(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】無菌充填方法及び無菌充填機
(51)【国際特許分類】
B65B 55/10 20060101AFI20241008BHJP
B65B 55/04 20060101ALI20241008BHJP
B67C 7/00 20060101ALI20241008BHJP
A61L 2/20 20060101ALI20241008BHJP
A61L 101/22 20060101ALN20241008BHJP
【FI】
B65B55/10 E
B65B55/04 C
B67C7/00
A61L2/20
A61L101:22
(21)【出願番号】P 2022195366
(22)【出願日】2022-12-07
(62)【分割の表示】P 2021179035の分割
【原出願日】2020-11-10
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2019210610
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】早川 睦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嘉則
【審査官】西塚 祐斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-280222(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0005039(KR,A)
【文献】特開2018-177263(JP,A)
【文献】特開2014-208434(JP,A)
【文献】特開2000-127234(JP,A)
【文献】特開2012-206261(JP,A)
【文献】特開2005-169885(JP,A)
【文献】特開昭56-072913(JP,A)
【文献】特開昭62-227615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 55/10
B65B 55/04
B67C 7/00
A61L 2/20
A61L 101/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリフォームを加熱し、加熱された前記プリフォームを定められた温度範囲のネック部、胴部及び底部の金型に封入し、金型に封入された前記プリフォームをボトルにブロー成形し、
前記ネック部、胴部及び底部の金型の
温度を調節する金型温度調節装置が有する金型温度調節媒体冷却タンクから前記ネック部の金型及び前記底部の金型を循環する金型温度調節媒体が流出する箇所並びに流入する箇所、及び金型温度調節媒体加温タンクから前記胴部の金型を循環する前記金型温度調節媒体が流出する箇所並びに流入する箇所のいずれかが定められた温度範囲外で成形された前記ボトルを除去し、
除去されない前記ボトルに過酢酸の濃度が500mg/L~4000mg/Lである殺菌剤を接触させ、前記ボトルの表面を殺菌し、
殺菌された前記ボトルに殺菌された内容物を充填し、
前記内容物が充填された前記ボトルを殺菌された蓋材により密封することを特徴とする無菌充填方法。
【請求項2】
プリフォームを加熱する加熱装置、
加熱された前記プリフォームをボトルにブロー成形するために前記プリフォームを封入するネック部、胴部及び底部からなる金型、
前記ネック部、胴部及び底部の金型の温度を定められた温度範囲に調節する金型温度調節装置、
前記金型に封入された前記プリフォームを前記ボトルにブロー成形するブロー成形装置、
前記ネック部、胴部及び底部の金型の
温度を調節する前記金型温度調節装置が有する金型温度調節媒体冷却タンクから前記ネック部の金型及び前記底部の金型を循環する金型温度調節媒体が流出する箇所並びに流入する箇所、及び金型温度調節媒体加温タンクから前記胴部の金型を循環する前記金型温度調節媒体が流出する箇所並びに流入する箇所のいずれかが定められた温度範囲外で成形された前記ボトルを除去するボトル除去装置、
除去されない前記ボトルに過酢酸の濃度が500mg/L~4000mg/Lである殺菌剤を吹き付け殺菌するボトル殺菌装置、
殺菌された前記ボトルに殺菌された内容物を充填する充填装置、
前記内容物が充填された前記ボトルを殺菌された蓋材により密封する密封装置、
前記加熱装置から前記密封装置まで前記プリフォーム又は前記ボトルを搬送する搬送装置を備えることを特徴とする無菌充填機。
【請求項3】
請求項
2に記載の無菌充填機において、
前記金型温度調節装置が、前記金型温度調節媒体の前記金型への流入時及び流出時の温度が前記定められた温度範囲外のとき、前記金型温度調節媒体を前記金型に循環させることを停止することを特徴とする無菌充填機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形金型の温度監視を行いながら、プリフォームからボトルを成形し、成形されたボトルを殺菌剤により殺菌し、殺菌されたボトルに殺菌された内容物を充填し、内容物が充填されたボトルを殺菌された蓋材により密封する無菌充填方法及び無菌充填機に関する。
【背景技術】
【0002】
無菌充填機として、プリフォームからブロー成形によりボトルを成形する成形部と、成形部で成形されたボトルを殺菌剤により殺菌する殺菌部と、殺菌部で殺菌されたボトルをエアリンスするエアリンス部と、エアリンス部でエアリンスされたボトルに内容物を充填し密封する充填部とが連結され、成形部から殺菌部及びエアリンス部を経て充填部へとボトルを連続走行させる走行手段が設けられ、成形部から充填部に至る箇所がチャンバーで覆われたものが知られている。この無菌充填機によれば、ボトルが成形段階で加えられた熱を利用して、殺菌剤としての過酸化水素のミストによる殺菌効果を高めることができる(特許文献1参照。)。
【0003】
また、プリフォームから成形されたボトルの温度を検査し、ボトルの表面温度が一定温度以上であることが確認されたボトルのみ殺菌部に搬送し、一定温度未満であるボトルを除去する無菌充填機も知られている(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-111295号公報
【文献】特開2010-155631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の無菌充填機によれば、ボトルの成形から殺菌剤によるボトルの殺菌を経て飲料の充填に至るまでを連続的に行うことができるが、成形したボトルをすべて殺菌工程及び充填工程へと送るので、ボトルの不良品にも飲料が充填され、そのまま出荷されてしまうおそれがある。例えば、温度が不十分なままボトルが殺菌工程に送られた場合、殺菌が不完全になることがあり、このようなボトルにも飲料が充填され出荷されてしまうというおそれがある。
