(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】DC/DC変換システム、蓄電システム、及び、DC/DCコンバータの制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20241008BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20241008BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241008BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20241008BHJP
【FI】
H02M3/155 W
H02J3/38 110
H02J7/00 302C
H02M7/48 R
(21)【出願番号】P 2021561176
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(86)【国際出願番号】 JP2020034192
(87)【国際公開番号】W WO2021106315
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2019213013
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】綾井 直樹
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-011567(JP,A)
【文献】特開2015-027225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00-7/12
H02J7/34-7/36
H02M3/00-3/44
H02M7/42-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の直流電源と共通のDCバスとの間に設けられるDC/DC変換システムであって、前記複数の直流電源の各々に対応して、
前記直流電源と前記DCバスとの間に設けられたDC/DCコンバータと、
前記DC/DCコンバータを制御する制御部と、
前記複数のDC/DCコンバータの全体から見た個々についての出力偏差に対応する前記
DCバスの電圧検出偏差を定め、当該電圧検出偏差を抑制する補正値を、複数の前記DC/DCコンバータのそれぞれにおける前記制御部に与える管理制御部と、を備え、
前記制御部は、前記補正値に基づいて前記DCバスの電圧検出値を補正し、出力電力に対して垂下特性となる電圧指令値に従って前記DC/DCコンバータを制御する、DC/DC変換システム。
【請求項2】
前記管理制御部は、前記DC/DCコンバータの並列数に応じて、前記補正値を変化させる請求項1に記載のDC/DC変換システム。
【請求項3】
前記補正値を第1の補正値とすると、各制御部が当該第1の補正値を用いた上で改めて、前記管理制御部は、前記複数のDC/DCコンバータの全体から見た個々についての出力偏差に対応する電圧検出偏差を定め、当該電圧検出偏差を抑制する第2の補正値を、複数の前記DC/DCコンバータのそれぞれにおける前記制御部に与える請求項1又は請求項2に記載のDC/DC変換システム。
【請求項4】
前記管理制御部は、前記補正値を定期的に更新して、複数の前記DC/DCコンバータのそれぞれにおける前記制御部に与える請求項1又は請求項2に記載のDC/DC変換システム。
【請求項5】
前記直流電源は蓄電池であり、前記制御部は、前記直流電源の充電状態に基づいて前記直流電源に流れる電流を制限する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のDC/DC変換システム。
【請求項6】
複数の直流電源及び共通のDCバスを含む蓄電システムであって、前記複数の直流電源の各々に対応して、
前記直流電源と前記DCバスとの間に設けられたDC/DCコンバータと、
前記DC/DCコンバータを制御する制御部と、
前記複数のDC/DCコンバータの全体から見た個々についての出力偏差に対応する前記
DCバスの電圧検出偏差を定め、当該電圧検出偏差を抑制する補正値を、複数の前記DC/DCコンバータのそれぞれにおける前記制御部に与える管理制御部と、を備え、
前記制御部は、前記補正値に基づいて前記DCバスの電圧検出値を補正し、出力電力に対して垂下特性となる電圧指令値に従って前記DC/DCコンバータを制御する、蓄電システム。
【請求項7】
前記DCバスと交流電路との間に設けられるDC/ACコンバータを備え、
前記DC/ACコンバータは、前記交流電路に接続された商用電力系統又は負荷の状況に応じて出力を変化させる、請求項6に記載の蓄電システム。
【請求項8】
前記DC/DCコンバータは、対応する前記直流電源に対して電流制御を行う請求項6に記載の蓄電システム。
【請求項9】
複数の直流電源と共通のDCバスとの間にあって互いに並列に設けられる複数のDC/DCコンバータの制御方法であって、
前記複数の前記DC/DCコンバータの全体から見た個々についての出力偏差に対応する前記DCバスの電圧検出偏差を定め、当該電圧検出偏差を抑制する補正値を決定し、
前記補正値に基づいて前記DCバスの電圧検出値を補正し、
出力電力に対して垂下特性となる電圧指令値に従って前記DC/DCコンバータを制御する、
DC/DCコンバータの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、DC/DC変換システム、蓄電システム、及び、DC/DCコンバータの制御方法に関する。
本出願は、2019年11月26日出願の日本出願第2019-213013号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池のようなエネルギー密度の高い多数のセルを用いた大容量(例えば数メガワット級)蓄電システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。セル1個の電圧は4V程度なので、多数のセルを直列に接続して電圧を高めた電池ストリングとする必要がある。また、大容量を得るためには、電池ストリングをさらに、並列に多数接続する必要がある。並列に接続される各電池ストリングは、充放電によってSOC(State of Charge)が互いに異なってくる。そのため、並列の電池ストリング群における電力の配分を調整すべく、電力変換装置を介して共通のバスに接続する構成とされる。
【0003】
また、太陽光発電パネル、蓄電池、燃料電池等、異種の分散電源を、それぞれ電力変換装置を介して共通のDCバスに接続する構成も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-171335号公報
【文献】特開2015-122885号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示は、以下の発明を含む。但し、本発明は請求の範囲によって定められるものである。
【0006】
本開示は、複数の直流電源と共通のDCバスとの間に設けられるDC/DC変換システムであって、前記複数の直流電源の各々に対応して、
前記直流電源と前記DCバスとの間に設けられたDC/DCコンバータと、
前記DC/DCコンバータを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、並列に存在する複数の前記DC/DCコンバータの全体から見た個々についての、前記DCバスの電圧検出偏差を取り入れて前記DCバスの電圧検出値を補正し、出力電力に対して垂下特性となる電圧指令値に従って前記DC/DCコンバータを制御する、DC/DC変換システムである。
【0007】
また、本開示は、複数の直流電源を有し、共通のDCバスに接続される蓄電システムであって、前記複数の直流電源の各々に対応して、
