(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20241008BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20241008BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20241008BHJP
G16Y 40/40 20200101ALI20241008BHJP
【FI】
G08G1/00 J
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/40
(21)【出願番号】P 2022021633
(22)【出願日】2022-02-15
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 豊和
(72)【発明者】
【氏名】相良 俊介
【審査官】佐藤 吉信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/141267(WO,A1)
【文献】特開2020-020740(JP,A)
【文献】特開2022-012710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
E01C 21/00-23/24
G16Y 10/40
G16Y 20/20
G16Y 40/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行時の振動に関する情報
が、前記車両の振動数が所定数以上であることを示す情報を含む場合に、前記車両が走行した道路を含む領域を人工衛星によって観測する観測対象領域
として決定すること
、及び
前記観測対象領域を前記人工衛星によって観測したデータに基づいて、液状化現象が発生しているか否かを判定するこ
と、
を実行する制御部を備える
、
情報処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記観測対象領域を前記人工衛星によって観測した過去のデータと現在のデータとの比較に基づいて、前記液状化現象が発生しているか否かを判定することを実行する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記振動に関する情報として、前記車両のダンパーの振動数に関する情報及び車両の位置情報を取得することを実行する
請求項1
又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記振動に関する情報として、道路の変形と相関する情報及び車両の位置情報を取得することを実行する
請求項1から
3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記液状化現象が発生していると判定した場合に、その判定結果を道路管理用の端末に送信することを実行する
請求項1から
4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記人工衛星は、合成開口レーダを搭載した人工衛星である
請求項1から
5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記人工衛星によって観測したデータを記憶する記憶部
をさらに備える請求項1から
7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
前記情報処理方法は、
車両の走行時の振動に関する情報
が、前記車両の振動数が所定数以上であることを示す情報を含む場合に、前記車両が走行した道路を含む領域を人工衛星によって観測する観測対象領域
として決定すること
、及び
前記観測対象領域を前記人工衛星によって観測したデータに基づいて、液状化現象が発生しているか否かを判定するこ
と、
を含む
、
情報処理方法。
【請求項9】
前記情報処理装置は、前記観測対象領域を前記人工衛星によって観測した過去のデータと現在のデータとの比較に基づいて、前記液状化現象が発生しているか否かを判定する
請求項
8に記載の情報処理方法。
【請求項10】
前記情報処理装置は、前記振動に関する情報として、前記車両のダンパーの振動数に関する情報及び車両の位置情報を取得する
請求項
8又は9に記載の情報処理方法。
【請求項11】
前記情報処理装置は、前記振動に関する情報として、道路の変形と相関する情報及び車両の位置情報を取得する
請求項
8から
10のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項12】
前記情報処理装置は、前記液状化現象が発生していると判定した場合に、その判定結果を道路管理用の端末に送信する。
請求項
8から
11のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項13】
情報処理装置が、車両の走行時の振動に関する情報が
前記車両の振動数が所定数以上であることを示す情報を含む場合に、前記車両が走行した道路を含む領域を人工衛星によって観測する観測対象領域
として決定するステップと、
前記観測対象領域を前記人工衛星によって観測したデータに基づいて、液状化現象が発生しているか否かを判定するステップと、
