(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】共振素子、フィルタ、およびモジュール
(51)【国際特許分類】
H03H 7/01 20060101AFI20241008BHJP
H03H 5/02 20060101ALI20241008BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20241008BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H03H7/01 Z
H03H5/02
H01F17/00 D
H01F27/00 S
H01F17/00 A
(21)【出願番号】P 2022553567
(86)(22)【出願日】2021-09-01
(86)【国際出願番号】 JP2021032070
(87)【国際公開番号】W WO2022070739
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2020163254
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 陽
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-063394(JP,A)
【文献】特許第6338784(JP,B1)
【文献】国際公開第2019/087739(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 5/00-7/54
H01F 17/00
H01F 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体と、
前記積層体に配置された第1平面電極と、
前記積層体に配置された第2平面電極と、
前記積層体に配置され、前記第1平面電極の法線方向において、前記第1平面電極と前記第2平面電極との間に配置された第3平面電極と、
前記第1平面電極と前記第3平面電極とを接続する、第1ビア電極および第2ビア電極と、
前記第1平面電極と前記第2平面電極とを接続する、第3ビア電極および第4ビア電極とを備え、
前記法線方向から前記第1平面電極を平面視した場合、前記第1ビア電極と前記第2ビア電極とを結ぶ第1仮想線と、前記第3ビア電極と前記第4ビア電極とを結ぶ第2仮想線とは交差し、
前記第1ビア電極を流れる電流の方向および前記第2ビア電極に流れる電流の方向は、同じであり、
前記第3ビア電極に流れる電流の方向および前記第4ビア電極に流れる電流の方向は、同じであり、
前記第1ビア電極を流れる電流の方向および前記第3ビア電極に流れる電流の方向は逆である
、共振素子。
【請求項2】
前記第3平面電極に端子が形成され、
前記法線方向から前記第3平面電極を平面視した場合、前記端子は、前記第1平面電極および前記第2平面電極に重なっていない、請求項
1に記載の共振素子。
【請求項3】
前記第3平面電極は、前記第1ビア電極が接続された第1部分と、前記第2ビア電極とが接続された第2部分とを有し、
前記法線方向から前記第3平面電極を平面視した場合、前記第1部分の一部および前記第2部分の一部は、前記第2平面電極と重なっていない、請求項1
または2に記載の共振素子。
【請求項4】
積層体と、
前記積層体に配置された第1平面電極と、
前記積層体に配置された第2平面電極と、
前記積層体に配置され、前記第1平面電極の法線方向において、前記第1平面電極と前記第2平面電極との間に配置された第3平面電極と、
前記第1平面電極と前記第3平面電極とを接続する、第1ビア電極および第2ビア電極と、
前記第1平面電極と前記第2平面電極とを接続する、第3ビア電極および第4ビア電極と、
前記第1平面電極と前記第3平面電極とを接続する第5ビア電極と、
前記第1平面電極と前記第2平面電極とを接続する第6ビア電極とを備え、
前記法線方向から前記第1平面電極を平面視した場合、前記第1ビア電極と前記第2ビア電極とを結ぶ第1仮想線と、前記第3ビア電極と前記第4ビア電極とを結ぶ第2仮想線とは交差し、
前記法線方向から前記第1平面電極を平面視した場合、前記第2ビア電極と前記第5ビア電極とを結ぶ第3仮想線と、前記第4ビア電極と前記第6ビア電極とを結ぶ第4仮想線とは交差し、
前記第1ビア電極を流れる電流の方向、前記第2ビア電極を流れる電流の方向、および前記第5ビア電極を流れる電流の方向は、同じであり、
