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  • 特許-機電一体ユニット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】機電一体ユニット
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/08 20060101AFI20241008BHJP
   H02K 11/33 20160101ALI20241008BHJP
【FI】
H02K5/08 Z
H02K11/33
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022024300
(22)【出願日】2022-02-18
(65)【公開番号】P2023121066
(43)【公開日】2023-08-30
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 祐也
(72)【発明者】
【氏名】結城 啓介
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-088939(JP,A)
【文献】特開2021-151111(JP,A)
【文献】特開2012-065436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/08
H02K 11/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の機電一体ユニットであって、
第1室と前記第1室の上方に位置する第2室とを有するハウジングと、
前記第1室に配置されている第1モータと、
前記第1室において、前記第1モータに対して前記車両の前後方向に沿って配置されているとともに、少なくとも一部が前記第1モータよりも上方に位置する第2モータと、
前記第1室に配置されているとともに、前記第1モータ又は前記第2モータの少なくとも一つに接続された少なくとも一つのギア機構と、
前記第2室に配置されているとともに、前記第1モータ又は前記第2モータの少なくとも一つに電気的に接続された電気回路ユニットと、
を備え、
前記ハウジングの前記第1室と前記第2室との間の隔壁は、前記第2モータの上方に位置する部分に、その他の部分よりも前記第2室側へ膨出する膨出部を有し、
前記電気回路ユニットの一部は、前記車両の前後方向において、前記膨出部と対向するとともに、前記電気回路ユニットの他の一部は、前記車両の左右方向において、前記膨出部と対向する、機電一体ユニット。
【請求項2】
前記電気回路ユニットは、第1電気回路ユニットと、前記第1電気回路ユニットの下方に位置する第2電気回路ユニットとを有し、
前記第1モータの上方には、前記第1電気回路ユニットと前記第2電気回路ユニットとの両者が位置し、
前記第2モータの上方には、前記第1電気回路ユニットが位置する一方で前記第2電気回路ユニットは位置しない、請求項1に記載の機電一体ユニット。
【請求項3】
前記ハウジングは、上部に開口を有するハウジング本体と、前記開口に取り付けられたカバープレートとを有し、
前記第1電気回路ユニットは、前記カバープレートに固定されており、
前記第2電気回路ユニットは、前記ハウジング本体に固定されている、請求項2に記載の機電一体ユニット。
【請求項4】
前記第2電気回路ユニットは、前記車両の電源からの直流電力を降圧して、前記車両の補機バッテリに供給する降圧コンバータを備える、請求項2又は3に記載の機電一体ユニット。
【請求項5】
前記第2電気回路ユニットは、リアクトルをさらに備え、
前記リアクトルは、前記第1電気回路ユニットの少なくとも一部と合わせて、前記第1モータ又は前記第2モータの少なくとも一つへ供給される電力を制御するための電力制御回路を構成している、請求項4に記載の機電一体ユニット。
【請求項6】
前記電力制御回路は、前記リアクトルを含んで構成されているとともに、前記車両の電源からの直流電力を昇圧する昇圧コンバータを有する、請求項5に記載の機電一体ユニット。
【請求項7】
前記電力制御回路は、前記第1電気回路ユニットに設けられているとともに、前記昇圧コンバータからの直流電力を交流電力に変換するインバータをさらに有する、請求項6に記載の機電一体ユニット。
【請求項8】
