(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ワイヤレス送電装置及びワイヤレス給電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20241008BHJP
【FI】
H02J50/12
(21)【出願番号】P 2022534896
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2021006439
(87)【国際公開番号】W WO2022009459
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2020116426
(32)【優先日】2020-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細谷 達也
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/021655(WO,A1)
【文献】特開2014-110733(JP,A)
【文献】特開2017-135880(JP,A)
【文献】国際公開第2015/128942(WO,A1)
【文献】特開2009-101884(JP,A)
【文献】特開2014-155328(JP,A)
【文献】特許第6338808(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00-50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電コイル及び送電共振キャパシタを含む送電共振機構と、
前記送電共振機構に直流電圧又は直流電流を所定のスイッチング周波数で断続的に与えるようにスイッチングする送電回路と、
入力電源を電圧変換する電圧変換回路と、
前記電圧変換回路と前記送電回路との間に設けられ、前記電圧変換回路と前記送電回路とが共用する中間キャパシタと、
前記電圧変換回路から前記送電回路へ入力される中間入力電流を検出する中間入力電流検出回路と、
前記中間入力電流の上限値を設定し、前記中間入力電流が前記上限値を超えないように前記電圧変換回路の出力電圧となる前記中間キャパシタの電圧である中間電圧を制御することで、前記送電共振機構に断続的に与える直流電圧又は直流電流の振幅を調整する電力管理回路と、を備え、
前記電力管理回路は
、前記送電共振キャパシタの電圧を検出し、前記送電共振キャパシタの電圧および前記中間入力電流に基づいて前記中間電圧を制御することにより、前記送電コイルがつくる、前記スイッチング周波数における交番磁界の強さを、前記送電回路が扱う電力のうち、無効電力
と有効電力に応じてフィードバック制御することを特徴とする、
ワイヤレス送電装置。
【請求項2】
前記電力管理回路は、前記中間入力電流が前記上限値に達したとき、前記電圧変換回路の出力電圧となる前記中間電圧を低下させるように前記電圧変換回路を制御する、
請求項1に記載のワイヤレス送電装置。
【請求項3】
前記電力管理回路は、前記電圧変換回路又は前記送電回路の温度を検出する温度検出回路を備え、前記温度検出回路の検出温度が所定の上限値を超えないように前記電圧変換回路の出力電圧となる前記中間電圧を低下させるように前記電圧変換回路を制御する、
請求項1又は2に記載のワイヤレス送電装置。
【請求項4】
前記電力管理回路は
、前記送電共振キャパシタの電圧が所定の上限値を超えないように前記電圧変換回路を制御することにより、前記中間電圧を低下させる、
請求項1から3のいずれかに記載のワイヤレス送電装置。
【請求項5】
前記電力管理回路は、前記電圧変換回路又は前記送電回路の異常を検出する異常検知回路を備え、
前記異常検知回路が、前記電圧変換回路又は前記送電回路の異常を検知した場合、前記電力管理回路は、前記電圧変換回路の出力電圧となる前記中間電圧を所定値以下にして、前記送電回路のスイッチングを停止させる、
請求項1から4のいずれかに記載のワイヤレス送電装置。
【請求項6】
前記電圧変換回路は、出力電圧を検出して出力電圧を負帰還制御する負帰還制御回路を備えたDC-DCコンバータである、
請求項1から5のいずれかに記載のワイヤレス送電装置。
【請求項7】
前記DC-DCコンバータは、絶縁形コンバータである、
請求項6に記載のワイヤレス送電装置。
【請求項8】
前記電圧変換回路は、出力電圧を検出して出力電圧を負帰還制御する負帰還制御回路を備えたシリーズレギュレータである、
請求項1から5のいずれかに記載のワイヤレス送電装置。
【請求項9】
ワイヤレス受電装置とワイヤレス送電装置とで構成されるワイヤレス給電システムにおいて、
前記ワイヤレス受電装置は受電コイルを備え、
前記ワイヤレス送電装置は、
前記受電コイルに磁気結合する送電コイル及び送電共振キャパシタを含む送電共振機構と、
前記送電共振機構に直流電圧又は直流電流を所定のスイッチング周波数で断続的に与えるようにスイッチングする送電回路と、
入力電源を電圧変換する電圧変換回路と、
前記電圧変換回路と前記送電回路との間に設けられ、前記電圧変換回路と前記送電回路とが共用する中間キャパシタと、
前記電圧変換回路から前記送電回路へ入力される中間入力電流を検出する中間入力電流検出回路と、
前記中間入力電流の上限値を設定し、前記中間入力電流が前記上限値を超えないように前記電圧変換回路の出力電圧となる前記中間キャパシタの電圧である中間電圧を制御することで、前記送電共振機構に断続的に与える直流電圧又は直流電流の振幅を調整する電力管理回路と、を備え、
前記電力管理回路は
、前記送電共振キャパシタの電圧を検出し、前記送電共振キャパシタの電圧および前記中間入力電流に基づいて前記中間電圧を制御することにより、前記送電コイルがつくる、前記スイッチング周波数における交番磁界の強さを、前記送電回路が扱う電力のうち、無効電力
と有効電力に応じてフィードバック制御することを特徴とする、
ワイヤレス給電システム。
【請求項10】
前記ワイヤレス受電装置は、前記ワイヤレス送電装置へ、共鳴変調制御によって受電電力の要求信号を伝送する変調手段を備え、
前記ワイヤレス送電装置は、前記受電電力の要求信号を復調する復調手段、を備え、
