(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】電子部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20241008BHJP
H01F 17/02 20060101ALI20241008BHJP
H01G 4/33 20060101ALI20241008BHJP
H01G 4/30 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
H01F17/00 C
H01F17/02
H01G4/33 101
H01G4/30 541
(21)【出願番号】P 2022084784
(22)【出願日】2022-05-24
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宏充
(72)【発明者】
【氏名】飯田 裕一
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-042814(JP,A)
【文献】国際公開第2018/037842(WO,A1)
【文献】特開昭64-084784(JP,A)
【文献】特開平11-168010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
H01F 17/02
H01G 4/30
H01G 4/33
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板と、
前記ガラス基板の外面に接する外面導体と、
前記ガラス基板の外面と前記外面導体を覆い、前記ガラス基板の外面と前記外面導体に接する保護膜と
を備え、
前記保護膜は、絶縁性を有し、
前記保護膜は、前記外面導体を覆う第1保護層と、前記第1保護層と前記ガラス基板の外面とを覆う第2保護層と、を含み、
前記ガラス基板と前記外面導体の界面における前記ガラス基板の第1表面粗さをRa1とし、前記ガラス基板と前記保護膜の界面における前記ガラス基板の第2表面粗さをRa2とし、前記外面導体と前記
第1保護層の界面における前記外面導体の第3表面粗さをRa3とし
、前記第1保護層と前記第2保護層の界面における前記第1保護層の第4表面粗さをRa4としたとき、Ra1<Ra3<Ra2
、および、Ra3<Ra4を満たす、電子部品。
【請求項2】
(Ra3-Ra1)<(Ra2-Ra3)を満たす、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
さらに、前記ガラス基板を貫通する第1貫通導体および第2貫通導体を備え、
前記外面は、前記ガラス基板の主面の一つである底面と、前記底面の裏側に位置する天面とを含み、
前記外面導体は、前記底面に接する底面導体と前記天面に接する天面導体とを含み、
前記底面導体、前記第1貫通導体、前記天面導体および前記第2貫通導体は、順に接続されて、螺旋状のコイルの一部を構成する、請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項4】
ガラス基板の外面に接する外面導体を設ける工程と、
前記外面導体を覆い前記外面導体に接する保護膜の第1保護層を設ける工程と、
前記ガラス基板の外面と前記第1保護層に表面処理を行う工程と、
前記ガラス基板の外面と前記第1保護層を覆い、前記ガラス基板の外面と前記第1保護層に接する前記保護膜の第2保護層を設ける工程と
を備え、
前記保護膜は、絶縁性を有し、
前記ガラス基板と前記外面導体の界面における前記ガラス基板の第1表面粗さをRa1とし、前記ガラス基板と前記第2保護層の界面における前記ガラス基板の第2表面粗さをRa2とし、前記外面導体と前記第1保護層の界面における前記外面導体の第3表面粗さをRa3とし
、前記第1保護層と前記第2保護層の界面における前記第1保護層の第4表面粗さをRa4としたとき、Ra1<Ra3<Ra2
、および、Ra3<Ra4を満たすようにする、電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子部品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品としては、特開2020-174169号公報(特許文献1)に記載されたものがある。この電子部品は、ガラス基板と、ガラス基板の外面に接する外面導体と、外面導体を覆うようにガラス基板の外面と外面導体に接する保護膜とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来の電子部品を実際に製造して使用しようとすると、保護膜がガラス基板から剥がれる問題があった。これは、ガラス基板の外面は平滑であるため、保護膜とガラス基板の密着力が弱くなることが原因であった。そこで、ガラス基板の外面を粗くすることが考えられるが、ガラス基板の外面に接する外面導体の表面が粗くなり、高周波信号が外面導体を通過する際、外面導体の粗い表面部分に電流が集中してしまい、高周波信号の損失が増加する問題があった。
【0005】
そこで、本開示は、高周波信号の損失を低減しつつ保護膜の剥がれを低減することができる電子部品およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本開示の一態様である電子部品は、
ガラス基板と、
前記ガラス基板の外面に接する外面導体と、
前記ガラス基板の外面と前記外面導体を覆い、前記ガラス基板の外面と前記外面導体に接する保護膜と
を備え、
前記ガラス基板と前記外面導体の界面における前記ガラス基板の第1表面粗さをRa1とし、前記ガラス基板と前記保護膜の界面における前記ガラス基板の第2表面粗さをRa2とし、前記外面導体と前記保護膜の界面における前記外面導体の第3表面粗さをRa3としたとき、Ra1<Ra3<Ra2を満たす。
【0007】
この明細書では、ガラス基板の第1表面粗さRa1とは、ガラス基板と外面導体の界面の全領域における表面粗さの平均値とする。ガラス基板の第2表面粗さRa2とは、ガラス基板と保護膜の界面の全領域における表面粗さの平均値とする。外面導体の第3表面粗さRa3とは、外面導体と保護膜の界面の全領域における表面粗さの平均値とする。
