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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/293 20210101AFI20241008BHJP
   H01M 50/211 20210101ALI20241008BHJP
   H01M 50/271 20210101ALI20241008BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20241008BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20241008BHJP
【FI】
H01M50/293
H01M50/211
H01M50/271 S
H01M50/291
H01G11/78
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022117922
(22)【出願日】2022-07-25
(65)【公開番号】P2024015687
(43)【公開日】2024-02-06
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕哉
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-168439(JP,A)
【文献】国際公開第2020/261729(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
H01G 11/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層方向に互いに積層された複数のセルを有する積層体と、
前記積層体を支持する底部を有するとともに、該底部に対し前記積層方向に対向する位置に開口部を有し、前記積層体を収容するケースと、
前記開口部を覆うように前記開口部の開口端に固定された蓋部と、
前記積層体と前記蓋部との間に位置する弾性部材と、を備え、
前記弾性部材は、
前記積層体と前記蓋部とが互いに対向する方向である第1方向に直交する第2方向において、前記弾性部材のうち前記開口端から最も遠くに位置する部分を含む第1弾性部と、
前記第2方向において、前記第1弾性部の両側に位置する第2弾性部とを有し、
前記第1弾性部の前記第1方向における弾性率が、前記第2弾性部の前記第1方向における弾性率より小さい、蓄電装置。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記第1方向において圧縮された状態で前記ケースに収容されており、
前記第1方向において、前記第1弾性部の圧縮量は、前記第2弾性部の圧縮量以上である、請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記第1方向において、前記第1弾性部の自由長の寸法は、前記第2弾性部の自由長の寸法以上である、請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記蓋部は、
前記第1方向において前記第1弾性部と並んでいる第1板部と、
前記第1方向において前記第2弾性部と並んでいる第2板部とを有し、
前記第1板部は、前記第2板部より前記積層体の近くに位置している、請求項2または請求項3に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記第1方向から見て、前記第1弾性部の面積が前記第2弾性部の面積より広い、請求項1または請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記第1方向から見て、前記第2弾性部は前記第1弾性部を取り囲んでいる、請求項1または請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記第1方向から見て、前記ケースの前記開口部は、長手方向が前記第2方向となるように構成されており、
