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特許7567910インクジェットヘッド、インクジェット画像形成装置及びインクジェットヘッドの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】インクジェットヘッド、インクジェット画像形成装置及びインクジェットヘッドの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
B41J2/14 601
B41J2/14 603
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022530002
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2020023310
(87)【国際公開番号】W WO2021250906
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 聡一
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-188614(JP,A)
【文献】特開2004-106217(JP,A)
【文献】特開2003-118123(JP,A)
【文献】特開平10-138471(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104442011(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出可能なノズルを有する第1室と、
前記第1室内の前記インクに第1圧力を印加して、前記ノズルから前記インクを吐出させる第1圧力印加部と、
前記インクに第2圧力を印加する第2圧力印加部と、
前記第1圧力の印加態様に応じて前記インクに発生する残響波を予測し、予測された前記残響波を打ち消す印加態様となる前記第2圧力を決定し、前記第1圧力と同時に前記第2圧力を前記インクに印加するよう、前記第1及び第2圧力印加部を制御する制御部と、
を備えるインクジェットヘッド。
【請求項2】
インクを吐出可能なノズルを有する第1室と、
前記第1室内の前記インクに第1圧力を印加して、前記ノズルから前記インクを吐出させる第1圧力印加部と、
前記第1室と連通する第2室
記第2室内の前記インクに第2圧力を印加する第2圧力印加部と
前記第1圧力の印加態様に応じて前記インクに発生する残響波を打ち消す印加態様となる前記第2圧力を決定し、前記第1圧力と同時に前記第2圧力を前記インクに印加するよう、前記第1及び第2圧力印加部を制御する制御部と、
を備え、
前記第2圧力印加部は、前記第2室の前記インクの流れ方向における複数の領域において、個別に、前記第2圧力を印加する、
ンクジェットヘッド。
【請求項3】
インクを吐出可能なノズルを有する第1室と、
前記第1室内の前記インクに第1圧力を印加して、前記ノズルから前記インクを吐出させる第1圧力印加部と、
前記第1室と連通する第2室と、
前記第2室内の前記インクに第2圧力を印加する第2圧力印加部と、
前記第1圧力の印加態様に応じて前記インクに発生する残響波を打ち消す印加態様となる前記第2圧力を決定し、前記第1圧力と同時に前記第2圧力を前記インクに印加するよう、前記第1及び第2圧力印加部を制御する制御部と、
を備え、
前記第2室内の前記インクに背圧を付与する背圧室を更に備え、
前記制御部は、前記第1室の前記ノズルから前記インクを吐出させることにより発生する前記背圧の変動を打ち消す印加態様となる第3圧力を決定し、前記第1圧力と同時に前記第3圧力を前記インクに印加するよう、前記第1及び第2圧力印加部を制御する、
インクジェットヘッド。
【請求項4】
前記第1室と連通する第2室を備え、
前記第2圧力印加部は、前記第2室の前記インクの流れ方向における複数の領域において、個別に、前記第2圧力を印加する、
請求項1又は3に記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
複数組の前記第1室及び前記第1圧力印加部と、
複数の前記第1室と連通する第2室と、
を備え、
前記第2圧力印加部は、少なくとも1つの前記第1室の前記ノズルから前記インクを吐出させるときに、前記インクを吐出させない前記第1室の前記第1圧力印加部である、
請求項1又は3に記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
前記第1室と連通する第2室を備え、
前記第2室内の前記インクに背圧を付与する背圧室を備え、
前記制御部は、前記第1室の前記ノズルから前記インクを吐出させることにより発生する前記背圧の変動を打ち消す印加態様となる第3圧力を決定し、前記第1圧力と同時に前記第3圧力を前記インクに印加するよう、前記第1及び第2圧力印加部を制御する、
請求項1又は2に記載のインクジェットヘッド。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1室の前記ノズルから前記インクを吐出させる場合において、前記第1圧力に重畳させることにより、前記第1圧力に重畳させない場合より前記インクの吐出量が多くなる印加態様となる第4圧力を決定し、前記第1圧力と同時に前記第4圧力を前記インクに印加するよう、前記第1及び第2圧力印加部を制御する、
請求項1からのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項8】
