(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】処理方法、処理システム、処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241008BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20241008BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20241008BHJP
B60W 50/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G08G1/00 A
B60W60/00
B60W50/00
(21)【出願番号】P 2022162851
(22)【出願日】2022-10-10
【審査請求日】2024-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2022010353
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】清水 駿
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-131096(JP,A)
【文献】特開2020-042642(JP,A)
【文献】特開2019-109706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
G08G 1/00
B60W 60/00
B60W 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体(2)の自動運転に関連する処理を遂行するために、プロセッサ(12)により実行される処理方法であって、
デジタルマップ(Md)において前記移動体の走行ポイントに関連付けて埋め込まれた動的データのうち、分析走行ポイント(Pac)における前記移動体の自動運転状態を表す自動運転データ(Dd,Ddb)と、前記分析走行ポイントにおける前記自動運転状態に対してのオペレータからの音声による評価を表す音声評価データ(Da)とを、抽出することと、
前記分析走行ポイントでの前記自動運転状態の要因を分析した結果として、前記音声評価データに相関する要因分析データ(Dc)を、前記自動運転データに基づき生成することとを、含
み、
前記要因分析データを生成することは、
前記音声評価データに相関する前記自動運転データ(Ddb)を選別し、当該選別データに基づき前記要因分析データを生成することを、含む処理方法。
【請求項2】
生成された前記要因分析データに基づくリスクレベルを識別可能に表現するリスク識別データ(Di)を、前記デジタルマップに重畳して表示させることを、含む請求項
1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記デジタルマップの生成に際して前記移動体に走行させる予定走行ルートの選定を、前記リスク識別データの表示下において指示することを、含む請求項
2に記載の処理方法。
【請求項4】
移動体(2)の自動運転に関連する処理を遂行するために、プロセッサ(12)により実行される処理方法であって、
デジタルマップ(Md)において前記移動体の走行ポイントに関連付けて埋め込まれた動的データのうち、分析走行ポイント(Pac)における前記移動体の自動運転状態を表す自動運転データ(Dd,Ddb)と、前記分析走行ポイントにおける前記自動運転状態に対してのオペレータからの音声による評価を表す音声評価データ(Da)とを、抽出することと、
前記分析走行ポイントでの前記自動運転状態の要因を分析した結果として、前記音声評価データに相関する要因分析データ(Dc)を、前記自動運転データに基づき生成することと、
生成された前記要因分析データに基づくリスクレベルを識別可能に表現するリスク識別データ(Di)を、前記デジタルマップに重畳して表示させることと、
前記デジタルマップの生成に際して前記移動体に走行させる予定走行ルートの選定を、前記リスク識別データの表示下において指示することとを、含む処理方法。
【請求項5】
選定された前記予定走行ルートを表現する走行ルートデータ(Dr)と、前記リスク識別データとを、前記デジタルマップに付加して前記移動体へ提供することを、含む請求項
3又は4に記載の処理方法。
【請求項6】
前記自動運転データ及び前記音声評価データを抽出することは、
前記自動運転データのうち要因分析の開始基準となる基準パラメータ(Bp)が許容範囲外である前記移動体の走行ポイント(Po)を前記分析走行ポイントとして、前記自動運転データ及び前記音声評価データを抽出することを、含む請求項1
又は4に記載の処理方法。
【請求項7】
前記要因分析データを生成することは、
前記基準パラメータに基づき前記要因分析データを生成することを、含む請求項
6に記載の処理方法。
【請求項8】
生成された前記要因分析データを、記憶媒体(10)に記憶することを、さらに含む請求項1
又は4に記載の処理方法。
【請求項9】
プロセッサ(12)を有し、移動体(2)の自動運転に関連する処理を遂行する処理システムであって、
前記プロセッサは、
デジタルマップ(Md)において前記移動体の走行ポイントに関連付けて埋め込まれた動的データのうち、分析走行ポイント(Pac)における前記移動体の自動運転状態を表す自動運転データ(Dd,Ddb)と、前記分析走行ポイントにおける前記自動運転状態に対してのオペレータからの音声による評価を表す音声評価データ(Da)とを、抽出することと、
前記分析走行ポイントでの前記自動運転状態の要因を分析した結果として、前記音声評価データに相関する要因分析データ(Dc)を、前記自動運転データに基づき生成することとを、実行するように構成され
、
前記要因分析データを生成することは、
前記音声評価データに相関する前記自動運転データ(Ddb)を選別し、当該選別データに基づき前記要因分析データを生成することを、含む処理システム。
【請求項10】
プロセッサ(12)を有し、移動体(2)の自動運転に関連する処理を遂行する処理システムであって、
前記プロセッサは、
デジタルマップ(Md)において前記移動体の走行ポイントに関連付けて埋め込まれた動的データのうち、分析走行ポイント(Pac)における前記移動体の自動運転状態を表す自動運転データ(Dd,Ddb)と、前記分析走行ポイントにおける前記自動運転状態に対してのオペレータからの音声による評価を表す音声評価データ(Da)とを、抽出することと、
前記分析走行ポイントでの前記自動運転状態の要因を分析した結果として、前記音声評価データに相関する要因分析データ(Dc)を、前記自動運転データに基づき生成することと、
生成された前記要因分析データに基づくリスクレベルを識別可能に表現するリスク識別データ(Di)を、前記デジタルマップに重畳して表示させることと、
前記デジタルマップの生成に際して前記移動体に走行させる予定走行ルートの選定を、前記リスク識別データの表示下において指示することとを、実行するように構成される処理システム。
【請求項11】
移動体(2)の自動運転に関連する処理を遂行するために記憶媒体(10)に記憶され、プロセッサ(12)により実行される命令を含む処理プログラムであって、
前記命令は、
デジタルマップ(Md)において前記移動体の走行ポイントに関連付けて埋め込まれた動的データのうち、分析走行ポイント(Pac)における前記移動体の自動運転状態を表す自動運転データ(Dd,Ddb)と、前記分析走行ポイントにおける前記自動運転状態に対してのオペレータからの音声による評価を表す音声評価データ(Da)とを、抽出させることと、
前記分析走行ポイントでの前記自動運転状態の要因を分析した結果として、前記音声評価データに相関する要因分析データ(Dc)を、前記自動運転データに基づき生成させることとを、含
み、
前記要因分析データを生成させることは、
前記音声評価データに相関する前記自動運転データ(Ddb)を選別し、当該選別データに基づき前記要因分析データを生成させることを、含む処理プログラム。
【請求項12】
移動体(2)の自動運転に関連する処理を遂行するために記憶媒体(10)に記憶され、プロセッサ(12)により実行される命令を含む処理プログラムであって、
前記命令は、
デジタルマップ(Md)において前記移動体の走行ポイントに関連付けて埋め込まれた動的データのうち、分析走行ポイント(Pac)における前記移動体の自動運転状態を表す自動運転データ(Dd,Ddb)と、前記分析走行ポイントにおける前記自動運転状態に対してのオペレータからの音声による評価を表す音声評価データ(Da)とを、抽出させることと、
前記分析走行ポイントでの前記自動運転状態の要因を分析した結果として、前記音声評価データに相関する要因分析データ(Dc)を、前記自動運転データに基づき生成させることと、
生成された前記要因分析データに基づくリスクレベルを識別可能に表現するリスク識別データ(Di)を、前記デジタルマップに重畳して表示させることと、
