(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】アレーアンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/52 20060101AFI20241008BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20241008BHJP
H01Q 15/14 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H01Q1/52
H01Q1/38
H01Q15/14 Z
(21)【出願番号】P 2022541485
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2021028071
(87)【国際公開番号】W WO2022030351
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2024-01-22
(31)【優先権主張番号】P 2020131525
(32)【優先日】2020-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三木 祐太郎
(72)【発明者】
【氏名】山岸 傑
(72)【発明者】
【氏名】桑山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 大輔
(72)【発明者】
【氏名】曽根 康介
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-014190(JP,A)
【文献】特表2009-540691(JP,A)
【文献】特開2007-243375(JP,A)
【文献】特開2011-045036(JP,A)
【文献】特開2013-089992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/52
H01Q 1/38
H01Q 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナ素子と、
基準電位を有するグランドと、
前記複数のアンテナ素子と前記グランドとの間に設けられた誘電体であって、前記複数のアンテナ素子から前記グランドまでの間の電気長が0.03以上である前記誘電体と、
少なくとも前記複数のアンテナ素子間に設けられ、各アンテナ素子から放射された電波を遮蔽するよう構成された遮蔽構造と、
を備えるアレーアンテナ。
【請求項2】
複数のアンテナ素子は、第1方向に並んで配置された第1アンテナ素子及び第2アンテナ素子を有し、
前記遮蔽構造は、第1領域と、第2領域と、第3領域と、を有し、
前記第1領域は、前記第1アンテナ素子と前記第2アンテナ素子との間に設けられ、
前記第2領域は、前記第1方向と直交する第2方向へ向けて、前記第1領域から延設され、
前記第3領域は、前記第2領域から前記第1方向と平行に延設されており、前記第1アンテナ素子及び前記第2アンテナ素子の周辺に位置する
請求項1に記載のアレーアンテナ。
【請求項3】
前記遮蔽構造は、複数のアンテナ素子に含まれる少なくとも一つのアンテナ素子の全周を囲むように設けられている
請求項1又は2に記載のアレーアンテナ。
【請求項4】
前記遮蔽構造は、複数のアンテナ素子それぞれのアンテナ素子の全周を囲むように設けられている
請求項1又は請求項2に記載のアレーアンテナ。
【請求項5】
複数のアンテナ素子の間隔は、1.5λ(λは、前記電波の自由空間波長)以下である
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のアレーアンテナ。
【請求項6】
前記遮蔽構造は、複数の単位セルが、周期的に配列された構造を有する
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のアレーアンテナ。
【請求項7】
前記単位セルは、六角形セルである
請求項6に記載のアレーアンテナ。
【請求項8】
前記誘電体は、前記複数のアンテナ素子から前記グランドまでの間の物理長が、3mm以下である
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のアレーアンテナ。
【請求項9】
前記誘電体は、前記複数のアンテナ素子から前記グランドまでの間の物理長が、0.01mm以上である
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のアレーアンテナ。
【請求項10】
前記電波の周波数は、20GHz以上である
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のアレーアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アレーアンテナに関する。本出願は、2020年8月3日出願の日本出願第2020-131525号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