【0006】
そこで、特許文献2のように、成形されたボトルの表面温度を測定し、一定温度以上のボトルのみ殺菌部に搬送することが行われている。しかし、無菌充填機の充填速度は従来600本/分であったが、最近の無菌充填機の充填速度は1000本/分を超えるようになった。600本/分程度では、ボトルの表面温度測定に支障は無かったが、1000本/分を超える場合、ボトルの表面温度測定の正確性が不十分となっている。ボトルの表面温度は、ボトルのネック部、胴部及び底部を測定するが、特にスクリュー形状の凹凸が形成されるネック部は、測定箇所から照射される赤外線が乱反射するため、充填速度が高速となると正確な温度測定ができないという不具合を生じている。
【0007】
そこで、充填速度が高速となっても、成形されたボトルの表面温度が一定以上であり、殺菌剤により十分にボトルが殺菌される無菌充填機がもとめられている。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解消することができる無菌充填方法及び無菌充填機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用する。
【0010】
本発明に係る無菌充填方法は、プリフォームを加熱し、加熱された前記プリフォームを定められた温度範囲のネック部、胴部及び底部の金型に封入し、金型に封入された前記プリフォームをボトルにブロー成形し、前記ネック部、胴部及び底部の金型の温度を調節する金型温度調節装置が有する金型温度調節媒体冷却タンクから前記ネック部の金型及び前記底部の金型を循環する金型温度調節媒体が流出する箇所並びに流入する箇所、及び金型温度調節媒体加温タンクから前記胴部の金型を循環する前記金型温度調節媒体が流出する箇所並びに流入する箇所のいずれかが定められた温度範囲外で成形された前記ボトルを除去し、除去されない前記ボトルに過酢酸の濃度が500mg/L~4000mg/Lである殺菌剤を接触させ、前記ボトルの表面を殺菌し、殺菌された前記ボトルに殺菌された内容物を充填し、前記内容物が充填された前記ボトルを殺菌された蓋材により密封することを特徴とする。また、本願発明の他の実施形態に係る無菌充填方法は、プリフォームを加熱し、加熱された前記プリフォームを定められた温度範囲のネック部、胴部及び底部の金型に封入し、金型に封入された前記プリフォームをボトルにブロー成形するとき、前記ネック部、胴部及び底部の金型のいずれかが定められた温度範囲外で成形された前記ボトルを除去し、除去されない前記ボトルに殺菌剤を接触させ、前記ボトルの表面を殺菌し、殺菌された前記ボトルに殺菌された内容物を充填し、前記内容物が充填された前記ボトルを殺菌された蓋材により密封することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の他の実施形態に係る無菌充填方法において、前記殺菌剤が殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物であると好適である。
【0015】
本発明に係る無菌充填機は、プリフォームを加熱する加熱装置、加熱された前記プリフォームをボトルにブロー成形するために前記プリフォームを封入するネック部、胴部及び底部からなる金型、前記ネック部、胴部及び底部の金型の温度を定められた温度範囲に調節する金型温度調節装置、前記金型に封入された前記プリフォームを前記ボトルにブロー成形するブロー成形装置、前記ネック部、胴部及び底部の金型の温度を調節する前記金型温度調節装置が有する金型温度調節媒体冷却タンクから前記ネック部の金型及び前記底部の金型を循環する金型温度調節媒体が流出する箇所並びに流入する箇所、及び金型温度調節媒体加温タンクから前記胴部の金型を循環する前記金型温度調節媒体が流出する箇所並びに流入する箇所のいずれかが前記定められた温度範囲外で成形された前記ボトルを除去するボトル除去装置、除去されない前記ボトルに過酢酸の濃度が500mg/L~4000mg/Lである殺菌剤を吹き付け殺菌するボトル殺菌装置、殺菌された前記ボトルに殺菌された内容物を充填する充填装置、前記内容物が充填された前記ボトルを殺菌された蓋材により密封する密封装置、前記加熱装置から前記密封装置まで前記プリフォーム又は前記ボトルを搬送する搬送装置を備えることを特徴とする。本発明の他の実施形態に係る無菌充填機は、プリフォームを加熱する加熱装置、加熱された前記プリフォームをボトルにブロー成形するために前記プリフォームを封入するネック部、胴部及び底部からなる金型、前記ネック部、胴部及び底部の金型の温度を定められた温度範囲に調節する金型温度調節装置、前記金型に封入された前記プリフォームを前記ボトルにブロー成形するブロー成形装置、前記ネック部、胴部及び底部の金型のいずれかが定められた温度範囲外で成形された前記ボトルを除去するボトル除去装置、除去されない前記ボトルに殺菌剤を吹き付け殺菌するボトル殺菌装置、殺菌された前記ボトルに殺菌された内容物を充填する充填装置、前記内容物が充填された前記ボトルを殺菌された蓋材により密封する密封装置、前記加熱装置から前記密封装置まで前記プリフォーム又は前記ボトルを搬送する搬送装置を備えることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る無菌充填機において、前記金型温度調節装置が、前記金型温度調節媒体の前記金型への流入時及び流出時の温度が定められた温度範囲外のとき、前記金型温度調節媒体を前記金型に循環させることを停止すると好適である。
【発明の効果】
【0020】
加熱されたプリフォームをブロー成形することにより得られるボトルにプリフォームの加熱による熱が残留するうちに、ボトルの内外面に殺菌剤を接触させることにより、ボトルの殺菌効果が向上する。成形されるボトルに熱が残留するか否かは、加熱されたプリフォームをブロー成形する金型の温度が定められた温度範囲であることが必要である。金型はブロー成形されるボトルのネック部、胴部及び底部に対応する3つの金型にプリフォームを封入して、延伸ロッドの挿入及び高圧エアの吹込みにより行われる。ブロー成形されるボトルの表面は、ネック部、胴部及び底部の金型の形状となり、成形直後に金型の表面はボトルの外表面に接触する。したがって、殺菌剤が接触するボトルのネック部、胴部及び底部の表面温度は金型の温度により決定される。
【0021】