【0008】
前記態様によれば、Ra1<Ra3<Ra2を満たしているので、高周波信号の損失を低減しつつ保護膜の剥がれを低減することができる。
【0009】
好ましくは、電子部品の一実施形態では、(Ra3-Ra1)<(Ra2-Ra3)を満たす。
【0010】
前記実施形態によれば、第3表面粗さRa3は、第2表面粗さRa2よりも第1表面粗さRa1に近いので、外面導体の保護膜と接する面の表面粗さは小さくなる。このため、高周波信号が外面導体の表面を通過する際、外面導体の表面への電流の集中を低減して、高周波信号の損失をより低減できる。
【0011】
好ましくは、電子部品の一実施形態では、
さらに、前記ガラス基板を貫通する第1貫通導体および第2貫通導体を備え、
前記外面は、前記ガラス基板の主面の一つである底面と、前記底面の裏側に位置する天面とを含み、
前記外面導体は、前記底面に接する底面導体と前記天面に接する天面導体とを含み、
前記底面導体、前記第1貫通導体、前記天面導体および前記第2貫通導体は、順に接続されて、螺旋状のコイルの一部を構成する。
【0012】
前記実施形態によれば、インダクタ部品に適用できる。
【0013】
好ましくは、電子部品の一実施形態では、前記保護膜は、前記外面導体を覆う第1保護層と、前記第1保護層と前記ガラス基板の外面とを覆う第2保護層とを含む。
【0014】
前記実施形態によれば、外面導体と保護膜(第1保護層)の界面における外面導体の第3表面粗さRa3を小さくして、外面導体の保護膜と接する面の表面粗さを小さくできる。このため、高周波信号が外面導体の表面を通過する際、外面導体の表面への電流の集中を低減して、高周波信号の損失をより低減できる。
【0015】
さらに、外面導体の第3表面粗さRa3を小さくしても、第1保護層と第2保護層の界面における第1保護層の第4表面粗さを大きくすることで、第1保護層と第2保護層の密着力を向上でき、第2保護層の剥がれを低減できる。
【0016】
好ましくは、電子部品の一実施形態では、前記第1保護層と前記第2保護層の界面における前記第1保護層の第4表面粗さをRa4としたとき、Ra1<Ra4を満たす。
【0017】
前記実施形態によれば、第4表面粗Ra4は第1表面粗さRa1よりも大きいので、第1保護層と第2保護層の密着力を向上でき、第2保護層の剥がれを低減できる。
【0018】
好ましくは、電子部品の製造方法の一実施形態では、
ガラス基板の外面に接する外面導体を設ける工程と、
前記ガラス基板の外面に表面処理を行う工程と、
前記ガラス基板の外面と前記外面導体を覆い、前記ガラス基板の外面と前記外面導体に接する保護膜を設ける工程と
を備え、
前記ガラス基板と前記外面導体の界面における前記ガラス基板の第1表面粗さをRa1とし、前記ガラス基板と前記保護膜の界面における前記ガラス基板の第2表面粗さをRa2とし、前記外面導体と前記保護膜の界面における前記外面導体の第3表面粗さをRa3としたとき、Ra1<Ra3<Ra2を満たすようにする。
【0019】
前記実施形態によれば、Ra1<Ra3<Ra2を満たしているので、高周波信号の損失を低減しつつ保護膜の剥がれを低減することができる。
【0020】
好ましくは、電子部品の製造方法の一実施形態では、
前記外面導体に表面処理を行う工程は、前記外面導体の少なくとも一部にマスクを設けた後に、前記ガラス基板の外面に表面処理を行うことを含み、
前記保護膜を設ける工程は、前記外面導体から前記マスクを除去した後に、前記ガラス基板の外面と前記外面導体を覆う前記保護膜を設けることを含む。
【0021】
前記実施形態によれば、外面導体にマスクを設けてからガラス基板の外面に表面処理を行うので、外面導体の表面でなくガラス基板の外面に選択的に表面処理を行うことができる。
【0022】
好ましくは、電子部品の製造方法の一実施形態では、
ガラス基板の外面に接する外面導体を設ける工程と、
前記外面導体を覆い前記外面導体に接する保護膜の第1保護層を設ける工程と、
前記ガラス基板の外面と前記第1保護層に表面処理を行う工程と、
前記ガラス基板の外面と前記第1保護層を覆い、前記ガラス基板の外面と前記第1保護層に接する前記保護膜の第2保護層を設ける工程と
を備え、
前記ガラス基板と前記外面導体の界面における前記ガラス基板の第1表面粗さをRa1とし、前記ガラス基板と前記第2保護層の界面における前記ガラス基板の第2表面粗さをRa2とし、前記外面導体と前記第1保護層の界面における前記外面導体の第3表面粗さをRa3としたとき、Ra1<Ra3<Ra2を満たすようにする。
【0023】
前記実施形態によれば、Ra1<Ra3<Ra2を満たしているので、高周波信号の損失を低減しつつ保護膜の剥がれを低減することができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示の一態様である電子部品およびその製造方法によれば、高周波信号の損失を低減しつつ保護膜の剥がれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】電子部品としてのインダクタ部品の第1実施形態を示す分解斜視図である。
【
図3A】インダクタ部品のコイルを天面側からみた天面図である。
【
図3B】インダクタ部品のコイルを底面側からみた底面図である。
【
図5A】インダクタ部品の製造方法を説明する断面図である。
【
図5B】インダクタ部品の製造方法を説明する断面図である。
【
図5C】インダクタ部品の製造方法を説明する断面図である。
【
図5D】インダクタ部品の製造方法を説明する断面図である。
【
図6】電子部品としてのインダクタ部品の第2実施形態を示す拡大断面図である。
【
図7A】インダクタ部品の製造方法を説明する断面図である。
【
図7B】インダクタ部品の製造方法を説明する断面図である。
【
図7C】インダクタ部品の製造方法を説明する断面図である。
【
図7D】インダクタ部品の製造方法を説明する断面図である。
【
図8】電子部品としてのインダクタ部品の第3実施形態を示す拡大断面図である。