前記デジタルマップの生成に際して前記移動体に走行させる予定走行ルートの選定を、前記リスク識別データの表示下において指示させることとを、含む処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体の自動運転に関連する技術に、関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、自動運連車両を運転するためのマップを生成して供給する技術を、開示している。この特許文献1に開示の技術では、移動体としての自動運転車両の加速度データ値に依存して行われた評価に基づくことで、マップが生成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示の技術では、加速度データ値に依存する評価結果が、単にマップに付加されているに過ぎない。そのため、自動運転車両を評価して自動運転における課題を適切に抽出するには、データが不足する状況となる。
【0005】
本開示の課題は、自動運転における課題を抽出可能な処理方法、処理システム、及び処理プログラムを提供することにある。本開示の別の課題は、自動運転における課題を抽出可能な処理方法に有用なマップ生成方法、及び記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、課題を解決するための本開示の技術的手段について、説明する。尚、特許請求の範囲及び本欄に記載された括弧内の符号は、後に詳述する実施形態に記載された具体的手段との対応関係を示すものであり、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
本開示の第一態様は、
移動体(2)の自動運転に関連する処理を遂行するために、プロセッサ(12)により実行される処理方法であって、
デジタルマップ(Md)において移動体の走行ポイントに関連付けて埋め込まれた動的データのうち、分析走行ポイント(Pac)における移動体の自動運転状態を表す自動運転データ(Dd,Ddb)と、分析走行ポイントにおける自動運転状態に対してのオペレータからの音声による評価を表す音声評価データ(Da)とを、抽出することと、
分析走行ポイントでの自動運転状態の要因を分析した結果として、音声評価データに相関する要因分析データ(Dc)を、自動運転データに基づき生成することとを、含み、
要因分析データを生成することは、
音声評価データに相関する自動運転データ(Ddb)を選別し、当該選別データに基づき要因分析データを生成することを、含む。
本開示の第二態様は、
移動体(2)の自動運転に関連する処理を遂行するために、プロセッサ(12)により実行される処理方法であって、
デジタルマップ(Md)において移動体の走行ポイントに関連付けて埋め込まれた動的データのうち、分析走行ポイント(Pac)における移動体の自動運転状態を表す自動運転データ(Dd,Ddb)と、分析走行ポイントにおける自動運転状態に対してのオペレータからの音声による評価を表す音声評価データ(Da)とを、抽出することと、
分析走行ポイントでの自動運転状態の要因を分析した結果として、音声評価データに相関する要因分析データ(Dc)を、自動運転データに基づき生成することと、
生成された要因分析データに基づくリスクレベルを識別可能に表現するリスク識別データ(Di)を、デジタルマップに重畳して表示させることと、
デジタルマップの生成に際して移動体に走行させる予定走行ルートの選定を、リスク識別データの表示下において指示することとを、含む。
【0008】
本開示の第三態様は、
プロセッサ(12)を有し、移動体(2)の自動運転に関連する処理を遂行する処理システムであって、
プロセッサは、
デジタルマップ(Md)において移動体の走行ポイントに関連付けて埋め込まれた動的データのうち、分析走行ポイント(Pac)における移動体の自動運転状態を表す自動運転データ(Dd,Ddb)と、分析走行ポイントにおける自動運転状態に対してのオペレータからの音声による評価を表す音声評価データ(Da)とを、抽出することと、
分析走行ポイントでの自動運転状態の要因を分析した結果として、音声評価データに相関する要因分析データ(Dc)を、自動運転データに基づき生成することとを、実行するように構成され、
要因分析データを生成することは、
音声評価データに相関する自動運転データ(Ddb)を選別し、当該選別データに基づき要因分析データを生成することを、含む。
本開示の第四態様は、
プロセッサ(12)を有し、移動体(2)の自動運転に関連する処理を遂行する処理システムであって、
プロセッサは、
デジタルマップ(Md)において移動体の走行ポイントに関連付けて埋め込まれた動的データのうち、分析走行ポイント(Pac)における移動体の自動運転状態を表す自動運転データ(Dd,Ddb)と、分析走行ポイントにおける自動運転状態に対してのオペレータからの音声による評価を表す音声評価データ(Da)とを、抽出することと、
分析走行ポイントでの自動運転状態の要因を分析した結果として、音声評価データに相関する要因分析データ(Dc)を、自動運転データに基づき生成することと、
生成された要因分析データに基づくリスクレベルを識別可能に表現するリスク識別データ(Di)を、デジタルマップに重畳して表示させることと、
デジタルマップの生成に際して移動体に走行させる予定走行ルートの選定を、リスク識別データの表示下において指示することとを、実行するように構成される。
【0009】
本開示の第五態様は、
移動体(2)の自動運転に関連する処理を遂行するために記憶媒体(10)に記憶され、プロセッサ(12)により実行される命令を含む処理プログラムであって、
命令は、
デジタルマップ(Md)において移動体の走行ポイントに関連付けて埋め込まれた動的データのうち、分析走行ポイント(Pac)における移動体の自動運転状態を表す自動運転データ(Dd,Ddb)と、分析走行ポイントにおける自動運転状態に対してのオペレータからの音声による評価を表す音声評価データ(Da)とを、抽出させることと、
分析走行ポイントでの自動運転状態の要因を分析した結果として、音声評価データに相関する要因分析データ(Dc)を、自動運転データに基づき生成させることとを、含み、
要因分析データを生成させることは、
音声評価データに相関する自動運転データ(Ddb)を選別し、当該選別データに基づき要因分析データを生成させることを、含む。
本開示の第六態様は、
移動体(2)の自動運転に関連する処理を遂行するために記憶媒体(10)に記憶され、プロセッサ(12)により実行される命令を含む処理プログラムであって、
命令は、
デジタルマップ(Md)において移動体の走行ポイントに関連付けて埋め込まれた動的データのうち、分析走行ポイント(Pac)における移動体の自動運転状態を表す自動運転データ(Dd,Ddb)と、分析走行ポイントにおける自動運転状態に対してのオペレータからの音声による評価を表す音声評価データ(Da)とを、抽出させることと、
分析走行ポイントでの自動運転状態の要因を分析した結果として、音声評価データに相関する要因分析データ(Dc)を、自動運転データに基づき生成させることと、
生成された要因分析データに基づくリスクレベルを識別可能に表現するリスク識別データ(Di)を、デジタルマップに重畳して表示させることと、
デジタルマップの生成に際して移動体に走行させる予定走行ルートの選定を、リスク識別データの表示下において指示させることとを、含む。
【0010】
このような第一~第六態様では、デジタルマップにおいて移動体の走行ポイントに関連付けて埋め込まれた動的データのうち、分析走行ポイントにおける移動体の自動運転状態を表す自動運転データと、当該自動運転状態に対してのオペレータからの評価を表す音声評価データとが、抽出される。そこで第一~第六態様によると、分析走行ポイントでの自動運転状態の要因を分析した結果として、音声評価データに相関する要因分析データが自動運転データに基づき生成される。故に、生成された要因分析データによれば、分析された要因から自動運転における課題を抽出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第一実施形態による処理システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】第一実施形態による制御システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図3】第一実施形態による制御システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図4】第一実施形態によるマップ生成フローを示すフローチャートである。
【
図5】第一実施形態による処理システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図6】第一実施形態による処理フローを示すフローチャートである。
【
図7】第一実施形態による処理フローを説明するための模式図である。
【
図8】第一実施形態による処理フローを説明するための模式図である。
【
図9】第一実施形態による処理フローを説明するための模式図である。
【
