(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】受光装置および通信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 10/112 20130101AFI20241008BHJP
H04B 10/67 20130101ALI20241008BHJP
H01L 31/0232 20140101ALI20241008BHJP
【FI】
H04B10/112
H04B10/67
H01L31/02 D
(21)【出願番号】P 2022573923
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2021039348
(87)【国際公開番号】W WO2022149333
(87)【国際公開日】2022-07-14
【審査請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2021000310
(32)【優先日】2021-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021106392
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】高田 紘也
(72)【発明者】
【氏名】水本 尚志
(72)【発明者】
【氏名】奥村 藤男
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-051400(JP,A)
【文献】特開昭61-128639(JP,A)
【文献】特開2004-096155(JP,A)
【文献】特開平10-051378(JP,A)
【文献】特開2015-184581(JP,A)
【文献】特開2006-003636(JP,A)
【文献】特開2005-274305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/112
H04B 10/67
H01L 31/0232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間光信号を集光する集光レンズと、
前記集光レンズによって集光された前記空間光信号に由来
し、入射面に含まれる異なる光線制御領域に入射した光信号を、
同一の所定領域に向けて出射する光線制御素子と、
前記所定領域に受光部を向けて配置され、前記光信号を受光する受光素子と、を備える受光装置。
【請求項2】
前記光線制御素子は、
前記集光レンズによって集光された前記光信号を、前記所定領域に向けて回折するニアフィールド回折光学素子である請求項1に記載の受光装置。
【請求項3】
前記光線制御素子は、
前記集光レンズによって集光された前記光信号を、前記所定領域に向けて回折して反射する反射型の回折光学素子である請求項1に記載の受光装置。
【請求項4】
前記光線制御素子から出射された前記光信号を、前記所定領域に配置された前記受光部に導光するライトパイプを備える請求項1乃至3のいずれか一項に記載の受光装置。
【請求項5】
前記ライトパイプは、
中空構造であり、内側の面上のうち少なくとも入射面近傍に、前記所定領域に配置された前記受光部に向けて前記光信号を指向的に導光する指向性導光体を有する請求項4に記載の受光装置。
【請求項6】
前記光線制御素子から出射された前記光信号を、前記所定領域に配置された前記受光部に導光する複数の光ファイバの束を含むファイババンドルを備える請求項1乃至3のいずれか一項に記載の受光装置。
【請求項7】
前記ファイババンドルに含まれる複数の前記光ファイバの各々の入射端の断面が、前記光線制御素子から出射された前記光信号の光軸に対して略垂直になるように、複数の前記光ファイバの各々が配置される請求項6に記載の受光装置。
【請求項8】
前記光線制御素子は、
前記空間光信号の到来方向に合わせた形状を有する請求項1乃至7のいずれか一項に記載の受光装置。
【請求項9】
前記受光素子によって受光された前記光信号に基づく信号をデコードするデコーダを備える請求項1乃至8のいずれか一項に記載の受光装置。
【請求項10】
複数の前記受光素子と、
複数の前記デコーダと、を備え、
複数の前記受光素子の各々は、
複数の前記所定領域のうちいずれかに前記受光部を向けて配置され、
複数の前記デコーダの各々は、
複数の前記受光素子のうちいずれかに接続され、
前記光線制御素子は、
複数の前記所定領域の各々に対応付けられた複数の光線制御領域を含み、複数の前記光線制御領域の各々に入射された前記光信号を、前記光線制御領域に対応付けられた前記所定領域に向けて出射する請求項9に記載の受光装置。
【請求項11】