第5世代移動通信システム(5G)は、高速、大容量、かつ低遅延での通信を可能にする。5Gでは、準ミリ波帯である28GHz帯域が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-58585号公報
【文献】特開2013-183082号公報
【文献】特開2012-70237号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様に係るアレーアンテナは、複数のアンテナ素子と、グランドと、前記複数のアンテナ素子と前記グランドとの間に設けられた誘電体であって、前記複数のアンテナ素子から前記グランドまでの間の電気長が0.03以上である前記誘電体と、少なくとも前記複数のアンテナ素子間に設けられ、各アンテナ素子から放射された電波を遮蔽するよう構成された遮蔽構造と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図2】
図2は、アレーアンテナのII-II線断面図である。
【
図3】
図3は、アレーアンテナのIII-III線断面図である。
【
図4】
図4は、アンテナ素子のE面指向性を示すグラフである。
【
図6】
図6は、EBGが有する領域の説明図である。
【
図7】
図7は、第2アンテナ素子の指向性を示す特性図である。
【
図8】
図8は、第2アンテナ素子の指向性を示す特性図である。
【
図9】
図9は、第2アンテナ素子の指向性を示す特性図である。
【
図10】
図10は、第2アンテナ素子の指向性を示す特性図である。
【
図11】
図11は、第2アンテナ素子の指向性を示す特性図である。
【
図12】
図12は、第2アンテナ素子の指向性を示す特性図である。
【
図13】
図13は、第2アンテナ素子の指向性を示す特性図である。
【
図16】
図16は、第2アンテナ素子の指向性を示す特性図である。
【
図17】
図17は、第2アンテナ素子の指向性を示す特性図である。
【
図18】
図18は、第2アンテナ素子の指向性を示す特性図である。
【
図19】
図19は、第2アンテナ素子の指向性を示す特性図である。
【
図20】
図20は、第2アンテナ素子の指向性を示す特性図である。
【
図21】
図21は、第2アンテナ素子の指向性を示す特性図である。
【
図22】
図22は、第2アンテナ素子の指向性を示す特性図である。
【
図23】
図23は、第2アンテナ素子の指向性を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
<本開示が解決しようとする課題>
アレーアンテナは、例えば、ビームフォーミングに用いられる。ビームフォーミングによって、通信相手へのビームの指向性を高めることができる。
【0007】
本発明者らは、準ミリ波帯又はミリ波帯のような高い周波数が使用される場合、準ミリ波帯又はミリ波帯よりも低い周波数、例えば2GHz程度の周波数、が使用される場合に比べて、アレーアンテナを構成する各アンテナ素子の指向性がランダムに異なるため、アレーアンテナから放射されるビームが、方向によって乱れ易いことを、新たに見出した。すなわち、準ミリ波帯又はミリ波帯のような高い周波数が使用される場合、アレーアンテナから放射されるビームは、方向に依存した不均一性を持つ。また、各アンテナ素子の指向性が異なると、各アンテナ素子の指向性が同一である場合に比べて、合成利得も下がる。
【0008】
ビームが不均一性を持つと、ビームの方向によって通信性能が低下するおそれがある。したがって、アレーアンテナによって形成されるビームの均一性を確保することが望まれる。
【0009】
<本開示の効果>
本開示によれば、アレーアンテナによって形成されるビームの均一性を確保することができる。
【0010】
<本開示の実施形態の概要>
以下、本開示の実施形態の概要を列記して説明する。
【0011】
(1)実施形態に係るアレーアンテナは、複数のアンテナ素子と、グランドと、前記複数のアンテナ素子と前記グランドとの間に設けられた誘電体と、を備える。なお、誘電体は、例えば、固体である誘電体基板によって構成される。ただし、誘電体は、空気などの気体であってもよい。
【0012】
実施形態に係る誘電体は、前記複数のアンテナ素子から前記グランドまでの間の電気長が0.03以上である。実施形態に係るアレーアンテナは、少なくとも前記複数のアンテナ素子間に設けられ、各アンテナ素子から放射された電波を遮蔽するよう構成された遮蔽構造を備える。誘電体の電気長が0.03以上になるほどに周波数が高くなっても、遮蔽構造によって、アレーアンテナによって形成されるビームの均一性を確保することができる。
【0013】
(2)複数のアンテナ素子は、第1方向に並んで配置された第1アンテナ素子及び第2アンテナ素子を有し、前記遮蔽構造は、第1領域と、第2領域と、第3領域と、を有し、前記第1領域は、前記第1アンテナ素子と前記第2アンテナ素子との間に設けられ、前記第2領域は、前記第1方向と直交する第2方向へ向けて、前記第1領域から延設され、前記第3領域は、前記第2領域から前記第1方向と平行に延設されており、前記第1アンテナ素子及び前記第2アンテナ素子の周辺に位置するのが好ましい。この場合、ビームの均一性をより高めることができる。