をコンピュータに実行させる
、
プログラム。
【請求項14】
前記判定するステップおいて、前記観測対象領域を前記人工衛星によって観測した過去のデータと現在のデータとの比較に基づいて、前記液状化現象が発生しているか否かを判定することを前記コンピュータに実行させる請求項
13に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衛星搭載の撮像装置が撮像した画像の中で参照画像との比較により必要となる領域のみを抽出し、その参照画像との差分データを送信することにより、伝送効率を高める技術がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、液状化現象の発生を好適に検出可能とすることのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の態様の一つは、車両の走行時の振動に関する情報に基づいて、人工衛星によって観測する観測対象領域を決定することと、前記観測対象領域を前記人工衛星によって観測したデータに基づいて、液状化現象が発生しているか否かを判定することと、を実行する制御部を備える情報処理装置である。
【0006】
また、本開示の他の態様は、情報処理装置が、車両の走行時の振動に関する情報に基づいて、人工衛星によって観測する観測対象領域を決定することと、前記情報処理装置が、前記観測対象領域を前記人工衛星によって観測したデータに基づいて、液状化現象が発生しているか否かを判定することと、を含む情報処理方法である。
【0007】
また、本開示の他の態様は、上記の情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、または、該プログラムを非一時的に記憶したコンピュータ可読記憶媒体である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、液状化現象の発生を好適に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る情報処理システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2Aは情報処理装置の構成例を示す図であり、
図2Bは端末の構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、情報処理システムの動作例を示すシーケンス図である。
【
図5】
図5は、観測対象領域の決定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、解析処理の例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、変形例における観測対象測定領域の決定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態では、制御部を含む情報処理装置について説明する。制御部は、車両の走行時の振動に関する情報を取得することと、走行時の振動に関する情報に基づいて、人工衛星によって観測する所定の領域を決定することとを実行する。制御部は、さらに、所定の領域を人工衛星によって観測したデータに基づいて、液状化現象が発生しているかを判定することを実行する。
【0011】
上記した情報処理装置は、車両から取得した振動に基づいて液状化現象が発生していそうな箇所を検出し、その箇所を衛星で観測したデータでさらに調べて液状化現象が発生しているか否かを判定する。車両では振動数が分かるが路面の高さの絶対値は分からないためである。例えば、アスファルトの軟化と液状化との区別は非常に困難である。しかし、人工衛星によって観測したデータをさらに用いれば、液状化に伴う地表の絶対的な高さが変化していることが分かる。このため、アスファルトの軟化と液状化とを区別することができる。すなわち、液状化現象を好適に検出することができる。
【0012】
以下、図面を参照して、実施形態に係る情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムについて説明する。実施形態の構成は例示である。
【0013】
図1は、実施形態に係る情報処理システムの構成例を示す図である。
図1において、情報処理システムは、ネットワーク1と、情報処理装置(サーバ)2と、車両3に搭載された車載端末3Aと、人工衛星4と、端末5とを含む。
【0014】
ネットワーク1は、インターネット等の公衆網である。ネットワーク1は、無線区間を含んでいてもよい。情報処理装置2は、ネットワーク1を介して、車載端末3A、人工衛星4、及び端末5と通信することができる。車載端末3Aは、ネットワーク1を介して道路6を走行中の車両3の振動に関連する情報(振動関連情報と称する)を情報処理装置2に送信する。
【0015】
振動関連情報は、例えば、車両3の振動数を示す情報と、車両3の位置情報とを含むことができる。或いは、振動関連情報は、道路6の変形と相関する情報及び車両の位置情報を含むことができる。道路6の変形は、例えば、道路6の窪み7或いは隆起8のような道路6の異常(凹凸)である。
【0016】