請求項9または10の受光装置と、
デコーダによってデコードされた信号に応じた空間光信号を送光する送光部と、を備え
、
前記送光部が、
平行光を出射する光源と、
前記光源から出射された平行光の位相を変調する変調部を有する空間光変調器と、
前記空間光信号に対応する位相画像を前記変調部に設定し、前記位相画像が設定された前記変調部に向けて前記平行光が照射されるように前記光源を制御する制御部と、前記変調部で変調された光を投射する投射光学系と、を有する通信装置。
【請求項12】
空間光信号を集光する集光レンズと、前記集光レンズによって集光された前記空間光信号に由来する光信号を、所定領域に向けて出射する光線制御素子と、前記所定領域に受光部を向けて配置され、前記光信号を受光する受光素子と、前記受光素子によって受光された前記光信号に基づく信号をデコードするデコーダと、を有する受光装置と、
前記デコーダによってデコードされた信号に応じた空間光信号を送光する送光部と、を備え、
前記送光部が、
平行光を出射する光源と、
前記光源から出射された平行光の位相を変調する変調部を有する空間光変調器と、
前記空間光信号に対応する位相画像を前記変調部に設定し、前記位相画像が設定された前記変調部に向けて前記平行光が照射されるように前記光源を制御する制御部と、前記変調部で変調された光を投射する投射光学系と、を有する通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空間光信号を受光する受光装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
光空間通信においては、光ファイバなどの媒体を用いずに、空間を伝播する光信号(以下、空間光信号とも呼ぶ)を送受信し合う。空間を広がって伝搬する空間光信号を受信するためには、できる限り大きな集光レンズが必要となる。また、光空間通信においては、高速通信を行うために、静電容量の小さなフォトダイオードが必要である。そのようなフォトダイオードは、受光面が非常に小さいため、多様な方向から到来する空間光信号を、その受光面に向けて、大型の集光レンズで集光することは難しい。
【0003】
特許文献1には、集光された光をフィルタリングする受光装置について開示されている。特許文献1の装置は、第1集光レンズ、コリメートレンズ、バンドパスフィルタ、および受光素子を備える。コリメートレンズは、第1集光レンズの焦点距離よりも短い焦点距離を有し、集光レンズによって集光された光を平行光に変換する。コリメートレンズからの平行光は、バンドパスフィルタのフィルタ表面に対して垂直に入射される。入射光の波長のみを透過させるバンドパスフィルタを透過した光は、受光素子によって受光される。特許文献1には、バンドパスフィルタを通過した光を集光する第2集光レンズを配置したり、集光レンズの焦点位置にアパーチャを配置したりすることによって、集光レンズによって集光された光を、受光素子に導光しやすくする構成が開示されている。また、特許文献1には、光の入射角に合わせて、集光レンズやアパーチャを3軸方向に移動させて、集光レンズやアパーチャを最適な位置に調整する機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の手法によれば、バンドパスフィルタを通過した光を第2集光レンズに集光させたり、光の入射角に合わせて集光レンズやアパーチャを最適な位置に調整したりすることによって、空間光を受光素子に導くことができる。しかしながら、特許文献1の手法では、空間光の入射角に応じて、受光素子に導かれる光の強度が変化してしまう。そのため、特許文献1の手法では、空間光の到来方向によっては、空間光を効率的に受光できなくなる。
【0006】
本開示の目的は、任意の方向から到来する空間光信号を効率よく受光できる受光装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の受光装置は、空間光信号を受光する集光レンズと、集光レンズによって集光された空間光信号に由来する光信号を、所定領域に向けて出射する光線制御素子と、所定領域に受光部を向けて配置され、光信号を受光する受光素子と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、任意の方向から到来する空間光信号を効率よく受光できる受光装置等を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態の受光装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図2】第1の実施形態の受光装置における光の軌跡の一例を示す概念図である。
【
図3】第1の実施形態の受光装置における光の軌跡の一例を示す概念図である。
