に転写する際に生じ得るインク残りを抑制できる。
また、UV照射部13の代わりに、硬化手段として乾燥手段を備えていてもよい。乾燥手段は、インクジェット画像に温風を吹きかけるなどの方法で、インクジェット画像14を半硬化させることができる。
【0032】
搬送ベルト20は、第1ローラ21と第2ローラ22を介して環状となっており、図中矢印方向に周回することで、搬送ベルト20のブランケット23上に印刷されたインクジェット画像を転写ステーション30に搬送する。搬送ベルト20のブランケット23は環状の搬送ベルトの周長に応じて、また印刷システムの稼働スピードに応じて、その数を適宜決定できる。
【0033】
搬送ベルト20は可撓性を有してもよいが、可撓性が過度に大きい材料であると、ベルトの張りが不十分となり、印刷時や転写時にずれが生じる場合がある。搬送ベルト20の材質としては特に限定されない。
搬送ベルトをガイドする目的で、第1ローラ21と第2ローラ22以外に補助ローラを1つ又は複数有してもよい。
【0034】
インクジェット画像14が形成されたブランケット23は、第1ローラ21の外周に沿って、転写ステーション30に搬送される。一方で、マンドレルホイール40によって複数の缶41が転写ステーション30に搬送される。ブランケット23の先端部が搬送された缶41と接触することで、または缶41と接触する直前に、缶41は自転を開始し、接触後、ブランケット23上に形成されたインクジェット画像14は缶41の周方向に転写され、缶41の表面にインクジェット画像が形成される。なお、ブランケット23と缶41との位置合わせを適宜行ってもよく、位置合わせは既知の方法で行えばよい。
また、ブランケット23の先端部が搬送された缶41と接触した際に、マンドレルホイール40自体の回転を停止させ、マンドレルホイール40が停止した状態でマンドレル42の缶41を自転させ、ブランケット23上に形成されたインクジェット画像14を缶41に転写してもよい。本実施形態は、このような間欠的な印刷にも適用し得る。
【0035】
転写ステーション30で、インクジェット画像14がブランケット23から缶41表面へ転写された後、ブランケット23は、洗浄ステーション50においてその表面が洗浄されてもよい。本実施形態では、全てのインキがブランケット23に転写しない場合もあり得ることから、洗浄ステーション50を設け、ブランケット23上のインキを洗浄してもよい。
【0036】
洗浄ステーション50は、典型的には、洗浄剤をブランケット23上に吐出する洗浄剤供給部51と、ブランケット23上のインキを拭き取るスクレーパ52と、を備える。洗浄ステーション50で表面が洗浄されたブランケット23は、第2ローラ22にガイドされ、再度印刷ステーション10に搬送され、その上にインクジェット画像14が形成される。
【0037】
インクジェット画像14が転写された缶41は、マンドレルホイール40によりオーバーコートステーション60に搬送される。オーバーコートステーション60において、缶41表面上に転写されたインクジェット画像14は、コーティングされる。コーティングには、典型的にはニスが用いられるが、インクジェット画像を保護して耐久性を向上し得るものであれば、他のものを用いてもよく、インクジェット画像14の上にニスを塗らなくてもよい。
【0038】
印刷システム100中に、缶表面に受容層を形成する受容層形成手段(塗布手段と受容層乾燥手段を含む)を設置してもよく、缶表面の表面改質を行う表面改質手段を設置してもよい。例えば、缶搬送手段の転写ステーションの上流側に、受容層形成手段や表面改質手段を設置してもよい。
また、印刷システム100を用いて缶の前印刷を行ってもよいことは言うまでも無い。
【実施例
【0039】
以下、具体的に、インクジェット画像印刷する際の缶の表面エネルギーE(mN/m)と、印刷画像の質との関係を確認した結果を示す。
まず、アルミニウム缶胴と底とを一体成形し、被印刷物である缶を準備した。
準備した缶に対し、以下の表1に示す処理を行い、缶の表面エネルギーEを測定した。表面エネルギーEの測定は、接触角計(協和界面科学株式会社製、DropMaster DM500)を用いて行った。
【0040】
<表面エネルギーの測定方法>
表面エネルギーが既知である液体2種(水とジヨードメタン)を使用し、接触角計を用いて、対象基材表面のそれぞれの接触角を測定した。Kaelble-Uy理論式より、対象基材表面の表面エネルギーが得られた。結果を表1に示す。
【0041】
処理後の缶に対し、図1の印刷システム1を用いて、インクジェット画像印刷を行った。その印刷結果(目視)を表1に示す。なお、評価は以下の評価基準に従って行った。
<評価基準>
A:印刷画像が非常に鮮明であった。
B:画像の輪郭部分位に若干不鮮明さがあったが、十分に画像を認識できた。
C:画像が不鮮明であった。
【0042】
【表1】
【0043】
これらの結果より、解像度にかかわらず、缶の表面エネルギーEが特定の範囲であることで、印刷されたインクジェット画像が鮮明になり、缶の表面に良好な質のインクジェット画像印刷を提供できた。
【0044】
なお、本発明については、具体的な実施例を参照して詳細に説明されるが、本発明の趣旨及び範囲から離れることなく、種々の変更、改変を施すことができることは当業者には明らかである。
【符号の説明】
【0045】
1 インクジェット印刷システム
2 マンドレルホイール
3 マンドレル
4 缶
5 ノズルヘッド
6 仮焼付部
7 ニス塗布装置
100 インクジェット印刷システム
10 印刷ステーション
11 印刷ユニット
12 ノズルヘッド
13 UV照射部
14 インクジェット画像
20 搬送ベルト
21 第1ローラ
22 第2ローラ
23 ブランケット
30 転写ステーション
40 マンドレルホイール
41 缶
42 マンドレル
50 洗浄ステーション
51 洗浄剤供給部
52 スクレーパ
60 オーバーコートステーション
図1
図2