本願は金型の表面温度を定められた温度範囲とすることにより、プリフォームの加熱による熱をブロー成形されたボトルに残留させ、殺菌剤の殺菌効果を向上することができる無菌充填方法及び無菌充填機を提供する。さらに、本願に係る発明によれば、殺菌効果の向上により、ボトルに接触させる殺菌剤の量を低減させることができる。また、殺菌剤の量を低減することにより、ボトルに残留する殺菌剤を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態に係る無菌充填機の概略を示す平面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る無菌充填機の加熱装置及びブロー成形装置における工程を示し、(A)はプリフォーム供給工程を、(B)はプリフォーム加熱工程を、(C)はブロー成形工程を、(D)はボトル取り出し工程を示す。
【
図3】本発明の実施の形態に係る無菌充填機のボトル殺菌装置及び充填装置における工程を示し、(E-1)はボトルをトンネルにより遮蔽して行う殺菌剤吹き付け工程を、(E-2)は殺菌剤吹き付けノズルをボトルに挿入して行う殺菌剤吹き付け工程を、(F-1)はボトルが正立状態でのエアリンス工程を、(F-2)はボトルが倒立状態でのエアリンス工程を、(G)は充填工程を、(H)は密封工程を示す。
【
図4】本発明の実施の形態に係る無菌充填機に組み込まれる殺菌剤ガス生成器を示す。
【
図5】本発明の実施の形態に係る無菌充填機に備えられる金型温度調節装置を示す。
【
図6】本発明の実施の形態に係る無菌充填機に備えられる金型の内部に挿入する金型表面温度測定装置を示す。
【
図7】本発明の実施の形態に係る無菌充填機に備えられる胴部金型を外部から測定する金型表面温度測定装置を示す。
【
図8】本発明の実施の形態に係る無菌充填機に備えられる底部金型を外部から測定する金型表面温度測定装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0024】
図1に本発明に係る無菌充填機を示す。プリフォームの供給からプリフォームの加熱装置、プリフォームからボトルをブロー成形するブロー成形装置、ブロー成形時のボトルのネック部、胴部及び底部の金型のいずれかが定められた温度範囲外で成形されたボトルを除去するボトル除去装置、ボトルを殺菌するボトル殺菌装置、ボトルに内容物を充填する充填装置及び内容物が充填されたボトルを密封する密封装置からなる無菌充填機の概要を
図1により説明し、各装置における工程の詳細を
図2、
図3、
図4により説明する。本実施形態によれば、ブロー成形されたボトルを変形させることなく、プリフォームの加熱により加えられた熱をボトルに適正に残留させることができる。
【0025】
(実施の形態の概要)
図1に示すように、本実施の形態に係る無菌充填機は、プリフォーム1を供給するプリフォーム供給装置4、プリフォーム1をボトル2に成形する温度に加熱する加熱装置6、加熱されたプリフォーム1をボトル2に成形するブロー成形装置16、ブロー成形されたボトル2の外観を検査するボトル検査装置24、ブロー成形装置16が備える金型20が定められた温度範囲外でブロー成形されたボトル2を除去するボトル除去装置17、金型20が定められた温度範囲内でブロー成形され、除去されないボトル2を殺菌するボトル殺菌装置30、殺菌されたボトル2をエアリンスするエアリンス装置34、エアリンスされたボトル2に殺菌された内容物を充填する充填装置39、密封部材である蓋材3を殺菌する蓋材殺菌装置52、内容部が充填されたボトル2を殺菌された蓋材3により密封する密封装置44、密封されたボトル2を無菌充填機の外部に排出する排出装置47及び供給されるプルフォーム1及び成形されるボトル2を搬送する搬送装置を備える。本発明の実施形態に係る無菌充填機により、殺菌されたボトル2に無菌雰囲気で殺菌された内容物を充填することで、無菌充填を行うことができる。
【0026】
加熱装置6、ブロー成形装置16及びボトル検査装置24は成形部チャンバー12、ボトル殺菌装置30は殺菌部チャンバー33、エアリンス装置34はエアリンス部チャンバー36、充填装置39は充填部チャンバー41、密封装置44は密封部チャンバー46、排出装置47及び排出コンベア50は排出部チャンバー49により各々遮蔽されている。ボトル殺菌装置30で発生する殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物がブロー成形装置16に流入しないように、ブロー成形装置16とボトル殺菌装置30の間には雰囲気遮断チャンバー27が設けられている。ボトル殺菌装置30で発生する殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物は、雰囲気遮断チャンバー27が排気されることで、ブロー成形装置16に流入することはない。ここで、充填装置39及び密封装置44は単一のチャンバーにより遮蔽されても構わない。また、蓋材殺菌装置52と密封装置44は単一のチャンバーにより遮蔽されても構わない。さらに、密封装置44と排出装置47も単一のチャンバーにより遮蔽されても構わない。
【0027】
無菌充填機の稼働中には、殺菌部チャンバー33、エアリンス部チャンバー36、充填部チャンバー41、密封部チャンバー46、排出部チャンバー49は、除菌フィルタにより無菌化された無菌エアが供給され、各チャンバー内の圧力を無菌エアの供給により陽圧にすることで、無菌充填機の無菌性が維持される。陽圧にする圧力は、充填部チャンバー41内が最も高く、エアリンス部チャンバー36、殺菌部チャンバー33と上流に行くほど低く設定される。また、密封部チャンバー46、排出部チャンバー49と下流に行くにほど低く設定される。雰囲気遮断チャンバー27は排気されることで、雰囲気遮断チャンバー27内の圧力は、大気圧とほぼ同一に保持される。例えば、充填部チャンバー41内の圧力を20Pa~40Paとすると、他のチャンバー内の圧力は充填部チャンバー41内の圧力よりも低い。
【0028】
無菌充填機において、プリフォーム1を加熱し、加熱されたプリフォーム1を定められた温度範囲のネック部金型20a、胴部金型20b及び底部金型20cを有する金型20に封入し、金型20に封入されたプリフォーム1をボトルにブロー成形し、ネック部金型20a、胴部金型20b及び底部金型20cのいずれかが定められた温度範囲外で成形されたボトル2を除去する。無菌充填機は、ボトル2を除去するボトル除去装置17を備える。ボトル除去装置17は、
図1において雰囲気遮断チャンバー27内に設けられているが、ボトルを殺菌する前であればいずれの箇所に設けられても構わない。ネック部金型20a、胴部金型20b及び底部金型20cのすべてが定められた温度範囲内で成形され、除去されなかったボトル2に、殺菌剤を接触させてボトル2を殺菌する。殺菌剤をボトル2に接触させるには、殺菌剤をボトル2の内外面に殺菌剤を吹き付けることにより行う。吹き付けられる殺菌剤は殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物又は液体である。
