(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置の評価装置、および、インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241008BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20241008BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20241008BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B41J2/01 127
B05C5/00 101
B05C11/10
B41J2/01 451
B05C11/00
(21)【出願番号】P 2022036809
(22)【出願日】2022-03-10
【審査請求日】2023-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2021071575
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100130638
【氏名又は名称】野末 貴弘
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西澤 均
(72)【発明者】
【氏名】岸 和弘
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-060683(JP,A)
【文献】特開2020-049462(JP,A)
【文献】特開2015-116749(JP,A)
【文献】特開2016-080474(JP,A)
【文献】特開2005-161767(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0001666(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0165762(US,A1)
【文献】国際公開第2019/064692(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B05C 5/00
B05C 11/10
B05C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット印刷装置による印刷によって、インクの液滴が着弾した被印刷物に対して、少なくとも2つの異なる波長を含む照明光を照射する照明部と、
前記被印刷物に対して照射される前記照明光の光軸と同じ光軸にて、
前記少なくとも2つの異なる波長を区別して前記照明光が照射されている前記被印刷物を撮像する撮像部と、
前記撮像部による撮像によって得られる前記被印刷物の画像に基づいて、前記液滴の形状、大きさ、および、位置のうちの少なくとも1つを認識することにより、
撮像された画像中の傷及び異物とインクの液滴とを区別して、印刷が正常であるか否かを評価する評価部と、を備えることを特徴とするインクジェット印刷装置の評価装置。
【請求項2】
前記照明部は、前記インクジェット印刷装置によって、同一箇所に重ねて印刷が行われた前記被印刷物に対して前記照明光を照射することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷装置の評価装置。
【請求項3】
前記被印刷物の白色度は、95%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット印刷装置の評価装置。
【請求項4】
前記照明光には、少なくとも10nm以上波長が異なる光が含まれることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のインクジェット印刷装置の評価装置。
【請求項5】
前記照明光の波長は、380nm以上780nm以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のインクジェット印刷装置の評価装置。
【請求項6】
前記照明光は、白色光であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のインクジェット印刷装置の評価装置。
【請求項7】
前記撮像部の光軸上に配置されるカラーフィルタおよび偏光フィルタのうちの少なくとも一方のフィルタをさらに備えることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のインクジェット印刷装置の評価装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のインクジェット印刷装置の評価装置と、
前記被印刷物を支持するためのステージと、
前記インクを貯留するためのタンクと、
前記タンクに貯留されている前記インクを吐出するノズルを複数有するヘッドと、
を備えることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項9】
前記ノズルから吐出されたインクにより印刷が行われた前記被印刷物を前記インクジェット印刷装置の評価装置に搬送する搬送機構をさらに備えることを特徴とする請求項8に記載のインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷装置による印刷を評価する装置、および、そのような装置を備えるインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドに複数設けられたノズルからインクを吐出するインクジェット印刷装置において、ノズルの詰まり等によって、正常な量のインクが吐出されず、印刷が正常に行われない場合がある。
【0003】
特許文献1には、ノズルから吐出され、検査面に着弾した液滴に対して照明光を照射し、撮像部によって液滴の干渉色画像を撮像して、液滴集合体の膜厚分布を測定するインクジェット塗布装置が開示されている。より詳しくは、ノズルと検査面とを相対移動させながら、ノズルから複数の液滴を所定間隔で吐出させて、検査面上に着弾させ、複数の液滴が互いにオーバーラップした液滴集合体の干渉色画像を撮像部で撮像する。そして、得られた干渉色画像に基づいて、液滴集合体の膜厚分布を測定し、測定した膜厚分布から、液滴の体積、すなわち液適量を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェット塗布装置では、検査面に傷や異物が存在する場合に、画像中の液滴集合体と傷や異物との区別ができない場合がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、被印刷物に存在する傷や異物と、インクの液滴とを区別して、インクジェット印刷装置による印刷が正常であるか否かを評価することが可能な評価装置、および、そのような評価装置を備えるインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のインクジェット印刷装置の評価装置は、
インクジェット印刷装置による印刷によって、インクの液滴が着弾した被印刷物に対して、少なくとも2つの異なる波長を含む照明光を照射する照明部と、
前記被印刷物に対して照射される前記照明光の光軸と同じ光軸にて、前記照明光が照射されている前記被印刷物を撮像する撮像部と、
前記撮像部による撮像によって得られる前記被印刷物の画像に基づいて、前記液滴の形状、大きさ、および、位置のうちの少なくとも1つを認識することにより、前記インクジェット印刷装置による印刷を評価する評価部と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のインクジェット印刷装置の評価装置によれば、インクの液滴が着弾した被印刷物に対して、少なくとも2つの異なる波長を含む照明光を照射し、液滴に照射される照明光と同じ光軸にて撮像された被印刷物の画像に基づいて、液滴の形状、大きさ、および、位置のうちの少なくとも1つを認識することにより印刷を評価する。そのような構成により、被印刷物に傷や異物が存在する場合でも、撮像された画像中の傷や異物とインクの液滴とを区別して、印刷が正常であるか否かを評価することができる。すなわち、1つの波長の照明光では、傷や異物からの反射光と、インクの液滴からの反射光とを区別できない場合があるが、少なくとも2つの異なる波長を含む照明光を照射することにより、傷や異物からの反射光とインクの液滴からの反射光とを区別することができるので、区別した液滴の形状、大きさ、および、位置のうちの少なくとも1つを認識することにより、印刷が正常であるか否かを精度良く評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】インクジェット印刷装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】ノズルが設けられている側から見たときのヘッドの構成を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態におけるインクジェット印刷装置の評価装置の構成を模式的に示す図である。
【
図4】(a)は、インクジェット印刷装置による印刷が正常である場合の液滴の形状の一例を示す図であり、(b)は、印刷が正常ではない場合の液滴の形状の一例を示す図である。
【
図5】インクジェット印刷装置の評価装置とインクジェット印刷装置とを備えたインクジェット印刷装置の構成を模式的に示す図である。
