(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】電池、電池モジュールおよび電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/184 20210101AFI20241008BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20241008BHJP
H01M 50/548 20210101ALI20241008BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20241008BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20241008BHJP
H01M 50/124 20210101ALI20241008BHJP
【FI】
H01M50/184 C
H01M50/105
H01M50/548 301
H01M50/119
H01M50/121
H01M50/124
(21)【出願番号】P 2022139559
(22)【出願日】2022-09-01
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千原 真志
【審査官】吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-192154(JP,A)
【文献】特開2002-319375(JP,A)
【文献】特開平11-260327(JP,A)
【文献】特開2014-232592(JP,A)
【文献】特開2005-317312(JP,A)
【文献】特開2023-163373(JP,A)
【文献】特開2024-025892(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3139424(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0303413(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0358044(US,A1)
【文献】米国特許第6482544(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/00 - 50/198
H01M 50/50 - 50/598
H01G 11/00 - 11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と、
前記電極体の側面部に配置された側面部材と、
前記電極体および前記側面部材を覆うラミネートフィルムと、
を備える電池であって、
前記電池を前記側面部材側から側面視した場合に、前記側面部材の外縁は、前記電極体の外縁より内側に位置し、
前記ラミネートフィルムは、前記側面部材の前記外縁を構成する面、および前記電極体の前記外縁を構成する面を覆うように配置され、
前記側面部材上に、前記ラミネートフィルムの内面同士が融着した融着部が配置され、
前記融着部の前記側面部材側の始点における屈曲部が湾曲形状である、電池。
【請求項2】
前記ラミネートフィルムが、金属層と、前記融着部を形成する内面側に融着樹脂層と、を有し、前記側面部材が前記ラミネートフィルムと接する面に被覆樹脂層を有する、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記屈曲部における湾曲形状の曲率半径Rが下記式(1)および式(3)を満たす、請求項2に記載の電池。
R<(((2Δt(a+b+4t
1))/(4-π))
1/2)-r・・・式(1)
R<b/2・・・式(3)
なお、式(1)および式(3)中の各記号は以下を表す。
a:前記側面部材の幅(mm)
b:前記側面部材の厚さ(mm)
t
1:融着前の前記融着樹脂層の平均厚さと前記被覆樹脂層の平均厚さとの和(mm)
t
2:前記融着部における融着後の前記融着樹脂層の平均厚さと前記被覆樹脂層の平均厚さとの和(mm)
Δt:t
1-t
2(mm)
r:前記ラミネートフィルムの平均厚さ(mm)
R:前記屈曲部における湾曲形状の曲率半径(mm)
【請求項4】
前記屈曲部における湾曲形状の曲率半径Rが下記式(2)および式(3)を満たす、請求項2に記載の電池。
R<(((((a+2t
1)(b+2t
1)-ab)×0.05)/(4-π))
1/2)-r・・・式(2)
R<b/2・・・式(3)
なお、式(2)および式(3)中の各記号は以下を表す。
a:前記側面部材の幅(mm)
b:前記側面部材の厚さ(mm)
t
1:融着前の前記融着樹脂層の平均厚さと前記被覆樹脂層の平均厚さとの和(mm)
r:前記ラミネートフィルムの平均厚さ(mm)
R:前記屈曲部における湾曲形状の曲率半径(mm)
【請求項5】
前記屈曲部における湾曲形状の曲率半径Rが、前記金属層の平均厚さ以上である、請求項2に記載の電池。
【請求項6】
前記融着部が、前記屈曲部以外の領域に折り目痕を有しない、請求項1に記載の電池。
【請求項7】
前記電池を厚さ方向から平面視した場合に、前記融着部は、前記側面部材側の前記ラミネートフィルムの端部位置αから、前記側面部材および前記電極体の境界に相当する前記ラミネートフィルムの位置βまで、連続的に配置されている、請求項1に記載の電池。
【請求項8】
前記融着部は、前記側面部材の前記外縁を構成する角部に配置されている、請求項1に記載の電池。
【請求項9】
前記電池を前記側面部材側から側面視した場合に、前記側面部材の形状は、四角形である、請求項1に記載の電池。
【請求項10】
前記側面部材上に、複数の前記融着部が配置されている、請求項1に記載の電池。
【請求項11】
前記側面部材が、集電端子である、請求項1に記載の電池。
【請求項12】
前記電池は、一対の前記側面部材を備え、
前記一対の前記側面部材は、前記電極体に対して、対向するように配置されている、請求項1に記載の電池。
【請求項13】
厚さ方向に積層された複数の電池を有する電池モジュールであって、
前記電池は、請求項1に記載の電池である、電池モジュール。
【請求項14】
前記厚さ方向において隣り合う、一対の前記側面部材において、一方の前記側面部材上に配置された前記ラミネートフィルムの主面部と、他方の前記側面部材上に配置された前記ラミネートフィルムの主面部とが接触していない、請求項13に記載の電池モジュール。
【請求項15】
請求項1に記載の電池の製造方法であって、
