IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特許-電力増幅回路 図1
  • 特許-電力増幅回路 図2
  • 特許-電力増幅回路 図3
  • 特許-電力増幅回路 図4
  • 特許-電力増幅回路 図5
  • 特許-電力増幅回路 図6
  • 特許-電力増幅回路 図7
  • 特許-電力増幅回路 図8
  • 特許-電力増幅回路 図9
  • 特許-電力増幅回路 図10
  • 特許-電力増幅回路 図11
  • 特許-電力増幅回路 図12
  • 特許-電力増幅回路 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】電力増幅回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/02 20060101AFI20241008BHJP
   H03F 3/24 20060101ALI20241008BHJP
   H03F 3/45 20060101ALI20241008BHJP
   H03F 3/68 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H03F1/02 188
H03F3/24
H03F3/45
H03F3/68 220
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2022545721
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2021031455
(87)【国際公開番号】W WO2022045279
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2020143475
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】今井 翔平
(72)【発明者】
【氏名】田中 聡
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0165739(US,A1)
【文献】特開2014-116844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F1/00-3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を、第1信号と、前記第1信号と位相が異なる第2信号と、に分配する分配器と、
前記第1信号から分岐された第1分岐信号を増幅して第1増幅信号を出力する第1増幅器と、
前記第1信号から分岐された第2分岐信号の電力レベルが所定の電力レベル以上を示すときに、前記第2分岐信号を増幅して第2増幅信号を出力する第2増幅器と、
前記第2信号から分岐された第3分岐信号を増幅して第3増幅信号を出力する第3増幅器と、
前記第2信号から分岐された第4分岐信号の電力レベルが所定の電力レベル以上を示すときに、前記第4分岐信号を増幅して第4増幅信号を出力する第4増幅器と、
第1バイアス電圧を出力する第1バイアス回路と、
前記第1バイアス回路と前記第1増幅器とを接続する、第1の長さの第1線路と、
前記第1バイアス回路と前記第3増幅器とを接続する、前記第1の長さよりも短い第2の長さの第2線路と、
を同一の半導体基板上に備え、
前記第1線路および前記第2線路は、前記第1バイアス回路と前記第1増幅器との間における前記第1バイアス電圧の電圧降下量と、前記第1バイアス回路と前記第3増幅器との間における前記第1バイアス電圧の電圧降下量と、の差が100mV以内となるように形成される、
電力増幅回路。
【請求項2】
第2バイアス電圧を出力する第2バイアス回路と、
前記第2バイアス回路と前記第2増幅器とを接続する、第3の長さの第3線路と、
前記第2バイアス回路と前記第4増幅器とを接続する、前記第3の長さよりも短い第4の長さの第4線路と、
を、前記同一の半導体基板上にさらに備え、
前記第3線路および前記第4線路は、前記第2バイアス回路と前記第2増幅器との間における前記第2バイアス電圧の電圧降下量と、前記第2バイアス回路と前記第4増幅器との間における前記第2バイアス電圧の電圧降下量と、の差が100mV以内となるように形成される、
請求項1に記載の電力増幅回路。
【請求項3】
前記第1線路は、前記第1線路の長さ方向と直交する断面が第1断面積を有する第1部分を含み、
前記第2線路は、前記第2線路の長さ方向と直交する断面が第2断面積を有する第2部分を含み、
前記第1断面積は、前記第2断面積よりも広い
請求項1または請求項2に記載の電力増幅回路。
【請求項4】
入力信号を、第1信号と、前記第1信号と位相が異なる第2信号と、に分配する分配器と、
前記第1信号から分岐された第1分岐信号を増幅して第1増幅信号を出力する第1増幅器と、
前記第1信号から分岐された第2分岐信号の電力レベルが所定の電力レベル以上を示すときに、前記第2分岐信号を増幅して第2増幅信号を出力する第2増幅器と、
前記第2信号から分岐された第3分岐信号を増幅して第3増幅信号を出力する第3増幅器と、
前記第2信号から分岐された第4分岐信号の電力レベルが所定の電力レベル以上を示すときに、前記第4分岐信号を増幅して第4増幅信号を出力する第4増幅器と、
第1バイアス電圧を出力する第1バイアス回路と、
前記第1バイアス回路と前記第1増幅器とを接続する、第1の長さの第1線路と、
前記第1バイアス回路と前記第3増幅器とを接続する、前記第1の長さよりも短い第2の長さの第2線路と、
を同一の半導体基板上に備え、
前記第1線路は、前記第1線路の長さ方向と直交する断面が第1断面積を有する第1部分を含み、
前記第2線路は、前記第2線路の長さ方向と直交する断面が第2断面積を有する第2部分を含み、
前記第1断面積は、前記第2断面積よりも広い
電力増幅回路。
【請求項5】
第2バイアス電圧を出力する第2バイアス回路と、
前記第2バイアス回路と前記第2増幅器とを接続する、第3の長さの第3線路と、
前記第2バイアス回路と前記第4増幅器とを接続する、前記第3の長さよりも短い第4の長さの第4線路と、
を、前記同一の半導体基板上にさらに備え、
前記第3線路および前記第4線路は、前記第2バイアス回路と前記第2増幅器との間における前記第2バイアス電圧の電圧降下量と、前記第2バイアス回路と前記第4増幅器との間における前記第2バイアス電圧の電圧降下量と、の差が100mV以内となるように形成される、
請求項4に記載の電力増幅回路。
【請求項6】
前記第1線路の前記第1部分は、2以上の第1の数の層で形成され、
前記第2線路の前記第2部分は、前記第1の数よりも少ない第2の数の層で形成される、
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の電力増幅回路。
【請求項7】
前記第1線路の前記第1部分は、所定の導電材料で形成される第1コンダクタと、前記第1コンダクタに積層される、所定の導電材料で形成される第2コンダクタと、で形成され、
前記第2コンダクタは、前記第1線路の前記長さ方向と直交する幅方向の端部において、前記長さ方向および前記幅方向に直交する厚み方向の厚みが、前記第2コンダクタの前記幅方向の中央部における厚みよりも厚い部分を有する、
請求項6に記載の電力増幅回路。
【請求項8】
前記第1線路の前記第1部分は、所定の導電材料で形成される第1コンダクタと、前記第1コンダクタに積層される、所定の導電材料で形成される第2コンダクタと、で形成され、
前記第2コンダクタは、前記第1線路の前記長さ方向と直交する幅方向の端部に、前記長さ方向に沿って設けられる、
請求項6に記載の電力増幅回路。
【請求項9】
前記第1線路の前記第1部分は、1以上の第1の数の層で形成され、
前記第2線路の前記第2部分は、前記第1の数よりも多い第2の数の層で形成される、
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の電力増幅回路。
【請求項10】
前記第2線路の前記第2部分は、所定の導電材料で形成される第3コンダクタと、前記第3コンダクタに積層される、所定の導電材料で形成される第4コンダクタと、で形成され、
前記第4コンダクタは、前記第2線路の前記長さ方向と直交する幅方向の端部において、前記長さ方向および前記幅方向に直交する厚み方向の厚みが、前記第4コンダクタの前記幅方向の中央部における厚みよりも厚い部分を有する、
請求項9に記載の電力増幅回路。
【請求項11】
前記第2線路の前記第2部分は、所定の導電材料で形成される第3コンダクタと、前記第3コンダクタに積層される、所定の導電材料で形成される第4コンダクタと、で形成され、
前記第4コンダクタは、前記第2線路の前記長さ方向と直交する幅方向の端部に、前記長さ方向に沿って設けられる、
請求項9に記載の電力増幅回路。
【請求項12】
前記第1バイアス回路と前記第3増幅器との間において前記第2線路と直列に接続される抵抗を、前記同一の半導体基板上にさらに備える、
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の電力増幅回路。
【請求項13】
前記第3線路は、前記第3線路の長さ方向と直交する断面が第3断面積を有する第3部分を含み、