【
図6】基材の上に非導電体層を形成する工程を説明するための図である。
【
図7】非導電体層にビア孔を形成した状態を示す図である。
【
図8】ビア孔に導電性材料を充填してビア導体を形成した状態を示す図である。
【
図9】非導電体層の表面に内部電極パターンを形成した状態を示す図である。
【
図10】内部電極パターンが形成されていない領域に段差緩和層を形成した状態を示す図である。
【
図11】積層体を作製する工程を説明するための図である。
【
図13】積層体をプレスする工程を説明するための図である。
【
図14】分割部材によって積層体を分割する工程を説明するための図である。
【
図15】外部電極が形成されて完成した電子部品の断面図である。
【
図16】印刷積層工法による電子部品の製造方法の一部の工程を説明するための図である。
【
図17】
図16に示す電子部品の製造方法の工程に続く工程を説明するための図である。
【
図18】印刷積層工法によって作製された積層体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴を具体的に説明する。
【0011】
本発明のインクジェット印刷装置の評価装置の構成について説明する前に、インクジェット方式により印刷を行うインクジェット印刷装置の構成の一例について説明する。
【0012】
<インクジェット印刷装置>
図1は、インクジェット印刷装置100の構成を模式的に示す図である。インクジェット印刷装置100は、ヘッド10と、ステージ20と、メインタンク30とを少なくとも備えている。なお、
図1に示すインクジェット印刷装置100は、駆動機構40と配管50とをさらに備えている。ただし、本発明のインクジェット印刷装置の評価装置によって印刷の評価を行う対象であるインクジェット印刷装置の構成が
図1に示すインクジェット印刷装置100の構成に限定されることはない。
【0013】
ヘッド10は、複数のノズル11を有し、各ノズル11からインクを吐出する。
図2は、ノズル11が設けられている側から見たときのヘッド10の構成を模式的に示す図である。なお、ヘッド10に設けられているノズル11の数や配置が
図2に示す数や配置に限定されることはない。
【0014】
ヘッド10のノズル11からインクを吐出する方式は、ピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等、どのような方式であってもよい。複数のノズル11は、整列状態で配置されている。整列状態とは、少なくとも、各ノズル11がインクを吐出する方向が略同一の方向であり、かつ、各ノズル11がインクを吐出する方向と直交する平面において、一方向に沿う少なくとも一つの直線上に略等間隔に配置されている状態のことである。複数のノズル11は、一方向に沿う複数の直線上に配置されていていてもよい。その場合、ノズル11が配置される複数の直線は、互いに略平行、かつ、略等間隔に設定する。以下では、インクを吐出する方向を吐出方向と呼ぶ。
【0015】
1つのヘッド10に含まれるノズル11の数は、例えば、2個以上10000個以下である。隣接するノズル11の中心間の距離であるノズル11のピッチは、例えば、1μm以上1000μm以下である。ヘッド10内のインクの流路の断面積は、例えば、1mm2以上30mm2以下であり、ヘッド10内のインクの流路の容量は、例えば、2ml以上3ml以下である。1つのノズル11の1回あたりのインク吐出量は、例えば、0.001pl以上100pl以下である。後述する駆動機構40によって、ヘッド10を駆動する際の周波数は、例えば、100Hz以上200kHz以下である。
【0016】
ヘッド10は、後述するメインタンク30内のインクを導入するための導入口を有する。ヘッド10はさらに、導入口から導入されたインクのうち、ノズル11から吐出されなかったインクを排出するための排出口を有していてもよい。
【0017】
インクジェット印刷装置100の解像度は、例えば、50dpi以上10000dpi以下である。なお、ノズル11のピッチに応じて決まる解像度より高い解像度で印刷を行いたい場合、ヘッド10を走査方向に対して斜めに傾けるようにしてもよい。その場合のヘッド10の傾き角度は、例えば、10°以上80°以下である。
【0018】
本実施形態におけるインクジェット印刷装置100は、ヘッド10を1つだけ備えているが、複数備えていてもよい。例えば、複数種類のインクを用いた印刷を行う場合に、複数種類のインクに応じた複数のヘッド10を搭載するようにしてもよい。複数のヘッド10を設けた場合、複数のヘッド10はそれぞれ独立して走査可能に構成されていてもよいし、一体的に走査可能に構成されていてもよい。複数のヘッド10が一体的に走査可能に構成されている場合、複数のヘッド10を相互に固定して一体化させてもよい。
【0019】
被印刷物1の幅よりもヘッド10の幅が短い場合、被印刷物1の幅方向に沿って複数のヘッド10を配置するようにしてもよい。その場合、隣接するヘッド10の端部が走査方向において重なるように、走査方向にずらして複数のヘッド10を配置するようにしてもよい。
【0020】
ノズル11のピッチに応じて決まる解像度より高い解像度で印刷を行いたい場合、走査方向にn個のヘッド10を配置し、各ヘッド10のノズル11を走査方向と直交する方向に1/nずつずらして配置してもよい。
【0021】
ノズル11から吐出されるインクは、例えば、導電性粒子、非導電性粒子、導電性粒子または非導電体粒子の前駆体からなる粒子のうちの少なくとも1種類の粒子と、溶媒とを含む。インクはさらに、分散剤やバインダとなる樹脂成分を含んでいてもよい。なお、粒子は、溶媒に溶融していてもよいし、溶融せずに分散されていてもよい。また、インクは、染料系インクでもよいし、顔料系インクでもよい。
【0022】
インクに導電性粒子が含まれる場合、導電性粒子は、例えば、Ni、Cu、Fe、Ti、Ag、Au、Pd、Pt、Sn、樹脂、カーボン等や、それらのうちの2つ以上の金属を含む合金を含む。インクに非導電性粒子が含まれる場合、非導電性粒子は、例えば、CaTi、ZrO3、SrZrO3、BaTiO3、BaTi、CaO3等を含む。インクに含まれる溶媒は、例えば、水、アルコールなどである。インクに樹脂成分が含まれる場合、樹脂成分として、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、または、ポリビニルブチラール樹脂等を用いることができる。
【0023】
インクの体積濃度(PVC)は、例えば、50%以上95%以下であり、固形分濃度は、例えば、5体積%以上20.5体%以下である。インクの粘度は、例えば、3mPa・s以上50Pa・s以下である。インクに含まれる粒子の粒径は、例えば、10nm以上500nm以下である。
【0024】
被印刷物1に着弾したときのインクの液滴2の直径は、例えば、40μm以上400μm以下であり、一例として120μmである。被印刷物1に着弾したインクの液滴2の最も厚い部分の厚みは、例えば、1μm以上5μm以下である。後述する照明光を照射する場合、被印刷物1からの反射光は、例えば、波長が530nm以上558nm以下の黄みの緑色の光であり、インクの液滴2からの反射光は、例えば、波長が488nm以上493nm以下の青緑色の光である。
【0025】
このインクジェット印刷装置100では、ステージ20で支持された被印刷物1に対してヘッド10が対向し、ノズル11からインクを吐出することによって、被印刷物1に印刷が行われる。被印刷物1にインクを付着させる印刷予定位置は、印刷に先立ち、通常は面状に設定されており、ビットマップ形式等の印刷パターンデータを構成している。
【0026】
なお、後述する様々な方法により、被印刷物1に対して複数回の印刷を行う場合、各回の印刷について設定されている印刷予定位置を合わせて、1つの印刷パターンデータを構成する場合がある。また、印刷パターンデータに従って、被印刷物1に面状に印刷されたインクの集合を印刷パターンと呼ぶ。被印刷物1に対して複数回の印刷を行う場合、各回の印刷によるインクの集合を合わせて、1つの印刷パターンと呼ぶこともある。
【0027】
被印刷物1を支持するためのステージ20は、インクジェット印刷装置100の構成や被印刷物1の態様等に応じて、例えば、略平面状、略円筒状、コンベア状等の形状を有する。略平面状の形状は、例えば、1辺が1mm以上2000mm以下の矩形の形状である。略円筒状の形状の場合の寸法は、例えば、直径が10mm以上2000mm以下であり、かつ、軸方向の長さが1mm以上2000mmである。コンベア状の形状の場合の寸法は、例えば、幅が1mm以上2000mm以下である。
【0028】
被印刷物1を支持するステージ20の支持面は、例えば、ステンレス鋼等の金属や樹脂等の材料からなる。
【0029】
ステージ20は、被印刷物1を支持する部分が略平面状であり、被印刷物1を固定するための固定機構を備えていることが好ましい。被印刷物1を固定する方法に特に制約はなく、例えば、真空吸着、機械的な保持、静電吸着等の方法を用いることができる。
【0030】
ステージ20は、被印刷物1を引っ張って、テンション(張力)を加えることが可能なテンション制御機構を備えていてもよい。印加するテンションは、例えば、0MPa以上10MPa以下である。印加するテンションの大きさは、被印刷物1の位置および方向において一様でなくてもよい。例えば、長尺状の被印刷物1の長さ方向にのみテンションを印加してもよいし、長尺状の被印刷物1の幅方向の位置によって長さ方向のテンションの大きさが異なるように、テンションを印加しても良い。