前記直流電源と前記DCバスとの間に設けられたDC/DCコンバータと、
前記DC/DCコンバータを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、並列に存在する複数の前記DC/DCコンバータの全体から見た個々についての、前記DCバスの電圧検出偏差を取り入れて前記DCバスの電圧検出値を補正し、出力電力に対して垂下特性となる電圧指令値に従って前記DC/DCコンバータを制御する、蓄電システムである。
【0008】
また、本開示は、複数の直流電源と共通のDCバスとの間にあって互いに並列に設けられる複数のDC/DCコンバータの制御方法であって、
前記複数の前記DC/DCコンバータの全体から見た個々についての、前記DCバスの電圧検出偏差を取り入れて前記DCバスの電圧検出値を補正し、
出力電力に対して垂下特性となる電圧指令値に従って前記DC/DCコンバータを制御する、
DC/DCコンバータの制御方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、蓄電システムを含む電源系統の単線接続図である。
【
図2】
図2は、一例として、2組の直流電源装置がDCバスに接続されている回路図である。
【
図3】
図3は、DC/DCコンバータの等価モデルを示す図である。
【
図4】
図4は、式(4)をグラフに表したものである。
【
図5】
図5は、DC/DCコンバータの制御ブロック図の一例である。
【
図6】
図6は、比較のため、垂下制御を行うことなく2台のDC/DCコンバータを並列に接続して運転した蓄電システムの状態を示すグラフであり、条件として、2台のDC/DCコンバータにおける電圧検出値の差が0、回路の配線インピーダンスの差が0、とした。
【
図7】
図7は、比較のため、垂下制御を行うことなく2台のDC/DCコンバータを並列に接続して運転した蓄電システムの状態を示すグラフであり、条件として、2台のDC/DCコンバータにおける電圧検出値の差が0.1%、配線インピーダンスの差が0、とした。
【
図8】
図8は、垂下制御を行って、2台のDC/DCコンバータを並列に接続して運転した蓄電システムの状態を示すグラフであり、条件として、DCバス電圧検出値の差を0.1%、配線インピーダンスの差を0とした。
【
図9】
図9は、垂下制御を行って、2台のDC/DCコンバータを並列に接続して運転した蓄電システムの状態を示すグラフであり、条件として、DCバス電圧検出値の差を1%に増大させ、配線インピーダンスの差は0とした。
【
図10】
図10は、垂下制御を行って、2台のDC/DCコンバータを並列に接続して運転した蓄電システムの状態を示すグラフであり、条件として、垂下制御の比例定数を0.005の2倍の0.01とし、DCバス電圧検出値の差を1%、配線インピーダンスの差は0とした。
【
図11】
図11は、垂下制御を行って、2台のDC/DCコンバータを並列に接続して運転した蓄電システムの状態を示すグラフであり、条件として、垂下制御の比例定数を0.01、DCバス電圧検出値の差を1%、そして、配線インピーダンスの差は0ではなく、一方が他方の2倍になるようにした。
【
図12】
図12は、出力偏差と、電圧検出偏差との関係を示すグラフである。
【
図13】
図13は、垂下制御に加えて補正を行って、2台のDC/DCコンバータを並列に接続して運転した蓄電システムの状態を示すグラフであり、条件として、垂下制御の比例定数fが0.005、DCバス電圧検出値の差を1%、配線インピーダンスの差を0とした。
【
図14】
図14は、垂下制御に加えて補正を行って、2台のDC/DCコンバータを並列に接続して運転した蓄電システムの状態を示すグラフであり、
図13と同じ条件及び補正に加えて、DC/ACコンバータの交流側の各線間に接続する抵抗負荷を10Ωから2Ωに置き換えた。
【
図15】
図15は、負荷接続にあえて過酷な条件を課した上で、垂下制御に加えて補正を行って、2台のDC/DCコンバータを並列に接続して運転した蓄電システムの状態を示すグラフである。
【
図16】
図16は、出力偏差と、DCバス電圧検出偏差との関係を示すグラフである。
【
図17】
図17は、垂下制御に加えて補正を行って、3台のDC/DCコンバータを並列に接続して運転した蓄電システムの状態を示すグラフである。
【
図18】
図18は、補正前の出力偏差と1次補正後の出力偏差の関係を示すグラフである。
【
図19】
図19は、DCバス電圧検出補正の処理動作を示すフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示が解決しようとする課題]
蓄電システムにおいて、互いに並列な複数の電池ストリングの電流をそれぞれ制御するにはDCバスと各電池ストリングとの間にDC/DCコンバータを介在させる必要がある。DC/DCコンバータを用いることによって電池ストリングのSOCによる電圧変動を吸収して、DCバス電圧を最適値に維持することができる。最適値とすることで、DCバスに接続されるDC/ACコンバータの電力変換損失を最小化することができる。
【0011】
DC/DCコンバータの制御部は、電池ストリングの状態を監視するバッテリマネージメントシステム(BMS)と通信を行い、電池ストリングの状態に応じて充放電を制御する。この通信には例えば、CAN(Controller Area Network)やRS-485が用いられる。
【0012】
DCバスからDC/ACコンバータを介して系統連系する蓄電システムの場合は、例えば、蓄電システムに含まれる電力制御部から送信される電力指令値によって各DC/DCコンバータが充放電を行い、DC/ACコンバータはDCバス電圧が常に一定になるように電力を制御する。電力制御部は、DC/DCコンバータの合計出力が電力指令値に一致するように各DC/DCコンバータの充放電の電力指令値を決定する。
【0013】
このように、従来の蓄電システムでは、電力制御部から各DC/DCコンバータに電力指令値を送信するための通信手段が欠かせない。この通信には、制御遅れを一定にするためのリアルタイム性が求められる。また、一つの電力制御部から多数のDC/DCコンバータに指令値を送信することができ、スイッチングによるノイズへの耐性をも含む高い信頼性が求められる。そのため、例えば、バス型ネットワークによるRS-485通信が用いられる。制御周期は蓄電システムの要求によって異なるが、系統連系規定が求める逆電力保護リレーの動作条件である0.5秒よりも速く、負荷変動によって発生する過渡的な逆電力を解消するには、制御の遅れは100ミリ秒以下とする必要があり、常時、この要求に応える通信速度が求められる。
【0014】
一方、自立運転する蓄電システムでは、DC/ACコンバータは交流電圧制御を行い、出力電力は負荷によって決まる。このとき、DC/ACコンバータでDCバス電圧を最適値に制御することはできないので、複数のDC/DCコンバータがDCバス電圧を一定に維持するフィードバック制御を行う。電力制御部がDCバス電圧検出値と目標値とを比較して全体の充放電の電力指令値を決定し、各DC/DCコンバータの制御部に、分配した電力指令値を送信する。DCバス電圧の変動幅を所定範囲内に収めるには、DCバスの電圧検出から制御までの遅れ時間は例えば1.2ミリ秒以内、すなわち、系統連系運転で要求される遅れ時間の100分の1程度としなければならない。遅れ時間がこれよりも長くなる場合には、電圧変動幅を抑えるために平滑コンデンサの容量を大きくしなければならず、これは、コスト上昇を招く。
【0015】
