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特許7567839地図更新区間決定装置、地図更新区間決定方法及び地図更新区間決定用コンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】地図更新区間決定装置、地図更新区間決定方法及び地図更新区間決定用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20241008BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20241008BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20241008BHJP
   G09B 29/00 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/0969
G08G1/00 D
G09B29/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022041887
(22)【出願日】2022-03-16
(65)【公開番号】P2023136327
(43)【公開日】2023-09-29
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅浩
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-181927(JP,A)
【文献】特開2020-060528(JP,A)
【文献】特開2020-153939(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0356100(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
G08G 1/00-99/00
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の領域に含まれる複数の道路区間のそれぞれについて、当該道路区間を自動運転にて車両が走行するための地図情報が利用可能か否かを表す地図フラグを記憶する記憶部と、
前記所定の領域に出入り可能な複数の地点から選択した二つの地点の組み合わせごとに、前記複数の道路区間の中から、当該二つの地点を結ぶ一連の道路区間を当該二つの地点間のルートとして選択する選択部と、
前記二つの地点の組み合わせごとに、前記地図フラグを参照して、当該二つの地点間の前記ルートに含まれる個々の道路区間のうちの前記地図情報が利用可能でない道路区間を候補区間として特定し、当該候補区間に基づいて地図情報を生成または更新することで得られるドライバの利便性の向上度合いを表す評価値を算出する評価値算出部と、
前記二つの地点の組み合わせのうち、前記評価値が表すドライバの利便性の向上度合いが高い方から順に所定数の組み合わせのそれぞれの前記ルートに含まれる前記候補区間のそれぞれを前記地図情報の生成または更新対象となる道路区間として特定する特定部と、
を有し、
前記記憶部は、前記複数の道路区間のそれぞれについて、当該道路区間について前記地図情報を生成または更新するために要する地図整備コストをさらに記憶し、
前記特定部は、前記地図情報の生成または更新対象となる道路区間として特定した道路区間の前記地図整備コストの合計が目標整備コストに達するまで、前記二つの地点の組み合わせのうち、前記評価値が表すドライバの利便性の向上度合いが高い方から順に前記個々の組み合わせの前記ルートに含まれる前記候補区間のそれぞれを前記地図情報の生成または更新対象となる道路区間として特定する、
地図更新区間決定装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記複数の道路区間のそれぞれについて、当該道路区間の交通量と、当該道路区間を、前記地図情報を利用して車両が自動運転走行したときのドライバの負荷を表す自動運転走行コストと、当該道路区間をドライバの手動運転にて車両が走行したときのドライバの負荷を表す手動運転走行コストとをさらに記憶し、
前記評価値算出部は、前記二つの地点の組み合わせごとに、当該組み合わせの前記ルートに含まれる前記候補区間のそれぞれについての、前記手動運転走行コストと前記自動運転走行コストの差を、前記地図整備コストに対する前記交通量の比で重み付けした値の総和を前記評価値として算出する、請求項1に記載の地図更新区間決定装置。
【請求項3】
前記記憶部は、前記複数の道路区間のそれぞれについて、当該道路区間の交通量と、当該道路区間を、前記地図情報を利用して車両が自動運転走行したときのドライバの負荷を表す自動運転走行コストと、当該道路区間をドライバの手動運転にて車両が走行したときのドライバの負荷を表す手動運転走行コストとをさらに記憶し、
前記評価値算出部は、前記二つの地点の組み合わせごとに、当該組み合わせの前記ルートに含まれる前記候補区間のそれぞれについての、前記手動運転走行コストと前記自動運転走行コストの差を前記交通量で重み付けした値の総和を前記評価値として算出する、請求項1に記載の地図更新区間決定装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記複数の道路区間のそれぞれについて、当該道路区間の交通量と、当該道路区間をドライバの手動運転にて車両が走行したときのドライバの負荷を表す手動運転走行コストとをさらに記憶し、
前記評価値算出部は、前記二つの地点の組み合わせごとに、当該組み合わせの前記ルートに含まれる前記候補区間のそれぞれについての、前記手動運転走行コストを、前記地図整備コストに対する前記交通量の比で重み付けした値の総和を前記評価値として算出する、請求項1に記載の地図更新区間決定装置。
【請求項5】
地図更新区間決定装置が、所定の領域に出入り可能な複数の地点から選択した二つの地点の組み合わせごとに、前記所定の領域に含まれる複数の道路区間の中から、当該二つの地点を結ぶ一連の道路区間を当該二つの地点間のルートとして選択し、
前記地図更新区間決定装置が、前記二つの地点の組み合わせごとに、当該組み合わせについての前記ルートに含まれる各道路区間について、当該道路区間を自動運転にて車両が走行するための地図情報が利用可能か否かを表す地図フラグを参照して、当該二つの地点間の前記ルートに含まれる個々の道路区間のうちの前記地図情報が利用可能でない道路区間を候補区間として特定し、
前記地図更新区間決定装置が、前記二つの地点の組み合わせごとに、前記候補区間に基づいて地図情報を生成または更新することで得られるドライバの利便性の向上度合いを表す評価値を算出し、
前記地図更新区間決定装置が、前記二つの地点の組み合わせのうち、前記評価値が表すドライバの利便性の向上度合いが高い方から順に所定数の組み合わせのそれぞれの前記ルートに含まれる前記候補区間のそれぞれを前記地図情報の生成または更新対象となる道路区間として特定する、