【
図4】第1の実施形態の受光装置が備える光線制御素子の一例を示す概念図である。
【
図5】第2の実施形態の受光装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図6】第2の実施形態の受光装置における光の軌跡の一例を示す概念図である。
【
図7】第2の実施形態の受光装置が備えるライトパイプの第1例を示す概念図である。
【
図8】第2の実施形態の受光装置が備えるライトパイプの第2例を示す概念図である。
【
図9】第2の実施形態の受光装置が備えるライトパイプの第3例を示す概念図である。
【
図10】第2の実施形態の受光装置が備えるライトパイプの第4例を示す概念図である。
【
図11】第2の実施形態の受光装置が備えるライトパイプの第5例を示す概念図である。
【
図12】第3の実施形態の受光装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図13】第3の実施形態の受光装置における光の軌跡の一例を示す概念図である。
【
図14】第4の実施形態の受光装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図15】第4の実施形態の受光装置における光の軌跡の一例を示す概念図である。
【
図16】第4の実施形態の受光装置の変形例における光の軌跡の一例を示す概念図である。
【
図17】第5の実施形態の受光装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図18】第5の実施形態の受光装置における光の軌跡の一例を示す概念図である。
【
図19】第5の実施形態の変形例の受光装置に含まれるファイババンドルの一例について説明するための概念図である。
【
図20】第5の実施形態の変形例の受光装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図21】第6の実施形態の受光装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図22】第6の実施形態の受光装置における光の軌跡の一例を示す概念図である。
【
図23】第6の実施形態の受光装置が備えるデコーダの構成の一例を示すブロック図である。
【
図24】第7の実施形態の受光装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図25】第7の実施形態の受光装置における光の軌跡の一例を示す概念図である。
【
図26】第7の実施形態の受光装置が備えるデコーダの構成の一例を示すブロック図である。
【
図27】第8の実施形態の通信装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図28】第8の実施形態の通信装置が備える送光部の構成の一例を示す概念図である。
【
図29】第8の実施形態の通信装置の適用例を示す概念図である。
【
図30】第9の実施形態の受光装置の構成の一例を示す概念図である。
【
図31】各実施形態の制御および処理を実行するハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。また、図面中の矢印の向きは、一例を示すものであり、光や信号の向きを限定するものではない。
【0011】
また、図面中の光の軌跡を示す線は概念的なものであり、実際の光の進行方向や状態を正確に表すものではない。例えば、以下の図面においては、空気と物質との界面における屈折や反射、拡散などによる光の進行方向や状態の変化を省略したり、光束を一本の線で表現したりすることもある。
【0012】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る受光装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の受光装置は、光ファイバなどの媒体を用いずに、空間を伝播する光信号(以下、空間光信号とも呼ぶ)を送受信し合う光空間通信に用いられる。本実施形態の受光装置は、空間を伝搬する光を受光する用途であれば、光空間通信以外の用途に用いられてもよい。以下において、空間光信号は、十分に離れた位置から到来するために平行光とみなす。
【0013】
(構成)
図1は、本実施形態の受光装置10の構成の一例を示す概念図である。受光装置10は、集光レンズ11、光線制御素子13、および受光素子15を備える。
図2および
図3は、受光装置10によって受光される光の軌跡の一例について説明するための概念図である。
図1および
図2は、受光装置10の内部構成を横方向から見た図である。
図3は、受光装置10の内部構成を、斜め前方から見た斜視図である。