【
図9A】インダクタ部品の製造方法を説明する断面図である。
【
図9B】インダクタ部品の製造方法を説明する断面図である。
【
図9C】インダクタ部品の製造方法を説明する断面図である。
【
図9D】インダクタ部品の製造方法を説明する断面図である。
【
図10】電子部品としてのコンデンサ部品の第4実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示の一態様である電子部品およびその製造方法を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0027】
<第1実施形態>
第1実施形態では、本発明に係る電子部品は、インダクタ部品を例として説明する。
図1は、インダクタ部品を天面側から見た分解斜視図である。
図2は、インダクタ部品の断面図である。
図3Aは、インダクタ部品のコイルを天面側からみた天面図であり、
図3Bは、インダクタ部品のコイルを底面側からみた底面図である。
【0028】
インダクタ部品1は、例えば、高周波信号伝送回路に用いられる表面実装型のインダクタ部品である。
図1と
図2と
図3Aと
図3Bに示すように、インダクタ部品1は、ガラス基板10と、ガラス基板10に設けられたコイル110と、ガラス基板10に設けられ、コイル110の一部を覆う第1保護膜15および第2保護膜16と、第2保護膜16に設けられ、コイル110に電気的に接続された第1端子電極121および第2端子電極122とを備える。
【0029】
(ガラス基板10)
ガラス基板10は、長さ、幅および高さを有する直方体である。ガラス基板10は、長さ方向の両端側にある第1端面100e1および第2端面100e2と、幅方向の両端側にある第1側面100s1および第2側面100s2と、高さ方向の両端側にある底面100bおよび天面100tとを有する。つまり、ガラス基板10の外面100は、第1端面100e1および第2端面100e2と、第1側面100s1および第2側面100s2と、底面100bおよび天面100tとを含む。底面100bは、ガラス基板10の主面の一つであり、天面100tは、底面100bの裏側に位置する。
【0030】
なお、図面に示すように、以下では、説明の便宜上、ガラス基板10の長さ方向(長手方向)であって、第1端面100e1から第2端面100e2に向かう方向をX方向とする。また、ガラス基板10の幅方向であって、第1側面100s1から第2側面100s2に向かう方向をY方向とする。また、ガラス基板10の高さ方向であって、底面100bから天面100tに向かう方向をZ向とする。X方向、Y方向及びZ方向は、互いに直交する方向であって、X,Y,Zの順に並べたとき、左手系を構成する。
【0031】
この明細書では、ガラス基板10の外面100は、単にガラス基板10の外周側を向く面という意味ではなく、ガラス基板10の外側と内側との境界となる面である。また、「ガラス基板10の外面100の上方」とは、重力方向に規定される鉛直上方のような絶対的な一方向ではなく、外面100を基準に、当該外面100を境界とする外側と内側とのうち、外側に向かう方向を指す。したがって、「外面100の上方」とは外面100の向きによって定まる相対的な方向である。また、ある要素に対して「上方(above)」には、当該要素とは離れた上方、すなわち当該要素上の他の物体を介した上側の位置や間隔を空けた上側の位置だけではなく、当該要素と接する直上の位置(on)も含む。
【0032】
ガラス基板10は、絶縁性を有する。ガラス基板10は、例えば、FoturanII(SchottAG社登録商標)に代表される感光性を有するガラス基板が好ましい。特に、ガラス基板10は、セリウム酸化物(セリア:CeO2)を含有していることが好ましく、この場合、セリウム酸化物が増感剤となって、フォトリソグラフィによる加工がより容易となる。
【0033】
ただし、ガラス基板10は、ドリル、サンドブラストなどの機械加工、フォトレジスト・メタルマスクなどを用いたドライ/ウェットエッチング加工、レーザ加工などによって加工できることから、感光性を有さないガラス板であってもよい。また、ガラス基板10は、ガラスペーストを焼結させたものであってもよいし、フロート法などの公知の方法よって形成されていてもよい。
【0034】
(コイル110)
コイル110は、軸AXに沿って螺旋状に巻回される。コイル110の軸AXは、底面100bに平行に配置される。コイル110は、複数の底面導体11bと、複数の天面導体11tと、複数の第1貫通導体13と、複数の第2貫通導体14とを含む。底面導体11bおよび天面導体11tは、特許請求の範囲に記載の「外面導体」の一例に相当する。
【0035】
複数の底面導体11bは、底面100bに接して軸AXに沿って配列されている。複数の天面導体11tは、天面100tに接して軸AXに沿って配列されている。複数の第1貫通導体13は、ガラス基板10を貫通し、底面導体11bから天面導体11tに向かって延在し、軸AXに沿って配列されている。複数の第2貫通導体14は、ガラス基板10を貫通し、底面導体11bから天面導体11tに向かって延在し、軸AXに沿って配列されている。第2貫通導体14は、軸AXに対して第1貫通導体13と反対側に設けられている。底面導体11bと、第1貫通導体13と、天面導体11tと、第2貫通導体14とは、この順に接続されて、螺旋状のコイル110の少なくとも一部を構成する。
【0036】
天面導体11tは、ややX方向に傾いてY方向に延伸している。全ての天面導体11tは、X方向に沿って平行に配置されている。底面導体11bは、Y方向に延びる形状である。全ての底面導体11bは、X方向に沿って平行に配置されている。
【0037】
第1貫通導体13は、ガラス基板10の貫通孔内で、軸AXに対して第1側面100s1側に配置され、第2貫通導体14は、ガラス基板10の貫通孔内で、軸AXに対して第2側面100s2側に配置されている。第1貫通導体13および第2貫通導体14は、それぞれ、底面100bおよび天面100tに直交する方向に延伸している。全ての第1貫通導体13および全ての第2貫通導体14は、それぞれ、X方向に沿って平行に配置されている。