【0014】
(3)前記遮蔽構造は、複数のアンテナ素子に含まれる少なくとも一つのアンテナ素子の全周を囲むように設けられているのが好ましい。この場合、ビームの均一性をさらに高めることができる。
【0015】
(4)前記遮蔽構造は、複数のアンテナ素子それぞれのアンテナ素子の全周を囲むように設けられているのが好ましい。この場合、ビームの均一性をさらに高めることができる。
【0016】
(5)複数のアンテナ素子の間隔は、1.5λ(λは、前記電波の自由空間波長)以下であるのが好ましい。この場合、アレーアンテナとしての適切なアンテナ素子間隔が得られる。
【0017】
(6)前記遮蔽構造は、複数の単位セルが、周期的に配列された構造を有するのが好ましい。この場合、効果的に電波を遮蔽できる。
【0018】
(7)前記単位セルは、六角形セルであるのが好ましい。この場合、電波の遮蔽がより確実になる。
【0019】
(8)前記誘電体は、前記複数のアンテナ素子から前記グランドまでの間の物理長が、3mm以下であるのが好ましい。この場合、誘電体を十分に薄くでき、例えばフレキシブル基板として構成されている場合、誘電体の柔軟性が高まる。
【0020】
(9)前記誘電体は、前記複数のアンテナ素子から前記グランドまでの間の物理長が、0.01mm以上であるのが好ましい。前記複数のアンテナ素子から前記グランドまでの間の物理長が、0.01mm以上あることで、帯域を確保することができる。
【0021】
(10)前記電波の周波数は、20GHz以上であるのが好ましい。この場合、周波数が高いため、ビームの均一性が乱れ易いが、遮蔽構造によって、ビームの均一性を確保することができる。
【0022】
<本開示の実施形態の詳細>
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0023】
図1から
図3は、実施形態に係るアレーアンテナ10を示している。実施形態に係るアレーアンテナ10は、例えば、車両などの移動体に搭載された移動局が備える。移動局は、基地局との間で無線通信をする。無線通信は、例えば、第5世代移動通信システム(5G)を用いた通信である。移動局は、ビームフォーミングによって、移動しながら基地局へビームを集中させることができる。
【0024】
アレーアンテナ10は、複数のアンテナ素子11,12,13,14を備える。アレーアンテナ10は、例えば、ビームフォーミングに用いられる。アレーアンテナ10は、ビームフォーミング以外に、利得合成に用いられてもよい。なお、ビームフォーミングは、アナログビームフォーミングであってもよいし、デジタルビームフォーミングであってもよい。アナログビームフォーミングは、移相器を用いて各アンテナ素子における電波の位相をアナログ的に異ならせて、ビーム方向を変更する方式である。デジタルビームフォーミングは、各アンテナ素子における位相・振幅をデジタル的に合成する方式である。
図1において、アレーアンテナ10は、X方向に間隔をおいて一次元配列された4個のアンテナ素子11,12,13,14を備える。以下では、
図1に示すアレーアンテナ10は、X方向を水平方向にし、X方向に直交するY方向を垂直方向にして用いられるものとする。複数のアンテナ素子は、XY平面において、二次元配列されていてもよい。なお、
図1において、Z方向は、アレーアンテナ10の厚さ方向である。
【0025】
実施形態に係る複数のアンテナ素子11,12,13,14は、等間隔に配置されている。複数のアンテナ素子11,12,13,14の隣り合う間隔の上限は、例えば、1.5λ(λは、アンテナ素子から放射される電波の自由空間波長)であり、1.0λであるのが好ましく、0.8λであるのがより好ましい。複数のアンテナ素子11,12,13,14の間隔の下限は、例えば、0.6λであり、0.7λであるのが好ましい。複数のアンテナ素子11,12,13,14の間隔は、一例として、0.75λである。複数のアンテナ素子11,12,13,14の隣り合う間隔は、前述の複数の上限から選択される一つの上限以下であって、前述の複数の下限から選択される一つの下限以上の範囲において設定されるのが好ましい。
【0026】
複数のアンテナ素子11,12,13,14の間隔は、アレー合成したときにグレーティングローブの発生が抑えられており、アンテナ素子11,12,13,14間に、後述の遮蔽構造50が配置できる程度の大きさが好ましい。
【0027】
実施形態に係るアレーアンテナ10が放射する電波は、比較的高い周波数を持つ。アレーアンテナ10が放射する電波は、準ミリ波帯又はミリ波帯であるのが好ましい。より具体的には、アレーアンテナ10が放射する電波の周波数の下限は、例えば、3GHzであり、より好ましくは、5GHzであり、さらに好ましくは、10GHzである。高い周波数では広い周波数帯域幅を使用することができるため、アレーアンテナ10が放射する電波の周波数が高いことで、高速通信が可能になる。アレーアンテナ10が放射する電波の周波数の下限は、準ミリ波帯又はミリ波帯であるという観点からは、さらに好ましくは、20GHzであり、さらに好ましくは、24GHzである。
【0028】
