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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】蓄電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/34 20060101AFI20241008BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20241008BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20241008BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20241008BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20241008BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H02J7/34 J
H02J7/34 B
H02J7/02 B
H02J7/04 L
H02J7/10 L
H01M10/44 P
H01M10/48 301
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022153661
(22)【出願日】2022-09-27
(65)【公開番号】P2024047897
(43)【公開日】2024-04-08
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊池 義晃
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-152201(JP,A)
【文献】特開2022-047879(JP,A)
【文献】特開2019-161779(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0263144(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/34
H02J 7/02
H02J 7/04
H02J 7/10
H01M 10/44
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部システムとの間で充放電を行う蓄電システムであって、
各々が電力変換装置と前記電力変換装置に互いに並列接続された複数の組電池とを有し、かつ、互いに並列接続された第1および第2の電池ユニットと、
前記第1および第2の電池ユニットの各前記電力変換装置の動作を制御する制御装置とを備え、
前記第1および第2の電池ユニットの各々は、前記複数の組電池として、少なくとも1つの第1の組電池と、少なくとも1つの第2の組電池とを含み、前記第2の組電池は、前記第1の組電池とは種類が異なり、かつ、前記第1の組電池よりも内部抵抗が高く、
前記制御装置は、
前記蓄電システムに含まれる複数の前記第2の組電池から、2つの前記第2の組電池を選択し、
前記外部システムとの間で充放電を行っていない待機状態において、選択された前記2つの第2の組電池のうち一方を放電することにより他方を充電させる第1の制御と、前記他方を放電することにより前記一方を充電させる第2の制御とを、異なるタイミングで実行する、蓄電システム。
【請求項2】
前記第1および第2の電池ユニットは、少なくとも深夜の時間帯に前記外部システムによって充電され、かつ、少なくとも昼間の時間帯に前記外部システムに放電し、
前記制御装置は、前記充電後かつ前記放電前の予め定められた時刻において、前記第1の制御と前記第2の制御とを繰り返し実行する、請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記蓄電システムの温度を検出するセンサをさらに備え、
前記制御装置は、前記予め定められた時刻において前記温度が予め定められた閾値以下であることを条件に、前記第1の制御と前記第2の制御とを繰り返し実行する、請求項2に記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記第1の電池ユニットは、前記第2の組電池を複数含み、
前記制御装置は、前記第1の電池ユニットに含まれる複数の前記第2の組電池から、2つの前記第2の組電池を選択する、請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項5】
前記第1の組電池は、三元系のリチウムイオン電池であり、
前記第2の組電池は、リン酸鉄系のリチウムイオン電池である、請求項1から4のいずれか1項に記載の蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-103804号公報(特許文献1)には、複数の組電池が並列に接続された電池システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-103804号公報