ことを含み、
前記地図情報の生成または更新対象となる道路区間を特定することは、
前記地図情報の生成または更新対象となる道路区間として特定した道路区間についての前記地図情報を生成または更新するために要する地図整備コストの合計が目標整備コストに達するまで、前記二つの地点の組み合わせのうち、前記評価値が表すドライバの利便性の向上度合いが高い方から順に前記個々の組み合わせの前記ルートに含まれる前記候補区間のそれぞれを前記地図情報の生成または更新対象となる道路区間として特定する
ことを含む地図更新区間決定方法。
【請求項6】
所定の領域に出入り可能な複数の地点から選択した二つの地点の組み合わせごとに、前記所定の領域に含まれる複数の道路区間の中から、当該二つの地点を結ぶ一連の道路区間を当該二つの地点間のルートとして選択し、
前記二つの地点の組み合わせごとに、当該組み合わせについての前記ルートに含まれる各道路区間について、当該道路区間を自動運転にて車両が走行するための地図情報が利用可能か否かを表す地図フラグを参照して、当該二つの地点間の前記ルートに含まれる個々の道路区間のうちの前記地図情報が利用可能でない道路区間を候補区間として特定し、
前記二つの地点の組み合わせごとに、前記候補区間に基づいて地図情報を生成または更新することで得られるドライバの利便性の向上度合いを表す評価値を算出し、
前記二つの地点の組み合わせのうち、前記評価値が表すドライバの利便性の向上度合いが高い方から順に所定数の組み合わせのそれぞれの前記ルートに含まれる前記候補区間のそれぞれを前記地図情報の生成または更新対象となる道路区間として特定する、
ことをコンピュータに実行させ、
前記地図情報の生成または更新対象となる道路区間を特定することは、
前記地図情報の生成または更新対象となる道路区間として特定した道路区間についての前記地図情報を生成または更新するために要する地図整備コストの合計が目標整備コストに達するまで、前記二つの地点の組み合わせのうち、前記評価値が表すドライバの利便性の向上度合いが高い方から順に前記個々の組み合わせの前記ルートに含まれる前記候補区間のそれぞれを前記地図情報の生成または更新対象となる道路区間として特定する
ことを含む地図更新区間決定用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図情報の生成または更新対象となる道路区間を決定する地図更新区間決定装置、地図更新区間決定方法及び地図更新区間決定用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の自動運転システムが車両を自動運転制御するために参照する高精度な地図には、道路または道路の周囲に設けられた、車両の走行に関連する地物に関する情報を正確に表していることが求められる。そこで、実際に道路を走行する車両からの情報に基づいて、地図情報の更新の要否を判定する技術が提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示された情報処理装置は、各エリアについて、地図により示される道路形状から現在の道路形状への変化量、及び、そのエリアを走行した車両の所定の動作の発生回数の少なくとも一方に基づいて、そのエリアの地図の更新の要否を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-40176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ある領域の地図情報を生成または更新するためには、実際に車両がその領域を走行してその領域内の各地点の地物に関する情報を含むデータを生成し、生成したデータを、通信回線を介して地図情報を生成または更新する装置へ送信することとなる。そのため、地物に関する情報を含むデータの収集及び収集したデータに基づく地図情報の生成または更新には、通信コストを含む様々なコストが掛かる。一方、地図情報の生成または更新に当てられる工数または予算には限りがある。そのため、限られた工数または予算内で車両のドライバが最大限に自動運転制御のメリットを得ることができるよう、地図情報の生成または更新対象となる道路区間、すなわち、地物に関する情報を含むデータの収集対象となる道路区間を決定することが求められる。
【0006】
そこで、本発明は、個々の道路区間のうち、地図情報の生成または更新対象となる道路区間をドライバが自動運転制御のメリットを得易くなるように決定する地図更新区間決定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施形態によれば、地図更新区間決定装置が提供される。この地図更新区間決定装置は、所定の領域に含まれる複数の道路区間のそれぞれについて、その道路区間を自動運転にて車両が走行するための地図情報が利用可能か否かを表す地図フラグを記憶する記憶部と、所定の領域に出入り可能な複数の地点から選択した二つの地点の組み合わせごとに、複数の道路区間の中から、その二つの地点を結ぶ一連の道路区間をその二つの地点間のルートとして選択する選択部と、二つの地点の組み合わせごとに、地図フラグを参照して、その二つの地点間のルートに含まれる個々の道路区間のうちの地図情報が利用可能でない道路区間を候補区間として特定し、特定した候補区間に基づいて地図情報を生成または更新することで得られるドライバの利便性の向上度合いを表す評価値を算出する評価値算出部と、二つの地点の組み合わせのうち、評価値が表すドライバの利便性の向上度合いが高い方から順に所定数の組み合わせのそれぞれのルートに含まれる候補区間のそれぞれを地図情報の生成または更新対象となる道路区間として特定する特定部とを有する。
【0008】
この地図更新区間決定装置において、記憶部は、複数の道路区間のそれぞれについて、その道路区間の交通量と、その道路区間を、地図情報を利用して車両が自動運転走行したときのドライバの負荷を表す自動運転走行コストと、その道路区間をドライバの手動運転にて車両が走行したときのドライバの負荷を表す手動運転走行コストと、その道路区間について地図情報を生成または更新するために要する地図整備コストとをさらに記憶することが好ましい。そして評価値算出部は、二つの地点の組み合わせごとに、その組み合わせのルートに含まれる候補区間のそれぞれについての、手動運転走行コストと自動運転走行コストの差を、地図整備コストに対する交通量の比で重み付けした値の総和を評価値として算出することが好ましい。
【0009】
あるいは、この地図更新区間決定装置において、記憶部は、複数の道路区間のそれぞれについて、その道路区間の交通量と、その道路区間を、地図情報を利用して車両が自動運転走行したときのドライバの負荷を表す自動運転走行コストと、その道路区間をドライバの手動運転にて車両が走行したときのドライバの負荷を表す手動運転走行コストとをさらに記憶することが好ましい。そして評価値算出部は、二つの地点の組み合わせごとに、その組み合わせのルートに含まれる候補区間のそれぞれについての、手動運転走行コストと自動運転走行コストの差を交通量で重み付けした値の総和を評価値として算出することが好ましい。
