(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】磁石保持装置、磁化装置および着磁方法
(51)【国際特許分類】
H01F 7/02 20060101AFI20241008BHJP
H01F 13/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H01F7/02 Z
H01F13/00
(21)【出願番号】P 2022062245
(22)【出願日】2022-04-04
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 翔馬
(72)【発明者】
【氏名】潮崎 正一
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 文兵
(72)【発明者】
【氏名】塚野 聖仁
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-210386(JP,A)
【文献】登録実用新案第3022100(JP,U)
【文献】特開2011-104307(JP,A)
【文献】国際公開第2018/109824(WO,A1)
【文献】特開2021-144015(JP,A)
【文献】実開平06-087861(JP,U)
【文献】特開2009-175027(JP,A)
【文献】国際公開第2020/153389(WO,A1)
【文献】中国実用新案第201366190(CN,Y)
【文献】米国特許出願公開第2013/0141193(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/02、13/00
G01N 27/83
A61N 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石を保持することが可能な、磁石保持装置であって、
前記磁石保持装置は、開閉可能な環状部と、前記環状部が閉じた状態を保持することができる開閉機構とを備え、
前記環状部
は、それぞれが少なくとも1つの磁石を保持及び脱着可能な複数の単位部品を備え、
各前記単位部品は、周方向に隣接する別の前記単位部品と回動可能に連結され、前記単位部品の数は
前記周方向及び径方向に可変である、
磁石保持装置。
【請求項2】
前記磁石は円柱形で
ある、請求項1に記載の磁石保持装置。
【請求項3】
前記環状部に含まれる前記単位部品の数
を前記周方向に変更することによって、前記環状部の大きさを変更することができる、請求項
1に記載の磁石保持装置。
【請求項4】
前記磁石の数を変更することにより、前記磁石による磁化の大きさを変更することができる、請求項
1に記載の磁石保持装置。
【請求項5】
前記開閉機構は、前記環状部の
前記周方向
の両端に設けられた連結部品を備える、請求項1に記載の磁石保持装置。
【請求項6】
請求項1に記載の磁石保持装置と、前記磁石保持装置に配置される磁石とを備える、磁化装置。
【請求項7】
請求項
6に記載の磁化装置を用いて対象物を着磁する着磁方法であって、
前記環状部が開いた状態で前記環状部内に前記対象物を配置する、配置ステップと、
前記配置ステップの後に、前記開閉機構によって前記環状部を閉じることにより、前記磁化装置を前記対象物に装着する、装着ステップと、
前記磁化装置が前記対象物に装着された状態で、前記磁化装置を前記対象物に対して相対的に移動させる、移動ステップと、
前記移動ステップの後に、前記開閉機構によって前記環状部を開く、開放ステップと、
前記開放ステップの後に、前記磁化装置を前記対象物から取り外す、取り外しステップと、
を備える、着磁方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁石保持装置、磁化装置および着磁方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配管の腐敗等による減肉の検出のために、磁気による測定を用いることができる。まず、配管をあらかじめ磁化し、減肉前の磁束密度を測定しておく。その後、検査の際には、配管周辺の磁束密度を再び測定し、磁束密度の変化に基づいて配管の減肉を検出することができる。
【0003】
図9に、このような測定方法において用いられる磁石M1の構成例を示す。磁石M1は、2個の半ドーナツ形状の部品から構成される。
【0004】
図10に、磁石M1を備える磁化装置300の構成例を示す。外殻部品310および樹脂部品320によって磁石M1が固定される。外殻部品310は、バックル330およびヒンジ340によって開閉可能であり、
図10(a)はバックル330を開放させた状態を示し、
図10(b)はバックル330を係合させた状態を示す。ハンドル350を把持して磁化装置300を開閉および移動させることができる。
【0005】