【0029】
図2(A)に示すプリフォーム1が、
図1に示すプリフォーム供給装置4から、プリフォーム供給コンベア5により所望の速度で連続的に加熱装置6に供給される。
【0030】
本実施形態におけるプリフォーム1は試験管状の有底筒状体であり、
図2(D)に示したボトル2と同様な口部1aがその成形当初に付与される。この口部1aにはプリフォーム1の成形と同時に雄ネジが形成される。また、プリフォーム1には口部1aの下部に搬送のためのサポートリング1bが形成される。プリフォーム1又はボトル2はこのサポートリング1bを介してグリッパ22により把持され、無菌充填機内を走行する。プリフォーム1は射出成形、圧縮成形等によって成形される。プリフォーム1の材質はポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなり、これらの樹脂単体又は混合物であっても構わないし、リサイクルされた熱可塑性樹脂を含んでも構わない。また、バリア性を付与するために、エチレン-ビニルアルコール共重合体、メタキシリレンジアミンのような芳香族アミンをモノマーとするポリアミド等の熱可塑性樹脂を層として、又は混合物として含んでも構わない。
【0031】
加熱装置6に供給されたプリフォーム1は、一定ピッチで多数のグリッパ22が設けられたホイール7、8により搬送され、加熱装置搬送ホイール9に達する。ここで、
図2(B)に示すようにグリッパ22から解放され、プリフォーム1の口部1aにスピンドル19が挿入されて搬送される。
【0032】
プリフォーム1は、
図2(B)に示すように、赤外線ヒータ14又はその他の加熱手段によって、後のブロー成形に適した温度まで加熱される。この温度は90℃から130℃であると好適である。
【0033】
なお、プリフォーム1の口部1aの温度は、変形等を防止するため70℃以下の温度に抑えられる。
【0034】
プリフォーム1は
図2(B)に示すように、口部1aにスピンドル19が挿入され、赤外線ヒータ14により加熱され、回転しながら無端チェーン13により搬送される。スピンドル19は無端チェーン13に一定間隔で設けられている。無端チェーン13はプーリ10及び11により回転する。スピンドル19に代えてマンドレルをプリフォーム1に挿入することにより、プリフォーム1を倒立状態で回転させつつ搬送することも可能である。
【0035】
加熱されたプリフォーム1は、スピンドル19から解放され、グリッパ22に把持されて、ホイール15を経て、ブロー成形装置16の成形ホイール18に搬送される。成形ホイール18に備えられた金型20により、
図2(C)に示すように、プリフォーム1はボトル2にブロー成形される。金型20は、ネック部金型20a、胴部金型20b及び底部金型20cを有する。ネック部金型20a及び胴部金型20bは割型となっており、対を成し通常は2個ずつである。底部金型20cは通常単数である。金型20及びブローノズル21は、成形ホイール18の回りに複数個配置され、成形ホイール18の回転とともに成形ホイール18の周りを一定速度で旋回する。
【0036】
加熱されたプリフォーム1が到来すると、金型20はプリフォーム1を挟み込み、封入する。続いてブローノズル21がプリフォーム1に接合され、図示しない延伸ロッドがブローノズル21に設けられた孔に導かれ、プリフォーム1内に挿入され、挿入される延伸ロッドによりプリフォーム1は縦延伸され、同時にブローノズル21からプリフォーム1内に高圧の空気等の気体が吹きこまれ横延伸されることにより、金型20内でボトル2が成形される。成形されたボトル2は、
図2(D)に示すように、金型20が開き、金型20から取り出され、検査ホイール23に設けられたグリッパ22によりサポートリング1bを把持され、検査ホイール23に受け渡される。
【0037】
ネック部金型20a、胴部金型20b及び底部金型20cは定められた温度範囲に管理されなければならない。加熱されたプリフォーム1はブロー成形されるが、成形後にボトル2の表面温度が定められた温度以上でなければならない。ボトル2の表面に吹き付けられることにより接触する殺菌剤の殺菌効果が十分得られないおそれがあるためである。ネック部金型20a、胴部金型20b及び底部金型20cに循環させる金型温度調節媒体の温度を定められた温度範囲とすることで、ボトル2の表面温度を適正な温度とすることができる。
【0038】
ボトル2の表面に吹き付けられる殺菌剤の殺菌効果を十分に得るためには、殺菌剤が吹き付けられる際、ボトル2の表面温度は40℃以上、好ましくは50℃以上である。すなわち、ブロー成形され、金型20から取り出されたボトル2が外観検査され、殺菌剤が吹き付けられる直前のボトル2の表面温度は40℃以上であり、好ましくは50℃以上である。殺菌剤が吹き付けられる直前にボトル2の表面温度を40℃以上とするために、金型20の表面温度は金型温度調節装置54により定められた温度範囲とされる。
【0039】
図5に示すように、金型20の温度を調節するために金型温度調節装置54が設けられる。金型温度調節装置54は、金型温度調節媒体冷却タンク55、金型温度調節媒体加温タンク56、金型温度調節媒体冷却タンク55からネック部金型20a及び底部金型20cに金型温度調節媒体を導入する管路及び金型温度調節媒体加温タンク56から胴部金型20bに金型温度調節媒体を流すための管路、管路に金型温度調節媒体を流すためのポンプ、バルブ及び温度センサを有する。金型温度調節装置54は金型20に金型温度調節媒体を循環させることで、ネック部金型20a、胴部金型20b及び底部金型20cの温度を管理する。金型温度調節装置54は、金型温度調節媒体を金型20に循環させる循環装置を備える。金型温度調節媒体とは、水または油等の液体である。0℃以下や高温に加熱されることはないため、水が好ましい。
【0040】
金型温度調節装置54により金型温度調節媒体の温度を定められた温度範囲に管理することで、金型20の温度を定められた温度範囲に保持することができる。
【0041】
金型温度調節媒体は、金型温度調節媒体冷却タンク55で冷却される。5℃~20℃の温度範囲が適当である。金型温度調節媒体冷却タンク55内には金型温度調節媒体を冷却するための冷却装置が設けられる。金型温度調節媒体加温タンク56内の金型温度調節媒体は40℃~70℃の温度範囲に保持される。金型温度調節媒体加温タンク56内にはヒータ等の金型温度調節媒体を加温する加温装置及び昇温する金型温度調節媒体を冷却する冷却装置が設けられる。
【0042】