以上のように、リチウムイオン電池を用いた大容量蓄電システムでは、各電池ストリングをDCバスに並列接続するために多数のDC/DCコンバータが必要である。そして、電力制御部から各DC/DCコンバータに充放電の電力指令値を送信するために、信頼性が高く、遅延時間が短い通信手段を設けなければならない。特に自立運転では制御遅れを少なくとも数ミリ秒以内とする必要がある。しかし、蓄電システムの容量が大きく、電池ストリングの並列数が多くなるほど電力制御部から指令値を伝送する対象が増え、制御遅れを数ミリ秒以内とすることは難しくなる。将来の通信技術の革新によって、より高速なリアルタイム通信を適用できるようになれば、この課題は解決できる可能性はあるが、現状では困難である。
【0016】
そこで、本開示は、高速な通信を要することなく、複数のDC/DCコンバータを並列運転して出力を均一化できるようにすることを目的とする。
【0017】
[本開示の効果]
本開示によれば、複数のDC/DCコンバータの間で、高速な通信を要することなく、出力を均一化することができる。
【0018】
[本開示の実施形態の説明]
本開示の実施形態には、その要旨として、少なくとも以下のものが含まれる。
【0019】
(1)開示するのは、複数の直流電源と共通のDCバスとの間に設けられるDC/DC変換システムであって、前記複数の直流電源の各々に対応して、前記直流電源と前記DCバスとの間に設けられたDC/DCコンバータと、前記DC/DCコンバータを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、並列に存在する複数の前記DC/DCコンバータの全体から見た個々についての、前記DCバスの電圧検出偏差を取り入れて前記DCバスの電圧検出値を補正し、出力電力に対して垂下特性となる電圧指令値に従って前記DC/DCコンバータを制御する。
【0020】
このようなDC/DC変換システムでは、出力電力に対する電圧指令値の垂下特性によって、並列に設けられた複数のDC/DCコンバータの出力が揃う方向へ向かうような制御を実現する。また、DCバスの電圧検出の誤差に起因して複数のDC/DCコンバータの出力が揃わなくなることを抑制すべく、DCバスの電圧検出偏差を取り入れてDCバスの電圧検出値を補正する。こうして、複数のDC/DCコンバータの間で、高速な通信に依存することなく、出力を均一化することができる。
【0021】
(2)前記(1)のDC/DC変換システムにおいて、前記複数のDC/DCコンバータの全体から見た個々についての出力偏差に対応する前記電圧検出偏差を定め、当該電圧検出偏差を抑制する補正値を、複数の前記DC/DCコンバータのそれぞれにおける前記制御部に与える管理制御部を備えている構成としてもよい。
この場合、管理制御部は随時、複数のDC/DCコンバータ全体について電圧検出偏差を定め、当該電圧検出偏差を抑制する補正値を各制御部に通知することができる。各制御部は、通知された補正値を用いて複数のDC/DCコンバータの出力を均一化することができる。なお、この通知には通信を用いるが、高速な通信は必要ない。
【0022】
(3)前記(2)のDC/DC変換システムにおいて、前記管理制御部は、前記DC/DCコンバータの並列数に応じて、前記補正値を変化させるようにしてもよい。
この場合、適切な補正値はDC/DCコンバータの並列数により変化するという知見に基づき、並列数に応じた適切な補正値を各制御部に与えることができる。
【0023】
(4)前記(2)又は(3)のDC/DC変換システムにおいて、前記補正値を第1の補正値とすると、各制御部が当該第1の補正値を用いた上で改めて、前記管理制御部は、前記複数のDC/DCコンバータの全体から見た個々についての出力偏差に対応する電圧検出偏差を定め、当該電圧検出偏差を抑制する第2の補正値を、複数の前記DC/DCコンバータのそれぞれにおける前記制御部に与えるようにしてもよい。
この場合、第1の補正値は暫定値であっても、第2の補正値により、複数のDC/DCコンバータの出力を均一化することができる。
【0024】
(5)前記(2)又は(3)のDC/DC変換システムにおいて、前記管理制御部は、前記補正値を定期的に更新して、複数の前記DC/DCコンバータのそれぞれにおける前記制御部に与えるようにしてもよい。
この場合、電圧検出偏差が経時的に変化しても、定期的に、適切な補正値を提供することができる。
【0025】
(6)前記(1)から(5)までのいずれかのDC/DC変換システムにおいて、前記直流電源は蓄電池であり、前記制御部は、前記直流電源の充電状態に基づいて前記直流電源に流れる電流を制限することもできる。
この場合、満充電又は放電限界に達した蓄電池に対応するDC/DCコンバータは出力の均一化の対象から除外することができる。
【0026】
(7)また、併せて開示するのは、複数の直流電源及び共通のDCバスを含む蓄電システムであって、前記複数の直流電源の各々に対応して、前記直流電源と前記DCバスとの間に設けられたDC/DCコンバータと、前記DC/DCコンバータを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、並列に存在する複数の前記DC/DCコンバータの全体から見た個々についての、前記DCバスの電圧検出偏差を取り入れて前記DCバスの電圧検出値を補正し、出力電力に対して垂下特性となる電圧指令値に従って前記DC/DCコンバータを制御する。
【0027】
このような蓄電システムでは、出力電力に対する電圧指令値の垂下特性によって、並列に設けられた複数のDC/DCコンバータの出力が揃う方向へ向かうような制御を実現する。また、DCバスの電圧検出の誤差に起因して複数のDC/DCコンバータの出力が揃わなくなることを抑制すべく、DCバスの電圧検出偏差を取り入れてDCバスの電圧検出値を補正する。こうして、複数のDC/DCコンバータの間で、高速な通信に依存することなく、出力を均一化する蓄電システムを提供することができる。
【0028】
(8)前記(7)の蓄電システムは、前記DCバスと交流電路との間に設けられるDC/ACコンバータを備え、前記DC/ACコンバータは、前記交流電路に接続された商用電力系統又は負荷の状況に応じて出力を変化させる、というシステム構成であってもよい。
従来の蓄電システムでは充放電電力の指令値はDC/DCコンバータの制御部が受けて、DC/ACコンバータは、DC/DCコンバータの出力によって変化するDCバス電圧を一定に維持する制御を行う。そのため、充放電電力を制御する際の制御の遅延が長くなる。これに対し、上記の蓄電システムではDC/ACコンバータが直接、充放電の指令値を受けるので制御の遅延が短くなる。
【0029】
(9)前記(7)の蓄電システムにおいて、前記DC/DCコンバータは、対応する前記直流電源に対して電流制御を行うものであってもよい。
この場合、DCバスに、電流制御を行うDC/DCコンバータを介して直流電源を並列接続する蓄電システムを構成することができる。直流電源は、例えば、SOC等の状態によって充放電電流を制限する必要がある蓄電池のほか、太陽光発電、燃料電池等の発電装置である。
【0030】
(10)方法の観点からは、複数の直流電源と共通のDCバスとの間にあって互いに並列に設けられる複数のDC/DCコンバータの制御方法であって、前記複数の前記DC/DCコンバータの全体から見た個々についての、前記DCバスの電圧検出偏差を取り入れて前記DCバスの電圧検出値を補正し、出力電力に対して垂下特性となる電圧指令値に従って前記DC/DCコンバータを制御する。
【0031】
このようなDC/DCコンバータの制御方法によれば、出力電力に対する電圧指令値の垂下特性によって、並列に設けられた複数のDC/DCコンバータの出力が揃う方向へ向かうような制御を実現することができる。また、DCバスの電圧検出の誤差に起因して複数のDC/DCコンバータの出力が揃わなくなることを抑制すべく、DCバスの電圧検出偏差を取り入れてDCバスの電圧検出値を補正する。こうして、複数のDC/DCコンバータの間で、高速な通信に依存することなく、出力を均一化することができる。
【0032】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示のDC/DC変換システム、これを含む蓄電システム、及び、DC/DCコンバータの制御方法の具体例について、図面を参照して説明する。