前記電極体および前記側面部材を有する構造体であって、前記電池を前記側面部材側から側面視した場合に、前記側面部材の形状は、四角形であり、前記四角形は、第1辺と、前記第1辺に隣接する第2辺と、前記第2辺に隣接し、前記第1辺と対向する第3辺と、前記第3辺に隣接し、前記第2辺と対向する第4辺とを有する構造体を準備する準備工程と、
前記構造体における前記電極体の前記外縁を構成する面を、前記ラミネートフィルムで覆う第1被覆工程と
前記構造体における前記側面部材の前記外縁を構成する面を、前記ラミネートフィルムで覆う第2被覆工程と、
を有し、
前記第2被覆工程は、
前記側面部材における前記第1辺側および前記第3辺側から、それぞれ、第1治具および第3治具を押し込み、前記第1辺および前記第3辺に、それぞれ、前記ラミネートフィルムを密着させる第1密着処理と、
前記第1密着処理の後に、前記側面部材における前記第2辺側および前記第4辺側から、それぞれ、第2治具および第4治具を押し込み、前記第2辺および前記第4辺に、それぞれ、前記ラミネートフィルムを密着させる第2密着処理と、
を有し、
前記第1治具および前記第3治具の少なくとも一方は、前記融着部における前記屈曲部の湾曲形状を形成する箇所が面取り形状である、電池の製造方法。
【請求項16】
前記準備工程の後、前記第1被覆工程の前に、
前記ラミネートフィルムに対し、前記電極体における角部に対向する位置に予め折り曲げ線をつける折り曲げ工程を有し、
前記折り曲げ工程では、前記ラミネートフィルムの前記側面部材に対向する位置には折り曲げ線をつけない、請求項15に記載の電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池、電池モジュールおよび電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の電池は、通常、正極集電体、正極活物質層、電解質層、負極活物質層および負極集電体を有する電極体を備える。電極体は、例えば、外装材に囲まれた内部空間に封止される。特許文献1には、電極組立体と、電極組立体の外部を囲む外装材と、上記外装材を密封する第1および第2カバーとを含み、第1電極端子および第2電極端子が、それぞれ第1カバーおよび第2カバーを介して外部に引き出されたリチウムポリマー二次電池が開示されている。また、特許文献1には、外装材として、ラミネートフィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
後述する
図3Aおよび
図3Bに示すように、側面部材の寸法を、電極体の寸法より小さくする場合がある。このような寸法関係にある側面部材をラミネートフィルムで封止する場合、ラミネートフィルムの側面部材を覆う領域の余剰部位を折り畳んで内面同士を融着させて融着部を形成することで封止する方法がある。しかし、融着部の側面部材側の始点における屈曲部において、ラミネートフィルムに破損が生じることがあった。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、ラミネートフィルムにおける融着部の側面部材側の始点における屈曲部での破損を抑制した電池、該電池を有する電池モジュール、および該電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>
電極体と、
前記電極体の側面部に配置された側面部材と、
前記電極体および前記側面部材を覆うラミネートフィルムと、
を備える電池であって、
前記電池を前記側面部材側から側面視した場合に、前記側面部材の外縁は、前記電極体の外縁より内側に位置し、
前記ラミネートフィルムは、前記側面部材の前記外縁を構成する面、および前記電極体の前記外縁を構成する面を覆うように配置され、
前記側面部材上に、前記ラミネートフィルムの内面同士が融着した融着部が配置され、
前記融着部の前記側面部材側の始点における屈曲部が湾曲形状である、電池。
<2>
前記ラミネートフィルムが、金属層と、前記融着部を形成する内面側に融着樹脂層と、を有し、前記側面部材が前記ラミネートフィルムと接する面に被覆樹脂層を有する、<1>に記載の電池。
<3>
前記屈曲部における湾曲形状の曲率半径Rが下記式(1)および式(3)を満たす、<2>に記載の電池。
R<(((2Δt(a+b+4t1))/(4-π))1/2)-r・・・式(1)
R<b/2・・・式(3)
なお、式(1)および式(3)中の各記号は以下を表す。
a:前記側面部材の幅(mm)
b:前記側面部材の厚さ(mm)
t1:融着前の前記融着樹脂層の平均厚さと前記被覆樹脂層の平均厚さとの和(mm)
t2:前記融着部における融着後の前記融着樹脂層の平均厚さと前記被覆樹脂層の平均厚さとの和(mm)
Δt:t1-t2(mm)
r:前記ラミネートフィルムの平均厚さ(mm)
R:前記屈曲部における湾曲形状の曲率半径(mm)
<4>
前記屈曲部における湾曲形状の曲率半径Rが下記式(2)および式(3)を満たす、<2>または<3>に記載の電池。
R<(((((a+2t1)(b+2t1)-ab)×0.05)/(4-π))1/2)-r・・・式(2)
R<b/2・・・式(3)
なお、式(2)および式(3)中の各記号は以下を表す。
a:前記側面部材の幅(mm)
b:前記側面部材の厚さ(mm)
t1:溶着前の前記融着樹脂層の平均厚さと前記被覆樹脂層の平均厚さとの和(mm)
r:前記ラミネートフィルムの平均厚さ(mm)
R:前記屈曲部における湾曲形状の曲率半径(mm)
<5>
前記屈曲部における湾曲形状の曲率半径Rが、前記金属層の平均厚さ以上である、<2>~<4>のいずれか1項に記載の電池。
<6>
前記融着部が、前記屈曲部以外の領域に折り目痕を有しない、<1>~<5>のいずれか1項に記載の電池。
<7>
前記電池を厚さ方向から平面視した場合に、前記融着部は、前記側面部材側の前記ラミネートフィルムの端部位置αから、前記側面部材および前記電極体の境界に相当する前記ラミネートフィルムの位置βまで、連続的に配置されている、<1>~<6>のいずれか1項に記載の電池。
<8>
前記融着部は、前記側面部材の前記外縁を構成する角部に配置されている、<1>~<7>のいずれか1項に記載の電池。
<9>
前記電池を前記側面部材側から側面視した場合に、前記側面部材の形状は、四角形である、<1>~<8>のいずれか1項に記載の電池。
<10>
前記側面部材上に、複数の前記融着部が配置されている、<1>~<9>のいずれか1項に記載の電池。
<11>
前記側面部材が、集電端子である、<1>~<10>のいずれか1項に記載の電池。
<12>
前記電池は、一対の前記側面部材を備え、
前記一対の前記側面部材は、前記電極体に対して、対向するように配置されている、<1>~<11>のいずれか1項に記載の電池。
<13>
厚さ方向に積層された複数の電池を有する電池モジュールであって、