金型温度調節媒体冷却タンク55で冷却される金型温度調節媒体は、
図5に示すように、金型温度調節媒体冷却タンク55から流出し、分岐し、一方は2個のネック部金型20aに流入し、ネック部金型20a内の流路を流れ、ネック部金型20aから流出し、金型温度調節媒体冷却タンク55に戻る。また、分岐したもう一方は底部金型20cに流入し、底部金型20c内の流路を流れ、底部金型20cから流出し、金型温度調節媒体冷却タンク55に戻る。金型温度調節媒体を分岐させずに、金型温度調節媒体冷却タンク55から底部金型20cに流入させ、その後、ネック部金型20aに流入させても構わない。
【0043】
プリフォームの口部1aは加熱装置6において、70℃以上に加熱されない。ネック部金型20aはプリフォーム1のサポートリング1bの下部からボトル2の肩部を成形するための金型である。プリフォーム1のサポートリング1bの下部からボトル2の肩部を成形する部分は、成形された後の面積に対して比較的樹脂量が多く、熱容量が大きく、ボトル2のネック部金型20aが接触する部分の温度は、殺菌剤が吹き付けられるまでの移動において温度低下は少ない。プリフォーム1のサポートリング1bの下部は加熱装置6により90℃~130℃に加熱される。90℃~130℃に加熱されたプリフォーム1のサポートリング1bから成形されたボトル2の肩部は、70℃近傍あるいは70℃を超える場合もあり、ネック部金型20aは冷却される必要がある。したがって、金型温度調節媒体冷却タンク55において金型温度調節媒体は5℃~20℃の温度範囲に保持される。
【0044】
ネック部金型20aに循環される金型温度調節媒体の温度が5℃~20℃に保持されることにより、殺菌剤が吹き付けられる際のボトル2のサポートリング1bの下部から肩部の表面温度は40℃以上となる。金型温度調節媒体冷却タンク55内の金型温度調節媒体の温度が5℃未満では、殺菌剤が吹き付けられる際のボトル2のサポートリング1bの下部から肩部の表面温度は40℃以未満となるおそれがある。また、20℃を超える場合、殺菌剤が吹き付けられる際のボトル2のサポートリング1bの下部から肩部の表面温度が70℃を超えるおそれがある。70℃を超える温度で徐冷されると、成形された形状が変形するおそれがある。
【0045】
プリフォーム1がボトル2に成形されるときにボトル2の底部を形成する部分は、加熱装置6により90℃~130℃に加熱される。ボトル2の底部はプリフォーム1の底部を延伸ロッドにより押し伸ばすことにより形成される。そのため、プリフォーム1の厚さよりも薄くなるが、ボトル2の胴部よりも肉厚であり熱容量が大きく、ブロー成形により急激に冷却されることはない。徐冷されることで、ボトル2を形成する樹脂の結晶化が進行することで底部が脆くなる可能性があるため、ブロー成型時にボトル2の底部を成形する底部金型20cは冷却される。そのため、金型温度調節媒体冷却タンク55において金型温度調節媒体は5℃~20℃に保持される。
【0046】
底部金型20cに循環される金型温度調節媒体の温度が5℃~20℃に保持されることにより、殺菌剤が吹き付けられる際のボトル2の底部の表面温度は40℃以上となる。金型温度調節媒体冷却タンク55内の金型温度調節媒体の温度が5℃未満では、殺菌剤が吹き付けられる際のボトル2の底部の表面温度は40℃以未満となるおそれがある。また、20℃を超える場合、ボトル2の底部の結晶化が生じ、ボトル2の底部が脆くなり、落下衝撃によりボトル2が破損するおそれがある。また、ボトル2の底部が変形するおそれがある。
【0047】
金型温度調節媒体加温タンク56で加温される金型温度調節媒体は、
図5に示すように、胴部金型20bの2個の割型内の上部に流入し、胴部金型20bの下部から流出後、金型温度調節媒体加温タンク56に戻る。無菌充填機において、プリフォーム1をボトル2への成形を開始した直後は、金型温度調節媒体加温タンク56内で金型温度調節媒体は加温させ、40℃~70℃に保持される。しかし、ブロー成形回数が増えるにしたがって、胴部金型20bから流出する金型温度調節媒体の温度は昇温する。90℃~130℃に加熱されたプリフォーム1が高圧エアにより延伸され、70℃以上の温度の延伸された樹脂が胴部金型20bに押し付けられる。その結果、金型温度調節媒体は70℃を超える温度に昇温する傾向となる。そこで、金型温度調節媒体加温タンク56で加温される金型温度調節媒体は40℃~70℃を保持するように冷却される。
【0048】
金型温度調節媒体加温タンク56で加温される金型温度調節媒体の温度が40℃から70℃に保持されることにより、殺菌剤が吹き付けられる際のボトル2の胴部の表面温度は40℃以上となる。金型温度調節媒体加温タンク56内の金型温度調節媒体の温度が40℃未満では、殺菌剤が吹き付けられる際のボトル2の胴部の表面温度は40℃以未満となるおそれがある。また、70℃を超える場合、ボトル2を形成する樹脂のガラス転移点を超えて金型20からボトルが取り出され、取り出された後に徐冷されることでボトル2の胴部が白化するおそれがある。
【0049】
ネック部金型20a及び底部金型20cを流れる金型温度調節媒体は流入口と流出口が略水平であるため、金型温度調節媒体の流入箇所は限定されないが、胴部金型20bには、
図5では上部から金型温度調節媒体を流入させ、下部から流出させているが、金型温度調節媒体を胴部金型20bの下部から流入させ、上部から流出させても構わない。金型20は無菌充填機に複数設けられるが、すべての金型20に金型温度調節媒体を流し、金型20の温度を管理する。通常、無菌充填機には、金型20が4個~36個設けられる。
【0050】
金型温度調節媒体冷却タンク55及び金型温度調節媒体加温タンク56の内部に金型温度調節媒体の温度を測定する金型温度調節媒体温度測定装置としても温度センサが設けられ、温度センサからの温度情報により金型温度調節媒体冷却タンク55及び金型温度調節媒体加温タンク56内の金型温度調節媒体の温度は、金型温度調節媒体の温度を調節することで定められた範囲に保持される。これらとは別個に、金型温度調節装置54には金型温度調節媒体の流路に金型温度調節媒体温度測定装置としての温度センサを設ける。金型温度調節媒体の流路に温度センサを設けることにより、金型20に流入及び流出する金型温度調節媒体の温度を認知する。
【0051】
金型温度調節媒体冷却タンク55から金型温度調節媒体が流出する箇所に温度センサT1を、流入する箇所にT2を設ける。また、金型温度調節媒体加温タンク56から金型温度調節媒体が流出する箇所に温度センサT3を、流入する箇所にT4を設ける。
【0052】