【0033】
《蓄電システムを含む全体構成》
図1は、蓄電システム1を含む電源系統の単線接続図である。図において、蓄電システム1は、交流電路L
ACに接続されている。交流電路L
ACには、太陽光発電システム2も接続されている。3相の商用電力系統3は、トランス4を介して、交流電路L
ACに接続されている。トランス4の2次側と交流電路L
ACとの間には交流電流を検出するCT(Current Transformer)5が設けられている。交流電路L
ACには、負荷6が接続されている。
【0034】
蓄電システム1は、直流電源システム11と、DC/ACコンバータ12とを備えている。DC/ACコンバータ12は、制御部13により制御される。制御部13には、CT5が検出した電流値の情報が送られて来る。
【0035】
直流電源システム11は、共通のDCバスLDCに、n(nは2以上の自然数)組の直流電源装置11_1,11_2,・・・,11-nが互いに並列に接続されて構成されている。直流電源装置11_1は、複数のセルの直列ストリングである蓄電池14と、蓄電池14に付随して設けられたバッテリーマネージメントシステム15と、蓄電池14と接続されたDC/DCコンバータ16と、DC/DCコンバータを制御する制御部17とを備えている。他の直流電源装置11_2,・・・,11-nも同様の内部回路を有している。バッテリーマネージメントシステム15は、蓄電池14に関するSOCその他の情報を取得し、情報を制御部17に送る。
【0036】
太陽光発電システム2は、太陽電池21の直列ストリングがさらに並列に接続されたアレイ21Aと、DC/ACコンバータ22とを備えている。アレイ21Aの出力はDC/ACコンバータ22により交流電力に変換され、交流電路LACに供給される。太陽光発電システム2は、分散電源として、交流電路LACへ電力供給することができる。
【0037】
蓄電システム1は、交流電路LACに供給される電力を充電することができると共に、放電により交流電路LACに電力を供給することができる。負荷6には、交流電路LACから電力が供給される。系統連系しない自立運転時は、太陽光発電システム2の出力する電力を負荷6に供給し、また、蓄電システム1に充電することができる。負荷6の需要電力が大きい場合又は太陽光発電停止中は、蓄電システム1から負荷6に電力を供給することができる。
なお、直流電源システム11の直流電源としては、例えば、SOC等の状態によって充放電電流を制限する必要がある蓄電池のほか、太陽光発電、燃料電池等の発電装置を用いることもできる。
【0038】
《詳細な回路構成》
図2は、一例として、2組の直流電源装置11_1,11_2がDCバスL
DCに接続されている回路図である。図において、2組のDC/DCコンバータの符号をそれぞれ、16_1,16_2とする。2組の制御部の符号をそれぞれ、17_1,17_2とする。直流電源装置11_1側の、蓄電池14及びBMS15は、DC/DCコンバータ16_1と接続されている。直流電源装置11_2側の、蓄電池14及びBMS15は、DC/DCコンバータ16_2と接続されている。
【0039】
DC/DCコンバータ16_1は、平滑コンデンサ161と、直流リアクトル162と、ローサイドのスイッチング素子QLと、ハイサイドのスイッチング素子QHと、DCバスLDC側の平滑コンデンサ163とを備え、これらは図示のように接続されている。また、計測用の機器として、DC/DCコンバータ16_1の低圧側の電圧を検出する電圧センサ165と、直流リアクトル162に流れる電流を検出する電流センサ166と、DCバスLDCの2線間の電圧を検出する電圧センサ167とが設けられている。BMS15の情報及び各センサの出力する検出値の信号は、制御部17_1に送られる。
【0040】
DC/DCコンバータ16_2についても同様の内部回路構成であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
複数組のDC/DC変換に関する構成、すなわち本例ではDC/DCコンバータ16_1及びその制御部17_1、並びに、DC/DCコンバータ16_2及びその制御部17_2は、一般化して表現すると、複数の直流電源(14)と共通のDCバス(LDC)との間に設けられるDC/DC変換システム100を構成する。
【0041】
DC/ACコンバータ12は、平滑コンデンサ121と、3レグ、フルブリッジのスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6、交流側3電路にそれぞれ設けられた交流リアクトル122と、交流リアクトル122とLC回路を構成するコンデンサ123とを備え、これらは図示のように接続されている。また、計測用の機器として、DCバスLDCの2線間の電圧を検出する電圧センサ124と、交流3線間の電圧を検出する電圧センサ124,125,126と、交流3電路に流れる電流を検出する電流センサ127,128,129を備えている。各センサの出力する検出値の信号は制御部13に送られる。
【0042】
なお、スイッチング素子QL,QH,Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6としては例えば図示のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いることができるが、これに代えて、MOS-FET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を用いてもよい。
【0043】
制御部17_1,17_2及び制御部13は、管理制御部18と通信可能(有線、無線のどちらでもよい。)である。制御部13,17_1,17_2、及び、管理制御部18は、例えばコンピュータを含み、コンピュータがソフトウェア(コンピュータプログラム)を実行することで、必要な制御機能を実現する。ソフトウェアは、制御部13,17_1,17_2,管理制御部18の記憶装置(図示せず。)に格納される。
【0044】
図1,
図2において、DCバスL
DCに対して互いに並列に接続された複数のDC/DCコンバータ16(16_1,16_2)は、制御部17(17_1,17_2)による後述の制御により、それぞれ独立して、DCバス電圧が一定になるように制御される。そのため、DC/ACコンバータ12は、自立運転だけでなく系統連系運転でも、DCバス電圧を一定に制御する必要はなく、制御部13の指令値に従って出力電力を制御すればよい。
すなわち、複数のDC/DCコンバータに電力指令値をリアルタイム送信する通信手段は不要である。交流の電力指令値は、DC/ACコンバータ12の制御部13のみが把握していればよい。
【0045】
《垂下特性について》
図3は、DC/DCコンバータの等価モデルを示す図である。DC/DCコンバータの出力電圧(DCバス電圧)をE、DC/DCコンバータと負荷(
図1及び
図2の回路構成であればDC/ACコンバータ12)との間の線路インピーダンスをZ、負荷に供給される電圧をVとすると、DC/DCコンバータの出力電流Iは以下の式(1)により得られる。
I=(E-V)/Z ・・・(1)
【0046】
式(1)におけるZを純抵抗Rと仮定すると、DC/DCコンバータが出力する電力Pは以下の式(2)により表される。
P=VI=(EV-V2)/R ・・・(2)
式(2)を変形すると、以下の式(3)が得られる。
E=(R/V)P+V ・・・(3)
【0047】
式(3)から、出力電圧Eは出力電力Pに比例する。そこで、電圧指令値E*の特性を、出力電力Pに対して比例係数fで負帰還する関数として、以下の式(4)により表す。
E*=Eref-f(P-Pref) ・・・(4)