【文献】特開2013-169051号公報
【文献】特開2012-85487号公報
【文献】特開2011-188700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるようなシステムにおいて、複数の組電池の種類が互いに異なる場合がある。異なる種類の組電池の内部抵抗は、互いに異なり得る。この場合、特に低温域において、組電池ごとに入出力特性がばらつく。このため、異なる種類の組電池間で入出力特性がばらつくのを抑制することが望まれる。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、異なる種類の電池間での入出力特性のばらつきを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従うと、蓄電システムは、外部システムとの間で充放電を行う。蓄電システムは、各々が電力変換装置と電力変換装置に互いに並列接続された複数の組電池とを有し、かつ、互いに並列接続された第1および第2の電池ユニットと、第1および第2の電池ユニットの各電力変換装置の動作を制御する制御装置とを備える。第1および第2の電池ユニットの各々は、複数の組電池として、少なくとも1つの第1の組電池と、少なくとも1つの第2の組電池とを含む。第2の組電池は、第1の組電池とは種類が異なり、かつ、第1の組電池よりも内部抵抗が高い。制御装置は、蓄電システムに含まれる複数の第2の組電池から、2つの第2の組電池を選択する。制御装置は、外部システムとの間で充放電を行っていない待機状態において、選択された2つの第2の組電池のうち一方を放電することにより他方を充電させる第1の制御と、他方を放電することにより一方を充電させる第2の制御とを、異なるタイミングで実行する。
【0007】
上記のように第2の組電池同士間での充放電がなされと、各第2の組電池が温められる。その結果、各第2の組電池の内部抵抗の値が小さくなる。それゆえ、第2の組電池と第1の組電池との内部抵抗の差を、第2の組電池を昇温させる前よりも小さくすることができる。したがって、上記の構成によれば、異なる種類の電池間で入出力特性がばらつくことを抑制することができる。
【0008】
好ましくは、第1および第2の電池ユニットは、少なくとも深夜の時間帯に外部システムによって充電され、かつ、少なくとも昼間の時間帯に外部システムに放電する。制御装置は、充電後かつ放電前の予め定められた時刻において、第1の制御と第2の制御とを繰り返し実行する。このような構成によれば、蓄電システムの入出力特性のうち出力特性のばらつきを抑制することができる。
【0009】
好ましくは、蓄電システムは、蓄電システムの温度を検出するセンサをさらに備える。制御装置は、予め定められた時刻において温度が予め定められた閾値以下であることを条件に、第1の制御と第2の制御とを繰り返し実行する。
【0010】
温度が高いときには、異なる種類の電池間の入出力特性のばらつきは小さい。それゆえ、温度が閾値を超えるときには、必ずしも第1および第2の制御を行わなくてもよい。それゆえ、温度が閾値以下のときにだけ第1および第2の制御を実行することにより、蓄電システムにおける電力消費を抑えることができる。
【0011】
好ましくは、第1の電池ユニットは、第2の組電池を複数含む。制御装置は、第1の電池ユニットに含まれる複数の第2の組電池から、2つの第2の組電池を選択する。このような構成によれば、蓄電システム全体として、同時に充放電できるペア数を増やすことができる。
【0012】
好ましくは、第1の組電池は、三元系電池である。第2の組電池は、リン酸鉄系電池である。リン酸鉄系電池は、特に低温域において内部抵抗が高くなる。このため、低温域では、リン酸鉄系電池の内部抵抗と三元系電池の内部抵抗との差は大きくなる。それゆえ、蓄電システムに三元系電池とリン酸鉄系電池とが混在しているとき、低温域では、入出力特性のばらつきが大きくなる。したがって、蓄電システムに三元系電池とリン酸鉄系電池とが混在している場合には、ばらつき抑制として大きな効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
上記の開示によれば、蓄電システムは、異なる種類の電池間での入出力特性のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】蓄電システムと外部システムとの構成を説明するための図である。
図2】上位コントローラに記憶されているデータを示した図である。
図3】蓄電システム1における処理の流れを説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0016】