前記第4線路は、前記第4線路の長さ方向と直交する断面が第4断面積を有する第4部分を含み、
前記第3断面積は、前記第4断面積よりも広い
請求項2または請求項5に記載の電力増幅回路。
【請求項14】
前記第3線路の前記第3部分は、2以上の第3の数の層で形成され、
前記第4線路の前記第4部分は、前記第3の数よりも少ない第4の数の層で形成される、
請求項13に記載の電力増幅回路。
【請求項15】
前記第3線路の前記第3部分は、所定の導電材料で形成される第5コンダクタと、前記第5コンダクタに積層される、所定の導電材料で形成される第6コンダクタと、で形成され、
前記第6コンダクタは、前記第3線路の前記長さ方向と直交する幅方向の端部において、前記長さ方向および前記幅方向に直交する厚み方向の厚みが、前記第6コンダクタの前記幅方向の中央部における厚みよりも厚い部分を有する、
請求項14に記載の電力増幅回路。
【請求項16】
前記第3線路の前記第3部分は、所定の導電材料で形成される第5コンダクタと、前記第5コンダクタに積層される、所定の導電材料で形成される第6コンダクタと、で形成され、
前記第6コンダクタは、前記第3線路の前記長さ方向と直交する幅方向の端部に、前記長さ方向に沿って設けられる、
請求項15に記載の電力増幅回路。
【請求項17】
前記第3線路の前記第3部分は、1以上の第3の数の層で形成され、
前記第4線路の前記第4部分は、前記第3の数よりも多い第4の数の層で形成される、
請求項13に記載の電力増幅回路。
【請求項18】
前記第4線路の前記第4部分は、所定の導電材料で形成される第7コンダクタと、前記第7コンダクタに積層される、所定の導電材料で形成される第8コンダクタと、で形成され、
前記第8コンダクタは、前記第4線路の前記長さ方向と直交する幅方向の端部において、前記長さ方向および前記幅方向に直交する厚み方向の厚みが、前記第8コンダクタの前記幅方向の中央部における厚みよりも厚い部分を有する、
請求項17に記載の電力増幅回路。
【請求項19】
前記第4線路の前記第4部分は、所定の導電材料で形成される第7コンダクタと、前記第7コンダクタに積層される、所定の導電材料で形成される第8コンダクタと、で形成され、
前記第8コンダクタは、前記第4線路の前記長さ方向と直交する幅方向の端部に、前記長さ方向に沿って設けられる、
請求項17に記載の電力増幅回路。
【請求項20】
前記第2バイアス回路と前記第4増幅器との間において、前記第4線路と直列に接続される抵抗を、前記同一の半導体基板上にさらに備える、
請求項13から請求項19のいずれか一項に記載の電力増幅回路。
【請求項21】
前記分配器と前記第1増幅器との間に接続される、前記第1分岐信号の位相を変化させる移相器と、
前記分配器と前記第3増幅器との間に接続される、前記第3分岐信号の位相を変化させる移相器と、
をさらに備える請求項1から請求項20のいずれか一項に記載の電力増幅回路。
【請求項22】
前記分配器と前記第2増幅器との間に接続される、前記第2分岐信号の位相を変化させる移相器と、
前記分配器と前記第4増幅器との間に接続される、前記第4分岐信号の位相を変化させる移相器と、
をさらに備える請求項1から請求項20のいずれか一項に記載の電力増幅回路。
【請求項23】
前記分配器は、バランである、
請求項21または請求項22に記載の電力増幅回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
ドハティ増幅器は、高効率な電力増幅器(パワーアンプ)である。ドハティ増幅器は、一般的に、入力信号の電力レベルにかかわらず動作するキャリアアンプと、入力信号の電力レベルが小さい場合はオフとなり、大きい場合にオンとなるピークアンプとが並列に接続されている。そして、入力信号の電力レベルが大きい場合、キャリアアンプが飽和出力電力レベルで飽和を維持しながら動作する。すなわち、キャリアアンプのみが増幅動作しているバックオフ状態では、キャリアアンプのみが動作するのでピークアンプが不要な電流を消費せず効率が高くなる。そして、このドハティ増幅器を組み合わせた差動のドハティ増幅器は、2つの増幅素子の各々に同振幅同位相の信号(例えば、ノイズ等)が同時に入力される場合、当該同振幅同位相の信号は打ち消すことができる。これにより、電力増幅回路において、ノイズや入力信号の高調波の発生を抑制することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】US2019/0165739A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の差動の電力増幅回路は、二つのキャリアアンプにバイアスを供給するキャリアバイアス回路と、二つのピークアンプにバイアスを供給するピークバイアス回路とを備える。当該電力増幅回路は、半導体基板上のスペースの関係で、キャリアバイアス回路と一方のキャリアアンプとの間の配線長と、キャリアバイアス回路と他方のキャリアアンプとの間の配線長とが異なるように、半導体基板上に各構成要素が配置される。これにより、当該電力増幅回路においては、キャリアバイアス回路から一方のキャリアアンプまでの線路の電圧降下量と、キャリアバイアス回路から他方のキャリアアンプまでの線路の電圧降下量とが異なる。ピークバイアス回路と各ピークアンプとの間の配線長についても同様である。したがって、当該電力増幅回路においては、二つのキャリアアンプ間または二つのピークアンプ間のバイアス点に差が生じるため、各アンプの性能を十分に発揮できず、その効率を低下させる虞があった。
【0005】
そこで、本開示は、差動のドハティ増幅器で構成される効率のよい電力増幅回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る電力増幅回路は、入力信号を、第1信号と、前記第1信号と位相が異なる第2信号と、に分配する分配器と、前記第1信号から分岐された第1分岐信号を増幅して第1増幅信号を出力する第1増幅器と、前記第1信号から分岐された第2分岐信号の電力レベルが所定の電力レベル以上を示すときに、前記第2分岐信号を増幅して第2増幅信号を出力する第2増幅器と、前記第2信号から分岐された第3分岐信号を増幅して第3増幅信号を出力する第3増幅器と、前記第2信号から分岐された第4分岐信号の電力レベルが所定の電力レベル以上を示すときに、前記第4分岐信号を増幅して第4増幅信号を出力する第4増幅器と、第1バイアス電圧を出力する第1バイアス回路と、前記第1バイアス回路と前記第1増幅器とを接続する、第1の長さの第1線路と、前記第1バイアス回路と前記第3増幅器とを接続する、前記第1の長さよりも短い第2の長さの第2線路と、を同一の半導体基板上に備え、前記第1線路および前記第2線路は、前記第1バイアス回路と前記第1増幅器との間における前記第1バイアス電圧の電圧降下量と、前記第1バイアス回路と前記第3増幅器との間における前記第1バイアス電圧の電圧降下量と、が略等しくなるように形成される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、差動のドハティ増幅器で構成される効率のよい電力増幅回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電力増幅回路の構成の一例を示す構成図である。
図2】電力増幅回路の各構成要素の半導体基板上の配置を示す図である。
図3】第1線路および第2線路の形状の一例を示す図である。
図4】第1線路の形状の第1変形例を示す図である。
図5】第1線路の形状の第2変形例を示す図である。
図6】第1線路の形状の第3変形例を示す図である。
図7】第2線路の形状の第1変形例を示す図である。
図8】第2線路の形状の第2変形例を示す図である。
図9】構成要素に抵抗を含む電力増幅回路の半導体基板上の配置を示す図である。
図10】分配器の構成の一例を示す図である。
図11】第1変形例に係る電力増幅回路の一例を示す図である。
図12】第2変形例に係る電力増幅回路の一例を示す図である。
図13】第3変形例に係る電力増幅回路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
===電力増幅回路100の構造===
電力増幅回路100は、例えば、携帯電話機に搭載され、基地局に送信する信号の電力を増幅するために用いられる。電力増幅回路100は、例えば、2G(第2世代移動通信システム)、3G(第3世代移動通信システム)、4G(第4世代移動通信システム)、5G(第5世代移動通信システム)、LTE(Long Term Evolution)-FDD(Frequency Division Duplex)、LTE-TDD(Time Division Duplex)、LTE-Advanced、LTE-Advanced Pro、6G(第6世代移動通信システム)などの通信規格の信号の電力を増幅することができる。なお、電力増幅回路100が増幅する信号の通信規格はこれらに限られない。
【0010】
電力増幅回路100は、入力信号RFinを増幅し、出力信号RFoutを出力する。入力信号は無線周波数(RF:Radio-Frequency)信号であり、入力信号の周波数は、例えば数GHz~数十GHz程度である。
【0011】