【0031】
なお、テンション制御機構は、ステージ20とは異なる場所に設けられていてもよい。例えば、被印刷物1が長尺状の形状を有する場合、ステージ20の上流と下流との間で、被印刷物1に印加するテンションを制御できればよく、テンション制御機構をステージ20とは異なる場所に配置することが可能である。
【0032】
ステージ20は、1つではなく、複数設けられていてもよい。例えば、1つのステージ20上の被印刷物1に対して印刷を行っている間に、別のステージ20上の被印刷物1に対する位置合わせ処理や、印刷後の乾燥処理等を行うようにしてもよい。また、1つのステージ20上の被印刷物1に対する印刷と、別のステージ20上の被印刷物1に対する位置合わせ処理や印刷後の乾燥処理等を交互に行うようにしてもよい。
【0033】
また、複数のステージ20上の被印刷物1に対して、複数のステージ20に対応する複数のヘッド10のそれぞれから種類の異なるインクを吐出するように構成してもよいし、複数のヘッド10と複数のステージ20とが相対的に移動して、複数のヘッド10のそれぞれが複数のステージ20のそれぞれと順に対向して、ステージ20上の被印刷物1に対して順に、インクを吐出するように構成してもよい。
【0034】
なお、インクジェット印刷装置100は、ステージ20を加熱するための加熱装置を備えていてもよい。加熱装置によるステージ20の加熱温度は、例えば、10℃以上100℃以下である。
【0035】
インクジェット印刷装置100は、吐出方向と直交する方向におけるヘッド10とステージ20の相対位置が変化するように、ヘッド10およびステージ20のうちの少なくとも一方を駆動させるための駆動機構40を備える。駆動機構40は、特に、印刷予定位置が整列状態の複数のノズル11と順次対向するように、ヘッド10とステージ20の相対位置を連続的に変化させる走査機能を有する。なお、駆動機構40は、吐出方向と直交する方向におけるヘッド10とステージ20の相対位置を変化させる際、吐出方向におけるヘッド10とステージ20の相対位置も変化させるようにしてもよい。
【0036】
インクジェット印刷装置100は、ヘッド10のノズル11とステージ20上の被印刷物1との相対位置を認識する認識機構を有している。駆動機構40は、認識されたヘッド10のノズル11とステージ20上の被印刷物1との相対位置と、印刷パターンデータとに基づいて、ヘッド10のノズル11と被印刷物1の印刷予定位置とが対向するように、ヘッド10とステージ20のうちの少なくとも一方を駆動する。なお、認識機構と駆動機構40の2つの機構を合わせた位置合わせ機構を設けるようにしてもよい。また、駆動機構40を制御するための制御機構を設けるようにしてもよい。
【0037】
メインタンク30は、ヘッド10に供給するインクを貯留する。メインタンク30の容量は、例えば、500ml以上4000ml以下である。
【0038】
インクジェット印刷装置100は、メインタンク30とともに、サブタンクを備えていてもよい。その場合、サブタンクの容量は、例えば、10ml以上50ml以下である。
【0039】
メインタンク30は、例えば、円筒形の形状を有しており、下面中央にインク導出口を有する。メインタンク30が円筒形の形状を有する場合、上面および下面を構成する円の直径は、例えば、10mm以上500mm以下であり、上面から下面までの長さは、例えば、50mm以上1000mm以下である。
【0040】
なお、メインタンク30は、必要な容量を確保できるのであれば、形状に特に制約はないが、内面に角部や、下面に凹部等のインクが滞留しやすい部分が存在しないことが好ましい。また、メインタンク30の下面中央にインク導出口が設けられている場合、インク導出口からインクを導出しやすくするため、メインタンク30は上面から下面に向けて断面積が少しずつ小さくなる形状、例えば、傾斜が緩やかなすり鉢のような形状を有していることが好ましい
【0041】
メインタンク30の内面は、例えば、ステンレス、ポリプロピレン等からなる。メインタンク30およびサブタンクには、タンク内のインクの液面よりも上方の気圧を調整するための気圧調整機構が設けられていてもよい。
【0042】
インクジェット印刷装置100は、メインタンク30内のインクの量を検出するためのインク量センサをさらに備えていてもよい。インク量センサは、例えば、メインタンク30内のインクの液面の高さを検出してもよいし、インクの重量を検出してもよい。例えば、メインタンク30内のインクの量が規定範囲未満に減少したことをインク量センサで検出することにより、自動または手動でインクを補充するように構成することができる。また、例えば、メインタンク30内のインクの量が規定範囲未満に減少したことをインク量センサで検出した場合に、気圧調整機構等を制御して、インク導出口におけるインクの圧力が規定範囲内に収まるように制御してもよい。また、サブタンクを設けた場合、サブタンク内のインクの量を検出するためのインク量センサを備えるようにしてもよい。
【0043】
インクジェット印刷装置100は、メインタンク30内のインクの温度を検出して制御する温度制御機構をさらに備えていてもよいし、メインタンク30内のインクを撹拌翼等で撹拌する撹拌機構をさらに備えていてもよい。
【0044】
メインタンク30とヘッド10との間は、インクが流れる配管50によって接続されている。メインタンク30とヘッド10とを接続する配管50の途中に、サブタンクを設けるようにしてもよい。サブタンクに貯留されるインクの量を、メインタンク30より高精度に管理することにより、ヘッド10に供給されるインクの圧力の変動を低減することができる。サブタンクを設ける場合、メインタンク30から導出されるインクをサブタンクに供給するための配管を第1の供給用配管とし、サブタンクから導出されるインクをヘッド10に供給するための配管を第2の供給用配管とする。
【0045】
ヘッド10に供給されるインクのうち、ノズル11から吐出されなかったインクを、メインタンク30、サブタンクおよびヘッド10のうちの少なくとも1つに供給することにより、インクを循環させるためのヘッド循環用配管を設けてもよい。ヘッド循環用配管によってインクをヘッド10に供給する場合、ヘッド10にインクを供給するための配管は、ヘッド10ではなく、ヘッド循環用配管に接続されていてもよい。また、ヘッド循環用配管を含むインクの循環経路のいずれかの位置に、インクを循環させるためのヘッド循環用ポンプが設けられていてもよい。ヘッド循環用ポンプによってインクを循環させることにより、インクの滞留が抑制され、インク成分の偏析や、インクに含まれる粒子の沈降等によるインクの循環経路の汚染や、インクの組成の変動を抑制することができる。
【0046】
メインタンク30から導出されたインクのうち、ヘッド10に供給されなかったインクをメインタンク30に供給することによって、インクを循環させるためのタンク循環用配管を設けてもよい。その場合、ヘッド10にインクを供給するための配管は、メインタンク30ではなく、タンク循環用配管のいずれかの位置からインクを導出するように構成されていてもよい。また、タンク循環用配管を含むインクの循環経路のいずれかの位置に、インクを循環させるためのタンク循環用ポンプが設けられていてもよい。
【0047】
サブタンクを設けた構成の場合、以下で説明するメインタンク循環用配管、サブタンク循環用配管、および、複合タンク循環用配管のうちの少なくとも1つの配管を設けるようにしてもよい。メインタンク循環用配管は、メインタンク30から導出されたインクのうち、サブタンクに供給されなかったインクをメインタンク30に供給することにより、インクを循環させるための配管である。サブタンク循環用配管は、サブタンクから導出されたインクのうち、ヘッド10に供給されなかったインクをサブタンクに供給することにより、インクを循環させるための配管である。複合タンク循環用配管は、サブタンクから導出されたインクのうち、ヘッド10に供給されなかったインクをメインタンク30に供給することにより、インクを循環させるための配管である。
【0048】
ここで、メインタンク循環用配管が設けられている場合、第1の供給用配管は、メインタンク30ではなく、メインタンク循環用配管からインクを導出するように構成されていてもよい。サブタンク循環用配管が設けられている場合、第1の供給用配管は、サブタンクではなく、サブタンク循環用配管にインクを導出し、第2の供給用配管は、サブタンクではなく、サブタンク循環用配管からインクを導出するように構成されていてもよい。複合タンク循環用配管が設けられている場合、第2の供給用配管は、サブタンクではなく、サブタンク循環用配管からインクを導出するように構成されていてもよい。いずれの構成においても、インクを循環させることにより、インクの滞留が抑制され、インク成分の偏析や、インクに含まれる粒子の沈降等によるインクの循環経路の汚染や、インクの組成の変動を抑制することができる。
【0049】
インクジェット印刷装置100は、印刷の完了時等に、ヘッド10および配管等の内部に残ったインクをノズル11から排出し、ノズル11と対向させた容器にインクを回収するインクパージ機構を備えていてもよい。
【0050】
ヘッド10にインクを供給するための配管およびヘッド循環用配管の少なくとも1箇所に、インクを濾過し、インクに含まれる異物や凝集物を捕集するためのフィルタを設けるようにしてもよい。フィルタは、例えば、インクがヘッド10やサブタンクに供給されるまでの間の経路に設ける。フィルタの材質は、例えば、ステンレス等の金属や、セルロース等の樹脂である。フィルタのメッシュサイズは、例えば、0.01μm以上100μm以下であり、断面積は10mm2以上10000mm2以下である。