ここで、Eref及びPrefはそれぞれ、DC/DCコンバータの出力電圧(DCバス電圧)及び出力電力の基準値を示す。全てのDC/DCコンバータ16(16_1,16_2)の制御部17(17_1,17_2)は、それぞれ独立して、例えば20kHzで式(4)の演算を繰り返す。
【0048】
図4は、式(4)をグラフに表したものである。
図4において、出力電力Pに対して電圧指令値E
*は、比例係数fに基づく傾き(-f)の垂下特性となる。P=P
refのとき、E
*=E
refである。例えば、2つのDC/DCコンバータのうち一方(例えばDC/DCコンバータ16_1)が垂下特性上の座標点(P
1,E
*1)にあり、他方(DC/DCコンバータ16_2)が(P
2,E
*2)にあるとすると、相対的に、出力電力が小さい方は電圧目標値が高くなり、出力電力が大きい方は電圧目標値が低くなる。その結果、DC/DCコンバータ16_1は出力電力を増大させようとし、DC/DCコンバータ16_2は出力電力を減少させようとする。こうして2つのDC/DCコンバータ16_1,16_2は互いに出力電力が揃う方向へ収束する。
【0049】
《DC/DCコンバータの制御ブロック図》
図5は、DC/DCコンバータの制御ブロック図の一例である。
図5中の(a)において、DC/DCコンバータの低圧側電圧vL1と電流i1との積を電力P1とする。次に、(b)において、電力P1に対する垂下特性の式(4)における比例係数fを0.005とし、DCバス電圧の基準値E
refを400[V]として電圧指令値E1
*を生成する。次に、(c)において、電圧指令値E1
*と実際の高圧側の電圧vH1の差に比例積分及びリミッタ処理を施して電流指令値i1
*を得る。これ以降は、一般的なDC/DCコンバータの制御と同様であり、(d)において、電圧参照値v1rを生成する。そして、(e)において、電圧参照値v1rと三角波(20kHz)とを重畳し、ハイサイドのゲート駆動信号gdH1と、これを反転した関係にあるローサイドのゲート駆動信号gdL1を得ることができる。
【0050】
《検証》
(垂下制御の効果)
図6及び
図7は、比較のため、垂下特性を持たせる制御(以下、垂下制御という。)を行うことなく2台のDC/DCコンバータを並列に接続して運転した蓄電システムの状態を示すグラフである。横軸は時間である。
図6、
図7の各図において、上段のグラフは、DC/ACコンバータの3相の交流出力電圧と、それらのピーク値より高いDCバス電圧とを表している。中段のグラフは2台のDC/DCコンバータに対応する2つの蓄電池電流を表している。下段のグラフは2台のDC/DCコンバータの出力電力を表している。
【0051】
図6では、条件として、2台のDC/DCコンバータにおける電圧検出値の差が0、回路の配線インピーダンスの差が0、とした。この場合、2つの蓄電池電流はリプルによる細かい変動はあるが、概ね一致し、1本の太線のようになっている。2台のDC/DCコンバータの出力電力(下段)は一致し、2024Wであった。しかしながら、現実にはこのような理想的な状態を実現することは困難である。仮に、DCバス電圧検出値は検出回路の校正を正確に行ったとしても、温度変化に伴うアンプのオフセット変動等によって2台の電圧検出値に±1V程度の違いが生じるのは避けられない。配線のインピーダンスも可能な限り一致するように設計したとしても、誤差を10%以下とするのは困難である。
【0052】
図7では、条件として、2台のDC/DCコンバータにおける電圧検出値の差が0.1%、配線インピーダンスの差が0、とした。この場合、一方のDC/DCコンバータに関しては、蓄電池電流が電流上限値30Aに達し、電力は7408Wでの放電となった。他方のDC/DCコンバータに関しては、蓄電池電流が-13A、電力が3281Wでの充電となった。このように、2台のDC/DCコンバータのDCバス電圧検出値がわずかに0.1%異なっただけで、出力が大きく乖離してしまうことがわかる。
【0053】
次に垂下制御を行った場合の蓄電システムの状態について説明する。
DC/DCコンバータの制御において、蓄電池を放電させてDCバスに出力するときの電力の符合を正とする。また、式(4)におけるDCバス電圧の基準値Erefを400V、DC/DCコンバータの出力電力の基準値Prefを0W、比例定数fを0.005とする。この場合、DC/DCコンバータのDCバス電圧指令値E*は、出力電力が10kW(放電)のときに350V、-10kW(充電)のときに450Vとなる。DCバス電圧制御の比例ゲインは、垂下制御を行わないときと同じ値の10では発振するため、0.2まで下げた。
【0054】
図8から
図11までは、垂下制御を行って、2台のDC/DCコンバータを並列に接続して運転した蓄電システムの状態を示すグラフである。横軸は時間である。各図において、上段のグラフは、DC/ACコンバータの3相の交流出力電圧と、それらのピーク値より高いDCバス電圧とを表している。中段のグラフは2台のDC/DCコンバータに対応する2つの蓄電池電流を表している。下段のグラフは2台のDC/DCコンバータの出力電力を表している。
【0055】
図8では、条件として、DCバス電圧検出値の差を0.1%、配線インピーダンスの差を0とした。結果として、2台のDC/DCコンバータの出力電力は2063Wと1985W、両者の平均値2024Wからのずれは±1.9%となった。すなわち、2台のDC/DCコンバータの電力は一致してはいないものの、近い値になっている。
【0056】
図9では、条件として、DCバス電圧検出値の差を1%に増大させ、配線インピーダンスの差は0とした。結果として、2台のDC/DCコンバータの出力電力は2410Wと1638Wとなり、両者の平均値からのずれは±19%に増えた。
【0057】
図10では、条件として、垂下制御の比例定数を0.005の2倍の0.01とし、DCバス電圧検出値の差を1%、配線インピーダンスの差は0とした。結果として、2台のDC/DCコンバータの出力電力は2212Wと1836Wとなり、両者の平均値からのずれは±9%となった。
【0058】
図11では、条件として、垂下制御の比例定数を0.01、DCバス電圧検出値の差を1%、そして、配線インピーダンスの差は0ではなく、一方が他方の2倍になるようにした。結果として、2台のDC/DCコンバータの出力電力は2215Wと1833Wとなった。
図10の結果と比べると、ほとんど変わらない。すなわち、配線インピーダンスの差は結果に大きく影響しないと解される。
【0059】
以上の結果から、配線インピーダンスよりもDCバス電圧検出値の差の方が、DC/DCコンバータの出力ばらつきに大きな影響を与えることがわかる。また、垂下制御の比例定数fを大きくするほどDCバス電圧値の差による、出力ばらつきを抑える効果があることが分かる。しかし、比例定数fを0.01としても、2台のDC/DCコンバータの出力電力の、平均値からのずれはなお±9%ある。また、このとき、DCバス電圧指令値E*は、出力電力が10kW(放電)のときに300Vまで下がる。この電圧値は、DC/ACコンバータで交流200Vに変換するために十分な値ではない。
【0060】
DC/DCコンバータの出力電力が-10kW(充電)のときはDCバス電圧指令値E*が500Vとなる。これは、交流200Vへの変換には十分な値であるが、DCバス電圧としては高すぎるためDC/ACコンバータの電力損失が大きくなる。DCバス電圧の変動範囲が大きくなりすぎないように、垂下制御の比例定数fはあまり大きくせずに、DC/DCコンバータの出力のばらつきが小さくなる工夫が必要である。
【0061】
《垂下制御及び、電圧検出値の補正》
図12は、出力偏差と、電圧検出偏差との関係を示すグラフである。このグラフは、上述の、垂下制御の比例定数fを0.005としたときのDC/DCコンバータの出力の平均値からの偏差(出力偏差(比率))と、DCバス電圧検出の平均値(全体)から見た個々の偏差(電圧検出偏差)との関係をプロットして、それらの近似直線として得られたものである。この図から、出力偏差と電圧検出偏差とは互いに比例関係にあることがわかる。
