(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20241008BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20241008BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20241008BHJP
G16Y 40/40 20200101ALI20241008BHJP
【FI】
G08G1/00 J
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/40
(21)【出願番号】P 2022021656
(22)【出願日】2022-02-15
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 豊和
(72)【発明者】
【氏名】相良 俊介
【審査官】佐藤 吉信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/118359(WO,A1)
【文献】特開2020-020740(JP,A)
【文献】国際公開第2015/141267(WO,A1)
【文献】特開2021-026274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
E01C 21/00-23/24
G16Y 10/40
G16Y 20/20
G16Y 40/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両から取得された路面の凹凸に関する情報に基づいて、所定の凹凸が発生している箇所を特定することと、
前記所定の凹凸が発生している箇所
について、人工衛星によって観測されたデータを提供することと、
を実行する制御部を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記人工衛星によって観測されたデータを、道路管理用の端末に送信することを実行する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記路面の凹凸に関する情報として、前記車両の車輪の回転速度に関する情報及び前記車両の位置情報を取得することを実行する
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記所定の凹凸が発生している箇所を含む所定の領域を観測するように前記人工衛星に指令を送信することを実行する
請求項1から3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記人工衛星によって観測されたデータを解析した結果、所定の凹凸が発生していると判定した場合に、前記人工衛星によって観測されたデータを提供することを実行する
請求項1から3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記人工衛星は、合成開口レーダを搭載した人工衛星である。
請求項1から5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記人工衛星によって観測されたデータを可視化した画像データを提供することを実行する
請求項1から6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
複数の前記車両から取得した前記路面の凹凸に関する情報を記憶する記憶部をさらに備える
請求項1から7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
情報処理装置が、車両から取得された路面の凹凸に関する情報に基づいて、所定の凹凸が発生している箇所を特定することと、
前記情報処理装置が、前記所定の凹凸が発生している箇所
について、人工衛星によって観測
されたデータを提供することと、
を含む情報処理方法。
【請求項10】
前記情報処理装置が、前記人工衛星によって観測
されたデータを道路管理用の端末に送信することをさらに含む
請求項9に記載の情報処理方法。
【請求項11】
前記路面の凹凸に関する情報は、車輪の回転速度に関する情報及び車両の位置情報を含む請求項9又は10に記載の情報処理方法。
【請求項12】
前記情報処理装置が、前記所定の凹凸が発生している箇所を含む所定の領域を観測するように前記人工衛星に指令を送信することをさらに含む請求項9から11のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項13】
前記情報処理装置は、前記人工衛星によって観測
されたデータを解析した結果、所定の凹凸が発生していると判定した場合に、前記人工衛星によって観測
されたデータを提供する