【0038】
底面導体11bおよび天面導体11tは、銅、銀,金又はこれらの合金などの導体材料からなる。底面導体11bおよび天面導体11tは、めっき、蒸着、スパッタリングなどによって形成された金属膜であってもよいし、導体ペーストを塗布、焼結させた金属焼結体であってもよい。また、第1貫通導体13および第2貫通導体14の材料は、底面導体11bおよび天面導体11tの材料と同じである。
【0039】
底面導体11bおよび天面導体11tは、セミアディティブ法によって形成することが好ましく、これにより、低電気抵抗、高精度及び高アスペクトな底面導体11bおよび天面導体11tを形成することができる。第1貫通導体13および第2貫通導体14は、ガラス基板10に予め形成された貫通孔内に、底面導体11bおよび天面導体11tで例示した材料、製法を用いて形成することができる。
【0040】
(第1保護膜15および第2保護膜16)
第1保護膜15は、ガラス基板10の天面100tと天面配線11tを覆い、天面100tと天面配線11tに接する。第1保護膜15は、天面導体11tを覆うことで、天面導体11tを外力から保護して、天面導体11tの損傷を防止する。
【0041】
第2保護膜16は、ガラス基板10の底面100bと底面配線11bを覆い、底面100bと底面配線11bに接する。第2保護膜16は、底面導体11bを覆うことで、底面導体11bを外力から保護して、底面導体11bの損傷を防止する。
【0042】
第1保護膜15および第2保護膜16は、絶縁性を有し、例えば、エポキシやポリイミドなどの樹脂から構成される。
【0043】
(第1端子電極121および第2端子電極122)
第1端子電極121は、コイル110の第1端部に接続され、第2端子電極122は、コイル110の第2端部に接続される。第1端子電極121は、第2保護膜16上で、ガラス基板10のX方向の中心に対して第1端面100e1側に設けられている。第2端子電極122は、第2保護膜16上で、ガラス基板10のX方向の中心に対して第2端面100e2側に設けられている。
【0044】
第1端子電極121は、第2保護膜16に埋め込まれた第1ビア導体121vを介して、底面導体11bに接続される。第2端子電極122は、第2保護膜16に埋め込まれた第2ビア導体122vを介して、底面導体11bに接続される。
【0045】
第1端子電極121は、下地層と、下地層を覆うめっき層とを有する。下地層は、AgやCuなどの導電材料を含む。めっき層は、NiやSn、Pd、Auなどの導電材料を含む。同様に、第2端子電極122は、下地層と、下地層を覆うめっき層とを有する。なお、第1端子電極121および第2端子電極122は、単層の導電体材料から構成されていてもよい。
【0046】
(表面粗さ)
図4は、インダクタ部品1の拡大断面図である。
図4に示すように、ガラス基板10は、天面導体11tに接する第1面10aと、第1保護膜15に接する第2面10bとを有する。天面導体11tは、ガラス基板10に接する第1面11taと、第1保護膜15に接する第2面11tbとを有する。
【0047】
ガラス基板10と天面導体11tの界面におけるガラス基板10の第1面10aの第1表面粗さをRa1とし、ガラス基板10と第1保護膜15の界面におけるガラス基板10の第2面10bの第2表面粗さをRa2とし、天面導体11tと第1保護膜15の界面における天面導体11tの第2面11tbの第3表面粗さをRa3としたとき、Ra1<Ra3<Ra2を満たす。
【0048】
ここで、ガラス基板10の第1表面粗さRa1とは、ガラス基板10と天面導体11tの界面(つまり、ガラス基板10の第1面10a)の全領域における表面粗さの平均値とする。ガラス基板10の第2表面粗さRa2とは、ガラス基板10と第1保護膜15の界面(つまり、ガラス基板10の第2面10b)の全領域における表面粗さの平均値とする。天面導体11tの第3表面粗さRa3とは、天面導体11tと第1保護膜15の界面(つまり、天面導体11tの第2面11tb)の全領域における表面粗さの平均値とする。
【0049】
また、表面粗さの測定方法としては、インダクタ部品1の軸AXを含むXZ断面のSEM画像を取得し、このSEM画像から測定領域の算術平均粗さを算出し、この算出した値を測定領域の表面粗さとする。例えば、SEM画像の解析により70μmの長さの範囲について算術平均粗さを算出し、70μmの長さを確保できない場合、軸AXを含むXZ断面付近で、最も長さを確保できる面を研磨して算出する。例えば、第1表面粗さRa1は0.05μmであり、第2表面粗さRa2は5μmであり、第3表面粗さRa3は0.5mである。
【0050】
上記構成によれば、Ra1<Ra3<Ra2を満たしているので、高周波信号の損失を低減しつつ第1保護膜15の剥がれを低減することができる。
【0051】
具体的に述べると、ガラス基板10の第1表面粗さRa1は最も小さいので、天面導体11tのガラス基板10と接する第1面11taの表面粗さは小さくなる。このため、高周波信号が天面導体11tの第1面11taを通過する際、天面導体11tの第1面11taへの電流の集中を低減して、高周波信号の損失を低減できる。さらに、天面導体11tの第3表面粗さRa3はガラス基板10の第2表面粗さRa2よりも小さいので、天面導体11tの第1保護膜15と接する第2面11tbの表面粗さは小さくなる。このため、高周波信号が天面導体11tの第2面11tbを通過する際、天面導体11tの第2面11tbへの電流の集中を低減して、高周波信号の損失をより低減できる。
【0052】
一方、ガラス基板10の第2表面粗さRa2は最も大きいので、第1保護膜15とガラス基板10の密着力を向上でき、第1保護膜15の剥がれを低減できる。さらに、天面導体11tの第3表面粗さRa3はガラス基板10の第1表面粗さRa1よりも大きいので、第1保護膜15と天面導体11tの密着力を向上でき、第1保護膜15の剥がれをより低減できる。
【0053】