図1を参照して、電力増幅回路100の構成について説明する。図1は、電力増幅回路100の構成の一例を示す構成図である。図1に示すように、電力増幅回路100は、例えば、ドライブ段アンプ110と、分配器111と、整合回路113(113a~113d)と、第1移相器114と、第1キャリアアンプ115と、第1ピークアンプ116と、第2移相器117と、第2キャリアアンプ118と、第2ピークアンプ119と、第3移相器120と、第4移相器121と、合成器122と、第1バイアス回路123と、キャリア長線路124と、キャリア短線路125と、第2バイアス回路126と、ピーク長線路127と、ピーク短線路128とを含む。電力増幅回路100が備える各々の構成要素は、同一の半導体基板上に形成されている。
【0012】
ドライブ段アンプ110は、例えば、入力されるRF信号を増幅し、増幅信号を出力する。本実施形態においては、出力される増幅信号を「信号RFin」という。信号RFinの周波数は、例えば数GHz程度である。ドライブ段アンプ110は、特に限定されないが、例えばヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT:Heterojunction Bipolar Transistor)等のバイポーラトランジスタ、又は電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal-oxide-semiconductor Field Effect Transistor)等のトランジスタにより構成される。なお、後述する、第1キャリアアンプ115、第1ピークアンプ116、第2キャリアアンプ118、及び第2ピークアンプ119についても同様である。
【0013】
分配器111は、例えば、バランであり、入力される増幅信号RFinを、信号RF1と、信号RF1に対して位相が略180度遅れた(位相が反転した)信号RF2とに分配する。信号RF1は、分岐部112aにおいて、分岐信号RF11と分岐信号RF12とに分岐される。分岐信号RF11は、後述する整合回路113aを通じて第1ピークアンプ116に入力される。分岐信号RF12は、後述する第1移相器114および整合回路113bを通じて、第1キャリアアンプ115に入力される。また、信号RF2は、分岐部112bにおいて、分岐信号RF21と分岐信号RF22とに分岐される。分岐信号RF21は、後述する整合回路113cを通じて第2ピークアンプ119に入力される。分岐信号RF22は、後述する第2移相器117および整合回路113dを通じて、第2キャリアアンプ118に入力される。なお、本発明での「略180度遅れた」の意味には、プラスマイナス45の調整範囲を含むものとする。
【0014】
このように、電力増幅回路100においては、第1キャリアアンプ115に入力される分岐信号RF12と、第2キャリアアンプ118に入力される分岐信号RF22とが略180度の位相差を示す。そして、電力増幅回路100は、第1ピークアンプ116に入力される分岐信号RF11と、第2ピークアンプ119に入力される分岐信号RF21とが略180度の位相差を示す。すなわち、電力増幅回路100は差動の増幅回路を形成する。
【0015】
なお、分配器111は、増幅信号RFinを略180度の位相差を有する2つの信号に分配するように説明したが、これに限定されない。例えば、分配器111は、135度から225度の範囲において任意の位相差を有する2つの信号に分配するものであってもよい。分配器111の構成については後述する。
【0016】
整合回路(MN:Matching Network)113のそれぞれは、各アンプ115,116,118,119のそれぞれと分配器111とのインピーダンスを整合させる。整合回路113は、例えば、インダクタおよびキャパシタを含んで構成される。なお、電力増幅回路100は整合回路113の全てまたは一部を含んでいなくてもよい。また、電力増幅回路100は、例えば、整合回路113に替えて、又は整合回路113とともに、アンプを備えていてもよい。
【0017】
第1移相器114は、例えば、分配器111と第1キャリアアンプ115との間に電気的に接続されて、分岐信号RF12の位相を略90度遅延させる移相器である。第1移相器114は、例えば、1/4波長線路または分布定数回路などである。第1移相器114が分布定数回路(不図示)である場合、第1移相器114は、例えば、キャパシタC1、インダクタL、及びキャパシタC2を含んで構成される。ここで、キャパシタC1は、例えば一端が分配器111の端子に接続される。また、インダクタLは、例えば、一端がキャパシタC1の他端と接続され、他端が第1キャリアアンプ115に接続される。また、キャパシタC2は、例えば、一端がキャパシタC1とインダクタLとの接続点に接続され、他端が接地に接続される。これにより、分布定数回路は、キャパシタC1,C2、インダクタLの定数を調整することで、信号に対する位相のずれを調整できる。なお、本発明での「略90度遅れた」の意味には、プラスマイナス45度の調整範囲を含むこととする。
【0018】
第1キャリアアンプ115(第3増幅器)は、例えば、第1移相器114を通じて入力される分岐信号RF12を増幅させて、増幅信号(以下、「信号RFout12」という)を出力する。第1キャリアアンプ115は、例えば、A級、AB級またはB級にバイアスされる。すなわち、第1キャリアアンプ115は、小さい瞬時入力電力など入力信号の電力レベルに係らず、入力される信号を増幅して、増幅信号を出力する。
【0019】
第1ピークアンプ116(第4増幅器)は、例えば、入力される分岐信号RF11を増幅させて、増幅信号(以下、「信号RFout11」という)を出力する。第1ピークアンプ116は、例えばC級にバイアスされる。
【0020】
第2移相器117は、例えば、分配器111と第2キャリアアンプ118との間に電気的に接続されて、分岐信号RF22の位相を略90度遅延させる移相器である。第2移相器117は、例えば1/4波長線路または分布定数回路などである。
【0021】
第2キャリアアンプ118(第1増幅器)は、例えば、第2移相器117を通じて入力される分岐信号RF22を増幅させて、増幅信号(以下、「信号RFout22」という)を出力する。第2キャリアアンプ118は、例えば、A級、AB級またはB級にバイアスされる。すなわち、第2キャリアアンプ118は、小さい瞬時入力電力など入力信号の電力レベルに係らず、入力される信号を増幅して、増幅信号を出力する。
【0022】
第2ピークアンプ119(第2増幅器)は、例えば、入力される分岐信号RF21を増幅させて、増幅信号(以下、「信号RFout21」という)を出力する。第2ピークアンプ119は、例えばC級にバイアスされる。
【0023】
このように、電力増幅回路100は、180度の位相差を有する2つのキャリアアンプ115,118と、180度の位相差を有する2つのピークアンプ116,119とで差動の増幅回路を形成する。差動の増幅回路は、対をなす二つの増幅素子を備え、当該二つの増幅素子の各々に入力される同振幅逆位相の信号の電位差を増幅して出力する。したがって、2つの増幅素子の各々に同振幅同位相の信号(例えば、ノイズ等)が同時に入力される場合、当該同振幅同位相の信号は打ち消される。これにより、電力増幅回路100において、ノイズや入力信号の高調波の発生を抑制することができる。
【0024】
第3移相器120は、例えば、第1キャリアアンプ115と合成器122との間に電気的に接続されて、信号RFout12の位相を略90度遅延させる移相器である。これにより、分配器111から第1キャリアアンプ115を通じた合成器122までの電気長と、分配器111から第2ピークアンプ119を通じた合成器122までの電気長とが略同一になる。第3移相器120は、例えば、1/4波長線路または分布定数回路などである。
【0025】
第4移相器121は、例えば、第2キャリアアンプ118と合成器122との間に電気的に接続されて、信号RFout22の位相を略90度遅延させる移相器である。これにより、分配器111から第1ピークアンプ116を通じた合成器122までの電気長と、分配器111から第2キャリアアンプ118を通じた合成器122までの電気長とが略同一になる。第4移相器121は、例えば、1/4波長線路、または分布定数回路などである。
【0026】
このように、本実施形態に係る電力増幅回路100は、例えば、第1キャリアアンプ115と第2ピークアンプ119とでドハティ増幅回路を形成し、第2キャリアアンプ118と第1ピークアンプ116とでドハティ増幅回路を形成する。これにより、第1キャリアアンプ115は、入力信号RFinの電力レベルにかかわらず、電力レベルがゼロ以上の領域において動作する。そして、第2ピークアンプ119は、入力信号RFinの電圧レベルが、最大レベルVmaxから所定レベル低いレベル(所定の電力レベル)以上の領域において動作する。すなわち、入力信号の電力レベルに応じて2つのアンプの動作を組み合わせることにより、第1キャリアアンプ115が飽和出力で動作する領域が広がる。したがって、電力増幅回路100の電力効率が向上する。第2キャリアアンプ118および第1ピークアンプ116についても同様に動作する。
【0027】