【0014】
集光レンズ11は、外部から到来した空間光信号を集光する光学素子である。集光レンズ11によって集光された空間光信号に由来する光は、光線制御素子13の入射面に向けて集光される。集光レンズ11によって集光された空間光信号に由来する光を光信号と呼ぶ。例えば、集光レンズ11は、ガラスやプラスチックなどの材料で構成できる。例えば、集光レンズ11は、石英などの材料で実現される。空間光信号が赤外領域の光(以下、赤外線とも呼ぶ)である場合、集光レンズ11には、赤外線を透過する材料が用いられることが好ましい。例えば、集光レンズ11は、シリコンやゲルマニウム、カルコゲナイド系の材料で実現されてもよい。なお、空間光信号の波長領域の光を屈折して透過できさえすれば、集光レンズ11の材質には限定を加えない。
【0015】
光線制御素子13は、集光レンズ11の後段に配置される。光線制御素子13は、その入射面が集光レンズ11の出射面と対面するように配置される。受光素子15によって光信号が効率よく受光されるためには、集光レンズ11の焦点位置の手前に光線制御素子13の入射面が位置するように、光線制御素子13を配置することが好ましい。光線制御素子13の入射面から入射された光信号は、出射面から所定領域に向けて出射される。すなわち、光線制御素子13に入射された光信号は、その出射方向が制御され、所定領域に配置された受光素子15の受光部150に向けて出射される。
【0016】
図3の例では、異なる方向から到来する空間光信号A及び空間光信号B、が集光レンズ11に入射する。空間光信号Aおよび空間光信号Bに由来する光信号は、集光レンズ11によって集光されて、光線制御素子13の異なる領域(光線制御領域とも呼ぶ)に入射される。光線制御素子13は、任意の光線制御領域に入射された光信号を、同一の所定領域に向けて出射する。その結果、空間光信号A及び空間光信号Bに由来する光信号は、所定領域に受光部150を向けて配置された受光素子15によって受光される。
【0017】
例えば、光線制御素子13は、ニアフィールド回折光学素子やホログラム素子、反射型の回折光学素子などによって実現される。光線制御素子13は、入射面から入射された光信号を、受光素子15の受光部150が位置する所定領域に向けて出射できれば、上述の例に限定されない。
【0018】
図4は、光線制御素子13を実現するニアフィールド回折光学素子の一例(ニアフィールド回折光学素子131)を示す断面図である。ニアフィールド回折光学素子131の出射面には、サブミクロンオーダーの凹凸が形成される。
図4のニアフィールド回折光学素子131は、光線制御素子13を実現する素子を概念的に描いたものであって、実際の凹凸の縮尺通りに描かれてはいない。ニアフィールド回折光学素子131は、集光レンズ11によって集光された光信号を、受光素子15の受光部150が配置された所定領域に導く。
【0019】
受光素子15は、光線制御素子13の後段に配置される。受光素子15は、光線制御素子13から出射された光信号を受光する受光部150を有する。受光素子15は、その受光部150が光線制御素子13の出射面と対面するように配置される。受光素子15は、受光部150が所定領域に位置するように配置される。光線制御素子13から出射された光信号は、所定領域に位置する受光素子15の受光部150で受光される。
【0020】
受光素子15は、受光対象の光信号の波長領域の光を受光する。例えば、受光素子15は、赤外領域の光信号を受光する。受光素子15は、例えば1.5μm(マイクロメートル)帯の波長の光信号を受光する。なお、受光素子15が受光する光信号の波長帯は、1.5μm帯に限定されない。受光素子15が受光する光信号の波長帯は、送光装置(図示しない)から送光される空間光信号の波長に合わせて任意に設定できる。受光素子15が受光する光信号の波長帯は、例えば0.8μm帯や、1.55μm帯、2.2μm帯に設定されてもよい。また、受光素子15が受光する光信号の波長帯は、例えば0.8~1μm帯であってもよい。光信号の波長帯が短い方が、大気中の水分による吸収が小さいので、降雨時における光空間通信には有利である。また、受光素子15は、可視領域の光信号を受光してもよい。また、受光素子15は、強烈な太陽光で飽和してしまうと、空間光信号に由来する光信号を読み取ることができない。そのため、受光素子15よりも前段に、空間光信号の波長帯の光を選択的に通過させる色フィルタを設置してもよい。
【0021】