【0051】
上述した各種配管は、硬質の素材により構成されていてもよいし、軟質の素材により構成されていてもよい。ヘッド10の走査等の動作によって、配管が変形する場所には、軟質の素材が用いられることが好ましい。硬質の素材としては、例えば、ステンレス等の金属や、テフロン(登録商標)等の樹脂を用いることができる。軟質の素材としては、例えば、テフロン(登録商標)等の樹脂を用いることができる。
【0052】
配管の形状は、例えば、円筒状であり、内径は、例えば、1mm以上20mm以下である。配管の形状に特に制約はないが、内面に角部や、下面に凹部などのインクが滞留しやすい部分が存在しないことが好ましい。
【0053】
上述したヘッド循環用ポンプやタンク循環用ポンプは、吸込口からインクを吸引し、吐出口からインクを吐出する。ポンプ作動時のインクの流量は、例えば、1ml/分以上50ml/分以下である。ヘッド循環用ポンプやタンク循環用ポンプとして、例えば、チューブポンプ、回転ポンプ、または、往復ポンプ等を用いることができる。
【0054】
インクジェット印刷装置100は、ヘッド10を洗浄するためのヘッド洗浄機構を備えていてもよい。ヘッド洗浄機構は、例えば、印刷動作の前後や合間に、ヘッド10のノズル開口部とその近傍に接触して拭き取ることにより、付着物を除去する。その場合、ヘッド洗浄機構のうち、ヘッド10のノズル開口部とその近傍に接触する部分は、例えば、ウエス等の布、紙、樹脂、および、ゴムのうちの少なくとも1つを含む。ヘッド洗浄機構のうち、少なくともヘッド10のノズル開口部とその近傍に接触する部分の表面は、凹凸状、網目状、スポンジ状等の形状であってもよい。
【0055】
ヘッド洗浄機構のうち、ヘッド10のノズル開口部とその近傍に接触して拭き取る拭き取り部の形状は、平面状、ブレード状、ローラ状等、拭き取りやすい任意の形状とすることができる。シート状の拭き取り部材をローラ等に巻きつけて使用し、使用後に巻き取ることによって、拭き取り部材からヘッド10のノズル開口部に付着物が再付着することを抑制するようにしてもよい。
【0056】
ヘッド洗浄機構の拭き取り部による拭き取り方向は、複数のノズル11が整列している方向と平行であってもよいし、直交する方向であってもよい。
【0057】
ヘッド10が複数設けられている場合、1つのヘッド洗浄機構によって複数のヘッド10を順次、洗浄するようにしてもよいし、複数のヘッド10に対応して複数のヘッド洗浄機構を設けるようにしてもよい。1つのヘッド洗浄機構によって複数のヘッド10を洗浄する場合、複数の拭き取り部を備えるようにしてもよいし、1つの拭き取り部に複数の突起部を設けて、それぞれの突起部が複数のヘッド10のそれぞれを洗浄するようにしてもよい。
【0058】
ヘッド10の洗浄を行う前に、予め拭き取り部に洗浄液を付着させるようにしてもよいし、ヘッド10のノズル開口部とその近傍に、浸漬やスプレー噴射等の方法で洗浄液を付着させるようにしてもよい。洗浄液として、例えば、水、酸性またはアルカリ性の水溶液、アルコール等の有機溶剤等を用いることができる。
【0059】
上述した拭き取り部の代わりに、吸引機構によって、ヘッド10のノズル開口部とその近傍に付着している付着物を吸引して除去するようにしてもよい。また、拭き取り部が網目状やスポンジ状の形状を有する場合、拭き取り部に付着している付着物を吸引機構によって吸引して除去するようにしてもよい。
【0060】
ヘッド洗浄機構は、印刷が行われていない間に、ヘッド10の内部に洗浄液を導入してノズル11から排出し、ヘッド10の内部の付着物を除去するように構成されていてもよい。洗浄液をノズル11から排出する方法は、インクをノズル11から吐出する方法と同じでもよいし、ポンプ等を用いて洗浄液をヘッド10の内部に導入し、加圧することにより洗浄液を排出するようにしてもよい。洗浄液として、例えば、水、酸性またはアルカリ性の水溶液、アルコール等の有機溶剤等を用いることができる。
【0061】
インクジェット印刷装置100は、撮像機構を備えていてもよい。撮像機構は、例えば、CCDカメラやCMOSカメラである。撮像機構の画素数は、例えば、10万画素以上1000万画素以下であり、レンズの倍率は、例えば、0.5倍以上10倍以下である。撮像機構による撮像時の照明として、例えば、LED照明を用いることが可能である。
【0062】
撮像機構は、例えば、上述した認識機構による被印刷物1の位置合わせに用いられる。例えば、被印刷物1に位置合わせのためのマーク(以下、位置合わせ用マークと呼ぶ)を設けておき、位置合わせ用マークに照明を照射している状態で、撮像機構で撮像することにより、被印刷物1の位置を認識する。被印刷物1が基材と一体化されている場合には、基材に位置合わせ用マークを設けておいてもよい。また、被印刷物1に対して印刷を複数回行う場合や、予め別の工程で被印刷物1に対して印刷を行っている場合には、既に形成されている印刷パターンの一部または全部を位置合わせ用マークとして用いてもよい。既に形成されている印刷パターンを位置合わせ用マークとして用いる場合、位置合わせ用マークの印刷パターンを撮像して被印刷物1の位置を認識するとともに、印刷パターンの印刷状態を評価して、良否選別を行ってもよい。さらに、印刷条件を修正するためのフィードバック制御やフィードフォワード制御を行ってもよい。被印刷物1の位置を認識すると、認識された位置に基づいて、印刷予定位置に印刷が行われるように制御する。
【0063】
以下では、被印刷物1が長さの短い短冊状の形状を有する場合と、長さが長い長尺状の形状を有する場合とに分けて、インクジェット印刷装置100の構成例について説明する。
【0064】
短冊状の形状を有する被印刷物1のサイズは、例えば、1辺の長さが0.1mm以上2000mm以下、厚みが0.01mm以上200mm以下である。被印刷物1は、硬質の材料、例えば金属材料またはセラミック材料で構成されていてもよいし、軟質の材料、例えば樹脂材料やセラミックグリーンシートのようなコンポジット材料で構成されていてもよい。
【0065】
駆動機構40は、吐出方向と直交する第1の方向に、ヘッド10およびステージ20のうちの少なくとも一方を駆動可能に構成されている。特に、駆動機構40は、ステージ20に支持されている被印刷物1の印刷予定位置がヘッド10に順次対向するように、ヘッド10からのインクの吐出タイミングに応じて、ヘッド10およびステージ20のうちの少なくとも一方を第1の方向に連続的に駆動する走査機能を有する。ヘッド10とステージ20を相対的に駆動する際の速度は、例えば、1mm/秒以上2000mm/秒以下である。
【0066】
駆動機構40はさらに、ヘッド10およびステージ20のうちの少なくとも一方を、吐出方向および第1の方向と直交する第2の方向に駆動可能に構成されていてもよいし、吐出方向と平行な回転軸を中心に、ヘッド10およびステージ20のうちの少なくとも一方を回転可能に構成されていてもよい。駆動機構40がヘッド10およびステージ20のうちの少なくとも一方を、第1の方向、第2の方向、および、回転軸を中心とする回転方向に駆動可能に構成されていることにより、ヘッド10と被印刷物1の任意の印刷予定位置とが順次対向するように、位置合わせを行うことが可能となる。
【0067】
駆動機構40がヘッド10を駆動する場合、ヘッド10とともに、インクジェット印刷装置100が備える他の構成、例えば、メインタンク30、サブタンク、ポンプ、フィルタおよび配管等のうちの少なくとも1つを一体的に駆動してもよい。
【0068】
駆動機構40は、ヘッド10およびステージ20のうちの少なくとも一方を、第1の方向に往復させる走査を複数回行うようにしてもよい。走査を複数回行うことにより、被印刷物1に吐出されるインクの量を増加させること、および、乾燥後の印刷パターンの断面形状を、ある程度制御することなどが可能となる。
【0069】
また、複数回の走査を行う際、任意の走査において、印刷パターンデータを変更してもよいし、被印刷物1とヘッド10との相対位置を変更してもよい。その場合、複数回の走査により得られる印刷パターンの解像度を向上させること、および、走査方向と直交する方向における印刷パターンの幅を広げることなどが可能となる。
【0070】
インクジェット印刷装置100は、複数回の走査を行う場合、任意の走査間のタイミングで、被印刷物1に対して任意の処理を行う処理機構を備えていてもよい。その場合、処理機構によって、被印刷物1に任意の処理が行われる位置は、ステージ20が走査によって駆動される範囲内の位置であってもよいし、上記範囲の外側の位置であってもよい。ステージ20が走査によって駆動される範囲の外側で処理が行われる場合、ステージ20を処理が行われる位置まで移動させるように構成する。
【0071】
上述した処理機構は、例えば、乾燥処理、脱脂処理、および、合成処理のうちの少なくとも1つの処理を行う。乾燥処理は、印刷を行ったステージ20上、または、別途設けられている乾燥部において、印刷後のインクを乾燥させるための処理である。なお、被印刷物1の形状が長尺状である場合、ステージ20の下流側に設けられた乾燥部において、被印刷物1のうち、印刷されたインクを乾燥させる処理を行う。脱脂処理は、被印刷物1に着弾したインクに樹脂成分が含まれている場合に、加熱等によってその樹脂成分を低減または除去するための処理である。合成処理は、被印刷物1に着弾したインクに前駆体からなる粒子が含まれている場合に、加熱等によってその粒子から所望の材質を合成するための処理である。