前記第2圧力印加部は、電圧が印加されることにより駆動する圧電素子である、
請求項1からのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項9】
前記インクは、水系インクジェットインクである、
請求項1からのいずれか一項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項10】
請求項1からのいずれか一項に記載のインクジェットヘッドを備えるインクジェット画像形成装置。
【請求項11】
第1圧力印加部から第1室内のインクに第1圧力を印加して、前記第1室のノズルから前記インクを吐出させるとき、前記第1圧力の印加態様に応じて前記インクに発生する残響波を予測し、予測された前記残響波を打ち消す印加態様となる第2圧力を決定し、前記第1圧力と同時に第2圧力印加部から前記第2圧力を前記インクに印加する、
インクジェットヘッドの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッド、インクジェット画像形成装置及びインクジェットヘッドの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット装置画像形成において、そのインクジェットヘッドは、インクを貯留する圧力室やインクを吐出するノズルなどを有している。インクジェットヘッドからインクを吐出する際には、圧力室内のインクに吐出圧力を印加して、ノズルからインクを吐出させている。
【0003】
特許文献1には、圧力室内のインクの圧力の制御精度や応答性を向上させるため、インクジェットヘッドの供給口側又は排出口側に、液体室と気体室が可撓膜で仕切られた圧力調整部を備えたインクジェット画像形成装置が示されている。特許文献1では、インクの吐出量を予測し、吐出量に応じて、可撓膜の弾性率を制御して、液体室の圧力(背圧)を制御するようにしている。このように、吐出量に応じて、可撓膜の弾性率を制御し、液体室の背圧を制御することで、インク吐出により生じた圧力室内のインクの圧力変動を吸収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-241426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェットヘッドの圧力室内のインクには、インクをノズルから吐出するための吐出圧力が印加される。その際、印加した吐出圧力に伴って発生する残響波やその伝播波が圧力室内のインクの圧力を変動させるため、圧力変動後のインク吐出に悪い影響を与えることがある。特に、インク吐出の間隔が短い高速駆動の場合には、インク吐出に対する残響波や伝播波の影響が避けられないため、インク吐出の高速駆動に限界があった。
【0006】
特許文献1に記載された技術は、インク吐出による圧力室内の圧力の変動を可撓膜で吸収するようにしている。つまり、圧力変動が生じると、生じた圧力変動を可撓膜で受動的に吸収するようにしている。そのため、印加した吐出圧力に伴って発生する残響波やその伝播波に対しては、応答遅れなどにより、圧力変動を適切に吸収できないことがある。特に、インク吐出の間隔が短い高速駆動の場合には、圧力変動に可撓膜が追従できなくなるため、圧力変動を吸収することは難しい。
【0007】
本発明の目的は、インク吐出の間隔が短い場合でも、圧力室内のインクの圧力変動を抑制することができるインクジェットヘッド、インクジェット画像形成装置及びインクジェットヘッドの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るインクジェットヘッドは、
インクを吐出可能なノズルを有する第1室と、
前記第1室内の前記インクに第1圧力を印加して、前記ノズルから前記インクを吐出させる第1圧力印加部と、
前記インクに第2圧力を印加する第2圧力印加部と、
前記第1圧力の印加態様に応じて前記インクに発生する残響波を予測し、予測された前記残響波を打ち消す印加態様となる前記第2圧力を決定し、前記第1圧力と同時に前記第2圧力を前記インクに印加するよう、前記第1及び第2圧力印加部を制御する制御部と、
を備える。
また、本発明に係るインクジェットヘッドは、
インクを吐出可能なノズルを有する第1室と、
前記第1室内の前記インクに第1圧力を印加して、前記ノズルから前記インクを吐出させる第1圧力印加部と、
前記第1室と連通する第2室と、
前記第2室内の前記インクに第2圧力を印加する前記第2圧力印加部と、
前記第1圧力の印加態様に応じて前記インクに発生する残響波を打ち消す印加態様となる前記第2圧力を決定し、前記第1圧力と同時に前記第2圧力を前記インクに印加するよう、前記第1及び第2圧力印加部を制御する制御部と、
を備え、
前記第2圧力印加部は、前記第2室の前記インクの流れ方向における複数の領域において、個別に、前記第2圧力を印加する。
また、本発明に係るインクジェットヘッドは、
インクを吐出可能なノズルを有する第1室と、
前記第1室内の前記インクに第1圧力を印加して、前記ノズルから前記インクを吐出させる第1圧力印加部と、
前記第1室と連通する第2室と、
前記第2室内の前記インクに第2圧力を印加する第2圧力印加部と、
前記第1圧力の印加態様に応じて前記インクに発生する残響波を打ち消す印加態様となる前記第2圧力を決定し、前記第1圧力と同時に前記第2圧力を前記インクに印加するよう、前記第1及び第2圧力印加部を制御する制御部と、
を備え、
前記第2室内の前記インクに背圧を付与する背圧室を更に備え、