図10】第一実施形態による処理フローを説明するための模式図である。
【
図11】第一実施形態による処理フローを説明するための模式図である。
【
図12】第一実施形態による処理フローを説明するための模式図である。
【
図13】第一実施形態による処理フローを説明するための模式図である。
【
図14】第一実施形態による処理フローを説明するための模式図である。
【
図15】第一実施形態による処理フローを説明するための模式図である。
【
図16】第一実施形態による処理フローを説明するための模式図である。
【
図17】第二実施形態による処理システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図18】第二実施形態による処理フローを示すフローチャートである。
【
図19】第二実施形態による処理フローを説明するための模式図である。
【
図20】第二実施形態による処理フローを説明するための模式図である。
【
図21】第二実施形態による処理フローを説明するための模式図である。
【
図22】第三実施形態による処理システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図23】第三実施形態による処理フローを示すフローチャートである。
【
図24】
図6の変形例による処理フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態を図面に基づき複数説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことで、重複する説明を省略する場合がある。また、各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。さらに、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。
【0017】
(第一実施形態)
図1に示す第一実施形態の処理システム1は、
図2に示す移動体2の自動運転に関連する処理(以下、自動運転関連処理という)を、遂行する。
【0018】
図2に示す第一実施形態の制御システム3は、移動体2の自動運転を制御する。ここで移動体2は、第一実施形態では乗員となる搭乗オペレータの搭乗状態において走行路を走行可能な、例えば自動車等である。こうした移動体2においては、運転タスクにおける搭乗オペレータの手動介入度に応じてレベル分けされる、自動運転制御が実現される。自動運転制御は、条件付運転自動化、高度運転自動化、又は完全運転自動化といった、作動時のシステムが全ての運転タスクを実行する自律走行制御により、実現されてもよい。自動運転制御は、運転支援、又は部分運転自動化といった、搭乗オペレータが一部若しくは全ての運転タスクを実行する高度運転支援制御により、実現されてもよい。自動運転制御は、それら自律走行制御と高度運転支援制御とのいずれか一方、組み合わせ、又は切り替えにより実現されてもよい。
【0019】
移動体2には、センサ系4、通信系5、及び情報提示系6が搭載される。センサ系4は、制御システム3により利用可能なセンサデータを、移動体2の外界及び内界の検出により取得する。そのためにセンサ系4は、外界センサ40及び内界センサ42を含んで構成されている。
【0020】
外界センサ40は、移動体2の周辺環境となる外界から、センサデータとしての外界データを取得する。外界センサ40は、移動体2の外界に存在する物標を検知することで、外界データを取得してもよい。物標検知タイプの外界センサ40は、例えばカメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging / Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダ、及びソナー等のうち、少なくとも一種類である。
【0021】
内界センサ42は、移動体2の内部環境となる内界から、センサデータとしての内界データを取得する。内界センサ42は、移動体2の内界において特定の運動物理量を検知することで、内界データを取得してもよい。物理量検知タイプの内界センサ42は、例えば走行速度センサ、加速度センサ、及びジャイロセンサ等のうち、少なくとも一種類である。内界センサ42は、移動体2の内界において搭乗オペレータの特定状態を検知することで、内界データを取得してもよい。オペレータ検知タイプの内界センサ42は、例えば音声センサ42a、ドライバーステータスモニター(登録商標)、生体センサ、着座センサ、アクチュエータセンサ、車内機器センサ、マウス、及びトラックボール等のうち、少なくとも一種類である。ここで特に音声センサ42aは、移動体2の搭乗オペレータにより発せられた音声を、検知する。
【0022】
通信系5は、制御システム3により利用可能な通信データを、無線通信により取得する。通信系5は、移動体2の外界に存在するGNSS(Global Navigation Satellite System)の人工衛星から、測位信号を受信してもよい。測位タイプの通信系5は、例えばGNSS受信機等である。通信系5は、移動体2の外界に存在するV2Xシステムとの間において、通信信号を送受信してもよい。V2Xタイプの通信系5は、例えばDSRC(Dedicated Short Range Communications)通信機、及びセルラV2X(C-V2X)通信機等のうち、少なくとも一種類である。通信系5は、移動体2の内界に存在する端末との間において、通信信号を送受信してもよい。端末通信タイプの通信系5は、例えばブルートゥース(Bluetooth:登録商標)機器、Wi-Fi(登録商標)機器、及び赤外線通信機器等のうち、少なくとも一種類である。
【0023】
情報提示系6は、移動体2内において搭乗オペレータへ向けた報知情報を、提示する。情報提示系6は、搭乗オペレータの視覚を刺激することで、報知情報を提示してもよい。視覚刺激タイプの情報提示系6は、例えばHUD(Head-Up Display)、MFD(Multi-Function Display)、コンビネーションメータ、ナビゲーションユニット、及び発光ユニット等のうち、少なくとも一種類である。情報提示系6は、搭乗オペレータの聴覚を刺激することで、報知情報を提示してもよい。聴覚刺激タイプの情報提示系6は、例えばスピーカ、ブザー、及びバイブレーションユニット等のうち、少なくとも一種類である。
【0024】
制御システム3は、少なくとも一つの専用コンピュータを含んで構成されている。制御システム3を構成する専用コンピュータは、例えばLAN(Local Area Network)回線、ワイヤハーネス、内部バス、及び無線通信回線等のうち、少なくとも一種類を介してセンサ系4、通信系5、及び情報提示系6に接続されている。
【0025】
制御システム3を構成する専用コンピュータは、移動体2の運転制御を統合する、統合ECU(Electronic Control Unit)であってもよい。制御システム3を構成する専用コンピュータは、移動体2の運転制御における運転タスクを判断する、判断ECUであってもよい。制御システム3を構成する専用コンピュータは、移動体2の運転制御を監視する、監視ECUであってもよい。制御システム3を構成する専用コンピュータは、移動体2の運転制御を評価する、評価ECUであってもよい。
【0026】
制御システム3を構成する専用コンピュータは、移動体2の走行経路をナビゲートする、ナビゲーションECUであってもよい。制御システム3を構成する専用コンピュータは、移動体2の自己状態量を推定する、ロケータECUであってもよい。制御システム3を構成する専用コンピュータは、移動体2の走行アクチュエータを制御する、アクチュエータECUであってもよい。制御システム3を構成する専用コンピュータは、移動体2において情報提示系6による情報提示を制御する、HCU(HMI(Human Machine Interface) Control Unit)であってもよい。制御システム3を構成する専用コンピュータは、例えばV2Xタイプの通信系5を介して通信可能な外部センタ又はモバイル端末等を構成する、移動体2以外のコンピュータであってもよい。
【0027】
制御システム3を構成する専用コンピュータは、メモリ30及びプロセッサ32を、少なくとも一つずつ有している。メモリ30は、コンピュータにより読み取り可能なプログラム及びデータ等を非一時的に記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。プロセッサ32は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、RISC(Reduced Instruction Set Computer)-CPU、DFP(Data Flow Processor)、及びGSP(Graph Streaming Processor)等のうち、少なくとも一種類をコアとして含んでいる。
【0028】
制御システム3においてメモリ30は、移動体2の自動運転に利用可能なマップデータDmを含んで処理システム1に提供されるデジタルマップMd(後述の