【0072】
乾燥処理、脱脂処理、および、合成処理は、熱風の照射、印刷済みの被印刷物1の加熱、印刷済みの被印刷物1が配置されている雰囲気の減圧、可視光・紫外線・赤外線・レーザ光等の光の照射のうちの少なくとも1つの方法により行うことができる。
【0073】
乾燥処理を加熱によって行う場合、加熱時の最高温度は、例えば、30℃以上150℃以下とする。脱脂処理を加熱によって行う場合、加熱時の最高温度は、例えば、150℃以上800℃以下とする。合成処理を加熱によって行う場合、加熱時の最高温度は、例えば、800℃以上1500℃以下とする。
【0074】
処理機構が乾燥処理、脱脂処理、および、合成処理のうちの少なくとも1つの処理を行うことにより、被印刷物1に吐出されたインクの硬化を促進させることができ、次回以降の走査を行う際、印刷パターンを安定化させることができる。
【0075】
処理機構は、印刷パターンの任意の特性を検査するように構成されていてもよい。任意の特性は、例えば、印刷パターンの外観、表面性状、電気特性等である。処理機構が印刷パターンの特性を検査することにより、任意の走査間で被印刷物1を良否選別すること、検査の結果に応じて、次回以降の走査や後工程の処理内容または処理条件を変更すること、および、次の被印刷物1に対する印刷の条件を変更することなどが可能となる。
【0076】
インクジェット印刷装置100は、ステージ20上に被印刷物1を供給する供給機構を備えていてもよい。印刷を行う前のステージ20は、走査によって駆動する範囲内のいずれかの位置、または、走査によって駆動する範囲外の供給位置で停止している。供給機構は、例えば、カセット等の収納容器に収納されている被印刷物1や、前の工程における処理が終了して、搬送機構によって所定の位置まで搬送された被印刷物1を、真空吸引や機械的な方法で保持してステージ20上まで搬送した後、保持を解除して、ステージ20上に載置する。
【0077】
インクジェット印刷装置100は、ステージ20から被印刷物1を排出するための排出機構を備えていてもよい。印刷後のステージ20は、走査によって駆動される範囲内のいずれかの位置、または、走査によって駆動される範囲外の排出位置で停止している。排出機構は、例えば、ステージ20上の被印刷物1を真空吸引や機械的な方法で保持して、カセット等の収納容器、または、後工程における処理を行う位置まで搬送を行う搬送機構まで搬送した後、保持を解除する。
【0078】
インクジェット印刷装置100が供給機構と排出機構の両方を備える場合、供給機構および排出機構の一部または全部が兼用された構成としてもよい。また、供給位置と排出位置とが同じ位置であってもよい。
【0079】
インクジェット印刷装置100は、印刷が行われた被印刷物1に対して、供給機構によって他の被印刷物1を保持して積層し、一体化する積層機構を備えていてもよい。また、インクジェット印刷装置100は、ステージ20上の被印刷物1に対して印刷を行った後、その上に新たな被印刷物1を積層して印刷を行う処理を繰り返すことによって、印刷が行われた積層型の被印刷物1を形成するように構成されていてもよい。
【0080】
必要に応じて、積層された被印刷物1を圧着してもよい。圧着は、供給機構によって他の被印刷物1を積層した状態で行ってもよいし、供給機構による他の被印刷物1の保持を解除した後、圧着板等を用いて行ってもよい。圧着時の温度は、例えば、60℃以上90℃以下であり、圧着時の圧力は、例えば、最大で1MPa以上200MPa以下である。
【0081】
被印刷物1が基材と一体化している場合、インクジェット印刷装置100は、被印刷物1を積層する前に、予め被印刷物1を基材から剥離する剥離機構を備えていてもよい。剥離機構は、基材と一体化された被印刷物1がステージ20上の被印刷物1に積層された後、基材だけを剥離するように構成されていてもよい。
【0082】
続いて、上述した短冊状の被印刷物1よりも長さの長い長尺状の被印刷物1に対して印刷を行うためのインクジェット印刷装置100の構成例について説明する。
【0083】
長冊状の被印刷物1のサイズは、例えば、幅が1mm以上2000mm以下、厚みが0.001mm以上1mm以下である。被印刷物1は、例えば、軟質の材料で構成されており、直径が50mm以上200mm以下の巻取ロールに巻回可能である。
【0084】
ステージ20は、被印刷物1を支持する部分の形状が略平面状であってもよいし、全体の形状が略円筒状であってもよい。ステージ20が略円筒状の形状を有する場合、自身が回転駆動する機能を有していてもよいし、自身が回転駆動する機能を有していないが、回転可能に保持されていてもよい。
【0085】
長尺状の被印刷物1は、ステージ20の上流側から下流側まで連続して配置される。インクジェット印刷装置100は、被印刷物1を上流側から下流側へと順次送り出すための供給機構および排出機構を備えていることが好ましい。例えば、インクジェット印刷装置100は、供給機構として、巻きつけられた被印刷物1を巻き出し可能な巻き出しロールを、排出機構として、印刷が行われた被印刷物1を巻き取り可能な巻き取りロールを備える。上流側に設けられている巻き出しロールから巻き出された印刷前の被印刷物1は、ステージ20へと搬送され、印刷が行われる。印刷が行われた被印刷物1は、下流側に設けられている巻き取りロールで巻き取られる。被印刷物1が巻き出しロールからステージ20へと搬送されるまでの間に、所定の前処理を行うようにしてもよいし、ステージ20から巻き取りロールへと搬送されるまでの間に、所定の後処理を行うようにしてもよい。
【0086】
ステージ20は、略円筒形または略多角柱の形状を有し、連続的または間欠的に回転駆動可能で、被印刷物1を巻回可能に構成されていてもよい。その場合、ステージ20が回転することにより、印刷が行われた被印刷物1を巻回し、長尺状の被印刷物1のうち、印刷が行われた領域の上に未印刷領域が積層されるようにしてもよい。また、未印刷領域に対して印刷を行い、以後、印刷と被印刷物1の巻回を繰り返して、印刷された領域が積層された被印刷物1を形成するようにしてもよい。
【0087】
必要に応じて、供給機構のうち、ステージ20に隣接する部分において、被印刷物1の未印刷領域を積層しながら圧着するか、積層後に供給機構から離れた未印刷領域を圧着板によって圧着するようにしてもよい。例えば、ステージ20が略円筒形の形状を有する場合、巻き出しロールによって被印刷物1を巻き出しながら圧着するか、巻き出しロールと接する位置を過ぎた後に、ロール型の圧着板によって圧着を行う。圧着時の温度は、例えば、60℃以上90℃以下であり、圧着時の圧力は、例えば、最大で1MPa以上200MPa以下である。
【0088】
被印刷物1が基材と一体化している場合、インクジェット印刷装置100は、被印刷物1を積層する前に、予め被印刷物1を基材から剥離する剥離機構を備えていてもよい。剥離機構は、基材と一体化された被印刷物1がステージ20上の被印刷物1に積層された後、基材だけを剥離するように構成されていてもよい。
【0089】
インクジェット印刷装置100は、被印刷物1をステージ20の上流側から下流側へと向かう第1の方向に順次送り出すための駆動部を備えていてもよい。駆動部によって、被印刷物1を送り出すことによって、被印刷物1の印刷予定位置をヘッド10と順次対向させることができる。被印刷物1を送り出す速度は、例えば、1mm/秒以上2000mm/秒以下である。
【0090】
駆動部は、被印刷物1の送り出しを間欠的に行ってもよい。その場合、ステージ20は、少なくとも被印刷物1を支持する部分が略平面状の形状となっており、ヘッド10を第1の方向駆動にさせるためのヘッド駆動機構を備えていることが好ましい。被印刷物1がステージ20に対して静止している際、ヘッド10が被印刷物1の印刷予定位置と順次対向するように、インク吐出と同期して、ヘッド10を駆動させることが好ましい。ヘッド10を駆動する際の速度は、例えば、1mm/秒以上2000mm/秒以下である。
【0091】
なお、インクジェット印刷装置100に、種々の装置を組み合わせてもよいし、連結してもよい。例えば、インクジェット印刷装置100で印刷を行う前の被印刷物1または印刷を行った後の被印刷物1に対して、インクジェット印刷またはスクリーン印刷等の方法により印刷を行う印刷装置や、切断、部分切除、穴あけ、表面粗化、平滑化、プレス等の加工を行う加工装置、および、液状材料、ペースト状材料、フィルム状材料等の材料を供給し、一体化する材料供給装置等のうちの少なくとも1つの装置をインクジェット印刷装置100に組み合わせてもよいし、連結してもよい。
【0092】
<インクジェット印刷装置の評価装置>
図3は、本発明の一実施形態におけるインクジェット印刷装置の評価装置200の構成を模式的に示す図である。一実施形態におけるインクジェット印刷装置の評価装置200は、照明部210と、撮像部220と、評価部230とを備える。
【0093】
照明部210は、インクジェット印刷装置100による印刷によって、インクの液滴2が着弾した被印刷物1に対して、少なくとも2つの異なる波長を含む照明光を照射可能である。照明部210から照射する照明光には、例えば、可視光、紫外光、赤外光等が含まれる。照明光における、少なくとも2つの異なる波長は、例えば、380nm以上780nm以下の範囲に含まれる。なお、評価対象のインクの液滴2は、未乾燥状態のものである。ここでいう未乾燥状態とは、着弾した際のインクの液滴2に含まれる溶媒が乾燥しきらずに残留している状態を言い、例えばインクが着弾してから撮像部220によって撮像されるまでの間に、特段の乾燥工程を行なわずに、その時間を1秒から30秒に限定することで達成できる。