前記電力管理回路は、前記受電電力の要求信号に応じて前記電圧変換回路の出力電圧となる前記中間電圧を調整するように前記電圧変換回路を制御する、
請求項9に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項11】
前記入力電源は直流電圧源である、
請求項1から
8のいずれかに記載のワイヤレス送電装置。
【請求項12】
前記入力電源は直流電流源である、
請求項1から
8のいずれかに記載のワイヤレス送電装置。
【請求項13】
前記入力電源は商用交流電源を整流平滑する回路で構成された、
請求項1から
8、11、12のいずれかに記載のワイヤレス送電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレスで電力を送電するワイヤレス送電装置、及びこのワイヤレス送電装置と、ワイヤレスで電力を受電するワイヤレス受電装置とで構成されるワイヤレス給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、供給される交流電力或いは直流電力の交流変換を行う交流変換器と、交流電力を無線送電する送電側共鳴コイルと、送電側制御装置とを送電装置に備え、受電側共鳴コイルと、整流器と、直流変換器と、受電側制御装置と、を受電装置に備えた、電力伝送システムが示されている。そして、受電側制御装置は、制御電源電圧が入力されて起動した後、整流器の出力電圧を測定して送電側制御装置へ送信し、送電側制御装置は、整流器の出力電圧の測定結果に基づいて、整流器の出力電圧が直流変換器の入力電圧として適した値となるように交流変換器を制御することが示されている。
【0003】
一般に、ワイヤレス給電システムにおいては、伝送距離や受電電力の供給先である負荷における消費電力の変化に対して受電電力を調整するために、送電する電力の制御が求められる。特に、大電力を扱うシステムやアプリケーションにおいては、電力損失による発熱に対する温度管理、回路装置における安全性の観点から、高精度な送電電力の制御機能を有したパワーマネジメントが求められる。
【0004】
一方、受電装置では、送電装置と受電装置との配置や伝送距離の変化に対して受電電力は変化し、負荷における消費電力も変化する。送電装置では、受電装置に対して供給する電力を細かく調整するため、送電コイルがつくる高周波交番磁界の強度を連続的に調整できることが求められる。しかし、高周波交番磁界を電力効率よく連続的に調整することは技術的に至難である。
【0005】
送電装置においては、回路動作における電圧や電流、電力に基づいて受電電力を簡単に知ることはできず、受電電力と高周波交番磁界の強度は必ずしも相関しないため、受電電力を調整するために、高周波交番磁界の強度を連続的に調整したとしても、送電装置内の回路(送電回路)の電圧、電流又は電力が過大となってしまう場合がある。
【0006】
例えば、送電コイルがつくる交番磁界の強度が同じ場合であっても、送電コイルがつくる電磁界エネルギーが受電装置に効率よく供給される場合と効率よく供給されない場合とがある。これらをシンプルな構成で区別することは容易ではない。送電コイルがつくる電磁界エネルギーが受電装置で電力消費される場合は良いが、受電装置に供給されずに送電装置内の回路だけに電流が流れると、送電回路において大きな電力損失が生じる。その結果、送電回路の電圧や電流そして電力が過大となり、回路の電気的ストレスや発熱が問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
送電コイルがつくる電磁界エネルギーが受電装置にどういった効率で供給されるのか、検出することなく、単に送電回路において高周波交番磁界の強度を調整すると、送電回路の電圧、電流、電力などが過大となって、回路が破壊されたり、回路部品の信頼性が著しく低下したりするおそれがある。一方、回路を破壊しないように送電回路の電圧、電流、電力を予め抑制すると、交番磁界の強度を効率よく調整できず、電力供給効率が高められない。
【0009】
そこで、本発明の目的は、簡単な回路構成により交番磁界を連続的に調整でき、かつ、送電装置と受電装置との配置や距離の変化に関わらず、送電回路に過大な電気的ストレスや発熱が生じない、安全性の高いワイヤレス送電装置及びワイヤレス給電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一例としてのワイヤレス送電装置は、
送電コイル及び送電共振キャパシタを含む送電共振機構と、
前記送電共振機構に直流電圧又は直流電流を所定のスイッチング周波数で断続的に与えるようにスイッチングする送電回路と、
入力電源を電圧変換する電圧変換回路と、
前記電圧変換回路と前記送電回路との間に設けられ、前記電圧変換回路と前記送電回路とが共用する中間キャパシタと、
前記電圧変換回路から前記送電回路へ入力される中間入力電流を検出する中間入力電流検出回路と、
前記中間入力電流の上限値を設定し、前記電圧変換回路の出力電圧となる前記中間キャパシタの電圧である中間電圧を制御することで、前記送電共振機構に断続的に与える直流電圧又は直流電流の振幅を調整する電力管理回路と、を備え、
前記電力管理回路は、前記送電コイルがつくる、前記スイッチング周波数における交番磁界の強さを制御することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一例としてのワイヤレス給電システムは、
ワイヤレス受電装置とワイヤレス送電装置とで構成され、
前記ワイヤレス受電装置は受電コイルを備え、
前記ワイヤレス送電装置は、
前記受電コイルに磁気結合する送電コイル及び送電共振キャパシタを含む送電共振機構と、
前記送電共振機構に直流電圧又は直流電流を所定のスイッチング周波数で断続的に与えるようにスイッチングする送電回路と、
入力電源を電圧変換する電圧変換回路と、
前記電圧変換回路と前記送電回路との間に設けられ、前記電圧変換回路と前記送電回路とが共用する中間キャパシタと、
前記電圧変換回路から前記送電回路へ入力される中間入力電流を検出する中間入力電流検出回路と、
前記中間入力電流の上限値を設定し、前記電圧変換回路の出力電圧となる前記中間キャパシタの電圧である中間電圧を制御することで、前記送電共振機構に断続的に与える直流電圧又は直流電流の振幅を調整する電力管理回路と、を備え、