T1及びT2の温度が5℃~20℃の範囲内、若しくはT3及びT4の温度が40℃から70℃の範囲内でない場合、又はいずれも範囲内でない場合、殺菌剤が吹き付けられるボトル2の表面温度が40℃以上でないおそれ、又はボトル2が変形するおそれがあり、ブロー成形されたボトル2はボトル除去装置17により無菌充填機の外部に除去され、ボトル殺菌装置30に搬送されない。測定される金型温度調節媒体の温度が定められた温度範囲にない場合、金型温度調節媒体の金型20への循環を停止しても構わない。
【0053】
金型20の温度を金型20に循環する金型温度調節媒体の温度として、金型20の温度を管理することを述べたが、金型20の表面温度を直接測定し、この温度を金型温度としても構わない。
図6は金型20の表面温度を非接触温度計により測定する金型表面温度測定装置57を示す。金型表面温度測定装置57は、ブロー成形されたボトル2が取り出された直後に開いた金型20の表面温度を測定する。開いた金型20の上方から金型表面温度測定装置57を金型20の内部に挿入して、金型20の表面温度を測定する。
【0054】
ネック部金型20a及び底部金型20cの表面温度は、5℃~20℃の温度範囲に保持されることが好ましい。ネック部金型20a又は底部金型20cの表面温度が5℃未満の場合、金型温度調節媒体冷却タンク55において金型温度調節媒体の温度を昇温して、ネック部金型20a及び底部金型20cの表面温度を5℃以上とする。また、ネック部金型20a及び底部金型20cの表面温度20℃を超える場合、金型温度調節媒体冷却タンク55において金型温度調節媒体を冷却して、ネック部金型20a及び底部金型20cの表面温度を20℃以下とする。
【0055】
胴部金型20bの表面温度は、40℃~70℃の温度範囲に保持されることが好ましい。胴部金型20bの表面温度が40℃未満の場合、金型温度調節媒体加温タンク56において金型温度調節媒体の温度を昇温して、胴部金型20bの表面温度を40℃以上とする。また、胴部金型20bの表面温度が70℃を超える場合、金型温度調節媒体加温タンク56において金型温度調節媒体を冷却して、胴部金型20bの表面温度を70℃以下とする。
【0056】
金型表面温度測定装置57は底部金型20cの表面温度を測定するセンサ、及び上下に移動しながら割型である2個のネック部金型20a及び胴部金型20bの表面温度測定するセンサ2個を合わせ、少なくとも3個のセンサを有する。ネック部金型20a及び胴部金型20bを個別に測定する場合は5個のセンサを有する。
【0057】
温度センサは金型20から放出される赤外線により温度測定を行うが、これに限られるものではない。金型20のように鏡面の金属表面の温度測定は、放射率が低いため困難であったが、最近測定可能なセンサが開発されている。
【0058】
センサの先端は金型20の表面の測定面に対して、垂直に向き合うと精度よく温度を測定することが出来る。センサの先端から延びる直線が、測定面に対して垂直から好ましくは30度以下、最大でも60度以下にすると良い。それ以上になると、金型20の表面温度を測定する測定面積が広がり、正確な温度を測定することが困難である。
【0059】
底部金型20cの表面温度測定については、金型表面温度測定装置57の先端に設けるセンサにより直接測定することができる。ネック部金型20a及び胴部金型20bの表面温度を測定する場合、測定面にセンサ先端が正対していないが、センサ先端に測定面から発する赤外線を90度の角度変換するミラーを取り付けることで金型表面温度測定装置57の側面となるネック部金型20a及び胴部金型20bの表面温度を測定することができる。例えばセンサの径が15mmφとすると、2個を同時に金型表面温度測定装置57に内封すると30mm程度の幅となり、開いた金型20の内部に挿入することができる。底部金型20cとネック部金型20a及び胴部金型20bを測定するセンサは金型表面温度測定装置57に内封する位置が相違するため、金型表面温度測定装置57の太さは30mmを超えて太くする必要はない。
【0060】
図6に示すように、金型20の内部に金型表面温度測定装置57挿入後、にセンサが少なくとも3個内封された金型表面温度測定装置57を降下させながらネック部金型20a、胴部金型20b及び底部金型20cの表面温度を測定する。また、温度センサを5個内封した金型表面温度測定装置57を金型20の内部に挿入し、同時に5箇所の金型20の表面温度を測定しても構わない。金型表面温度測定装置57はすべての金型に設けなくても構わない。
【0061】
金型表面温度測定装置57は金型20の上方から金型20の内部に挿入するのではなく、開いた金型20の側面から挿入して金型20の表面温度を測定しても構わない。
【0062】
金型20の表面温度は、金型表面温度測定装置57を金型20の内部に挿入して測定するのではなく、ブロー成形後に金型20が開き、ボトル2が取り出された後、
図7に示すように金型表面温度測定装置57aにより金型20の外部から金型20の表面温度を測定しても構わない。
図7に示すように、金型表面温度測定装置57aを少なくとも2個設け、胴部金型20bの表面温度を測定する。
図7は丸形のボトル2を成形する金型としているが、角形又は多角型でも構わない。
【0063】
図8に示すように、底部金型20cの表面温度についても、底部金型20cの表面から垂直に直進する赤外線を受光する金型表面温度測定装置57aを金型20の上部に設けることにより、金型表面温度測定装置57を金型20の内部に挿入することなく測定することができる。
【0064】
金型表面温度測定装置57又は金型表面温度測定装置57aによる金型20の測定温度がすべて40℃以上でなければならない。ネック部金型20a、胴部金型20b及び底部金型20cの5個の金型のすべての温度が40℃以上でない場合、殺菌剤が吹き付けられるボトル2の表面温度が40℃以上でないおそれがあり、このときブロー成形されたボトル2はボトル除去装置17により無菌充填機の外部に除去され、ボトル殺菌装置30に搬送されない。すべての温度が定められた温度である40℃以上の場合、ボトル2はボトル殺菌装置30に搬送される。
【0065】
検査ホイール23に受け渡されたボトル2は、ボトル検査装置24により外観検査される。成形されたボトル2は、検査ホイール23の周辺に備えられたボトル検査装置24により、ボトル胴部、サポートリング1b、ボトル2の口部1aの天面、ボトル2の底部等が検査され、異常と判断された場合は、ボトル除去装置17により、無菌充填機の外部に除去される。
【0066】
ボトル胴部、サポートリング1b、ボトル2の口部1a、ボトル2の天面、ボトル2の底部はカメラにより撮像され、各箇所の状態が検査される。撮像された画像は画像処理装置により処理され、傷、異物、変形、変色等の異常の存否について判断される。許容範囲を超えるボトル2は異常と判断される。
【0067】