アレーアンテナ10が放射する電波の周波数の上限は、特に限定されないが、例えば、300GHzであり、好ましくは200GHzであり、より好ましくは100GHzであり、さらに好ましくは、50GHzである。アレーアンテナ10が放射する電波の周波数は、前述の複数の上限から選択される一つの上限以下であって、前述の複数の下限から選択される一つの下限以上の範囲において設定されるのが好ましい。
【0029】
なお、以下の説明では、アレーアンテナ10が放射する電波の周波数は、第5世代移動通信システムのための28GHz帯であるものとする。
【0030】
図2及び
図3に示すように、実施形態に係るアレーアンテナ10は、複数のアンテナ素子11,12,13,14が設けられた上面(第1面)と、グランド20が設けられた下面(第2面)と、を有する第1誘電体層31を備える。グランド20は、基準電位を有する部分である。
【0031】
実施形態に係るアレーアンテナ10は、平面アンテナとして構成されている。平面アンテナは、誘電体基板の一面に形成されたアンテナ素子と、誘電体基板の他面に形成されたグランドと、を備える構造である。すなわち、実施形態に係るアンテナ素子11,12,13,14、第1誘電体層31、及びグランド20は、平面アンテナを構成している。図示の平面アンテナは、一例として、パッチアンテナとして構成されている。パッチアンテナは、マイクロストリップアンテナとも呼ばれる。
【0032】
実施形態に係るアレーアンテナ10は、第2誘電体層32を備える。第2誘電体層32は、第1誘電体層31との間にグランド20を挟むように設けられている。すなわち、第2誘電体層32の上面(第1面)には、グランド20が設けられている。第2誘電体層32において、グランド20とは反対側の下面(第2面)には、アンテナ素子11,12,13,14への給電線となるマイクロストリップ線路25が設けられている。マイクロストリップ線路25とアンテナ素子11,12,13,14とは、ビア26によって接続されている。ビア26は、マイクロストリップ線路25とアンテナ素子11,12,13,14とを導通させる。ビア26は、内部が中空のスルーホールとして形成されていてもよいし、内部が合成樹脂又は金属体によって充実されていてもよい。なお、複数のアンテナ素子11,12,13,14それぞれには、水平偏波(H偏波)及び垂直偏波(V偏波)の両方が入力される。なお、アンテナ素子11,12,13,14への給電線は、第1誘電体層31の上面(第1面)に設けられていてもよい。すなわち、アンテナ素子11,12,13,14と、その給電線とは、同じ面に設けられていてもよい。この場合、後述の遮蔽構造50は、給電線を避けて配置される。
【0033】
実施形態に係るアレーアンテナ10は、各アンテナ素子11,12,13,14から放射された電波を遮蔽するよう構成された遮蔽構造50を備える。実施形態に係る遮蔽構造50は、アンテナ素子11,12,13,14から放射された電波の周波数を含む周波数帯域を遮断する周期構造を有する。遮蔽構造50は、例えば、
図1から
図3に示される電磁バンドギャップ(EBG)構造である。
図1に示すように、遮蔽構造50は、各アンテナ素子11,12,13,14は、複数のアンテナ素子11,12,13,14それぞれの全周を囲むように設けられている
【0034】
図2及び
図3に示す遮蔽構造50(EBG構造)は、第1誘電体層31の上面(第1面)に形成された複数の単位セル51と、各単位セル51をグランド20と接続するビア52と、を備える。単位セル51は銅等の導体である。例えば、単位セル51は、Z方向視において六角形の板である。
図2及び
図3のように、単位セル51とビア
52とを備えるEBG構造をマッシュルーム構造という。なお、遮蔽構造50として、特許文献1,2に示すようにビア
52が省略されたビアレスEBG構造を採用してもよい。
【0035】
複数の単位セル51は、ギャップGを介して、周期的に配列されている。
図1に示す単位セル51は、正六角形であるのが好ましいが、後述のように正方形であってもよい。単位セル51間のギャップは、均一であるのが好ましい。また、アンテナ素子11,12,13,14と遮蔽構造50との上下(Y方向)及び左右(X方向)の間隔は偏りがほぼなく均等であるのが好ましい。
【0036】
複数の単位セル51の配列中には、アンテナ素子11,12,13,14を配置するための複数の単位セル非配置領域が形成されている。アンテナ素子11,12,13,14は、単位セル非配置領域中に配置されている。アンテナ素子11,12,13,14が単位セル非配置領域中に配置されていることで、遮蔽構造50は、複数のアンテナ素子11,12,13,14それぞれの全周を囲んでいる。この結果、遮蔽構造50は、複数のアンテナ素子11,12,13,14間に設けられている。
【0037】
パッチアンテナなどの平面アンテナでは、アンテナ素子から放射された電波が、グランドを伝搬する表面波モードが発生する。実施形態に係る遮蔽構造50は、アンテナ素子11,12,13,14から放射された表面波の伝搬を抑制する。
【0038】
複数のアンテナ素子11,12,13,14間に存在する遮蔽構造50は、複数のアンテナ素子11,12,13,14が並んでいる方向であるX方向において、少なくとも1個の単位セル51を有するのが好ましく、