前記電力管理回路は、前記送電コイルがつくる、前記スイッチング周波数における交番磁界の強さを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡単な回路構成により交番磁界を連続的に調整でき、かつ、ワイヤレス送電装置とワイヤレス受電装置との配置や距離の変化に関わらず、ワイヤレス送電回路に過大な電気的ストレスや発熱を生じさせない、安全性の高いワイヤレス送電装置及びワイヤレス給電システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は第1の実施形態に係るワイヤレス給電システム301Aの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したワイヤレス給電システム301Aとは構成が異なるワイヤレス給電システム301Bの回路図である。
【
図3】
図3は、第2の実施形態に係るワイヤレス給電システム302の構成を示す回路図である。
【
図4】
図4は、第3の実施形態に係るワイヤレス給電システム303の構成を示す回路図である。
【
図5】
図5は、第4の実施形態に係るワイヤレス給電システム304の構成を示す回路図である。
【
図6】
図6は、第5の実施形態に係るワイヤレス給電システム305の構成を示す回路図である。
【
図7】
図7は、第6の実施形態に係るワイヤレス給電システム306の構成を示す回路図である。
【
図8】
図8は、第7の実施形態に係る、ワイヤレス送電装置が備える電圧変換回路の回路図である。
【
図9】
図9は、第7の実施形態に係る、ワイヤレス送電装置が備える電圧変換回路の別の回路図である。
【
図10】
図10は、第8の実施形態に係る、ワイヤレス送電装置が備える電圧変換回路の回路図である。
【
図11】
図11は、第8の実施形態に係る、ワイヤレス送電装置が備える電圧変換回路の別の回路図である。
【
図12】
図12は第9の実施形態に係る入力電源Viの回路図である。
【
図13】
図13は第10の実施形態に係る入力電源Viの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
《第1の実施形態》
図1は本発明の第1の実施形態に係るワイヤレス給電システム301Aの構成を示すブロック図である。このワイヤレス給電システム301Aは、ワイヤレス送電装置101と、このワイヤレス送電装置101に備えたワイヤレス送電コイルLpにワイヤレスで磁気結合するワイヤレス受電コイルLsを備えたワイヤレス受電装置201とで構成されている。
【0015】
ワイヤレス送電装置101は、送電共振機構PR、送電回路26、電圧変換回路12、中間キャパシタCi、中間入力電流検出回路及び電力管理回路39を備える。
【0016】
ワイヤレス送電コイルLpと送電共振キャパシタCrとで共振回路が構成されていて、送電共振機構PRは、このワイヤレス送電コイルLpと送電共振キャパシタCrとで構成されている。
【0017】
送電回路26にはスイッチング回路が構成されている。この送電回路26は、送電共振機構PRに直流電圧又は直流電流を所定のスイッチング周波数で断続的に与えるようにスイッチングする。
【0018】
電圧変換回路12の入力部には入力電源Viが接続される。電圧変換回路12は、入力電源Viの電圧を所定電圧に変換して送電回路26へ入力する。
【0019】
中間キャパシタCiは、電圧変換回路12と送電回路26との間に設けられ、電圧変換回路12と送電回路26とが共用する。そのため、部品数が削減される。また、中間キャパシタCiへの流入と流出の電流が相殺されることによってノイズが低減される。
【0020】
電力管理回路39は上記中間入力電流検出回路を備える。この中間入力電流検出回路は、電圧変換回路12から送電回路26へ入力される中間入力電流を検出する。
【0021】
電力管理回路39は、中間入力電流の上限値を設定し、電圧変換回路12の出力電圧を制御することで、送電共振機構PRに断続的に与える直流の電圧又は電流の振幅を調整する。電力管理回路39は、中間入力電流が上限値に達したとき、電圧変換回路12の出力電圧となる中間電圧を低下させるように電圧変換回路12を制御する。
【0022】
ワイヤレス受電装置201は、受電共振機構SR、整流平滑回路52、電圧安定化回路53及び電力管理回路59を備える。
【0023】
電圧安定化回路53の出力部には負荷Roが接続される。
【0024】
ワイヤレス受電コイルLsと受電共振キャパシタCrsとで共振回路が構成されていて、受電共振機構SRは、このワイヤレス受電コイルLsと受電共振キャパシタCrsとで構成されている。
【0025】
整流平滑回路52は受電共振機構SRの出力電圧を整流平滑する。電圧安定化回路53は整流平滑回路52の出力電圧を安定化させて負荷Roへ出力する。
【0026】
電力管理回路59は、整流平滑回路52を制御すると共に、ワイヤレス送電装置101へ、共鳴変調制御によって受電電力の要求信号を送信する受電電力要求手段を備える。
【0027】
上記ワイヤレス送電装置101側の電力管理回路39は、上記受電電力の要求信号を検出する復調制御によって受信する、受電電力要求信号受信手段を備える。そして、電力管理回路39は、受電電力の要求信号に応じて電圧変換回路12を制御する。
【0028】
受電電力の要求信号をワイヤレス送電装置101へ送信することと、受電電力の要求信号に応じて送電電力を調整することとでフィードバック系が構成される。したがって、ワイヤレス受電装置201は必要な電力を受電して負荷Roへ供給することとなる。
【0029】
以上に示したワイヤレス給電システム301Aの作用は次のとおりである。
ワイヤレス送電コイルLpがつくる交番磁界の強さが大きくなると、中間キャパシタCiから後段へ流れる中間入力電流は増加する。電力管理回路39は、その電流増加を検出して、電圧変換回路12の出力電圧を低下させる。その結果、電圧変換回路12の出力電圧となる中間キャパシタCiの電圧である中間電圧が低下する。
【0030】
中間電圧が低下すると、ワイヤレス送電コイルLpと送電共振キャパシタCrからなる送電共振機構PRに断続的に与えられる直流電圧又は直流電流は低くなり、方形波の振幅電圧が小さくなる。これにより、ワイヤレス送電コイルLpに流れる共振電流は減少し、交番磁界の強さは小さくなる。このようにして、交番磁界の強度がフィードバック制御される。