前記電池は、<1>~<12>のいずれか1項に記載の電池である、電池モジュール。
<14>
前記厚さ方向において隣り合う、一対の前記側面部材において、一方の前記側面部材上に配置された前記ラミネートフィルムの主面部と、他方の前記側面部材上に配置された前記ラミネートフィルムの主面部とが接触していない、<13>に記載の電池モジュール。
<15>
<1>~<12>のいずれか1項に記載の電池の製造方法であって、
前記電極体および前記側面部材を有する構造体であって、前記電池を前記側面部材側から側面視した場合に、前記側面部材の形状は、四角形であり、前記四角形は、第1辺と、前記第1辺に隣接する第2辺と、前記第2辺に隣接し、前記第1辺と対向する第3辺と、前記第3辺に隣接し、前記第2辺と対向する第4辺とを有する構造体を準備する準備工程と、
前記構造体における前記電極体の前記外縁を構成する面を、前記ラミネートフィルムで覆う第1被覆工程と
前記構造体における前記側面部材の前記外縁を構成する面を、前記ラミネートフィルムで覆う第2被覆工程と、
を有し、
前記第2被覆工程は、
前記側面部材における前記第1辺側および前記第3辺側から、それぞれ、第1治具および第3治具を押し込み、前記第1辺および前記第3辺に、それぞれ、前記ラミネートフィルムを密着させる第1密着処理と、
前記第1密着処理の後に、前記側面部材における前記第2辺側および前記第4辺側から、それぞれ、第2治具および第4治具を押し込み、前記第2辺および前記第4辺に、それぞれ、前記ラミネートフィルムを密着させる第2密着処理と、
を有し、
前記第1治具および前記第3治具の少なくとも一方は、前記融着部における前記屈曲部の湾曲形状を形成する箇所が面取り形状である、電池の製造方法。
<16>
前記準備工程の後、前記第1被覆工程の前に、
前記ラミネートフィルムに対し、前記電極体における角部に対向する位置に予め折り曲げ線をつける折り曲げ工程を有し、
前記折り曲げ工程では、前記ラミネートフィルムの前記側面部材に対向する位置には折り曲げ線をつけない、<15>に記載の電池の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ラミネートフィルムにおける融着部の側面部材側の始点における屈曲部での破損を抑制した電池、該電池を有する電池モジュール、および該電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本開示における電極体を例示する概略斜視図である。
【
図1B】本開示における電極体および側面部材を例示する概略斜視図である。
【
図2A】本開示における電極体、側面部材およびラミネートフィルムの封止前の状態を例示する概略斜視図である。
【
図2B】本開示における電極体、側面部材およびラミネートフィルムの封止後の状態を例示する概略斜視図である。
【
図3A】本開示における電極体、側面部材を例示する概略側面図である。
【
図3B】本開示における電極体、側面部材を例示する概略断面図である。
【
図3C】本開示における電極体、側面部材およびラミネートフィルムを例示する概略側面図である。
【
図3D】本開示における電極体、側面部材およびラミネートフィルムを例示する概略断面図である。
【
図4】本開示における電池の一部を例示する概略側面図である。
【
図5】本開示における電池の一部を例示する概略側面図である。
【
図6】本開示における電池の一部を例示する概略断面図である。
【
図7】本開示における電池の一部を例示する概略平面図である。
【
図8A】本開示における電池の一部を例示する概略断面図である。
【
図8B】本開示における電池の一部を例示する概略断面図である。
【
図9A】本開示における電池の一部を例示する概略側面図である。
【
図9B】本開示における電池の一部を例示する概略側面図である。
【
図9C】本開示における電池の一部を例示する概略側面図である。
【
図10】本開示における電極体を例示する概略断面図である。
【
図11】本開示における電池モジュールを例示する概略斜視図である。
【
図12】本開示における電池モジュールを例示する概略断面図である。
【
図13】本開示におけるラミネートフィルムを例示する概略平面図である。
【
図14A】本開示における第2被覆工程を例示する概略側面図である。
【
図14B】本開示における第2被覆工程を例示する概略側面図である。
【
図14C】本開示における第2被覆工程を例示する概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示における電池について、図面を用いて詳細に説明する。以下に示す各図は、模式的に示したものであり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。また、本明細書において、ある部材に対して他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」または「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上または直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方または下方に、別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0010】
A.電池
図1Aおよび
図1Bは、本開示における電極体および側面部材を例示する概略斜視図である。
図1Aに示す電極体10は、頂面部11と、頂面部11に対向する底面部12と、頂面部11および底面部12を連結する、4つの側面部(第1側面部13、第2側面部14、第3側面部15および第4側面部16)と、を有する。また、
図1Bにおいて、電極体10における第1側面部13に、第1側面部材20Aが配置され、電極体10における第3側面部15に、第2側面部材20Bが配置されている。例えば、第1側面部材20Aは正極集電端子であり、第2側面部材20Bは負極集電端子である。
【0011】
図2Aおよび
図2Bは、本開示における電極体、側面部材およびラミネートフィルムを例示する概略斜視図である。
図2Aに示すように、ラミネートフィルム30は、例えば1枚のフィルムである。また、
図2A、
図2Bに示すように、ラミネートフィルム30は、電極体10における底面部12、第2側面部14、頂面部11および第4側面部16の全体を覆うように折り畳まれる。一方、
図2Bにおいて、第1側面部材20Aの少なくとも一部、および、第2側面部材20Bの少なくとも一部は、折り畳まれたラミネートフィルム30の内側に位置している。
【0012】
図3Aは、本開示における電極体および側面部材を例示する概略側面図であり、
図3Bは、
図3AのA-A断面図である。