図1は、蓄電システムと外部システムとの構成を説明するための図である。図1に示されるように、蓄電システム1は、外部システム900と電力線にて接続されている。蓄電システム1は、外部システム900から給電可能であり、かつ外部システム900に対して放電可能である。
【0017】
蓄電システム1は、複数の電池ユニット10A,10B,…と、上位コントローラ20と、温度センサ30とを備える。なお、以下では、複数の電池ユニット10A,10B,…の任意の1つを、「電池ユニット10」とも称する。
【0018】
電池ユニット10Aは、PCU(Power Control Unit)11と、三元系のリチウムイオン電池(以下、「三元系電池」と称する)12Aと、2つのリン酸鉄系のリチウムイオン電池(以下、「LFP電池」と称する)12Bと、ECU(Electronic Control Unit)13とを含む。PCU11は、インバータ、DC/DCコンバータ等を含む電力変換装置である。電池ユニット10Aでは、1つの三元系電池12Aと、2つのLPF電池12Bとが、PCU11に並列接続されている。
【0019】
電池ユニット10Bは、PCU11と、2つの三元系電池12Aと、1つのLPF電池12Bと、ECU13とを含む。電池ユニット10Bでは、2つの三元系電池12Aと、1つのLPF電池12Bとが、PCU11に並列接続されている。電池ユニット10Bは、PCU11に接続される組電池の組み合わせが、電池ユニット10Aとは異なる。
【0020】
三元系電池12AおよびLFP電池12Bの各々は、同じ種類の単電池を複数個パックした組電池(「電池パック」とも称される)の一例である。電池ユニット10は、PCU11に互いに並列接続された3つの組電池を含む。蓄電システム1は、三元系電池12Aのみを3つ含む電池ユニット10、またはLPF電池12Bのみを3つ含む電池ユニット10を含んでいてもよい。
【0021】
本例では、PCU11およびECU13として、それぞれ、車両に搭載されていたPCUとECUとを転用している。同様に、三元系電池12AおよびLPF電池12Bとして、車両に搭載されていた組電池を転用している。このように、不要となった車両の部品を利用して、蓄電システム1を構築している。詳しくは、車両のPCUに接続された三相交流モータを取外し、3つの組電池(U層、V層、W層に各々1つ)を接続している。
【0022】
外部システム900は、PCS(Power Conditioning System)910と、太陽光発電装置920と、負荷930と、電力系統940とを備える。各電池ユニット10(詳しくは、各PCU11)は、PCS910に対して互いに並列に接続されている。
【0023】
PCS910は、AC/DC変換(交流から直流への変換)およびDC/AC変換(直流から交流への変換)の両方が可能な電力変換装置である。PCS910は、たとえば太陽光発電装置920から直流電力を受電する。PCS910は、負荷930に交流電力を供給する。なお、負荷930は、家庭で使用される電気製品(たとえばエアコンおよび照明器具等)を含む。PCS910は、電力系統940との間において交流電力の授受を行っている。
【0024】
温度センサ30は、蓄電システム1の温度を測定する。蓄電システム1の温度とは、三元系電池12Aの温度、LPF電池12Bの温度、三元系電池12Aの周囲の温度、LPF電池12Bの周囲の温度、複数の電池ユニット10を収容する筐体(図示せず)内の温度、または、当該筐体の外側の温度(たとえば外気温)であってもよい。上位コントローラ20は、温度センサ30により測定された温度の情報を取得する。
【0025】
各ECU13は、プロセッサおよびメモリ(いずれも図示せず)を含み、電池ユニット10を制御する。各ECU13は、上位コントローラ20に通信可能に接続されている。
【0026】
上位コントローラ20は、プロセッサおよびメモリ(いずれも図示せず)を含み、各ECU13に指令を送る。上位コントローラ20は、ネットワークNWを介して、サーバ(図示せず)に通信可能に接続されている。
【0027】
ところで、LPF電池12Bの内部抵抗は、三元系電池12Aの内部抵抗よりも高い。特に低温域において、LPF電池12Bの内部抵抗が高くなる。このように異なる種類の組電池を含む蓄電システム1においては、特に低温域における、組電池間の内部抵抗の差に起因して、組電池ごとに入出力特性(典型的には充放電可能な電力/電流の上限値)がばらつく。
【0028】
以下では、このような入出力特性のばらつきを抑制する制御について説明する。なお、以下では、上位コントローラ20と、複数のECU13とを合わせて、「制御装置9」とも称する。
【0029】
蓄電システム1においては、各電池ユニット10は、少なくとも深夜の時間帯に外部システム900によって充電され、かつ、少なくとも昼間の時間帯に外部システム900に放電する。詳しくは、各電池ユニット10は、3つの組電池の各々が、少なくとも深夜の時間帯に外部システム900から給電され、かつ、少なくとも昼間の時間帯に外部システム900に放電する。
【0030】