【0031】
以上に示したように、電力管理回路39内の中間入力電流検出回路が、電圧変換回路12から送電回路26へ入力される中間入力電流を検出し、電力管理回路39は、中間入力電流の上限値を設定するので、中間入力電流が上限値を超えないように電圧変換回路12の出力電圧(中間キャパシタCiの電圧)が制御される。この電圧変換回路12の出力電圧が制御されることで、送電共振機構PRに断続的に与える直流の電圧又は電流の振幅が調整される。
【0032】
中間入力電流は、中間キャパシタCiの電圧(中間入力電圧)が一定の場合、送電回路26が扱う電力に比例し、ワイヤレス送電コイルLpからワイヤレス受電装置201に供給される電力に略比例するので、ワイヤレス送電コイルLpがつくる電磁界エネルギーがワイヤレス受電装置201に効率よく供給される場合と効率よく供給されない場合とがあっても、ワイヤレス受電装置201の受電電力が、ワイヤレス受電装置201から要求される電力となるように制御可能となる。
【0033】
ワイヤレス送電コイルLpがつくる電磁界エネルギーがワイヤレス受電装置201に供給されずに、ワイヤレス送電装置101内の回路だけに電流が流れる状態は、無効電力(電力を複素数で表現した場合の虚部の電力)が大きい状態である。一方、有効電力(電力を複素数で表現した場合の実部の電力)すなわち消費電力は、「中間入力電圧」と「中間入力電流」の積で決まり、ワイヤレス送電コイルLpがつくる電磁界エネルギーがワイヤレス受電装置201に供給される場合、すなわち、ワイヤレス受電装置201において、電力が消費される場合のみにおいて、「中間入力電流」は大きくなる。
【0034】
次に、第1の実施形態に係る別のワイヤレス給電システムについて例示する。
【0035】
図2は、
図1に示したワイヤレス給電システム301Aとは構成が異なるワイヤレス給電システム301Bの回路図である。
【0036】
ワイヤレス送電装置101の電圧変換回路12は、直流入力電源電圧を所定電圧に変換する。MPU30はワイヤレス送電装置101の各部を制御するデジタル制御回路である。入力フィルタ21はリップル成分及びノイズ成分を除去する。電圧変換回路12と入力フィルタ21との間には中間キャパシタCiが設けられている。電流検出回路22は、電圧変換回路12から内部方向に入力される電流である中間入力電流を検出する。また、電流検出回路22はワイヤレス受電装置201から送信された信号を検知するために、ラインに流れる電流を検出する。復調回路23は電流検出回路22が検出する電流変化から信号を復調してMPU30へ入力する。ドライバー25はMPU30からの制御信号によってスイッチング素子Q1,Q2をスイッチングする。
【0037】
送電回路26はハイサイドの第1スイッチング素子Q1とローサイドの第2スイッチング素子Q2を備え、ドライバー25からのゲート信号によってオン/オフする。EMIフィルタ27は電磁妨害の原因となるノイズ成分を抑制する。共振調整回路28は送電共振キャパシタを含み、ワイヤレス送電コイルLpと共振回路を構成し、その共振周波数を調整する。
【0038】
電圧レギュレータ回路31はMPU30に対する電源電圧を安定化させる。発振器32はMPU30に対してクロック信号を与える。
【0039】
過電圧保護回路33は送電回路26へ供給される電圧が過電圧であるか否かを検出し、その結果をMPU30へ入力する。温度検出回路34はスイッチング素子Q1,Q2の温度が過熱状態であるか否かを検出し、その結果をMPU30へ入力する。過電流検知回路35は送電回路26に流れる電流が過電流であるか否かを検出し、その結果をMPU30へ入力する。過電力検知回路36は共振調整回路28に発生する電圧に基づいて、送電電力が過電力であるか否かを検出し、その結果をMPU30へ入力する。
【0040】
MPU30は電圧変換回路12へ制御信号を与えることによって、電圧変換回路12の出力電圧を調整する。このことにより、過電力給電に対する保護がなされる。入力フィルタ21と送電回路26との間の回路は電力管理回路39を構成している。
【0041】
ワイヤレス受電装置201内のMPU50はワイヤレス受電装置201の各部を制御する。受電共振調整回路51は受電共振キャパシタを含み、ワイヤレス受電コイルLsと共振回路を構成し、その共振周波数を調整する。整流平滑回路52はワイヤレス受電コイルLs及び受電共振調整回路51による受電共振回路に発生する電圧を整流平滑して電圧安定化回路53へ入力する。電圧安定化回路53は整流平滑回路52の出力電圧を規定電圧に変換して負荷Roへ供給する。
【0042】
過電力保護回路54は、電圧安定化回路53に流れる電流に基づいて、負荷供給電力が過電力であるか否かを検出し、その結果をMPU50へ入力する。発振器55はMPU50に対してクロック信号を与える。電圧レギュレータ回路56はMPU50に対する電源電圧を安定化させる。過電圧保護回路57は整流平滑回路52の出力電圧が過電圧であるか否かを検出し、その結果をMPU50へ入力する。変調回路58は受電共振調整回路51を変調する。MPU50は変調回路58を介して受電共振調整回路51を変調することにより、所定の信号をワイヤレス送電装置101へ送信する。
【0043】
受電電圧検出回路61は整流平滑回路52の出力電圧を検出してMPU50へ入力する。温度検出回路62はワイヤレス受電装置201の温度を検出し、MPU50へ入力する。
【0044】
ワイヤレス受電装置201は、上記変調回路58を介して受電共振調整回路51を変調することにより、ワイヤレス送電装置101へ受電電力の要求信号を送信する。また、ワイヤレス送電装置101は、復調回路23による復調制御によって、受電電力の要求信号を検出する。
【0045】
以上に示したワイヤレス給電システム301Bの作用は次のとおりである。
ワイヤレス送電コイルLpがつくる交番磁界の強さが大きくなると、中間キャパシタCiから後段へ流れる中間入力電流は増加する。MPU50は、中間入力電の増加を検出すると、電圧変換回路12における出力電圧検出値を調整して、出力電圧帰還端子に帰還する電位を見かけ上、高くする。その結果、電圧変換回路12におけるスイッチング素子を駆動するパルス幅が縮小調整され、中間キャパシタCiの電圧(中間電圧)が低下する。