前記第3ビア電極を流れる電流の方向、前記第4ビア電極を流れる電流の方向、および前記第6ビア電極を流れる電流の方向は、同じであり、
前記第1ビア電極を流れる電流の方向および前記第3ビア電極を流れる電流の方向は、逆である
、共振素子。
【請求項5】
前記第1ビア電極、前記第4ビア電極、および前記第5ビア電極は、前記第1ビア電極の延在方向と直交する第1方向に沿って配置され、
前記第3ビア電極、前記第2ビア電極、および前記第6ビア電極は、前記延在方向と直交する第2方向に沿って配置されている、請求項
4に記載の共振素子。
【請求項6】
前記第3平面電極は、前記第5ビア電極が接続された第3部分をさらに含み、
前記法線方向から前記第3平面電極を平面視した場合、前記第3部分の一部は、前記第2平面電極と重なっていない、請求項
4または5に記載の共振素子。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の共振素子を備える、フィルタ。
【請求項8】
請求項
7に記載のフィルタを備える、モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振素子、当該共振素子を含むフィルタ、および当該フィルタを含むモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、共振素子が知られている。たとえば、国際公開第2020/105257号(特許文献1)には、誘電体の内部に複数のビア電極が形成された共振素子が開示されている。当該複数のビア電極がインダクタを形成することにより、共振素子において誘電体が占める割合が増加する。その結果、共振素子の強度を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている共振素子においては、キャパシタを形成する2つの平面電極のうち一方の平面電極が1つのビア電極に接続されているため、当該ビア電極に当該キャパシタを流れる電流が集中する。その結果、当該共振素子の挿入損失が悪化し得る。
【0005】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は共振素子の挿入損失を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る共振素子は、積層体と、第1平面電極と、第2平面電極と、第3平面電極と、第1ビア電極と、第2ビア電極と、第3ビア電極と、第4ビア電極とを備える。第1平面電極、第2平面電極および第3平面電極は、積層体に配置されている。第3平面電極は、第1平面電極の法線方向において、第1平面電極と第2平面電極との間に配置されている。第1ビア電極および第2ビア電極は、第1平面電極と第3平面電極とを接続する。第3ビア電極および第4ビア電極は、第1平面電極と第2平面電極とを接続する。第1平面電極の法線方向から第1平面電極を平面視した場合、第1ビア電極と第2ビア電極とを結ぶ第1仮想線と、第3ビア電極と第4ビア電極とを結ぶ第2仮想線とは交差する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る共振素子によれば、第1平面電極の法線方向から第1平面電極を平面視した場合、第1ビア電極と第2ビア電極とを結ぶ第1仮想線と、第3ビア電極と第4ビア電極とを結ぶ第2仮想線とが交差することにより、当該共振素子の挿入損失を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係るフィルタの一例であるダイプレクサの等価回路図である。
【
図3】
図2の積層体の内部に形成された複数の電極の斜視図である。
【
図4】
図3の共振素子を形成する複数の電極の斜視図である。
【
図5】
図4の共振素子をX軸方向から平面視した図である。
【
図6】
図4の共振素子をZ軸方向から平面視した図である。
【
図7】
図3のインダクタとキャパシタとを形成する複数の電極の斜視図である。
【
図8】比較例に係る共振素子を形成する複数の電極の斜視図である。
【
図9】実施の形態2に係る共振素子を形成する複数の電極の斜視図である。
【
図10】
図9の共振素子をZ軸方向から平面視した図である。
【
図11】実施の形態3に係る共振素子を形成する複数の電極の斜視図である。
【
図12】
図11の共振素子をZ軸方向から平面視した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則として繰り返さない。