蓄電システム1は、外部システム900との間で充放電を行っていない待機状態において、上述した入出力特性のばらつきを抑制する制御を実行する。すなわち、蓄電システム1は、入出力特性のばらつきを抑制する制御を実行する際には、外部システム900との間で充放電を行わない。
【0031】
典型的には、蓄電システム1は、上記充電後かつ上記放電前の予め定められた時刻(たとえば、午前6時)に、入出力特性のばらつきを抑制する制御を実行する。より詳しくは、蓄電システム1は、上記予め定められた時刻において、温度センサ30によって検出された温度が予め定められた閾値(たとえば、10度)以下であることを条件に、入出力特性のばらつきを抑制する制御を実行する。
【0032】
以下、図2に基づいて、入出力特性のばらつきを抑制する制御の詳細を説明する。
【0033】
図2は、上位コントローラ20に記憶されているデータDを示した図である。図2に示すように、データDは、各電池ユニット10の各端子(U層の端子、V層の端子、W層の端子)に、どの種別の組電池が接続されているかを示している。また、データDでは、管理上、全ての端子に識別番号が付与されている。
【0034】
上位コントローラ20は、LPF電池12B同士のペアを複数作る。本例では、上位コントローラ20は、電池ユニット10Aに対応する第1電池ユニットの第1端子に接続されたLPF電池12Bと、第1電池ユニットの第2端子に接続されたLPF電池12Bとをペア(以下、「第1ペア」とも称する)とする。すなわち、上位コントローラ20は、識別番号#1のLFP電池と、識別番号#2のLFP電池とを関連付ける。
【0035】
同様に、上位コントローラ20は、電池ユニット10Bに対応する第2電池ユニットの第2端子に接続されたLPF電池12Bと、第3電池ユニット(図示しない電池ユニット10Cに対応)の第1端子に接続されたLPF電池12Bとをペア(以下、「第2ペア」とも称する)とする。すなわち、上位コントローラ20は、識別番号#5のLFP電池と、識別番号#7のLFP電池とを関連付ける。
【0036】
さらに、本例では、第4電池ユニット(図示しない電池ユニット10Dに対応)の第1端子に接続されたLPF電池12Bと、第5電池ユニット(図示しない電池ユニット10Eに対応)の第1端子に接続されたLPF電池12Bとをペア(以下、「第3ペア」とも称する)とする。
【0037】
このように、上位コントローラ20は、蓄電システム1に含まれる複数のLPF電池12Bについて、ペアリングを実施する。なお、どのLPF電池12B同士をペアリングするかは特に限定されるものではない。上位コントローラ20は、識別番号の小さいものから順にペアリングしてもよいし、あるいは、同じ電池ユニット10内のLPF電池12B同士のペアリングを優先してもよい。
【0038】
上位コントローラ20は、上述した待機状態において、電池ユニット10AのECU13に対して指令を送ることにより、識別番号#1のLPF電池12Bを放電することにより識別番号#2のLPF電池12Bを充電させる制御と、識別番号#2のLPF電池12Bを放電することにより識別番号#1のLPF電池12Bを充電させる制御とを、異なるタイミングで繰り返し実行する。すなわち、2つのLPF電池12Bのいずれもが充放電を繰り返す。一方のLPF電池12Bが放電しているとき、当該放電により、他方のLPF電池12Bが充電される。
【0039】
以上のように、上位コントローラ20は、電池ユニット10AのECU13に、第1ペアのLPF電池12B同士間の充放電処理を実行させる。詳しくは、上位コントローラ20は、上記繰り返し回数が閾値(所定回数)となるまで、所定の時間が経過するまで、あるいは、温度センサ30がLPF電池12Bの温度を測定している場合には温度センサ30による検出結果が所定温度(たとえば、10度)となるまで、充放電処理を継続する。
【0040】
さらに、上位コントローラ20は、電池ユニット10BのECU13と電池ユニット10CのECU13に対して指令を送ることにより、識別番号#5のLPF電池12Bを放電することにより識別番号#7のLPF電池12Bを充電させる制御と、識別番号#7のLPF電池12Bを放電することにより識別番号#5のLPF電池12Bを充電させる制御とを、異なるタイミングで繰り返し実行する。すなわち、上位コントローラ20は、電池ユニット10B,10Cの各ECU13に、第2ペアのLPF電池12B同士間の充放電処理を実行させる。
【0041】
同様に、上位コントローラ20は、電池ユニット10D,10E(図示せず)の各ECU13に、第3ペアのLPF電池12B同士間の充放電処理を実行させる。
【0042】
第1ペアのLPF電池12B同士間の充放電処理と、第2ペアのLPF電池12B同士間の充放電処理とは、同時に実施することが可能である。その一方で、第3ペアのLPF電池12B同士間の充放電処理は、回路構成の関係上、第2ペアのLPF電池12B同士間の充放電処理と同時に実施できない。そのため、本例では、第3ペアのLPF電池12B同士間の充放電処理は、第1ペアのLPF電池12B同士間の充放電処理と、第2ペアのLPF電池12B同士間の充放電処理とが終了した後に行われる。