【0046】
中間電圧が低下すると、ワイヤレス送電コイルLpと送電共振キャパシタCrからなる送電共振機構PRに断続的に与えられる直流電圧は低くなり、方形波の振幅電圧が小さくなる。これにより、ワイヤレス送電コイルLpに流れる共振電流は減少し、交番磁界の強さは小さくなる。このようにして、交番磁界の強度がフィードバック制御される。
【0047】
また、MPU30は、温度検出回路34の検出する電圧変換回路12又は送電回路26の検出温度が所定の上限値を超えないように、電圧変換回路12の出力電圧となる中間電圧を低下させるように電圧変換回路12を制御する。
【0048】
また、MPU30は、過電流検知回路35又は過電力検知回路36の出力に基づいて、電圧変換回路12又は送電回路26の異常を検知する。この電圧変換回路12又は送電回路26の異常を検知した場合、MPU30は、電圧変換回路12の出力電圧となる中間電圧を所定値以下にして、送電回路26のスイッチングを停止させる。
【0049】
以上に示したように、電流検出回路22が、電圧変換回路12から送電回路26へ入力される中間入力電流を検出し、MPU30は、中間入力電流の上限値を設定する。このことにより、中間入力電流が上限値を超えないように電圧変換回路12の出力電圧(中間キャパシタCiの電圧)が制御される。この電圧変換回路12の出力電圧が制御されることで、送電共振機構PRに断続的に与える直流の電圧又は電流の振幅が調整される。
【0050】
中間入力電流は、中間キャパシタCiの電圧が一定の場合、送電回路が扱う電力に比例し、ワイヤレス送電コイルLpからワイヤレス受電装置201に供給される電力に略比例するので、ワイヤレス送電コイルLpがつくる電磁界エネルギーがワイヤレス受電装置201に効率よく供給される場合と効率よく供給されない場合とがあっても、ワイヤレス受電装置201の受電電力が、ワイヤレス受電装置201から要求される電力となるように制御可能となる。
【0051】
また、電圧変換回路12又は送電回路26に流れる電流や温度が所定の上限値を超えないように電圧変換回路12が制御されるので、過電力状態などの異常状態が回避できる。
【0052】
また、電圧変換回路12又は送電回路26の異常が検知された場合、電圧変換回路12の出力電圧である中間電圧が所定値以下になるので、送電回路26の動作が停止して、目的とする送電ができている、できていないに関わらず、スイッチング周波数での交番磁界の強さが全に制御できる。
【0053】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、電圧変換回路、中間入力電流検出回路及び整流平滑回路等を具体的に表したワイヤレス給電システムについて例示する。
【0054】
図3は、第2の実施形態に係るワイヤレス給電システム302の構成を示す回路図である。この例は送電側がD級コンバータ動作、受電側が直列共振、倍電圧整流動作する回路である。
【0055】
ワイヤレス送電装置101は、等価的にスイッチング素子Q1、ダイオードDds1及びキャパシタCds1の並列接続回路で構成される第1スイッチ回路S1と、等価的に第2スイッチング素子Q2、ダイオードDds2及びキャパシタCds2の並列接続回路で構成される第2スイッチ回路S2と、ワイヤレス送電コイルLpと送電共振キャパシタCrと、を備える。ワイヤレス送電コイルLpと送電共振キャパシタCrとで送電共振機構PRが構成されている。
【0056】
また、ワイヤレス送電装置101は、スイッチング素子Q5、ダイオードD5、インダクタLi及び中間キャパシタCiで構成される電圧変換回路12を備える。スイッチング素子Q5のスイッチングにより、電圧変換回路12は降圧コンバータとして作用する。
【0057】
さらに、ワイヤレス送電装置101は、抵抗素子Ri及び電力管理回路39を備える。電力管理回路39はスイッチング素子Q1,Q2,Q5の制御を行う。この例では、電力管理回路39が電圧変換回路12のスイッチング素子Q5を制御するので、電力管理回路39は電圧変換回路12の一部でもある。電力管理回路39はスイッチング素子Q5をスイッチングすることにより、電圧変換回路12を降圧DC-DCコンバータとして作用させる。また、電圧変換回路12の出力電圧が所定電圧に保たれるようにスイッチング素子Q5のオンデューティ比を制御する。つまり、出力電圧を検出して出力電圧を負帰還制御する。
【0058】
スイッチング素子Q1,Q2は電力管理回路39からの信号によって交互にオン/オフされる。
【0059】
スイッチング素子Q1,Q2はMOSFETなどの、寄生出力容量や寄生ダイオードを有するスイッチング素子であり、スイッチ回路S1、S2を構成する。このスイッチ回路S1,S2によって送電回路が構成される。
【0060】
電力管理回路39が第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2を所定の動作周波数でスイッチングすることで、直流電圧が送電共振機構PRに断続的に与えられて、ワイヤレス送電コイルLpに共振電流が発生する。具体的には、NFC通信で用いられる13.56MHzでスイッチングされる。
【0061】
ワイヤレス受電装置201は、等価的にスイッチング素子Q3、ダイオードDds3及びキャパシタCds3の並列接続回路で構成される第3スイッチ回路S3と、等価的に第4スイッチング素子Q4、ダイオードDds4及びキャパシタCds4の並列接続回路で構成される第4スイッチ回路S4と、ワイヤレス受電コイルLsと、受電共振キャパシタCrsと、を備える。ワイヤレス受電コイルLsと受電共振キャパシタCrsとで受電共振機構SRが構成されている。
【0062】
また、ワイヤレス受電装置201は、第3スイッチ回路S3及び第4スイッチ回路S4の後段に、平滑キャパシタCoを備え、平滑キャパシタCo、第3スイッチ回路S3及び第4スイッチ回路S4によって整流平滑回路が構成されている。
【0063】
第3スイッチ回路S3及び第4スイッチ回路S4は、ワイヤレス受電コイルLsと受電共振キャパシタCrsによる受電共振機構SRに発生する電圧を整流し、平滑キャパシタCoはその電圧を平滑する。この例では、ワイヤレス受電コイルLsと受電共振キャパシタCrsとは直列共振回路を構成している。ワイヤレス送電コイルLpとワイヤレス受電コイルLsとは磁界結合する。図中のMはその結合を表している。