前記第1方向および前記第2方向の両方に直交する第3方向において、前記第1弾性部は、前記弾性部材の一方端から他方端まで延びている、請求項1または請求項2に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第6826916号公報(特許文献1)には、従来の蓄電装置として、電池パックが開示されている。電池パックは、積層体と、セルケースと、第1蓋部材と、圧力センサーと、減圧装置とを有している。積層体は、積層された単セルを有する。セルケースは、剛性を有する材料から形成され、第1開口部を有しかつ積層体が配置される。第1蓋部材は、第1開口部を密閉する。第1蓋部材は、ビス等の締結部材を利用してセルケースに固定されている。第1蓋部材は、弾性体膜から形成されている。減圧装置は、圧力センサーによって計測されたセルケースの内部圧力が上限値以上になった場合に、セルケースの内部を減圧し、上記内部圧力が下限値に到達した場合に、セルケースの内部の減圧を停止する。減圧装置によってセルケースの内部が減圧されると、第1蓋部材は弾性変形し、積層体の一方の面と当接し、上記内部圧力とセルケースの外部圧力との差圧に基づく圧力を、当接した面に付与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6826916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された蓄電装置においては、積層体に適切な押し付け圧力を付与するため、圧力センサーおよび減圧装置などの構成部材が必要となる。また、圧力センサーおよび減圧装置によるセルケースの内部圧力の制御も必要となる。このため、構成部材の点数を削減する観点、および、制御を簡単にする観点から、これらの装置を用いることなく積層体に適切な押し付け圧力を付与することが望まれる。たとえば、ケースに固定された剛性の高い蓋部により、積層体に荷重を付与することが考えられる。
【0005】
しかしながら、剛性の高い蓋部により積層体に荷重を付与する場合には、積層体を構成するセルが膨張したときに問題となる。具体的には、セルの劣化またはセルの充電状態によってセルが膨張すると、積層体のうち蓋部とケースとの固定箇所から遠い部分(たとえば略中央部分)が、特に大きく膨張する。そうすると、積層体の当該部分には、蓋部からの大きな反力が作用する。これにより、積層体への荷重の大きさのばらつきが生じる。
【0006】
本開示は上記の問題点を解決するためになされたものであり、蓋部から積層体へ付与される荷重が、セルの膨張によってばらつくことを抑制できる、蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一局面に従う蓄電装置は、積層体と、ケースと、蓋部と、弾性部材とを備えている。積層体は、互いに積層された複数のセルを有している。ケースは、開口部を有している。ケースは、積層体を収容している。蓋部は、開口部を覆うように開口部の開口端に固定されている。弾性部材は、積層体と蓋部との間に位置している。弾性部材は、第1弾性部と、第2弾性部とを有している。第1弾性部は、積層体と蓋部とが互いに対向する方向である第1方向に直交する第2方向において、弾性部材のうち開口端から最も遠くに位置する部分を含んでいる。第2弾性部は、第2方向において、第1弾性部の両側に位置している。第1弾性部の第1方向における弾性率は、第2弾性部の第1方向における弾性率より小さい。
【0008】
上記の構成によれば、セルの膨張に伴い、積層体のうち第2方向において開口端から最も遠くに位置する部分が変形しようとしたときに、第1弾性部の第1方向における弾性率が第2弾性部の第1方向における弾性率より小さいため、蓋部の反力により第1弾性部が比較的大きく圧縮される。そうすると、蓋部のうち第2方向において開口端から最も遠くに位置する部分の変形が抑制される。蓋部の当該部分の変形が抑制されると、蓋部の当該部分からの反力が小さくなる。すなわち、蓋部の当該部分が積層体に付与する荷重の上昇が抑制される。ひいては、蓋部から積層体へ付与される荷重の大きさが、セルの膨張によってばらつくことを抑制できる。
【0009】
本開示の一形態において、弾性部材は、第1方向において圧縮された状態でケースに収容されている。第1方向において、第1弾性部の圧縮量は、第2弾性部の圧縮量以上である。
【0010】
上記の構成によれば、セルが膨張する前の状態において、第1弾性部の第1方向における弾性率と第2弾性部の第1方向における弾性率との差に起因する、積層体への荷重の大きさのばらつきを抑制できる。
【0011】
本開示の一形態において、第1方向において、第1弾性部の自由長の寸法は、第2弾性部の自由長の寸法以上である。
【0012】
上記の構成によれば、弾性部材を圧縮された状態でケースに収容した際に、第1弾性部の圧縮量を、第2弾性部の圧縮量より容易に大きくできる。
【0013】
本開示の一形態において、蓋部は、第1板部と、第2板部とを有している。第1板部は、第1方向において第1弾性部と並んでいる。第2板部は、第1方向において第2弾性部と並んでいる。第1板部は、第2板部より積層体の近くに位置している。