前記第2電気回路ユニットでは、前記リアクトルが前記降圧コンバータの下方に位置する、請求項5から7のいずれか一項に記載の機電一体ユニット。
【請求項9】
前記第1室は、潤滑油が循環するように構成されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の機電一体ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、車両用の機電一体ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、車両用の機電一体ユニットが記載されている。この機電一体ユニットは、第1室と第1室の上方に位置する第2室とを有するハウジングと、第1室に配置されている第1モータを有する機械的ユニットと、第2室に配置されているとともに、第1モータに電気的に接続された電気回路ユニットと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-170068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機電一体ユニットの小型化を図るために、上記した機電一体ユニットでは、ハウジングの第1室に機械的ユニットが収容されており、その第2室に電気回路ユニットが収容されている。一方で、機電一体ユニットが搭載される車両によっては、上記の第1モータを有する機械的ユニットに代えて、第1モータと第2モータとを有する機械的ユニットが採用されることがある。例えば、第2モータの少なくとも一部が第1モータよりも上方に位置するように配置されていると、二つのモータ(及びギア機構)を収容するために必要とされる第1室の上下方向の寸法が大きくなる。この場合、単に機械的ユニットを収容する第1室の上方に、電気回路ユニットを収容する第2室を配置するだけでは、機電一体ユニットの上下方向における寸法も大きくなってしまう。
【0005】
上記の実情を鑑み、本明細書は、二つのモータを有する機械的ユニットが採用された場合において、機電一体ユニットの上下方向における寸法が大きくなることを回避又は抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する技術は、車両用の機電一体ユニットに具現化される。この機電一体ユニットは、第1室と前記第1室の上方に位置する第2室とを有するハウジングと、前記第1室に配置されている第1モータと、前記第1室において、前記第1モータに対して前記車両の前後方向に沿って配置されているとともに、少なくとも一部が前記第1モータよりも上方に位置する第2モータと、前記第1室に配置されているとともに、前記第1モータ又は前記第2モータの少なくとも一つに接続された少なくとも一つのギア機構と、前記第2室に配置されているとともに、前記第1モータ又は前記第2モータの少なくとも一つに電気的に接続された電気回路ユニットと、を備える。前記ハウジングの前記第1室と前記第2室との間の隔壁は、前記第2モータの上方に位置する部分に、その他の部分よりも前記第2室側へ膨出する膨出部を有する。前記電気回路ユニットの少なくとも一部は、前記車両の前後方向又は前記車両の左右方向において、前記膨出部と対向する。
【0007】
上記の機電一体ユニットにおいて、ハウジングの第1室では、第2モータの少なくとも一部が、第1モータよりも上方に位置するように配置されている。そのため、ハウジングの第1室と第2室との間の隔壁は、それらのモータの配置に合わせて、第2モータの上方に位置する部分に、その他の部分よりも第2室側へ膨出する膨出部を有する。そして、電気回路ユニットの少なくとも一部は、車両の前後方向又は車両の左右方向において、隔壁の膨出部(及び第1室に配置された第2モータ)と対向するように配置されている。このような構成によると、第1室における第1モータ及び第2モータの配置によって第2室に生じ得る余剰スペースに、電気回路ユニットの少なくとも一部を配置することができる。その結果、機械的ユニットが二つのモータを有することにより、第1室の上下方向の寸法が大きくなる場合でも、電気回路ユニットが第1モータ及び第2モータの余剰スペースに埋め込まれた分だけ、車両の上下方向における機電一体ユニットの寸法を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】機電一体ユニット10の構成を模式的に示す図。