情報処理装置2は、車両3(車両3以外でもよい)から受信された、振動関連情報に基づいて、人工衛星4によって観測する領域(観測対象領域と称する)を決定(特定)する。
【0017】
観測対象領域は、例えば、以下のようにして決定される。地表が矩形、正六角形、或いは正八角形の複数のエリアに区画される。
図1では矩形に区画されたエリア10(10A~10D)が例示されている。そして、車両3からの振動関連情報に基づいて観測対象と判定された道路6を含むエリア10(
図1ではエリア10A)が観測対象領域として特定される。
【0018】
人工衛星4は、例えば合成開口レーダー(SAR)を備えた人工衛星であり、情報処理装置2からの指示(指令)に従って、情報処理装置2が特定した、観測対象領域を含むエリアを観測した画像データを生成する。画像データは、該当のエリアの地形及びその高さ(各地点の標高)を示すデータであり、振動関連情報に基づく所定の凹凸が発生している箇所における地形変位を観測することができる。人工衛星4は、ネットワーク1を介して、画像データを情報処理装置2に送信する。
【0019】
画像データは、「人工衛星によって観測されたデータ」(観測データと称する)の一例である。但し、人工衛星4によって観測されたデータは、画像データ以外であってもよい。また、人工衛星4は、SAR以外の光学センサ、或いはマイクロ波センサを用いて観測データを生成するものであってもよい。
【0020】
情報処理装置2は、観測データに基づいて液状化現象が発生しているか否かを判定する。例えば、情報処理装置2は画像データの解析を行い、この解析結果において液状化現象が発生していると判定した場合に、画像データを端末5へ送信する。この場合、解析結果が液状化現象の発生を示さない場合に、画像データを端末5に送信するのを回避することができる。
【0021】
端末5は、道路6の管理者の使用する道路管理用の端末5である。端末5は、画像データに基づく画像を表示することができる。道路6の管理者は、画像を液状化現象の資料として用いることができる。
【0022】
図2Aは情報処理装置2の構成例を示す図であり、
図2Bは端末5の構成例を示す図である。情報処理装置2及び端末5は、パーソナルコンピュータ(PC)、ワークステーション(WS)、或いはサーバマシンなどの汎用又は専用のコンピュータである。情報処理装置2及び端末5は、固定端末であっても携帯端末であってもよい。携帯端末は、ラップトップ型のPC、或いはスマートデバイス(スマートフォン及びタブレット端末など)等であるが、例示に制限されない。情報処理装置2は、1台の情報処理装置であっても、2以上の情報処理装置の集合(クラウド)であってもよい。
【0023】
図2Aにおいて、情報処理装置2は、バスB1を介して相互に接続された、処理部又は制御部(コントローラ)としてのプロセッサ21と、記憶装置22と、通信装置23と、入力装置24と、出力装置25とを含む。
【0024】
記憶装置22は、主記憶装置と補助記憶装置とを含む。主記憶装置は、プログラム及びデータの記憶領域、プログラムの展開領域、プログラムの作業領域、及び通信データのバッファ領域などとして使用される。主記憶装置はRAM(Random Access Memory)、又はRAMとROM(Read Only Memory)との組み合わせで構成される。補助記憶装置は、データ及びプログラムの記憶領域として使用される。補助記憶装置として、例えば、ハードディスク、Solid State Drive(SSD)、フラッシュメモリ、及びEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などの不揮発性記憶媒体を適用できる。
【0025】
通信装置23は、通信処理を行う回路であり、送信部及び受信部(通信部)として動作する。例えば、通信装置23は、NIC(ネットワークインタフェースカード)である。また、通信装置23は、無線通信(LTE、5G、無線LAN(Wi-Fi)、BLEな
ど)を行う無線通信回路であってもよい。また、通信装置は、NICと無線通信回路との組み合わせであってもよい。
【0026】
入力装置24は、キー、ボタン、ポインティングデバイス、及びタッチパネル等を含み、情報の入力に使用される。入力装置24は、マイク(音声入力装置)を含んでいてもよい。出力装置25は、例えば液晶ディスプレイ、或いは有機ELディスプレイなどであり、情報及びデータを表示する。出力装置25は、スピーカ(音声出力装置)を含んでいてもよい。
【0027】
プロセッサ21は、例えばCPU(Central Processing Unit)などである。プロセッ
サ21は、記憶装置22に記憶された各種のプログラムを実行することによって、様々な
処理を行う。例えば、プロセッサ21は、車両3の車載端末3Aから振動関連情報を取得する処理、及び振動関連情報に基づいて観測対象領域を決定する処理を実行する。また、プロセッサ21は、人工衛星4に観測対象領域を観測する指令(指示)を送信する処理、人工衛星4から観測データ(画像データ)を受信して解析する処理、及び液状化現象の発生を示す情報を端末5へ送信(通知)する処理などを実行する。
【0028】