【0010】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に係るフィルタの一例であるダイプレクサ1の等価回路図である。
図1に示されるように、ダイプレクサ1は、共通端子Pcomと、端子P1,P2と、インダクタL1,L2と、キャパシタC1,C2と、共振素子10,20とを備える。共振素子20の共振周波数は、共振素子10の共振周波数とは異なる。
【0011】
共振素子10は、端子P11,P12と、インダクタL11と、キャパシタC11とを含む。インダクタL11とキャパシタC11とは、端子P11とP12との間において並列に接続されている。共振素子10は、LC並列共振回路を形成している。
【0012】
インダクタL1は、共通端子Pcomと端子P11との間に接続されている。キャパシタC1は、接地点である接地端子G1と端子P11との間に接続されている。端子P1は、端子P12に接続されている。
【0013】
共振素子20は、端子P21,P22と、インダクタL21と、キャパシタC21とを備える。インダクタL21とキャパシタC21とは、端子P21とP22との間において並列に接続されている。共振素子20は、LC並列共振回路を形成している。
【0014】
キャパシタC2は、共通端子Pcomと端子P21との間に接続されている。インダクタL2は、接地点である接地端子G2と端子P21との間に接続されている。端子P2は、端子P22に接続されている。
【0015】
図2は、
図1のダイプレクサ1の外観斜視図である。
図2に示されるX軸,Y軸,Z軸は互いに直交している。
図3~
図12においても同様である。積層体100においては、複数の誘電体層がZ軸方向に積層されている。積層体100の内部に、
図1に示される等価回路を形成する複数の電極が形成されている。すなわち、ダイプレクサ1は、積層された複数の誘電体層に複数の電極が形成されたモジュールに含まれている。
【0016】
図2に示されるように、ダイプレクサ1の上面UFには、方向識別マークDMが形成されている。ダイプレクサ1の底面BFには、共通端子Pcomと、端子P1,P2,P3と、接地端子G1,G2が形成されている。共通端子Pcomと、端子P1~P3と、接地端子G1,G2とは、たとえば底面BFに平面電極が規則的に配置されたLGA(Land Grid Array)端子である。ダイプレクサ1の底面BFは、不図示の回路基板に接続される。
【0017】
図3は、
図2の積層体100の内部に形成された複数の電極の斜視図である。以下では、複数の電極によって形成された電極構造を見易くするため、
図3に示される複数の電極を、共振素子10,20を形成する複数の電極と、インダクタL1,L2とキャパシタC1,C2とを形成する複数の電極とに分けて説明する。
【0018】
図4は、
図3の共振素子10,20を形成する複数の電極の斜視図である。
図5は、
図4の共振素子10,20をX軸方向から平面視した図である。
図6は、
図4の共振素子10,20をZ軸方向から平面視した図である。
【0019】
図4~
図6に示されるように、共振素子10は、平面電極101(第1平面電極)と、平面電極102(第2平面電極)と、平面電極103(第3平面電極)と、ビア電極111(第1ビア電極)と、ビア電極112(第2ビア電極)と、ビア電極113(第3ビア電極)と、ビア電極114(第4ビア電極)とを備える。
【0020】
平面電極103は、平面電極101の法線方向(Z軸方向)において、平面電極101と102との間に配置されている。ビア電極111,112は、Z軸方向に延在し、平面電極101と103とを接続している。ビア電極113,114は、Z軸方向に延在し、平面電極101と102とを接続している。
【0021】
平面電極103は、ビア電極303に接続されている。平面電極103とビア電極303との接続部分に端子P11が形成されている。ビア電極301は、平面電極102と端子P1とを接続している。平面電極102とビア電極301との接続部分に端子P12が形成されている。
【0022】
ビア電極111,112の各々は、ビア電極113,114の各々よりも短い。平面電極103と102との距離は、平面電極103と101との距離よりも短い。
【0023】
ビア電極111~114は、インダクタL11を形成している。平面電極102と103とは、Z軸方向において互いに対向し、キャパシタC11を形成している。
【0024】