【0010】
あるいはまた、この地図更新区間決定装置において、記憶部は、複数の道路区間のそれぞれについて、その道路区間の交通量と、その道路区間をドライバの手動運転にて車両が走行したときのドライバの負荷を表す手動運転走行コストと、その道路区間について地図情報を生成または更新するために要する地図整備コストとをさらに記憶することが好ましい。そして評価値算出部は、二つの地点の組み合わせごとに、その組み合わせのルートに含まれる候補区間のそれぞれについての、手動運転走行コストを、地図整備コストに対する交通量の比で重み付けした値の総和を評価値として算出することが好ましい。
【0011】
さらに、この地図更新区間決定装置において、記憶部は、複数の道路区間のそれぞれについて、その道路区間について地図情報を生成または更新するために要する地図整備コストをさらに記憶することが好ましい。そして特定部は、地図情報の生成または更新対象となる道路区間として特定した道路区間の地図整備コストの合計が目標整備コストに達するまで、二つの地点の組み合わせのうち、評価値が表すドライバの利便性の向上度合いが高い方から順に個々の組み合わせのルートに含まれる候補区間のそれぞれを地図情報の生成または更新対象となる道路区間として特定することが好ましい。
【0012】
他の形態によれば、地図更新区間決定方法が提供される。この地図更新区間決定方法は、所定の領域に出入り可能な複数の地点から選択した二つの地点の組み合わせごとに、所定の領域に含まれる複数の道路区間の中から、二つの地点を結ぶ一連の道路区間をその二つの地点間のルートとして選択し、二つの地点の組み合わせごとに、その組み合わせについてのルートに含まれる各道路区間について、その道路区間を自動運転にて車両が走行するための地図情報が利用可能か否かを表す地図フラグを参照して、その二つの地点間のルートに含まれる個々の道路区間のうちの地図情報が利用可能でない道路区間を候補区間として特定し、二つの地点の組み合わせごとに、特定した候補区間に基づいて地図情報を生成または更新することで得られるドライバの利便性の向上度合いを表す評価値を算出し、二つの地点の組み合わせのうち、評価値が表すドライバの利便性の向上度合いが高い方から順に所定数の組み合わせのそれぞれのルートに含まれる候補区間のそれぞれを地図情報の生成または更新対象となる道路区間として特定する、ことを含む。
【0013】
さらに他の形態によれば、地図更新区間決定用コンピュータプログラムが提供される。この地図更新区間決定用コンピュータプログラムは、所定の領域に出入り可能な複数の地点から選択した二つの地点の組み合わせごとに、所定の領域に含まれる複数の道路区間の中から、二つの地点を結ぶ一連の道路区間をその二つの地点間のルートとして選択し、二つの地点の組み合わせごとに、その組み合わせについてのルートに含まれる各道路区間について、その道路区間を自動運転にて車両が走行するための地図情報が利用可能か否かを表す地図フラグを参照して、その二つの地点間のルートに含まれる個々の道路区間のうちの地図情報が利用可能でない道路区間を候補区間として特定し、二つの地点の組み合わせごとに、特定した候補区間に基づいて地図情報を生成または更新することで得られるドライバの利便性の向上度合いを表す評価値を算出し、二つの地点の組み合わせのうち、評価値が表すドライバの利便性の向上度合いが高い方から順に所定数の組み合わせのそれぞれのルートに含まれる候補区間のそれぞれを地図情報の生成または更新対象となる道路区間として特定する、ことをコンピュータに実行させるための命令を含む。
【発明の効果】
【0014】
本開示に係る地図更新区間決定装置は、個々の道路区間のうち、地図情報の生成または更新対象となる道路区間をドライバが自動運転制御のメリットを得易くなるように決定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】地図更新区間決定装置が実装される地図更新システムの概略構成図である。
図2】地図更新システムに含まれる車両の概略構成図である。
図3】車両に搭載される、データ取得装置のハードウェア構成図である。
図4】地図更新区間決定装置の一例であるサーバのハードウェア構成図である。
図5】地図更新区間決定処理を含む、地図更新処理に関連するサーバのプロセッサの機能ブロック図である。
図6】評価値算出の概要を説明する図である。
図7】地図更新区間決定処理の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図を参照しつつ、地図更新区間決定装置、及び、地図更新区間決定装置にて実行される地図更新区間決定方法ならびに地図更新区間決定用コンピュータプログラムについて説明する。この地図更新区間決定装置は、自動運転制御において利用される地図情報の生成または更新対象となる領域に含まれる複数の道路区間の中から、多くのドライバが自動運転制御のメリットを享受できるように地図情報の生成または更新対象となる道路区間を決定する。なお、自動運転制御において利用される地図情報は、車両の走行に関連する地物(例えば、車線区画線などの道路標示、指示標識などの道路標識、道路の縁石)に関する情報を含む。この地図更新区間決定装置は、地図情報の生成または更新対象となる領域に出入り可能な複数の地点から様々な二つの地点の組み合わせを選択する。さらに、この地図更新区間決定装置は、選択した二つの地点の組み合わせごとに、その領域に含まれる複数の道路区間の中から、その二つの地点を結ぶ一連の道路区間をその二つの地点間のルートとして選択する。さらに、この地図更新区間決定装置は、二つの地点の組み合わせごとに、その二つの地点間のルートに含まれる個々の道路区間のうちの地図情報が利用可能でない道路区間を特定する。以下、地図情報が利用可能でない道路区間を、未整備区間と呼ぶことがある。この地図更新区間決定装置は、各ルートに対して、特定した未整備区間に基づいて、地図情報が生成または更新されることによるドライバの利便性の向上度合いを表す評価値を算出する。そしてこの地図更新区間決定装置は、二つの地点の組み合わせのルートのうち、評価値が高い方から順に所定数の組み合わせのルートに含まれる各未整備区間を地図情報の生成または更新対象となる道路区間として特定する。さらに、この地図更新区間決定装置は、決定した道路区間について、車両の走行に関連する地物を表すデータ(以下、地物データと呼ぶ)を収集することを指示する収集指示を、地物データを生成することが可能な車両に通知する。
【0017】