合成器122は、例えば、第1ピークアンプ116から出力される信号RFout11と、第2キャリアアンプ118から第4移相器121を通じて出力される信号RFout22とを合成する合成部122aで合成された信号(位相「0deg」)が入力される。また、合成器122は、例えば、第1キャリアアンプ115から第3移相器120を通じて出力される信号RFout12と、第2ピークアンプ119から出力される信号RFout21とを合成する合成部122bで合成された信号(位相「180deg」)が入力される。合成器122は、位相が反転する二つの信号を合成して合成信号(以下、「信号RFout」という)を出力する。
【0028】
第1バイアス回路123は、第1キャリアアンプ115および第2キャリアアンプ118にバイアス電圧を印加する回路である。バイアス電圧の電圧値は、第1キャリアアンプ115、第2キャリアアンプ118、及び入力信号の特性に応じて適宜設定される。なお、第1バイアス回路123は、バイアス電圧に替えてバイアス電流を供給する回路でもよい。すなわち、第1バイアス回路123は、ベースバイアス回路またはゲートバイアス回路である。以下、一例として、第1バイアス回路123がバイアス電圧を供給することとして説明する。
【0029】
キャリア長線路124(第1線路)は、所定の導電材料で形成せれ、第1バイアス回路123と第2キャリアアンプ118とを接続する線路である。所定の導電材料は、例えば、銅、金、アルミニウムなどである。キャリア長線路124は、例えば、半導体基板に形成されたパターン配線であってもよいし、ワイヤであってもよい。以下、キャリア長線路124の長さを「Lc1」として説明する。
【0030】
キャリア短線路125(第2線路)は、例えばキャリア長線路124と同じ導電材料で形成され、第1バイアス回路123と第1キャリアアンプ115とを接続する線路である。以下、キャリア短線路125の長さを「Lc2」として説明する。
【0031】
キャリア長線路124およびキャリア短線路125は、例えば、第1バイアス回路123と第1,第2キャリアアンプ115,118とを直接接続するものだけでなく、他の素子などを介して間接的に接続するものであってもよい。キャリア長線路124およびキャリア短線路125は、第1バイアス回路123と第1キャリアアンプ115との間におけるバイアス電圧の電圧降下量と、第1バイアス回路123と第2キャリアアンプ118との間におけるバイアス電圧の電圧降下量と、が略等しくなるように形成される。なお、一方の電圧降下量と他方の電圧降下量とが「略等しくなる」場合とは、例えば、一方の電圧降下量と他方の電圧降下量との差分が100mV以内である場合を含む。これにより、二つのキャリアアンプ間のバイアス点を略同一にすることができるため、電力増幅回路100の効率を向上できる。キャリア長線路124およびキャリア短線路125の構造の詳細については後述する。
【0032】
第2バイアス回路126は、第1ピークアンプ116と第2ピークアンプ119とにバイアス電圧を印加する回路である。バイアス電圧の電圧値は、第1ピークアンプ116、第2ピークアンプ119、及び入力信号の特性に応じて適宜設定される。なお、第2バイアス回路126は、バイアス電圧に替えてバイアス電流を供給する回路でもよい。すなわち、第2バイアス回路126は、ベースバイアス回路またはゲートバイアス回路である。以下、一例として、第2バイアス回路126がバイアス電圧を供給することとして説明する。
【0033】
ピーク長線路127(第3線路)は、所定の導電材料で形成せれ、第2バイアス回路126と第2ピークアンプ119とを接続する線路である。所定の導電材料は、例えば、銅、金、アルミニウムなどである。以下、ピーク長線路127の長さを「Lp1」として説明する。
【0034】
ピーク短線路128(第4線路)は、例えばピーク長線路127と同じ導電材料で形成せれ、第2バイアス回路126と第1ピークアンプ116とを接続する線路である。以下、ピーク短線路128の長さを「Lp2」として説明する。
【0035】
ピーク長線路127およびピーク短線路128は、第2バイアス回路126と第1,第2ピークアンプ116,119とを直接接続するものだけでなく、他の素子などを介して間接的に接続するものであってもよい。ピーク長線路127およびピーク短線路128は、第2バイアス回路126と第1ピークアンプ116との間におけるバイアス電圧の電圧降下量と、第2バイアス回路126と第2ピークアンプ119との間におけるバイアス電圧の電圧降下量と、が略等しくなるように形成される。これにより、二つのピークアンプ間のバイアス点を略同一にすることができるため、電力増幅回路100の効率を向上できる。ピーク長線路127およびピーク短線路128の構造の詳細については後述する。さらに、効率が向上するだけでなく、出力電力のパワーアップやひずみ特性を向上させることができる。
【0036】
<<バイアス点を調整するための構造>>
図2を参照して、電力増幅回路100のバイアス点を調整するための構造について説明する。図2は、電力増幅回路100の各構成要素の半導体基板上の配置を示す図である。なお、図2では、各アンプの出力側の構成(第3移相器120、第4移相器121、及び合成器122)を省略している。
【0037】
電力増幅回路100において、第1バイアス回路123は、キャリア長線路124を通じて第2キャリアアンプ118にバイアス電圧を供給する。また、第1バイアス回路123は、キャリア短線路125を通じて第1キャリアアンプ115にバイアス電圧を供給する。このとき、第1キャリアアンプ115におけるバイアス点は、例えば、第1バイアス回路123から供給されるバイアス電圧から、第1バイアス回路123と第2キャリアアンプ118との間の電圧降下量(以下、キャリア長電圧降下量という)を引いた電圧である。一方、第2キャリアアンプ118におけるバイアス点は、例えば、第1バイアス回路123から供給されるバイアス電圧から第1バイアス回路123と第2キャリアアンプ118との間の電圧降下量(以下、キャリア短電圧降下量という)を引いた電圧である。
【0038】
第2バイアス回路126は、ピーク長線路127を通じて第2ピークアンプ119にバイアス電圧を供給する。また、第2バイアス回路126は、ピーク短線路128を通じて第1ピークアンプ116にバイアス電圧を供給する。このとき、第1ピークアンプ116におけるバイアス点は、例えば、第2バイアス回路126から供給されるバイアス電圧から、第2バイアス回路126と第2ピークアンプ119との間の電圧降下量(以下、ピーク長電圧降下量という)を引いた電圧である。一方、第2ピークアンプ119におけるバイアス点は、例えば、第2バイアス回路126から供給されるバイアス電圧から第2バイアス回路126と第1ピークアンプ116との間の電圧降下量(以下、ピーク短電圧降下量という)を引いた電圧である。
【0039】
ここで、第1キャリアアンプ115のバイアス点と、第2キャリアアンプ118のバイアス点とが異なる電圧を示す場合、電力増幅回路100の効率が低下する。また、第1ピークアンプ116のバイアス点と、第2ピークアンプ119のバイアス点とが異なる電圧を示す場合、電力増幅回路100の効率が低下する。すなわち、第1キャリアアンプ115のバイアス点と、第2キャリアアンプ118のバイアス点とを略等しくし、第1ピークアンプ116のバイアス点と、第2ピークアンプ119のバイアス点とを略等しくすることで、電力増幅回路100の効率を向上できる。
【0040】
しかし、図2に示すように、電力増幅回路100は、第1キャリアアンプ115、第1ピークアンプ116、第2キャリアアンプ118、及び第2ピークアンプ119が、半導体基板上のある方向に一列に配置される。この場合、例えば、キャリア長電圧降下量とキャリア短電圧降下量とを略等しくするためには、第1バイアス回路123を、第1キャリアアンプ115と第2キャリアアンプ118とを結ぶ仮線の垂直二等分線上に配置する必要がある。しかし、電力増幅回路100の各構成の配置上、第1バイアス回路123を当該垂直二等分線上に配置できない。このため、キャリア長線路124およびキャリア短線路125が異なる長さとなることから、キャリア長線路124およびキャリア短線路125が同じ断面積を有する場合は、それぞれの線路が異なる抵抗値を示す。すなわち、キャリア長電圧降下量とキャリア短電圧降下量とは等しくならない。ピーク長線路127およびピーク短線路128についても同様に、ピーク長線路127およびピーク短線路128が同じ断面積を有する場合は、ピーク長電圧降下量とピーク短電圧降下量とは等しくならない。
【0041】
そこで、電力増幅回路100おいては、キャリア長電圧降下量とキャリア短電圧降下量とが略等しくなるように、キャリア長線路124またはキャリア短線路125の少なくとも一方の形状が調整される。同様に、電力増幅回路100においては、ピーク長電圧降下量とピーク短電圧降下量とが略等しくなるように、ピーク長線路127またはピーク短線路128の少なくとも一方の形状が調整される。
【0042】
また、電力増幅回路100は、キャリア長電圧降下量とキャリア短電圧降下量とが略等しくなるように、キャリア短線路125に直列に抵抗を接続してもよい。同様に、電力増幅回路100は、ピーク長電圧降下量とピーク短電圧降下量とが略等しくなるように、ピーク短線路128に直列に抵抗を接続してもよい。
【0043】