図2図1のII-II線における断面図。
図3図1のIII-III線における端面図。第2電気回路ユニット32bと、第1モータ18及び第2モータ20との位置関係を説明するために、第2電気回路ユニット32bの降圧コンバータ44を図示している。
図4】機電一体ユニット10の電気的構成を示すブロック回路図。なお、車両の電源102及び補機バッテリ104も併せて示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本技術の一実施形態において、電気回路ユニットは、第1電気回路ユニットと、第1電気回路ユニットの下方に位置する第2電気回路ユニットとを有してもよい。この場合、第1モータの上方には、第1電気回路ユニットと第2電気回路ユニットとの両者が位置してもよい。第2モータの上方には、第1電気回路ユニットが位置する一方で第2電気回路ユニットは位置しなくてもよい。このような構成によると、電気回路ユニットの少なくとも一部を、第1モータと第2モータとの配置によって生じ得る余剰スペースに配置することができる。従って、電気回路ユニットが第1モータ及び第2モータの余剰スペースに埋め込まれた分だけ、車両の上下方向における機電一体ユニットの寸法を小さくできる。
【0010】
上記した実施形態において、ハウジングは、上部に開口を有するハウジング本体と、開口に取り付けられたカバープレートとを有してもよい。この場合、第1電気回路ユニットは、カバープレートに固定されていてもよい。第2電気回路ユニットは、ハウジング本体に固定されていてもよい。このような構成によると、第1電気回路ユニットを支持する部品を、ハウジングのカバープレートと共通化することができる。これにより、機電一体ユニットの構成が簡素化されるとともに、機電一体ユニットの組み立て作業を電気回路ユニットがハウジングのカバープレートに取り付けられていると、ハウジングの高い剛性によって第1電気回路ユニットが強固に保持されることができる。
【0011】
上記したいくつかの実施形態において、第2電気回路ユニットは、車両の電源からの直流電力を降圧して、車両の補機バッテリに供給する降圧コンバータを備えてもよい。このような構成によると、機電一体ユニットの余剰スペースに降圧コンバータを配置することができ、車室の省スペース化を図ることができる。
【0012】
上記した実施形態において、第2電気回路ユニットは、リアクトルをさらに備えてもよい。この場合、リアクトルは、第1電気回路ユニットの少なくとも一部と合わせて、第1モータ又は第2モータの少なくとも一つへ供給される電力を制御するための電力制御回路を構成していてもよい。このような構成によると、電力制御回路と降圧コンバータとを互いに近接して配置することができ、電力配線を簡素化することができる。
【0013】
上記した実施形態において、電力制御回路は、リアクトルを含んで構成されているとともに、車両の電源からの直流電力を昇圧する昇圧コンバータを有してもよい。このような構成によると、リアクトルは、昇圧コンバータのコンバータ回路から離間している。これにより、リアクトルとコンバータ回路との間で生じ得る電磁ノイズが低減される。
【0014】
上記した実施形態において、電力制御回路は、第1電気回路ユニットに設けられているとともに、昇圧コンバータからの直流電力を交流電力に変換するインバータをさらに有してもよい。このような構成によると、車両の電源からの直流電力は、昇圧コンバータによって昇圧され、インバータによって交流電力に変換された後、第1モータ又は第2モータの少なくとも一つに供給される。
【0015】
上記したいくつかの実施形態において、第2電気回路ユニットでは、リアクトルが降圧コンバータの下方に位置してもよい。このような構成によると、比較的に重量の大きいリアクトルが、比較的に重量の小さい降圧コンバータの下方に位置することから、第2電気回路ユニットの重心を低くすることができる。これにより、エンジンによって生じる振動や、第1室内の二つのモータ及びギア機構によって生じる振動等により、第2電気回路ユニットに発生する振動を回避又は抑制することができる。
【0016】
本技術の一実施形態において、第1室は、潤滑油が循環するように構成されていてもよい。このような構成によると、潤滑油によって、第1室に配置された第1モータ及び第2モータを冷却することができる。
【実施例
【0017】