図1は、地図更新区間決定装置が実装される地図更新システムの概略構成図である。本実施形態では、地図更新システム1は、少なくとも一つの車両2と、地図更新区間決定装置の一例であるサーバ3とを有する。車両2は、例えば、サーバ3が接続される通信ネットワーク4とゲートウェイ(図示せず)などを介して接続される無線基地局5にアクセスすることで、無線基地局5及び通信ネットワーク4を介してサーバ3と接続される。なお、図1では、一つの車両2のみが図示されているが、地図更新システム1は複数の車両2を有してもよい。同様に、複数の無線基地局5が通信ネットワーク4に接続されていてもよい。また、サーバ3は、通信ネットワーク4を介して交通情報を管理する交通情報サーバ(図示せず)と通信可能に接続されていてもよい。
【0018】
図2は、車両2の概略構成図である。車両2は、カメラ11と、GPS受信機12と、無線通信端末13と、データ取得装置14とを有する。カメラ11、GPS受信機12、無線通信端末13及びデータ取得装置14は、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。
【0019】
カメラ11は、車両2の周囲を撮影するための撮像部の一例であり、CCDあるいはC-MOSなど、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に撮影対象となる領域の像を結像する結像光学系を有する。そしてカメラ11は、例えば、車両2の前方を向くように、例えば、車両2の車室内に取り付けられる。そしてカメラ11は、所定の撮影周期(例えば1/30秒~1/10秒)ごとに車両2の前方領域を撮影し、その前方領域が写った画像を生成する。カメラ11により得られた画像は、カラー画像であってもよく、あるいは、グレー画像であってもよい。なお、車両2には、撮影方向または焦点距離が異なる複数のカメラ11が設けられてもよい。
【0020】
カメラ11は、画像を生成する度に、その生成した画像を、車内ネットワークを介してデータ取得装置14へ出力する。
【0021】
GPS受信機12は、所定の周期ごとにGPS衛星からのGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて車両2の自己位置を測位する。そしてGPS受信機12は、所定の周期ごとに、GPS信号に基づく車両2の自己位置の測位結果を表す測位情報を、車内ネットワークを介してデータ取得装置14へ出力する。なお、車両2はGPS受信機12以外の衛星測位システムに準拠した受信機を有していてもよい。この場合、その受信機が車両2の自己位置を測位すればよい。
【0022】
無線通信端末13は、所定の無線通信規格に準拠した無線通信処理を実行する機器であり、例えば、無線基地局5にアクセスすることで、無線基地局5及び通信ネットワーク4を介してサーバ3と接続される。そして無線通信端末13は、無線基地局5からダウンリンクの無線信号を受信して、その無線信号に含まれる、サーバ3からの地物データの収集指示をデータ取得装置14へわたす。また、無線通信端末13は、データ取得装置14から受け取った地物データを含むアップリンクの無線信号を生成する。そして無線通信端末13は、そのアップリンクの無線信号を無線基地局5へ送信することで、地物データをサーバ3へ送信する。
【0023】
図3は、データ取得装置のハードウェア構成図である。データ取得装置14は、カメラ11により生成された画像に基づいて、地物データ生成に関連する処理を実行する。そのために、データ取得装置14は、通信インターフェース21と、メモリ22と、プロセッサ23とを有する。
【0024】
通信インターフェース21は、データ取得装置14を車内ネットワークに接続するためのインターフェース回路を有する。すなわち、通信インターフェース21は、車内ネットワークを介して、カメラ11、GPS受信機12及び無線通信端末13と接続される。そして通信インターフェース21は、カメラ11から画像を受信する度に、受信した画像をプロセッサ23へわたす。また、通信インターフェース21は、GPS受信機12から測位情報を受信する度に、受信した測位情報をプロセッサ23へわたす。さらに、通信インターフェース21は、プロセッサ23から受け取った地物データを、車内ネットワークを介して無線通信端末13へ出力する。さらにまた、通信インターフェース21は、サーバ3から無線通信端末13を介して受信した、地物データの収集指示をプロセッサ23へわたす。
【0025】
メモリ22は、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。メモリ22は、ハードディスク装置といった他の記憶装置をさらに有してもよい。そしてメモリ22は、データ取得装置14のプロセッサ23により実行される地物データ生成に関連する処理において使用される各種のデータを記憶する。そのようなデータには、例えば、道路地図、車両2の識別情報、カメラ11の設置高さ、撮影方向及び画角といったカメラ11のパラメータ、及び、画像から地物を検出するための識別器を特定するためのパラメータセットなどが含まれる。なお、道路地図は、例えば、ナビゲーション装置で経路探索に利用される地図とすることができ、その道路地図に表される領域に含まれる各道路区間の位置、長さ、個々の交差点における道路区間の接続関係などの情報を有する。また、メモリ22は、カメラ11から受信した画像、及び、GPS受信機12から受信した測位情報を一定期間記憶してもよい。さらに、メモリ22は、地物データの収集指示にて指定された、地物データの生成及び収集対象となる道路区間(以下、収集対象区間と呼ぶことがある)を表す情報を記憶する。さらにまた、メモリ22は、プロセッサ23で実行される各処理を実現するためのコンピュータプログラムなどを記憶してもよい。
【0026】
プロセッサ23は、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ23は、論理演算ユニット、数値演算ユニットあるいはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。そしてプロセッサ23は、カメラ11から受信した画像、GPS受信機12から受信した測位情報をメモリ22に記憶する。さらに、プロセッサ23は、車両2が走行している間、所定の周期(例えば、0.1秒~10秒)ごとに、地物データ生成に関連する処理を実行する。
【0027】
プロセッサ23は、地物データ生成に関連する処理として、例えば、GPS受信機12から受信した測位情報で表される車両2の自車位置が収集対象区間に含まれるか否か判定する。そしてプロセッサ23は、自車位置が収集対象区間に含まれる場合、カメラ11から受信した画像に基づいて地物データを生成する。
【0028】
例えば、プロセッサ23は、カメラ11から受信した画像そのもの(以下、全体画像と呼ぶことがある)を地物データとする。あるいは、プロセッサ23は、カメラ11から受信した全体画像から、道路の路面が表されている領域を含む部分画像を切り出し、その切り出した部分画像を地物データとする。なお、全体画像上で路面が表されていると推定される領域を表す情報は、メモリ22に予め記憶されればよい。そしてプロセッサ23は、その領域を表す情報を参照して、全体画像から切り出す領域を特定すればよい。