請求項9から12のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項14】
前記人工衛星は、合成開口レーダを搭載した人工衛星である
請求項9から13のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項15】
前記情報処理装置は、前記人工衛星によって観測
されたデータを可視化した画像データを提供する
請求項9から14のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項16】
車両から取得された路面の凹凸に関する情報に基づいて、所定の凹凸が発生している箇所を特定するステップと、
前記所定の凹凸が発生している箇所
について、人工衛星によって観測
されたデータを提供するステップと、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項17】
前記人工衛星によって観測
されたデータを道路管理用の端末に送信するステップをさらに前記コンピュータに実行させる
請求項16に記載のプログラム。
【請求項18】
前記路面の凹凸に関する情報が、前記車両が有する車輪の回転速度に関する情報及び前記車両の位置情報を含む
請求項16又は17に記載のプログラム。
【請求項19】
前記所定の凹凸が発生している箇所を含む所定の領域を観測するように前記人工衛星に指令を送信するステップをさらに前記コンピュータに実行させる
請求項16から18のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項20】
前記人工衛星によって観測されたデータを解析した結果、所定の凹凸が発生していると判定した場合に、前記人工衛星によって観測されたデータを提供するステップを前記コンピュータに実行させる
請求項16から19のいずれか1項に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車輪の回転速度に基づいて路面の凹凸を判定する技術がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、実際の路面の視察に係る手間を省くことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る態様の一つは、車両から取得された路面の凹凸に関する情報に基づいて、所定の凹凸が発生している箇所を特定することと、前記所定の凹凸が発生している箇所が人工衛星によって観測されたデータを提供することと、を実行する制御部を有する情報処理装置である。
【0006】
本開示に係る態様の他の一つは、情報処理装置が、車両から取得された路面の凹凸に関する情報に基づいて、所定の凹凸が発生している箇所を特定することと、前記情報処理装置が、前記所定の凹凸が発生している箇所を人工衛星によって観測したデータを提供することと、を含む情報処理方法である。
【0007】
また、本開示の他の態様は、上記の情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、または、該プログラムを非一時的に記憶したコンピュータ可読記憶媒体である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、実際の路面の視察に係る手間を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る情報処理システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2Aは情報処理装置の構成例を示す図であり、
図2Bは端末の構成例を示す図である。
【
図4】
図4は実施形態の動作例を示すシーケンス図である。
【
図5】
図5は凹凸判定処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
道路の管理者は、道路のアスファルトのひび割れ、陥没、或いは隆起などによって、道路状況が車両の走行に影響する程度に劣化した場合、道路の修繕を行う。一方、管理すべき道路の数及び敷設範囲が広大である場合、道路状況の全てを視察(目視)することにより確認していくことは困難である。このため、例えば、車両の車輪の回転速度に基づいて
、道路の路面の凹凸を検出することが考えられる。
【0011】
しかしながら、車輪の回転速度に基づいて検出された路面の凹凸は推定結果であって、実際にそのような凹凸が発生しているのか、或いは路面の補修を要する凹凸であるのは不明である。したがって、凹凸が検出された場所を訪問し実際に視察することが必要と考えられるが、この視察は手間であった。また、視察の結果誤検出であったことが判明すると、視察が無駄となることがあった。
【0012】