前記制御部は、前記第1室の前記ノズルから前記インクを吐出させることにより発生する前記背圧の変動を打ち消す印加態様となる第3圧力を決定し、前記第1圧力と同時に前記第3圧力を前記インクに印加するよう、前記第1及び第2圧力印加部を制御する。
【0009】
本発明に係るインクジェット画像形成装置は、
上記のインクジェットヘッドを備える。
【0010】
本発明に係るインクジェットヘッドの制御方法は、
第1圧力印加部から第1室内のインクに第1圧力を印加して、前記第1室のノズルから前記インクを吐出させるとき、前記第1圧力の印加態様に応じて前記インクに発生する残響波を予測し、予測された前記残響波を打ち消す印加態様となる第2圧力を決定し、前記第1圧力と同時に第2圧力印加部から前記第2圧力を前記インクに印加する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、インク吐出の間隔が短い場合でも、圧力室内のインクの圧力変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係るインクジェット画像形成装置を概略的に示す図である。
図2図1に示したインクジェット画像形成装置の制御系の主要部を示すブロック図である。
図3図1に示したインクジェット画像形成装置に搭載するヘッドユニットを概略的に示す図である。
図4A図3に示したヘッドユニットのインクジェットヘッドを示す斜視図である。
図4B図4Aに示したインクジェットヘッドの先端部分を示す斜視図である。
図5】インクジェットヘッドの先端部分の断面図である。
図6図1に示したインクジェット画像形成装置において実施するインクジェットヘッドの制御方法を説明するフローチャートである。
図7】インクジェットヘッドを高速駆動した場合において発生する残響波とそのキャンセル波を示す図である。
図8】インクジェットヘッドを低速駆動した場合において発生する残響波とそのキャンセル波を示す図である。
図9】従来のインクジェット画像形成装置において、インクジェットヘッドの駆動周波数を変更したときの圧力室内の圧力波の速度変動を示すグラフである。
図10図1に示したインクジェット画像形成装置において、インクジェットヘッドの駆動周波数を変更したときの圧力室内の圧力波の速度変動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係るインクジェットヘッド、インクジェット画像形成装置及びインクジェットヘッドの制御方法を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
[インクジェット画像形成装置]
図1は、インクジェット画像形成装置1の概略構成を示す図である。インクジェット画像形成装置1は、給紙部10、画像形成部20、排紙部30、制御部100(図2を参照)などを備える。
【0015】
インクジェット画像形成装置1は、制御部100による制御下で、給紙部10に格納された記録媒体Pを画像形成部20に搬送し、画像形成部20で記録媒体Pに画像を形成し、画像が形成された記録媒体Pを排紙部30に搬送する。記録媒体Pとしては、普通紙や塗工紙といった紙のほか、布帛又はシート状の樹脂など、表面に着弾したインクを定着させることが可能な種々の媒体を用いることができる。
【0016】
給紙部10は、記録媒体Pを格納する給紙トレイ11と、給紙トレイ11から画像形成部20に記録媒体Pを搬送して供給する媒体供給部12とを有する。媒体供給部12は、内側が2本のローラーにより支持された輪状のベルトを備え、このベルト上に記録媒体Pを載置した状態でローラーを回転させることで記録媒体Pを給紙トレイ11から画像形成部20へ搬送する。
【0017】
画像形成部20は、搬送部21、受け渡し部22、加熱部23、定着部24、デリバリー部25、ヘッドユニット50などを有する。
【0018】
搬送部21は、円筒状の搬送ドラム211の搬送面212(載置面)の上に載置された記録媒体Pを保持し、搬送ドラム211がその回転軸(円筒軸)を中心に矢印方向に回転して周回移動することで当該搬送ドラム211上の記録媒体Pを搬送する搬送動作を行う。
【0019】
受け渡し部22は、給紙部10の媒体供給部12により搬送された記録媒体Pを搬送部21に引き渡す。受け渡し部22は、給紙部10の媒体供給部12と搬送部21との間の位置に設けられ、媒体供給部12から搬送された記録媒体Pの一端をスイングアーム部221で保持して取り上げ、受け渡しドラム222を介して搬送部21に引き渡す。
【0020】
加熱部23は、受け渡しドラム222の配置位置とヘッドユニット50の配置位置との間に設けられ、搬送部21により搬送される記録媒体Pが所定の温度範囲内の温度となるように当該記録媒体Pを加熱する。加熱部23は、例えば、赤外線ヒーターなどを有し、制御部100から供給される制御信号に基づいて赤外線ヒーターに通電して当該赤外線ヒーターを発熱させる。
【0021】
ヘッドユニット50は、記録媒体Pが保持された搬送ドラム211の回転に応じた適切なタイミングで、搬送ドラム211の搬送面212に対向するインク吐出面に設けられたノズルからインクを吐出させて、記録媒体Pに画像を形成する。ヘッドユニット50は、インク吐出面と搬送面212とが所定の距離だけ離隔されるように配置される。ここでは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクにそれぞれ対応する4つのヘッドユニット50が記録媒体Pの搬送方向上流側からY,M,C,Kの色の順に所定の間隔で並ぶように配列されている。ヘッドユニット50の構成については、図3図5を参照して、後述する。