共振素子20は、平面電極201(第1平面電極)と、平面電極202(第2平面電極)と、平面電極203(第3平面電極)と、ビア電極211(第1ビア電極)と、ビア電極212(第2ビア電極)と、ビア電極213(第3ビア電極)と、ビア電極214(第4ビア電極)とを備える。
【0025】
平面電極203は、平面電極201の法線方向において、平面電極201と202との間に配置されている。ビア電極211,212は、Z軸方向に延在し、平面電極201と203とを接続している。ビア電極213,214は、Z軸方向に延在し、平面電極201と202とを接続している。
【0026】
平面電極203は、ビア電極304に接続されている。平面電極203とビア電極304との接続部分に端子P21が形成されている。ビア電極302は、平面電極202と端子P2とを接続している。平面電極202とビア電極302との接続部分に端子P22が形成されている。
【0027】
ビア電極211,212の各々は、ビア電極213,214の各々よりも短い。平面電極203と202との距離は、平面電極203と201との距離よりも短い。
【0028】
ビア電極211~214は、インダクタL21を形成している。平面電極202と203とは、Z軸方向において互いに対向し、キャパシタC21を形成している。
【0029】
図6に示されるように、Z軸方向から平面電極101を平面視した場合、ビア電極111、ビア電極111と113との間の領域Rg11、ビア電極113、ビア電極113と112との間の領域Rg12、ビア電極112、ビア電極112と114との間の領域Rg13、ビア電極114、およびビア電極114と111との間の領域Rg14は、ループ状の領域を形成する。当該ループ状の領域において、平面電極101と103とを接続するビア電極111,112、および平面電極101と102とを接続するビア電極113,114は、交互に配置されている。ビア電極111と112とを結ぶ仮想線VL11(第1仮想線)と、ビア電極113と114とを結ぶ仮想線VL12(第2仮想線)とは交差している。
【0030】
ビア電極111を流れる電流の方向およびビア電極112に流れる電流の方向は、同じである。ビア電極113に流れる電流の方向およびビア電極114に流れる電流の方向は、同じである。ビア電極111を流れる電流の方向およびビア電極113に流れる電流の方向は逆である。
【0031】
平面電極103の一部は、平面電極101,102に重なっていない。端子P11は、平面電極101,102に重なっていない平面電極103の部分に形成されている。
【0032】
Z軸方向から平面電極201を平面視した場合、ビア電極211、ビア電極211と213との間の領域Rg15、ビア電極213、ビア電極213と212との間の領域Rg16、ビア電極212、ビア電極212と214との間の領域Rg17、ビア電極214、およびビア電極214と211との間の領域Rg18は、ループ状の領域を形成する。当該ループ状の領域において、平面電極201と203とを接続するビア電極211,212、および平面電極201と202とを接続するビア電極213,214は、交互に配置されている。ビア電極211と212とを結ぶ仮想線VL13(第1仮想線)と、ビア電極213と214とを結ぶ仮想線VL14(第2仮想線)とは交差している。
【0033】
ビア電極211を流れる電流の方向およびビア電極212に流れる電流の方向は、同じである。ビア電極213に流れる電流の方向およびビア電極214に流れる電流の方向は、同じである。ビア電極211を流れる電流の方向およびビア電極213に流れる電流の方向は逆である。
【0034】
平面電極203の一部は、平面電極201,202に重なっていない。端子P21は、平面電極201,202に重なっていない平面電極203の部分に形成されている。
【0035】
図7は、
図3のインダクタL1,L2とキャパシタC1,C2とを形成する複数の電極の斜視図である。
図7に示されるように、平面電極161は、ビア電極305,306によって接地端子G1に接続されている。平面電極162は、Z軸方向において平面電極161と対向している。平面電極161,162は、キャパシタC1を形成している。
【0036】
線路電極163,164は、Z軸方向に延在する軸を中心に巻回するように形成されている。線路電極163は、ビア電極303によって平面電極162に接続されている。線路電極163は、ビア電極308によって線路電極164に接続されている。線路電極164は、ビア電極307によって平面電極165に接続されている。線路電極163,164は、インダクタL1を形成している。