【0062】
従って、出力偏差に基づいて電圧検出値を補正することができる。例えば、出力偏差が+19%のときは、近似直線に当てはめるとDCバス電圧検出値の偏差は-0.494%である。よって、電圧検出値を、(1-0.00494)の0.99506で割れば電圧検出値を補正することができる。実際には、蓄電システムを設置した現場でシステム構築後に定格の20%程度の出力で試運転を行い、出力偏差から各DC/DCコンバータのDCバス電圧検出値の補正係数を決めればよい。このような補正係数を用いて2台のDC/DCコンバータのDCバス電圧検出値を補正した。
【0063】
図13及び
図14は、垂下制御に加えて上記の補正を行って、2台のDC/DCコンバータを並列に接続して運転した蓄電システムの状態を示すグラフである。横軸は時間である。各図において、上段のグラフは、DC/ACコンバータの3相の交流出力電圧と、それらのピーク値より高いDCバス電圧とを表している。中段のグラフは2台のDC/DCコンバータに対応する2つの蓄電池電流を表している。下段のグラフは2台のDC/DCコンバータの出力電力を表している。
【0064】
図13では、条件として、垂下制御の比例定数fが0.005、DCバス電圧検出値の差を1%、配線インピーダンスの差を0とした。この条件は
図9と同じである。そして、
図9の出力偏差を
図12の近似直線に当てはめて得た補正係数を用いて2台のDC/DCコンバータのDCバス電圧検出値を補正した。その結果として、2台のDC/DCコンバータの出力電力は2024Wと2019Wとなり、ほぼ一致している。両者の平均値に対する偏差は小さくなり、±0.135%になった。
図13のグラフ上では2台のDC/DCコンバータの出力電力が互いに重なって1本の線のように見えている。
【0065】
図14では、
図13と同じ条件及び補正に加えて、DC/ACコンバータの交流側の各線間に接続する抵抗負荷を10Ωから2Ωに置き換えた。この場合、各DC/DCコンバータの出力電力は10.330kWと、10.325kWとなり、ほぼ一致している。両者の平均値に対する偏差は僅かに±0.02%であった。
図14のグラフ上では2台のDC/DCコンバータの出力電力が互いに重なって1本の線のように見えている。DCバス電圧も約350Vで安定した。
【0066】
図15は、負荷接続にあえて過酷な条件を課した上で、垂下制御に加えて補正を行って、2台のDC/DCコンバータを並列に接続して運転した蓄電システムの状態を示すグラフである。横軸は時間である。上から1段目のグラフは、DC/ACコンバータの3相の交流出力電圧を表している。2段目のグラフは、DC/ACコンバータの3相の交流出力電流を表している。3段目のグラフはDCバス電圧を表している。4段目のグラフは2台のDC/DCコンバータに対応する2つの蓄電池電流を表している。5段目のグラフは2台のDC/DCコンバータの出力電力を表している。
【0067】
図15では、条件として、垂下制御の比例定数fが0.005、DCバス電圧検出値の差を1%、配線インピーダンスの差を0とした。この条件は
図9と同じである。そして、
図9の出力偏差を
図12の近似直線に当てはめて得た補正係数を用いて2台のDC/DCコンバータのDCバス電圧検出値を補正した。また、
図15では、あえて過酷な条件を課すべく、2Ω×3個の抵抗負荷が、0.2秒の周期で接続/非接続を繰り返すようにした。その結果、負荷を解列した直後にDC/ACコンバータの出力電圧が乱れるが、これを除くと、交流電圧は線間200Vを安定して出力している。DCバス電圧は負荷を接続しているときは350V、解列しているときは400Vで定常状態となるが、過渡的な両者の中間電圧状態を含めて安定している。2台のDC/DCコンバータの出力電力は定常状態、過渡状態ともに一致している。
【0068】
《ここまでのまとめ》
以上のように、各DC/DCコンバータのDCバス電圧指令値を、出力電力によって負帰還がかかるように変化させる垂下特性を組み込み、さらに、出力電力の平均値からの偏差によってDCバス電圧検出値を補正する仕組みを併用する。これによって、通信に依存せず、複数のDC/DCコンバータでDCバス電圧を一定値に保つ制御ができることが確認された。
【0069】
《3台以上のDC/DCコンバータの並列運転》
次に3台以上のDC/DCコンバータの並列運転について考える。すなわち、
図1,
図2における直流電源装置が、11_1,11_2,11_3の3台を並列運転する場合である。
【0070】
最初にDCバス電圧検出器の補正係数を求めるためのシミュレーションを行う。3台のDC/DCコンバータのDCバス電圧検出器の誤差率をそれぞれ+1%、±0%、-1%として、交流側各線間に10Ωの抵抗負荷を接続した。補正係数は全て1としている。出力偏差δiを下記の式(5)により定義すると、3台のDC/DCコンバータのδiは-0.580、0、+0.580となった。
【0071】
なお、記号及び数式を表す書体は明細書中に異種混在しているが、書体の違いに意味はなく、同じ文字は同じ物理量を表している。
【0072】
【0073】
また、3台のDC/DCコンバータのDCバス電圧検出器の誤差率をそれぞれ+0.5%、±0%、-0.5%として、交流側各線間に10Ωの抵抗負荷を接続してみた。この場合、3台のDC/DCコンバータのδiは、-0.290、0、+0.290となった。
【0074】
これらの結果から、出力偏差δ
iと、DCバス電圧検出偏差との関係を示したグラフが
図16である。関係を示す直線は、原点を通り、傾きが負の比例関係を示している。この関係から出力偏差δ
iを最小化するためのDCバス電圧検出値の補正係数G
iを下記の式(6)により得ることができる。DCバス電圧検出値をDC/DCコンバータの制御部におけるソフトウェアによる演算において、G
iで割り戻すことによって、検出値の偏差を補正して、出力偏差を最小化することができる。
G
i=1+hδ
i, h=-0.01725 ・・・(6)
【0075】
なお、
図16の傾きh(=-0.01725)は、
図12に示した2台並列DC/DCコンバータの-0.0260と比べると概ね2/3になっている。すなわち、並列台数によって傾きが変わっている。δ
iを定義した式(5)を、式(6)にあてはめて下記の式(7)が得られる。式(7)は、hとDC/DCコンバータの並列数nの積が一定になることを示している。
【0076】
【0077】
よって、あらためてH=nhと定義すると、式(6)は、下記の式(8)により、DC/DCコンバータの並列数nを組み込んだ数式に一般化することができる。
Gi=1+(H/n)・δi, H=-0.05175 ・・・(8)
【0078】
《出力偏差による補正》
3台のDC/DCコンバータのDCバス電圧検出の誤差率をそれぞれ+0.8%、+0.3%、-0.9%として、交流側各線間に10Ωの抵抗負荷を接続した。このときの、DCバス電圧検出値補正前の結果は、3台のDC/DCコンバータの出力は平均1350W、偏差はδ1:-0.4249,δ2:-0.1352,δ3:+0.5601となり、ばらついている。そこで、上記の出力偏差を式(8)に当てはめると、DCバス電圧検出値の補正係数はG1:1.00733,G2:1.00233,G3:0.990となる。この補正係数を用いてDCバス電圧検出値を補正した。
【0079】
図17は、垂下制御に加えて上記の補正を行って、3台のDC/DCコンバータを並列に接続して運転した蓄電システムの状態を示すグラフである。横軸は時間である。図において、上段のグラフは、DC/ACコンバータの3相の交流出力電圧と、それらのピーク値より高いDCバス電圧とを表している。中段のグラフは3台のDC/DCコンバータに対応する3つの蓄電池電流を表している。下段のグラフは3台のDC/DCコンバータの出力電力を表している。
【0080】