図7参照)を、記憶する。メモリ30は、例えばV2Xタイプの通信系5を介した外部センタとの通信等により、最新のマップデータDmを取得して記憶する。ここでマップデータDmは、移動体2の走行環境を表す情報として、二次元又は三次元にデータ化されている。二次元のマップデータDmとしては、オルソ画像を含んでいてもよい。三次元のマップデータDmとしては、高精度マップデータが採用されるとよい。
【0029】
こうしたマップデータDmは、道路に関して例えば、位置座標、形状、路面状態、レーン構造、接続構造、道路端構造、駐車構造、交差点の内外関係、歩道との並列構造、及び線路との交差構造等のうち、少なくとも一種類を表した道路情報を含んでいてもよい。マップデータDmは、道路に付属する道路標識、道路標示、並びに区画線に関して例えば、位置座標、形状、向き、色彩、及び種別等のうち、少なくとも一種類を表した標示情報を含んでいてもよい。マップデータDmは、道路に面する構造物、信号機、並びに踏切遮断機に関して例えば、位置座標、形状、向き、色彩、及び種別等のうち、少なくとも一種類を表した地物情報を含んでいてもよい。マップデータDmは、交通ルールとして例えば、法定速度、通行区分、通行方向、交差点での優先度、一旦停止の要否、警戒の要否、駐停車の許否、レーンチェンジの許否、右左折の許否、転回の許否、規制の有無、及び信号機動作毎の通行ルール等のうち、少なくとも一種類を表したルール情報を含んでいてもよい。
【0030】
図2に示す制御システム3においてプロセッサ32は、デジタルマップMdの生成処理を含む移動体2の自動運転制御を遂行するためにメモリ30に記憶された、制御プログラムに含まれる複数の命令を実行する。これにより制御システム3は、デジタルマップMdの生成処理を含む移動体2の自動運転制御を遂行するための機能ブロックを、複数構築する。制御システム3において構築される複数の機能ブロックには、
図3に示すように認識ブロック300、計画ブロック320、制御ブロック340、及びマップ生成ブロック360が含まれている。
【0031】
認識ブロック300は、センサ系4の外界センサ40及び内界センサ42からセンサデータを取得する。認識ブロック300は、通信系5から通信データを取得する。認識ブロック300は、メモリ30からマップデータDmを取得する。認識ブロック300は、これらの取得データを入力としてフュージョンすることで、移動体2の内外環境を認識する。さらに認識ブロック300は、移動体2の搭乗オペレータにより発せられた音声を、音声センサ42aからのセンサデータに基づき認識する。
【0032】
計画ブロック320は、認識ブロック300から認識結果を表す認識データを、取得する。計画ブロック320は、移動体2の将来経路、将来アクション、及び将来軌道、並びに移動体2と他道路ユーザとのインタラクションの将来推移を、取得の認識データに基づき走行シーン毎に判断して時系列に計画する。このとき計画ブロック320は、例えばシミュレーションモデル又は機械学習モデル等の車両走行モデルを用いて、計画を実現してもよい。
【0033】
制御ブロック340は、計画ブロック320から計画結果を表す計画指令を、取得する。制御ブロック340は、取得の計画指令に従って移動体2の自動運転を制御する、動的運転タスク(Dynamic Driving Task)の機能を実現する。このとき、計画指令に従う挙動を移動体2に生じさせる複数の走行アクチュエータには、それぞれ当該挙動を実現するための制御指令が、制御ブロック340から与えられることになる。
【0034】
マップ生成ブロック360は、認識ブロック300から認識データを取得する。マップ生成ブロック360は、計画ブロック320から計画時の判断結果を表す判断データ、及び計画指令を取得する。マップ生成ブロック360は、制御ブロック340から制御指令を取得する。マップ生成ブロック360は、デジタルマップMdを生成する生成方法を、制御フローとしての
図4に示すマップ生成フローに従って実行する。本マップ生成フローは、移動体2の起動中に繰り返し実行される。尚、マップ生成フローにおける各「S」は、制御プログラムのうちマップ生成プログラムに含まれた複数命令によって実行される複数ステップを、それぞれ意味している。
【0035】
S10においてマップ生成ブロック360は、認識ブロック300からの認識データに基づき、移動体2の現在における走行ポイント(以下、現在走行ポイントという)を特定する。次にS20においてマップ生成ブロック360は、現在走行ポイントにおける移動体2の自動運転状態を表す自動運転データDdを、取得する。このときマップ生成ブロック360は、認識ブロック300からの認識データと、計画ブロック320からの判断データ及び計画指令と、制御ブロック340からの制御指令とに基づき、自動運転データDdを生成する。
【0036】
具体的に、認識データに基づく自動運転データDdには、認識ブロック300での認識物体に関する、例えば種別、位置、走行方向、速度、及び加減速度等の認識結果のうち、少なくとも一種類が含まれていてもよい。認識データに基づく自動運転データDdには、上記マップデータDmに関して例示された道路情報、標示情報、地物情報、及びルール情報等のうち、少なくとも一種類が認識ブロック300での認識結果として含まれていてもよい。
【0037】
判断データに基づく自動運転データDdには、上記マップデータDmに関して例示された道路情報、標示情報、地物情報、及びルール情報等のうち、少なくとも一種類が計画ブロック320での計画時の判断結果として含まれていてもよい。判断データに基づく自動運転データDdには、計画ブロック320での計画時に判断された走行シーンに関する、例えば走行環境の種別、走行レーン内の走行位置、走行レーンの路面状態、走行レーン内の物体有無、及び信号機の動作状態等のうち、少なくとも一種類の判断結果が含まれていてもよい。ここで走行レーンの路面状態には、例えば冠水、亀裂、積雪、及び積灰等のうち、少なくとも一種類が想定されていてもよい。走行レーン内の物体有無には、例えばマンホール、橋のジョイント、及びコーン等のうち、少なくとも一種類が想定されていてもよい。
【0038】
判断データに基づく自動運転データDdには、計画ブロック320での計画時に障害物として判断された他道路ユーザに関する、例えば位置座標、走行方向、速度、及び加減速度等のうち、少なくとも一種類の将来推移(予測軌道)が含まれていてもよい。判断データに基づく自動運転データDdには、計画ブロック320での計画時に障害物として判断された他道路ユーザに関する、例えば種別、及びサイズ等のうち、少なくとも一種類が将来推移と関連付けて含まれていてもよい。ここで他道路ユーザには、例えば歩行者等の人間、及び動物といった脆弱な道路ユーザ、並びに例えば自動車、トラック、バイク、及び自転車等の車両といった非脆弱な道路ユーザのうち、少なくとも一種類が想定されていてもよい。
【0039】
計画指令及び/又は制御指令に基づく自動運転データDdには、制御ブロック340により制御された移動体2に関する、例えば軌道、位置、速度、加減速度、ヨー角、ヨーレート、転舵角、及び他道路ユーザとのマージン等のうち、少なくとも一種類の実パラメータが含まれていてもよい。計画指令及び/又は制御指令に基づく自動運転データDdには、制御ブロック340により制御された移動体2に関する、例えば軌道、位置、速度、加減速度、ヨー角、ヨーレート、及び転舵角等のうち、少なくとも一種類の目標パラメータが含まれていてもよい。計画指令及び/又は制御指令に基づく自動運転データDdには、そうした少なくとも一種類の実パラメータ及び目標パラメータ間での偏差が、含まれていてもよい。
【0040】
続くS30においてマップ生成ブロック360は、現在走行ポイントにおける移動体2の自動運転状態に対しての搭乗オペレータによる評価を表す音声評価データDaを、取得したか否かを判定する。このときマップ生成ブロック360は、認識ブロック300からの認識データのうち音声の認識結果を表す音声認識データに基づき、音声評価データDaの取得有無を判定する。
【0041】
具体的に音声評価データDaと判定される音声認識データは、現在走行ポイントにおける走行シーンと実挙動とをそれぞれ搭乗オペレータが評価した音声を表すように、当該評価音声の内容がパターン化されて搭乗オペレータへと事前に展開されている。ここで走行シーンの評価音声は、例えば移動体2に対する障害物の存在有無、移動体2の走行に関与する信号機の状態、及び現在走行ポイントにおける走行環境の種類等のうち、少なくとも一種類を音声により評価する。実挙動の評価音声は、例えば移動体2の急制動、急転舵、及び急減速等のうち、少なくとも一種類を音声により評価する。こうした評価音声の具体例としては、「信号機が青信号なのに急制動」、及び「障害物がレーン前方に無いのに急転舵」等が挙げられる。
【0042】
S30におけるマップ生成ブロック360は、認識ブロック300からの音声認識データ自体を、音声評価データDaとして取得してもよい。S30におけるマップ生成ブロック360は、認識ブロック300からの音声認識データをテキストデータへ変換してから、当該変換後のテキストデータを音声評価データDaとして取得してもよい。いずれの場合にもS30におけるマップ生成ブロック360は、音声評価データDaが評価音声を表すか否かを判定することで、その結果が肯定判定の場合に音声評価データDaの取得有りとの判定を下してもよい。