【0094】
後述する撮像部220で撮像された画像において、被印刷物1からの反射光と、インクの液滴2からの反射光とを区別するため、照明部210から照射する照明光には、少なくとも10nm以上波長が異なる光が含まれる。すなわち、照明部210から照射する照明光には、被印刷物1とインクの液滴2とを確実に区別可能な少なくとも2つの異なる波長の光が含まれる。照明光は、波長が異なる複数の単一波長の光を含む光であってもよいし、広い波長域の光であってもよい。一例として、照明光は、様々な波長を含む白色光である。
【0095】
本実施形態において、照明部210は、ハーフミラー211を含む。照明部210から出射された照明光は、ハーフミラー211によって進行方向が90°変化して、インクの液滴2が着弾した被印刷物1に対して照射され、その反射光は、ハーフミラー211を透過して、後述する撮像部220のレンズに入射する。
【0096】
撮像部220は、被印刷物1に照射される照明光の光軸S1と同じ光軸S2にて、照明光が照射されている被印刷物1を撮像可能である。撮像部220は、異なる波長の光を区別して撮像可能なものであり、例えば、CCDカメラ、CMOSカメラ、または、ラインカメラ等を用いることが可能である。撮像部220のレンズの倍率は、例えば、0.5倍以上10倍以下である。一例として、倍率が0.8倍のレンズを有し、30万画素のカメラを撮像部220として用いる。その場合の撮像部220の分解能は、約10μmである。より高い分解能を得るため、より高画素のカメラを用いるようにしてもよい。これらのカメラを用いれば、波長が380nm以上780nm以下の照明光が被印刷物1によって反射した反射光を撮像することが可能であり、特に少なくとも10nm以上波長が異なる光を区別して撮像することが可能である。
【0097】
なお、印刷の評価を行うための所望の画像を得るため、撮像部220の光軸上に、フィルタ240を配置するようにしてもよい。フィルタ240は、例えば、所定の色の光を透過させるためのカラーフィルタ、および、偏光を制御するための偏光フィルタうちの少なくとも一方である。
【0098】
上述したように、被印刷物1に対して照射される照射光の光軸S1と、撮像部220の光軸S2は同じである。ここで、光軸が同じであるとは、両者の光軸が同一である構成に限られず、両者の光軸の成す角度が3°以内である構成も含むものとする。撮像部220と光軸が同じである照明部210として、例えば、同軸機構付レンズ用同軸照明、疑似同軸照明、または、フラットパネル型同軸落射照明等を使用することができる。
【0099】
評価部230は、撮像部220による撮像によって得られる被印刷物1の画像に基づいて、液滴2の形状、大きさ、および、位置のうちの少なくとも1つを認識することにより、インクジェット印刷装置100による印刷を評価する。印刷が正常であるか否かを精度良く判別するため、評価部230は、液滴2の形状、大きさ、および、位置の全てを認識することが好ましい。
【0100】
液滴2の形状を認識する場合、評価部230は、例えば、液滴2の円形度を認識し、認識した円形度に基づいて、被印刷物1に着弾したインクの液滴2が正常な形状であるか否か、すなわち、印刷が正常であるか否かを評価する。液滴2の大きさを認識する場合、評価部230は、例えば、所定の範囲内における液滴2の面積を認識し、認識した面積に基づいて、被印刷物1に着弾したインクの液滴2の大きさが正常であるか否か、すなわち、印刷が正常であるか否かを評価する。液滴2の位置を認識する場合、評価部230は、例えば、基準位置に対する液滴2の位置のズレを認識し、認識した位置ズレに基づいて、被印刷物1に着弾したインクの液滴2の位置が正常であるか否か、すなわち、印刷が正常であるか否かを評価する。液滴2の位置は、例えば、画像中の液滴2の重心位置を求め、求めた重心位置を液滴2の位置とする。
【0101】
ここで、液滴2は、撮像により得られる被印刷物1の画像から特定の色を抽出することにより、検出することが可能である。特定の色は、例えば、色相が95以上255以下、彩度が0以上255以下、明度が101以上255以下の範囲内の色である。その後、周囲のノイズを除去するため、ラベリング処理や膨張・収縮処理等の画像処理を行ってもよい。
【0102】
図4(a)は、インクジェット印刷装置100による印刷が正常である場合の液滴2の形状の一例を示す図であり、
図4(b)は、印刷が正常ではない場合の液滴2の形状の一例を示す図である。
図4(b)に示す液滴2は、ノズル11の詰まり等の理由により、正常な印刷時の液滴2と比べて厚みが薄くなっている。
【0103】
図4(a)に示すように、印刷が正常である場合、液滴2に対して照射された照明光の散乱は少なく、照明光の照射方向と同じ方向に反射する反射光が多い。一方、印刷が正常ではなく、液滴2の厚みが薄い場合、
図4(b)に示すように、液滴2に対して照射された照明光は、液滴2の表面で散乱しやすくなり、反射光の強度が弱くなる。このため、印刷が正常ではない場合、撮像部220で撮像される画像中の液滴2の色成分は、印刷が正常な場合に撮像部220で撮像される画像中の液滴2の色成分と異なるので、液滴2の形状が正常な形状ではないことを認識して、印刷が正常ではないと判断することが可能となる。その他、ノズル11の内部や開口部などに付着物や変形が発生したり、ノズル11から吐出される前のインクで粒子の沈降や凝集が発生するなどの理由があるときに、印刷が正常である場合と比較して、液滴2の形状、大きさ、および、位置のうちの少なくとも1つが異なることを認識し、印刷が正常ではないと判断することが可能である。
【0104】
ここで、検査対象のインクの液滴2は、被印刷物1の同一箇所に重ねて印刷されたものであることが好ましい。同一箇所に重ねて印刷が行われた場合、被印刷物1の表面に色素物質が集積されるため、照明光を照射した際、被印刷物1からの反射光と、インクの液滴2からの反射光とをより明確に区別することができ、印刷の評価をより精度良く行うことができる。したがって、照明部210は、インクジェット印刷装置100によって、同一箇所に重ねて印刷が行われた被印刷物1に対して照明光を照射することが好ましい。
【0105】
被印刷物1は、高光沢性で白色度が95%以上のものを用いることが好ましい。被印刷物1の白色度が95%以上である場合、照明光を照射した際、被印刷物1からの反射光と、インクの液滴2からの反射光とをより明確に区別することができ、印刷の評価をより精度良く行うことができる。被印刷物1のうち、高光沢性で白色度が95%以上であるのは、インクの液滴2を着弾させる面の全面でもよいし、評価に用いる個所を含む特定部分だけでもよい。一例として、被印刷物1として、高光沢で厚みが0.1mm以上の写真用印画紙(例えば、コクヨ株式会社製の写真用印画紙KJ-D11A4-50)を用いることができる。
【0106】
なお、被印刷物1は、印刷が行われたときのインクに対する反応が毎回同じであることが好ましく、反応が略一定になるように、被印刷物1に対して表面処理を施してもよい。被印刷物1のうち、表面処理を施すのは、インクの液滴2を着弾させる面の全面でもよいし、評価に用いる個所を含む特定部分だけでもよい。被印刷物1は、印刷の評価を行うための専用のものを用いてもよいし、インクジェット印刷装置100を用いる製造工程において印刷される対象物をそのまま用いてもよい。写真用印画紙以外に、被印刷物1として、セラミックグリーンシート、樹脂フィルム、金属箔、紙等のシートや、電子部品、基板、半導体等のウエハやチップ、電子機器の筐体、または、それらの製造途中のもの等を用いることができる。なお、被印刷物1のうち、インクの液滴2が着弾する表面が樹脂、金属、セラミック、および、紙のうちの少なくとも1つからなる構成であってもよい。
【0107】
このように、一実施形態におけるインクジェット印刷装置の評価装置200によれば、インクの液滴2が着弾した被印刷物1に対して、少なくとも2つの異なる波長を含む照明光を照射し、被印刷物1に照射される照明光と同じ光軸にて撮像された被印刷物1の画像に基づいて、液滴2の形状、大きさ、および、位置のうちの1つを認識することにより印刷を評価する。そのような構成により、被印刷物1に傷や異物が存在する場合でも、傷や異物とインクの液滴2とを区別して、インクジェット印刷装置100による印刷が正常であるか否かを評価することができる。すなわち、1つの波長の照明光では、傷や異物からの反射光と、インクの液滴2からの反射光とを区別できない場合があるが、少なくとも2つの異なる波長を含む照明光を、撮像部220の光軸と同じ光軸で照射することにより、傷や異物からの反射光とインクの液滴2からの反射光とを区別することができるので、区別した液滴2の形状、大きさ、および、位置のうちの1つを認識することにより、印刷が正常であるか否かを精度良く評価することができる。
【0108】
また、被印刷物1に対して斜めから照明光を照射した場合、撮像された画像中の液滴2は暗くなり、被印刷物1上の異物等と区別がつきにくくなるが、本実施形態におけるインクジェット印刷装置の評価装置200では、被印刷物1に照射される照明光と同じ光軸で撮像を行うので、画像中の液滴2と異物等との区別が明確になり、印刷が正常であるか否かを精度良く評価することができる。
【0109】