【0043】
各ECU13は、上位コントローラ20からの指令に基づき、PCU11を動作させる。これにより、上述したLPF電池12B同士間での充放電がなされる。このような充放電により、LPF電池12Bが温められる。その結果、LPF電池12Bの内部抵抗の値が小さくなる。
【0044】
それゆえ、蓄電システム1によれば、三元系電池12AとLPF電池12Bとの内部抵抗の差を、LPF電池12Bを昇温させる前よりも小さくすることができる。したがって、異なる種類の電池間で入出力特性がばらつくことを抑制することができる。
【0045】
図3は、蓄電システム1における処理の流れを説明するためのフロー図である。図3に示すように、ステップS1において、上位コントローラ20は、予め定められた時刻になったか否かを判断する。詳しくは、上位コントローラ20は、時計(図示せず)を有しており、当該時計に基づき予め定められた時刻になったか否かを判断する。
【0046】
上位コントローラ20は、予め定められた時刻になったと判断すると(ステップS1においてYES)、ステップS2において、温度センサ30による検出結果が10度以下であるか否かを判断する。上位コントローラ20は、予め定められた時刻になっていないと判断すると(ステップS1においてNO)、予め定められた時刻になるまで待機する。
【0047】
上位コントローラ20は、10度以下であると判断すると(ステップS2においてYES)、ステップS3において、ECU13に指令を送ることにより、ペアのLPF電池12B同士で充放電を開始させる。上位コントローラ20は、10度を超えていると判断すると(ステップS2においてNO)、一連の処理を終了する。
【0048】
上位コントローラ20は、ステップS3の後にステップS4において、ペア毎に、充放電を所定回数繰り返したか否かを判断する。なお、上位コントローラ20は、回数の代わりに、上述したように、経過時間、温度センサ30による検出結果等を用いた判断を行ってもよい。
【0049】
上位コントローラ20は、充放電が所定回数繰り返されていないと判断すると(ステップS4においてYES)、処理をステップS4に戻し、充放電の繰り返し回数が所定回数となるまで、ECU13に充放電を繰り返えさせる。上位コントローラ20は、充放電が所定回数繰り返されたと判断すると(ステップS4においてYES)、ステップS5において、ECU13に指令を送ることにより、LPF電池12B同士での充放電を終了させる。
【0050】
<小括>
(1)電池ユニット10Aと電池ユニット10Bとに着目して、蓄電システム1の処理を小括すると、以下のとおりである。蓄電システム1は、外部システム900との間で充放電を行う。蓄電システム1は、各々がPCU11とPCU11に互いに並列接続された複数の組電池とを有し、かつ、互いに並列接続された電池ユニット10A,10Bと、電池ユニット10A,10Bの各PCU11の動作を制御する制御装置9とを備える。
【0051】
電池ユニット10A,10Bの各々は、複数の組電池として、少なくとも1つの三元系電池12Aと、少なくとも1つのLPF電池12Bとを含む。LPF電池12Bは、三元系電池12Aよりも内部抵抗が高い。
【0052】
制御装置9は、蓄電システム1(電池ユニット10A,10B)に含まれる複数のLPF電池12Bから、2つのLPF電池12Bを選択する。図2の例では、制御装置9は、識別番号#1のLPF電池12Bと、識別番号#2のLPF電池12Bとを選択する。選択された2つのLPF電池12B同士を、ペアとする。
【0053】
制御装置9は、外部システム900との間で充放電を行っていない待機状態において、選択された2つのLPF電池12Bのうち一方を放電することにより他方を充電させる第1の制御と、他方を放電することにより上記一方を充電させる第2の制御とを、異なるタイミングで実行する。
【0054】
同様に、電池ユニット10Bと電池ユニット10Cに着目して、蓄電システム1の処理を小括すると、以下のとおりである。電池ユニット10B,10Cの各々は、複数の組電池として、少なくとも1つの三元系電池12Aと、少なくとも1つのLPF電池12Bとを含む。
【0055】
制御装置9は、蓄電システム1(電池ユニット10B,10C)に含まれる複数のLPF電池12Bから、2つのLPF電池12Bを選択する。図2の例では、制御装置9は、識別番号#5のLPF電池12Bと、識別番号#7のLPF電池12Bとを選択する。選択された2つのLPF電池12B同士を、ペアとする。
【0056】
制御装置9は、外部システム900との間で充放電を行っていない待機状態において、選択された2つのLPF電池12Bのうち一方を放電することにより他方を充電させる第1の制御と、他方を放電することにより上記一方を充電させる第2の制御とを、異なるタイミングで実行する。