図1に示すように、X方向において2個の単位セル51を有するのが好ましい。X方向に少なくとも2個の単位セルが存在することで、X方向に少なくとも1個のギャップGが存在することになり、X方向への表面波の伝搬の抑制効果が高まる。また、複数のアンテナ素子11,12,13,14間に存在する遮蔽構造50は、X方向に直交するY方向において、少なくとも1個、好ましくは
図2に示すように2個の単位セルを有するのが好ましい。Y方向に少なくとも2個の単位セルが存在することで、Y方向に少なくも1個のギャップGが存在することになり、Y方向への表面波の伝搬の抑制効果が高まる。
【0039】
実施形態に係るアレーアンテナ10は、例えば、リジッド基板に形成される。アレーアンテナ10は、フレキシブル基板に形成されていてもよい。アレーアンテナ10が形成される基板が薄いと柔軟性が増す。基板の素材は、誘電体であれば特に限定されない。
【0040】
第1誘電体層31及び第2誘電体層32は、ポリイミドなどの誘電体によって構成されている。誘電体は、例えば、液晶ポリマー、PPE樹脂又はフッ素樹脂であってもよい。なお、第1誘電体層31及び第2誘電体層32は、曲げ変形を可能にする場合には、薄いフィルム状部材として構成される。
【0041】
第1誘電体層31は、グランド20とアンテナ素子11,12,13,14との間にあるため、アレーアンテナ10の特性に大きく影響を与える。
【0042】
フィルム状の第1誘電体層31の物理長としての厚さ(Z方向長さ)の上限は、例えば、3mmであり、より好ましくは2mmであり、さらに好ましくは、1.5mmであり、さらに好ましくは1mmであり、さらに好ましくは、0.5mmである。この程度に第1誘電体層31を薄くすることで、柔軟性を確保できる。
【0043】
第1誘電体層31の物理長としての厚さ(Z方向長さ)の下限は、例えば、0.01mmであり、より好ましくは0.05mmであり、さらに好ましくは0.1mmであり、さらに好ましくは、0.2mmであり、さらに好ましくは0.3mmである。第1誘電体層31の厚さを前述の下限よりも大きくすることで、第1誘電体層31の厚さを比較的大きくすることができ、広い通信帯域を確保することができ有利である。なお、第1誘電体層31の物理長としての厚さは、前述の複数の上限から選択される一つの上限以下であって、前述の複数の下限から選択される一つの下限以上の範囲において設定されるのが好ましい。
【0044】
第1誘電体層31の比誘電率は、1以上であれば特に限定されないが、比誘電率の上限は、例えば、10であり、より好ましくは5である。第1誘電体層31の比誘電率は、1から5までの範囲にあるのが好ましく、1.5から4.5までの範囲にあるのがより好ましい。
【0045】
第1誘電体層31の電気長としての厚さ、すなわち、複数のアンテナ素子11,12,13,14からグランド20までの間の電気長は、0.03以上であるのが好ましい。複数のアンテナ素子11,12,13,14からグランド20までの間の電気長の下限は、0.05であるのがより好ましく、0.1であるのがさらに好ましく、0.15であるのがさらに好ましい。
【0046】
複数のアンテナ素子11,12,13,14からグランド20までの間の電気長の上限は、1であるのが好ましく、0.7であるのがより好ましく、0.5であるのがさらに好ましく、0.3であるのがさらに好ましく、0.2であるのがさらに好ましい。複数のアンテナ素子11,12,13,14からグランド20までの間の電気長は、前述の複数の上限から選択される一つの上限以下であって、前述の複数の下限から選択される一つの下限以上の範囲において設定されるのが好ましい。
【0047】
ここで、電気長は、第1誘電体層31の厚さ(物理長)t、真空波長λ0、比誘電率εrによって定義され、以下の式(1)によって示されるように、真空波長λ0に対する第1誘電体層31の厚さtの比として算出される。
電気長=(t/λ0)×√εr ・・・(1)
【0048】
電気長は、第1誘電体層31の厚さtが大きくなれば、増大する。また、電気長は、第1誘電体層31の厚さtが同じであっても、比誘電率が大きくなると増加する。また、電気長は、第1誘電体層31の厚さtが同じであっても、波長が短くなれば増大する。
【0049】
例えば、アレーアンテナ10から放射される電波の周波数が28GHzであり、第1誘電体層31の厚さtが0.5mmであり、第1誘電体層31の比誘電率が3.6である場合(ケース1:t=0.5mm)、第1誘電体層31の電気長(複数のアンテナ素子11,12,13,14からグランド20までの間の電気長)は、0.0886となり、0.03以上の値となる。光速を299792458m/sとすると、周波数が28GHzである電波の真空波長λ0は、10.7mmである。
【0050】
一方、第1誘電体層31の厚さtを0.1mmまで薄くし、その他は上記と同じ条件とした場合(ケース2:t=0.1mm)、第1誘電体層31の電気長(複数のアンテナ素子11,12,13,14からグランド20までの間の電気長)は、0.0177となり、0.03未満の値となる。
【0051】