【0029】
あるいはまた、プロセッサ23は、全体画像または部分画像を、検出対象となる地物を検出するように予め学習された識別器に入力することで、入力された全体画像または部分画像(以下、単に入力画像と呼ぶことがある)に表された地物を検出してもよい。そしてプロセッサ23は、検出した地物の種類を表す情報を地物データとして生成してもよい。プロセッサ23は、そのような識別器として、例えば、入力画像から、その入力画像に表された地物を検出するように予め学習された、いわゆるディープニューラルネットワーク(DNN)を用いることができる。そのようなDNNとして、例えば、Single Shot MultiBox Detector(SSD)またはFaster R-CNNといった、コンボリューショナルニューラルネットワーク(CNN)型のアーキテクチャを持つDNNが用いられる。この場合、識別器は、入力画像上の様々な領域において、検出対象となる地物の種類(例えば、車線区画線、横断歩道、一時停止線など)ごとに、その地物がその領域に表されている確からしさを表す確信度を算出する。識別器は、何れかの種類の地物についての確信度が所定の検出閾値以上となる領域に、その種類の地物が表されていると判定する。そしてその識別器は、入力画像上で検出対象となる地物が含まれる領域(例えば、検出対象となる地物の外接矩形、以下、物体領域と呼ぶ)を表す情報、及び、物体領域に表された地物の種類を表す情報を出力する。そこで、プロセッサ23は、検出された物体領域に表された地物の種類を表す情報を含むように地物データを生成すればよい。
【0030】
さらに、プロセッサ23は、地物データに表される地点または地物の実空間における位置を特定し、その位置を表す情報を地物データに含める。例えば、プロセッサ23は、地物データの生成に用いられた画像が生成されたときの車両2の自車位置を地物データに表される地点の位置とする。その際、プロセッサ23は、地物データの生成に用いられた画像の生成時に最も近いタイミングでGPS受信機12から受信した測位情報で表される位置を、車両2の自車位置とすることができる。あるいは、車両2の電子制御装置(ECU、図示せず)が車両2の自車位置を推定する場合には、プロセッサ23は、ECUから通信インターフェース21を介して、推定された車両2の自車位置を表す情報を取得してもよい。さらに、プロセッサ23は、ECUから、車両2の進行方向を表す情報を取得すればよい。また、画像上の各画素の位置は、カメラ11からその画素に表された物体への方位と1対1に対応する。そこで、地物データが全体画像または部分画像である場合、プロセッサ23は、その全体画像または部分画像の中心に対応する実空間の位置を、地物データに表される地点の位置として推定してもよい。この場合、プロセッサ23は、カメラ11からの方位、車両2の自車位置、車両2の進行方向及びカメラ11の撮影方向、画角及び設置高さといったパラメータに基づいて、その全体画像または部分画像の中心に対応する地点の位置を推定すればよい。また、地物データが画像から検出された地物の種類を表す情報を含む場合、プロセッサ23は、物体領域の重心に対応するカメラ11からの方位、車両2の位置、進行方向及びカメラ11のパラメータに基づいて、その物体領域に表された地物の位置を推定する。あるいはまた、プロセッサ23は、いわゆるStructure from Motion (SfM)により、地物データに表される地物の位置を推定してもよい。この場合、プロセッサ23は、互いに異なるタイミングで得られた二つの画像間で、オプティカルフローを利用して同じ地物が表された物体領域同士を対応付ける。そしてプロセッサ23は、その二つの画像のそれぞれが得られたときの車両2の位置及び進行方向と、カメラ11のパラメータと、各画像における物体領域の位置とに基づいて、三角測量により、地物の位置を推定できる。
【0031】
プロセッサ23は、地物データに表される地点または地物の位置を表す緯度及び経度を、地物データに表される地点または地物の位置を表す情報として地物データに含める。さらに、プロセッサ23は、道路地図を参照して、地物データに表される地点または地物の位置を含み、あるいは、その位置に最も近い道路区間であるリンクを特定する。そしてプロセッサ23は、特定したリンクの識別番号を、地物データに含めてよい。さらにまた、地物データが全体画像または部分画像である場合、サーバ3がその全体画像または部分画像に表された地物の位置を推定できるように、それら画像の生成時における車両2の位置及び進行方向及びカメラ11のパラメータを地物データに含めてもよい。
【0032】
プロセッサ23は、地物データを生成する度に、その生成した地物データを、通信インターフェース21を介して無線通信端末13へ出力する。これにより、地物データがサーバ3へ送信される。
【0033】
次に、地図更新区間決定装置の一例であるサーバ3について説明する。
図4は、地図更新区間決定装置の一例であるサーバ3のハードウェア構成図である。サーバ3は、通信インターフェース31と、ストレージ装置32と、メモリ33と、プロセッサ34とを有する。通信インターフェース31、ストレージ装置32及びメモリ33は、プロセッサ34と信号線を介して接続されている。サーバ3は、キーボード及びマウスといった入力装置と、液晶ディスプレイといった表示装置とをさらに有してもよい。
【0034】
通信インターフェース31は、通信部の一例であり、サーバ3を通信ネットワーク4に接続するためのインターフェース回路を有する。そして通信インターフェース31は、車両2と、通信ネットワーク4及び無線基地局5を介して通信可能に構成される。すなわち、通信インターフェース31は、プロセッサ34から受け取った収集指示を、通信ネットワーク4及び無線基地局5を介して車両2へ送信する。また、通信インターフェース31は、車両2から無線基地局5及び通信ネットワーク4を介して受信した地物データをプロセッサ34へわたす。
【0035】
ストレージ装置32は、記憶部の一例であり、例えば、ハードディスク装置または光記録媒体及びそのアクセス装置を有する。そしてストレージ装置32は、地図更新区間決定処理において使用される各種のデータ及び情報を記憶する。例えば、ストレージ装置32は、地図情報の生成または更新対象となる領域を表す情報、道路地図、及び、個々の道路区間を識別するための情報、個々の道路区間の接続関係を表す情報を記憶する。なお、道路地図は、上記のように、ナビゲーション装置で経路探索に利用される地図である。さらに、ストレージ装置32は、道路区間ごとに、地図フラグ、自動運転走行コスト、手動運転走行コスト、交通量及び地図整備コストを記憶する。さらにまた、ストレージ装置32は、地図情報の生成または更新に利用可能な、地図整備コストの総量の目標値(以下、目標整備コストとよぶ)を記憶する。さらにまた、ストレージ装置32は、交通量と、評価値の算出に利用される、交通量に応じた重み係数の関係を表すテーブルを記憶する。なお、重み係数については後述する。さらにまた、ストレージ装置32は、車両2から受信した地物データを記憶する。さらにまた、ストレージ装置32は、プロセッサ34上で実行される、地図更新区間決定処理を実行するためのコンピュータプログラムを記憶してもよい。