磁石M1は、配管の大きさに応じたサイズで使用するために、様々なサイズのものが必要となる。特許文献1には、大型の磁石を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の技術では、様々な磁化要件に適した磁化装置を提供するのが困難であるという課題があった。
【0008】
たとえば、配管の径や、必要な磁化能力に応じて、様々な構成の磁石を準備する必要があるが、特許文献1の方法では、配管ごとに磁石を作り直す必要があり、磁石の構成を柔軟に変更することが困難である。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、様々な磁化要件に適した磁化装置をより容易に提供することを目的とする。また、当該磁化装置に関連する磁石保持装置および着磁方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る磁石保持装置の一例は、
磁石を保持することが可能な、磁石保持装置であって、
前記磁石保持装置は、開閉可能な環状部と、前記環状部が閉じた状態を保持することができる開閉機構とを備え、
前記環状部には磁石が配置可能であり、配置される磁石の数は可変である。
【0011】
一例において、前記磁石は円柱形であり、複数の前記磁石が前記環状部の周方向に沿って配置可能である。
【0012】
一例において、
前記環状部は、複数の単位部品を備え、
各前記単位部品は、前記磁石を保持することができ、
各前記単位部品は、隣接する別の前記単位部品と回動可能に連結される。
【0013】
一例において、前記環状部に含まれる前記単位部品の数は可変であり、これによって、前記環状部の大きさを変更することができる。
【0014】
一例において、前記磁石の数を変更することにより、前記磁石による磁化の大きさを変更することができる。
【0015】
一例において、前記開閉機構は、前記環状部の周方向両端に設けられた連結部品を備える。
【0016】
本発明に係る磁化装置の一例は、上述の磁石保持装置と、前記磁石保持装置に配置される磁石とを備える。
【0017】
本発明に係る着磁方法の一例は、上述の磁化装置を用いて対象物を着磁する着磁方法であって、
前記環状部が開いた状態で前記環状部内に前記対象物を配置する、配置ステップと、
前記配置ステップの後に、前記開閉機構によって前記環状部を閉じることにより、前記磁化装置を前記対象物に装着する、装着ステップと、
前記磁化装置が前記対象物に装着された状態で、前記磁化装置を前記対象物に対して相対的に移動させる、移動ステップと、
前記移動ステップの後に、前記開閉機構によって前記環状部を開く、開放ステップと、
前記開放ステップの後に、前記磁化装置を前記対象物から取り外す、取り外しステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る磁石保持装置、磁化装置および着磁方法によれば、様々な磁化要件に適した磁化装置をより容易に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態1に係る磁化装置の構成例。
【
図4】隣接する単位部品の連結について説明する図。
【
図6】実施形態1に係る着磁方法を説明するフローチャート。
【
図8A】
図1の磁化装置によって着磁を行った後の、対象物の軸方向における磁束密度の分布(軸を含む平面による断面)。
【
図8B】
図1の磁化装置によって着磁を行った後の、対象物の軸に垂直な方向における磁束密度の分布(軸に垂直な平面による断面)。
【
図8C】比較例として、
図10の磁化装置によって着磁を行った後の、対象物の軸方向における磁束密度の分布(軸を含む平面による断面)。
【
図8D】比較例として、
図10の磁化装置によって着磁を行った後の、対象物の軸に垂直な方向における磁束密度の分布(軸に垂直な平面による断面)。
【
図8E】実施形態1の第1変形例に係る磁化装置によって着磁を行った後の、対象物の軸方向における磁束密度の分布(軸を含む平面による断面)。
【
図8F】実施形態1の第1変形例に係る磁化装置によって着磁を行った後の、対象物の軸に垂直な方向における磁束密度の分布(軸に垂直な平面による断面)。
【
図8G】実施形態1の第2変形例に係る磁化装置によって着磁を行った後の、対象物の軸方向における磁束密度の分布(軸を含む平面による断面)。
【
図8H】実施形態1の第2変形例に係る磁化装置によって着磁を行った後の、対象物の軸に垂直な方向における磁束密度の分布(軸に垂直な平面による断面)。
【
図9】従来の測定方法において用いられる磁石の構成例。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
[実施形態1]
図1に、本発明の実施形態1に係る磁化装置100の構成例を示す。また、
図2は、磁化装置100を
図1とは異なる角度から見た図である。
【0021】
磁化装置100は、磁石保持装置10と、複数の磁石Mとを備える。磁石保持装置10は、複数の磁石Mを保持することが可能であり、磁石Mは磁石保持装置10に配置される。磁石Mはたとえば永久磁石であり、いわゆる汎用磁石であってもよい。本実施形態では、磁石Mは円柱形であるが、他の形状としてもよい。