【0037】
平面電極165は、ビア電極309によって共通端子Pcomに接続されている。平面電極165は、ビア電極310によって平面電極166に接続されている。平面電極166は、Z軸方向において平面電極167と対向している。平面電極166,167は、キャパシタC2を形成している。
【0038】
線路電極168,169は、Z軸方向に延在する軸を中心に巻回するように形成されている。線路電極168は、ビア電極313によって平面電極170に接続されている。線路電極168は、ビア電極312によって線路電極169に接続されている。線路電極169は、ビア電極311によって平面電極167に接続されている。線路電極168,169は、インダクタL2を形成している。平面電極170は、ビア電極314,315によって接地端子G2に接続されている。
【0039】
図8は、比較例に係る共振素子9を形成する複数の電極の斜視図である。
図8に示されるように、共振素子9は、平面電極901,902,903と、ビア電極911,912,913,914,915とを備える。
【0040】
平面電極903は、平面電極901の法線方向において、平面電極901と902との間に配置されている。ビア電極911は、Z軸方向に延在し、平面電極901と903とを接続している。ビア電極912~915は、Z軸方向に延在し、平面電極901と902とを接続している。ビア電極912,913は、Y軸方向に沿って配置されている。ビア電極913,914は、X軸方向に沿って配置されている。ビア電極914,915は、Y軸方向に沿って配置されている。ビア電極915,912は、X軸方向に沿って配置されている。
【0041】
ビア電極911は、ビア電極912~915の各々よりも短い。平面電極903と902との距離は、平面電極903と901との距離よりも短い。
【0042】
ビア電極911~915は、インダクタを形成している。平面電極902と903とは、Z軸方向において互いに対向し、キャパシタを形成している。
【0043】
平面電極903は、ビア電極912と913との間に配置された部分を有する。当該部分に端子P91が形成されている。平面電極902には、端子P92が形成されている。
【0044】
共振素子9においては、平面電極901と903とがビア電極911によって接続されているため、平面電極901,903とによって形成されるキャパシタを流れる電流がビア電極911に集中する。その結果、共振素子9の挿入損失が悪化し得る。
【0045】
そこで、実施の形態に係る共振素子においては、第1平面電極の法線方向から第1平面電極を平面視した場合、第1平面電極と第3平面電極とを接続する複数のビア電極、および第1平面電極と第2平面電極とを接続する複数のビア電極を、ループ状の領域において交互に配置して、第1仮想線と第2仮想線とを交差させる。第1平面電極と第3平面電極とが複数のビア電極によって接続されているため、第2平面電極と第3平面電極とで形成されるキャパシタを流れる電流が第1平面電極と第3平面電極とを接続する複数のビア電極に分散される。その結果、共振素子の挿入損失を比較例に係る共振素子の挿入損失よりも改善することができる。
【0046】
また、第1平面電極と第3平面電極とを接続する複数のビア電極を流れる電流の向きと、第1平面電極と第2平面電極とを接続する複数のビア電極を流れる電流の向きとが互いに逆になるため、ループ状の領域において互いに隣接する2つのビア電極から発生する磁界の向きも逆になる。当該ループ状の領域において配置された複数のビア電極から互いに独立する磁界が発生するため、共振素子と他の回路素子との結合を抑制することができる。
【0047】
以上、実施の形態1に係る共振素子によれば、当該共振素子の挿入損失を改善することができる。
【0048】
[実施の形態2]
実施の形態2においては、第3平面電極の幅を広くして、共振素子の特性の製造ばらつき、および第1平面電極と第2平面電極とが短絡するリスクを低減する構成について説明する。
【0049】
図9は、実施の形態2に係る共振素子12を形成する複数の電極の斜視図である。
図9に示されるように、共振素子12は、平面電極121(第1平面電極)と、平面電極122(第2平面電極)と、平面電極123(第3平面電極)と、ビア電極131(第1ビア電極)と、ビア電極132(第2ビア電極)と、ビア電極133(第3ビア電極)と、ビア電極134(第4ビア電極)とを備える。
【0050】