【0036】
個々の道路区間は、例えば、道路地図に示される個々のリンクまたはノードとすることができる。すなわち、交差点あるいはインターチェンジといった、複数の道路が交差、分岐または合流する地点(以下、便宜上、交差合流地点と呼ぶ)から、隣接する交差合流地点までの道路の区間が、一つの道路区間として設定される。さらに、そのような道路の区間が所定距離よりも長い場合には、その区間は複数の道路区間として分割されてもよい。さらに、交差合流地点なども一つの道路区間として設定される。
【0037】
地図フラグは、その地図フラグに対応する道路区間を自動運転にて車両が走行するために、地図情報が利用可能か否かを表すフラグである。すなわち、地図フラグが地図情報を利用可能であることを表す値(例えば、1)を有する場合、地図情報には、その地図フラグに対応する道路区間について、車両の自動運転が可能な程度に地物に関する情報が含まれていることを表す。一方、地図フラグが地図情報を利用不可能であることを表す値(例えば、0)を有する場合、地図情報には、その地図フラグに対応する道路区間について、車両の自動運転を実行するために必要な地物に関する情報が含まれていないことを表す。
【0038】
自動運転走行コスト及び手動運転走行コストは、ドライバの負荷が大きいほど、大きな値となるように道路区間ごとに設定される。自動運転走行コストは、地図情報を利用して車両が対応する道路区間を自動運転走行したときのドライバの負荷を表し、例えば、自動運転走行における単位時間当たりのコストに、対応する道路区間を通過するのに要する平均時間を乗じた値として設定される。なお、自動運転走行時のドライバの負荷はあまり大きくないため、自動運転走行コストは0であってもよい。また、手動運転走行コストは、ドライバの手動運転にて車両が対応する道路区間を走行したときのドライバの負荷を表し、例えば、手動運転走行における単位時間当たりのコストに、対応する道路区間を通過するのに要する平均時間を乗じた値として設定される。一般に、ドライバにとって、手動運転走行の負荷は自動運転走行の負荷よりも大きいので、同じ道路区間についての手動運転走行コストは自動運転走行コストよりも大きい。交差合流地点を含む道路区間については、その道路区間に接続される車両が通行可能な道路の組み合わせごとに、地図フラグ、自動運転走行コスト及び手動運転走行コストが設定される。例えば、交差点を含む道路区間については、その交差点と接続される道路ごとに、その道路から直進する方向、右折する方向及び左折する方向のそれぞれについて、地図フラグ、自動運転走行コスト及び手動運転走行コストが設定される。ただし、交差点に接続する何れかの道路について、直線、右折及び左折のうちの何れかの方向への進入が禁止されている場合には、その進入禁止となる方向については、地図フラグ、自動運転走行コスト及び手動運転走行コストは設定されなくてよい。
【0039】
さらにまた、地図整備コストは、対応する道路区間について地図情報を生成または更新するために要するコストを表す。交差合流地点を含まない道路区間の地図整備コストは、対応する道路区間が長いほど、あるいは、対応する道路区間に含まれる車線の数が多いほど、大きな値に設定される。また、交差合流地点を含む道路区間の地図整備コストは、その交差合流地点において接続され、かつ、その交差合流地点を車両が通行可能な道路の組み合わせごとに、その組み合わせの車線数に比例した値として設定される。
【0040】
さらにまた、個々の道路区間の交通量は、例えば、交通情報サーバから、通信ネットワーク4を介して取得される。
【0041】
メモリ33は、記憶部の他の一例であり、例えば、不揮発性の半導体メモリ及び揮発性の半導体メモリを有する。そしてメモリ33は、地図更新区間決定処理の実行中に生成される各種データなどを一時的に記憶する。
【0042】
プロセッサ34は、制御部の一例であり、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ34は、論理演算ユニットあるいは数値演算ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。そしてプロセッサ34は、地図更新区間決定処理を含む地図更新処理を実行する。
【0043】
図5は、地図更新区間決定処理を含む、地図更新処理に関連するプロセッサ34の機能ブロック図である。プロセッサ34は、選択部41と、評価値算出部42と、特定部43と、収集指示部44と、地図更新部45とを有する。プロセッサ34が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ34上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、プロセッサ34が有するこれらの各部は、プロセッサ34に設けられる、専用の演算回路であってもよい。なお、プロセッサ34が有するこれらの各部のうち、選択部41、評価値算出部42及び特定部43が、地図更新区間決定処理に関連する処理を実行する。
【0044】
選択部41は、地図情報の生成または更新の対象となる領域に出入り可能な複数の地点から、二つの地点の組み合わせを複数選択する。そして選択部41は、選択した二つの地点の組み合わせごとに、その領域に含まれる複数の道路区間の中から、その二つの地点を結ぶ一連の道路区間を、その二つの地点を結ぶルートとして選択する。
【0045】
選択部41は、道路地図を参照することで、地図情報の生成または更新の対象となる領域に出入り可能な複数の地点を特定することができる。そして選択部41は、その複数の地点から任意に二つの地点の組み合わせを複数選択する。その際、選択部41は、可能な全ての組み合わせを選択してもよく、あるいは、その領域に出入り可能な複数の地点のうち、所定の条件を満たす地点のなかから可能な全ての二つの地点の組み合わせを選択してもよい。所定の条件は、例えば、所定の道路規格を満たす道路により出入り可能な地点であることとすることができる。あるいは、所定の条件は、交通量が所定の基準量以上となる道路により出入り可能な地点であることであってもよい。
【0046】
選択部41は、選択した二つの地点の組み合わせごとに、その二つの地点を結ぶルートを、道路地図を参照して、ダイクストラ法といった所定の経路探索手法に従って探索する。これにより、選択した二つの地点の組み合わせのそれぞれについて、その二つの地点を結ぶ最短なルート、あるいは、最も短い時間でその二つの地点間を通行可能と想定されるルートが選択される。そして選択部41は、選択した二つの地点の組み合わせごとに、その二つの地点を結ぶルート上に位置する一連の道路区間を選択する。
【0047】