【0022】
磁石保持装置10は、開閉可能な環状部20を備える。本実施形態では環状部20は2層からなり、外側環状部20aおよび内側環状部20bを含む。環状部20は、複数の単位部品11を備えており、各単位部品11が環状に連結されることによって構成される。各単位部品11は、それぞれ磁石Mを保持することができる。このようにして、環状部20には磁石Mが配置可能となっており、とくに、複数の磁石Mが、環状部20の周方向に沿って配置可能である。
【0023】
なお、本明細書において、「周方向」「径方向」「軸方向」とは、それぞれ、環状部20が円環をなすように連結された場合の、当該円環の周方向、径方向および軸方向に対応する。ただし、環状部20が真円をなさない場合であっても、これらの方向は適宜定義可能である。たとえば、環状部20が平面上の環をなすように配置された場合には、その平面に垂直な方向を軸方向とすることができ、当該平面内の所定位置(たとえば環状部20の内側の点)を基準として径方向および周方向を定義することができる。
【0024】
磁石保持装置10は、開閉機構を備える。開閉機構は連結部品30を備える(より厳密には、本実施形態では、連結部品30のうち少なくとも1つが、開閉機構としても作用する)。連結部品30は、環状部20の周方向両端に設けられ、環状部20が閉じた状態を保持することができるように構成される。
【0025】
図1および
図2の例では、外側環状部20aの周方向両端を連結部品30aが連結して固定し、これによって外側環状部20aが閉じられる。同様に、内側環状部20bの周方向両端を連結部品30bが連結して固定し、これによって内側環状部20bが閉じられる。
【0026】
連結部品30は、開閉機構としての機能以外の機能を有してもよい。本実施形態では、連結部品30cが、外側環状部20aおよび内側環状部20bを互いに連結して固定する。また、本実施形態では、開閉機構としての連結部品30aおよび連結部品30bと、複数の環状部を互いに連結するための連結部品30cとが、同一の構造を有する連結部品であるが、連結部品30aおよび連結部品30bと、連結部品30cとを、異なる構造の連結部品としてもよい。すなわち、環状部における周方向の連結および径方向の連結を、異なる構造の連結部品で実装することもできる。
【0027】
図3に、単位部品11の構成例を示す。
図3(a)は斜視図であり、
図3(b)は
図3(a)のIIIB方向から見た図(上面図)であり、
図3(c)は
図3(a)のIIIC方向から見た図(正面図)であり、
図3(d)は
図3(a)のIIID方向から見た図(側面図)である。
【0028】
単位部品11は、台座12と、固定部品13と、ヒンジ14と、固定ネジ15とを備える。台座12、固定部品13、ヒンジ14、固定ネジ15は、たとえば非磁性体で構成され、具体例としてステンレスで構成される。固定ネジ15が台座12および固定部品13を固定し、これによって台座12と固定部品13との間に磁石Mが固定される。
【0029】
なお、円柱形の磁石Mを用いる場合には、磁石Mの磁化の方向は円柱の軸方向とすることができるが、磁石Mの磁化の方向を環状部20の軸方向と一致させると好適である。
【0030】
図4を用いて、隣接する単位部品11の連結について説明する。ヒンジ14によって、単位部品11は、隣接する別の単位部品11と、回動可能に連結される。たとえば、ヒンジ14には
図3(a)および
図3(b)に示す連結孔14aが形成され、この連結孔14aに連結ネジ16が挿通される。また、台座12にも、
図3(a)に示す連結孔12aが形成される。
【0031】
図4に示すように、連結ネジ16は、第1の単位部品11の連結孔14aを介して、隣接する第2の単位部品11の連結孔12aと螺合する。このようにして2つの単位部品11が締結され連結される。同様にして、より多くの単位部品11が連続的に連結され、任意の数の単位部品11で環状部20を構成することができる。
【0032】
隣接する単位部品11は、連結ネジ16を取り外すことによって、連結を解除することができる。このように、各単位部品11が着脱可能に連結されているので、環状部20に含まれる単位部品11の数は可変であり、これによって、環状部20の大きさ(たとえば径)を変更することができる。
【0033】
図3の例では、連結孔14aおよび連結孔12aが2個ずつ現れているが、
図3に現れない位置のものも含め、連結孔14aおよび連結孔12aはそれぞれ4個ずつ設けられる。すなわち、
図3では、ヒンジ14と台座12とが重なる位置の連結孔14aおよび連結孔12aは隠れており見えないが、
図3(c)に示すように、連結ネジ16がヒンジ14および台座12を締結固定するために用いられる。
【0034】
図5に、連結部品30の構成例を示す。
図5(a)は斜視図であり、
図5(b)は
図5(a)のVB方向から見た図(上面図)であり、
図5(c)は
図5(a)のVC方向から見た図(正面図)であり、