【0043】
S30において音声評価データDaが取得有りと判定された場合には、マップ生成フローはS40へ移行する。S40においてマップ生成ブロック360は、デジタルマップMdにおいてマップデータDmの現在走行ポイントに関連付ける動的データとして、取得された自動運転データDd及び音声評価データDaを、メモリ30のデジタルマップMdに埋め込んで記憶する。このとき、現在走行ポイントにタイムスタンプも関連付けて埋め込まれたデジタルマップMdが、記憶されてもよい。こうしてS40の実行が完了すると、現在走行ポイントに対するマップ生成フローの今回実行が終了する。また、S30において音声評価データDaが取得無しと判定された場合にも、現在走行ポイントに対するマップ生成フローの今回実行が終了する。
【0044】
図1に示す処理システム1は、例えばデータ解析センタ等の外部センタに、設置される。処理システム1は、情報提示ユニット7及び入力ユニット8を含んで構成されている。情報提示ユニット7は、処理システム1の処理オペレータへ向けて情報を提示する。情報提示ユニット7は、デジタルマップMdを含む画像データを表示する、例えば液晶パネル、又は有機ELパネル等であってもよい。情報提示ユニット7は、デジタルマップMdに含まれる音声評価データDaを音声として出力する、例えばスピーカ等であってもよい。入力ユニット8は、処理オペレータから入力を受け付ける。入力ユニット8は、例えばマウス、トラックボール、及びキーボード等のうち少なくとも一種類である。ここで情報提示ユニット7と入力ユニット8とは、それらの共同により、処理オペレータに対するGUI(Graphical User Interface)を提供可能に構成されているとよい。以上において処理オペレータは、搭乗オペレータとは相異の人間であってもよいし、搭乗オペレータと同一の人間であってもよい。
【0045】
処理システム1は、さらに少なくとも一つの専用コンピュータとして、処理コンピュータ1aを含んで構成されている。処理コンピュータ1aは、例えばLAN(Local Area Network)回線、ワイヤハーネス、内部バス、及び無線通信回線等のうち、少なくとも一種類を介して情報提示ユニット7及び入力ユニット8に接続されている。
【0046】
処理コンピュータ1aは、メモリ10及びプロセッサ12を、少なくとも一つずつ有している。メモリ10は、コンピュータにより読み取り可能なプログラム及びデータ等を非一時的に記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。プロセッサ12は、例えばCPU、GPU、及びRISC-CPU等のうち、少なくとも一種類をコアとして含んでいる。
【0047】
処理コンピュータ1aにおいてメモリ10は、少なくとも一つの移動体2を制御する制御システム3から提供されるデジタルマップMdを、記憶する。制御システム3から処理コンピュータ1aへのデジタルマップMdの提供は、双方3,1a間の通信ネットワークを介したデータ伝送により、又は双方3,1a間でのメモリ30の物理的な移動により、実現される。ここでメモリ30の物理的な移動による場合、処理コンピュータ1aに接続されたメモリ30と、当該処理コンピュータ1aのメモリ10との間において、デジタルマップMdが転送されてもよい。メモリ30の物理的な移動による場合、デジタルマップMdを保持するメモリ30が、処理コンピュータ1aへの接続により実質的にメモリ10の一部を構成してもよい。
【0048】
処理コンピュータ1aにおいてプロセッサ12は、処理システム1により移動体2の自動運転関連処理を遂行するためにメモリ10に記憶された、処理プログラムに含まれる複数の命令を実行する。これにより処理コンピュータ1aは、処理システム1により移動体2の自動運転関連処理を遂行するための機能ブロックを、複数構築する。処理コンピュータ1aにおいて構築される複数の機能ブロックには、
図5に示すように抽出ブロック100、及び要因分析ブロック120が含まれている。
【0049】
これらのブロック100,110は、移動体2の自動運転関連処理を遂行する処理方法を、
図6に示す処理フローに従って実行する。本処理フローは、処理システム1の処理オペレータからの指令に応じて実行される。尚、処理フローにおける各「S」は、処理プログラムに含まれた複数命令によって実行される複数ステップを、それぞれ意味している。
【0050】
S100において抽出ブロック100は、移動体2の自動運転関連処理として、自動運転状態の要因分析処理を開始するためにデジタルマップMdの選択を要求する選択要求画像を、情報提示ユニット7に表示させる。次にS110において抽出ブロック100は、メモリ10に記憶のデジタルマップMdのうち、要因分析処理を開始するデジタルマップMdが、処理オペレータから入力ユニット8への入力操作によって選択されたか否かを、判定する。その結果、デジタルマップMdが選択されると、処理フローがS120へ移行する。
【0051】
S120において抽出ブロック100は、選択されたデジタルマップMd(以下、単にデジタルマップMdという)に含まれるマップデータDmを、
図7に示すように情報提示ユニット7に表示させる。このとき抽出ブロック100は、デジタルマップMdにおいて移動体2の走行ポイントに関連付けて埋め込まれた動的パラメータに含まれる自動運転データDdのうち、特定の基準パラメータBpが許容範囲外にある走行ポイントPoを、マップデータDmに重畳して表示する。それと共に抽出ブロック100は、デジタルマップMdにおいて移動体2の走行ポイントに関連付けて埋め込まれた動的パラメータのうち、音声評価データDaに関連付けられている走行ポイントPaを、マップデータDmに重畳して表示する。
【0052】
具体的に基準パラメータBpとしては、自動運転制御による移動体2の実挙動を表す、例えば軌道、位置、速度、加減速度、ヨー角、ヨーレート、転舵角、及び他道路ユーザとのマージン等の実パラメータ、並びに当該実パラメータの目標パラメータに対する偏差のうち、少なくとも一種類が採用される。そこで抽出ブロック100は、基準パラメータBpが閾値超過若しくは閾値以上の許容範囲外となる走行ポイントPoを、同パラメータBpの時系列分析又は周波数分析により抽出して、マップデータDmに重畳表示させる。
【0053】
S120において、音声評価データDaと関連付けられた走行ポイントPaは、基準パラメータBpが許容範囲外の走行ポイントPoと一致している場合、
図7に示すように当該走行ポイントPo上に重畳表示されるとよい。S120において、基準パラメータBpが許容範囲外の走行ポイントPoが連続する走行エリアでは、
図7に示すように基準パラメータBpと許容範囲の閾値との差分に応じたヒートマップ状に、当該走行エリアもマップデータDmに重畳表示されるとよい。尚、
図7では、基準パラメータBpと許容範囲の閾値との差分の大小に応じてヒートマップ状に表示色が変化している状態を、模式的にグラデーションによって示している。
【0054】
図6に示すように続くS130において抽出ブロック100は、基準パラメータBpが許容範囲外の走行ポイントPoと一致する走行ポイントPaを含んだ、音声評価データDaと関連付けられた走行ポイントPaのうち、要因分析処理の対象とする分析走行ポイントPacが、処理オペレータから入力ユニット8への入力操作によって選択されたか否かを、判定する。その結果、分析走行ポイントPacが選択されると、処理フローがS140へ移行する。このとき、
図8に示すように基準パラメータBpが許容範囲外の走行ポイントPoと一致する分析走行ポイントPacの選択される場合、当該基準パラメータBpは要因分析処理の開始基準に相当することとなる。
【0055】
図6に示すS140において抽出ブロック100は、デジタルマップMdに埋め込まれた動的パラメータのうち、選択された分析走行ポイントPac(以下、単に分析走行ポイントPacという)における自動運転データDd及び音声評価データDaを、抽出する。このとき、分析走行ポイントPacに関連付けてデジタルマップMdに埋め込まれた全ての自動運転データDdが抽出されてもよいし、当該全データDdのうち基準パラメータBpを含む一部が抽出されてもよい。
【0056】
続くS150において要因分析ブロック120は、要因分析処理のベースとなる要因定義データDfを、メモリ10から取得する。このとき要因定義データDfとしては、分析走行ポイントPacにおける自動運転データDdと、同ポイントPacにおける音声評価データDaとに、相関するデータが読み出される。
【0057】
具体的に要因定義データDfは、