選択部41は、選択した二つの地点の組み合わせのそれぞれについて、その二つの地点を結ぶルート上に位置する一連の道路区間を表す情報を評価値算出部42及び特定部43へ通知する。
【0048】
評価値算出部42は、選択部41から通知された二つの地点の組み合わせごとに、その二つの地点を結ぶルートについて地図情報を整備することによるドライバの利便性の向上度合いを表す評価値を算出する。評価値算出部42は、個々の二つの地点の組み合わせに対して同じ処理を実行すればよいので、以下では、一つの組み合わせに対する評価値算出処理について説明する。
【0049】
評価値算出部42は、地図フラグを参照して、二つの地点間のルートに含まれる個々の道路区間のうちの未整備区間を、評価値算出の際に参照される道路区間として特定する。なお、現時点では未整備区間であっても、特定部43により、地図情報の生成または更新の対象となる道路区間として既に選択されている道路区間については、評価値の算出において参照しない。以下では、評価値算出の際に参照される道路区間、すなわち、地図情報の生成または更新対象の候補となる道路区間を、単に候補区間と呼ぶことがある。
【0050】
評価値算出部42は、特定した候補区間のそれぞれについての、手動運転走行コストから自動運転走行コストを減じて得られる差を、地図整備コストに対する交通量の比で重み付けした値の総和を評価値として算出する。すなわち、評価値は、ルート上に位置する個々の候補区間についての次式で表される個別区間評価値Eiの総和として算出される。
Ei=(Mc-Ac)*Tv/Sc
ここで、パラメータAcは、着目する候補区間についての自動運転走行コストを表す。また、パラメータMcは、着目する候補区間についての手動運転走行コストを表す。さらに、パラメータTvは、着目する候補区間の交通量に応じた重み係数を表す。パラメータTvは、例えば、着目する候補区間の交通量が多いほど、大きな値に設定される。そしてパラメータScは、着目する候補区間についての地図整備コストを表す。なお、上記の式に示されるように、自動運転走行コストが0に設定される場合には、個別区間評価値Eiは、手動運転走行コストを、地図整備コストに対する交通量の比で重み付けした値として算出される。
【0051】
手動運転走行コストと自動運転走行コストの差が大きいほど、あるいは、交通量が多いほど、個別区間評価値Eiは大きな値となる。すなわち、地図情報が生成または更新されることで、自動運転走行が可能になることでのドライバの負担の減少度合いが大きい道路区間ほど、あるいは、自動運転走行のメリットを享受できる車両が多い道路区間ほど、個別区間評価値Eiは大きな値となる。また、地図整備コストが小さい道路区間ほど、個別区間評価値Eiは大きな値となる。したがって、評価値が大きいルートほど、小さい地図整備コストで地図情報が生成または更新されることによるドライバの利便性の向上度合いが大きく、かつ、整備効率が高くなる。
【0052】
評価値算出部42は、二つの地点の組み合わせごとに、算出した評価値を特定部43へ通知する。
【0053】
特定部43は、選択部41から通知された二つの地点の組み合わせのうち、評価値が高い方から順に、所定数の組み合わせのそれぞれのルート上に位置する未整備区間を、地図情報の生成または更新の対象となる道路区間として特定する。
【0054】
そのために、特定部43は、評価値算出部42から通知された、二つの地点の組み合わせのそれぞれの評価値のうちの最大値に対応する組み合わせ、すなわち、ドライバの利便性の向上度合いが最も高くなる組み合わせを特定する。そして特定部43は、特定した組み合わせについてのルート上に位置する各未整備区間を、地図情報の生成または更新の対象となる道路区間として特定する。
【0055】
特定部43は、地図情報の生成または更新の対象として特定した各道路区間の地図整備コストの総和を、整備コスト累積値として算出する。そして特定部43は、整備コスト累積値が目標整備コスト未満となるか否か判定する。整備コスト累積値が目標整備コストに達している場合、特定部43は、地図情報の生成または更新の対象となる道路区間の特定を終了する。一方、整備コスト累積値が目標整備コスト未満である場合、特定部43は、その特定された各道路区間を評価値算出部42へ通知する。そして特定部43は、その特定された各道路区間、及び、評価値が最大となる二つの地点の組み合わせを、評価値の算出対象から除外した上で、評価値算出部42に、二つの地点の組み合わせごとの評価値を再度算出させる。
【0056】
特定部43は、二つの地点の組み合わせごとに再算出された評価値に基づいて、上記の処理を再度実行することで、地図情報の生成または更新の対象となる道路区間をさらに特定する。そして特定部43は、特定された各道路区間の地図整備コストの総和を、整備コスト累積値に加算する。特定部43は、整備コスト累積値が目標整備コストに達するまで、上記の処理を繰り返す。そして特定部43は、整備コスト累積値が目標整備コスト以上となった時点で、地図情報の生成または更新の対象となる道路区間の特定を終了する。
【0057】
図6は、地図情報の生成または更新対象となる道路区間選択の概要の説明図である。図6に示される例では、地図情報の生成または更新の対象となる領域600には、出入り可能な6カ所の地点a~fが存在する。そのため、選択部41により、それら6カ所の地点a~fから選択した二つの地点の組み合わせごとに、その二つの地点を結ぶルートが選択される。そして評価値算出部42により、二つの地点の組み合わせごとに、その二つの地点を結ぶルートについて評価値が算出される。この例では、地点aと地点dとを結ぶルート601についての評価値が最大であるとする。そのため、特定部43により、ルート601上に位置する各道路区間611、612、613が、地図情報の生成または更新の対象となる道路区間として選択される。この例では、道路区間611~613の地図整備コストの総和となる整備コスト累積値が目標整備コストに達していないとする。そのため、ルート601及びルート601上の各道路区間を評価値の算出対象外として、残りの二つの地点の組み合わせのそれぞれについて評価値が再算出される。残りの二つの地点の組み合わせのうち、地点aと地点fとを結ぶルート602についての評価値が最大であるとする。この場合、ルート602上に位置する各道路区間611、612、614、615、616のうち、道路区間614~616が、地図情報の生成または更新の対象の道路区間として新たに追加される。そして道路区間611~616の地図整備コストの総和となる整備コスト累積値が目標整備コストに達していると、特定部43は、地図情報の生成または更新の対象となる道路区間の選択を終了する。
【0058】
特定部43は、地図情報の生成または更新対象となる道路区間として特定された道路区間を識別する情報を収集指示部44へ通知する。
【0059】