図5(d)は
図5(a)のVD方向から見た図(側面図)である。
【0035】
連結部品30は、2本の連結ネジ31と、2つの支持部材32と、2本の開閉ネジ33とを備える。連結部品30は、たとえば全体が非磁性体で構成され、具体例としてステンレスで構成される。
【0036】
開閉ネジ33がそれぞれ支持部材32と螺合し、これらの支持部材32を相対的に固定する。また、支持部材32には連結ネジ31が挿通可能となっている。
図3および
図4に示すように、単位部品11の固定部品13には連結孔13aが形成されており、連結ネジ31は連結孔13aと螺合することができる。2本の連結ネジ31が、それぞれ異なる単位部品11に締結されることにより、それらの単位部品11が互いに連結される。なお、2つの支持部材32のうち開閉ネジ33の頭部により近い方(支持部材32a)については、開閉ネジ33と螺合するネジ穴に代えて、単に開閉ネジ33を挿通させるための貫通穴(いわゆるバカ穴)を備えるものであってもよい。
【0037】
図6および
図7を用いて、磁化装置100を用いて対象物を着磁する着磁方法について説明する。
図6は、本実施形態に係る着磁方法を説明するフローチャートである。また、
図7は、
図6の着磁方法の途中図である。
図7に示すように、着磁すべき範囲を示すマーキング201を、あらかじめ配管等の対象物200に付しておくと好適である。
【0038】
本実施形態に係る着磁方法は、
図6に示す各ステップを備える。まず、磁化装置100の使用者は、環状部20が開いた状態で、環状部20内に対象物200を配置する(ステップS1、配置ステップ)。対象物200はたとえば配管であり、磁化装置100による磁化作用の対象となる。
【0039】
ステップS1の後に、使用者は、連結部品30によって環状部20を閉じることにより、磁化装置100を対象物200に装着する(ステップS2、装着ステップ)。たとえば、連結部品30の2本の連結ネジ31を、それぞれ対応する単位部品11に締結し、これらの連結ネジ31を2本の開閉ネジ33により固定する。なお、磁化装置100の装着位置は、マーキング201の一端とすることができる。
【0040】
ステップS2の後に、磁化装置100が対象物200に装着された状態で、磁化装置100を対象物200に対して摺動させることにより、相対的に移動させる(ステップS3、移動ステップ)。移動の方向は、たとえば環状部20の軸方向または対象物200の軸方向である(本実施形態ではこれらの方向は一致する)。この移動は、マーキング201の他端まで行われる。
図7は、このステップS3の途中の状態を表す。ステップS1およびステップS3において、磁石Mが対象物200に対して配置され、またその近傍を通過することにより、対象物200が磁化される。
【0041】
このように、対象物200に沿って、所定の軸方向範囲において磁化装置100を移動させることにより、その軸方向範囲において対象物200を磁化することができる。また、複数の磁石Mを保持する環状部を、対象物200の周方向に沿って巻きつけるように装着することにより、対象物200の周方向において略均一に磁化することができる。
【0042】
ステップS3の後に、使用者は、連結部品30によって環状部20を開く(ステップS4、開放ステップ)。より具体的には、連結部品30の2本の開閉ネジ33または少なくとも一方の連結ネジ31を取り外す。
【0043】
ステップS4の後に、使用者は、磁化装置100を対象物200から取り外す(ステップS5、取り外しステップ)。これによって本実施形態に係る着磁方法が終了する。
【0044】
本実施形態において、上述のように環状部20には磁石Mが配置可能であるが、配置される磁石Mの数は可変であり、磁化要件に応じて適宜変更することができる。たとえば、環状部20に含まれる単位部品11の数が可変なので、対象物200の径が大きいまたは小さい場合には、その径に応じて単位部品11の数を増減することにより、対象物200に適合するサイズの磁化装置100を構成することができる。
【0045】
また、同じサイズの対象物200に対して、磁石Mの数を変更することにより、磁石Mによる磁化の大きさを変更することができる。たとえば、同じサイズの対象物200に対して磁化を小さくすべき場合には、多数の単位部品11のうち一部に磁石Mを配置しないようにすると、磁石Mの数を減少させ、磁化装置100の磁化能力を弱めることができる。
【0046】
また、同じサイズの対象物200に対して磁化を大きくすべき場合には、単位部品11を周方向のみならず径方向にも連結することにより、磁石Mの数を増加させ、全体として磁化装置100の磁化能力を強めることができる。
図1および
図2の例では、径方向に2層の単位部品11が配置されているが、これを単層とすることにより磁化能力を弱めることができ、3層以上とすることにより磁化能力を強めることができる。
【0047】
以上説明するように、実施形態1に係る磁石保持装置10および磁化装置100によれば、様々な磁化要件に適した磁化装置をより容易に提供することができる。