【0014】
上記の構成によれば、弾性部材を圧縮された状態でケースに収容した際に、第1板部によって第1弾性部の圧縮量を第2弾性部の圧縮量より容易に大きくできる。
【0015】
本開示の一形態において、第1方向から見て、第1弾性部の面積が第2弾性部の面積より広い。
【0016】
上記の構成によれば、セルの膨張時において、より広い範囲で蓋部の変形を抑制できる。ひいては、積層体への荷重の大きさのばらつきをより一層抑制できる。
【0017】
本開示の一形態において、第1方向から見て、第2弾性部は第1弾性部を取り囲んでいる。
【0018】
上記の構成によれば、開口端近傍の領域の全体にわたって、蓋部が、比較的弾性率の大きい第2弾性部を介して所望の荷重を積層体へ付与できる。
【0019】
本開示の一形態において、第1方向から見て、ケースの開口部は、長手方向が第2方向となるように構成されている。第1方向および第2方向の両方に直交する第3方向において、第1弾性部は、弾性部材の一方端から他方端まで延びている。
【0020】
上記の構成によれば、セルの膨張に伴う蓋部の変形が比較的大きくなる長手方向の中央領域において、第1弾性部により第3方向の全体にわたって蓋部の変形を抑制できる。ひいては、積層体への荷重の大きさのばらつきをより一層抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、蓋部から積層体へ付与される荷重大きさが、セルの膨張によってばらつくことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本開示の実施形態1に係る蓄電装置の正面図である。
図2】本開示の実施形態1に係る蓄電装置の平面図である。
図3図2の蓄電装置をIII-III線矢印方向から見た断面図である。
図4】本開示の実施形態1に係る蓄電装置における弾性部材の平面図である。
図5】本開示の実施形態1に係る蓄電装置の、ケースに蓋部を組み付ける前の状態を示す断面図である。
図6】本開示の実施形態1に係る蓄電装置の、セルが膨張した状態を示す断面図である。
図7】本開示の実施形態1の変形例における弾性部材の平面図である。
図8】本開示の実施形態2に係る蓄電装置の断面図である。
図9】本開示の実施形態2に係る蓄電装置の、ケースに蓋部を組み付ける前の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の各実施形態に係る蓄電装置について説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0024】
(実施形態1)
図1は、本開示の実施形態1に係る蓄電装置の正面図である。図2は、本開示の実施形態1に係る蓄電装置の平面図である。図3は、図2の蓄電装置をIII-III線矢印方向から見た断面図である。図1から図3に示される、本開示の実施形態1に係る蓄電装置1は、モータとエンジンとの少なくとも一方の動力を用いて走行可能なハイブリッド車両、または、電気エネルギによって得られた駆動力で走行する電動車両等の車両に搭載され得る。
【0025】
蓄電装置1は、積層体10と、ケース20と、蓋部30と、弾性部材40とを備えている。
【0026】
積層体10は、複数のセル11と、第1集電板12と、第2集電板13とを備えている。
【0027】
セル11は、たとえば、いわゆるバイポーラ電池である。より具体的には、複数のセル11は、ラミネート型の水系電池であり、リチウムイオン電池等の二次電池である。なお、セル11は、上記に限定されず、全固体電池、キャパシタ等で構成されていてもよい。
【0028】
複数のセル11は、第1方向DR1において互いに積層されている。複数のセル11は、第1方向DR1に直交する第2方向DR2に互いに積層されていてもよい。複数のセル11は、第1方向DR1および第2方向DR2の両方に直交する第3方向DR3に互いに積層されていてもよい。
【0029】
蓄電装置1が車両に搭載された搭載状態において、第1方向DR1は、車両の上下方向と平行となる。上記搭載状態において、第2方向DR2は車両の左右方向と平行となる。上記搭載状態において、第3方向DR3は車両の前後方向と平行となる。
【0030】
第1集電板12は、複数のセル11の積層方向(第1方向DR1)において、複数のセル11全体の一方側に位置している。第1集電板12は、たとえば正極用の集電板である。第1集電板12は、不図示の正極端子に接続されている。
【0031】