【0064】
中間キャパシタCiより後段の回路はワイヤレス給電部120を構成している。中間キャパシタCiは電圧変換回路12の一部であり、かつワイヤレス給電部120の一部である。
【0065】
ワイヤレス送電装置101内の電力管理回路39は、抵抗素子Riの降下電圧に基づいて、電圧変換回路12から上記送電回路へ入力される電流(中間入力電流)すなわち、電圧変換回路12からワイヤレス給電部120へ供給される電流を検出する。
【0066】
電力管理回路39は、中間入力電流の上限値を設定するので、中間入力電流が上限値を超えないように電圧変換回路12の出力電圧(中間キャパシタCiの電圧)が制御される。この電圧変換回路12の出力電圧が制御されることで、送電共振機構PRに断続的に与える直流の電圧又は電流の振幅が調整される。その結果、ワイヤレス受電装置201の受電電力が、ワイヤレス受電装置201から要求される電力となるように制御される。また、送電回路26へ供給する電力が制限されて、回路の破壊や電気ストレスの増大や過大な発熱が抑制される。
【0067】
また、電力管理回路39は、送電共振キャパシタCrの電圧を検出し、送電共振キャパシタCrの電圧が所定の上限値を超えないように電圧変換回路12を制御することにより中間電圧を低下させるように構成してもよい。このことにより、この電圧変換回路12の出力電圧が制御され、送電共振機構PRに断続的に与える直流の電圧又は電流の振幅が調整される。その結果、ワイヤレス受電装置201の受電電力が、ワイヤレス受電装置201から要求される電力となるように制御される。また、送電回路26へ供給する電力が制限されて、回路の破壊や電気ストレスの増大や過大な発熱が抑制される。
【0068】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、電圧変換回路、中間入力電流検出回路及び整流平滑回路等を具体的に表したワイヤレス給電システムについて例示する。
【0069】
図4は、第3の実施形態に係るワイヤレス給電システム303の構成を示す回路図である。この例は、第2の実施形態で示した例とは、特に送電共振機構及び受電共振機構の構成が異なる。
【0070】
ワイヤレス送電装置101は、第1スイッチ回路S1と、第2スイッチ回路S2と、送電共振キャパシタCrと、を備える。また、ワイヤレス送電装置101は、スイッチング素子Q5、ダイオードD5、インダクタLi及び中間キャパシタCiで構成される電圧変換回路12を備える。さらに、ワイヤレス送電装置101は、抵抗素子Ri及び電力管理回路39を備える。電力管理回路39はスイッチング素子Q1,Q2,Q5の制御を行う。電圧変換回路12は昇圧コンバータとして作用する。
【0071】
ワイヤレス送電コイルLpは、両端に給電されるコイルではなく、ヘリカル状コイルの中央に給電されるコイル(アンテナ)である。ワイヤレス送電コイルLpは寄生容量成分としての送電共振キャパシタCrを備える。このワイヤレス送電コイルLpと送電共振キャパシタCrとで送電共振機構PRが構成されている。
【0072】
ワイヤレス受電装置201は、ワイヤレス受電コイルLsと受電共振キャパシタCrsとによる受電共振機構SRと整流平滑回路とを備える。整流平滑回路は、第3スイッチ回路S3と、第4スイッチ回路S4と、平滑キャパシタCoとを備える。
【0073】
ワイヤレス受電コイルLsは、ヘリカル状コイルの中央に給電されるコイル(アンテナ)である。ワイヤレス受電コイルLsは寄生容量成分としての受電共振キャパシタCrsを備える。このワイヤレス受電コイルLsと受電共振キャパシタCrsとで受電共振機構SRが構成されている。
【0074】
その他の構成は第2の実施形態で示したとおりである。ワイヤレス送電装置101内の電力管理回路39は、抵抗素子Riの降下電圧に基づいて、上記電圧変換回路から上記送電回路へ入力される電流(中間入力電流)すなわち、電圧変換回路12からワイヤレス給電部120へ供給される電流を検出する。電力管理回路39は、中間入力電流の上限値を設定するので、中間入力電流が上限値を超えないように電圧変換回路12の出力電圧(中間キャパシタCiの電圧)が制御される。
【0075】
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、電圧変換回路、中間入力電流検出回路及び整流平滑回路等を具体的に表したワイヤレス給電システムについて例示する。
【0076】
図5は、第4の実施形態に係るワイヤレス給電システム304の構成を示す回路図である。この例は、第2の実施形態で示した例とは、特に整流平滑回路、送電共振機構及び受電共振機構の構成が異なる。ワイヤレス送電コイルLp、ワイヤレス受電コイルLsはいずれもループ状である。
【0077】
ワイヤレス給電システム304のワイヤレス送電装置101はD級コンバータ動作、ワイヤレス受電装置201は直列共振、倍電圧整流動作する回路である。送電側の構成は
図3に示した例と同じである。受電側には、ワイヤレス受電コイルLsに接続された受電共振キャパシタCrsを備える。ワイヤレス受電コイルLsと受電共振キャパシタCrsとは直列共振回路を構成している。整流平滑回路は、ダイオードD3及びキャパシタC3による第3スイッチ回路S3と、ダイオードD4及びキャパシタC4による第4スイッチ回路S4と、で構成されている。その他の構成は第2の実施形態で示したとおりである。
【0078】
ワイヤレス送電装置101内の電力管理回路39は、抵抗素子Riの降下電圧に基づいて、電圧変換回路12から送電回路へ入力される電流(中間入力電流)すなわち、電圧変換回路12からワイヤレス給電部120へ供給される電流を検出する。電力管理回路39は、中間入力電流の上限値を設定するので、中間入力電流が上限値を超えないように電圧変換回路12の出力電圧(中間キャパシタCiの電圧)が制御される。
【0079】
《第5の実施形態》
第5の実施形態では、電圧変換回路、中間入力電流検出回路及び整流平滑回路等を具体的に表したワイヤレス給電システムについて例示する。
【0080】