【0057】
上述したLPF電池12B同士間での充放電がなされと、各LPF電池12Bが温められる。その結果、各LPF電池12Bの内部抵抗の値が小さくなる。それゆえ、三元系電池12AとLPF電池12Bとの内部抵抗の差を、LPF電池12Bを昇温させる前よりも小さくすることができる。したがって、蓄電システム1によれば、異なる種類の電池間で入出力特性がばらつくことを抑制することができる。
【0058】
(2)電池ユニット10は、少なくとも深夜の時間帯に外部システム900によって充電され、かつ、少なくとも昼間の時間帯に外部システム900に放電する。制御装置9は、当該充電後かつ当該放電前の予め定められた時刻において、上述した第1の制御と第2の制御とを繰り返し実行する。このような構成によれば、蓄電システム1の入出力特性のうちの出力特性のばらつきを抑制することができる。
【0059】
(3)蓄電システム1は、蓄電システム1の温度を検出する温度センサ30をさらに備える。制御装置9は、予め定められた時刻において上記温度が予め定められた閾値以下であることを条件に、上述した第1の制御と第2の制御とを繰り返し実行する。
【0060】
温度が高いときには、異なる種類の電池間の入出力特性のばらつきは小さい。それゆえ、温度が閾値を超えるときには、必ずしも第1および第2の制御を行わなくてもよい。それゆえ、温度が閾値以下のときにだけ第1および第2の制御を実行することにより、蓄電システム1における電力消費を抑えることができる。
【0061】
(4)制御装置9が、電池ユニット10に含まれる複数のLPF電池12Bから、2つのLPF電池12Bを選択することにより、蓄電システム1全体として、同時に充放電できるペア数を増やすことができる。たとえば、制御装置9が、電池ユニット10Aに含まれる2つのLPF電池12Bから、2つのLPF電池12Bを選択することにより、同時に充放電できるペア数を増やすことができる。
【0062】
(5)LPF電池12Bは、特に低温域において内部抵抗が高くなる。このため、低温域では、LPF電池12Bの内部抵抗と三元系電池12Aの内部抵抗との差は大きくなる。それゆえ、本例のように、蓄電システム1に三元系電池12AとLPF電池12Bとが混在しているとき、低温域では、入出力特性のばらつきが大きくなる。したがって、三元系電池12AとLPF電池12Bとが混在している蓄電システム1においては、ばらつき抑制として大きな効果を得ることができる。
【0063】
<変形例>
(1)上記においては、種類の異なる組電池として、三元系電池とLFP電池とを例に挙げて説明したが、これに限定されない。内部抵抗が異なる2種類の組電池に対して、上述した組電池同士の充放電処理を行うことができる。
【0064】
(2)上記においては電力変換装置(本例ではPCU11)に3つの組電池が接続される構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。たとえば、2つまたは4つ以上の組電池が電力変換装置に接続される構成であってもよい。
【0065】
<付記>
(1)外部システムとの間で充放電を行う蓄電システムにおける制御方法であって、
前記蓄電システムは、互いに並列接続された第1および第2の電池ユニットを備え、前記第1および第2の電池ユニットの各々は、互いに並列接続された複数の組電池として、少なくとも1つの第1の組電池と少なくとも1つの第2の組電池とを含み、前記第2の組電池は、前記第1の組電池とは種類が異なり、かつ前記第1の組電池よりも内部抵抗が高く、
前記制御方法は、
前記蓄電システムの制御装置が、前記蓄電システムに含まれる複数の前記第2の組電池から、2つの前記第2の組電池を選択するステップと、
前記蓄電システムが前記外部システムとの間で充放電を行っていない待機状態において、前記制御装置が、選択された前記2つの第2の組電池のうち一方を放電することにより他方を充電させる第1の制御と、前記他方を放電することにより前記一方を充電させる第2の制御とを、異なるタイミングで実行するステップとを備える、制御方法。
【0066】
(2)前記制御方法の各ステップを1以上のプロセッサ(制御装置9に含まれるプロセッサ(本例では、上位コントローラ20のプロセッサ、ECU13のプロセッサ))に実行させるプログラム。
【0067】
(3)前記プログラムを記憶した、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【0068】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0069】
1 蓄電システム、9 制御装置、10,10A,10B,10C,10D,10E 電池ユニット、12A 三元系電池、12B LFP電池、13 ECU、20 上位コントローラ、30 温度センサ、900 外部システム、910 PCS、920 太陽光発電装置、930 負荷、940 電力系統、NW ネットワーク。
図1
図2
図3