結果として、3台のDC/DCコンバータの出力はほぼ一致し、出力偏差はδ1:0.00673,δ2:0.00653,δ3:-0.0132と極めて小さくなった。
また、交流側負荷抵抗を1.5Ωに変更してみた。この場合も3台のDC/DCコンバータの出力はほぼ一致し、平均値9213.6Wに対する出力偏差はδ1:0.000888,δ2:0.000861,δ3:-0.00175と、さらに小さくなった。
【0081】
次に、DCバス電圧検出の誤差率を+1.2%,-0.5%,-1.2%に変更して、交流側各線間に10Ωの抵抗負荷を接続してみた。結果として、3台のDC/DCコンバータの出力は平均1344W、偏差はδ1:-0.7972,δ2:+0.1944,δ3:+0.6027となった。この出力偏差を式(8)に当てはめると、DCバス電圧検出値の補正係数はG1:1.01375,G2:0.9966,G3:0.9896となる。この補正係数を用いてDCバス電圧検出値を補正した。
【0082】
結果として、3台のDC/DCコンバータの出力はほぼ一致し、出力偏差はδ1:0.00445,δ2:-0.00254,δ3:-0.00191と小さくなった。
さらに、交流側負荷抵抗を1.5Ωに変更してみた。この場合も3台のDC/DCコンバータの出力はほぼ一致し、平均値9213.8Wに対する出力偏差はδ1:0.000586,δ2:-0.000337,δ3:-0.000249と、さらに小さくなった。
【0083】
次に、DC/DCコンバータの並列数を5台に増やしてみた。DCバス電圧検出の誤差率をそれぞれ+1.2%,-0.5%,-1.2%,+0.8%,-0.8%として、交流側各線間に10Ωの抵抗負荷を接続した。その結果、DC/DCコンバータの出力は平均803.6W、偏差はδ1:-1.276,δ2:0.3926,δ3:1.07979,δ4:-0.88349,δ5:0.68712となった。この出力偏差を式(8)に当てはめると、DCバス電圧検出値の補正係数はG1:1.0132,G2:0.9959,G3:0.9888,G4:1.00914,G5:0.99289となる。この補正係数を用いてDCバス電圧検出値を補正した。
【0084】
結果として、5台のDC/DCコンバータの出力はほぼ一致し、平均810.61W、出力偏差はδ1:0.0194,δ2:-0.00787,δ3:-0.0171,δ4:0.0141,δ5:-0.00859となった。
さらに、交流側負荷抵抗を0.9Ωに変更してみた。この場合も5台のDC/DCコンバータの出力はほぼ一致し、平均値9325.3Wに対する出力偏差はδ1:0.00150,δ2:-0.000612,δ3:-0.00132,δ4:0.00109,δ5:-0.000663と、さらに小さくなった。
【0085】
また、5台並列で、DCバス電圧検出の誤差率が正側にのみ偏った場合も確認してみた。一例として、誤差率を+2.0%,+1.5%,+1.0%,+0.5%,0%とした。この場合も結果として、DC/DCコンバータの出力を均一化することができた。
【0086】
さらに、各DC/DCコンバータに接続する直流電源の電圧が異なる場合についても確認してみた。具体的には、各直流電源の電圧は、200V,225V,250V,275V,300Vとした。結果は、1台のDC/DCコンバータの出力のみ出力電流の上限45Aで拘束されるため小さくなるが、他の4台は均一になった。この結果から直流電源の電圧はDC/DCコンバータの出力分担には影響せず、何れかのDC/DCコンバータが電流上限値の拘束を受ける場合は、自動的に他のDC/DCコンバータが負荷消費電力の不足分を均等に分配することが分かる。
【0087】
つまり、残量や劣化の進行度合いによって、ある特定の蓄電池の出力に制限を加えた場合でも、この蓄電システムは期待どおりの動作を行う。放電限界又は満充電に達した蓄電池に対応するDC/DCコンバータは出力の均一化の対象から除外することができる。なお、出力電流の上限を50Aに上げると、1台のDC/DCコンバータの出力拘束が解かれ、5台のDC/DCコンバータの出力は均一になる。
【0088】
《比例係数Hの補正》
ここまで、出力偏差によるDCバス電圧検出値の補正は、補正係数を求める式(8)に含まれる出力偏差に対する比例係数Hが正確に得られることを前提とした検討結果を示した。しかしながら、実際にはこの前提は必ずしも成立しない。なぜなら、可能な限り実機の諸条件を忠実にモデル化したシミュレーション等で予想した係数Hを用いるとしても、シミュレーションを実機と完全に一致させることはできず、実機のHと比べてある程度の誤差を含むことは避けられないからである。そこで、Hに誤差が含まれる場合に、更にこれを補正して出力を均一化することを考える。
【0089】
シミュレーションのみで検討を行えば、Hの誤差は起こり得ないが、これを模擬するため予め得たH*が、実際の値の半分の、-0.025875であったと仮定して検討する。このとき、例えば、補正係数は、G1
*:1.00502530059405,G2
*:1.0025130560483,G3
*:0.999999866085955,G4
*:0.99748727259746,G5
*:0.994974504674805となる。これらの補正係数を用いて行うDCバス電圧検出の補正を1次補正として、1次補正後の結果を求める。補正前の出力偏差と1次補正後の出力偏差との関係を求める。
【0090】
図18は、補正前の出力偏差と1次補正後の出力偏差の関係を示すグラフである。両者は比例関係にあり、1次補正後の出力偏差は補正前に対して0.4904倍の値に縮小されている。この出力偏差は1次補正に用いたH
*の誤差によって発生しているので、この補正前後の偏差の変化に基づいてH
*を補正することができる。出力偏差δ
iとDCバス電圧検出偏差Δ
iとの関係は、式(9)により表すことができる。ここで、v
iはDCバス電圧検出値、v
oは偏差を含まないDCバス電圧である。
【0091】
【0092】
H*を用いてviを補正したときのDCバス電圧検出偏差Δi
*と出力偏差δi
*の関係は式(10)となる。
【0093】
【0094】
上記式(9)、式(10)より、下記の式(11)、式(12)が得られる。
【0095】
【0096】
【0097】
式(12)を変形し、式(8)の補正係数Giの式を用いて、下記式(13)及び(14)が得られる。
【0098】
【0099】
1次補正前及び1次補正後の結果から式(14)によって補正係数G
iを求める。式(14)中の(δ
i
*)/δ
iは、
図18の傾き0.4904を用いた。このとき、G
1:1.009909185,G
2:1.004943384,G
3:0.999999737,G
4:0.99508111,G
5:0.990185816となり、補正係数は本来のHを用いて求めた補正係数とほぼ一致する。この補正係数を用いたDCバス電圧検出値の補正を2次補正とする。
【0100】
5台のDC/DCコンバータについての、2次補正後の出力偏差は負荷10Ωのとき以下のようになった。
P1:808.72111W,δ1:-0.0015630963095791
P2:807.53344W,δ2:-0.0030293787433416
P3:808.11476W,δ3:-0.0023116883879441
P4:810.58379W,δ4:0.00073654497438117
P5:814.98289W,δ5:0.0061676184664834
平均:809.987198W
【0101】
また、2次補正後の出力偏差は負荷0.9Ωのとき以下のようになった。
P1:9322.7666W,δ1:-0.0001225987849281
P2:9321.6954W,δ2:-0.00023748621246296
P3:9322.2296W,δ3:-0.00018019265029986
P4:9324.4640W,δ4:5.9449310196535E-005
P5:9328.3929W,δ5:0.00048082833749458