図面を参照して、実施例の機電一体ユニット10について説明する。本実施例の機電一体ユニット10は、例えば二モータ式のハイブリッド自動車といった車両に搭載される。但し、車両は、必ずしもハイブリッド自動車に限られず、電気自動車、燃料自動車等の走行用モータを有する車両であってもよい。本実施例で説明する技術の一部又は全部は、軌道を走行する車両にも同様に採用することができる。また、車両は、ユーザによって運転操作されるものに限られず、外部装置によって遠隔操作されるものや、自律走行するものであってもよい。
【0018】
ここで、図面における機電一体ユニット10の各方向は、車両に搭載されたときの方向、即ち車両の方向に準ずる。従って、方向FRは、車両の前後方向における前方を示し、方向RRは車両の前後方向における後方を示す。また、方向LHは車両の左右方向における左方を示し、方向RHは車両の左右方向における右方を示す。そして、方向UPは車両の上下方向における上方を示し、方向DWは車両の上下方向における下方を示す。
【0019】
図1、2に示すように、機電一体ユニット10は、ハウジング12を備える。ハウジング12は、筐体部材である。ハウジング12は、ハウジング本体14と、カバープレート16とを備える。ハウジング本体14は、底壁14aと、底壁14aの外周縁から上方に延びる四つの側壁14bとを有する。ハウジング本体14は、上部に開口14cを有する。ハウジング本体14の開口14cは、四つの側壁14bによって画定されている。カバープレート16は、開口14cに取り付けられている。カバープレート16は、ハウジング本体14の開口14cを塞ぐ。ハウジング本体14は、例えばアルミニウムといった導体材料を用いて構成されている。カバープレート16は、板状の部材であり、例えばアルミニウムといった導体材料を用いて構成されている。
【0020】
ハウジング本体14は、隔壁14wをさらに有する。隔壁14wは、ハウジング12の内部に設けられている。この隔壁14wによって、ハウジング12の内部が、第1室R1と、第2室R2とに区切られている。第2室R2は、隔壁14wを隔てて、第1室R1の上方に位置している。ハウジング12の第1室R1と第2室R2との間の隔壁14wは、第2モータ20の上方に位置する部分に、その他の部分よりも第2室R2側へ膨出する膨出部14sを有する。
【0021】
図1、2に示すように、機電一体ユニット10は、複数のモータ18、20と、複数のギア機構22、24、26、28とを備える。複数のモータ18、20には、第1モータ18と、第2モータ20とが含まれる。第1モータ18及び第2モータ20は、第1室R1に配置されている。第2モータ20は、第1室R1において、第1モータ18に対して車両の前後方向に沿って配置されているとともに、少なくとも一部が第1モータ18よりも上方に位置している。複数のギア機構22、24、26、28は、第1室R1に配置されている。特に限定されないが、複数のギア機構22、24、26、28には、遊星ギア機構22と、減速ギア機構24と、モータ出力ギア機構26と、ディファレンシャルギア機構28とが含まれる。例えばモータ出力ギア機構26は、車軸を介して、第2モータ20に接続されている。これにより、車両は、第2モータ20からの動力によって、モータ出力ギア機構26を介して、車輪を駆動することができる。なお、複数のモータ18、20の数は、必ずしも二つに限定されず、三つ以上であってもよい。複数のギア機構22、24、26、28の数は、必ずしも複数である必要はなく、少なくとも一つであればよい。
【0022】
図1、2に示すように、機電一体ユニット10は、オイルポンプ30をさらに備える。オイルポンプ30は、第1室R1に配置されている。特に限定されないが、オイルポンプ30は、車両のエンジン(不図示)に接続されており、エンジンの動力によって駆動される。そのため、オイルポンプ30は、第1室R1において潤滑油を循環させることができ、第1室R1に配置された第1モータ18及び第2モータ20を冷却することができる。なお、他の実施形態として、オイルポンプ30は、車両のエンジンによる動力に代えて、複数のモータ18、20による出力トルクによって駆動されてもよい。
【0023】