以下、まず、キャリア長線路124およびキャリア短線路125の形状の詳細について説明する。続いて、キャリア短線路125に直列に接続される抵抗について説明する。なお、ピーク長線路127およびピーク短線路128の形状は、キャリア長線路124およびキャリア短線路125の形状と同様であるためその説明を省略する。
【0044】
図3を参照して、キャリア長線路124およびキャリア短線路125の形状について説明する。図3は、キャリア長線路124およびキャリア短線路125の形状の一例を示す図である。図3では、一例として、キャリア長線路124およびキャリア短線路125が設けられる半導体基板の面に沿う、線路の長さ方向を「x方向」とし、x方向と直交する線路の幅方向を「y方向」とし、x方向およびy方向と直交する、線路の厚み方向を「z方向」とする。以下、図1図2に示すように、キャリア長線路124の長さLc1が、キャリア短線路125の長さLc2よりも長いものとして説明する。また、図3においては、線路における、y方向の幅の長さを「W」とし、z方向の厚みの長さを「t1」とする。
【0045】
図3に示すように、キャリア長線路124およびキャリア短線路125は、例えば、所定の導電率を有する第1コンダクタによって、半導体基板上に形成される。キャリア長線路124は、例えば、キャリア長線路124の少なくとも一部においてx方向と直交するyz断面の断面積(以下、長線路断面積という)を有する。キャリア短線路125は、例えば、キャリア短線路125の少なくとも一部においてx方向と直交するyz断面の断面積(以下、短線路断面積という)を有する。各断面積は、幅の長さWと厚みの長さt1の積で示される。すなわち、キャリア長電圧降下量とキャリア短電圧降下量が略等しくなるように、少なくとも一部のキャリア長線路124の長線路断面積が、少なくとも一部のキャリア短線路125の短線路断面積よりも大きくなるように形成されている。換言すると、キャリア長線路124およびキャリア短線路125は、キャリア長線路124の抵抗値とキャリア短線路125の全体の抵抗値が略等しくなるように形成されている。ここで、一方の抵抗値と他方の抵抗値とが略等しくなる場合とは、例えば、一方の抵抗値と他方の抵抗値との差分が1Ω以内である場合を含むものとする。具体的には、例えば、キャリア長線路124とキャリア短線路125の厚み(t1)が同じ場合、キャリア長線路124の幅は、キャリア短線路125の幅よりも長くなるように形成される。
【0046】
さらに言うと、キャリア長線路124およびキャリア短線路125は、第1区間単位抵抗と第2区間単位抵抗とが略等しくなるように、キャリア長線路124の断面およびキャリア短線路125の断面が形成されていてもよい。第1区間単位抵抗は、例えば、第1バイアス回路123と第2キャリアアンプ118との間がキャリア長線路124のみで接続されている場合、キャリア長線路124の抵抗値を、その長さLc1で除した単位長さ当たりの抵抗値である。また、第2区間単位抵抗は、例えば、第1バイアス回路123と第1キャリアアンプ115との間がキャリア短線路125のみで接続されている場合、キャリア短線路125の抵抗値を、その線路長で除した単位長さ当たりの抵抗値である。これにより、キャリア長線路124およびキャリア短線路125において、キャリア長電圧降下量とキャリア短電圧降下量が略等しくなる。なお、ここで、一方の区間単位抵抗と他方の区間単位抵抗とが略等しくなる場合とは、例えば、一方の区間単位抵抗の値と他方の区間単位抵抗の値との差分が1Ω以内である場合を含むものとする。
【0047】
次に、図4を参照して、キャリア長線路124の形状の変形例について説明する。図4は、キャリア長線路124の形状の第1変形例を示す図である。図4は、図3と同様の、x方向、y方向、及びz方向を示す。図4に示すように、キャリア長線路124は、例えば、少なくともその一部が、半導体基板上に設けられる第1コンダクタ124aと、第1コンダクタ124aに積層される第2コンダクタ124bとで形成される。第1コンダクタ124aは、例えば所定の導電率を有する第1導電材料で形成される。第1導電材料は、例えば、銅、金、アルミニウムなどである。第2コンダクタ124bは、例えば所定の導電率を有する第2導電材料で形成される。第2導電材料は、例えば、銅、金、アルミニウムなどであり、第1導電材料と同じ導電材料であってもよいし、第1導電材料と異なる導電材料であってもよい。これにより、キャリア短線路125が例えば第1コンダクタ124aのみで形成されている場合、電力増幅回路100は、キャリア短線路125と比較して、キャリア長線路124の長線路断面積が大きくなるため、キャリア長電圧降下量をキャリア短電圧降下量と略等しくできる。換言すると、電力増幅回路100は、キャリア長線路124の第1区間単位抵抗と、キャリア短線路125の第2区間単位抵抗とを略等しくできるため、キャリア長電圧降下量をキャリア短電圧降下量に略等しくできる。
【0048】
なお、上記において、キャリア長線路124は、第1コンダクタ124aと第2コンダクタ124bとの二層で形成される部分を有するように説明したがこれに限定されない。例えば、キャリア長線路124は、例えば、三層以上のコンダクタを含んで形成されてもよい。
【0049】
次に、図5を参照して、キャリア長線路124の形状の変形例について説明する。図5は、キャリア長線路124の形状の第2変形例を示す図である。図5は、図3と同様の、x方向、y方向、及びz方向を示す。図5に示すように、キャリア長線路124は、例えば、少なくともその一部が、第1コンダクタ124cと、第1コンダクタ124cに積層される第2コンダクタ124dとで形成される。第1コンダクタ124cは、図4の第1コンダクタ124aと同様であるためその説明を省略する。第2コンダクタ124dは、図4の第2コンダクタ124bの導電材料と同様であるため、その導電材料の説明を省略する。図5に示すように、第2コンダクタ124dは、例えば、キャリア長線路124のy方向の端部におけるz方向の厚みが、x方向の中央部におけるz方向の厚みよりも厚い部分を有する。これにより、キャリア短線路125が例えば第1コンダクタ124cのみで形成されている場合、電力増幅回路100は、キャリア短線路125と比較して、キャリア長線路124の長線路断面積が大きくなるため、キャリア長電圧降下量をキャリア短電圧降下量と略等しくできる。換言すると、電力増幅回路100は、キャリア長線路124の第1区間単位抵抗と、キャリア短線路125の第2区間単位抵抗とを略等しくできるため、キャリア長電圧降下量をキャリア短電圧降下量に略等しくできる。さらに言うと、コンダクタを流れる高調波電流は、コンダクタのy方向の端部(外側)に集中的に流れる特性を有するため、当該端部のz方向の厚みを厚くすることで、電力損失を低減できる。
【0050】
なお、上記において、キャリア長線路124は、第1コンダクタ124cと第2コンダクタ124dとの二層で形成される部分を有してもよいように説明したがこれに限定されない。例えば、キャリア長線路124は、例えば、三層以上のコンダクタを含んで形成されてもよい。
【0051】
次に、図6を参照して、キャリア長線路124の形状の変形例について説明する。図6は、キャリア長線路124の形状の第3変形例を示す図である。図6は、図3と同様の、x方向、y方向、及びz方向を示す。図6に示すように、キャリア長線路124は、例えば、少なくともその一部が、第1コンダクタ124fと、第1コンダクタ124fに積層される第2コンダクタ124gとで形成される。第1コンダクタ124fは、図4の第1コンダクタ124aと同様であるためその説明を省略する。第2コンダクタ124gは、図4の第2コンダクタ124bの導電材料と同様であるため、その導電材料の説明を省略する。図6に示すように、第2コンダクタ124gは、例えば、キャリア長線路124のy方向の少なくとも一方の端部にx方向に沿って設けられる。これにより、キャリア短線路125が例えば第1コンダクタ124fのみで形成されている場合、電力増幅回路100は、キャリア短線路125の短線路断面積と比較して、キャリア長線路124の長線路断面積を大きくできるため、キャリア長電圧降下量をキャリア短電圧降下量と略等しくできる。換言すると、電力増幅回路100は、キャリア長線路124の第1区間単位抵抗と、キャリア短線路125の第2区間単位抵抗とを略等しくできるため、キャリア長電圧降下量をキャリア短電圧降下量に略等しくできる。さらに言うと、コンダクタを流れる高調波電流は、コンダクタのy方向の端部(外側)に集中的に流れる特性があるため、当該端部のz方向の厚みを厚くすることで、電力損失を低減できる。
【0052】
なお、上記において、キャリア長線路124は、第1コンダクタ124fと第2コンダクタ124gとの二層で形成される部分を有してもよいように説明したがこれに限定されない。例えば、キャリア長線路124は、例えば、三層以上のコンダクタを含んで形成されてもよい。
【0053】