図3A、
図3Bに示すように、電極体10および側面部材20を、側面部材20側から観察した場合に、側面部材20の外縁E2は、電極体10の外縁E1より内側に位置する。すなわち、側面部材20の寸法は、電極体10の寸法より小さい。このような寸法関係を採用することで、例えば複数の電池を積層した場合に、隣り合う側面部材20が接触することを防止できる。隣り合う側面部材20の接触を防止することで、電池の破損が生じにくくなる。
【0013】
図3Cは、本開示における電極体、側面部材およびラミネートフィルムを例示する概略側面図であり、
図3Dは、
図3CのA-A断面図である。なお、
図3Dおよび
図3Cでは側面部材がラミネートフィルムによって封止される前の状態を示す。
図3C、
図3Dに示すように、電極体10、側面部材20およびラミネートフィルム30を、側面部材20側から観察した場合に、ラミネートフィルム30と、側面部材20との間に、空間Sが生じる。そのため、側面部材20をラミネートフィルム30で封止する場合、
図4に示すように、ラミネートフィルム30の余剰部位を折り畳んで内面同士を融着させて融着部Xを形成することで封止する方法がある。しかし、融着部Xを形成することでこの融着部Xの側面部材20側の始点に折り曲げられた屈曲部が形成され、この屈曲部においてラミネートフィルム30に破損が生じることがある。
【0014】
これに対して、本開示における電池は、
図5に示すように、融着部Xの側面部材20側の始点における屈曲部34が湾曲形状を有する。
本開示によれば、融着部Xの側面部材20側の始点における屈曲部34が湾曲形状であることから、屈曲部34における特定の箇所に応力が集中することが抑制され、ラミネートフィルム30における融着部Xの屈曲部34での破損を抑制した電池となる。
【0015】
1.電池の構成
本開示における電池は、電極体と、側面部材と、ラミネートフィルムと、を少なくとも備える。
【0016】
(1)電極体
本開示における電極体は、電池の発電要素として機能する。電極体の形状は特に限定されないが、例えば、
図1Aに示すように、頂面部11と、頂面部11に対向する底面部12と、頂面部11および底面部12を連結する、4つの側面部(第1側面部13、第2側面部14、第3側面部15および第4側面部16)と、を有する。頂面部11および底面部12は、いずれも電極体の主面に該当し、主面の法線方向を、厚さ方向と定義することができる。また、第1側面部13および第3側面部15は対向するように配置されている。同様に、第2側面部14および第4側面部16は対向するように配置されている。
【0017】
頂面部の形状は、特に限定されないが、例えば、正方形、長方形、菱形、台形、平行四辺形等の四角形が挙げられる。
図1Aにおける頂面部11の形状は、長方形である。また、頂面部の形状は、四角形以外の多角形であってもよく、円形等の曲線を有する形状であってもよい。また、底面部の形状については、頂面部の形状と同様である。側面部の形状は、特に限定されないが、例えば、正方形、長方形、菱形、台形、平行四辺形等の四角形が挙げられる。
【0018】
(2)側面部材
本開示における側面部材は、電極体の側面部に配置される。本開示における電池は、1つの電極体に対して、1つの側面部材を備えていてもよく、2つ以上の側面部材を備えていてもよい。後者の場合、例えば
図1Bに示すように、電極体10に対して、一対の側面部材20(第1側面部材20Aおよび第2側面部材20B)が、対向するように配置されていてもよい。また、
図1Bでは、一対の側面部材20が、電極体10の長手方向において、対向するように配置されている。一方、特に図示しないが、一対の側面部材は、電極体の短手方向において、対向するように配置されていてもよい。
【0019】
側面部材の形状は、特に限定されないが、例えば、正方形、長方形、菱形、台形、平行四辺形等の四角形が挙げられる。
図3Aにおける側面部材20の形状は、長方形である。この長方形では、厚さ方向D
Tに平行な方向に沿って短辺が延在し、厚さ方向D
Tに垂直な方向に沿って長辺が延在している。また、側面部材の形状は、四角形以外の多角形であってもよく、円形等の曲線を有する形状であってもよい。また、側面部材は、2つの辺(直線の辺)が交差する角部を有していてもよい。
【0020】
電池を側面部材側から側面視した場合に、側面部材の外縁は、電極体の外縁より内側に位置する。例えば、
図3Aに示すように、側面部材20の外縁E2は、電極体10の外縁E1より内側に位置する。換言すると、側面部材20の外縁E2は、全周にわたって、電極体10の外縁E1に包含されている。また側面部材20の寸法は、電極体10の寸法より小さい。
【0021】
例えば
図3Aにおいて、電極体10における外縁E1の長さ(全周長さ)をL1とし、側面部材20の外縁E2の長さ(全周長さ)をL2とする。L1に対するL2の割合(L2/L1)は、例えば、0.7以上、1未満であり、0.8以上、0.95以下であってもよい。また、例えば
図3Aにおいて、厚さ方向D
Tにおける外縁E1の長さをLaとし、厚さ方向D
Tにおける外縁E2の長さをLbとする。Laに対するLbの割合(Lb/La)は、例えば、0.5以上、1未満であり、0.8以上、0.95以下であってもよい。また、例えば
図3Aにおいて、厚さ方向D
Tに直交する方向における外縁E1の長さをLcとし、厚さ方向D
Tに直交する方向における外縁E2の長さをLdとする。Lcに対するLdの割合(Ld/Lc)は、例えば、0.5以上、1未満であり、0.8以上、0.95以下であってもよい。また、例えば
図3Aにおいて、外縁E1と外縁E2との隙間の長さをδとする。δは、0mmより大きく、0.3mm以上であってもよく、0.5mm以上であってよい。一方、δは、例えば、1.5mm以下である。
【0022】
(3)ラミネートフィルム
本開示におけるラミネートフィルムは、電極体を覆い、側面部材とともに電極体を封止する。
図2Aおよび
図2Bに示すように、電極体10および側面部材20を、側面部材20側から観察した場合に、ラミネートフィルム30は、側面部材20の上記外縁を構成する面、および、電極体10の上記外縁を構成する面を覆うように配置される。
【0023】
また、
図4に示すように、側面部材20上に、ラミネートフィルム30の内面同士が融着した融着部Xが配置される。融着部Xにおける融着面は空隙を有しないことが好ましい。融着部Xは、
図5に示すように、側面部材側の始点における屈曲部34が湾曲形状を有する。これにより、ラミネートフィルム30における融着部Xの屈曲部34での破損を抑制することができる。なお、湾曲形状とは、目視で確認できるような角が無く連続して曲がっている形状を指す。
【0024】
また、