図9,10に例示するように、分析走行ポイントPacにおける移動体2の走行シーンから実挙動までの因果関係を定義して、メモリ10に記憶されている。特に第一実施形態の要因定義データDfは、現実世界での走行シーンに対して、制御システム3の各ブロック300,320,340での処理要因により生成された指令が、移動体2に実挙動を生じさせるまでの、時系列の分岐ツリーを定義している。そこで要因分析ブロック120は、分析走行ポイントPacにおける自動運転データDdのうち少なくとも基準パラメータBpと、同ポイントPacにおける音声評価データDaとに基づき、要因定義データDfを決める走行シーン及び実挙動を判断する。要因分析ブロック120は、こうして判断された走行シーンと実挙動とに対応する要因定義データDfを、メモリ10において選別する。
【0058】
ここで
図9に例示の要因定義データDfは、実挙動として移動体2に急制動を生じさせる走行シーン、認識ブロック300での認識要因、計画ブロック320での計画要因及び計画指令、並びに制御ブロック340での制御指令に関して、時系列な因果関係を定義している。また一方、
図10に例示の要因定義データDfは、実挙動として移動体2に急転舵を生じさせる走行シーン、認識ブロック300での認識要因、計画ブロック320での計画要因及び計画指令、並びに制御ブロック340での制御指令に関して、時系列な因果関係を定義している。尚、
図9,10は、単一となる実挙動に対して複数の走行シーンからの分岐ツリーにより、要因定義データDfを例示している。但し、S150において選別の要因定義データDfとしては、
図9,10とそれぞれ対応する
図11,12に例示するように、要因分析ブロック120による走行シーン及び実挙動の各判断数に応じたツリー部分が、少なくともメモリ10から読み出されればよい。
【0059】
図6に示すように、続くS160において要因分析ブロック120は、分析走行ポイントPacにおける自動運転データDdのうち、読み出された要因定義データDf(以下、単に要因定義データDfという)に定義された要因及び指令のそれぞれ裏付けとなる裏付けデータDdbを、
図13,14に例示するように選別する。このとき選別される裏付けデータDdbは、S150により音声評価データDaに相関する要因定義データDfから判断された走行シーンと実挙動との間の因果関係を裏付けるデータとして、自動運転データDd及び音声評価データDaのうち少なくとも前者となる。故に裏付けデータDdbも、音声評価データDaに相関するデータといえる。またこのとき第一実施形態では、計画指令及び制御指令のうち少なくとも後者を裏付ける裏付けデータDdbには、分析走行ポイントPacにおける基準パラメータBpが含まれるとよい。
【0060】
図6に示すように、続くS170において要因分析ブロック120は、選別された裏付けデータDdb(以下、単に裏付けデータDdbという)に基づくことで、分析走行ポイントPacでの自動運転状態の要因を分析した結果となる要因分析データDcを、生成する。このとき要因分析データDcは、要因定義データDfにおける分岐ツリーのうち、音声評価データDaに相関する走行シーンと実挙動との間の因果関係として裏付けデータDdbから算出される尤度が最大となるツリー部分を、
図15,16に例示するように抽出したデータとなる。故に要因分析データDcも、音声評価データDaに相関するデータといえる。またこのとき第一実施形態では、計画指令及び制御指令のうち少なくとも後者を裏付ける裏付けデータDdbとして、分析走行ポイントPacにおける基準パラメータBpを含んだ裏付けデータDdbに基づくことで、要因分析データDcが生成されるとよい。
【0061】
図6に示すように、続くS180において要因分析ブロック120は、生成された要因分析データDcを、メモリ10への記憶により蓄積する。このとき要因分析データDcは、
図15,16に例示するように裏付けデータDdbと関連付けて、メモリ10に記憶されてもよい。またこのとき要因分析データDcは、デジタルマップMdのうち少なくともマップデータDmと関連付けて、メモリ10に記憶されてもよい。こうして蓄積された要因分析データDcは、例えば計画ブロック320に利用される車両走行モデル等の開発又は設計に対して、フィードバックされてもよい。要因分析データDcは、移動体2のキャリブレーションを含めたメンテナンスに、利用されてもよい。要因分析データDcは、デジタルマップMd又はそれを構成するマップデータDmの更新に、利用されてもよい。
【0062】
(作用効果)
以上説明した第一実施形態の作用効果を、以下に説明する。
【0063】
第一実施形態では、デジタルマップMdにおいて移動体2の走行ポイントに関連付けて埋め込まれた動的データのうち、分析走行ポイントPacにおける移動体2の自動運転状態を表す自動運転データDdと、当該自動運転状態に対しての搭乗オペレータからの評価を表す音声評価データDaとが、抽出される。そこで第一実施形態によると、分析走行ポイントPacでの自動運転状態の要因を分析した結果として、音声評価データDaに相関する要因分析データDcが自動運転データDdに基づき生成される。故に、生成された要因分析データDcによれば、分析された要因から自動運転における課題を抽出することが可能となる。
【0064】
第一実施形態によると、自動運転データDdのうち要因分析の判断基準となる基準パラメータBpが許容範囲外である移動体2の走行ポイントPoを分析走行ポイントPacとして、当該分析走行ポイントPacでの自動運転データDd及び音声評価データDaが抽出されてもよい。この場合、自動運転における課題に起因して基準パラメータBpが許容範囲外となった可能性の高い分析走行ポイントPacに対して、要因分析データDcが生成され得る。故に、生成された要因分析データDcによれば、自動運転における課題を高精度に抽出することが可能となる。ここで特に第一実施形態では、自動運転データDdのうち課題を反映する基準パラメータBpに基づき生成された場合の要因分析データDcは、自動運転における高精度な課題抽出に対して信頼性を担保することが可能となる。
【0065】
第一実施形態によると、音声評価データDaに相関する自動運転データDdとしての裏付けデータDdbの選別により、当該選別データDdbに基づく要因分析データDcが生成される。これによれば、音声評価データDaに相関する要因分析データDcの生成において基づくことになる自動運転データDdは、共通の音声評価データDaに相関することで要因分析に適した裏付けデータDdbに、絞られ得る。故に、自動運転における課題を抽出可能な要因分析データDcの生成において、分析処理の負荷低減及び分析処理の時間短縮を実現することが可能となる。
【0066】
第一実施形態によると、移動体の2自動運転状態を表す自動運転データDdだけでなく、当該自動運転状態に対しての搭乗オペレータからの評価を表す音声評価データDaが、移動体2の自動運転中にリアルタイムに取得され得る。そこで第一実施形態では、取得された自動運転データDd及び音声評価データDaが、移動体2の走行ポイントに関連付けた動的データとして、デジタルマップMdに埋め込まれて制御システム3のメモリ30に記憶される。故に、メモリ30に記憶されたデジタルマップMdは、自動運転における課題を抽出可能な処理システム1での処理方法に供されるデジタルマップMdとして、有用となる。
【0067】
(第二実施形態)
第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。
【0068】
第二実施形態では、ブロック100,120を構築して第一実施形態で説明の処理フローを第一処理フローとして実行する第一処理プログラムが、処理システム1のメモリ10に記憶されている。その上でさらに第二実施形態では、
図17に示すブロック2100,2120,2140を構築して
図18に示す第二処理フローを実行する第二処理プログラムが、処理システム1のメモリ10に記憶されている。ここで第二処理フローは、第一処理フローに後続して自動実行されてもよいし、処理システム1の処理オペレータからの指令に応じて第一処理フローとは別に実行されてもよい。尚、第二処理フローにおける各「S」は、第二処理プログラムに含まれた複数命令によって実行される複数ステップを、それぞれ意味している。
【0069】
S2100においてリスク更新ブロック2100は、過去回のうち少なくとも最新回の第一処理フローによって蓄積された要因分析データDcに基づき、デジタルマップMdに付与されるリスク識別データDiを、更新する。ここでリスク識別データDiは、デジタルマップMdに含まれるマップデータDmにおいて道路上の走行ポイント毎に識別された、自動運転にとってのリスクレベルを表している。特に本実施形態のリスク識別データDiは、自動運転に対するリスクレベルの区分として、高、中、及び低の三区分を表している。
【0070】
そこでS2100におけるリスク更新ブロック2100は、デジタルマップMdと関連付けて要因分析データDcが表している、分析走行ポイントPacでの自動運転状態の要因に基づくことで、分析走行ポイントPacでのリスクレベルを自動判断する。このとき、要因分析データDcに関連付けて記憶された裏付けデータDdbとしての、自動運転データDd及び音声評価データDaのうち少なくとも一方に基づき、リスクレベルが判断されてもよい。例えば、要因分析データDcでのレーンチェンジに対する阻害要因がレーン数にあった場合等には、自動運転データDdにも基づくことで、リスクレベルの判断精度を高めることが可能となる。また例えば、要因分析データDcでの青信号に対する急停止要因が視認性にあった場合、又はローカルルールが存在する場合等には、音声評価データDaにも基づくことで、リスクレベルの判断精度を高めることが可能となる。