平面電極123は、平面電極121の法線方向(Z軸方向)において、平面電極121と122との間に配置されている。ビア電極131,132は、Z軸方向に延在し、平面電極121と123とを接続している。ビア電極133,134は、Z軸方向に延在し、平面電極121と122とを接続している。
【0051】
ビア電極131,132の各々は、ビア電極133,134の各々よりも短い。平面電極123と122との距離は、平面電極123と121との距離よりも短い。
【0052】
ビア電極131~134は、インダクタを形成している。平面電極122と123とは、Z軸方向において互いに対向し、キャパシタを形成している。
【0053】
図10は、
図9の共振素子12をZ軸方向から平面視した図である。
図10に示されるように、Z軸方向から平面電極123を平面視した場合、ビア電極131、ビア電極131と133との間の領域Rg21、ビア電極133、ビア電極133と132との間の領域Rg22、ビア電極132、ビア電極132と134との間の領域Rg23、ビア電極134、およびビア電極134と131との間の領域Rg24は、ループ状の領域を形成する。当該ループ状の領域において、平面電極121と123とを接続するビア電極131,132、および平面電極121と122とを接続するビア電極133,134は、交互に配置されている。ビア電極131と132とを結ぶ仮想線VL21(第1仮想線)と、ビア電極133と134とを結ぶ仮想線VL22(第2仮想線)とは交差している。
【0054】
ビア電極131を流れる電流の方向およびビア電極132に流れる電流の方向は、同じである。ビア電極133に流れる電流の方向およびビア電極134に流れる電流の方向は、同じである。ビア電極131を流れる電流の方向およびビア電極133に流れる電流の方向は逆である。
【0055】
平面電極123は、ビア電極131が接続された部分Pr21(第1部分)と、ビア電極132が接続された部分Pr22(第2部分)とを含む。部分Pr21の一部および部分Pr22の一部は、平面電極121,122と重なっていない。
【0056】
製造ばらつきによって平面電極122と123との相対的な位置関係にずれが生じたとしても、平面電極123には、平面電極122と重なっていない部分(マージン)があるため、平面電極122と重なっている平面電極123の部分の面積の減少を抑制することができる。平面電極122と123とによって形成されるキャパシタの容量の製造ばらつきが抑制されるため、共振素子12の特性の製造ばらつきを抑制することができる。
【0057】
また、平面電極123の幅が比較的広いため、平面電極122と123とによって形成されるキャパシタの容量を比較的大きくすることができる。そのため、当該キャパシタの容量を増加させるために、平面電極122と123とを互いに近づける必要性が低い。平面電極122と123との間にある程度の間隔を確保することができるため、共振素子12の製造時にビア電極131,132が平面電極123を貫通することによって平面電極121と122とが短絡するリスクを低減することができる。
【0058】
以上、実施の形態2に係る共振素子によれば、当該共振素子の挿入損失を改善することができる。また、実施の形態2に係る共振素子によれば、共振素子の特性の製造ばらつき、および2つの平面電極が短絡するリスクを低減することができる。
【0059】
[実施の形態3]
実施の形態1,2においては、第1平面電極と第3平面電極とを接続するビア電極の数、および第1平面電極と第2平面電極とを接続するビア電極の数の各々が2である場合について説明した。当該ビア電極の数の各々は、3以上であってもよい。実施の形態3においては、当該ビア電極の数が3である場合について説明する。
【0060】
図11は、実施の形態3に係る共振素子13を形成する複数の電極の斜視図である。
図11に示されるように、共振素子13は、平面電極141(第1平面電極)と、平面電極142(第2平面電極)と、平面電極143(第3平面電極)と、ビア電極151(第1ビア電極)と、ビア電極152(第2ビア電極)と、ビア電極153(第3ビア電極)と、ビア電極154(第4ビア電極)と、ビア電極155(第5ビア電極)と、ビア電極156(第6ビア電極)とを備える。
【0061】
平面電極143は、平面電極141の法線方向(Z軸方向)において、平面電極141と142との間に配置されている。ビア電極151,152,155は、Z軸方向に延在し、平面電極141と143とを接続している。ビア電極153,154,156は、Z軸方向に延在し、平面電極141と142とを接続している。