【0022】
定着部24は、搬送部21の幅(搬送ドラム211の回転軸方向の幅)に亘って配置された発光部を有し、搬送部21に載置された記録媒体Pに対して当該発光部から紫外線などのエネルギー線を照射して記録媒体P上に吐出されたインクを硬化させて定着させる。定着部24の発光部は、搬送方向についてヘッドユニット50の配置位置からデリバリー部25の受け渡しドラム251の配置位置までの間において搬送面212と対向して配置される。
【0023】
デリバリー部25は、内側が2本のローラーにより支持された輪状のベルトを有するベルトループ252と、記録媒体Pを搬送部21からベルトループ252に受け渡す円筒状の受け渡しドラム251とを有する。デリバリー部25は、受け渡しドラム251により搬送部21からベルトループ252上に受け渡された記録媒体Pをベルトループ252により搬送して排紙部30に送出する。
【0024】
排紙部30は、デリバリー部25により画像形成部20から送り出された記録媒体Pが載置される板状の排紙トレイ31を有する。
【0025】
図2は、インクジェット画像形成装置1の制御系の主要部を示すブロック図である。インクジェット画像形成装置1は、制御系の主要部として、加熱部23、定着部24、ヘッドユニット50、制御部100、搬送駆動部111、入出力インターフェース112などを備える。
【0026】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、RAM(Random Access Memory)102、ROM(Read Only Memory)103、記憶部104などを有する。
【0027】
CPU101は、ROM103に記憶された各種制御用のプログラムや設定データを読み出してRAM102に記憶させ、当該プログラムを実行して各種の演算処理を行う。また、CPU101は、インクジェット画像形成装置1の全体動作を統括制御する。
【0028】
RAM102は、CPU101に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。なお、RAM102は、不揮発性メモリーを含んでいてもよい。
【0029】
ROM103は、CPU101により実行される各種制御用のプログラムや設定データなどを格納する。なお、ROM103に代えて、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリーなどの書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられてもよい。
【0030】
記憶部104には、入出力インターフェース112を介して外部装置2から入力されたプリントジョブ(画像記録命令)及び当該プリントジョブに係る画像データが記憶される。記憶部104としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)が用いられ、また、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などが併用されてもよい。
【0031】
搬送駆動部111は、制御部100から供給される制御信号に基づいて、搬送ドラム211の搬送ドラムモーターに駆動信号を供給する。これにより、搬送駆動部111は、搬送ドラム211を所定の速度及びタイミングで回転させる。また、搬送駆動部111は、制御部100から供給される制御信号に基づいて、媒体供給部12、受け渡し部22及びデリバリー部25を動作させるためのモーターに駆動信号を供給する。これにより、搬送駆動部111は、記録媒体Pの搬送ドラム211への供給及び搬送ドラム211からの排出を行わせる。
【0032】
入出力インターフェース112は、外部装置2と制御部100との間のデータの送受信を媒介する。入出力インターフェース112は、例えば、各種シリアルインターフェース、各種パラレルインターフェースのいずれか、又は、これらの組み合わせで構成される。
【0033】
外部装置2は、例えば、パーソナルコンピューターであり、入出力インターフェース112を介して、画像記録命令(プリントジョブ)及び画像データなどを制御部100に供給する。
【0034】
加熱部23は、上述したように、赤外線ヒーターなどを有する。加熱部23は、制御部100から供給される制御信号に基づいて、赤外線ヒーターに通電し、発熱させ、記録媒体Pを加熱する。
【0035】
定着部24は、上述したように、発光部を有する。定着部24は、制御部100から供給される制御信号に基づいて、発光部を発光させ、記録媒体Pに紫外線などのエネルギー線を照射することにより、記録媒体P上に吐出されたインクを硬化させて定着させる。
【0036】
ヘッドユニット50は、ヘッド駆動部51、インクジェットヘッド90などを有する。ヘッド駆動部51は、制御部100の制御に基づいて、インクジェットヘッド90に対して、適切なタイミングで画像データに応じた駆動信号を供給することにより、インクジェットヘッド90のノズルから画像データの画素値に応じた量のインクを吐出させる。
【0037】
[ヘッドユニット]
図3は、インクジェット画像形成装置1が搭載するヘッドユニット50を概略的に示す図である。図3では、1色のインクに対するヘッドユニット50と共に、対応するメインタンク40を図示している。メインタンク40及びヘッドユニット50については、他の色に対しても同じ構成である。
【0038】