端末5は、情報処理装置2と同様に、バスB2に接続されたプロセッサ21と、記憶装置22と、通信装置23と、入力装置24と、出力装置25とを含む。但し、処理の目的、あるいは負荷の大きさに応じて仕様又は性能の異なる装置が適用される。端末5のプロセッサ21は、出力装置25を用いた液状化現象の発生を示す情報の報知(出力)を行う。例えば、出力装置25(ディスプレイ)の表示制御を行い、情報処理装置2から受信したデータに基づく画像等をディスプレイに表示する処理を実行する。
【0029】
図3は、車載端末3Aの構成例を示す図である。車載端末3Aは、バスB3に接続されたプロセッサ31と、記憶装置32と、通信装置33と、入力装置34と、出力装置35とを含む。プロセッサ31、記憶装置32、通信装置33、入力装置34、及び出力装置35は、プロセッサ21、記憶装置22、通信装置23、入力装置24、及び出力装置25と同様のものを適用することができる。但し、用途及び負荷量に応じて同種の装置であっても仕様及び性能が異なる。また、通信装置33は、無線通信回路で構成される。
【0030】
車載端末3Aには、車両3に搭載されたセンサ40等から情報またはデータが入力される。センサ40は、車両3の振動数を測定するセンサである。センサ40は、例えば車両3が備えるダンパーに装着され、ダンパーの振動数を車両3の振動数として計測する。但し、センサ40の装着箇所は、ダンパーに制限されず、例えばダンパーの振動数と相関する振動数が得られる限り、ダンパー以外の部品に装着されてもよい。
【0031】
車載端末3Aのプロセッサ31は、記憶装置32に記憶されたプログラムの実行によって、上述したダンパーの振動数を示す情報を取得する処理を実行する。そして、プロセッサ31は、取得した情報を含む振動関連情報を生成し、ネットワーク1を介して振動関連情報を情報処理装置2へ送信する処理を実行する。
【0032】
なお、上述したプロセッサ21及び31として、複数個のCPUを適用しても、マルチコア型のCPUを適用してもよい。CPUによって行われる処理の少なくとも一部が、DSP(Digital Signal Processor)又はGPU(Graphical Processing Unit)のような
CPU以外のプロセッサによって行われてもよい。また、CPUによって行われる処理の少なくとも一部が、専用又は汎用の集積回路(ハードウェア)によって行われてもよい。集積回路は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、或いはFPGA
(Field Programmable Gate Array)などを含む。或いは、CPUによって行われる処理
の少なくとも一部が、プロセッサと集積回路との組み合わせにより実行されてもよい。組み合わせは、例えば、マイクロコントローラ(MCU)、SoC(System-on-a-chip)、システムLSI、又はチップセットなどと呼ばれる。
【0033】
図4は、情報処理システムの動作例を示すシーケンス図である。情報処理装置2は、1又は2以上の車載端末3Aと通信回線を確立する(ステップS1)。車載端末3Aの夫々は、振動関連情報を情報処理装置2に送信する。振動関連情報は、少なくとも、車両3の振動数、振動数を計測した車両3の位置(振動数の計測位置)を含む。振動関連情報の送信のタイミングは適宜設定可能である。振動関連情報は、例えば、情報処理装置2からの要求に応じて送信してもよく、車載端末3Aが周期的に又は定期的に送信してもよい。
【0034】
情報処理装置2のプロセッサ21は、車載端末3Aの夫々から受信された振動関連情報
を記憶装置22に記憶する(ステップS3)。記憶装置22は、「記憶部」の一例である。
【0035】
情報処理装置2のプロセッサ21は、観測対象領域の決定処理を行う(ステップS4)。
図5は、観測対象領域の決定処理の一例を示すフローチャートである。ステップS01において、情報処理装置2のプロセッサ21は、振動関連情報を取得する。本実施形態では、記憶装置22から振動関連情報に含まれる車両3の振動数を示す情報を読み出す。
【0036】
ステップS02では、プロセッサ21は、振動数が予め用意された閾値(所定振動数)以上であるか否かを判定する。このとき、振動数が閾値以上であると判定される場合には、処理がステップS03に進み、そうでない場合には、処理がステップS01に戻る。
【0037】
ステップS03では、プロセッサ21は、振動数の計測位置、すなわち、車両3が当該振動数を計測した道路6上の位置(すなわち道路6)を含むエリア10を観測対象領域に決定する。
【0038】
図4に戻って、情報処理装置2のプロセッサ21は、観測対象領域に該当するエリア10の観測指示(指令)を人工衛星4に送信する(ステップS5)。人工衛星4は、情報処理装置2からの観測指示に応じて、観測指示において指定されたエリア10に対する観測データを生成する。すなわち、人工衛星4は、SARを用いて当該エリア10の地表の形状を示す画像データ(人工衛星4によって観測されたデータ、すなわち観測データ)を生成し、観測データを情報処理装置2へ送信する(ステップS6)。
【0039】
情報処理装置2のプロセッサ21は、人工衛星4から受信された観測データを記憶装置22(記憶部の一例)に記憶する(ステップS7)。プロセッサ21は、観測データ、すなわち画像データの解析を行う(ステップS8)。
図6は、解析処理の例を示すフローチャートである。ステップS011では、情報処理装置2のプロセッサ21は、画像データの解析を行い、画像中の道路6を特定する。