第2集電板13は、複数のセル11の積層方向(第1方向DR1)において、複数のセル11全体の他方側に位置している。第2集電板13は、たとえば負極用の集電板である。第2集電板13は、不図示の負極端子に接続されている。
【0032】
蓄電装置1は、スペーサ15および絶縁部材16をさらに備えていてもよい。スペーサ15は、第1方向DR1において、積層体10と並んでいる。本実施形態において、第2集電板13から見て、スペーサ15は、複数のセル11の反対側に位置している。スペーサ15は、剛性の比較的高い材料で構成されていてもよいし、容易に弾性変形可能な材料で構成されていてもよい。絶縁部材16は、スペーサ15から見て、積層体10とは反対側に位置している。
【0033】
ケース20は、比較的高剛性の材料で形成されている。ケース20は、開口部21を有している。第1方向DR1から見て、ケース20の開口部21は、長手方向が第2方向DR2となるように構成されている。開口部21は、第1方向DR1から見て矩形状の外形を有している。また、ケース20は、開口端22を有している。開口部21は、開口端22によって囲まれた空間である。開口端22は、第1方向DR1から見て矩形環状である。開口端22には、第1方向DR1に延びる複数の孔部221が形成されている。複数の孔部221は、第1方向DR1から見て、開口端22の延びる方向に沿って環状に並んでいる。
【0034】
ケース20は、底部23と、側壁部24とをさらに有している。底部23は、ケース20において開口部21とは反対側に位置している。側壁部24は、底部23から第1方向DR1に延びている。開口端22は、側壁部24の第1方向DR1における先端部である。
【0035】
本実施形態において、底部23と側壁部24とは、単一の構成部材で形成されている。底部23と側壁部24とは、互いに異なる構成部材でそれぞれ形成されていてもよい。
【0036】
ケース20は、積層体10と、スペーサ15と、絶縁部材16とを収容している。絶縁部材16は、ケース20の底部23上に載置されている。スペーサ15は、絶縁部材16を介してケース20の底部23上に載置されている。積層体10は、スペーサ15および絶縁部材16を介してケース20の底部23上に載置されている。
【0037】
蓋部30は、開口部21を覆うように開口部21の開口端22に固定されている。蓋部30は、第1方向DR1から見て環状の開口端22の全体にわたって固定されている。蓋部30は、複数の貫通孔34を有している。複数の貫通孔34は、第1方向DR1から見て、複数の孔部221とそれぞれ重なるように位置している。本実施形態において、蓄電装置1は複数の締結部材35をさらに備えている。複数の締結部材35は、それぞれ複数の貫通孔34に挿通され、蓋部30と係止する。複数の締結部材35は、それぞれ、複数の孔部221と嵌合する。複数の締結部材35は、締結部材35は具体的にはボルトである。
【0038】
なお、蓋部30をケース20に固定する方法は上記の方法に限定されない。たとえば、蓋部30は、溶接により開口端22と接合されていてもよい。
【0039】
弾性部材40は、積層体10と蓋部30との間に位置している。弾性部材40は、積層体10および蓋部30のそれぞれと当接している。弾性部材40と積層体10との間には、他のスペーサおよび他の絶縁部材などの他の部材が位置してもよい。弾性部材40と蓋部30との間には、他のスペーサおよび他の絶縁部材などの他の部材が位置してもよい。
【0040】
弾性部材40の第2方向DR2の長さは、積層体10の長さと略等しい。弾性部材40の第2方向DR2の長さは、積層体10より長くてもよいし、短くてもよい。第1方向DR1から見て、弾性部材40は積層体10の全体を覆っていることが好ましい。
【0041】
弾性部材40は、第1弾性部41と、第2弾性部42とを有している。第1弾性部41および第2弾性部42は、絶縁材料で形成されていることが好ましい。第1弾性部41および第2弾性部42は、たとえばシリコーンゴムまたはウレタンゴムなどの合成ゴム、樹脂材料からなる発泡体、または、板ばねもしくはコイルばねなどのバネであってもよい。第1弾性部41および第2弾性部42は、それぞれ個別の複数の構成部材からなってもよい。第1弾性部41および第2弾性部42は、単一の構成部材からなってもよい。
【0042】
第1弾性部41は、積層体10と蓋部30とが互いに対向する方向である第1方向DR1に直交する第2方向DR2において、弾性部材40のうち開口端22から最も遠くに位置する部分を含んでいる。本実施形態において、当該部分は、第2方向DR2における弾性部材40の略中央部分である。
【0043】