メインタンク40は、印刷に用いるインク(流体)を貯蔵している。メインタンク40に貯蔵されたインクは、供給ポンプ41を用いて、サブタンクモジュール60へ供給される。
【0039】
ヘッドユニット50は、サブタンクモジュール60、脱気モジュール70、濾過モジュール80、インクジェットヘッド90などを備える。サブタンクモジュール60の一方の端部に、脱気モジュール70と濾過モジュール80からなる脱気濾過ユニットが配置されており、濾過モジュール80はサブタンクモジュール60と脱気モジュール70との間に配置されている。
【0040】
サブタンクモジュール60は、第1サブタンク61、送液ポンプ62、第2サブタンク63(背圧室)、背圧ポンプ64、液面センサー65、圧力センサー66などを備える。供給ポンプ41を用いて、メインタンク40から供給されたインクは、第1サブタンク61に貯蔵される。この第1サブタンク61には、後述するように、インクジェットヘッド90から戻されたインクも貯蔵される。
【0041】
第1サブタンク61に貯蔵されたインクは、送液ポンプ62を用いて吸引することで、脱気モジュール70、濾過モジュール80に送液される。
【0042】
脱気モジュール70へ供給されたインクは、脱気モジュール70で気体(空気)が脱気される。濾過モジュール80へ供給されたインクは、濾過モジュール80でインクが濾過される。脱気モジュール70としては、インクの脱気を行うことができれば、公知の構成を適用可能であり、また、濾過モジュール80としては、インクの濾過を行うことができれば、公知の構成を適用可能である。
【0043】
脱気モジュール70で脱気され、濾過モジュール80で濾過されたインクは、送液ポンプ62を用いて、第2サブタンク63に供給される。第2サブタンク63は、背圧ポンプ64により第2サブタンク63内の空気圧(背圧)を調整可能な構成となっており、この空気圧の調整により、インクジェットヘッド90のノズルからのインクの吐出を制御可能である。
【0044】
第2サブタンク63の内部には、液面センサー65が設けられており、第2サブタンク63に供給されたインクの液面の高さを検出している。
【0045】
また、第2サブタンク63の出口側には、圧力センサー66が設けられており、第2サブタンク63から供給されるインクの吐出圧を検出している。この圧力センサー66は、第2サブタンク63内の空気圧の調整のために使用されている。
【0046】
[インクジェットヘッド]
インクジェットヘッド90について、図3と共に、図4A図4B図5も参照して説明を行う。図4Aは、インクジェットヘッド90を示す斜視図である。また、図4Bは、インクジェットヘッド90の先端部分を示す斜視図である。また、図5は、インクジェットヘッド90の先端部分の断面図である。
【0047】
インクジェットヘッド90は、インレット91、ヘッドチップ92、マニホールド93、アウトレット94、ヘッド駆動部51(図2を参照)などを備える。ヘッド駆動部51は、インクジェットヘッド90のカバー90aの内部に配置され、マニホールド93は、インクジェットヘッド90の筐体90bの内部に配置される。なお、図3では、2つのインクジェットヘッド90を直列に接続した構成を例示しているが、インクジェットヘッド90は、1つでもよいし、また、3つ以上を直列に接続した構成でもよい。
【0048】
インレット91は、マニホールド93に接続されており、第2サブタンク63からのインクは、インレット91(図3では、上流側のインクジェットヘッド90のインレット91)を介して、マニホールド93へ供給される。
【0049】
ヘッドチップ92は、ノズルプレート921、圧力室プレート922などを有する。ノズルプレート921には、複数のノズル(図示省略)が形成されている。また、圧力室プレート922には、複数の圧力室923(第1室)が形成され、また、複数の第1圧電素子95(第1圧力印加部)が配置されている。第1圧電素子95は、ヘッド駆動部51により電圧が印加されることにより駆動される。
【0050】
1つの圧力室923に対して、1つのノズルが設けられており、図示は省略しているが、圧力室923の端部(図5中における下側の端部)にノズルが形成されている。また、1つの圧力室923に対して、1つの第1圧電素子95が設けられており、圧力室923において、ノズルが配置された端部と反対側の端部(図5中における上側の端部)に第1圧電素子95が配置されている。1つの圧力室923と1つの第1圧電素子95とは1つの組となっており、インクジェットヘッド90には、このような組が複数設けられている。
【0051】
第1圧電素子95は、ヘッド駆動部51により駆動され、第1圧電素子95が接する圧力室923の壁面を変位させることで、圧力室923内のインクに第1圧力を印加する。これにより、圧力室923内のインクはノズルから吐出されて、記録媒体P上に画像を形成することになる。
【0052】
マニホールド93は、内部に共通液室931(第2室)が形成されており、共通液室931は、複数の圧力室923と連通している。共通液室931に供給されたインクは、個々の圧力室923へ供給されている。
【0053】
アウトレット94は、マニホールド93に接続されており、使用(吐出)されなかったインクは、アウトレット94(図3では、下流側のインクジェットヘッド90のアウトレット94)を介して、マニホールド93から第1サブタンク61へ戻される。このようにして、ヘッドユニット50内のインクは循環されている。
【0054】