図4には、ラミネートフィルム30の端部同士が融着した端部密着部Yが配置されている。端部密着部Yは側面部材20の形状に合わせて、折り曲げ加工がされていてもよい。余剰な空間を低減できるからである。
【0025】
ここで、融着部Xの屈曲部34の湾曲形状における曲率半径Rについて、
図6を用いて説明する。
屈曲部34における湾曲形状の曲率半径Rは下記式(1)を満たすことが好ましい。
R<(((2Δt(a+b+4t
1))/(4-π))
1/2)-r・・・式(1)
なお、式(1)中の各記号は以下を表す。
a:側面部材20の幅(mm)
b:側面部材20の厚さ(mm)
t
1:融着前の融着樹脂層30Aの平均厚さと被覆樹脂層20Aの平均厚さとの和(mm)
t
2:融着部における融着後の融着樹脂層30Aの平均厚さと被覆樹脂層20Aの平均厚さとの和(mm)
Δt:t
1-t
2(mm)
r:ラミネートフィルム30の平均厚さ(mm)
R:屈曲部34における湾曲形状の曲率半径(mm)
【0026】
ただし、屈曲部34における湾曲形状の曲率半径Rは下記式(3)を満たし、つまり曲率半径Rは側面部材20の厚さbの1/2未満となる。
R<b/2・・・式(3)
なお、式(3)中の各記号は以下を表す。
b:側面部材20の厚さ(mm)
R:屈曲部34における湾曲形状の曲率半径(mm)
【0027】
ラミネートフィルム30としては、金属層と、融着部を形成する内面側に融着樹脂層30Aと、を有する態様が挙げられる。また、ラミネートフィルム30との封止性を高めるため側面部材20はラミネートフィルム30と接する面に被覆樹脂層20Aを有する態様が挙げられる。融着部Xの側面部材20側の始点における屈曲部34を湾曲形状とした場合、屈曲部34における湾曲形状の内側には空間Sが生じることとなる。そして、この空間Sはラミネートフィルム30の融着樹脂層30Aおよび側面部材20の被覆樹脂層20Aからの樹脂によって埋められ、隙間が生じないことが好ましい。これに対し、屈曲部34における湾曲形状の曲率半径Rが式(1)を満たすことで、空間Sが樹脂によって良好に埋められ、隙間の発生を抑制することができる。
【0028】
例えば、側面部材20の幅a:63mm、側面部材20の厚さb:2.5mm、融着前の融着樹脂層30Aの平均厚さと被覆樹脂層20Aの平均厚さとの和t1:0.18mm、上記t1と融着部における融着後の融着樹脂層30Aの平均厚さと被覆樹脂層20Aの平均厚さとの和t2との差(t1-t2)であるΔt:0.05mm、ラミネートフィルム30の平均厚さr:0.153mmである場合、式(1)に代入して計算するとR<2.62mmとなる。ただし、式(3)も満たすため、R<1.25mmとなることが好ましい。
【0029】
さらに、屈曲部34における湾曲形状の曲率半径Rは下記式(2)を満たすことがより好ましい。
R<(((((a+2t1)(b+2t1)-ab)×0.05)/(4-π))1/2)-r・・・式(2)
なお、式(2)中の各記号は以下を表す。
a:側面部材20の幅(mm)
b:側面部材20の厚さ(mm)
t1:融着前の融着樹脂層30Aの平均厚さと被覆樹脂層20Aの平均厚さとの和(mm)
r:ラミネートフィルム30の平均厚さ(mm)
R:屈曲部34における湾曲形状の曲率半径(mm)
【0030】
ただし、屈曲部34における湾曲形状の曲率半径Rは下記式(3)を満たし、つまり曲率半径Rは側面部材20の厚さbの1/2未満となる。
R<b/2・・・式(3)
b:側面部材20の厚さ(mm)
R:屈曲部34における湾曲形状の曲率半径(mm)
【0031】
融着部Xの側面部材20側の始点における屈曲部34を湾曲形状とした場合、屈曲部34における湾曲形状の内側には空間Sが生じることとなり、この空間Sは融着樹脂層30Aおよび被覆樹脂層20Aからの樹脂によって埋められる。ただし、樹脂は水分を吸収し易いことから、電池における水バリア性の観点から、空間Sの体積(つまり空間Sを埋める樹脂の量)が小さいことが好ましい。具体的には、空間Sの体積が増えることによる水分吸収量の増加を5%以下とすることが好ましい。これに対し、屈曲部34における湾曲形状の曲率半径Rが式(2)を満たすことで、空間Sを埋める樹脂による水分吸収量を低減でき、水バリア性を維持することができる。
【0032】
例えば、側面部材20の幅a:63mm、側面部材20の厚さb:2.5mm、融着前の融着樹脂層30Aの平均厚さと被覆樹脂層20Aの平均厚さとの和t1:0.18mm、ラミネートフィルム30の平均厚さr:0.153mmである場合、式(2)に代入して計算するとR<1.02mmとなることが好ましい。
【0033】
一方で、屈曲部34における湾曲形状の曲率半径Rの下限値は、ラミネートフィルにおける金属層の平均厚さ以上であることが好ましい。曲率半径Rが小さくなる(湾曲がきつくなる)ことで応力集中が生じてラミネートフィルムの破損が生じ易くなるが、曲率半径Rが金属層の平均厚さ以上であることで、ラミネートフィルムの破損をより良好に抑制できる。
【0034】
また、
図5に示すように、融着部Xは、屈曲部34以外の領域に折り目痕を有しないことが好ましい。ラミネートフィルム30によって電極体10および側面部材20を封止する場合、ラミネートフィルム30に対して電極体10における角部に対向する位置に予め折り曲げ線をつけておくことがある。なお、ラミネートフィルム30に折り曲げ線をつける際、電極体10における角部に対向する位置だけでなく、その延長線上にあたる側面部材20に対向する位置にまで折り曲げ線をつけておくことがある。しかし、側面部材20に対向する位置につけられた折り曲げ線は、融着部Xを形成する際に屈曲部34以外の領域に折り目痕として残る。融着部Xがこの折り目痕を有する場合、折り目痕においてラミネートフィルム30に破損が生じることがある。そのため、融着部Xが屈曲部34以外の領域に折り目痕を有しないことで、屈曲部34以外の領域で生じるラミネートフィルム30の破損を抑制することができる。
【0035】
図5においては、電池100を側面部材20側から側面視した場合に、融着部Xが側面部材20の外縁E2を構成する角部に配置されている。具体的には、側面部材20の外縁E2を構成する角部が、融着部Xにおける融着面の端部tと一致している。また、
図5に示すように、融着部Xにおける融着面の幅をwとする。幅wは、例えば0.1mm以上であり、0.3mm以上であってもよく、0.6mm以上であってもよい。一方、幅wは、例えば1.2mm以下である。
【0036】
図7に示すように、電池100を厚さ方向から平面視した場合に、側面部材20側のラミネートフィルム30の端部位置をαとし、側面部材20および電極体10の境界に相当するラミネートフィルム30の位置をβとする。