【0040】
ステップS012では、プロセッサ21は、道路6の各地点の高さ(標高の平均値、現在の平均と称する)を求める。ステップS013では、プロセッサ21は、該当のエリア10(道路6)に関して過去に測定されたデータ(予め記憶装置22に記憶されている)を取得し、当該過去のデータから道路6の標高の平均値(過去の平均値と称する)を算出する。
【0041】
ステップS014では、プロセッサ21は、現在の平均値と過去の平均値とを比較し、現在の平均値が過去の平均値よりも低下しているか否かを判定する。液状化現象が発生すると、発生した領域全体が地盤沈下し、その領域の標高が下がる傾向がある。現在の平均値が低下していると判定される場合、処理がステップS15に進み、そうでなければ
図6の処理が終了する。
【0042】
ステップS015では、プロセッサ21は、液状化現象の発生を示す情報を含む通知(液状化現象発生通知)を端末5へ送信する処理を実行し、
図6の処理を終了する。
【0043】
図4に戻って、情報処理装置2は、
図6の処理によって液状化現象が発生していると判定する場合(ステップS9のY)、液状化現象通知を送信する(ステップS10)。液状化現象発生通知は、道路6の管理用の端末5に受信される。
【0044】
端末5のプロセッサ21は、液状化現象発生通知に含まれる液状化現象の発生を示す情報を出力装置25から出力する処理を実行する(ステップS11)。これによって、端末
5を使用する道路6の管理者に対し、液状化現象の発生が報知され、管理者は適宜の対応を図ることが可能となる。
【0045】
実施形態に係る情報処理装置2によれば、制御部たるプロセッサ21は、車両3の走行時の振動に関する情報に基づいて、人工衛星4によって観測する観測対象領域を決定することを実行する。さらに、プロセッサ21は、観測対象領域を人工衛星4によって観測したデータに基づいて、液状化現象が発生しているか否かを判定することを実行する。
【0046】
このように、情報処理装置2は、車両3(車両3以外でもよい)から取得した振動に関する情報に基づいて液状化現象が発生していそうな箇所を検出する。そして、情報処理装置2は、該当の箇所を人工衛星4で観測したデータを用いて液状化現象が発生しているか否かを判定する。車両3から得られる振動に関する情報からは振動数が把握される。しかし、路面の高さの絶対値(標高)は分からない。このため、振動数がアスファルトの軟化を示すのか液状化現象の発生を示すのかの区別ができない。本実施形態のように、人工衛星4の観測データを用いることで、振動数が液状化現象の発生を示すのか、或いは路面アスファルトの軟化等の液状化現象以外に起因するのかを判定することができる。
【0047】
実施形態において、情報処理装置2は、観測対象領域を人工衛星4によって観測した過去のデータと現在のデータとの比較に基づいて、液状化現象が発生しているか否かを判定する。このように、観測データを過去の観測データと比較することにより路面の高さが下がっていることを判定することができ、この判定結果を以て液状化現象が発生していると判定することができる。
【0048】
実施形態において、情報処理装置2は、振動に関する情報が液状化現象の発生を示す情報を含む場合に、車両3が走行した道路を含む領域を観測対象領域に決定する。このようにすれば、車両3の走行時の振動が液状化現象に対応する振動である場合において、当該振動が発生した領域(エリア10)において液状化現象が発生している可能性があると判定できる。そして、該当の領域を人工衛星4の観測データを用いて精査することで、容易に又は好適に液状化現象の発生を検出することができる。
【0049】
実施形態において、情報処理装置2は、振動に関する情報が所定数(閾値)以上の車両3の振動数を示す情報を含む場合に、車両3が走行した道路を含む領域を観測対象領域として決定する。液状化現象が発生している領域では車両3の振動数が上がるため、車両3の振動数が閾値以上になれば液状化現象が発生している可能性があると判定できる。
【0050】
実施形態において、情報処理装置2は、振動に関する情報として、車両3のダンパーの振動数に関する情報及び車両3の位置情報を取得する。車両3のダンパーの振動数は道路6の状態と相関がある。このため、車両3のダンパーの振動数に基づいて液状化現象が発生している可能性を判定することができる。また、車両3の位置情報から、液状化現象が発生している可能性のある位置(地点)を特定することができる。
【0051】
実施形態において、情報処理装置2は、液状化現象が発生していると判定した場合に、その判定結果を道路管理用の端末5に送信する。これによって、道路6の管理者に、液状化現象の発生を通知することができる。管理者は、液状化現象に速やかに対応することが可能となる。
【0052】
実施形態において、人工衛星4は、SARを搭載した人工衛星を用いる。これによって、天候と無関係に好適な観測対象領域の画像データを得ることができる。SARでは、路面の高さは分かるが路面の剛性、たわみなどは分からない。車両3の振動関連情報と人工衛星4の観測データとを組み合わせることにより、好適に液状化現象を検出することがで
きる。
【0053】
また、情報処理装置2の記憶装置22は、人工衛星4によって観測したデータを記憶する記憶部として動作する。これより、観測データを保存し、過去の観測データとして利用することができる。