ボトル検査装置24による検査により異常と判断されなかったボトル2は、ボトル殺菌装置30で発生する殺菌剤がブロー成形装置16に流入しないように、ブロー成形装置16とボトル殺菌装置30の間に設けられた雰囲気遮断チャンバー27内のホイール25、26を経て、ボトル殺菌装置30に搬送される。
【0068】
ホイール25にはボトル除去装置17が設けられ、ネック部金型20a、胴部金型20b及び底部金型20cのいずれかが定められた温度範囲外で成形されたボトル2を除去する。すなわち、ネック部金型20a、胴部金型20b及び底部金型20cに流入及び流出する金型温度調節媒体の温度のいずれかが定められた温度範囲外である場合、成形されたボトル2はボトル除去装置17により無菌充填機外に除去される。また、ネック部金型20a、胴部金型20b及び底部金型20cの測定される表面温度が、定められた温度範囲外である場合、成形されたボトル2は除去される。さらに、検査装置により異常と判断されたボトル2も除去される。
【0069】
ボトル殺菌装置30に搬送されたボトル2は、ホイール28において殺菌される。殺菌はボトル2に殺菌剤を接触させること、すなわち殺菌剤をボトル2に吹き付けることにより行う。ボトル2を殺菌するためのボトル2への殺菌剤の吹き付け工程を
図3(E-1)に示す。ボトル2に殺菌剤を吹き付けるため、殺菌剤吹き付けノズル31が設けられる。殺菌剤吹き付けノズル31は、その先端のノズル孔が直下を走行するボトル2の口部1aの開口に正対し得るように固定される。また、必要に応じて殺菌剤吹き付けノズル31の下方にボトル2の走行路に沿って、
図3(E-1)に示すように殺菌剤吹き付けトンネル32が設けられる。殺菌剤吹き付けノズル31は一本であっても複数本であっても構わない。ボトル2に吹き付けられた殺菌剤がボトル2の内部に流入し、ボトル2の内面を殺菌する。このとき、ボトル2が殺菌剤吹き付けトンネル32内を走行することで、殺菌剤が、ボトル2の外面にも流れて、ボトル2の外面が殺菌される。
【0070】
殺菌剤が殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物である場合、
図3(E-1)
に示すように、ボトル2は正立状態で構わない。しかし、吹き付ける殺菌剤が液体の場合は、ボトル2の内面全域が殺菌剤により接触されるように、倒立したボトル2のサポートリング1bをグリッパ22により把持し、上向きのノズルにより口部1aからボトル2の内面に殺菌剤を吹き付ける。また、ボトル2の外面には、その全域が殺菌剤により接触されるように、下向きのノズルにより殺菌剤をボトル2の外面に吹き付ける。上向きのノズルはボトル2の口部1aに対向させて設けても、ボトル2の搬送速度に追従するノズルを設け、ボトル2の内部に挿入させても構わない。また、下向きのノズルは複数本としても構わない。
【0071】
また、
図3(E-2)に示すように、殺菌剤吹き付けノズル31をボトル2の搬送に追従させ、殺菌剤吹き付けノズル31をボトル2の内部に挿入して、殺菌剤のボトル2の内面に直接吹き付けても構わない。ボトル2から溢れた出た殺菌剤は、殺菌剤吹き付けノズル31を囲繞して設けた案内部材31aに衝突し、ボトル2の外面に流れボトル2の外面に接触する。案内部材31aにはノズル31と同軸のフランジ部とフランジ部から外周に突出する環状壁部が設けられている。
【0072】
殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物は、
図4に示す殺菌剤ガス生成器58によりガス化される殺菌剤又はガス化された殺菌剤が凝結したミスト又はこれらの混合物である。殺菌剤ガス生成器58は、殺菌剤を滴状にして供給する二流体スプレーノズルである殺菌剤供給部59と、この殺菌剤供給部59から供給された殺菌剤を分解温度以下に加熱して気化させる気化部60とを備える。殺菌剤供給部59は、殺菌剤供給路59a及び圧縮空気供給路59bからそれぞれ殺菌剤と圧縮空気を導入して殺菌剤を気化部60内に噴霧するようになっている。気化部60は、内外壁間にヒータ60aを挟み込んだパイプであり、このパイプ内に吹き込まれた殺菌剤を加熱し気化させる。気化した殺菌剤のガスは殺菌剤ガス吹き付けノズル31から気化部60外に噴出する。ヒータ60aに換えて誘導加熱により気化部60を加熱しても構わない。
【0073】
殺菌剤供給部59の運転条件としては、例えば圧縮空気の圧力は0.05MPa~0.6MPaの範囲で調整される。また、殺菌剤は重力落下であっても圧力を加えられても構わないし、供給量は自由に設定することができ、例えば殺菌剤は殺菌剤供給路59aに、1g/min.~100g/min.の範囲で供給される。また、気化部60の内表面は140℃から450℃に加熱されることで噴霧された殺菌剤が気化する。
【0074】
殺菌剤のガスは、
図3(E-1)及び(E-2)に示すように殺菌剤吹き付けノズル31からボトル2に吹き付けられる。殺菌剤のガス若しくはミスト又はこれらの混合物の吹き付け量は任意であるが、吹き付け量は、殺菌剤ガス生成器58に供給される殺菌剤の量と吹き付け時間により決まる。殺菌剤ガス生成器58は複数備えても構わない。吹き付け量はボトル2の大きさによっても変動する。
【0075】
殺菌剤をガス若しくはミスト又はこれらの混合物としてボトル2に吹き付ける場合、少なくとも過酸化水素を含有することが好ましい。その含有量は0.5質量%~65質量%の範囲が適当である。0.5質量%未満では殺菌力が不足する場合があり、65質量%を超えると安全上、扱いが困難となる。また、さらに好適なのは0.5質量%~40質量%であり、40質量%以下では扱いがより容易であり、低濃度となるために殺菌後のボトル2への殺菌剤の残留量を低減できる。
【0076】
殺菌剤を過酸化水素水とした場合、過酸化水素水のガスの吹き付け量は以下の通りとなる。殺菌剤吹き付けノズル31からボトル2の内面に吹き付けられる過酸化水素水のガスにより、ボトル2の内面に付着する過酸化水素の量は、過酸化水素を35質量%含む過酸化水素水の量として、30μL/ボトル~150μL/ボトルが好ましく、より好ましくは50μL/ボトル~100μL/ボトルである。また、ボトル2に吹き付けられる過酸化水素水のガスの過酸化水素濃度は、2mg/L~20mg/Lが好ましく、より好ましくは5mg/L~10mg/Lである。
【0077】
液体の殺菌剤をボトル2に吹き付ける場合、殺菌剤は過酢酸を含むことが好ましい。さらに液体の殺菌剤は過酢酸、過酸化水素、酢酸及び水からなる平衡過酸化物組成物が好ましい。過酢酸の濃度は500mg/L~4000mg/Lが好ましい。500mg/L未満では殺菌力が不十分であり、4,000mg/Lを超えると過酢酸の濃度が高いために、無菌充填機で使用するパッキン等の部材を劣化させる可能性がある。
【0078】