平均:9323.9097W
【0102】
以上に示したように、係数Hを正確に予測できない場合でも、2段階で補正係数を求める方法によって、出力を均一化することができる。
【0103】
《フローチャート》
図19は、DCバス電圧検出補正の処理動作を示すフローチャートの一例である。このフローチャートの実行主体は管理制御部18である。DCバス電圧検出補正の開始により、管理制御部18は、蓄電システムを一定出力で動作させる(ステップS1)。DC/DCコンバータ16の制御部17は、自己の出力(出力電力)を検出し、管理制御部18に送る。管理制御部18は、制御部17から送られてくる出力の情報を受け取る(ステップS2)。管理制御部18は、出力の情報に基づいて、それぞれのDC/DCコンバータ16の出力偏差を計算する(ステップS3)。
【0104】
次に、管理制御部18は、補正係数を式(8)により計算し、各DC/DCコンバータ16に補正係数を通知する(ステップS4)。DC/DCコンバータ16側では、通知された補正係数を取り入れて出力を計算し、管理制御部18に送る。各DC/DCコンバータ16から出力の情報を受け取った(ステップS5)管理制御部18は、各DC/DCコンバータ16の出力偏差を再計算する(ステップS6)。
【0105】
続いて管理制御部18は、出力偏差が所定値より小さいか否かを判定し(ステップS7)、小さければDCバス電圧検出補正を終える。小さくなければ、管理制御部18は、式(14)により、補正係数を再計算する(ステップS8)。以後、管理制御部18は、ステップS5,S6,S7を再度実行し、ステップS7において、出力偏差が所定値より小さくなっていれば、DCバス電圧検出補正を終える。通常、この段階で出力偏差は所定値より小さくなっていると考えられるが、万一、そうなっていない場合は、さらに補正係数の再計算を行って同様の処理を繰り返してもよい。
【0106】
以上のように、管理制御部18は、複数のDC/DCコンバータの全体から見た個々の出力偏差に対応する電圧検出偏差を定め、当該電圧検出偏差を抑制する補正値(補正係数)を、複数のDC/DCコンバータのそれぞれにおける制御部に与える。各制御部は、通知された補正値を用いて複数のDC/DCコンバータの出力を均一化することができる。なお、この通知には通信を用いるが、高速な通信は必要ない。
【0107】
また、管理制御部18は、DC/DCコンバータの並列数に応じて、補正値を変化させる。すなわち、適切な補正値はDC/DCコンバータの並列数により変化するという知見に基づき、並列数に応じた適切な補正値を各制御部に与える。
【0108】
ステップS4での補正値(補正係数)を第1の補正値とすると、各制御部が当該第1の補正値を用いた上で改めて、管理制御部18は、複数のDC/DCコンバータの全体から見た個々についての出力偏差に対応する電圧検出偏差を定め、当該電圧検出偏差を抑制する第2の補正値(補正係数)を、複数の前記DC/DCコンバータのそれぞれにおける制御部に与える(ステップS8)。こうして、第1の補正値は暫定値であっても、第2の補正値により、複数のDC/DCコンバータの出力を均一化することができる。
【0109】
《開示のまとめ》
以上、詳述したように、複数の蓄電池14と共通のDCバスLDCとの間に設けられるDC/DC変換システム100は、複数の蓄電池14の各々に対応して、蓄電池14とDCバスLDCとの間に設けられたDC/DCコンバータ16と、DC/DCコンバータ16を制御する制御部17と、を備えている。そして、制御部17は、並列に存在する複数のDC/DCコンバータ16の全体から見た個々についての、DCバスLDCの電圧検出偏差を取り入れてDCバス電圧検出値を補正し、出力電力に対して垂下特性となる電圧指令値に従ってDC/DCコンバータ16を制御する。
蓄電システム1及びDC/DCコンバータの制御方法としても、その要旨は同様である。
【0110】
このようなDC/DC変換システム100では、出力電力に対する電圧指令値の垂下特性によって、並列に設けられた複数のDC/DCコンバータ16の出力が揃う方向へ向かうような制御を実現する。また、DCバスLDCの電圧検出の誤差に起因して複数のDC/DCコンバータの出力が揃わなくなることを抑制すべく、DCバスLDCの電圧検出偏差を取り入れてDCバス電圧検出値を補正する。こうして、複数のDC/DCコンバータ16の間で、高速な通信に依存することなく、出力を均一化することができる。
【0111】
全体から見た個々についての電圧検出偏差を各DC/DCコンバータに通知するには、全体を見る管理制御部のような機能が必要になる。しかしながら、この通知のための通信はリアルタイムに行う必要はなく、低速で、定期的に更新できる程度の通信で足りる。定期的な更新を行うことにより、電圧検出偏差が経時的に変化しても、適切な補正値(補正係数)を提供することができる。
【0112】
上記の出力均一化の制御は、言い換えれば、DCバスに並列に接続された複数のDC/DCコンバータがそれぞれ独立に、DCバス電圧が一定になるようにDCバス電圧分散制御をしていることになる。DC/DCコンバータによってDCバス電圧は常に一定範囲内に収まるように制御されるため、DC/ACコンバータは、自立運転だけでなく系統連系運転でも、DCバス電圧を一定に制御する必要はなく、専ら出力電力を制御すればよい。
【0113】
《中央制御との比較》
系統連系での運用において、仮に、高速通信を用いて出力指令値を送信する従来の「中央制御」の応答性と、DCバス電圧分散制御の応答性とを、シミュレーションで比較してみた。
【0114】
例えば、自立運転の場合、中央制御では中央制御部から各DC/DCへの電力指令値伝送に伴う通信遅延が10ミリ秒程度になると、負荷急変時にDCバス電圧が低下し、DC/ACコンバータの出力電圧が正弦波を維持できなくなった。一方、DCバス電圧分散制御では、通信による指令値伝送を行わず、各DC/DCコンバータの制御部が独立にDCバス電圧を制御するため応答が速く、負荷急変時もDCバス電圧は適正範囲内に維持され、DC/ACコンバータの出力電圧にも乱れは生じなかった。
【0115】
また、系統連系運転の場合、中央制御では通信遅延とDC/ACコンバータによるDCバス電圧制御の追従遅れの影響を受け、通信遅延が10ミリ秒の場合に、電力指令値変更後の応答時間は30ミリ秒程度となった。これに対して、DCバス電圧分散制御では、電力指令値を更新するとDC/ACコンバータの出力電流指令値が直ちに更新されるため、応答時間は中央制御の10分の1の3ミリ秒となった。このように、系統連系運転においても、負荷追従、再生可能エネルギーの発電平滑化、周波数制御等の即応性が求められる用途においては、DCバス電圧分散制御が有利になる。
【0116】
《補記》
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0117】
1 蓄電システム
2 太陽光発電システム
3 商用電力系統
4 トランス
5 CT
6 負荷
11 直流電源システム
11_1,11_2,11_n 直流電源装置
12 DC/ACコンバータ
13 制御部
14 蓄電池
15 バッテリーマネージメントシステム
16,16_1,16_2 DC/DCコンバータ
17,17_1,17_2 制御部
18 管理制御部
21 太陽電池
21A アレイ
22 DC/ACコンバータ
100 DC/DC変換システム
121 平滑コンデンサ
122 交流リアクトル
123 コンデンサ
124,125,126 電圧センサ
127,128,129 電流センサ
161 平滑コンデンサ
162 直流リアクトル
163 平滑コンデンサ
165 電圧センサ
166 電流センサ
167 電圧センサ
LAC 交流電路
LDC DCバス
QH,QL スイッチング素子
Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6 スイッチング素子