受光素子15は、受光された光信号を電気信号に変換する。受光素子15は、変換後の電気信号を、デコーダ(図示しない)に出力する。例えば、受光素子15は、フォトダイオードやフォトトランジスタなどの素子によって実現できる。例えば、受光素子15は、アバランシェフォトダイオードによって実現される。アバランシェフォトダイオードによって実現された受光素子15は、高速通信に対応できる。なお、受光素子15は、光信号を電気信号に変換できさえすれば、フォトダイオードやフォトトランジスタ、アバランシェフォトダイオード以外の素子によって実現されてもよい。
【0022】
通信速度を向上させるために、受光素子15の受光部150は、できるだけ小さい方が好ましい。例えば、受光素子15の受光部150は、直径0.1~0.3mm(ミリメートル)程度の受光面を有する。集光レンズ11によって集光された光信号は、空間光信号の到来方向によって一定の範囲内に集光されるものの、受光素子15の受光部150が配置された所定領域に集光することはできない。本実施形態では、集光レンズ11によって集光された光信号を所定領域に選択的に導く光線制御素子13を用いて、集光レンズ11によって集光された光信号を、受光素子15の受光部150の位置する所定領域に導く。そのため、受光装置10は、任意の方向から集光レンズ11の入射面に到来する空間光信号を、受光素子15の受光部150に効率よく導光できる。
【0023】
以上のように、本実施形態の受光装置は、集光レンズ、光線制御素子、および受光素子を備える。集光レンズは、空間光信号を受光する。光線制御素子は、集光レンズによって集光された空間光信号に由来する光信号を、所定領域に向けて出射する。例えば、光線制御素子は、集光レンズによって集光された光信号を、所定領域に向けて回折するニアフィールド回折光学素子である。受光素子は、所定領域に受光部を向けて配置される。受光素子は、光信号を受光する。
【0024】
本実施形態の受光装置によれば、集光レンズによって集光された光信号を、光線制御素子によって所定領域に導くことによって、任意の方向から到来する空間光を効率よく受光できる。
【0025】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態の受光装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の受光装置は、光線制御素子から出射された光信号を、受光素子の受光部に導くライトパイプを備える。ライトパイプは、光線制御素子から出射された光信号を、受光素子の受光部に導光する部材である。
【0026】
(構成)
図5は、本実施形態の受光装置20の構成の一例を示す概念図である。受光装置20は、集光レンズ21、光線制御素子23、ライトパイプ24、および受光素子25を備える。
図5は、受光装置20の内部構成を横方向から見た図である。
図6は、受光装置20によって受光される光の軌跡の一例について説明するための概念図である。
図6は、受光装置20の内部構成を、斜め前方から見た斜視図である。
【0027】
集光レンズ21は、外部から到来した空間光信号を集光する光学素子である。集光レンズ21によって集光された光信号は、光線制御素子23の入射面に向けて集光される。集光レンズ21は、第1の実施形態の集光レンズ11と同様の構成である。
【0028】
光線制御素子23は、集光レンズ21の後段に配置される。光線制御素子23は、その入射面が集光レンズ21の出射面と対面するように配置される。光線制御素子23の入射面から入射された光信号は、至近距離の所定領域に向けて出射される。光線制御素子23の入射面から入射された光信号は、その出射方向が制御され、ライトパイプ24の入射面に向けて出射される。光線制御素子23は、第1の実施形態の光線制御素子13と同様の構成である。
【0029】
ライトパイプ24は、受光素子25に対応付けて設けられる。ライトパイプ24は、空間光信号が入射する入射面と、ライトパイプ24の内部で導光された光信号が出射される出射面とを有する。出射面は、入射面と比べて面積が小さい。ライトパイプ24は、その入射面が所定領域に位置するように配置される。ライトパイプ24の出射面は、そのライトパイプ24が対応付けられた受光素子25の受光部250に接するように配置される。なお、ライトパイプ24の出射面から出射される光信号が受光素子25の受光部250に入射しさえすれば、ライトパイプ24の出射面と受光素子25の受光部250が接していなくてもよい。
図5には、入射面と出射面が平行になる例を示すが、入射面から出射面に向けて光信号を導光できさえすれば、入射面と出射面は非平行でもよい。
【0030】
ライトパイプ24は、空間光の波長帯の光を透過しやすい素材で構成されることが好ましい。例えば、ライトパイプ24は、一般的な光ファイバの素材で構成できる。ライトパイプ24の入射面から入射した光信号は、ライトパイプ24の側面で反射されながら、出射面に導光される。出射面に導光された光信号は、出射面から出射される。なお、ライトパイプの内部で導光される光信号は、その大部分が出射面から出射されればよく、その一部が側面で反射される際に漏れてもよい。