【0054】
(変形例)
実施形態において、情報処理装置2は、振動に関する情報として、道路6の変形と相関する情報及び車両3の位置情報を取得することができる。道路6の変形と相関する情報として、道路6の異常(凹凸に関する情報、凹凸関連情報と称する)を取得する場合について以下に説明する。
【0055】
一例として、凹凸関連情報は、車速情報、回転速度情報、及び車輪位置情報を含むことができる。
図7は、変形例の説明図である。変形例では、車載端末3Aに対し、センサ30からの情報の代わりに、車速計36、センサ37及びセンサ38からの情報が入力される。
【0056】
車速計36は、車両3の速度である車速を測定する。車速計36は、例えば、センサにより計測したトランスミッションのアウトプットシャフトの回転数から車速を算出する。センサ37は、車両3が具備する各車輪(本実施形態では前後2つずつの4つの車輪)の回転速度を測定するセンサである。センサ38は、車両3が具備する各車輪の地表における位置を示す車輪位置情報を測定する。車輪位置情報は、車両3の現在位置及び向きと、車両3のトレッド、ホイールベースおよび車輪のサイズに基づいて、地表における車輪の位置を算出することで取得することができる。車両3の現在位置及び向き(走行方向)は、例えば、車両3が具備するGPS(Global Positioning System)機能を用いて取得可
能である。なお、回転速度の測定方法、車輪位置情報の取得方法は、既存のあらゆる方法を適用可能である。
【0057】
変形例では、
図4のステップS2において車載端末3Aから情報処理装置2へ送信される振動関連情報は、凹凸関連情報(車速情報、回転速度情報、及び車輪位置情報)を含む。
図8は、変形例における観測対象測定領域の決定処理(ステップS4)を示すフローチャートである。
【0058】
図8において、情報処理装置2のプロセッサ21は、回転速度情報、車速情報及び車輪位置情報を取得する(ステップS021)。ステップS022では、プロセッサ21は、道路6の路面の凹凸判定を行う。
【0059】
すなわち、プロセッサ21は、各車両3から受信した振動関連情報に基づいて、車両3が走行している道路6の不具合(異常)を検知する。具体的には、プロセッサ21は、振動関連情報に含まれた車速情報が示す車速と車輪のサイズとに基づいて、車輪の推定回転速度を算出する。
【0060】
そして、プロセッサ21は、推定回転速度と回転速度情報とに基づいて、道路6の不具合を検知する。このとき、プロセッサ21は、推定回転速度と回転速度情報が示す回転速度との差分が、所定の第1の閾値を超えた場合、道路6の路面に異常(所定の凹凸)があることを検知する。或いは、プロセッサ21は、車両3に具備された複数の車輪の夫々の回転速度の互いの差分が所定の第2の閾値を超えた場合、道路6の路面に異常(所定の凹凸)があることを検知する。そして、プロセッサ21は、異常を検知したときの車輪位置情報が示す地表の位置を観測対象の凹凸が発生している箇所(凹凸発生箇所と称する)の位置情報として特定する。
【0061】
なお、所定の凹凸は以下のようにして検知してもよい。すなわち、プロセッサ21は、車速とホイールベースの長さとを用いて車両3の前輪が通過してから後輪が通過するまでの推定遅延時間を算出する。プロセッサ21は、推定時間の経過後に、後輪及び前輪に対して同様の車速の変化に起因しない車輪の回転速度の変化があった場合に、車輪が段差から降りた又は段差を昇ったと判定することができる。段差を降りる又は昇ることは凹凸(窪み7又は隆起8)があることを意味する。そして、プロセッサ21は、車輪の推定回転速度と実際の回転速度との差分を変異量として算出し、変異量を段差の高さに換算する。そして、プロセッサ21は、段差の高さ(絶対値)が閾値より大きい場合に、その段差が検出された位置を観測対象の凹凸のある位置と判定する。
【0062】
ステップS023では、プロセッサ21は、所定の凹凸のある位置と判定した位置を含むエリア10を観測対象領域に決定する。以上を除き、変形例は実施形態と同じであるので重ねての説明は省略する。
【0063】
液状化現象が発生することにより、車両3が走行したときの道路の変形の態様が変化する。この道路の変形によって車両3の振動数が変化する。このため、液状化現象が発生した場合には、道路の変形と相関する情報(凹凸関連情報)に基づいて、観測対象領域を決定することができる。
【0064】
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。例えば、本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0065】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0066】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク・ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0067】
1・・・ネットワーク
2・・・情報処理装置
3・・・車両
3A・・・車載端末
4・・・人工衛星
5・・・端末
6・・・道路
21,31・・・プロセッサ
22,32・・・記憶装置