好ましくは、(Ra3-Ra1)<(Ra2-Ra3)を満たす。上記構成によれば、第3表面粗さRa3は、第2表面粗さRa2よりも第1表面粗さRa1に近いので、天面導体11tの第1保護膜15と接する第2面11tbの表面粗さは小さくなる。このため、高周波信号が天面導体11tの第2面11tbを通過する際、天面導体11tの第2面11tbへの電流の集中を低減して、高周波信号の損失をより低減できる。
【0054】
若しくは、(Ra3-Ra1)>(Ra2-Ra3)を満たしていてもよい。上記構成によれば、第3表面粗さRa3は、第1表面粗さRa1よりも第2表面粗さRa2に近いので、天面導体11tの第1保護膜15と接する第2面11tbの表面粗さは大きくなる。このため、天面導体11tと第1保護膜15の密着力を向上でき、第1保護膜15の剥がれをより低減できる。
【0055】
好ましくは、ガラス基板10の第2面10bは、天面導体11tの周囲の第1領域10b1と、それ以外の第2領域10b2とを含む。第1領域10b1の表面粗さは、第1表面粗さRa1と同じである。第2領域10b2の表面粗さは、第1表面粗さRa1よりも非常に大きいため、第2面10b(第1領域10b1および第2領域10b2)の表面粗さは、第1表面粗さRa1よりも大きくなる。
【0056】
好ましくは、ガラス基板10と底面導体11bの界面におけるガラス基板10の第1表面粗さをRa1とし、ガラス基板10と第2保護膜16の界面におけるガラス基板10の第2表面粗さをRa2とし、底面導体11bと第2保護膜16の界面における底面導体11bの第3表面粗さをRa3としたとき、Ra1<Ra3<Ra2を満たす。これによれば、高周波信号の損失を低減しつつ第2保護膜16の剥がれを低減することができる。
【0057】
このとき、(Ra3-Ra1)<(Ra2-Ra3)を満たしてもよく、または、(Ra3-Ra1)>(Ra2-Ra3)を満たしていてもよい。なお、天面導体11tおよび底面導体11bの少なくとも何れか一方において、Ra1<Ra3<Ra2を満たしていればよい。
【0058】
(インダクタ部品1の製造方法)
次に、
図5Aから
図5Dを用いてインダクタ部品1の製造方法を説明する。
【0059】
図5Aに示すように、ガラス基板10を用意する。ガラス基板10は、例えば、感光性ガラスからなり貫通孔などの加工を行いやすい。また、ガラス基板10の表面の平坦度は、著しく高いものであることが望ましい。
【0060】
そして、ガラス基板10の天面100tに接する天面導体11tを設ける。天面導体11tは、例えば、セミアディティブ法によって形成する。なお、天面導体11tは、スクリーン印刷によって形成してもよい。
【0061】
ここで、天面100tは、平滑である。つまり、天面100tのうちの天面導体11tに接する第1面10aと、天面100tのうちの天面導体11tから露出する第2面10bとは、平滑である。このように、天面100tの第1面10aは、平滑であるため、天面100tの第1面10aに接する天面導体11tの第1面11taは、平滑となる。一方、天面導体11tを形成する際、天面導体11tの露出面である第2面11tbの平坦度が、天面導体11tの第1面11taの平坦度に比べて低くなるようにする。
【0062】
図5Bに示すように、天面導体11tの第2面11tbの全てにマスク200を設ける。マスク200は、さらに、天面100tの第2面10bのうちの天面導体11tの周囲の第1領域10b1を覆う。
【0063】
図5Cに示すように、ガラス基板10の天面100tに表面処理を行い、天面導体11tからマスク200を除去する。表面処理としては、例えば、エッチング処理やサンドブラスト処理を用いる。これにより、天面100tの第2面10bのうちの第1領域10b1以外の第2領域10b2の表面は、表面処理が施されて、荒れた状態となる。一方、天面導体11tの第2面11tbの表面と、天面100tの第2面10bの第1領域10b1の表面とは、表面処理が施されず、荒れていない状態となる。
【0064】
したがって、天面導体11tにマスク200を設けてからガラス基板10の天面100tに表面処理を行うので、天面導体11tの表面でなくガラス基板10の天面100tに選択的に表面処理を行うことができる。なお、マスクを設けないで、表面処理を行ってもよい。
【0065】
天面100tの第2面10bの第2領域10b2の表面粗さは、天面100tの第2面10bの第1領域10b1の表面粗さ、天面100tの第1面10aの表面粗さ、および、天面導体11tの第2面11tbの表面粗さよりも大きくなる。天面100tの第2面10bの第1領域10b1の表面粗さは、天面100tの第1面10aの表面粗さと同じである。天面導体11tの第2面11tbの表面粗さは、天面100tの第1面10aの表面粗さよりも大きくなる。
【0066】
天面100tの第2面10bの表面粗さは、天面100tの第1面10aの表面粗さ、および、天面導体11tの第2面11tbの表面粗さよりも大きくなる。天面100tの第2面10bの表面粗さとは、第1領域10b1と第2領域10b2を含む全領域の平均の表面粗さである。
【0067】
図5Dに示すように、ガラス基板10の天面100tと天面導体11tを覆い、ガラス基板10の天面100tと天面導体11tに接する第1保護膜15を設ける。このとき、ガラス基板10と天面導体11tの界面におけるガラス基板10の第1面10aの第1表面粗さをRa1とし、ガラス基板10と第1保護膜15の界面におけるガラス基板10の第2面10bの第2表面粗さをRa2とし、天面導体11tと第1保護膜15の界面における天面導体11tの第2面11tbの第3表面粗さをRa3としたとき、Ra1<Ra3<Ra2を満たす。これによれば、Ra1<Ra3<Ra2を満たしているので、高周波信号の損失を低減しつつ第1保護膜15の剥がれを低減することができる。
【0068】
また、図示しないが、底面導体11bおよび第2保護膜16も、天面導体11tおよび第1保護膜15と同様に形成する。第1貫通導体13および第2貫通導体14は、天面導体11tおよび底面導体11bを設ける前に、ガラス基板10に設けた貫通孔内に形成する。最後に、第1端子電極121および第2端子電極122を設けて、
図2に示すインダクタ部品1を製造する。
【0069】
<第2実施形態>