【0031】
受光素子25は、ライトパイプ24の後段に配置される。受光素子25は、ライトパイプ24から出射された光信号を受光する受光部250を有する。受光素子25は、その受光部250がライトパイプ24の出射面と対面するように配置される。ライトパイプ24から出射された光信号は、受光素子25の受光部250で受光される。受光素子25は、受光された光信号を電気信号に変換する。受光素子25は、変換後の電気信号を、デコーダ(図示しない)に出力する。受光素子25は、第1の実施形態の受光素子15と同様の構成である。
【0032】
ライトパイプ24を用いる場合、受光素子25の受光部250に向けて光信号を導光できる。そのため、受光素子25の受光部250の面積を小さくすることができる。そのため、同じ受光効率でありながら、受光面の小さい受光素子25を適用できる。例えば、ライトパイプ24を用いれば、受光部250の面積は小さいが、感度の高い受光素子25を採用できる。
【0033】
図7は、ライトパイプ24の第1例(ライトパイプ241)の側面図である。ライトパイプ241は、入射面から出射面に向けて狭まるように、テーパ状に形成される。ライトパイプ241は、光信号の波長帯の光を透過する材質で構成される。ライトパイプ241の側面は、光信号の波長帯の光を反射する。例えば、ライトパイプ241の側面の外側には、光信号の波長帯の光を反射する反射体を設置してもよい。
【0034】
図8は、ライトパイプ24の第2例(ライトパイプ242)の側面図である。ライトパイプ242は、入射側の導光部2421と、出射側の出射部2422を含む。導光部2421と出射部2422は、一体である。導光部2421は、入射面から出射部2422に向けて狭まるように、テーパ状に形成される。出射部2422は、球体や楕円体の形状を有する。出射部2422の末端(
図8のライトパイプ242の右端部分)が出射面である。導光部2421と出射部2422の接続部分は、光信号の伝搬に影響を及ばさないように構成される。ライトパイプ241(
図7)では、受光素子25が小さい場合、テーパの角度が急になるため、側面における反射によって、光信号が入射面から放射されやすくなる。ライトパイプ242(
図8)では、出射部2422があるため、導光部2421のテーパを急にしなくてもよい。そのため、ライトパイプ241(
図7)と比べて、ライトパイプ242(
図8)の方が、受光部250の小さな受光素子25に光信号を効率的に導光しやすい。出射部2422は、導光部2421から進入した光信号が出射面に向けて導光されやすくなれば、球体や楕円体ではない形状で形成されてもよい。ライトパイプ242は、光信号の波長帯の光を透過する材質で構成される。導光部2421の側面、および出射部2422の出射面以外の部分は、光信号の波長帯の光を反射する。例えば、ライトパイプ242の側面、および出射部2422の出射面以外の部分には、光信号の波長帯の光を反射する反射体を設置してもよい。
【0035】
例えば、ライトパイプ241およびライトパイプ242の入射面には、光信号の波長帯に応じた反射防止層を設けてもよい。入射面に反射防止層を設ければ、入射面で反射される光信号を低減できる。また、ライトパイプ241およびライトパイプ242の入射面に、光信号の波長帯の光を選択的に通過させる色フィルタを設けてもよい。入射面に色フィルタを設ければ、光信号の波長帯の光が選択的に受光素子25の受光部250に導光されるため、光信号に含まれる雑音成分を除去できる。
【0036】
図9は、ライトパイプ24の第3例(ライトパイプ243)の側面図である。ライトパイプ243の内部は空洞である。ライトパイプ243の入射面と出射面は開口する。ライトパイプ243の側面は、光信号の波長帯の光を反射する。例えば、ライトパイプ243の側面の内側には、光信号の波長帯の光を反射する反射体を設置してもよい。なお、光信号の波長帯の光を透過する材質でライトパイプ243の本体を構成し、ライトパイプ243の側面にその光信号を反射する反射体を設置してもよい。ライトパイプ243の内側で反射された光信号は、出射面から出射されて、受光素子25の受光部250に受光される。ライトパイプ243は、その内部で光信号が減衰しないため、ライトパイプ241~242(
図7~
図8)と比べて、受光素子25の受光部250に到達する光信号の強度が大きくなる。
【0037】
図10は、ライトパイプ24の第4例(ライトパイプ244)の側面図である。ライトパイプ244の内部は空洞である。ライトパイプ244の入射面と出射面は開口する。ライトパイプ244の内側側面には、光信号の波長帯の光を、出射面に向けて指向的に導光する指向性導光体284が配置される。指向性導光体284は、入射面から入射された光信号を、出射面に向けて指向的に導光する。