図4は、本開示の実施形態1に係る蓄電装置における弾性部材の平面図である。図3および図4に示すように、第2弾性部42は、第2方向DR2において、第1弾性部41の両側に位置している。具体的には、第1方向DR1から見て、第2弾性部42は第1弾性部41を取り囲んでいる。また、第1方向DR1から見て、第1弾性部41の面積が第2弾性部42の面積より広い。なお、第1方向DR1から見て、第1弾性部41の面積が第2弾性部42の面積より狭くてもよい。
【0044】
第1方向DR1から見たときに、弾性部材40は矩形状の外形を有している。第1弾性部41も、第1方向DR1から見たときに矩形状の外形を有している。ただし、第1方向DR1から見たときの弾性部材40、第1弾性部41、および第2弾性部42の外形形状は特に限定されない。
【0045】
図5は、本開示の実施形態1に係る蓄電装置の、ケースに蓋部を組み付ける前の状態を示す断面図である。図3および図5に示すように、弾性部材40は、第1方向DR1において圧縮された状態でケース20に収容されている。
【0046】
第1方向DR1における、第1弾性部41の自由長の寸法は、第2弾性部42の自由長の寸法より大きい。このため、蓋部30がケース20に組み付けられた後において、第1弾性部41の圧縮量は、第2弾性部42の圧縮量より大きくなる。なお、第1方向DR1における、第1弾性部41の自由長の寸法は、第2弾性部42の自由長の寸法と略同一であってもよい。
【0047】
本開示においては、第1弾性部41の第1方向DR1における弾性率は、第2弾性部42の第1方向DR1における弾性率より小さい。これにより、蓋部30から積層体10へ付与される荷重の大きさが、セル11の膨張によってばらつくことを抑制できる。この効果の詳細について以下に説明する。
【0048】
図6は、本開示の実施形態1に係る蓄電装置の、セルが膨張した状態を示す断面図である。図6に示すように、セル11の膨張に伴い、積層体10のうち第2方向DR2において開口端22から最も遠くに位置する部分(本実施形態においては第2方向DR2における略中央部分)が変形しようとしたときに、第1弾性部41の第1方向DR1における弾性率が第2弾性部42の第1方向DR1における弾性率より小さいため、蓋部30の反力により第1弾性部41が比較的大きく圧縮される。そうすると、蓋部30のうち第2方向DR2において開口端22から最も遠くに位置する部分(本実施形態においては第2方向DR2における略中央部分)の変形が抑制される。蓋部30の当該部分の変形が抑制されると、蓋部30の当該部分からの反力が小さくなる。すなわち、蓋部30の当該部分が積層体10に付与する荷重の上昇が抑制される。よって、蓋部30から積層体10へ付与される荷重の大きさが、セル11の膨張によってばらつくことを抑制できる。
【0049】
なお、蓄電装置が車両に搭載された状態においては、第2方向DR2に並ぶケース20の一対の側壁部24が車両の車体に保持される。このため、凹凸または段差などを有する路面上を車両が走行したときに、その衝撃により、側壁部24へ第2方向DR2に応力が加わる。そして、側壁部24へ応力が加わると、蓋部30は、開口端22との固定箇所を支点として、第1方向DR1に共振する。特に、波状路を車両が走行して、特定の周期で側壁部24に応力が加えられた場合、蓋部30の第1方向DR1の共振が励起される。この大きな共振により、蓋部30のうち開口端22から最も遠くに位置する部分が、大きく変形しようとする。この場合においても、第1弾性部41の第1方向DR1における弾性率が、第2弾性部42の第1方向DR1における弾性率より小さいため、蓋部30の上記部分によって積層体10に付与される荷重の上昇が第1弾性部41により抑制される。これにより、蓋部30から積層体10へ付与される荷重の大きさのばらつきを抑制できる。
【0050】
また、図3および図5に示すように、第1弾性部41の圧縮量は、第2弾性部42の圧縮量より大きい。このため、セル11が膨張する前の状態において、第1弾性部41の第1方向DR1における弾性率と第2弾性部42の第1方向DR1における弾性率との差に起因する、積層体10への荷重の大きさのばらつきを抑制できる。
【0051】
第1方向DR1における、第1弾性部41の自由長の寸法は、第2弾性部42の自由長の寸法より大きい。このため、弾性部材40を圧縮された状態でケース20に収容した際に、第1弾性部41の圧縮量を、第2弾性部42の圧縮量より容易に大きくできる。
【0052】
さらに、図4に示すように、本開示の一形態において、第1方向DR1から見て、第1弾性部41の面積は、第2弾性部42の面積より広い。このため、セル11の膨張時において、より広い範囲で蓋部30の変形を抑制できる。ひいては、積層体10への荷重の大きさのばらつきをより一層抑制できる。