以下、図面を参照して、上記の問題を解決し得る情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムについて説明する。実施形態の構成は例示である。
【0013】
図1は、実施形態に係る情報処理システムの構成例を示す図である。
図1において、情報処理システムは、ネットワーク1と、情報処理装置(サーバ)2と、車両3に搭載された車載端末3Aと、人工衛星4と、端末5とを含む。
【0014】
ネットワーク1は、インターネット等の公衆網である。情報処理装置2は、ネットワーク1を介して、車両3に搭載された車載端末3A、人工衛星4、及び端末5と通信することができる。車載端末3Aは、ネットワーク1を介して車両3が走行する道路6の路面の凹凸に関する情報(凹凸関連情報と称する)を情報処理装置2に送信する。
【0015】
情報処理装置2は、車両3から受信された凹凸関連情報に基づいて、道路6に所定の凹凸が発生している箇所を特定する。路面の凹凸は、例えば、道路6の路面に形成された窪み7、或いは隆起8のような所定の(検出対象の)凹凸である。所定の凹凸は、人工衛星4による観測の対象となる凹凸である。例えば、視察又は修繕が必要な程度の変異量(高さ)を有する凹凸である。どのような凹凸を所定の凹凸とするか、及びその検出方法は適宜設定可能である。
【0016】
凹凸関連情報は、情報処理装置2が所定の凹凸が発生している箇所を特定するための情報を含む。例えば、凹凸関連情報は、車両3の各車輪(例えば4輪なら4つの車輪)の回転数を示す情報(回転数情報と称する)、車両3の車速を示す情報(車速情報と称する)、及び各車輪の位置を示す情報(車輪位置情報と称する)などを含むことができる。車輪位置情報は、車両3の前輪及び後輪間の各トレッド及びホイールベース、並びに車輪のサイズを示す情報を含むことができる。車輪位置情報は、車両3の位置を示す情報として使用可能である。但し、車輪位置情報以外の車両3の位置を示す情報を情報処理装置2が取得するようにしてもよい。
【0017】
人工衛星4は、例えば合成開口レーダー(SAR)を備えた人工衛星であり、情報処理装置2からの指示(指令)に従って、情報処理装置2が特定した、凹凸関連情報に基づく所定の凹凸が発生している箇所(道路6)を含むエリアを観測した画像データを生成する。画像データは、該当のエリアの地形を示すデータであり、凹凸関連情報に基づく所定の凹凸が発生している箇所における地形変位を観測することができる。人工衛星4は、ネットワーク1を介して、画像データを情報処理装置2に送信する。
【0018】
画像データは、「人工衛星によって観測されたデータ」(観測データと称する)の一例である。但し、人工衛星4によって観測されたデータは、画像データ以外であってもよい。また、人工衛星4は、SAR以外の光学センサ、或いはマイクロ波センサを用いて観測データを生成するものであってもよい。
【0019】
情報処理装置2は、ネットワーク1を介して、画像データを端末5へ送信する。但し、オプションとして、情報処理装置2が画像データの解析を行い、この解析結果においても
所定の凹凸が発生していると判定した場合に、画像データを端末5へ送信してもよい。この場合、凹凸関連情報に基づく所定の凹凸が凹凸の誤検出であった場合に、画像データを端末5に送信するのを回避することができる。
【0020】
端末5は、道路6の管理者の使用する道路管理用の端末5である。端末5は、画像データに基づく画像を表示することができる。道路6の管理者は、画像を参照して、凹凸を視察することができる。これにより、実際の視察の手間を省くことができる。また、凹凸を実際に見に行くか否かを決定することができる。
【0021】
図2Aは情報処理装置2の構成例を示す図であり、
図2Bは端末5の構成例を示す図である。情報処理装置2及び端末5は、パーソナルコンピュータ(PC)、ワークステーション(WS)、或いはサーバマシンなどの汎用又は専用のコンピュータである。情報処理装置2及び端末5は、固定端末であっても携帯端末であってもよい。携帯端末は、ラップトップ型のPC、或いはスマートデバイス(スマートフォン及びタブレット端末など)等であるが、例示に制限されない。情報処理装置2は、1台の情報処理装置であっても、2以上の情報処理装置の集合(クラウド)であってもよい。
【0022】
図2Aにおいて、情報処理装置2は、バスB1を介して相互に接続された、処理部又は制御部(コントローラ)としてのプロセッサ21と、記憶装置22と、通信装置23と、入力装置24と、出力装置25とを含む。
【0023】