ところで、上述したように、インクジェットヘッド90の圧力室923内のインクには、インクをノズルから吐出させるための第1圧力が印加される。その際、印加した第1圧力に伴って発生する残響波やその伝播波が圧力室923内のインクの圧力を変動させるため、圧力変動後のインク吐出に悪い影響を与えることがある。特に、インク吐出の間隔が短い高速駆動の場合には、インク吐出に対する残響波や伝播波の影響が避けられないため、インク吐出の高速駆動に限界があった。
【0055】
そこで、本実施の形態において、インクジェットヘッド90は、上述したように、インクを吐出可能なノズルを有する圧力室923と、圧力室923内のインクに第1圧力を印加して、ノズルからインクを吐出させる第1圧電素子95とを備える。加えて、インクジェットヘッド90は、インクに第2圧力を印加する第2圧電素子96a(第2圧力印加部)を備える。そして、制御部100は、第1圧力の印加態様に応じてインクに発生する残響波を打ち消す印加態様となる第2圧力を決定し、第1圧力と同時に第2圧力をインクに印加するよう、第1圧電素子95と第2圧電素子96aを制御するようにしている。
【0056】
第2圧電素子96aは、図4B及び図5に示すように、マニホールド93の上部壁面93aの外面に設けられ、また、マニホールド93(共通液室931)内を流れるインクの流れ方向に沿って延在されている。第2圧電素子96aは、マニホールド93において、圧力室923に対向する位置に配置されている。
【0057】
第2圧電素子96aは、ヘッド駆動部51により電圧が印加されることにより駆動され、第2圧電素子96aが接する上部壁面93aを変位させることで、共通液室931内のインクに第2圧力を印加する。このとき、ヘッド駆動部51は、上記の第2圧電素子96aにより、第1圧力の印加によりインクに発生する残響波を打ち消す印加態様となるよう、第2圧力を制御する。
【0058】
第2圧電素子96aによる第2圧力の制御について、図6を参照して説明を行う。図6は、インクジェット画像形成装置1において実施するインクジェットヘッド90の制御方法を説明するフローチャートである。
【0059】
制御部100は、例えば、入出力インターフェース112を介して、外部装置2からプリントジョブや画像データなどが供給されると、画像形成動作を開始する。
【0060】
(ステップS11)
まず、制御部100は、画像データに基づく画像処理(例えば、ラスタイメージの画像処理など)を行って、インクジェットヘッド90からインクを吐出する吐出パターンを決定する。これは、各インクジェットヘッド90の各圧力室923(各ノズル)に対して、各々の吐出パターンが決定される。
【0061】
(ステップS12)
次に、制御部100は、決定されたインクの吐出パターンに基づいて、インクジェットヘッド90の第1圧電素子95でインク吐出のために印加する第1圧力の第1印加パターン(第1印加態様)を決定する。これも、各インクジェットヘッド90の各圧力室923に対して、各々の第1印加パターンが決定される。
【0062】
(ステップS13)
次に、制御部100は、第1圧力の第1印加パターンに基づいて、第1圧力の印加により圧力室923で発生する残響波を予測する。この残響波には、共通液室931を経由して、他の圧力室923に伝播する圧力波(クロストークの一種)を含めてもよい。なお、ここでは、第1圧力の第1印加パターンに基づいて、残響波を予測しているが、第1圧力の第1印加パターンに応じる残響波を予め取得しておき、取得した残響波の中から、第1圧力の第1印加パターンに応じる残響波を選択するようにしてもよい。
【0063】
(ステップS14)
次に、制御部100は、予測された残響波に基づいて、第2圧電素子96aで残響波をキャンセルする第2圧力の第2印加パターン(第2印加態様)を決定する。なお、ステップS13で説明したように、第1圧力の第1印加パターンに応じる残響波が選択された場合には、選択された残響波に基づいて、第2圧電素子96aで残響波をキャンセルする第2圧力の第2印加パターンを決定する。
【0064】
ここで、残響波と、残響波をキャンセルする第2圧力の第2印加パターンであるキャンセル波について、図7及び図8を参照して説明をする。図7は、インクジェットヘッド90を高速駆動した場合において発生する残響波とそのキャンセル波を示す図である。また、図8は、インクジェットヘッド90を低速駆動した場合において発生する残響波とそのキャンセル波を示す図である。
【0065】
インクジェットヘッド90において、インクの吐出パターンに基づいて、その第1圧電素子95を高速駆動して、第1圧力の第1印加パターンをインクに印加すると、その残響波の変動周波数は、第1印加パターンの変動周波数に応じて高くなる。この場合、高周波(例えば、数十KHz以上)となる残響波をキャンセルするため、制御部100は、残響波の逆位相となる高周波のキャンセル波を第2圧力の第2印加パターンとして決定する(図7を参照)。
【0066】
インクジェットヘッド90において、インクの吐出パターンに基づいて、その第1圧電素子95を低速駆動して、第1圧力の第1印加パターンをインクに印加すると、その残響波の変動周波数は、第1印加パターンの変動周波数に応じて低くなる。この場合も、低周波となる残響波をキャンセルするため、制御部100は、残響波の逆位相となる低周波のキャンセル波を第2圧力の第2印加パターンとして決定する(図8を参照)。
【0067】
なお、図7及び図8においては、わかりやすいように、単純な残響波を例示したが、残響波は、第1圧力の第1印加パターン、例えば、その周波数や振幅などに応じて変化する。そのような場合においても、制御部100は、残響波の逆位相となるキャンセル波を第2圧力の第2印加パターンとして決定すればよい。