図1、2に示すように、機電一体ユニット10は、電気回路ユニット32をさらに備える。電気回路ユニット32は、第2室R2に配置されている。電気回路ユニット32は、第1モータ18又は第2モータ20の少なくとも一つに電気的に接続されている。電気回路ユニット32は、第1電気回路ユニット32aと、第2電気回路ユニット32bとを有する。第2電気回路ユニット32bは、第1電気回路ユニット32aの下方に位置している。一例ではあるが、第1電気回路ユニット32aは、ハウジング12のカバープレート16に固定されており、第2電気回路ユニット32bは、ハウジング本体14に固定されている。なお、特に限定されないが、機電一体ユニット10は、電気回路ユニット32から熱を回収するための冷却器をさらに備えてもよい。
【0024】
図3に示すように、第2電気回路ユニット32bは、平面視において、概してL字形状を有する。これにより、第2電気回路ユニット32bは、ハウジング12の隔壁14wの上方において、膨出部14sを避けるように配置されている。即ち、第2電気回路ユニット32bの一部は、前後方向において膨出部14s(及び第2モータ20)と対向する位置関係にあり、第2電気回路ユニット32bの他の一部は、左右方向において膨出部14s(及び第2モータ20)と対向する位置関係にある。その結果、図1に示すように、第1モータ18の上方には、第1電気回路ユニット32aと第2電気回路ユニット32bとの両者が位置する一方で、第2モータ20の上方には、第1電気回路ユニット32aのみが位置している。即ち、第2モータ20の上方に、第2電気回路ユニット32bは存在しない。
【0025】
上記した第1電気回路ユニット32a及び第2電気回路ユニット32bの具体的な構成は特に限定されない。以下では、図4を参照して、第1電気回路ユニット32a及び第2電気回路ユニット32bの具体的な構成の一例を説明する。
【0026】
図4に示すように、第1電気回路ユニット32aは、DC-DCコンバータ回路34と、第1インバータ36と、第2インバータ38と、制御基板40とを備える。DC-DCコンバータ回路34は、二つのスイッチング素子34sを有する。制御基板40は、CPUやメモリを内蔵するプロセッサ等の部品を有しており、DC-DCコンバータ回路34のスイッチング素子34s及び各インバータ36、38を制御する。特に限定されないが、カバープレート16の下面には、DC-DCコンバータ回路34、第1インバータ36、及び第2インバータ38が配置されており、カバープレート16の上面には、制御基板40が配置されている。カバープレート16上には、保護カバー50が設けられている。保護カバー50は、カバープレート16の上面に位置する制御基板40を覆っている。
【0027】
図4に示すように、第2電気回路ユニット32bは、リアクトル42と、降圧コンバータ44とを備える。特に限定されないが、第2電気回路ユニット32bにおいて、リアクトル42は、降圧コンバータ44の下方に位置している。
【0028】
図4に示すように、第2電気回路ユニット32bのリアクトル42と、第1電気回路ユニット32aのDC-DCコンバータ回路34とによって、昇圧コンバータ46が構成されている。DC-DCコンバータ回路34において、一方のスイッチング素子34sの一端は、第1インバータ36の正極及び第2インバータ38の正極に接続されている。一方のスイッチング素子34sの他端は、他方のスイッチング素子34sの一端に接続されているとともに、リアクトル42を介して、車両の電源102の正極に接続されている。他方のスイッチング素子34sの他端は、車両の電源102の負極に接続されているとともに、第1インバータ36の負極及び第2インバータ38の負極に接続されている。制御基板40は、スイッチング素子34sを選択的にオン及びオフすることにより、電源102からの直流電力を昇圧し、昇圧した電力を各インバータ36、38に供給することができる。以上のように、リアクトル42は、第1電気回路ユニット32aのDC-DCコンバータ回路34と合わせて、昇圧コンバータ46を構成している。
【0029】
特に限定されないが、DC-DCコンバータ回路34のスイッチング素子34sは、RC-IGBT(Reverse conducting Insulated Gate Bipolar Transistor)素子である。なお、スイッチング素子34sは、必ずしもRC-IGBT素子である必要はなく、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)素子や他の種類のスイッチング素子であってもよい。
【0030】