【0053】
本開示の一形態において、第1方向DR1から見て、第2弾性部42は第1弾性部41を取り囲んでいる。このため、開口端22近傍の領域の全体にわたって、蓋部30が、比較的弾性率の大きい第2弾性部42を介して所望の荷重を積層体10へ付与できる。
【0054】
なお、第1方向DR1から見たときの第1弾性部41および第2弾性部42の構成は、上述の構成に限定されない。図7は、本開示の実施形態1の変形例における弾性部材の平面図である。
【0055】
図7に示すように、本開示の実施形態1の変形例においては、第1方向DR1および第2方向DR2の両方に直交する第3方向DR3において、第1弾性部41aが、弾性部材40の一方端から他方端まで延びている。上記の構成によれば、セル11の膨張に伴う蓋部30の変形が比較的大きくなる長手方向(第2方向DR2)の中央領域において、第3方向DR3の全体にわたって第1弾性部41aにより蓋部30の変形を抑制できる。ひいては、積層体10への荷重の大きさのばらつきをより一層抑制できる。
【0056】
なお、本変形例においては、第2方向DR2において、一対の第2弾性部42aが、第1弾性部41aの両側にそれぞれ位置している。これらの第2弾性部42aも、第3方向DR3において弾性部材40の一方端から他方端まで延びている。
【0057】
(実施形態2)
次に、本開示の実施形態2に係る蓄電装置について説明する。本開示の実施形態2に係る蓄電装置は、主に、蓋部の形状が、本開示の実施形態1における蓋部30と異なっている。このため、本開示の実施形態1に係る蓄電装置1と同様の構成については、説明を繰り返さない。
【0058】
図8は、本開示の実施形態2に係る蓄電装置の断面図である。図8おいては、図3と同様の断面視にて図示している。図8に示すように、本開示の実施形態2に係る蓄電装置1Aにおいては、蓋部30Aが、第1板部31Aと、第2板部32Aとを有している。第1板部31Aは、第1方向DR1において第1弾性部41と並んでいる。第2板部32Aは、第1方向DR1において第2弾性部42と並んでいる。第1板部31Aは、第2板部32Aより積層体10の近くに位置している。
【0059】
上記の構成によれば、弾性部材40を圧縮された状態でケース20に収容した際に、第1板部31Aによって第1弾性部41の圧縮量を第2弾性部42の圧縮量より容易に大きくできる。
【0060】
図9は、本開示の実施形態2に係る蓄電装置の、ケースに蓋部を組み付ける前の状態を示す断面図である。図9に示すように、本実施形態においては、第1方向DR1における第1弾性部41の自由長の寸法と、第2弾性部42の自由長の寸法とは互いに等しい。しかしながら、第1板部31Aと第2板部32Aとの上記の位置関係により、第1弾性部41の圧縮量は、第2弾性部42の圧縮量より大きくなる。これにより、セル11が膨張する前の状態において、第1弾性部41の第1方向DR1における弾性率と第2弾性部42の第1方向DR1における弾性率との差に起因する、積層体10への荷重の大きさのばらつきを抑制できる。なお、第1方向DR1における第1弾性部41の自由長の寸法は、第2弾性部42の自由長の寸法より長くてもよいし、短くてもよい。第1弾性部41および第2弾性部42の自由長の寸法の関係によらず、第1板部31Aと第2板部32Aとの上記の位置関係により、第1方向DR1において、第1弾性部41の圧縮量が、第2弾性部42の圧縮量より大きくなることも好ましい。
【0061】
本開示の実施形態2に係る蓄電装置1Aにおいても、第1弾性部41の第1方向DR1における弾性率が、第2弾性部42の第1方向DR1における弾性率より小さい。これにより、蓋部30から積層体10へ付与される荷重の大きさが、セル11の膨張によってばらつくことを抑制できる。
【0062】
上述した実施形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。
【0063】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0064】
1,1A 蓄電装置、10 積層体、11 セル、12 第1集電板、13 第2集電板、15 スペーサ、16 絶縁部材、20 ケース、21 開口部、22 開口端、221 孔部、23 底部、24 側壁部、30,30A 蓋部、31A 第1板部、32A 第2板部、34 貫通孔、35 締結部材、40 弾性部材、41,41a 第1弾性部、42,42a 第2弾性部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9