印刷が正常ではないと判定された場合、警告を発して印刷動作を停止させてもよいし、ヘッド10の洗浄を行うようにしてもよいし、印刷不良品を排除するようにしてもよい。また、インク吐出時の制御パラメータを変更することにより、その後に正常な印刷が行われるように制御してもよい。例えば、インク吐出方式ごとの吐出動作の強度や吐出時間を変更することによって、正常な印刷が行われるように制御する。
【0110】
なお、特許文献1に記載のインクジェット塗布装置では、少なくとも3種類の波長の光を含む照明光を照射しているが、これは、液滴集合体の表面で反射した光と、検査面との界面で反射した光とが合成された干渉光の画像を撮像するためであり、照射する照明光の波長によっては、被印刷物1に存在する傷や異物とインクの液滴とを区別できない場合がある。また、このインクジェット塗布装置では、液滴集合体の干渉色画像から、液滴集合体の液適量を算出しているため、各ノズル11からの吐出量を算出することはできず、このため、ノズル11毎の詰まり等を検出することができない。
【0111】
これに対して、一実施形態におけるインクジェット印刷装置の評価装置200では、上述したように、液滴2の形状、大きさ、および、位置のうちの少なくとも1つを認識することにより、ノズル11毎の詰まり等も検出することが可能である。
【0112】
なお、上述したインクジェット印刷装置の評価装置200とインクジェット印刷装置100とを合わせた構成を、インクジェット印刷装置と呼ぶこともできる。ここで、インクジェット印刷装置の評価装置200は、前述の処理機構の1つである。その場合、インクジェット印刷装置は、インクジェット印刷装置の評価装置200と、被印刷物1を支持するためのステージ20と、インクを貯留するためのタンクと、タンクに貯留されているインクを吐出するノズル11を複数有するヘッド10とを少なくとも備える。
【0113】
図5は、インクジェット印刷装置の評価装置200とインクジェット印刷装置100とを備えたインクジェット印刷装置300の構成を模式的に示す図である。
図5に示す構成において、インクジェット印刷装置100で印刷が行われた被印刷物1は、インクジェット印刷装置の評価装置200で印刷の評価が行われる。印刷の評価が行われ、正常と判定された被印刷物1は、例えば、乾燥部400に搬送されて、インクの乾燥が行われる。この構成では、インクジェット印刷装置100によって印刷が行われた製品を乾燥部400へと搬送する経路の途中に、インクジェット印刷装置の評価装置200が設けられている。
【0114】
ただし、インクジェット印刷装置100から乾燥部400へと至る経路上とは別の位置に、インクジェット印刷装置の評価装置200を設けるようにしてもよい。その場合、インクジェット印刷装置300は、ノズル11から吐出されたインクにより印刷が行われた被印刷物1をインクジェット印刷装置の評価装置200に搬送する搬送機構をさらに備える。インクジェット印刷装置100から乾燥部400へと至る経路上とは別の位置にインクジェット印刷装置の評価装置200を設けることにより、印刷の評価を別工程で行うことから、次の印刷準備および印刷を印刷の評価と並行して行うことができ、印刷タクトを短縮することができる。
【0115】
なお、被印刷物1に、製品としての被印刷物と、印刷の評価対象の被印刷物とが含まれるようにし、評価対象の被印刷物に着弾したインクの液滴2に対する評価によって、印刷が正常と判断された場合のみ、製品としての被印刷物を乾燥部400に搬送するようにしてもよい。
【0116】
以下では、インクジェット印刷装置100を用いたインクジェット方式による印刷を利用して電子部品を製造する方法について説明する。ここでは、シート積層工法を用いる例と、印刷積層工法を用いる例について説明する。
【0117】
(シート積層工法による電子部品の製造方法)
図6~
図15を参照しながら、シート積層工法による電子部品の製造方法の一例について説明する。
【0118】
初めに、
図6に示すように、塗工機63により、基材61の上に非導電体層62を形成する。基材61は、例えば長尺状または短冊状の樹脂フィルムである。ただし、基材61が樹脂フィルムに限定されることはなく、その材質および形状は任意のものとすることができる。したがって、基材61は、板状、ロール状、ドラム状、またはベルト状の金属等であってもよい。
【0119】
非導電体層62は、例えば、非導電体またはその前駆体からなる粒子と溶媒とを少なくとも含む非導電体スラリーを用いて形成することができる。非導電体スラリーは、さらに分散剤やバインダを含んでいてもよい。
【0120】
非導電体スラリー内の固形成分である粒子の体積濃度(PVC)は、例えば65%以上95%以下であり、固形分濃度は、例えば10vol%以上27vol%以下である。
【0121】
塗工機63として、例えばダイコータ、ドクターブレード、ロールコータ、インクジェット型コータ等を用いることができる。非導電体スラリー塗工時の環境温度は、例えば20℃以上80℃以下である。また、塗工速度は、例えば2m/分以上200m/分以下である。
【0122】
非導電体スラリーの塗工後は、乾燥処理を行う。乾燥処理は、非導電体スラリーに熱風を当てる方法、非導電体スラリーを加熱する方法、および、非導電体スラリーが位置する環境下を減圧する方法のうちのいずれか1つ、または複数の方法を用いることができる。熱風を当てる場合または加熱する場合の温度は、例えば45℃である。
【0123】
なお、非導電体層62は、複数の電子部品を一括して製造するためのものであってもよいし、1つの電子部品を製造するためのものであってもよい。
【0124】
続いて、必要に応じて、非導電体層62にビア孔64を形成する(
図7参照)。ビア孔64の形成は、例えばレーザ照射によって行ってもよいし、プレス機を用いて行ってもよい。
【0125】
続いて、形成したビア孔64に導電性材料を充填し、ビア導体65を形成する(
図8参照)。
【0126】
ただし、ビア孔64に上述した導電性材料の充填を行わずに、後の内部電極パターンを形成する工程でビア導体65も同時に形成することができる。すなわち、非導電体層62の表面に内部電極パターンを形成するための内部電極用スラリーを塗工するときに、ビア孔となる位置に内部電極用スラリーを充填することによって、ビア導体65を形成する。
【0127】
ビア孔64に充填する導電性材料として、金属またはその前駆体からなる粒子と溶媒とを含むペーストまたはインクを用いることができ、さらに分散剤やバインダとなる樹脂を含んでいてもよい。ペーストまたはインク中の固形成分における金属またはその前駆体からなる粒子の体積濃度(PVC)は、例えば70%以上95%以下であり、固形分濃度は、例えば9vol%以上20.5vol%以下である。
【0128】
なお、ビア導体65を含まない電子部品の場合には、上述したビア孔64およびビア導体65を形成する工程は不要となる。
【0129】
続いて、
図9に示すように、非導電体層62の表面に、内部電極用ペーストを塗工して、内部電極パターン66を形成する。ここでは、少なくとも一部の内部電極パターン66がビア導体65と電気的に接続されるように形成する。内部電極用ペーストは、金属またはその前駆体からなる粒子と溶媒とを含むペーストまたはインクを用いることができる。内部電極用ペーストは、さらに分散剤やバインダとなる樹脂を含んでいてもよい。
【0130】
内部電極用ペーストの固形成分における金属またはその前駆体からなる粒子の体積濃度(PVC)は、例えば70%以上95%以下であり、固形分濃度は、例えば9vol%以上20.5vol%以下である。また、粒子の粒径は、例えば10nm以上500nm以下である。また、内部電極用ペーストの粘度は、例えば5mPa・s以上50Pa・s以下である。
【0131】
内部電極用ペーストの塗工は、インクジェット印刷、スクリーン印刷、凹版印刷、凸版印刷、オフセット印刷等により行うことができる。また、1回の印刷ではなく、同一または異なる印刷方法による複数回の印刷を行ってもよい。
【0132】
内部電極用ペーストの塗工後は、乾燥処理を行う。乾燥処理を行う際の環境温度は、例えば20℃以上98℃以下である。乾燥処理は、内部電極用ペーストに熱風を当てる方法、内部電極用ペーストを加熱する方法、および、内部電極用ペーストが位置する環境下を減圧する方法のうちのいずれか1つ、または複数の方法を用いることができる。熱風を当てる場合または加熱する場合の温度は、例えば75℃である。
【0133】
なお、基材61の上に非導電体層62を形成し、非導電体層62の上に内部電極パターン66を形成する代わりに、基材61の上に内部電極パターン66を形成し、内部電極パターン66の上に非導電体層62を形成するようにしてもよい。
【0134】
続いて、内部電極パターン66が形成されていない領域に、非導電性の塗工材料を塗工することによって、段差緩和層67を形成する(
図10参照)。段差緩和層67を形成することにより、内部電極パターン66が存在する部分と存在しない部分との段差を緩和することができる。
【0135】
この後、上述した方法により作製した非導電体層62、および内部電極パターン66が形成された非導電体層62を積層することによって積層体を作製する。積層体の詳しい作製方法を以下で説明する。
【0136】
支持体71の表面に、内部電極パターン66が形成された非導電体層62、および、内部電極パターン66が形成されていない非導電体層62を任意の枚数および任意の順序で積層し(
図11参照)、所望の積層体72を作製する(
図12参照)。
【0137】
支持体71は、例えば長尺状または短冊状の樹脂フィルムである。ただし、支持体71が樹脂フィルムに限定されることはなく、その材質および形状は任意のものとすることができる。したがって、支持体71は、板状、ロール状、ドラム状、またはベルト状の金属等であってもよい。