記憶装置22は、主記憶装置と補助記憶装置とを含む。主記憶装置は、プログラム及びデータの記憶領域、プログラムの展開領域、プログラムの作業領域、及び通信データのバッファ領域などとして使用される。主記憶装置はRAM(Random Access Memory)、又はRAMとROM(Read Only Memory)との組み合わせで構成される。補助記憶装置は、データ及びプログラムの記憶領域として使用される。補助記憶装置として、例えば、ハードディスク、Solid State Drive(SSD)、フラッシュメモリ、及びEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などの不揮発性記憶媒体を適用できる。
【0024】
通信装置23は、通信処理を行う回路であり、送信部及び受信部(通信部)として動作する。例えば、通信装置23は、NIC(ネットワークインタフェースカード)である。また、通信装置23は、無線通信(LTE、5G、無線LAN(Wi-Fi)、BLEな
ど)を行う無線通信回路であってもよい。また、通信装置は、NICと無線通信回路との組み合わせであってもよい。
【0025】
入力装置24は、キー、ボタン、ポインティングデバイス、及びタッチパネル等を含み、情報の入力に使用される。入力装置24は、マイク(音声入力装置)を含んでいてもよい。出力装置25は、例えば液晶ディスプレイ、或いは有機ELディスプレイなどであり、情報及びデータを表示する。出力装置25は、スピーカ(音声出力装置)を含んでいてもよい。
【0026】
プロセッサ21は、例えばCPU(Central Processing Unit)などである。プロセッ
サ21は、記憶装置22に記憶された各種のプログラムを実行することによって、様々な処理を行う。例えば、プロセッサ21は、車両3の車載端末3Aから凹凸関連情報を取得する処理、及び所定の凹凸が発生している箇所を特定する処理を実行する。また、プロセッサ21は、人工衛星4に特定した箇所を観測する指示を送信する処理、人工衛星4から観測データ(画像データ)を受信する処理、及び画像データを端末5へ送信する処理などを実行する。
【0027】
端末5は、情報処理装置2と同様に、バスB2に接続されたプロセッサ21と、記憶装置22と、通信装置23と、入力装置24と、出力装置25とを含む。但し、処理の目的、あるいは負荷の大きさに応じて仕様又は性能の異なる装置が適用される。端末5のプロセッサ21は、出力装置25(ディスプレイ)の表示制御を行い、画像データに基づく画像をディスプレイに表示する処理を実行する。
【0028】
図3は、車載端末3Aの構成例を示す図である。車載端末3Aは、バスB3に接続されたプロセッサ31と、記憶装置32と、通信装置33と、入力装置34と、出力装置35とを含む。プロセッサ31、記憶装置32、通信装置33、入力装置34、及び出力装置35は、プロセッサ21、記憶装置22、通信装置23、入力装置24、及び出力装置25と同様のものを適用することができる。但し、用途及び負荷量に応じて同種の装置であっても仕様及び性能が異なる。また、通信装置33は、無線通信回路で構成される。
【0029】
車載端末3Aには、車両3に搭載された車速計36、センサ37、及びセンサ38等から情報またはデータが入力される。車速計36は、車両3の速度である車速を測定する。車速計36は、例えば、センサにより計測したトランスミッションのアウトプットシャフトの回転数から車速を算出する。
【0030】
センサ37は、車両3が具備する各車輪(本実施形態では前後2つずつの4つの車輪)の回転速度を測定するセンサである。センサ38は、車両3が具備する各車輪の地表における位置を示す車輪位置情報を測定する。車輪位置情報は、車両3の現在位置及び向きと、車両3のトレッド、ホイールベースおよび車輪のサイズに基づいて、地表における車輪の位置を算出することで取得することができる。車両3の現在位置及び向き(走行方向)は、例えば、車両3が具備するGPS(Global Positioning System)機能を用いて取得
可能である。なお、回転速度の測定方法、車輪位置情報の取得方法は、既存のあらゆる方法を適用可能である。
【0031】
車載端末3Aのプロセッサ31は、記憶装置32に記憶されたプログラムの実行によって、上述した車速を示す情報、車輪位置情報、車輪の回転速度を示す情報を取得する処理を実行する。そして、プロセッサ31は、取得した情報を含む凹凸関連情報を生成し、ネットワーク1を介して凹凸関連情報を情報処理装置2へ送信する処理を実行する。
【0032】
なお、上述したプロセッサ21及び31として、複数個のCPUを適用しても、マルチコア型のCPUを適用してもよい。CPUによって行われる処理の少なくとも一部が、DSP(Digital Signal Processor)又はGPU(Graphical Processing Unit)のような
CPU以外のプロセッサによって行われてもよい。また、CPUによって行われる処理の少なくとも一部が、専用又は汎用の集積回路(ハードウェア)によって行われてもよい。集積回路は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、或いはFPGA