図6は、電子部品としてのインダクタ部品の第2実施形態を示す拡大断面図である。第2実施形態は、第1実施形態とは、ガラス基板10と第1保護膜15の界面と天面導体11tと第1保護膜15の界面とが相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、その説明を省略する。
【0070】
図6に示すように、第2実施形態のインダクタ部品1Aでは、ガラス基板10と第1保護膜15の界面におけるガラス基板10の第2面10bの表面粗さは、第2面10bの全領域において均一である。これにより、ガラス基板10と第1保護膜15の密着力を向上できる。
【0071】
また、天面導体11tと第1保護膜15の界面における天面導体11tの第2面11tbの一部の領域の表面粗さは、第2面11tbのその他の領域の表面粗さよりも大きい。これにより、天面導体11tと第1保護膜15の密着力を向上できる。また、第2面11tbのその他の領域の表面粗さを小さくすることで、天面導体11tを通過する高周波信号の損失を低減できる。ここで、天面導体11tの第2面11tbの表面粗さとは、第2面11tbの一部の領域と第2面11tbのその他の領域を含む全領域の平均の表面粗さである。
【0072】
第1実施形態と同様に、ガラス基板10と天面導体11tの界面におけるガラス基板10の第1面10aの第1表面粗さをRa1とし、ガラス基板10と第1保護膜15の界面におけるガラス基板10の第2面10bの第2表面粗さをRa2とし、天面導体11tと第1保護膜15の界面における天面導体11tの第2面11tbの第3表面粗さをRa3としたとき、Ra1<Ra3<Ra2を満たす。これにより、Ra1<Ra3<Ra2を満たしているので、高周波信号の損失を低減しつつ第1保護膜15の剥がれを低減することができる。
【0073】
(インダクタ部品1Aの製造方法)
次に、
図7Aから
図7Dを用いてインダクタ部品1Aの製造方法を説明する。各部材の構成や製法において、第1実施形態と同様である部分はその説明を省略し、第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0074】
図7Aに示すように、ガラス基板10の天面100tに接する天面導体11tを設ける。ガラス基板10および天面導体11tの構成は、第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0075】
図7Bに示すように、天面導体11tの第2面11tbの一部にマスク200を設ける。マスク200は、第2面11tbのうちの上面の一部のみに設ける。
【0076】
図7Cに示すように、ガラス基板10の天面100tに表面処理を行い、天面導体11tからマスク200を除去する。これにより、天面100tの第2面10bの表面は、表面処理が施されて、荒れた状態となる。また、天面導体11tの第2面11tbの上面のうちのマスク200に覆われていない非被覆領域は、表面処理が施されて、荒れた状態となる。一方、天面導体11tの第2面11tbのうちの非被覆領域以外の他の領域は、表面処理が施されず、荒れていない状態となる。
【0077】
天面100tの第2面10bの表面粗さは、天面100tの第1面10aの表面粗さ、および、天面導体11tの第2面11tbの表面粗さよりも大きくなる。天面導体11tの第2面11tbの表面粗さは、天面100tの第1面10aの表面粗さよりも大きくなる。天面導体11tの第2面11tbの表面粗さとは、第2面11tbの非被覆領域と非被覆領域以外の他の領域を含む全領域の平均の表面粗さである。
【0078】
図7Dに示すように、ガラス基板10の天面100tと天面導体11tを覆い、ガラス基板10の天面100tと天面導体11tに接する第1保護膜15を設ける。このとき、ガラス基板10と天面導体11tの界面におけるガラス基板10の第1面10aの第1表面粗さをRa1とし、ガラス基板10と第1保護膜15の界面におけるガラス基板10の第2面10bの第2表面粗さをRa2とし、天面導体11tと第1保護膜15の界面における天面導体11tの第2面11tbの第3表面粗さをRa3としたとき、Ra1<Ra3<Ra2を満たす。これによれば、Ra1<Ra3<Ra2を満たしているので、高周波信号の損失を低減しつつ第1保護膜15の剥がれを低減することができる。
【0079】
また、図示しないが、底面導体11bおよび第2保護膜16も、天面導体11tおよび第1保護膜15と同様に形成する。第1貫通導体13および第2貫通導体14は、天面導体11tおよび底面導体11bを設ける前に、ガラス基板10に設けた貫通孔内に形成する。最後に、第1端子電極121および第2端子電極122を設けて、
図6に示すインダクタ部品1Aを製造する。
【0080】
<第3実施形態>
図8は、電子部品としてのインダクタ部品の第3実施形態を示す拡大断面図である。第3実施形態は、第1実施形態とは、第1保護膜15Bの構成が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、その説明を省略する。
【0081】
図8に示すように、第3実施形態のインダクタ部品1Bでは、第1保護膜15Bは、天面導体11tを覆う第1保護層151と、第1保護層151とガラス基板10の天面100tとを覆う第2保護層152とを含む。
【0082】
具体的に述べると、第1保護層151は、天面導体11tの第2面11tbの全てを覆い、また、天面100tの第2面10bの第1領域10b1を覆う。第2保護層152は、第1保護層151の全てを覆い、また、天面100tの第2面10bの第2領域10b2を覆う。
【0083】
上記構成によれば、天面導体11tと第1保護膜15B(第1保護層151)の界面における天面導体11tの第3表面粗さRa3を小さくして、天面導体11tの第1保護膜15Bと接する第2面11tbの表面粗さを小さくできる。このため、高周波信号が天面導体11tの第2面11tbを通過する際、天面導体11tの第2面11tbへの電流の集中を低減して、高周波信号の損失をより低減できる。
【0084】