図7における融着部Xは、端部位置αから位置βまで、連続的に配置されている。また、電極体10から側面部材20が延在する方向をD
1とした場合、融着部Xは、方向D
1に沿って配置されていることが好ましい。また、融着部Xは、方向D
1における端部位置αから位置βまでの少なくとも一部の領域に、配置されていてもよい。方向D
1における融着部Xの長さは、例えば1mm以上であり、3mm以上であってもよく、5mm以上であってもよい。
【0037】
図8Aに示すように、側面部材20側のラミネートフィルム30の端部位置αは、側面部材20の電極体10とは反対側の端部位置γより、電極体10側にあってもよい。すなわち、電池を厚さ方向から平面視した場合に、ラミネートフィルム30は、側面部材20の一部を覆っていてもよい。この場合、側面部材20の一部(ラミネートフィルム30により覆われない部分)は、露出する。一方、
図8Bに示すように、端部位置αは、端部位置γと一致していてもよい。すなわち、電池を厚さ方向から平面視した場合に、ラミネートフィルム30は、側面部材20の全体を覆っていてもよい。
【0038】
図9A~
図9Cは、それぞれ、電池100の一部を側面部材20側から側面視した概略側面図である。
図9Aに示すように、融着部Xは、側面部材20の外縁を構成する角部に配置されている。
図9Aには、端部密着部Yと3つの融着部Xとを有する電池100が示されている。しかし、1つの側面部材20に対して、1つの融着部Xが配置されていてもよく、2つ以上の融着部Xが配置されていてもよい。中でも、側面部材20に対して、複数の融着部Xが配置されていることが好ましい。ラミネートフィルム30の余剰部位を分散して吸収できるからである。また、
図9Aにおける端部密着部Yは、ラミネートフィルム30の端部同士が、それらの内面を接触させることで融着している。
【0039】
本開示では、電池100が複数の融着部Xを有する場合、1つ以上の融着部Xにおいて側面部材20側の始点における屈曲部が湾曲形状を有する。なお、複数の融着部Xにおいて側面部材20側の始点における屈曲部が湾曲形状を有することが好ましく、全ての融着部Xにおいて側面部材20側の始点における屈曲部が湾曲形状を有することが好ましい。
【0040】
図9Aに示すように、3つの融着部Xは、側面部材20の外縁を構成する各辺の角部に、それぞれ配置されていてもよい。また、
図9Bに示すように、2つの融着部Xは、側面部材20の外縁を構成する1つの短辺における2つの角部に、それぞれ配置されていてもよい。また、
図9Cに示すように、2つの融着部Xは、側面部材20の外縁を構成する1つの長辺における2つの角部に、それぞれ配置されていてもよい。
【0041】
2.電池の部材
本開示における電池は、電極体、側面部材およびラミネートフィルムを備える。
【0042】
(1)電極体
本開示における電極体は、通常、正極集電体、正極活物質層、電解質層、負極活物質層および負極集電体を、厚さ方向において、この順に有する。例えば
図10に示す電極体10は、正極集電体4、正極活物質層1、電解質層3、負極活物質層2および負極集電体5を、厚さ方向において、この順に有する。
【0043】
正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する。正極活物質層は、導電材、電解質およびバインダーの少なくとも一つをさらに含有していてもよい。正極活物質としては、例えば、酸化物活物質が挙げられる。酸化物活物質としては、例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2等の岩塩層状型活物質、LiMn2O4等のスピネル型活物質、LiFePO4等のオリビン型活物質が挙げられる。また、正極活物質として硫黄(S)を用いてもよい。正極活物質の形状は、例えば粒子状である。
【0044】
導電材としては、例えば、炭素材料が挙げられる。電解質は、固体電解質であってもよく、液体電解質であってもよい。固体電解質は、ゲル電解質等の有機固体電解質であってもよく、酸化物固体電解質、硫化物固体電解質等の無機固体電解質であってもよい。また、液体電解質(電解液)は、例えば、LiPF6等の支持塩と、カーボネート系溶媒等の溶媒とを含有する。また、バインダーとしては、例えば、ゴム系バインダー、フッ化物系バインダーが挙げられる。
【0045】
負極活物質層は、少なくとも負極活物質を含有する。負極活物質層は、導電材、電解質およびバインダーの少なくとも一つをさらに含有していてもよい。負極活物質としては、例えば、Li、Si等の金属活物質、グラファイト等のカーボン活物質、Li4Ti5O12等の酸化物活物質が挙げられる。負極活物質の形状は、例えば、粒子状、箔状である。導電材、電解質およびバインダーについては、上述した内容と同様である。
【0046】
電解質層は、正極活物質層および負極活物質層の間に配置され、少なくとも電解質を含有する。電解質は、固体電解質であってもよく、液体電解質であってもよい。電解質については、上述した内容と同様である。電解質層は、セパレータを有していてもよい。
【0047】
正極集電体は、正極活物質層の集電を行う。正極集電体の材料としては、例えば、アルミニウム、SUS、ニッケル等の金属が挙げられる。正極集電体の形状としては、例えば箔状、メッシュ状が挙げられる。正極集電体は、正極集電端子と接続するための正極タブを有していてもよい。
【0048】
負極集電体は、負極活物質層の集電を行う。負極集電体の材料としては、例えば、銅、SUS、ニッケル等の金属が挙げられる。負極集電体の形状としては、例えば箔状、メッシュ状が挙げられる。負極集電体は、負極集電端子と接続するための負極タブを有していてもよい。
【0049】
(2)側面部材
本開示における側面部材は、電極体の側面部に配置される。側面部材は、電極体の側面部に配置される部材であれば特に限定されないが、集電端子であることが好ましい。集電端子とは、少なくとも一部に集電部を有する端子をいう。集電部は、例えば、電極体におけるタブと電気的に接続されている。集電端子は、全体が集電部であってもよく、一部が集電部であってもよい。また、側面部材は、集電機能を有しない外装部材であってもよい。
【0050】
側面部材の材料としては、例えば、SUS等の金属が挙げられる。また、側面部材は表面におけるラミネートフィルムと接する面に被覆樹脂層を有する態様が挙げられる。被覆樹脂層の材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂が挙げられる。被覆樹脂層の厚さは、例えば40μm以上150μm以下である。
【0051】
(3)ラミネートフィルム