図6は、第5の実施形態に係るワイヤレス給電システム305の構成を示す回路図である。この例は、第2の実施形態で示した例とは、特にスイッチング回路の構成が異なる。
【0081】
ワイヤレス給電システム305のワイヤレス送電装置101はE級コンバータ動作し、ワイヤレス受電装置201は直列共振、E級整流動作する。
【0082】
ワイヤレス送電装置101は、等価的にスイッチング素子Q1、ダイオードDds1及びキャパシタCds1の並列接続回路で構成される第1スイッチ回路S1と、インダクタLfと、共振キャパシタCrとを備える。ワイヤレス送電コイルLpと共振キャパシタCrとで送電共振機構PRが構成されている。
【0083】
電力管理回路39は、第1スイッチング素子Q1を所定の動作周波数でスイッチングすることで、インダクタLf、共振キャパシタCr及びワイヤレス送電コイルLpによる共振回路に直流電圧を断続的に与えて、ワイヤレス送電コイルLpに共振電流を発生させる。
【0084】
ワイヤレス受電装置201は、ワイヤレス受電コイルLsと受電共振キャパシタCrsによる受電共振機構SRと整流平滑回路とを備える。整流平滑回路は、等価的に第3スイッチング素子Q3、ダイオードDds3及びキャパシタCds3の並列接続回路で構成される第3スイッチ回路S3と、インダクタLfsと、平滑キャパシタCoと、を備える。
【0085】
第3スイッチ回路S3は、ワイヤレス受電コイルLs、受電共振キャパシタCrs及びインダクタLfsによる受電共振回路に発生する電圧を整流し、平滑キャパシタCoはその電圧を平滑する。その他の構成は第2の実施形態で示したとおりである。
【0086】
ワイヤレス送電装置101内の電力管理回路39は、抵抗素子Riの降下電圧に基づいて、電圧変換回路12から送電回路へ入力される電流(中間入力電流)すなわち、電圧変換回路12からワイヤレス給電部120へ供給される電流を検出する。電力管理回路39は、中間入力電流の上限値を設定するので、中間入力電流が上限値を超えないように電圧変換回路12の出力電圧(中間キャパシタCiの電圧)が制御される。
【0087】
《第6の実施形態》
第6の実施形態では、電圧変換回路、中間入力電流検出回路及び整流平滑回路等を具体的に表したワイヤレス給電システムについて例示する。
【0088】
図7は、第6の実施形態に係るワイヤレス給電システム306の構成を示す回路図である。この例は、第2の実施形態で示した例とは、中間入力電流検出回路の構成が異なる。
【0089】
ワイヤレス給電システム306において、トランジスタTr1、抵抗素子Ri,R1,R2,R3,R4,R5及びキャパシタC4,C5によって中間入力電流検出回路が構成されている。この中間入力電流検出回路は、抵抗素子Riの降下電圧に応じて、抵抗素子R2,R3,R4およびトランジスタTr1による分圧回路の分圧比が変化し、その分圧電圧が電力管理回路39にフィードバックされる。この例であれば、トランジスタTr1によるゲインに応じて中間入力電流検出回路の検出分解能が高まる。
【0090】
抵抗素子R4,R5及びキャパシタC4,C5は帰還回路のフィルタを構成している。このフィルタの通過帯域はスイッチング素子Q1,Q2のスイッチング動作を制御する帰還回路における周波数の帯域を調整する。このフィルタによって、電圧変換回路12の出力電圧(中間キャパシタCiの電圧)を広い周波数帯域に対して安定して制御することができる。
【0091】
なお、キャパシタC6を設けていることにより、抵抗素子Riの降下電圧を補い、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング動作によるパルス電流の影響を、抵抗素子Riを流れる中間入力電流に及ぼさないようにすることができる。つまり、キャパシタC6により、抵抗素子Riを流れる中間入力電流を、スイッチング電流ではなく、直流電流の波形に近づけることができる。
【0092】
ワイヤレス送電装置101内の電力管理回路39は、抵抗素子Riの降下電圧に基づいて、電圧変換回路12から送電回路へ入力される電流(中間入力電流)すなわち、電圧変換回路12からワイヤレス給電部120へ供給される電流を検出する。電力管理回路39は、中間入力電流の上限値を設定するので、中間入力電流が上限値を超えないように電圧変換回路12の出力電圧(中間キャパシタCiの電圧)が制御される。
【0093】
《第7の実施形態》
第7の実施形態では、これまでに示した電圧変換回路12とは構成の異なる電圧変換回路について例示する。本実施形態では、入力電源を電圧変換する電圧変換回路が、出力電圧を検出して出力電圧を負帰還制御する負帰還制御回路を備えたDC-DCコンバータで構成されている。また、このDC-DCコンバータは絶縁形コンバータである。
【0094】
図8は、第7の実施形態に係る、ワイヤレス送電装置が備える電圧変換回路の回路図である。
図8において、入力電源ViとトランスTの一次コイルとの間にスイッチング素子Q5が接続されている。トランスTの二次コイルにはダイオードD6及び中間キャパシタCiが接続されている。トランスTの一次コイルと二次コイルとの結合極性は図中に示すとおりである。
図8に示す構成により、フライバックコンバータが構成されている。
【0095】
図9は、第7の実施形態に係る、ワイヤレス送電装置が備える電圧変換回路の別の回路図である。
図9において、入力電源ViとトランスTの一次コイルとの間にスイッチング素子Q5が接続されている。また、トランスTの一次コイルには、キャパシタC8及び抵抗素子R8の並列回路とダイオードD8との直列回路が接続されている。トランスTの二次コイルにはダイオードD6,D7、インダクタLi及び中間キャパシタCiが接続されている。トランスTの一次コイルと二次コイルとの結合極性は図中に示すとおりである。
図9に示す構成により、フォワードコンバータが構成されている。
【0096】
本実施形態で示すように、絶縁型DC-DCコンバータを用いることにより、入出力間で電気絶縁が得られる。そのため、利用者の感電の防止、伝導電磁雑音の低減などの効果を奏する。特に、フライバックコンバータは、部品点数が少なくて済み、小型化に適する。
【0097】
《第8の実施形態》
第8の実施形態では、これまでに示した電圧変換回路12とは構成の異なる電圧変換回路について例示する。本実施形態では、入力電源を電圧変換する電圧変換回路が、出力電圧を検出して出力電圧を負帰還制御する負帰還制御回路を備えたシリーズレギュレータで構成されている。