次に、図7を参照して、キャリア短線路125の形状の変形例について説明する。図7は、キャリア短線路125の形状の第1変形例を示す図である。図7は、図3と同様の、x方向、y方向、及びz方向を示す。図7に示すように、キャリア短線路125は、例えば、少なくともその一部が、半導体基板上に設けられる第3コンダクタ125aと、第3コンダクタ125aに積層される第4コンダクタ125bとで形成される。第3コンダクタ125aは、例えば所定の導電率を有する第3導電材料で形成される。第3導電材料は、例えば、銅、金、アルミニウムなどである。第4コンダクタ125bは、例えば所定の導電率を有する第4導電材料で形成される。第4導電材料は、例えば、銅、金、アルミニウムなどであり、第1導電材料の導電率よりも低い導電率の導電材料である。図7においては、例えば、第3コンダクタ125aと、第4コンダクタ125b(例えば、厚みt3とする)との厚みがt1となるように形成されている。これにより、キャリア長線路124が例えば厚みt1の第1コンダクタ124aのみで形成されている場合、電力増幅回路100は、キャリア短線路125の第2区間単位抵抗を、キャリア長線路124の第1区間単位抵抗と略等しくできる。このため、キャリア短電圧降下量がキャリア長電圧降下量と略等しくなる。
【0054】
なお、上記において、キャリア短線路125は、第3コンダクタ125aと第4コンダクタ125bとの二層で形成される部分を有してもよいように説明したがこれに限定されない。例えば、キャリア短線路125は、例えば、三層以上のコンダクタを含んで形成されてもよい。
【0055】
次に、図8を参照して、キャリア短線路125の形状の変形例について説明する。図8は、キャリア短線路125の形状の第2変形例を示す図である。図8は、図3と同様の、x方向、y方向、及びz方向を示す。図8に示すように、キャリア短線路125は、例えば、少なくともその一部が、第3コンダクタ125cと、第3コンダクタ125cに積層される第4コンダクタ125dとで形成される。第3コンダクタ125cは、図7の第3コンダクタ125aと同様であるためその説明を省略する。第4コンダクタ125dは、図7の第4コンダクタ125bの導電材料と同様であるため、その導電材料の説明を省略する。図8に示すように、第4コンダクタ125dは、例えば、第3コンダクタ125cのy方向の少なくとも一方の端部にx方向に沿って設けられる。これにより、キャリア長線路124が例えば厚みt1の第1コンダクタ124aのみで形成されている場合、電力増幅回路100は、キャリア短線路125の第2区間単位抵抗を、キャリア長線路124の第1区間単位抵抗と略等しくできる。このため、キャリア短電圧降下量がキャリア長電圧降下量と略等しくなる。さらに言うと、コンダクタを流れる高調波電流は、コンダクタのy方向の端部(外側)に集中的に流れる特性を有するため、当該端部のz方向の厚みを厚くすることで、電力損失を低減できる。
【0056】
なお、上記において、キャリア長線路124は、第3コンダクタ125cと第4コンダクタ125dとの二層で形成される部分を有してもよいように説明したがこれに限定されない。例えば、キャリア長線路124は、例えば、三層以上のコンダクタを含んで形成されてもよい。
【0057】
次に、図9を参照して、電力増幅回路100おいて、キャリア長電圧降下量とキャリア短電圧降下量とを略等しくするために、キャリア短線路125に直列に抵抗129を接続する態様を説明する。図9は、構成要素に抵抗129を含む電力増幅回路100の半導体基板上の配置を示す図である。ピーク長電圧降下量とピーク短電圧降下量とを略等しくするための、ピーク短線路128に直列に抵抗129を接続する態様については、キャリア短線路125に直列に抵抗を接続する態様と同様であるため、その説明を省略する。
【0058】
電力増幅回路100は、例えば、キャリア長電圧降下量とキャリア短電圧降下量とを略等しくするために、キャリア短線路125に抵抗129を直列に接続する。換言すると、キャリア長線路124の断面とキャリア短線路125の断面とが略等しい場合、長さが短い方の線路に抵抗を接続することによって、第2区間単位抵抗を上げることができる。図9においては、キャリア短線路125に抵抗を接続することによって、第1バイアス回路123と第2キャリアアンプ118との間の第1区間単位抵抗と、第1バイアス回路123と第1キャリアアンプ115との間の第2区間単位抵抗とを略等しくできる。
【0059】
キャリア短線路125に直列に接続される抵抗129は、例えば、電力増幅回路100の他の構成要素と同一の半導体基板上に設けられている。図9に示すように、当該抵抗129は、例えば、キャリア短線路125の一方の端部に接続されていてもよいし、他方の端部に接続されていてもよいし、両方の端部それぞれに接続されていてもよい。さらに言うと、当該抵抗129は、例えばキャリア短線路125の途中に挿入されるよう接続されていてもよい。
【0060】
<<電力増幅回路100を小型化する構成>>
次に、図1図10を参照して、電力増幅回路100を小型化する構成について説明する。図10は、分配器111の構成の一例を示す図である。
【0061】
図10に示すように、分配器111は、例えば、トランス111a、第1コンデンサ111b、第2コンデンサ111cを含む。トランス111aは、例えば、磁界カップリングする入力側巻線111a1および出力側巻線111a2を含む巻線トランスである。トランス111aは、例えば、入力側巻線111a1に入力された信号を出力側巻線111a2に伝搬する。具体的には、トランス111aは、入力側巻線111a1に入力信号RFinが入力され、出力側巻線111a2から位相が反転する二つの信号(信号RF1,信号RF2)を出力する。トランス111aの入力側巻線111a1には、例えば電源電圧Vccが供給される。なお、トランス111aは、入力側巻線111a1及び出力側巻線111a2の巻線比を調整することにより、インピーダンス整合の機能を兼ねることができる。これにり、整合回路(例えば、整合回路113)を設ける必要がなくなり、半導体基板上に形成されたトランス111aによりインピーダンスを整合することができる。したがって、電力増幅回路100は、回路規模の削減を図ることができる。第1コンデンサ111bは、例えば入力側巻線111a1と並列に接続される。第2コンデンサ111cは、例えば出力側巻線111a2と並列に接続される。第1コンデンサ111bおよび第2コンデンサ111cは、例えば、トランス111aの寄生インダクタンスの影響を考慮した、トランス111aのインピーダンス整合のために設けられている。
【0062】
図1に示すように、電力増幅回路100は、第2キャリアアンプ118と第1ピークアンプ116とで第1ドハティ増幅器を構成し、第1キャリアアンプ115と第2ピークアンプ119とで第2ドハティ増幅器を構成する。上述したバランで構成される分配器111において位相が反転する二つの信号が生成されることにより、各ドハティ増幅器は、第1,第2移相器114,117(例えば、1/4波長線路)を通じて、キャリアアンプに、ピープアンプより位相が90度進んだ信号を入力できる。すなわち、差動のドハティ増幅器で構成される電力増幅回路100は、1/4波長線路に替えて、1/4波長線路よりも小さいバランを使用することにより、小型化が可能となる。
【0063】
図11を参照して、電力増幅回路を小型化する構成の第1変形例を説明する。図11は、第1変形例に係る電力増幅回路100aの一例を示す図である。電力増幅回路100aは、電力増幅回路100と比較して、第1移相器114a、第2移相器117a、第3移相器120a、及び第4移相器121aの接続先が異なる。具体的には、第1移相器114aは、例えば、分配器111と第1ピークアンプ116との間に電気的に接続されて、分岐信号RF11の位相を略90度遅延させる。第2移相器117aは、例えば、分配器111と第2ピークアンプ119との間に電気的に接続されて、分岐信号RF21の位相を略90度遅延させる。合成器122は、例えば、第1ピークアンプ116から出力される信号RFout11と、第1キャリアアンプ115から第3移相器120aを通じて出力される信号RFout12とを合成する合成部122a1で合成された信号(位相「90deg」)が入力される。また、合成器122は、例えば、第2ピークアンプ119から出力される信号RFout21と、第2キャリアアンプ118から第4移相器121aを通じて出力される信号RFout22とを合成する合成部122b1で合成された信号(位相「270deg」)が入力される。合成器122は、位相が反転する二つの信号を合成して信号RFoutを出力する。
【0064】
図12を参照して、電力増幅回路を小型化する構成の第2変形例を説明する。図12は、第2変形例に係る電力増幅回路100bの一例を示す図である。電力増幅回路100bは、電力増幅回路100と比較して、第1移相器114b、第2移相器117b、第3移相器120b、及び第4移相器121bの接続先が異なり、さらに、第1移相器114bおよび第2移相器117bにおける位相変化が異なる。第1移相器114bは、例えば、分配器111と第1ピークアンプ116との間に電気的に接続されて、分岐信号RF11の位相を略90度進める。第2移相器117bは、例えば、分配器111と第2ピークアンプ119との間に電気的に接続されて、分岐信号RF21の位相を略90度進める。合成器122は、例えば、第1ピークアンプ116から出力される信号RFout11と、第2キャリアアンプ118から第3移相器120bを通じて出力される信号RFout22とを合成する合成部122aで合成された信号(位相「270deg」)が入力される。また、合成器122は、例えば、第1キャリアアンプ115から第3移相器120bを通じて出力される信号RFout11と、第2ピークアンプ119から出力される信号RFout22とを合成する合成部122bで合成された信号(位相「90deg」)が入力される。合成器122は、位相が反転する二つの信号を合成して信号RFoutを出力する。なお、第1移相器114bおよび第2移相器117bは、例えば分布定数線路で構成されるハイパスフィルターである。