本開示におけるラミネートフィルムは、融着樹脂層(熱融着層)および金属層がラミネートされた構造を少なくとも有し、つまり金属層の一方の表面(融着部を形成する内面側)に融着樹脂層(熱融着層)を備えた構造を有する。また、ラミネートフィルムは、融着樹脂層(熱融着層)、金属層および樹脂層を、厚さ方向に沿って、この順に有していてもよい。融着樹脂層(熱融着層)の材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂が挙げられる。金属層の材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼が挙げられる。樹脂層の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロンが挙げられる。融着樹脂層(熱融着層)の厚さは、例えば40μm以上100μm以下である。金属層の厚さは、例えば30μm以上60μm以下である。樹脂層の厚さは、例えば20μm以上60μm以下である。ラミネートフィルム全体の厚さは、例えば70μm以上、220μm以下である。
【0052】
(4)電池
本開示における電池は、典型的にはリチウムイオン二次電池である。電池の用途としては、例えば、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)または電気自動車(BEV)の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、本開示における電池は、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【0053】
B.電池モジュール
図11は、本開示における電池モジュールを例示する概略斜視図である。
図11に示す電池モジュール200は、厚さ方向D
Tに積層された複数の電池100を有する。電池100は、上記「A.電池」に記載した電池である。
【0054】
本開示によれば、上述した電池を用いることで、ラミネートフィルムにおける融着部の側面部材側の始点における屈曲部での破損を抑制した電池モジュールとなる。
【0055】
本開示における電池については、上記「A.電池」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。また、本開示における電池モジュールは、複数の電池を厚さ方向に拘束する拘束治具を有していてもよい。拘束冶具の種類は、特に限定されないが、例えば、ボルトにより拘束トルクを付与する冶具が挙げられる。拘束治具により付与される拘束圧は、例えば、1MPa以上、50MPa以下である。
【0056】
図12に示すように、側面部材20上に配置されたラミネートフィルム30は、主面部31と、壁部32とを有する。壁部32は、主面部31と、側面部材20および電極体10の境界に相当するラミネートフィルム30の位置βとの間に位置する。また、拘束治具により電池に拘束圧が付与されると、電池は厚さ方向に圧縮される。そのような状態において、厚さ方向D
Tにおいて隣り合う、一対の側面部材20(20C、20D)において、一方の側面部材20C上に配置されたラミネートフィルム30の主面部31と、他方の側面部材20D上に配置されたラミネートフィルム30の主面部31とは、接触していないことが好ましい。接触による破損を防止できるからである。また、ラミネートフィルムの主面部に融着部が配置されている場合、その融着部は、ラミネートフィルムの主面部に含まれる。すなわち、ラミネートフィルムの主面部に配置された融着部は、他の側面部材上に配置されたラミネートフィルムの主面部と接触していないことが好ましい。
【0057】
C.電池の製造方法
本開示における電池の製造方法は、上述した電池の製造方法であって、上記電極体および上記側面部材を有する構造体を準備する準備工程と、上記構造体における上記電極体の上記外縁を、上記ラミネートフィルムで覆う第1被覆工程と、上記構造体における上記側面部材の上記外縁を、上記ラミネートフィルムで覆う第2被覆工程と、を有し、上記第2被覆工程において、上記側面部材の上記外縁を構成する面と面接触可能な治具を用いて、上記融着部を形成する。なお、準備工程では、電池を側面部材側から側面視した場合に、側面部材の形状が、四角形であり、四角形は、第1辺と、第1辺に隣接する第2辺と、第2辺に隣接し、第1辺と対向する第3辺と、第3辺に隣接し、第2辺と対向する第4辺とを有する構造体を準備してもよい。この場合、第2被覆工程では、側面部材における第1辺側および第3辺側から、それぞれ、第1治具および第3治具を押し込み、第1辺および第3辺に、それぞれ、ラミネートフィルムを密着させる第1密着処理と、第1密着処理の後に、側面部材における第2辺側および第4辺側から、それぞれ、第2治具および第4治具を押し込み、第2辺および第4辺に、それぞれ、ラミネートフィルムを密着させる第2密着処理と、を有し、第1治具および第3治具の少なくとも一方は、融着部における屈曲部の湾曲形状を形成する箇所が面取り形状であることが好ましい。
【0058】
1.準備工程
本開示における準備工程は、上記電極体および上記側面部材を有する構造体を準備する工程である。電極体および側面部材については、上記「A.電池」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0059】
2.折り曲げ工程
本開示においては、第1被覆工程を行う前に、ラミネートフィルムに対し電極体における角部に対向する位置に予め折り曲げ線をつける工程、つまり電極体の形状に合わせて予め折り曲げ加工を施す折り曲げ工程を有していてもよい。
【0060】
ただし、
図13に示すように、折り曲げ工程ではラミネートフィルム30の側面部材に対向する位置には折り曲げ線をつけないこと(つまり折り曲げない箇所NBとすること)が好ましい。折り曲げ工程においては、電極体における角部に対向する位置を折り曲げ(つまり折り曲げる箇所Bとし)、さらにその延長線上にあたる側面部材に対向する位置にも折り曲げ線をつけることもできる。しかし、側面部材に対向する位置につけられた折り曲げ線は、融着部Xを形成する際に屈曲部以外の領域に折り目痕として残る。融着部Xがこの折り目痕を有する場合、折り目痕においてラミネートフィルムに破損が生じることがある。そのため、折り曲げ工程ではラミネートフィルムの側面部材に対向する位置には折り曲げ線をつけず、その結果、融着部Xが屈曲部以外の領域に折り目痕を有しない構造とすることが好ましい。これにより、融着部Xの屈曲部以外の領域における折り目痕に起因するラミネートフィルムの破損を抑制することができる。
【0061】
3.第1被覆工程
本開示における第1被覆工程は、上記構造体における上記電極体の上記外縁を、上記ラミネートフィルムで覆う工程である。例えば
図2A、