【0068】
(ステップS15)
次に、制御部100は、第1圧電素子95への第1圧力の第1印加パターン、第2圧電素子96aへの第2圧力の第2印加パターンを、ヘッド駆動部51に指令する。
【0069】
制御部100からの指令により、ヘッド駆動部51は、第1印加パターンに基づいて、第1圧電素子95で第1圧力を制御し、ノズルから画像データの画素値に応じた量のインクを吐出させる。このとき、ヘッド駆動部51は、第1圧力の印加によりインクに発生する残響波を打ち消す第2印加パターンに基づいて、第2圧電素子96aで第2圧力を制御する。
【0070】
このように、第1圧電素子95による第1圧力の印加により圧力室923で発生する残響波に対し、第2圧電素子96aから第2圧力の第2印加パターン(キャンセル波)を付与することにより、圧力室923内の圧力変動を抑制することができる。つまり、アクティブ制震制御を行っている。本実施の形態では、特に、インクジェットヘッド90を高速駆動する場合、つまり、インク吐出の間隔が短い場合でも、圧力室923内の圧力変動を抑制することができる。
【0071】
図9は、従来のインクジェット画像形成装置において、インクジェットヘッドの駆動周波数を変更したときの圧力室内の圧力波の速度変動を示すグラフである。また、図10は、本実施の形態のインクジェット画像形成装置1において、インクジェットヘッド90の駆動周波数を変更したときの圧力室923内の圧力波の速度変動を示すグラフである。
【0072】
図9に示すように、従来のインクジェット画像形成装置においては、駆動周波数が高くなるに従って、圧力室内の圧力波の速度変動の変動幅が大きくなる傾向がある。これは、圧力室内の残響波が大きく、圧力室内の圧力変動が大きいことを示している。
【0073】
一方、図10に示すように、本実施の形態のインクジェット画像形成装置1においては、駆動周波数が高くなるに従って、圧力室内の圧力波の速度変動の変動幅が大きくなる傾向はあるが、図9と比較して、その変動幅が抑制されている。これは、圧力室内の残響波が抑制され、圧力室内の圧力変動が抑制されていることを示している。つまり、従来と比較して、インクジェットヘッド90の周波数特性が向上している。
【0074】
(ステップS16)
最後に、制御部100は、画像形成動作が継続するかどうかを判断する。画像形成動作が継続する場合(YES)、ステップS11へ戻り、継続しない場合(NO)、一連の手順を終了する。制御部100は、例えば、外部装置2からのプリントジョブや画像データなどの供給の有無を判断して、画像形成動作が継続するかどうかを判断する。
【0075】
以上説明したように、インクジェット画像形成装置1において、インクジェットヘッド90は、インクを吐出可能なノズルを有する圧力室923と、圧力室923内のインクに第1圧力を印加して、ノズルからインクを吐出させる第1圧電素子95とを備える。加えて、インクジェットヘッド90は、インクに第2圧力を印加する第2圧電素子96aを備える。そして、制御部100は、第1圧力の印加態様に応じてインクに発生する残響波を打ち消す印加態様となる第2圧力を決定し、第1圧力と同時に第2圧力をインクに印加するよう、第1圧電素子95と第2圧電素子96aを制御するようにしている。
【0076】
このように構成したインクジェット画像形成装置1によれば、第1圧力の印加によりインクに発生する残響波に応じて、第2圧力が残響波を打ち消す印加態様となるよう、第2圧電素子96aを制御している。これにより、圧力室923内の圧力変動を抑制することができ、インク吐出の間隔が短い場合でも、圧力室923内の圧力変動を抑制することができる。この結果、印字品質を向上させることができる。
【0077】
また、本実施の形態では、第1圧力の印加前に残響波を予測し、第2圧力が残響波を打ち消す印加態様となるよう、第2圧電素子96aを制御している。つまり、フィードフォワード制御を行っている。インク吐出の間隔が短い場合、つまり、インクジェットヘッド90を高速駆動する場合は、残響波は周期的、定在的な高周波の変動となるが、そのような残響波に対する応答遅れを無くすようにして、圧力室923内の圧力変動を抑制することができる。この結果、インクジェットヘッド90を更に高速駆動することを可能にし、インクジェットヘッド90の印字速度や印字品質を更に向上させることができる。
【0078】
なお、本実施の形態では、第2圧電素子96aがマニホールド93の上部壁面93aの外面に設けられているが、これに加えて、マニホールド93の側部壁面93bの外面に第2圧電素子96bを設けるようにしてもよい(図4B図5を参照)。このように、第2圧電素子96a、96bを設けて、上部壁面93a、側部壁面93bに接する面積を大きくすることにより、残響波の振幅が大きい場合でも、振幅が大きいキャンセル波を生成して、残響波をキャンセルすることができる。
【0079】
また、ここでは、第2圧電素子96a、96bは、マニホールド93(共通液室931)内を流れるインクの流れ方向に沿って延在されているが、当該流れ方向において、これらを複数に分割し、分割した各々で第2圧力を印加可能な構成としてもよい。このように、第2圧電素子96a、96bを複数に分割することにより、上記流れ方向の領域毎に、更には、個別の圧力室923毎にキャンセル波を生成して、残響波をキャンセルすることができる。これにより、マニホールド93(共通液室931)の流れ方向において、圧力変動を抑制して、その流れ方向における圧力分布を均一にすることができる。
【0080】