【0065】
図13を参照して、電力増幅回路を小型化する構成の第3変形例を説明する。図13は、第3変形例に係る電力増幅回路100cの一例を示す図である。電力増幅回路100cは、第1変形例に係る電力増幅回路100aと比較して、第1移相器114cおよび第2移相器117cが異なる。具体的には、第1移相器114cは、例えば、分配器111と第1キャリアアンプ115との間に電気的に接続されて、分岐信号RF12の位相を略90度進める。第2移相器117cは、例えば、分配器111と第2キャリアアンプ118との間に電気的に接続されて、分岐信号RF22の位相を略90度進める。合成器122は、例えば、第1ピークアンプ116から出力される信号RFout11と、第1キャリアアンプ115から第3移相器120cを通じて出力される信号RFout12とを合成する合成部122a1で合成された信号(位相「90deg」)が入力される。また、合成器122は、例えば、第2ピークアンプ119から出力される信号RFout21と、第2キャリアアンプ118から第4移相器121cを通じて出力される信号RFout22とを合成する合成部122b1で合成された信号(位相「270deg」)が入力される。合成器122cは、位相が反転する二つの信号を合成して信号RFoutを出力する。
【0066】
===まとめ===
本実施形態に係る電力増幅回路100は、入力信号RFinを、信号RF2(第1信号)と、信号RF2(第1信号)と位相が異なる信号RF1(第2信号)と、に分配する分配器111と、信号RF2(第1信号)から分岐された分岐信号RF21(第1分岐信号)を増幅して信号RFout22(第1増幅信号)を出力する第2キャリアアンプ118(第1増幅器)と、信号RF2(第1信号)から分岐された分岐信号RF21(第2分岐信号)の電力レベルが所定の電力レベル以上を示すときに、分岐信号RF21(第2分岐信号)を増幅して信号RFout21(第2増幅信号)を出力する第2ピークアンプ119(第2増幅器)と、信号RF1(第2信号)から分岐された分岐信号RF12(第3分岐信号)を増幅して信号RFout12(第3増幅信号)を出力する第1キャリアアンプ115(第3増幅器)と、信号RF1(第2信号)から分岐された分岐信号RF11(第4分岐信号)の電力レベルが所定の電力レベル以上を示すときに、分岐信号RF11(第4分岐信号)を増幅してRFout11(第4増幅信号)を出力する第1ピークアンプ116(第4増幅器)と、第1バイアス電圧を出力する第1バイアス回路123と、第1バイアス回路123と第2キャリアアンプ118(第1増幅器)とを接続する、第1の長さのキャリア長線路124(第1線路)と、第1バイアス回路123と第1キャリアアンプ115(第3増幅器)とを接続する、第1の長さよりも短い第2の長さのキャリア短線路125(第2線路)と、を同一の半導体基板上に備え、キャリア長線路124(第1線路)およびキャリア短線路125(第2線路)は、第1バイアス回路123と第2キャリアアンプ118(第1増幅器)との間における第1バイアス電圧の電圧降下量と、第1バイアス回路123と第1キャリアアンプ115(第3増幅器)との間における第1バイアス電圧の電圧降下量と、が略等しくなるように形成される。これにより、電力増幅回路100の効率が向上する。加えて、出力電力のパワーアップやひずみ特性を向上させることができる。
【0067】
また、本実施形態に係る電力増幅回路100は、第2バイアス電圧を出力する第2バイアス回路126と、第2バイアス回路126と第2ピークアンプ119(第2増幅器)とを接続する、第3の長さのピーク長線路127(第3線路)と、第2バイアス回路126と第1ピークアンプ116(第4増幅器)とを接続する、第3の長さよりも短い第4の長さのピーク短線路128(第4線路)と、を、同一の半導体基板上にさらに備え、ピーク長線路127(第3線路)およびピーク短線路128(第4線路)は、第2バイアス回路126と第2ピークアンプ119(第2増幅器)との間における第2バイアス電圧の電圧降下量と、第2バイアス回路126と第1ピークアンプ116(第4増幅器)との間における第2バイアス電圧の電圧降下量と、が略等しくなるように形成される。これにより、電力増幅回路100の効率が向上する。さらに効率が向上するだけでなく、出力電力のパワーアップやひずみ特性を向上させることができる。
【0068】
また、本実施形態に係る電力増幅回路100は、キャリア長線路124(第1線路)は、キャリア長線路124(第1線路)の長さ方向と直交する断面が第1断面積を有する第1部分を含み、キャリア短線路125(第2線路)は、キャリア短線路125(第2線路)の長さ方向と直交する断面が第2断面積を有する第2部分を含み、第1断面積は、第2断面積よりも大きい。これにより、差動の関係にある二つのアンプのバイアス点を合わせることができるため、電力増幅回路100の効率が向上する。
【0069】
また、本実施形態に係る電力増幅回路100は、キャリア長線路124(第1線路)の第1部分は、2以上の第1の数の層で形成され、キャリア短線路125(第2線路)の第2部分は、第1の数よりも少ない第2の数の層で形成される。これにより、線路の抵抗を適切に調整することで、差動の関係にある二つのアンプのバイアス点を合わせることができるため、電力増幅回路100の効率が向上する。さらに効率が向上するだけでなく、出力電力のパワーアップやひずみ特性を向上させることができる。
【0070】
また、本実施形態に係る電力増幅回路100は、キャリア長線路124(第1線路)の第1部分は、所定の導電材料で形成される第1コンダクタ124cと、第1コンダクタ124cに積層される、所定の導電材料で形成される第2コンダクタ124dと、で形成され、第2コンダクタ124dは、キャリア長線路124(第1線路)のx方向(長さ方向)と直交するy方向(幅方向)の端部において、x方向(長さ方向)およびy方向(幅方向)に直交する厚み方向の厚みが、第2コンダクタ124dのy方向(幅方向)の中央部における厚みよりも厚い部分を有する。これにより、線路の抵抗を適切に調整することで、差動の関係にある二つのアンプのバイアス点を合わせることができるため、電力増幅回路100の効率が向上する。さらに、第2コンダクタ124dの端部のz方向の厚みを厚くすることにより電力損失を低減できる。
【0071】
また、本実施形態に係る電力増幅回路100は、キャリア長線路124(第1線路)の第1部分は、所定の導電材料で形成される第1コンダクタ124fと、第1コンダクタ124fに積層される、所定の導電材料で形成される第2コンダクタ124gと、で形成され、第2コンダクタ124gは、キャリア長線路124(第1線路)のx方向(長さ方向)と直交するy方向(幅方向)の端部に、x方向(長さ方向)に沿って設けられる。これにより、線路の抵抗を適切に調整することで、差動の関係にある二つのアンプのバイアス点を合わせることができるため、電力増幅回路100の効率が向上する。さらに、キャリア長線路124の端部のz方向の厚みを厚くすることにより電力損失を低減できる。
【0072】
また、本実施形態に係る電力増幅回路100は、キャリア長線路124(第1線路)の第1部分は、1以上の第1の数の層で形成され、キャリア短線路125(第2線路)の第2部分は、第1の数よりも多い第2の数の層で形成される。これにより、キャリア短線路125の第2区間単位抵抗を、キャリア長線路124の第1区間単位抵抗と略等しくできる。すなわち、キャリア短電圧降下量がキャリア長電圧降下量と略等しくなるため、差動の関係にある二つのアンプのバイアス点を合わせることができる。
【0073】
また、本実施形態に係る電力増幅回路100は、キャリア短線路125(第2線路)の第2部分は、所定の導電材料で形成される第3コンダクタ125cと、第3コンダクタ125cに積層される、所定の導電材料で形成される第4コンダクタ125dと、で形成され、第4コンダクタ125dは、キャリア短線路125(第2線路)のx方向(長さ方向)と直交するy方向(幅方向)の端部において、x方向(長さ方向)およびy方向(幅方向)に直交するz方向(厚み方向)の厚みが、第4コンダクタ125dのy方向(幅方向)の中央部における厚みよりも厚い部分を有する。これにより、線路の抵抗を適切に調整することで、差動の関係にある二つのアンプのバイアス点を合わせることができるため、電力増幅回路100の効率が向上する。さらに、第4コンダクタ125dの端部のz方向の厚みを厚くすることにより電力損失を低減できる。
【0074】
また、本実施形態に係る電力増幅回路100は、キャリア短線路125(第2線路)の第2部分は、所定の導電材料で形成される第3コンダクタ125cと、第3コンダクタ125cに積層される、所定の導電材料で形成される第4コンダクタ125dと、で形成され、第4コンダクタ125dは、キャリア短線路125(第2線路)のx方向(長さ方向)と直交するy方向(幅方向)の端部に、x方向(長さ方向)に沿って設けられる。これにより、線路の抵抗を適切に調整することで、差動の関係にある二つのアンプのバイアス点を合わせることができるため、電力増幅回路100の効率が向上する。さらに、キャリア短線路125の端部のz方向の厚みを厚くすることにより電力損失を低減できる。