【0098】
図10は、第8の実施形態に係る、ワイヤレス送電装置が備える電圧変換回路の回路図である。
図10において、入力電源Viと出力部との間にトランジスタQ6がシリーズに接続されている。このトランジスタQ6のコレクタと基準電位との間に、抵抗素子R1とツェナーダイオードZDとの直列回路が設けられている。トランジスタQ6のエミッタと基準電位との間には抵抗素子R2が接続されている。そして、ツェナーダイオードZDの電圧がトランジスタQ6のベースに印加されるように、ツェナーダイオードZDがトランジスタQ6のベースに接続されている。この電圧変換回路の出力部に中間キャパシタCiが接続されている。
【0099】
図11は、第8の実施形態に係る、ワイヤレス送電装置が備える電圧変換回路の別の回路図である。
図11において、入力電源Viと出力部との間にトランジスタQ6がシリーズに接続されている。このトランジスタQ6のコレクタと基準電位との間に、抵抗素子R3,R4による分圧回路、基準電圧回路E及び誤差増幅器EAによる負帰還回路が構成されている。誤差増幅器EAの出力部はトランジスタQ6のベース電流を引き込む。この電圧変換回路の入力部にキャパシタC9が接続されていて、出力部には中間キャパシタCiが接続されている。
【0100】
このように、シリーズレギュレータを用いることにより、小さな回路規模で、圧調整を行うことができる。また、DC-DCコンバータよりも部品数は少ないので、回路を小型化できる。
【0101】
《第9の実施形態》
第9の実施形態では、これまでに示した入力電源とは構成の異なる入力電源について例示する。本実施形態では、電圧変換回路12への入力電源が直流電圧源である。
【0102】
図12は第9の実施形態に係る入力電源Viの回路図である。入力電源Viは、商用交流電源を整流するダイオードブリッジ回路DB、キャパシタC10、トランスT、スイッチング素子Q9、ダイオードD6及びキャパシタC11を備える。
【0103】
ダイオードブリッジ回路DB及びキャパシタC10による整流平滑回路の出力とトランスTの一次コイルとの間にスイッチング素子Q9が接続されている。帰還経路絶縁素子2は絶縁状態で、電圧変換回路12の出力電圧を検出する。制御IC1は入力電源Viの出力電圧が所定電圧になるようにスイッチング素子Q9をスイッチング制御する。
【0104】
《第10の実施形態》
第10の実施形態では、これまでに示した入力電源とは構成の異なる入力電源について例示する。本実施形態では、電圧変換回路12への入力電源が直流電流源である。
【0105】
図13は第10の実施形態に係る入力電源Viの回路図である。入力電源Viは、キャパシタC10、スイッチング素子Q11,Q12,Q13,Q14、トランスT、ダイオードD9,D10、インダクタL6及びキャパシタC11を備える。
【0106】
上記スイッチング素子Q11,Q12,Q13,Q14、トランスT、ダイオードD9,D10、インダクタL6及びキャパシタC11によってフルブリッジ形のDC-DCコンバータが構成されている。スイッチング素子Q11,Q12,Q13,Q14にはスイッチング制御回路が接続されていて、このスイッチング制御回路はDC-DCコンバータの出力電流を一定に制御する。この構成により、DC-DCコンバータは直流電流源として作用する。
【0107】
最後に、本発明は上述した実施形態に限られるものではない。当業者によって適宜変形及び変更が可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変形及び変更が含まれる。
【0108】
例えば、電圧変換回路には、出力電圧を検出して電圧信号を帰還し、その帰還電位を基準値と比較して、スイッチング素子を駆動するパルス幅を調整して、出力電圧を所定の一定値に制御する、降圧コンバータ、昇圧コンバータ以外に、昇降圧コンバータや絶縁コンバータなど様々なコンバータを利用することができる。
【0109】
また、中間電流の検出のために、
図7に示したようなトランジスタを用いる以外に、コンパレータやオペアンプを用いてもよい。
【0110】
また、電力管理回路はアナログ回路やデジタル回路に限らず、アナログ回路とデジタル回路とを併用して構成してもよい。
【符号の説明】
【0111】
C3,C4,C5,C6,C8…キャパシタ
Cds1,Cds2,Cds3,Cds4…キャパシタ
Ci…中間キャパシタ
Co…平滑キャパシタ
Cr…送電共振キャパシタ
Crs…受電共振キャパシタ
D3,D4,D5,D6,D8,D9,D10…ダイオード
DB…ダイオードブリッジ回路
Dds1,Dds2,Dds3…ダイオード
E…基準電圧回路
EA…誤差増幅器
Lf,Lfs,Li,L6…インダクタ
Lp…ワイヤレス送電コイル
Ls…ワイヤレス受電コイル
PR…送電共振機構
Q1…第1スイッチング素子
Q2…第2スイッチング素子
Q3…第3スイッチング素子
Q5…スイッチング素子
Q6…トランジスタ
Q9,Q11,Q12,Q13,Q14…スイッチング素子
Ri,R1,R2,R3,R4,R5,R8…抵抗素子
Ro…負荷
S1…第1スイッチ回路
S2…第2スイッチ回路
S3…第3スイッチ回路
S4…第4スイッチ回路
SR…受電共振機構
T…トランス
Tr1…トランジスタ
Vi…入力電源
ZD…ツェナーダイオード
1…制御IC
2…帰還経路絶縁素子
12…電圧変換回路
21…入力フィルタ
22…電流検出回路
23…復調回路
25…ドライバー
26…送電回路
27…EMIフィルタ
28…共振調整回路
30…MPU
31…電圧レギュレータ回路
32…発振器
33…過電圧保護回路
34…温度検出回路
35…過電流検知回路
36…過電力検知回路
39…電力管理回路
50…MPU
51…受電共振調整回路
52…整流平滑回路
53…電圧安定化回路
54…過電力保護回路
55…発振器
56…電圧レギュレータ回路
57…過電圧保護回路
58…変調回路
59…電力管理回路
61…受電電圧検出回路
62…温度検出回路
101…ワイヤレス送電装置
120…ワイヤレス給電部
201…ワイヤレス受電装置
301A,301B,302,303,304,305,306…ワイヤレス給電システム