(Field Programmable Gate Array)などを含む。或いは、CPUによって行われる処理
の少なくとも一部が、プロセッサと集積回路との組み合わせにより実行されてもよい。組み合わせは、例えば、マイクロコントローラ(MCU)、SoC(System-on-a-chip)、システムLSI、又はチップセットなどと呼ばれる。
【0033】
図4は、情報処理システムの動作例を示すシーケンス図である。情報処理装置2は、1又は2以上の車載端末3Aと通信回線を確立する(ステップS1)。車載端末3Aの夫々は、凹凸関連情報を情報処理装置2に送信する。凹凸関連情報は、少なくとも、車速情報、回転速度情報、及び車輪位置情報を含む。凹凸関連情報の送信のタイミングは適宜設定可能である。凹凸関連情報は、例えば、情報処理装置2からの要求に応じて送信してもよく、車載端末3Aが周期的に又は定期的に送信してもよい。
【0034】
情報処理装置2のプロセッサ21は、車載端末3Aの夫々から受信された凹凸関連情報を記憶装置22に記憶する(ステップS3)。記憶装置22は、「記憶部」の一例である。
【0035】
情報処理装置2のプロセッサ21は、凹凸判定処理を行う(ステップS4)。
図5は、凹凸判定処理の一例を示すフローチャートである。ステップS01において、情報処理装置2のプロセッサ21は、車速情報、回転速度情報、及び車輪位置情報を取得する。本実施形態では、記憶装置22から車速情報、回転速度情報、及び車輪位置情報を読み出す。
【0036】
ステップS02では、路面凹凸判定処理として、以下のような路面の異常検知を行う。すなわち、プロセッサ21は、各車両3から受信した凹凸関連情報に基づいて、車両3が走行している道路6の不具合(異常)を検知する。具体的には、プロセッサ21は、凹凸関連情報に含まれた車速情報が示す車速と車輪のサイズとに基づいて、車輪の推定回転速度を算出する。
【0037】
そして、プロセッサ21は、推定回転速度と回転速度情報とに基づいて、道路6の不具合を検知する。このとき、プロセッサ21は、推定回転速度と回転速度情報が示す回転速度との差分が、所定の第1の閾値を超えた場合、道路6に異常(所定の凹凸)があることを検知する。或いは、プロセッサ21は、車両3に具備された複数の車輪の夫々の回転速度の互いの差分が所定の第2の閾値を超えた場合、道路6に異常(所定の凹凸)があることを検知する。そして、プロセッサ21は、異常を検知したときの車輪位置情報が示す地表の位置を「所定の凹凸が発生している箇所」(凹凸発生箇所と称する)の位置情報として特定する。
【0038】
なお、所定の凹凸は以下のようにして検知してもよい。すなわち、プロセッサ21は、車速とホイールベースの長さとを用いて車両3の前輪が通過してから後輪が通過するまでの推定遅延時間を算出する。プロセッサ21は、推定時間の経過後に、後輪及び前輪に対して同様の車速の変化に起因しない車輪の回転速度の変化があった場合に、車輪が段差から降りた又は段差を昇ったと判定することができる。段差を降りる又は昇ることは凹凸(窪み7又は隆起8)があることを意味する。そして、プロセッサ21は、車輪の推定回転速度と実際の回転速度との差分を変異量として算出し、変異量を段差の高さに換算する。そして、プロセッサ21は、段差の高さ(絶対値)が閾値より大きい場合に、その段差が検出された位置を所定の凹凸のある位置と判定する。
【0039】
図4に戻って、情報処理装置2のプロセッサ21は、所定の凹凸の有無を判定する(ステップS5)。ここでは、プロセッサ21は、ステップS4にて道路6に異常があることを検知した場合、所定の凹凸ありと判定する。
【0040】
すると、情報処理装置2のプロセッサ21は、凹凸発生箇所の位置情報を含む、凹凸発生箇所の観測指示(指令)を人工衛星4に送信する(ステップS6)。人工衛星4は、情報処理装置2からの観測指示に応じて、凹凸発生箇所の位置を含むエリアに対する観測データを生成する。すなわち、人工衛星4は、SARを用いて当該エリアの地表の形状を示す画像データ(人工衛星4によって観測されたデータ、すなわち観測データ)を生成し、観測データを情報処理装置2へ送信する(ステップS7)。
【0041】
情報処理装置2は、人工衛星4から受信された観測データ、すなわち画像データの解析を行い(ステップS8)、凹凸発生箇所に実際に窪み7或いは隆起8などの凹凸があるか否かを判定する。凹凸があると判定される場合に(ステップS8のY)、情報処理装置2は、当該画像データ(人工衛星によって観測されたデータを可視化した画像データに相当)を端末5へ送信する(ステップS10)。端末5への送信にあたり、好適な可視化のた
め、人工衛星4からの画像データに適宜の改変を加えてもよい。なお、ステップS8及びS9はオプションである。
【0042】