【0075】
また、本実施形態に係る電力増幅回路100は、第1バイアス回路123と第1キャリアアンプ115(第3増幅器)との間においてキャリア短線路125(第2線路)と直列に接続される抵抗129を、同一の半導体基板上にさらに備える。これにより、第1バイアス回路123と第2キャリアアンプ118との間の第1区間単位抵抗と、第1バイアス回路123と第1キャリアアンプ115との間の第2区間単位抵抗とを略等しくできる。すなわち、キャリア短電圧降下量がキャリア長電圧降下量と略等しくなるため、差動の関係にある二つのアンプのバイアス点を合わせることができる。
【0076】
また、本実施形態に係る電力増幅回路100は、ピーク長線路127(第3線路)は、ピーク長線路127(第3線路)のx方向(長さ方向)と直交する断面が第3断面積を有する第3部分を含み、ピーク短線路128(第4線路)は、ピーク短線路128(第4線路)のx方向(長さ方向)と直交する断面が第4断面積を有する部分を含み、第3断面積は、第4断面積よりも大きい。これにより、差動の関係にある二つのアンプのバイアス点を合わせることができるため、電力増幅回路100の効率が向上する。さらに、効率が向上するだけでなく、出力電力のパワーアップやひずみ特性を向上させることができる。
【0077】
また、本実施形態に係る電力増幅回路100は、ピーク長線路127(第3線路)の第3部分は、2以上の第3の数の層で形成され、ピーク短線路128(第4線路)の第4部分は、第1の数よりも少ない第4の数の層で形成される。これにより、線路の抵抗を適切に調整することで、差動の関係にある二つのアンプのバイアス点を合わせることができるため、電力増幅回路100の効率が向上する。さらに、効率が向上するだけでなく、出力電力のパワーアップやひずみ特性を向上させることができる。
【0078】
また、本実施形態に係る電力増幅回路100は、ピーク長線路127(第3線路)の第3部分は、所定の導電材料で形成される第5コンダクタ(第1コンダクタ124cに相当)と、第5コンダクタ(第1コンダクタ124cに相当)に積層される、所定の導電材料で形成される第6コンダクタ(第2コンダクタ124dに相当)と、で形成され、第6コンダクタ(第2コンダクタ124dに相当)は、ピーク長線路127(第3線路)のx方向(長さ方向)と直交するy方向(幅方向)の端部において、x方向(長さ方向)およびy方向(幅方向)に直交する厚み方向の厚みが、第6コンダクタ(第2コンダクタ124dに相当)のy方向(幅方向)の中央部における厚みよりも厚い部分を有する。これにより、線路の抵抗を適切に調整することで、差動の関係にある二つのアンプのバイアス点を合わせることができるため、電力増幅回路100の効率が向上する。さらに、第6コンダクタの端部のz方向の厚みを厚くすることにより電力損失を低減できる。
【0079】
また、本実施形態に係る電力増幅回路100は、ピーク長線路127(第3線路)の第3部分は、所定の導電材料で形成される第5コンダクタ(第1コンダクタ124fに相当)と、第5コンダクタ(第1コンダクタ124fに相当)に積層される、所定の導電材料で形成される第6コンダクタ(第2コンダクタ124gに相当)と、で形成され、第6コンダクタ(第2コンダクタ124gに相当)は、ピーク長線路127(第3線路)のx方向(長さ方向)と直交するy方向(幅方向)の端部に、x方向(長さ方向)に沿って設けられる。これにより、線路の抵抗を適切に調整することで、差動の関係にある二つのアンプのバイアス点を合わせることができるため、電力増幅回路100の効率が向上する。さらに、ピーク長線路127の端部のz方向の厚みを厚くすることにより電力損失を低減できる。
【0080】
また、本実施形態に係る電力増幅回路100は、ピーク長線路127(第3線路)の第3部分は、1以上の第3の数の層で形成され、ピーク短線路128(第4線路)の第4部分は、第1の数よりも多い第4の数の層で形成される。これにより、ピーク短線路128の第4区間単位抵抗を、ピーク長線路127の第3区間単位抵抗と略等しくできる。すなわち、ピーク短電圧降下量がピーク長電圧降下量と略等しくなるため、差動の関係にある二つのアンプのバイアス点を合わせることができる。
【0081】
また、本実施形態に係る電力増幅回路100は、ピーク短線路128(第4線路)の第4部分は、所定の導電材料で形成される第7コンダクタ(第3コンダクタ125cに相当)と、第7コンダクタ(第3コンダクタ125cに相当)に積層される、所定の導電材料で形成される第8コンダクタ(第4コンダクタ125dに相当)と、で形成され、第8コンダクタ(第4コンダクタ125dに相当)は、ピーク短線路128(第4線路)のx方向(長さ方向)と直交するy方向(幅方向)の端部において、x方向(長さ方向)およびy方向(幅方向)に直交する厚み方向の厚みが、第8コンダクタ(第4コンダクタ125dに相当)のy方向(幅方向)の中央部における厚みよりも厚い部分を有する。これにより、線路の抵抗を適切に調整することで、差動の関係にある二つのアンプのバイアス点を合わせることができるため、電力増幅回路100の効率が向上する。さらに、第8コンダクタの端部のz方向の厚みを厚くすることにより電力損失を低減できる。
【0082】
また、本実施形態に係る電力増幅回路100は、ピーク短線路128(第4線路)の第4部分は、所定の導電材料で形成される第7コンダクタ(第3コンダクタ125cに相当)と、第7コンダクタ(第3コンダクタ125cに相当)に積層される、所定の導電材料で形成される第8コンダクタ(第4コンダクタ125dに相当)と、で形成され、第8コンダクタ(第4コンダクタ125dに相当)は、ピーク短線路128(第4線路)のx方向(長さ方向)と直交するy方向(幅方向)の端部に、x方向(長さ方向)に沿って設けられる。これにより、線路の抵抗を適切に調整することで、差動の関係にある二つのアンプのバイアス点を合わせることができるため、電力増幅回路100の効率が向上する。さらに、ピーク短線路128の端部のz方向の厚みを厚くすることにより電力損失を低減できる。
【0083】
また、本実施形態に係る電力増幅回路100は、第2バイアス回路126と第1ピークアンプ116(第4増幅器)との間において、ピーク短線路128(第4線路)と直列に接続される抵抗を、同一の半導体基板上にさらに備える。これにより、第2バイアス回路126と第2ピークアンプ119との間の第3区間単位抵抗と、第2バイアス回路126と第1ピークアンプ116との間の第4区間単位抵抗とを略等しくできる。すなわち、ピーク短電圧降下量がピーク長電圧降下量と略等しくなるため、差動の関係にある二つのアンプのバイアス点を合わせることができる。
【0084】
また、本実施形態に係る電力増幅回路100は、分配器111と第2キャリアアンプ118(第1増幅器)との間に接続される、分岐信号RF21(第1分岐信号)の位相を変化させる第2移相器117,117c(移相器)と、分配器111と第1キャリアアンプ115(第3増幅器)との間に接続される、分岐信号RF12(第3分岐信号)の位相を変化させる第1移相器114,114c(移相器)と、をさらに備える。これにより、1/4波長線路の数を減らすことができるため、電力増幅回路100を小型化できる。
【0085】
また、本実施形態に係る電力増幅回路100は、分配器111と第2ピークアンプ119(第2増幅器)との間に接続される、分岐信号RF21(第2分岐信号)の位相を変化させる第2移相器117a,117b(移相器)と、分配器111と第1ピークアンプ116(第4増幅器)との間に接続される、分岐信号RF11(第4分岐信号)の位相を変化させる第1移相器114a,114b(移相器)と、をさらに備える。これにより、1/4波長線路の数を減らすことができるため、電力増幅回路100を小型化できる。
【0086】
また、本実施形態に係る電力増幅回路100の分配器111は、バランである。これにより、1/4波長線路の数を減らすことができるため、電力増幅回路100を小型化できる。
【0087】
以上説明した実施形態は、本開示の理解を容易にするためのものであり、本開示を限定して解釈するためのものではない。本開示は、その趣旨を逸脱することなく、変更又は改良され得るとともに、本開示にはその等価物も含まれる。すなわち、実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。実施形態が備える素子及びその配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0088】
100…電力増幅回路、111…分配器、114…第1移相器、117…第2移相器、115…第1キャリアアンプ、116…第1ピークアンプ、118…第2キャリアアンプ、119…第2ピークアンプ、120…第3移相器、121…第4移相器、122…合成器、123…第1バイアス回路、124…キャリア長線路、125…キャリア短線路、126…第2バイアス回路、127…ピーク長線路、128…ピーク短線路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13