さらに、天面導体11tの第3表面粗さRa3を小さくしても、第1保護層151と第2保護層152の界面における第1保護層151の第4表面粗さRa4を大きくすることで、第1保護層151と第2保護層152の密着力を向上でき、第2保護層152の剥がれを低減できる。
【0085】
好ましくは、第1表面粗さRa1と第4表面粗さRa4との関係において、Ra1<Ra4を満たす。具体的に述べると、第1保護層151は、第2保護層152と接する第1面151aを含む。第1面151aの一部の領域(上面)の表面粗さは、ガラス基板10の第1面10aの表面粗さよりも大きい。第1保護層151の第1面151aの表面粗さとは、第1面151aの一部の領域と第1面151aのその他の領域を含む全領域の平均の表面粗さである。
【0086】
上記構成によれば、第4表面粗Ra4は第1表面粗さRa1よりも大きいので、第1保護層151と第2保護層152の密着力を向上でき、第2保護層152の剥がれを低減できる。
【0087】
第1実施形態と同様に、ガラス基板10と天面導体11tの界面におけるガラス基板10の第1面10aの第1表面粗さをRa1とし、ガラス基板10と第1保護膜15Bの界面におけるガラス基板10の第2面10bの第2表面粗さをRa2とし、天面導体11tと第1保護膜15Bの界面における天面導体11tの第2面11tbの第3表面粗さをRa3としたとき、Ra1<Ra3<Ra2を満たす。これにより、Ra1<Ra3<Ra2を満たしているので、高周波信号の損失を低減しつつ第1保護膜15Bの剥がれを低減することができる。
【0088】
(インダクタ部品1Bの製造方法)
次に、
図9Aから
図9Dを用いてインダクタ部品1Bの製造方法を説明する。各部材の構成や製法において、第1実施形態と同様である部分はその説明を省略し、第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0089】
図9Aに示すように、ガラス基板10の天面100tに接する天面導体11tを設ける。ガラス基板10および天面導体11tの構成は、第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0090】
図9Bに示すように、天面導体11tの第2面11tbの全てに第1保護層151を設ける。第1保護層151は、さらに、天面100tの第2面10bの第1領域10b1を覆う。
【0091】
図9Cに示すように、ガラス基板10の天面100tと第1保護層151の第1面151aに表面処理を行う。これにより、天面100tの第2面10bの第2領域10b2の表面は、表面処理が施されて、荒れた状態となる。また、第1保護層151の第1面151aの一部の領域(上面)は、表面処理が施されて、荒れた状態となる。一方、第1保護層151の第1面151aのうちの一部の領域以外の他の領域は、表面処理が施されず、荒れていない状態となる。
【0092】
天面100tの第2面10bの第2領域10b2の表面粗さは、天面100tの第2面10bの第1領域10b1の表面粗さ、天面100tの第1面10aの表面粗さ、および、天面導体11tの第2面11tbの表面粗さよりも大きくなる。天面100tの第2面10bの第1領域10b1の表面粗さは、天面100tの第1面10aの表面粗さと同じである。天面導体11tの第2面11tbの表面粗さは、天面100tの第1面10aの表面粗さよりも大きくなる。
【0093】
天面100tの第2面10bの表面粗さは、天面100tの第1面10aの表面粗さ、および、天面導体11tの第2面11tbの表面粗さよりも大きくなる。天面100tの第2面10bの表面粗さとは、第1領域10b1と第2領域10b2を含む全領域の平均の表面粗さである。
【0094】
第1保護層151の第1面151aの表面粗さは、天面100tの第1面10aの表面粗さよりも大きくなる。第1保護層151の第1面151aの表面粗さとは、第1面151aの上面の領域および側面の領域を含む全領域の平均の表面粗さである。
【0095】
図9Dに示すように、ガラス基板10の天面100tと第1保護層151を覆い、ガラス基板10の天面100tと第1保護層151の第1面151aに接する第2保護層152を設ける。このとき、ガラス基板10と天面導体11tの界面におけるガラス基板10の第1面10aの第1表面粗さをRa1とし、ガラス基板10と第1保護膜15Bの界面におけるガラス基板10の第2面10bの第2表面粗さをRa2とし、天面導体11tと第1保護膜15Bの界面における天面導体11tの第2面11tbの第3表面粗さをRa3としたとき、Ra1<Ra3<Ra2を満たす。これによれば、Ra1<Ra3<Ra2を満たしているので、高周波信号の損失を低減しつつ第1保護膜15Bの剥がれを低減することができる。
【0096】
また、図示しないが、底面導体11bおよび第2保護膜16も、天面導体11tおよび第1保護膜15と同様に形成する。第1貫通導体13および第2貫通導体14は、天面導体11tおよび底面導体11bを設ける前に、ガラス基板10に設けた貫通孔内に形成する。最後に、第1端子電極121および第2端子電極122を設けて、
図8に示すインダクタ部品1Bを製造する。
【0097】
<第4実施形態>
第4実施形態では、本発明に係る電子部品は、コンデンサ部品を例として説明する。
図10は、コンデンサ部品の断面図である。コンデンサ部品2は、例えば、高周波信号伝送回路に用いられる表面実装型のコンデンサ部品である。
【0098】
図10に示すように、コンデンサ部品2は、ガラス基板10と、ガラス基板10に設けられた第1平板電極21および第2平板電極22と、ガラス基板10に設けられ、第1平板電極21および第2平板電極22を覆う第1保護膜15と、ガラス基板10に設けられた第1端子電極221および第2端子電極222とを備える。第1平板電極21および第2平板電極22は、特許請求の範囲に記載の「外面導体」の一例に相当する。
【0099】
なお、ガラス基板10の材料は、第1実施形態のガラス基板10の材料と同じである。第1保護膜15の材料は、第1実施形態の第1保護膜15の材料と同じである。第1平板電極21および第2平板電極22の材料は、第1実施形態の天面導体11tおよび底面導体11bの材料と同じである。第1端子電極221および第2端子電極222の材料は、第1実施形態の第1端子電極121および第2端子電極122の材料と同じである。