画像データを受信した端末5では、端末5のプロセッサ21が画像データに基づく画像、すなわち凹凸の発生箇所の画像を出力装置25(ディスプレイ)に表示する表示処理を実行する。これによって、道路6の管理者は、凹凸発生箇所の画像を参照することができる。すなわち、画像を用いて道路6を視察することができる。このとき、画像から路面状況が明確であれば、視認のために現地へ行くことが不要となる。すなわち、凹凸発生箇所を実際に視認しに行く手間を省くことができる。或いは、全ての凹凸発生箇所へ行くとしても、行く優先順位を決める情報として用いることができる。
【0043】
本実施形態によれば、情報処理装置2のプロセッサ21(制御部)は、車両3から取得された凹凸関連情報(路面の凹凸に関する情報)に基づいて、所定の凹凸が発生している箇所を特定する。そして、情報処理装置2は、所定の凹凸が発生している箇所を人工衛星4によって観測したデータ(観測データ)を提供する。
【0044】
このように、実施形態では、車両3から取得された路面の凹凸に関する情報に基づいて人工衛星4の観測データを提供する。所定の凹凸が発生している箇所に対応する観測データを提供することで、人が実際に路面の凹凸を確認しに現地へ行く手間を省くことができる。また、凹凸箇所の検知が誤検知であった場合に視察が無駄となるのを抑えることができる。
【0045】
情報処理装置2は、人工衛星4によって観測したデータを、道路6の管理用の端末5に送信することができる。このように、道路6の管理者の端末5に観測データを送ることで、管理者が観測データを有効に活用し、道路を実際に見に行くケースを減らすことができる。
【0046】
また、情報処理装置2は、路面の凹凸に関する情報として、車両3の車輪の回転速度に関する情報及び車両3の位置情報(車輪位置情報)を取得する。車両の走行時における車輪の回転速度は車両から送信されているので簡単に取得することができる。車輪の回転速度と路面の凹凸とには相関関係があるため、車輪の回転速度に基づいて所定の凹凸が発生しているか否かを判定することができる。また、車輪位置情報から、所定の凹凸が発生している地点を特定することができる。
【0047】
また、情報処理装置2は、所定の凹凸が発生している箇所を含む所定の領域を観測するように人工衛星に指令を送信することができる。所定の領域は、異常が検知された箇所(凹凸発生箇所)がある道路6を含む地理的領域であり、人工衛星4が観測(撮像)かのうな領域である。地理的領域は、例えば、地表を矩形、正六角形、或いは正八角形に区分したエリアとして定めることができる。人工衛星4に指令を送信することで人工衛星4を操作することができ、所望のデータを取得することができる。また、データを無駄に取得することを抑制できる。
【0048】
また、情報処理装置2は、人工衛星4によって観測されたデータ(人工衛星が撮像したデータなど)を解析した結果、所定の凹凸が発生していると判定した場合に、人工衛星によって観測したデータを提供してもよい。観測データによっても所定の凹凸が検出された場合に限って人工衛星4によって観測したデータを提供することで、端末5への不要のデータの提供を抑制することができる。
【0049】
人工衛星4として、SAR搭載の人工衛星を用いることで、雲がある場合等の天候に関係なく適正な地表の画像を得ることができる。また、情報処理装置2のプロセッサ21は
、人工衛星4によって観測したデータを可視化した画像データを端末5に提供することができる。画像データの提供により、管理者の利便性向上を図ることができる。
【0050】
動作例でも述べたように、情報処理装置2は、凹凸関連情報の収集(取得)に、車載端末3Aを搭載した複数の車両3を用いることができる。そして、情報処理装置2は、複数の車両3から取得した路面の凹凸に関する情報を記憶装置22(記憶部)に記憶することができる。複数の車両3からの情報を用いることで、効率的に凹凸発生箇所を検知することができる。なお、車両3の車載端末3Aが凹凸発生箇所の検知まで行い、凹凸発生箇所を示す情報を情報処理装置2へ送ってくる構成であってもよい。
【0051】
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。例えば、本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0052】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク・ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスクを含む。また、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0053】
1・・・ネットワーク
2・・・情報処理装置
3・・・車両
3A・・・車載端末
4・・・人工衛星
5・・・端末
6・・・道路
21,31・・・プロセッサ
22,32・・・記憶装置