ケース1及びケース2それぞれのアレーアンテナ10において電圧定在波比(VSWR)を求めたところ、ケース1のほうが広帯域性を有していることが確認された。すなわち、ケース1では、VSWRが1.5未満となる周波数範囲が、28GHzを中心周波数として1G[Hz]の範囲であったのに対して、ケース2では、0.22G[Hz]であった。VSWRが1.5未満となる比帯域(中心周波数比)は、ケース1では、3.6%であり広帯域であるのに対して、ケース2では、0.79%であり十分な帯域が確保できない。また、VSWRが2未満となる比帯域(中心周波数比)は、ケース1では、6.1%であるのに対して、ケース2では、1.4%であった。
【0052】
このように、フレキシブル性を確保するために薄い第1誘電体層31を用いるとしても、広帯域を確保するには、第1誘電体層31の厚さはできるだけ大きいほうが好ましい。本発明者らの検証によれば、第1誘電体層31の厚さは、広帯域を確保するという観点からは、電気長で0.03以上であるのが好ましい。
【0053】
さて、前述のように、本発明者らは、準ミリ波帯又はミリ波帯のような高い周波数が使用される場合、準ミリ波帯又はミリ波帯よりも低い周波数、例えば2GHz程度の周波数、が使用される場合に比べて、アレーアンテナから放射されるビームが、方向によって乱れ易いことを、新たに見出した。
【0054】
本発明者らは、ビームの不均一性が、各アンテナ素子11,12,13,14から放射された電波が、表面波モードによってグランド20を伝搬しているために生じていることを見出した。各アンテナ素子11,12,13,14から生じた電波は、通信相手に向けて放射されるだけでなく、表面波モードによって、アンテナ素子11,12,13,14の背後に配置されたグランド20の表面を伝搬する。表面波モードによって、あるアンテナ素子12から放射された電波は、他のアンテナ素子11,13,14に到達し、素子間結合が生じる。また、グランド端部からの電波の不要放射が生じる。この結果、各アンテナ素子の指向性が乱れる。また、各アンテナ素子の指向性の乱れ方は、アンテナ素子毎に異なる。このため、アレーアンテナによって形成されるビームが乱れることになる。
【0055】
このようなビームの乱れは、準ミリ波帯又はミリ波帯よりも低い周波数、例えば2GHz程度の周波数、が用いられるアレーアンテナにおいては、従来、問題にならなかった。しかし、準ミリ波帯又はミリ波帯程度に周波数が高くなると、表面波による電波の伝搬が生じ易くなり、ビームの乱れが生じる。
【0056】
つまり、アンテナ素子とグランドとの間に設けられた誘電体の厚さの物理長が同じであっても、電波の周波数が高くなり波長が短い場合、誘電体の電気長が大きくなる。誘電体の電気長が大きくなると、表面波による電波の伝搬が生じ易くなる。
【0057】
例えば、第1誘電体層31の厚さ(物理長)tが0.3mmであり、第1誘電体層31の比誘電率が2である場合において、周波数が2GHz(真空波長λ0=149.9mm)であると、第1誘電体層31の物理長が非常に薄いことも相まって、第1誘電体層31の厚さの電気長は、わずか0.0028である。一方、同じ第1誘電体層31であっても、周波数が28GHz(真空波長λ0=10.7mm)であると、第1誘電体層31の厚さの電気長は、0.0396となり大きくなる。
【0058】
このように、誘電体の電気長が0.03以上になる程度に、アンテナ素子11,12,13,14から放射される電波の周波数が高くなると、誘電体の電気長が大きいために、表面波による電波の伝搬が生じ易くなる。このため、各アンテナ素子の指向性が乱れる。この結果、アレーアンテナによって形成されるビームの均一性が損なわれる。
【0059】
なお、ビームの均一性を確保するには、各アンテナ素子11,12,13,14の指向性が左右対称であって乱れがないこと、各アンテナ素子11,12,13,14の指向性(振幅・位相)及び利得が揃っていること、及び、各アンテナ素子間のアイソレーションが十分にとれていること、が望まれる。前2者は、表面波モードによって特に乱れ易い。
【0060】
図4は、単一のアンテナ素子11のE面指向性(H偏波、水平面指向性)と第1誘電体層31の厚さtとの関係を示している。ここで、H偏波は、水平偏波であり、水平方向は、
図1におけるX方向である。水平面指向性は、
図1におけるXZ平面(水平面)における指向性である。なお、遮蔽構造50は存在しない。
図4では、厚さtを、1mm、0.5mm、0.1mmの3種類とした。電波の周波数は、28GHzであり、第1誘電体層31の比誘電率は3.6とした。t=0.5mmは前述のケース1に相当し、t=0.1mmはケース2に相当する。
【0061】
t=0.1mmの場合、第1誘電体層31が比較的薄いため、周波数が28GHzと高くても、指向性の乱れはほとんどない。これに対して、t=0.5mmになると、ピーク付近に乱れが生じ、t=1mmになると、左右非対称性も生じている。
【0062】
このように、周波数が高くなると、アンテナ素子11の指向性は、第1誘電体層31の厚さが大きくなると乱れる。すなわち、アンテナ素子11の指向性の乱れは、第1誘電体層31の厚さが、電波の波長に対して大きくなる場合に発生することが判明した。
【0063】