【0071】
S2100におけるリスク更新ブロック2100は、デジタルマップMdにおいて分析走行ポイントPacを包含する走行エリアに関してのリスク識別データDiを、判断されたリスクレベルにより自動更新する。このときデジタルマップMdにおいては、分析走行ポイントPacを包含する走行エリアのリスク識別データDiだけでなく、分析走行ポイントPacでの要因分析データDcが表している要因を内在した走行エリアについても、リスク識別データDiが更新されてもよい。また、以上の如きS2100においては要因分析データDcが、例えば車両走行モデル等の開発又は設計に対してフィードバックされている場合、そうした開発又は設計の結果がリスクレベルの判断及び更新にも、反映されてもよい。
【0072】
続くS2110においてリスク表示ブロック2120は、更新されたリスク識別データDiを、
図19に示すようにデジタルマップMdに含まれるマップデータDmに重畳して、情報提示ユニット7に表示させる。このときリスク識別データDiは、マップデータDmにおいて道路上の走行ポイントを複数ずつ含んで規定される走行エリア毎に、リスクレベルを識別可能に表現する。特に本実施形態のリスク識別データDiは、リスクレベルの高、中、及び低の各区分に応じた、例えば赤、黄、及び緑の相異色によってヒートマップ状に表示されている。尚、
図19では、リスクレベルに応じて表示色が相異している状態を、模式的にハッチングの違いによって示している。
【0073】
ここで、高リスクレベルのリスク識別データDiは、移動体2の自動運転性能自体が不足しているとして、自動運転を禁止する走行エリアを、表しているとよい。一方、中リスクレベルのリスク識別データDiは、移動体2の自動運転性能がその保証に到るには不十分であるとして、自動運転を規制若しくは手動介入可能に搭乗オペレータへと注意を促す走行エリアを、表しているとよい。また一方、低リスクレベルのリスク識別データDiは、移動体2の自動運転性能が保証されるとして、自動運転を許可する走行エリアを、表しているとよい。
【0074】
S2110におけるリスク表示ブロック2120は、
図19に示すようにルート選定ボタンbs、狭域表示ボタンbn、及び選定終了ボタンbeを、広域のマップデータDmに重畳して情報提示ユニット7に表示させる。そこで、
図18に示すようにS2110に続くS2120においてリスク表示ブロック2120は、処理オペレータから入力ユニット8への入力操作によって、ボタンbs,bn,beのうちいずれか一つが選択されたか否かを、判定する。
【0075】
S2120においてルート選定ボタンbsが選択された場合、第二処理フローはS2130へ移行する。S2130においてリスク表示ブロック2120は、デジタルマップMdの次回以降での生成に際して移動体2に走行させる予定走行ルートを、入力ユニット8への入力操作によって処理オペレータに選定させる。ここまでの説明からS2120でのルート選定ボタンbsは、リスク識別データDiの表示下において予定走行ルートの選定を処理オペレータへ指示するためにマップデータDmに重畳表示されるといえ、それに応じてS2130は、当該選定を受け付ける処理といえる。
【0076】
S2130におけるリスク表示ブロック2120は、処理オペレータによる予定走行ルートの選定を自動支援するために、少なくとも一種類のルート候補をマップデータDmに重畳して情報提示ユニット7に表示させてもよい。このとき、リスク識別データDiの表しているリスクレベルと、要因分析データDcに対応する過去の予定走行ルートとのうち、少なくとも一方が考慮されるとよい。またこのとき、処理オペレータによる入力ユニット8への入力操作によって走行エリアが選択されるのに応じて、当該選択エリアに対して要因分析データDcの表す要因が、マップデータDmに重畳して表示されてもよい。S2130の完了後、第二処理フローはS2110へと戻る。
【0077】
S2120において狭域表示ボタンbnが選択された場合、第二処理フローはS2140へ移行する。S2140においてリスク表示ブロック2120は、処理オペレータから入力ユニット8への入力操作によって、広域のマップデータDmのうち表示を拡大させる走行エリアが選択されるのを待つ。その結果、表示を拡大させる走行エリアが選択されると、第二処理フローがS2150へ移行する。尚、S2140では、図示しないリターンボタンが表示されて、処理オペレータから入力ユニット8への入力操作により選択されることで、第二処理フローがS2110へと戻ってもよい。
【0078】
S2150においてリスク表示ブロック2120は、
図19に示す広域から
図20に示すように拡大した、狭域のマップデータDmに重畳して、S2110により更新のリスク識別データDiを情報提示ユニット7に表示させる。このときリスク表示ブロック2120は、広域マップデータDmの表示へ戻るためのリターンボタンbrも
図20に示すように、狭域マップデータDmに重畳して情報提示ユニット7に表示させる。そこで、
図18に示すように続くS2160においてリスク表示ブロック2120は、処理オペレータから入力ユニット8への入力操作によって、リターンボタンbrが選択されるのを待つ。その結果、リターンボタンbrが選択されると、第二処理フローがS2110へと戻る。
【0079】
S2120において、S2130での予定走行ルートの選定後に選定終了ボタンbeが選択された場合、第二処理フローがS2170へと移行する。S2170においてルート反映ブロック2140は、選定された予定走行ルートを
図21に示すように表現する走行ルートデータDrが、リスク識別データDiと共に付加されるように、メモリ10に記憶のデジタルマップMdを更新する。このとき、要因分析データDcもデジタルマップMdに付加されるとよい。こうして更新されたデジタルマップMdは、
図18の如くS2170では、通信ネットワークを介したデータ伝送により、又はメモリ30の物理的な移動により、処理システム1から移動体2の制御システム3へ提供されることとなる。S2170の実行が完了すると、第二処理フローの今回実行が終了する。
【0080】
(作用効果)
以上説明した第二実施形態に特有の作用効果を、以下に説明する。
【0081】
第二実施形態によると、生成された要因分析データDcに基づくリスクレベルを識別可能に表現するリスク識別データDiが、デジタルマップMdに重畳して表示される。これによれば、分析された要因をリスクレベルに反映させて処理オペレータに提示することができる。故に、要因分析データDcの有用性を高めることが可能となる。
【0082】
第二実施形態によると、デジタルマップMdの生成に際して移動体2に走行させる予定走行ルートの選定が、処理システム1でのリスク識別データDiの表示下において指示される。これによれば、デジタルマップMdを次回以降に生成するために必要な予定走行ルートについて処理オペレータは、要因分析データDcに基づくリスクレベルを考慮しつつ選定することができる。故に、要因分析データDcの有用性を高めることが可能となる。
【0083】
第二実施形態によると、選定された予定走行ルートを表現する走行ルートデータDrと、リスク識別データDiとが、デジタルマップMdに付加して移動体2へと提供される。これによれば、デジタルマップMdを次回以降に生成するために必要な予定走行ルートについて搭乗オペレータは、要因分析データDcに基づくリスクレベルを考慮して確認することができる。故に、要因分析データDcの有用性を高めることが可能となる。
【0084】
(第三実施形態)
第三実施形態は、第二実施形態の変形例である。
【0085】
第三実施形態では、第二実施形態で説明の第一及び第二処理フローをそれぞれ実行する、第一及び第二処理プログラムが処理システム1のメモリ10に記憶されている。それと共に第三実施形態では、ブロック300,320,340,360を構築して第一実施形態で説明のマップ生成フローを含んだ第二制御フローを実行する第二制御プログラムが、制御システム3のメモリ30に記憶されている。これらの上でさらに第三実施形態では、
図22に示すブロック3300,3320を構築して
図23に示す第一制御フローを実行する第一制御プログラムが、制御システム3のメモリ30に記憶されている。ここで第一制御フローは、第二制御フローに先立って自動実行されてもよいし、移動体2の起動中に搭乗オペレータからの指令に応じて第二制御フローとは別に実行されてもよい。特に後者の場合には第二制御フローについても、移動体2の起動中に搭乗オペレータからの指令に応じて実行されるとよい。尚、第一制御フローにおける各「S」は、第一制御プログラムに含まれた複数命令によって実行される複数ステップを、それぞれ意味している。
【0086】