図4に示すように、第1インバータ36と、第2インバータ38と、昇圧コンバータ46とによって、電力制御回路48が構成されている。電力制御回路48は、車両の電源102と各モータ18、20との間に電気的に接続されている。昇圧コンバータ46は、電源102からの直流電力を昇圧して、第1インバータ36及び第2インバータ38の各々に供給することができる。第1インバータ36は、昇圧コンバータ46からの直流電力を交流電力に変換して、第1モータ18に供給することができる。同様に、第2インバータ38は、昇圧コンバータ46からの直流電力を交流電力に変換して、第2モータ20に供給することができる。以上のように、電力制御回路48は、車両の電源102から各モータ18、20へ供給される電力を制御することができる。なお、特に限定されないが、電力制御回路48は、電源102と昇圧コンバータ46との間、及び/又は、昇圧コンバータ46と各インバータ36、38との間に平滑コンデンサをさらに備えてもよい。
【0031】
特に限定されないが、昇圧コンバータ46は、降圧コンバータとしての機能をさらに有してもよい。例えば、第1モータ18が発電機として機能する場合には、第1モータ18からの交流電力は、第1インバータ36によって直流電力に変換され、昇圧コンバータ46によって降圧された後に、車両の電源102に供給されてもよい。同様に、第2モータ20が発電機として機能する場合には、第2モータ20からの交流電力は、第2インバータ38によって直流電力に変換され、昇圧コンバータ46によって降圧された後に、車両の電源102に供給されてもよい。
【0032】
図4に示すように、降圧コンバータ44は、車両の電源102と補機バッテリ104との間に電気的に接続されている。降圧コンバータ44は、電源102からの直流電力を降圧して、補機バッテリ104に供給することができる。補機バッテリ104は、車両の種々の制御システムやその他の補機に接続されており、これらに電力を供給する。特に限定されないが、補機バッテリ104の定格電圧は、12ボルトである。
【0033】
上記の機電一体ユニット10において、ハウジング12の第1室R1では、第2モータ20の少なくとも一部が、第1モータ18よりも上方に位置するように配置されている。そのため、ハウジング12の第1室R1と第2室R2との間の隔壁14wは、それらのモータ18、20の配置に合わせて、第2モータ20の上方に位置する部分に、その他の部分よりも第2室R2側へ膨出する膨出部14sを有する。そして、第2電気回路ユニット32bの少なくとも一部は、車両の前後方向又は車両の左右方向において、隔壁14wの膨出部14s(及び第1室R1に配置された第2モータ20)と対向するように配置されている。このような構成によると、第1室R1における第1モータ18及び第2モータ20の配置によって第2室R2に生じ得る余剰スペースに、第2電気回路ユニット32bの少なくとも一部を配置することができる。その結果、第1室R1に二つのモータ18、20が配置されることにより、第1室R1の上下方向の寸法が大きくなる場合でも、第2電気回路ユニット32bが第1モータ18及び第2モータ20の余剰スペースに埋め込まれた分だけ、車両の上下方向における機電一体ユニット10の寸法を小さくすることができる。
【0034】
以上、いくつかの具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは組み合わせによって技術的有用性を発揮するものである。
【符号の説明】
【0035】
10 :機電一体ユニット
12 :ハウジング
14 :ハウジング本体
14a :底壁
14b :側壁
14c :開口
14s :膨出部
14w :隔壁
16 :カバープレート
18 :第1モータ
20 :第2モータ
22 :遊星ギア機構
24 :減速ギア機構
26 :モータ出力ギア機構
28 :ディファレンシャルギア機構
30 :オイルポンプ
32 :電気回路ユニット
32a :第1電気回路ユニット
32b :第2電気回路ユニット
34 :DC-DCコンバータ回路
34s :スイッチング素子
36 :第1インバータ
38 :第2インバータ
40 :制御基板
42 :リアクトル
44 :降圧コンバータ
46 :昇圧コンバータ
48 :電力制御回路
50 :保護カバー
102 :電源
104 :補機バッテリ
R1 :第1室
R2 :第2室
図1
図2
図3
図4