【0100】
第1平板電極21および第2平板電極22は、ガラス基板10の天面100tに設けられる。第1平板電極21は、ガラス基板10の天面100tに接触し、第2平板電極22は、第1平板電極21の上方に位置する。第1平板電極21と第2平板電極22の間には、誘電膜23が設けられている。第1平板電極21と第2平板電極22と誘電膜23は、コンデンサ素子を構成する。
【0101】
第1端子電極221および第2端子電極222は、ガラス基板10の底面100bに接触する。第1端子電極221および第2端子電極222は、互いに離隔している。
【0102】
コンデンサ部品2は、さらに、ガラス基板10を貫通する第1貫通導体23および第2貫通導体24を有する。第1貫通導体23は、第1端子電極221と第1平板電極21の間に接続される。第2貫通導体24は、第2端子電極222と第2平板電極22の間に接続される。
【0103】
ガラス基板10と第1平板電極21および第2平板電極22の界面におけるガラス基板10の第1表面粗さをRa1とし、ガラス基板10と第1保護膜15の界面におけるガラス基板10の第2表面粗さをRa2とし、第1平板電極21および第2平板電極22と第1保護膜15の界面における第1平板電極21および第2平板電極22の第3表面粗さをRa3としたとき、Ra1<Ra3<Ra2を満たす。
【0104】
上記構成によれば、Ra1<Ra3<Ra2を満たしているので、第1平板電極21および第2平板電極22を流れる高周波信号の損失を低減しつつ第1保護膜15の剥がれを低減することができる。
【0105】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1から第4実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。前記第1から第3実施形態では、電子部品としてインダクタ部品を用い、前記第4実施形態では、電子部品としてコンデンサ部品を用いたが、抵抗部品などのその他の電子部品を用いてもよい。
【0106】
<1>
ガラス基板と、
前記ガラス基板の外面に接する外面導体と、
前記ガラス基板の外面と前記外面導体を覆い、前記ガラス基板の外面と前記外面導体に接する保護膜と
を備え、
前記ガラス基板と前記外面導体の界面における前記ガラス基板の第1表面粗さをRa1とし、前記ガラス基板と前記保護膜の界面における前記ガラス基板の第2表面粗さをRa2とし、前記外面導体と前記保護膜の界面における前記外面導体の第3表面粗さをRa3としたとき、Ra1<Ra3<Ra2を満たす、電子部品。
<2>
(Ra3-Ra1)<(Ra2-Ra3)を満たす、<1>に記載の電子部品。
<3>
さらに、前記ガラス基板を貫通する第1貫通導体および第2貫通導体を備え、
前記外面は、前記ガラス基板の主面の一つである底面と、前記底面の裏側に位置する天面とを含み、
前記外面導体は、前記底面に接する底面導体と前記天面に接する天面導体とを含み、
前記底面導体、前記第1貫通導体、前記天面導体および前記第2貫通導体は、順に接続されて、螺旋状のコイルの一部を構成する、<1>または<2>に記載の電子部品。
<4>
前記保護膜は、前記外面導体を覆う第1保護層と、前記第1保護層と前記ガラス基板の外面とを覆う第2保護層とを含む、<1>から<3>の何れか一つに記載の電子部品。
<5>
前記第1保護層と前記第2保護層の界面における前記第1保護層の第4表面粗さをRa4としたとき、Ra1<Ra4を満たす、<4>に記載の電子部品。
<6>
ガラス基板の外面に接する外面導体を設ける工程と、
前記ガラス基板の外面に表面処理を行う工程と、
前記ガラス基板の外面と前記外面導体を覆い、前記ガラス基板の外面と前記外面導体に接する保護膜を設ける工程と
を備え、
前記ガラス基板と前記外面導体の界面における前記ガラス基板の第1表面粗さをRa1とし、前記ガラス基板と前記保護膜の界面における前記ガラス基板の第2表面粗さをRa2とし、前記外面導体と前記保護膜の界面における前記外面導体の第3表面粗さをRa3としたとき、Ra1<Ra3<Ra2を満たすようにする、電子部品の製造方法。
<7>
前記外面導体に表面処理を行う工程は、前記外面導体の少なくとも一部にマスクを設けた後に、前記ガラス基板の外面に表面処理を行うことを含み、
前記保護膜を設ける工程は、前記外面導体から前記マスクを除去した後に、前記ガラス基板の外面と前記外面導体を覆う前記保護膜を設けることを含む、<6>に記載の電子部品の製造方法。
<8>
ガラス基板の外面に接する外面導体を設ける工程と、
前記外面導体を覆い前記外面導体に接する保護膜の第1保護層を設ける工程と、
前記ガラス基板の外面と前記第1保護層に表面処理を行う工程と、
前記ガラス基板の外面と前記第1保護層を覆い、前記ガラス基板の外面と前記第1保護層に接する前記保護膜の第2保護層を設ける工程と
を備え、
前記ガラス基板と前記外面導体の界面における前記ガラス基板の第1表面粗さをRa1とし、前記ガラス基板と前記第2保護層の界面における前記ガラス基板の第2表面粗さをRa2とし、前記外面導体と前記第1保護層の界面における前記外面導体の第3表面粗さをRa3としたとき、Ra1<Ra3<Ra2を満たすようにする、電子部品の製造方法。
【符号の説明】
【0107】
1,1A,1B インダクタ部品(電子部品)
2 コンデンサ部品(電子部品)
10 ガラス基板
10a 第1面
10b 第2面
10b1 第1領域
10b2 第2領域
11b 底面導体(外面導体)
11t 天面導体(外面導体)
11ta 第1面
11tb 第2面
13,23 第1貫通導体
14,24 第2貫通導体
15,15B 第1保護膜
151 第1保護層
151a 第1面
152 第2保護層
16 第2保護膜
21 第1平板電極(外面導体)
22 第2平板電極(外面導体)
23 誘電膜
100 外面
100b 底面
100t 天面
110 コイル
121,221 第1端子電極
122,222 第2端子電極
200 マスク
AX 軸