また、本実施の形態は、粘度7mPa・s以下かつ音速1400m/s以上のインク、つまり、水系インクジェットインクの場合、より有効に上記の効果を得ることができる。また、粘度7mPa・s以下かつ音速1400m/s以上のインクの場合、第2圧電素子96a、96bを、20KHz以上の高周波での駆動可能となり、インクジェットヘッド90の周波数特性も向上する。
【0081】
<変形例1>
上記の実施の形態においては、インクジェットヘッド90に第2圧電素子96a、96bを設けているが、本変形例では、第2圧電素子96a、96bを設けなくてもよい。本変形例において、制御部100は、ある圧力室923のノズルからインクを吐出させるときに、ノズルからインクを吐出させない他の圧力室923の第1圧電素子95を、上述した第2圧電素子96a、96bとして用いる。例えば、ある圧力室923のノズルからインクを吐出させるときに、この圧力室923に隣接する圧力室923のノズルからインクを吐出させない場合には、この隣接する圧力室923の第1圧電素子95を、上述した第2圧電素子96a、96bとして用いる。
【0082】
この場合も、制御部100は、ノズルからインクを吐出させる圧力室923で第1圧力の印加によりインクに発生する残響波を予測する。そして、制御部100は、ノズルからインクを吐出させない他の圧力室923の第1圧電素子95の第1圧力が、予測された残響波を打ち消す印加態様となるよう、第1圧電素子95を制御する。なお、この場合、制御部100は、ノズルからインクを吐出させない他の圧力室923において、第1圧力がノズルのインクのメニスカスを壊さない圧力となるように、第1圧電素子95を制御する。
【0083】
このように、本変形例では、第2圧電素子96a、96bは設けなくてもよいので、インクジェットヘッド90の構成を従来の構成から変更することなく、圧力室923内の圧力変動を抑制することができる。
【0084】
<変形例2>
上記の実施の形態においては、第2圧電素子96a、96bにより、圧力室923の圧力変動を抑制しているが、第2サブタンク63が付与する背圧の変動を抑制するような第3圧力を共通液室931内のインクに印加してもよい。
【0085】
この場合、制御部100は、圧力室923のノズルからインクを吐出させることにより発生する第2サブタンク63の背圧の変動を打ち消す印加態様となる第3圧力を決定する。例えば、制御部100は、ノズルからのインクの吐出により発生する第2サブタンク63の背圧の変動を予測し、第2サブタンク63の背圧の変動と逆位相の印加パターンとなるように、第3圧力を決定する。
【0086】
そして、制御部100は、圧力室923のノズルからインクを吐出させるとき、第1圧力と同時に第3圧力をインクに印加するよう、第1圧電素子95及び第2圧電素子96a、96bを制御する。
【0087】
このように、本変形例では、第3圧力が第2サブタンク63の背圧の変動を打ち消す印加態様となるよう、第2圧電素子96a、96bを制御する。これにより、第2サブタンク63が付与する背圧の変動を抑制するので、圧力室923内の圧力変動を更に抑制することができる。
【0088】
<変形例3>
上記の実施の形態においては、第2圧電素子96a、96bにより、圧力室923の圧力変動を抑制しているが、圧力室923のノズルからのインク吐出量を多くしたい場合には、第1圧力に重畳させるような第4圧力を圧力室923内のインクに印加してもよい。
【0089】
この場合、制御部100は、第1圧力に重畳させることにより、第1圧力に重畳させない場合よりインク吐出量が多くなる印加態様となる第4圧力を決定する。例えば、第1圧力の第1印加パターンと同位相の印加パターンとなるように、第4圧力を決定する。
【0090】
そして、制御部100は、圧力室923のノズルからインクを吐出させる場合において、第1圧力と同時に第4圧力をインクに印加するよう、第1圧電素子95及び第2圧電素子96a、96bを制御して、第1圧力に第4圧力を重畳させる。
【0091】
このように、本変形例では、第1圧電素子95で圧力室923内のインクに第1圧力を印加すると共に、この第1圧力に重畳するように、第2圧電素子96a、96bで圧力室923内のインクに第4圧力を印加する。これにより、第1圧力に第4圧力を重畳しない場合より、圧力室923のノズルからのインク吐出量を多くすることができる。
【0092】
なお、この場合においても、制御部100は、第1圧力及び第4圧力の印加により圧力室923内のインクに発生する残響波を予測する。そして、制御部100は、インク吐出後に新たに印加する第2圧力が残響波を打ち消す印加態様となるよう、第2圧電素子96a、96bを制御する。このようにすれば、インク吐出量を多くすることができると共に、圧力室923内の圧力変動を抑制することができる。
【0093】
上記実施の形態や変形例1~3は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、又は、その主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 インクジェット画像形成装置
2 外部装置
10 給紙部
20 画像形成部
30 排紙部
50 ヘッドユニット
51 ヘッド駆動部
90 インクジェットヘッド
92 ヘッドチップ
921 ノズルプレート
922 圧力室プレート
923 圧力室
93 マニホールド
931 共通液室
95 第1圧電素子
96a、96b 第2圧電素子
100 制御部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10