上記の問題に対して、実施形態に係るアレーアンテナ10では、複数のアンテナ素子11,12,13,14間に設けられた遮蔽構造50によって、アンテナ素子11,12,13,14間の電波の伝搬が抑制され、各アンテナ素子11,12,13,14の指向性が乱れるのを防止できる。したがって、アレーアンテナによって形成されるビームの均一性を確保することができる。
【0064】
図5から
図13は、遮蔽構造
50による指向性乱れの改善効果を検証した結果を示している。ここでは、No.1-1,1-2,1-3,1-4,1-5の5種類のアレーアンテナ10についてシミュレーションを行った。シミュレーションでは、第2アンテナ素子12の指向性を求めた。周波数は、28GHzとした。また、第1誘電体層31の厚さtは0.5mmとし、第1誘電体層31の比誘電率は3.6とした。
【0065】
No.1-5は、
図1から
図3に示すアレーアンテナ10と同様であり、全てのアンテナ素子11,12,13,14の周囲に遮蔽構造50が設けられている。
【0066】
No.1-4は、アンテナ素子12の周囲において、
図6に示す第1領域E1,第2領域E2,及び第3領域E3に、遮蔽構造50を配置したものである。第1領域E1は、X方向(第1方向)に並んで配置された第1アンテナ素子11と第2アンテナ素子12との間に配置されている。また、第1領域E1は、X方向(第1方向)に並んで配置された第2アンテナ素子12と第3アンテナ素子13との間に配置されている。
【0067】
第2領域E2は、X方向(第1方向)と直交するY方向(第2方向)へ向けて、第1領域E1から延設されている。第2領域E2は、第1領域E1のY方向両側に配置されている。
【0068】
第3領域E3は、第2領域E2からX方向(第1方向)と平行に延設されており、第1アンテナ素子11、第2アンテナ素子12、及び第3アンテナ素子13(並びに第4アンテナ素子14)の周辺に位置する。第3領域E3は、複数の第2領域E2の間に配置されている。
【0069】
No.1-3は、No.1-4の遮蔽構造50から、第1アンテナ素子11及び第3アンテナ素子13に隣接する第3領域E3を除き、第2アンテナ素子12の全周を遮蔽構造50が囲むようにしたものである。
【0070】
No.1-2は、No.1-3の遮蔽構造50から、第3領域E3を除いたものである。
【0071】
No.1-1は、遮蔽構造50を有しないものである。
【0072】
図7は、No.1-2とNo.1-1における第2アンテナ素子12の指向性(水平面指向性;H偏波)を示している。
図8は、No.1-3とNo.1-1における第2アンテナ素子12の指向性(水平面指向性;H偏波)を示している。
図9は、No.1-4とNo.1-1における第2アンテナ素子12の指向性(水平面指向性;H偏波)を示している。
図10は、No.1-5とNo.1-1における第2アンテナ素子12の指向性(水平面指向性;H偏波)を示している。
【0073】
図7から
図10に示すように、No.1-2,No.1-3,No.1-4,No.1-5の順で指向性改善効果が大きくなり、No.1-5の指向性改善効果が最も高くなった。すなわち、遮蔽構造50を有しないNo1-1では、指向性パターンの凹凸が大きく指向性が乱れている。しかし、No.1-2,No.1-3,No.1-4,No.1-5の順で指向性パターンの凹凸が小さくなり、指向性改善効果が大きくなっている。したがって、少なくとも複数のアンテナ素子間に遮蔽構造50が存在するのが好ましく、各アンテナ素子11,12,13,14それぞれの全周を遮蔽構造50が囲んでいるのが最も好ましいことがわかる。
【0074】
図11は、第2アンテナ素子12のH偏波における垂直面指向性を示し、
図12は、第2アンテナ素子12のV偏波における水平面指向性を示し、
図13は、第2アンテナ素子のV偏波における垂直面指向性を示している。いずれも、遮蔽構造50による指向性改善効果がみられる。なお、V偏波は、垂直偏波であり、垂直方向は、
図1におけるY方向である。垂直面指向性は、
図1のYZ平面における指向性である。
【0075】
図14は、
図5から
図13に示すシミュレーションと同じ条件で、第1アンテナ素子11と第2アンテナ素子12間での28GHzにおける素子間回り込み(隣接素子間結合)を、第2アンテナ素子12において調べた結果を示している。
図14は、No.1-1から1-5のそれぞれにおける素子間結合の最大値を示している。ここでは、H偏波及びV偏波いずれの値も、-18.3dB以下であれば結合が低下しているという基準に基づいて判定すると、遮蔽構造50を有するNo.1-2からNo.1-5のいずれも、結合が低下していることがわかる。No.1-4及びNo.1-5の結合の低下が特に大きく好ましい。
【0076】
図15から
図23は、遮蔽構造
50による指向性乱れの改善効果を検証した他のシミュレーション結果を示している。ここでは、遮蔽構造50の単位セル51の形状を、
図15に示すように、正方形とした。その他の点については、
図5から
図13に示すシミュレーションと同様である。
【0077】
図16は、No.2-2とNo.2-1における第2アンテナ素子12のH偏波における水平面指向性を示している。
【0078】
図16に示すように、No.2-2,No.2-3,No.2-4,No.2-5の順で指向性改善効果が大きくなり、No.