収集指示部44は、特定部43から通知された、地図情報の生成または更新対象となる道路区間について、地物データを収集することを指示する収集指示を生成する。すなわち、収集指示部44は、地図情報の生成または更新対象となる道路区間を識別する情報が収集指示に含まれるように収集指示を生成する。そして収集指示部44は、生成した収集指示を、通信インターフェース31を介して車両2へ送信する。
【0060】
地図更新部45は、地図情報の生成または更新対象となる各道路区間について、収集された地物データに表される地物に関する情報を、ストレージ装置32から読み込んだ地図情報に追加することで、その地図情報を生成または更新する。例えば、地図更新部45は、地物データが全体画像または部分画像である場合、車両2に搭載されたデータ取得装置14と同様の処理を実行して、全体画像または部分画像から地物及びその種類を検出するとともに、検出した地物の位置を推定する。そして地図更新部45は、所定範囲内に位置する、同じ種類の地物について、収集した地物データに含まれるその地物の位置または上記のように推定した地物の位置の平均値を、その地物の位置として特定する。そして地図更新部45は、位置を特定した地物ごとに、その地物の種類及び特定した位置を表す情報を地図情報に含めることでその地図情報を更新する。
【0061】
図7は、サーバ3における、地図更新区間決定処理の動作フローチャートである。サーバ3のプロセッサ34は、以下に示される動作フローチャートに従って地図更新区間決定処理を実行すればよい。
【0062】
プロセッサ34の選択部41は、地図情報の生成または更新の対象となる領域に出入り可能な複数の地点から、二つの地点の組み合わせを複数選択する(ステップS101)。そして選択部41は、選択した二つの地点の組み合わせごとに、その二つの地点を結ぶルートを探索し、探索したルート上に位置する一連の道路区間を選択する(ステップS102)。
【0063】
プロセッサ34の評価値算出部42は、二つの地点の組み合わせごとに、その二つの地点を結ぶルートについて地図情報を生成または更新することで得られるドライバの利便性の向上度合いを表す評価値を算出する(ステップS103)。
【0064】
プロセッサ34の特定部43は、算出された評価値のうちの最大値となるルート上に位置する各道路区間のうちの未整備区間を、地図情報の生成または更新の対象となる道路区間として選択する(ステップS104)。そして特定部43は、これまでに特定された、地図情報の生成または更新の対象となる道路区間の整備コスト累積値が目標整備コスト未満となるか否か判定する(ステップS105)。整備コスト累積値が目標整備コスト未満となる場合(ステップS105-Yes)、プロセッサ34は、これまでに特定された、地図情報の生成または更新の対象となる道路区間及び二つの地点の組み合わせを除いてステップS103以降の処理を繰り返す。
【0065】
一方、整備コスト累積値が目標整備コストに達した場合(ステップS105-No)、プロセッサ34は、地図更新区間決定処理を終了する。地図更新区間決定処理の終了後、プロセッサ34の収集指示部44は、地図情報の生成または更新対象となる道路区間について、地物データを収集することを指示する収集指示を生成し、生成した収集指示を、通信インターフェース31を介して車両2へ送信する。また、地図情報の生成または更新対象となる道路区間の地物データが所定量以上収集されると、プロセッサ34の地図更新部45は、地図情報の生成または更新対象となる各道路区間について収集された地物データに表される地物に関する情報を地図情報に追加する。
【0066】
以上に説明してきたように、この地図更新区間決定装置は、地図情報を生成または更新する対象となる領域に出入り可能な二つの地点の組み合わせごとに、その二つの地点を結ぶ一連の道路区間をその二つの地点を結ぶルートとして選択する。さらに、この地図更新区間決定装置は、その二つの地点の組み合わせごとに、その二つの地点を結ぶルートについて地図情報が生成または更新されることによるドライバの利便性の向上度合いを表す評価値を算出する。そしてこの地図更新区間決定装置は、算出された評価値が高い方から順に、地図整備コストの累積値が目標整備コストに達するまで、二つの地点間のルート上に位置する各未整備区間を、地図情報の生成または更新対象となる道路区間として特定する。そのため、この地図更新区間決定装置は、地図情報の生成または更新対象となる道路区間をドライバが自動運転制御のメリットを得易くなるように決定することができる。また、この地図更新区間決定装置は、全ての道路区間の組み合わせについて評価値を算出しなくても、地図情報の生成または更新対象となる道路区間を決定できるので、その道路区間の決定に用いられるハードウェアリソースを削減できる。
【0067】
変形例によれば、評価値算出部42は、地図整備コストを考慮せずに評価値を算出してもよい。例えば、評価値算出部42は、ルート上に位置する個々の候補区間についての次式で表される個別区間評価値Eiの総和として評価値を算出してもよい。
Ei=(Mc-Ac)*Tv
この変形例でも、地図更新区間決定装置は、上記の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0068】
他の変形例によれば、評価値算出部42は、ルート上に位置する個々の候補区間についての個別区間評価値Eiを、次式に従って算出してもよい。
Ei=(Ac-Mc)*Tv/Sc
【0069】
この場合には、(Ac-Mc)の項が負になると考えられることから、評価値が低いほど、地図情報を生成または更新することで得られるドライバの利便性の向上度合いが高くなる。したがって、選択部41により選択された二つの地点の組み合わせのそれぞれの評価値のうちの最小値に対応する組み合わせが、ドライバの利便性の向上度合いが最も高くなる組み合わせとなる。そこでこの変形例では、特定部43は、整備コスト累積値が目標整備コストに達するまで、評価値が最小となる組み合わせについてのルートから順に、地図情報の生成または更新の対象となる道路区間を含むルートを特定すればよい。
【0070】
上記の実施形態または変形例による、サーバ3のプロセッサ34により実行される各部の処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムは、半導体メモリ装置、磁気記録媒体あるいは光記録媒体に記録されて配布されてもよい。
【0071】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0072】
1 地図更新システム
2 車両
11 カメラ
12 GPS受信機
13 無線通信端末
14 データ取得装置
21 通信インターフェース
22 メモリ
23 プロセッサ
3 サーバ
31 通信インターフェース
32 ストレージ装置
33 メモリ
34 プロセッサ
41 選択部
42 評価値算出部
43 特定部
44 収集指示部
45 地図更新部
4 通信ネットワーク
5 無線基地局
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7