【0062】
ビア電極151,152,155の各々は、ビア電極153,154,156の各々よりも短い。平面電極143と142との距離は、平面電極143と141との距離よりも短い。
【0063】
ビア電極151~156は、インダクタを形成している。平面電極142と143とは、Z軸方向において互いに対向し、キャパシタを形成している。
【0064】
図12は、
図11の共振素子13をZ軸方向から平面視した図である。
図12に示されるように、Z軸方向から平面電極143を平面視した場合、ビア電極151、ビア電極151と153との間の領域Rg31、ビア電極153、ビア電極153と152との間の領域Rg32、ビア電極152、ビア電極152と156との間の領域Rg35、ビア電極156、ビア電極156と155との間の領域Rg36、ビア電極155、ビア電極155と154との間の領域Rg37、ビア電極154、およびビア電極154と151との間の領域Rg34は、ループ状の領域を形成する。当該ループ状の領域において、平面電極141と143とを接続するビア電極151,152,155、および平面電極
141と
142とを接続するビア電極153,154,156は、交互に配置されている。
【0065】
ビア電極151と152とを結ぶ仮想線VL31(第1仮想線)と、ビア電極153と154とを結ぶ仮想線VL32(第2仮想線)とは交差している。ビア電極152と155とを結ぶ仮想線VL33(第3仮想線)と、ビア電極154と156とを結ぶ仮想線VL34(第4仮想線)とは交差している。
【0066】
ビア電極151を流れる電流の方向、ビア電極152を流れる電流の方向、およびビア電極155を流れる電流の方向は、同じである。ビア電極153を流れる電流の方向、ビア電極154を流れる電流の方向、およびビア電極156を流れる電流の方向は、同じである。ビア電極151を流れる電流の方向およびビア電極153を流れる電流の方向は、逆である。
【0067】
なお、ビア電極151、領域Rg31、ビア電極153、領域Rg32、ビア電極152、ビア電極152と154との間の領域Rg33、ビア電極154、および領域Rg34も、実施の形態1と同様にループ状の領域を形成する。
【0068】
平面電極143は、ビア電極151が接続された部分Pr31(第1部分)と、ビア電極152が接続された部分Pr32(第2部分)と、ビア電極155が接続された部分Pr33(第3部分)とを含む。部分Pr31の一部、部分Pr32の一部、および部分Pr33の一部は、平面電極141,142と重なっていない。
【0069】
共振素子13においても、実施の形態2と同様に、共振素子13の特性の製造ばらつき、および平面電極141と142とが短絡するリスクを低減することができる。
【0070】
また、平面電極141と143とを接続するビア電極の数、および平面電極141と142とを接続するビア電極の数の各々が3であるため、2つの平面電極の間を流れる電流が、実施の形態1,2よりも分散される。その結果、共振素子13の挿入損失を実施の形態1,2よりも改善することができる。
【0071】
以上、実施の形態3に係る共振素子によれば、当該共振素子の挿入損失を実施の形態1,2よりも改善することができる。また、実施の形態3に係る共振素子によれば、共振素子の特性の製造ばらつき、および2つの平面電極が短絡するリスクを低減することができる。
【0072】
今回開示された各実施の形態は、矛盾しない範囲で適宜組み合わされて実施されることも予定されている。今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
1 ダイプレクサ、9,10,12,13,20 共振素子、100 積層体、101~103,121~123,141~143,161,162,165~167,170,201~203,901~903 平面電極、111~114,131~134,151~156,211~214,301~315,911~915 ビア電極、163,164,168,169 線路電極、C1,C2,C11,C21 キャパシタ、DM 方向識別マーク、G1,G2 接地端子、L1,L2,L11,L21 インダクタ、P1~P3,P11,P12,P21,P22,P91,P92 端子、Pcom 共通端子、Pr21,Pr22,Pr31~Pr33 部分、VL11~VL14,VL21,VL22,VL31~VL34 仮想線。