2-5の指向性改善効果が最も高くなった。すなわち、遮蔽構造50を有しないNo2-1では、指向性パターンの凹凸が大きく指向性が乱れている。しかし、No.2-2,No.2-3,No.2-4,No.2-5の順で指向性パターンの凹凸が小さくなり、指向性改善効果が大きくなっている。したがって、少なくとも複数のアンテナ素子間に遮蔽構造50が存在するのが好ましく、各アンテナ素子11,12,13,14それぞれの全周を遮蔽構造50が囲んでいるのが最も好ましいことがわかる。各アンテナ素子11,12,13,14の全周を遮蔽構造50が囲んでいることで、各アンテナ素子11,12,13,14の指向性が揃い易くなり、アレーアンテナ10全体によって形成されるビームが、方向に依存して不均一になるのを抑制できる。なお、単位セル51が正方形である場合と正六角形である場合とを比べると、正六角形のほうが、指向性改善効果が大きく好ましい。すなわち、正方形である単位セル51を、ギャップGを介して密に配置すると、ギャップGの長手方向が直線状となり、ギャップGの長手方向への電波の伝搬の抑制効果が低減する。これに対して、正六角形である単位セル51を、ギャップGを介して密に配置すると、ギャップGの長手方向が屈曲するため、電波の伝搬の抑制効果が高くなる。このため、各アンテナ素子11,12,13,14の指向性が均一化されて、指向性改善効果が高くなる。
【0079】
図17は、第2アンテナ素子12のH偏波における垂直面指向性を示し、
図18は、第2アンテナ素子12のV偏波における水平面指向性を示し、
図19は、第2アンテナ素子のV偏波における垂直面指向性を示している。いずれも、遮蔽構造50による指向性改善効果がみられる。
【0080】
図20から
図23は、
図16から
図19に示す指向性を、基準指向性と対比した結果を示している。
図20から
図23において、基準指向性は「基準」として示されている。ここでの基準指向性は、無限平面のグランド20上に単一の第2アンテナ素子12だけを設けた理想的な指向性を示す。
【0081】
図20から
図23に示すように、遮蔽構造50を設けると、基準指向性に近い指向性が得られる。特に、No.2-5では、正面方向(0°)の近傍(例えば、-45°から+45°)の範囲において、基準指向性に最も近い。
【0082】
図24は、
図15から
図23にシミュレーションと同じ条件で、第1アンテナ素子11と第2アンテナ素子12間での素子間回り込み(隣接素子間結合)を、第2アンテナ素子12において調べた結果を示している。
図24は、No.2-1から2-5のそれぞれにおける素子間結合の最大値を示している。ここでは、H偏波及びV偏波いずれの値も、-18.1dB以下であれば結合が低下しているという基準に基づいて判定すると、No.2-4及びNo.2-5において、結合が低下していることがわかる。
【0083】
図25及び
図26は、2つのアンテナ素子11,12間での素子間の回り込みの大きさを、素子間隔を異ならせて調べた結果を示している。
図25において、アレーアンテナ10Aは、2つのアンテナ素子11,12を有し、素子間隔は、10.7mm(約1λ)に設定されている。同図のアレーアンテナ10Bは、アレーアンテナ10Aの素子間に3列の正方形単位セルを有する遮蔽構造50を設けたものである。同図のアレーアンテナ10Cは、2つのアンテナ素子11,12を有し、素子間隔は、32.1mm(約3λ)に設定されている。同図のアレーアンテナ10Dは、アレーアンテナ10Cの素子間に15列の正方形単位セルを有する遮蔽構造50を設けたものである。
【0084】
図26において、グラフ200Aは、アレーアンテナ10Aについての隣接素子間回り込みを示し、グラフ200Bは、アレーアンテナ10Bについての隣接素子間回り込みを示し、グラフ200Cは、アレーアンテナ10Cについての隣接素子間回り込みを示し、グラフ200Dは、アレーアンテナ10Dについての隣接素子間回り込みを示している。
【0085】
グラフ200Cとグラフ200Dとを対比すると、素子間隔が大きい場合(3λ)、遮蔽構造50による回り込み抑制効果は高い。これは、素子間に多くの単位セル列を配置できるため、電波の遮蔽効果が高くなるためである。
【0086】
一方、グラフ200Aとグラフ200Bとを対比すると、素子間隔が小さい場合(1λ)、遮蔽構造50による回り込み抑制効果は低い。これは、素子間に配置できる単位セル列が少なくなり、電波の遮蔽効果が低くなるためである。
【0087】
ただし、アレーアンテナ全体としての特性の担保を考慮すると、素子間隔はあまり大きくできず、1.5λ以下であるのが好ましく、1λ程度がより好ましい。
【0088】
素子間隔が1λ程度であると、No1-2,2-2のように、素子間には、3列程度の単位セル列しか配置できない。しかし、No.1-3,1-4,1-5及びNo.2-3,2-4,2-5のように、遮蔽構造50を形成することで、指向性の乱れを防止でき有利である。
【0089】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的ではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及びその範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0090】
10 アレーアンテナ
11 第1アンテナ素子
12 第2アンテナ素子
13 第3アンテナ素子
14 第4アンテナ素子
20 グランド
25 給電線(マイクロストリップ線路)
26 給電線(ビア)
31 第1誘電体層
32 第2誘電体層
50 遮蔽構造(EBG)
51 単位セル
52 ビア
G ギャップ