【0048】
以下、
図8A~
図8Hを用いて、本発明の効果の具体例を説明する。これらの図は、対象物200の軸方向における磁束密度の分布を示すものであり、モデルによる電磁界解析の結果として得られたものである。図中のz方向は対象物200の軸方向を表し、x方向およびy方向は対象物200の径方向を表す。対象物200の断面において、磁束密度が高くなるにつれ、グレーが暗くなる。
【0049】
図8Aおよび
図8Bは、実施形態1に係る磁化装置100によって着磁を行った後の例を示す。とくに、
図8Aは、対象物200の軸を含む平面による断面における、対象物の軸方向における磁束密度の分布を示し、
図8Bは、対象物200の軸に垂直な平面による断面における、対象物の軸に垂直な方向における磁束密度の分布を示す。
【0050】
図8Cおよび
図8Dは、比較例として、
図10に示す磁化装置300によって着磁を行った後の例を示す。とくに、
図8Cは、対象物200の軸を含む平面による断面における、対象物の軸方向における磁束密度の分布を示し(
図8Aと対応する)、
図8Dは、対象物200の軸に垂直な平面による断面における、対象物の軸に垂直な方向における磁束密度の分布を示す(
図8Bと対応する)。
【0051】
これらの結果より、実施形態1に係る磁化装置100は、比較例に係る磁化装置300と同程度の着磁能力を有していることがわかる。
【0052】
図8Eおよび
図8Fは、実施形態1の第1変形例に係る磁化装置によって着磁を行った後の例を示す。第1変形例では、環状部20が単層となっている(すなわち外側環状部20aが省略されている)。
図8Eは、対象物200の軸を含む平面による断面における、対象物の軸方向における磁束密度の分布を示し、
図8Fは、対象物200の軸に垂直な平面による断面における、対象物の軸に垂直な方向における磁束密度の分布を示す。
【0053】
図8Aと
図8Eとを比較し、
図8Bと
図8Fとを比較すると、環状部20の層が減少し、したがって磁石Mの数が減少したことにより、磁化能力が弱まったことがわかる。このように、要求される磁化の大きさに応じて、磁化能力が容易に調整可能である。
【0054】
図8Gおよび
図8Hは、実施形態1の第2変形例に係る磁化装置によって着磁を行った後の例を示す。第2変形例では、環状部20が3層となっている(すなわち外側環状部20aのさらに外側に追加の層が配置されている)。
図8Gは、対象物200の軸を含む平面による断面における、対象物の軸方向における磁束密度の分布を示し、
図8Hは、対象物200の軸に垂直な平面による断面における、対象物の軸に垂直な方向における磁束密度の分布を示す。
【0055】
図8Aと
図8Gとを比較し、
図8Bと
図8Hとを比較すると、環状部20の層が増加し、したがって磁石Mの数が増加したことにより、磁化能力が強まったことがわかる。このように、要求される磁化の大きさに応じて、磁化能力が容易に調整可能である。
【0056】
上述の実施形態1において、さらに以下のような変形を施すことができる。
単位部品11において、対象物200と接触する部分(たとえば対象物200と対向する面)に、平滑部材を取り付けることにより、対象物200との接触をより滑らかにすることができる。平滑部材はたとえば樹脂で構成することができ、粘着テープを用いて単位部品11に固定することができる。
【0057】
連結部品30は、連結ネジ31等のネジを用いるものに限らず、任意のロック機構を用いることができる。たとえばバックルおよびヒンジを用いることも可能である。
【0058】
単位部品11を連結するための構造は、ヒンジ14を用いるものに限らない。隣接する単位部品11が互いに回動または移動できるものであれば、任意の公知の連結構造を用いることができる。
【0059】
単位部品11における磁石Mの固定方法は、適宜変更可能である。たとえば、台座12と、固定部品13との固定は、固定ネジ15等のネジを用いずに実現してもよい。または、台座12および固定部品13を単一の部材または3個以上の部材から構成することも可能である。
【0060】
実施形態1では、各単位部品11はそれぞれ最大1個の磁石Mを保持することができるように構成されるが、変形例として、各単位部品11がそれぞれ複数の磁石Mを保持することができるように構成されてもよい。
【0061】
磁石保持装置10または磁化装置100に、ハンドルを取り付けてもよい。このようにすると、運搬および操作がより容易となる。ハンドルは、たとえば
図10に示すハンドル350と同様の構成とすることができる。
【符号の説明】
【0062】
M…磁石
10…磁石保持装置
11…単位部品
12…台座
12a…連結孔
13…固定部品
13a…連結孔
14…ヒンジ
14a…連結孔
15…固定ネジ
16…連結ネジ
20…環状部(20a…外側環状部、20b…内側環状部)
30(30a,30b,30c)…連結部品
31…連結ネジ
32(32a)…支持部材
33…開閉ネジ
100…磁化装置
200…対象物
201…マーキング