S3100においてデータ抽出ブロック3300は、処理システム1から提供されてメモリ10に記憶された最新のデジタルマップMdを、当該メモリ10から読み出す。そこで、S3100におけるデータ抽出ブロック3300は、読み出したデジタルマップMdに付加されているリスク識別データDi及び走行ルートデータDrを、当該マップMdから抽出する。このとき、読み出したデジタルマップMdに付加されている要因分析データDcも、抽出されてもよい。
【0087】
S3100に後続するS3110~S3170は、それぞれ第二実施形態のS2110~S2170に準じて実行される。但し、第二実施形態の第二処理フローにおけるリスク表示ブロック2120は、第三実施形態の第一制御フローでは
図22に示すリスク表示ブロック3320によって代替される。第二実施形態の第二処理フローにおける情報提示ユニット7は、第三実施形態の第一制御フローでは移動体2の情報提示系6によって代替される。第二実施形態の第二処理フローにおける入力ユニット8は、第三実施形態の第一制御フローでは移動体2の内界センサ42、又は通信系5と通信可能な入力端末によって代替される。第二実施形態の第二処理フローにおける処理システム1のメモリ10は、第三実施形態の第一制御フローでは制御システム3のメモリ30によって代替される。第二実施形態の第二処理フローにおける処理システム1の処理オペレータは、第三実施形態の第一制御フローでは移動体2の搭乗オペレータによって代替される。
【0088】
ここでS2130に準ずるS3130では、処理システム1における当該S2130の実行に応じて処理オペレータにより選定された予定走行ルートが、搭乗オペレータにより再選定されることで更新されることになる。また、S2120,S2150にそれぞれずるS3120,S3150では、S3130の実行により予定走行ルートが再選定はされていない状態で、表示された選定終了ボタンbeが選択されると、図示は省略するが、S3170がスキップされて第一制御フローの今回実行が終了することになる。
【0089】
(作用効果)
以上説明した第三実施形態に特有の作用効果を、以下に説明する。
【0090】
第三実施形態によると、デジタルマップMdの生成に際して移動体2に走行させる予定走行ルートの選定が、移動体2でもリスク識別データDiの表示下において指示される。これによれば、デジタルマップMdを次回以降に生成するために必要な予定走行ルートについて搭乗オペレータは、要因分析データDcに基づくリスクレベルを考慮しつつ確認することができ、さらに必要に応じて再選定することもできる。故に、要因分析データDcの有用性を高めることが可能となる。
【0091】
(他の実施形態)
ここまで複数の実施形態について説明したが、本開示は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
【0092】
第一~第三実施形態の変形例において、処理システム1及び/又は制御システム3を構成する専用コンピュータは、デジタル回路及びアナログ回路のうち、少なくとも一方をプロセッサとして有していてもよい。ここでデジタル回路とは、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System on a Chip)、PGA(Programmable Gate Array)、及びCPLD(Complex Programmable Logic Device)等のうち、少なくとも一種類である。またこうしたデジタル回路は、プログラムを記憶したメモリを、有していてもよい。
【0093】
第一~第三実施形態の変形例では、基準パラメータBpが許容範囲外の走行ポイントPoは、S120において表示されなくてもよい。
図24に示すように第一~第三実施形態の変形例では、S100による表示がスキップされて、S110によるデジタルマップMdの選択が抽出ブロック100により自動遂行されてもよい。
図24に示すようにこの変形例に加えて、又は図示は省略するがこの変形例と別な変形例では、S120による表示がスキップされて、S130による分析走行ポイントPacの選択が抽出ブロック100により自動遂行されてもよい。
【0094】
第二及び第三実施形態の変形例では、S2100により判断されてS2110,S3110によりリスク識別データDiとして表示されるリスクレベルが二区分、又は四区分以上に設定されてもよい。第二及び第三実施形態の変形例において狭域のマップデータDmを表示するS2150,S3150では、それぞれS2120,S2130の組及びS3120,S3130の組に準じて予定走行ルートの選定が指示並びに受付されてもよい。第三実施形態の変形例では、S2110~S2160がスキップされることで、リスク識別データDiの付加によって更新されたデジタルマップMdが、S2170において移動体2の制御システム3へと提供されてもよい。第三実施形態の変形例では、S3100が実行される代わりに、S2100に準ずる処理が移動体2の制御システム3によって実行されてもよい。
【0095】
以上説明した第一~第三実施形態及び変形例において搭乗オペレータは、移動体2の外部となる例えば外部センタ等において、当該移動体2を監視する監視オペレータにより代替されてもよい。この変形例の場合に監視オペレータは、処理オペレータとして機能してもよい。
【0096】
(付言)
本明細書には、以下に列挙する複数の技術的思想と、それらの複数の組み合わせが開示されている。
【0097】
(技術的思想1)
移動体(2)の自動運転に関連する処理を遂行するために、プロセッサ(12)により実行される処理方法であって、
デジタルマップ(Md)において前記移動体の走行ポイントに関連付けて埋め込まれた動的データのうち、分析走行ポイント(Pac)における前記移動体の自動運転状態を表す自動運転データ(Dd,Ddb)と、前記分析走行ポイントにおける前記自動運転状態に対してのオペレータからの音声による評価を表す音声評価データ(Da)とを、抽出することと、
前記分析走行ポイントでの前記自動運転状態の要因を分析した結果として、前記音声評価データに相関する要因分析データ(Dc)を、前記自動運転データに基づき生成することとを、含む処理方法。
【0098】
(技術的思想2)
前記自動運転データ及び前記音声評価データを抽出することは、
前記自動運転データのうち要因分析の開始基準となる基準パラメータ(Bp)が許容範囲外である前記移動体の走行ポイント(Po)を前記分析走行ポイントとして、前記自動運転データ及び前記音声評価データを抽出することを、含む技術的思想1に記載の処理方法。
【0099】
(技術的思想3)
前記要因分析データを生成することは、
前記基準パラメータに基づき前記要因分析データを生成することを、含む技術的思想2に記載の処理方法。
【0100】
(技術的思想4)
前記要因分析データを生成することは、
前記音声評価データに相関する前記自動運転データ(Ddb)を選別し、当該選別データに基づき前記要因分析データを生成することを、含む技術的思想1~3のいずれか一項に記載の処理方法。
【0101】
(技術的思想5)
生成された前記要因分析データを、記憶媒体(10)に記憶することを、さらに含む技術的思想1~4のいずれか一項に記載の処理方法。
【0102】
(技術的思想6)
生成された前記要因分析データに基づくリスクレベルを識別可能に表現するリスク識別データ(Di)を、前記デジタルマップに重畳して表示させることを、含む技術的思想1~5のいずれか一項に記載の処理方法。
【0103】
(技術的思想7)
前記デジタルマップの生成に際して前記移動体に走行させる予定走行ルートの選定を、前記リスク識別データの表示下において指示することを、含む技術的思想6に記載の処理方法。
【0104】
(技術的思想8)
選定された前記予定走行ルートを表現する走行ルートデータ(Dr)と、前記リスク識別データとを、前記デジタルマップに付加して前記移動体へ提供することを、含む技術的思想7に記載の処理方法。
【0105】
(技術的思想9)
移動体(2)の自動運転に関連して技術的思想1~8のいずれか一項に記載の処理方法に提供されるデジタルマップ(Md)を生成するために、プロセッサ(32)により実行されるマップ生成方法であって、
前記移動体の自動運転状態を表す自動運転データ(Dd)を、取得することと、
前記自動運転状態に対してのオペレータからの音声による評価を表す音声評価データ(Da)を、取得することと、
前記移動体の走行ポイントに関連付ける動的データとして前記自動運転データ及び前記音声評価データを、前記デジタルマップに埋め込んで記憶媒体(30)に記憶することとを、含むマップ生成方法。
【0106】
(技術的思想10)
技術的思想9に記載のマップ生成方法により生成された前記デジタルマップを、記憶する記憶媒体。
【0107】
尚、以上において技術的思想1~9は、方法及びプログラムの形態で実現されてもよい。
【符号の説明】
【0108】
1:処理システム、2:移動体、3:制御システム、10,30:メモリ、12,32:プロセッサ、Bp:基準パラメータ、Da:音声評価データ、Dc:要因分析データ、Dd:自動運転データ、Ddb:裏付けデータ、Di:リスク識別データ、Dr:走行ルートデータ、Md:デジタルマップ、Pac:分析走行ポイント、Pa,Po:走行ポイント