図2Bに示すように、第1被覆工程においては、電極体10の上記外縁を構成する面(例えば、底面部12、第2側面部14、頂面部11および第4側面部16)を、ラミネートフィルム30で覆う。この際、電極体10およびラミネートフィルム30を密着させてもよい。また、
図2Bに示すように、ラミネートフィルム30の端部同士が重複した端部重複部Zを加熱する。これにより、ラミネートフィルム30の端部同士が融着した端部密着部Yが形成される。
【0062】
また、第1被覆工程においては、通常、
図3C、
図3Dに示すように、ラミネートフィルム30と、側面部材20との間に、空間Sが生じる。この空間Sは、後述する第2被覆工程において消失し、代わりに融着部が形成される。
【0063】
4.第2被覆工程
本開示における第2被覆工程は、上記側面部材の上記外縁を構成する面を、上記ラミネートフィルムで覆う工程である。また、第2被覆工程において、融着部を形成する。
【0064】
第2被覆工程では、側面部材と、ラミネートフィルムとを、側面部材の外縁を構成する面と面接触可能な治具を用いて密着させる。
図14A~
図14Cは、本開示における第2被覆工程を例示する概略側面図である。
図14Aに示すように、上述した第1被覆工程により、ラミネートフィルム30と、側面部材20との間に、空間Sが形成されている。また、上述した第1被覆工程により、端部密着部Yが形成されている。次に、
図14Bに示すように、ラミネートフィルム30および側面部材20に対して、治具41、治具42、治具43および治具44を押し込む。厚さ方向D
Tにおいて、治具42の長さ(図面上下方向の長さ)は、側面部材20の長さ(図面上下方向の長さ)よりも短い。そのため、治具41および治具42の間に空隙が生じ、その空隙に、ラミネートフィルム30の余剰部位が集まる。これにより、
図14Bに示すように、融着部Xが形成される。融着部Xが形成された状態を
図9Aに示す。なお、治具41および43は加熱されていることが好ましく、さらに治具42および44が加熱されていてもよい。
【0065】
本開示における治具44は、融着部Xにおける屈曲部の湾曲形状を形成する箇所(屈曲部に対向する箇所)44Aが面取り形状である。つまり、治具44は、
図14Cに示すように、融着部Xにおける屈曲部の湾曲形状を形成する箇所44Aの角が湾曲形状となるよう加工されている。これにより、形成される融着部Xの側面部材側の始点における屈曲部を湾曲形状とすることができる。なお、本開示における治具42も、同じく融着部Xにおける屈曲部の湾曲形状を形成する箇所(屈曲部に対向する箇所)44Aが面取り形状である。
【0066】
なお、治具における面取り形状の部分の曲率半径Cは、下記式(1’)および式(3’)を満たすことが好ましい。
C<(((2Δt(a+b+4t1))/(4-π))1/2)-r・・・式(1’)
C<b/2・・・式(3’)
なお、式(1’)および式(3’)中の各記号は以下を表す。
a:側面部材の幅(mm)
b:側面部材の厚さ(mm)
t1:融着前の融着樹脂層の平均厚さと被覆樹脂層の平均厚さとの和(mm)
t2:融着部における融着後の融着樹脂層の平均厚さと被覆樹脂層の平均厚さとの和(mm)
Δt:t1-t2(mm)
r:ラミネートフィルムの平均厚さ(mm)
C:治具における面取り形状の部分の曲率半径(mm)
【0067】
さらに、治具における面取り形状の部分の曲率半径Cは、下記式(2’)および式(3’)を満たすことがより好ましい。
C<(((((a+2t1)(b+2t1)-ab)×0.05)/(4-π))1/2)-r・・・式(2’)
C<b/2・・・式(3’)
なお、式(2’)および式(3’)中の各記号は以下を表す。
a:側面部材の幅(mm)
b:側面部材の厚さ(mm)
t1:融着前の融着樹脂層の平均厚さと被覆樹脂層の平均厚さとの和(mm)
r:ラミネートフィルムの平均厚さ(mm)
C:治具における面取り形状の部分の曲率半径(mm)
【0068】
さらに、治具における面取り形状の部分の曲率半径Cは、金属層の平均厚さ以上であることが好ましい。
【0069】
ここで、ラミネートフィルム30および側面部材20に対して、治具41、治具42、治具43および治具44を押し込む態様について説明する。側面部材の側面視形状が四角形である場合、第2被覆工程は、第1密着処理および第2密着処理を有していてもよい。
【0070】
例えば
図14Bに示すように、側面部材20の側面視形状は四角形であり、この四角形における短辺(
図14Bにおいて側面部材20の外縁における左右に対向する辺)を第1辺および第3辺とし、四角形における長辺(
図14Bにおいて側面部材20の外縁における上下に対向する辺)を第2辺および第4辺とする。つまり四角形は、第1辺と、第1辺に隣接する第2辺と、第2辺に隣接し、第1辺と対向する第3辺と、第3辺に隣接し、第2辺と対向する第4辺とを有する。第1辺および第3辺は、側面部材20の外縁を構成する短辺に該当し、第2辺および第4辺は、側面部材20の外縁を構成する長辺に該当する。
【0071】
まず、側面部材20における第1辺側および第3辺側から、それぞれ、治具42および治具44を押し込む。これにより、第1辺および第3辺に、それぞれ、ラミネートフィルム30を密着させる(第1密着処理)。次に、側面部材20における第2辺側および第4辺側から、それぞれ、治具41および治具43を押し込む。これにより、第2辺および第4辺に、それぞれ、ラミネートフィルム30を密着させる(第2密着処理)。これにより、
図9Aに示すように、融着部Xが形成される。
【0072】
本開示においては、第1辺および第3辺が、側面部材20の外縁を構成する短辺に該当し、第2辺および第4辺は、側面部材20の外縁を構成する長辺に該当することが好ましい。この場合、第1密着処理では、加熱されていない、治具42および治具44を押し込み、第2密着処理では、加熱された、治具41および治具43を押し込んでもよい。長辺側の治具(治具41および治具43)からの入熱のみで、側面部材20の外縁全周を加熱することで、シール機の構造を簡素化できる。
【0073】
5.電池
上述した工程により得られる電池については、上記「A.電池」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0074】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0075】
1 正極活物質層
2 負極活物質層
3 電解質層
4 正極集電体
5 負極集電体
10 電極体
11 頂面部
12 底面部
13 第1側面部
14 第2側面部
15 第3側面部
16 第4側面部
20 側面部材
30 ラミネートフィルム
34 屈曲部
100 電池