液体の殺菌剤は50℃~80℃、好ましくは60℃~70℃に加温される。加温されると殺菌剤の殺菌効果が向上する。殺菌剤吹き付けノズル311本当たりの流量は、1L/min.~15L/min.、好ましく3L/min.~10L/min.が適当である。また、吹き付け時間は0.2秒~5秒が適当である。ボトル2への液体の殺菌剤の吹き付け量は殺菌剤吹き付けノズル31への流量と吹き付け時間によって決定されるが、ボトル2の表面積に対して、0.05ml/cm2~20ml/cm2であることが好ましい。0.05ml/cm2未満では殺菌が不十分となり、20ml/cm2を超えると過大であり、エネルギー及び殺菌剤の浪費となる。
【0079】
また、殺菌剤は水を含んでなるが、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトンなどのケトン類、グリコールエーテル類等の1種又は2種以上を含んでも構わない。
【0080】
さらに、殺菌剤は有機酸、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素化合物、オゾン等の殺菌効果を有する化合物、陽イオン界面活性剤、非イオン系界面活性剤、リン酸化合物等の添加剤を含んでも構わない。
【0081】
ボトル殺菌装置30で殺菌されたボトル2は
図1に示すように、ホイール29を経て、エアリンス装置34に搬送される。ボトル2は、
図1に示すエアリンスホイール35において、
図3(F-1)に示すようにエアリンスノズル38により正立状態のボトル2に無菌エアが吹き付けられる。無菌エアは常温でも構わないが、加熱されることが好ましい。無菌エアは、ボトル2の内部に残存する殺菌剤を排出し、残存する殺菌剤を分解してさらに殺菌効果を高め、ボトル2の内部に異物が存在する場合は排除する効果もある。また、
図3(F-2)に示すようにボトル2を倒立状態にして無菌エアをボトル2内に吹き付けても構わない。この場合、異物の排除には正立状態よりも効果的である。さらに、図(E-2)の殺菌剤吹き付けノズル31と同様に、エアリンスノズル38を囲繞して案内部材を設けることで、ボトル2の内部に導入され、口部1aから溢れ出る無菌エアが案内部材に衝突し、口部1aの外周部もリンスすることとなり、口部1aの外周部の温度が上昇し、口部1aの外周部の殺菌効果が高まる。
【0082】
エアリンスノズル38は上下動可能として、無菌エアをボトル2内に吹き込んでも構わない。また、無菌エアではなく、無菌水をボトル2の内部に導入して、ボトル2の内部をリンスしても構わない。さらに無菌エアと無菌水を併用してボトル2をリンスしても構わない。
【0083】
殺菌剤を接触させたボトル2は、付着した殺菌剤を除去するために無菌水によりリンスされる。無菌水は水を121℃以上で4分以上加熱することや除菌フィルタを通すことによって製造される。無菌水によるボトル2のリンスは、殺菌剤の吹き付けと同様の工程及び装置により行われる。ボトル2の内面全域が無菌水によりリンスされるように、倒立したボトル2のサポートリング1bをグリッパ5により把持し、上向きのノズルにより口部1aからボトル2の内面に無菌水を吹き付ける。また、ボトル2の外面には、その全域が無菌水によりリンスされるように、下向きのノズルにより無菌水をボトル2の外面に吹き付ける。上向きのノズルはボトル2の口部1aに対向させて設けても、ボトル2の搬送速度に追従するノズルを設け、ボトル2の内部に挿入させても構わない。また、下向きのノズルは複数本としても構わない。
【0084】
無菌水は10℃~80℃、好ましくは30℃~70℃に調温される。無菌水を吹き付けるノズルの1本当たりの流量は、1L/min.~15L/min.、好ましく3L/min.~10L/min.が適当である。また、吹き付け時間は0.1秒~15秒が適当である。ボトル2への無菌水の吹き付け量は、ノズルの流量と吹き付け時間によって決定されるが、ボトル2の表面積に対して、0.05ml/cm2~20ml/cm2であることが好ましい。0.05ml/cm2未満ではリンスが不十分となり、20ml/cm2を超えると過大であり、エネルギーの浪費となる。
【0085】
エアリンス装置34でエアリンスされたボトル2は
図1に示すように、ホイール37を経て、充填装置39に搬送される。充填装置39では、
図1に示す充填ホイール40にて、
図3(G)に示す充填工程のように、充填ノズル42によりボトル2に内容物が充填される。内容物はあらかじめ殺菌されており、ボトル2と同期的に走行する充填ノズル42により、ボトル2内に一定量の飲料等の内容物が充填される。
【0086】
内容物が充填されたボトル2は、
図1に示すホイール43を経て密封装置44に搬送される。密封装置44に設けられた密封ホイール45では、
図3(H)に示す密封工程ように、蓋材殺菌装置52により殺菌された密封部材である蓋材3が、殺菌蓋材搬送路51により蓋材供給ホイール53a及び蓋材受け取りホイール53bを経て、密封ホイール45に供給され、図示しないキャッパーにより、ボトル2の口部1aに巻き締められ、ボトル2は密封される。
【0087】
密封されたボトル2は、密封ホイール45のグリッパ22から排出装置47の排出ホイール48のグリッパ22に受け渡される。排出ホイール48に受け渡されたボトル2は排出コンベア50に載置される。排出コンベア50に載置されたボトル2は無菌充填機の外部に排出される。
【0088】
殺菌部チャンバー33、エアリンス部チャンバー36、充填部チャンバー41、密封部チャンバー46、排出部チャンバー49内は無菌充填機の稼働前に殺菌される。
【0089】
殺菌が必要な各チャンバー内の全域に殺菌剤が付着するように各チャンバー内に殺菌剤が吹き付けられる。吹き付けられた殺菌剤により、各チャンバー内が殺菌される。殺菌剤はボトル2を殺菌するために使用される殺菌剤と同様のものが使用でき、過酢酸や過酸化水素を含む殺菌剤を使用することが好ましい。殺菌剤の吹き付けは、異なる殺菌剤を複数回吹き付けても構わない。
【0090】
本発明は以上説明したように構成されるが、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨内において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0091】
1…プリフォーム
2…ボトル
6…加熱装置
16…ブロー成形装置
17…ボトル除去装置
20…金型
20a…ネック部金型
20b…胴部金型
20c…底部金型
30…ボトル殺菌装置
39…充填装置
44…密封装置
49…排出部チャンバー
54…金型温度調節装置
55…金型温度調節媒体冷却タンク
56…金型温度調節媒体加温タンク
57…金型表面温度測定装置