【0138】
上述した積層体72において、非導電体層62、ビア導体65、内部電極パターン66、および、段差緩和層67のうちの少なくとも1つの層の形成を、インクジェット印刷装置100によるインクジェット印刷で行うことが可能である。その場合、本発明のインクジェット印刷装置の評価装置200によって、インクジェット印刷の評価を行うことができる。
【0139】
なお、ビア導体65の印刷の評価は、ビア孔64への印刷によって着弾したインクの液滴2を撮像することによって行ってもよいし、印刷の評価のために、ビア孔64の無い被印刷物1を別途用意し、用意した被印刷物1に対して印刷を行って評価を行うようにしてもよい。段差緩和層67の印刷の評価についても同様である。
【0140】
なお、
図12に示す積層体72とは別の構造の積層体の作製例として、内部電極パターンが形成されていない非導電体層を複数積層した後、その上に、内部電極パターンが形成された非導電体層を複数積層し、さらに内部電極パターンが形成されていない非導電体層を複数積層することによって、積層体を作製することができる。
【0141】
積層方法に特に制約はない。例えば、非導電体層62を積層ヘッドで保持し、支持体71の上または他の非導電体層62の上に積層する。その後、積層ヘッドで非導電体層62の圧着を行ってから、非導電体層62の保持を解除して移動してもよいし、非導電体層62の保持を解除して移動してから、別の圧着装置を用いて圧着を行ってもよい。圧着時の温度は、例えば60℃以上90℃以下である。また、圧着時の最大圧力は、例えば1MPa以上200MPa以下である。
【0142】
非導電体層62を積層する際、予め非導電体層62を基材61から剥離してから積層する場合もあれば、基材61の上に形成された非導電体層62を支持体71または他の非導電体層に積み重ねた後、基材61を剥離する場合もある。
【0143】
例えば、非導電体層62と基材61とがそれぞれ面保持された状態で互いを離間して面剥離させてもよいし、少なくとも一方の端部のみが保持された状態で互いを離間して線剥離させてもよい。剥離時の環境温度は、例えば20℃以上85℃以下である。また、剥離速度は、例えば1mm/s以上300mm/s以下である。
【0144】
なお、一番下に配置する非導電体層62を基材61から剥離せず、基材61を支持体71として用いるようにしてもよい。
【0145】
内部電極パターン66が形成された非導電体層62、および、内部電極パターン66が形成されていない非導電体層62を積層した後、非導電体層62間の密着力を向上させたい場合等には、必要に応じて積層体72をプレスする(
図13参照)。プレスは、例えば、加熱平板による剛体プレスにより行ってもよいし、静水圧プレスにより行ってもよい。プレス時の温度は、例えば25℃以上200℃以下である。また、プレス時の最大圧力は、例えば1MPa以上200MPa以下である。
【0146】
得られた積層体72が複数の電子部品を一括して製造するためのものである場合には、個々の電子部品に分けるために、分割部材73によって積層体72を分割する(
図14参照)。分割は、例えばダイシングや押し切りにより行うことができる。
【0147】
この後、必要に応じて、脱脂処理、焼成処理、外部電極形成処理などを行う。
【0148】
例えば、積層体72に樹脂成分が含まれる場合、加熱等によって樹脂成分を削減または除去する脱脂工程を行うようにしてもよい。
【0149】
また、積層体72に、前駆体からなる粒子を含む場合、加熱等によって、その粒子から所望の材質を合成する焼成処理を行ってもよい。焼成処理を行う場合、焼成時の最高温度は、例えば800℃以上1200℃以下とする。
【0150】
積層体、または、分割された積層体に、外部電極に対応する層が含まれていない場合、または、外部電極に対応する層の表面の一部または全体に導電層を形成する場合、外部電極74を形成する(
図15参照)。外部電極74の形成は、液状またはペースト状材料への積層体の含浸、外部電極パターンの印刷、およびめっき処理のうちの少なくとも1つの方法により行うことができる。めっき処理は、湿式および乾式のどちらの方法で行ってもよい。外部電極74の厚みは、例えば0.1μm以上20μm以下とすることができる。
【0151】
上述した工程により、電子部品75を作製することができる(
図15参照)。
【0152】
なお、上述した脱脂処理、焼成処理、および外部電極形成処理のうちの複数の処理を行う場合、その順序は問わない。脱脂処理と焼成処理を行う場合、通常は脱脂処理の後に焼成処理を行う。外部電極形成処理は、脱脂処理および焼成処理の前に行う場合と後に行う場合があり、どちらでもよい。
【0153】
(印刷積層工法による電子部品の製造方法)
以下では、
図16~
図18を参照しながら、インクジェット印刷装置100を用いた印刷積層工法による電子部品の製造方法の一例について説明する。
【0154】
まず、
図16(a)に示すように、基材81上に非導電性の塗工材料を用いた印刷を行い、非導電体層82を形成する。非導電性の塗工材料は、非導電体またはその前駆体からなる粒子と溶媒とを少なくとも含むペーストまたはインクである。非導電性の塗工材料は、さらに分散剤やバインダとなる樹脂を含んでいてもよい。
【0155】
塗工材料の固形成分における粒子の体積濃度(PVC)は、例えば65%以上95%以下であり、固形分濃度は、例えば10vol%以上27vol%以下である。
【0156】
続いて、
図16(b)に示すように、非導電体層82の両端部に隣接する基材81上の領域に、外部電極用塗工材料を用いた印刷を行い、外部電極層83を形成する。
【0157】
外部電極用塗工材料は、金属またはその前駆体からなる粒子と溶媒とを含むペーストまたはインクである。外部電極用塗工材料は、さらに分散剤やバインダとなる樹脂を含んでいてもよい。
【0158】
外部電極用塗工材料の固形成分における金属またはその前駆体からなる粒子の体積濃度(PVC)は、例えば70%以上95%以下であり、固形分濃度は、例えば9vol%以上20.5vol%以下である。
【0159】
続いて、
図16(c)に示すように、非導電体層82の上に非導電性の塗工材料を用いた印刷を行い、1層目の非導電体層82と重畳する2層目の非導電体層82を形成する。
【0160】
続いて、
図16(d)に示すように、2層目の非導電体層82の両端部であって、1層目の外部電極層83の上に外部電極用塗工材料を用いた印刷を行い、2層目の外部電極層83を形成する。
【0161】
続いて、
図17(a)に示すように、2層目の非導電体層82の上に、内部電極用塗工材料を用いた印刷を行い、内部電極層84を形成する。
【0162】
内部電極用塗工材料は、金属またはその前駆体からなる粒子と溶媒とを含むペーストまたはインクである。内部電極用塗工材料は、さらに分散剤やバインダとなる樹脂を含んでいてもよい。
【0163】
内部電極用塗工材料に含まれる固形成分における金属またはその前駆体からなる粒子の体積濃度(PVC)は、例えば70%以上95%以下であり、固形分濃度は、例えば9vol%以上20.5vol%以下である。また、粒子の粒径は、例えば10nm以上500nm以下である。また、内部電極用塗工材料の粘度は、例えば5mPa・s以上50Pa・s以下である。
【0164】
続いて、
図17(b)に示すように、内部電極層84、および、露出している2層目の非導電体層82と重畳するように、3層目の非導電体層82を形成する。
【0165】
その後、上述した方法によって、外部電極層83、内部電極層84、非導電体層82を必要な位置に形成する工程を繰り返すことによって、
図18に示すような積層体85を得る。ただし、複数の電子部品を一括して製造するための積層体を作製するようにしてもよい。その場合、作製した積層体を分割することによって個片化する。
【0166】
この後、積層体85を基材81から分離し、全体を焼成する。これにより、電子部品を作製することができる。
【0167】
なお、非導電体層82の形成工程後には、非導電性の塗工材料を乾燥させる工程を行う。同様に、外部電極層83の形成工程後には、外部電極用塗工材料を乾燥させる工程を行い、内部電極層84の形成工程後には、内部電極用塗工材料を乾燥させる工程を行う。
【0168】
上述した非導電体層82、外部電極層83、および、内部電極層84を形成するための印刷は、インクジェット印刷装置100によるインクジェット印刷で行うことが可能である。その場合、本発明のインクジェット印刷装置の評価装置200によって、インクジェット印刷の評価を行うことができる。
【0169】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0170】
1 被印刷物
2 液滴
10 ヘッド
11 ノズル
20 ステージ
30 メインタンク(タンク)
40 駆動機構
50 配管
61 基材
62 非導電体層
63 塗工機
64 ビア孔
65 ビア導体
66 内部電極パターン
67 段差緩和層
71 支持体
72 積層体
73 分割部材
74 外部電極
75 電子部品
81 基材
82 非導電体層
83 外部電極層
84 内部電極層
85 積層体
100 インクジェット印刷装置
200 インクジェット印刷装置の評価装置
210 照明部
211 ハーフミラー
220 撮像部
230 評価部
240 フィルタ
300 インクジェット印刷装置
400 乾燥部
S1 液滴に照射される照明光の光軸
S2 撮像部の光軸