図10では、指向性導光体284の表面で光信号が反射するように図示されている。指向性導光体284は、入射角よりも大きな反射角で反射することによって、出射面に向けて光信号を指向的に導光する。指向性導光体284に進入した光信号は、指向性導光体284の内部を伝搬して、受光素子25の受光部250に向けられた出射面から出射されるように構成されてもよい。ライトパイプ243(
図9)の場合、内側面で反射された光信号が、入射面側に戻り、受光素子25に到達しないことがある。ライトパイプ244(
図10)では、入射面から進入した光信号が受光素子25に向けて指向的に導光される。そのため、入射面側に光信号が戻りづらくなり、受光素子25の受光効率が向上する。
【0038】
例えば、指向性導光体284は、入射面から入射した光信号を、出射面に向けて反射する、少なくとも一つの反射面を含む反射構造を有する。反射構造は、光信号の波長帯の光を反射する材質で形成される。例えば、反射構造は、金属などの材料で形成できる。なお、反射構造の材質については、光信号の波長帯の光を反射できれば、特に限定を加えない。
【0039】
例えば、指向性導光体284は、マイクロメートルオーダーの高さの複数の格子を並べた構造を有する反射型回折格子(回折格子アレイとも呼ぶ)で実現されてもよい。回折格子アレイは、指向性導光体284の上面から入射した光信号が出射面に向けて進行するように、光信号を回折する。例えば、回折格子アレイは、ブレーズド回折格子やホログラフィク回折格子によって実現できる。回折格子アレイは、光信号が出射面に向けて進行するように、格子間隔を調整されることが好ましい。
【0040】
図11は、ライトパイプ24の第5例(ライトパイプ245)の側面図である。ライトパイプ245の内部は空洞である。ライトパイプ245の入射面と出射面は開口する。ライトパイプ245の入射面側の内側側面には、光信号の波長帯の光を、出射面に向けて指向的に導光する指向性導光体285が配置される。指向性導光体285は、第4例(
図10)の指向性導光体284と同様の構成である。ライトパイプ245の出射面側の内側側面には、第3例(
図9)と同様に、光信号の波長帯の光を反射する。例えば、ライトパイプ243の出射面側の内側には、光信号の波長帯の光を反射する反射体を設置してもよい。指向性導光体285は、第4例(
図10)と同様に、入射面から入射された光信号を、出射面に向けて指向的に導光する。指向性導光体285は、入射角よりも大きな反射角で反射することによって、出射面に向けて光信号を指向的に導光する。指向性導光体285から出射された光信号は、ライトパイプ245の出射面側の内側で反射され、出射面から出射される。出射面から出射された光信号は、受光素子25の受光部250に受光される。入射面の法線に対する光信号の入射角が大きいと、ライトパイプ245の内側で何度か反射された光信号が、入射面側に戻ってくる可能性がある。ライトパイプ245に入射した光信号は、まず、指向性導光体285に進入し、受光部250に向けて指向的に導光されるため、入射面側に戻ってくる可能性が小さくなる。
【0041】
図7~
図11の例は一例であって、ライトパイプ24の構成を、それらの形態に限定するものではない。例えば、
図7~
図11の構成を任意に組み合わせて、ライトパイプを構成してもよい。
【0042】
以上のように、本実施形態の受光装置は、集光レンズ、光線制御素子、ライトパイプ、および受光素子を備える。集光レンズは、空間光信号を受光する。光線制御素子は、集光レンズによって集光された空間光信号に由来する光信号を、所定領域に向けて出射する。ライトパイプは、光線制御素子から出射された光信号を、所定領域に配置された受光部に導光する。例えば、ライトパイプは、中空構造であり、内側の面上のうち少なくとも入射面近傍に、所定領域に配置された受光部に向けて光信号を指向的に導光する指向性導光体を有する。受光素子は、所定領域に受光部を向けて配置される。受光素子は、光信号を受光する。
【0043】
本実施形態の受光装置によれば、集光レンズによって集光された光信号を、ライトパイプを介して受光素子の受光部に導光することによって、空間光信号に由来する光信号をより効率よく受光できる。
【0044】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る受光装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の受光装置は、空間光信号が到来する方向がある程度限定される状況で用いられる。本実施形態の受光装置は、空間光信号の到来方向に合わせて設定された、細長い形状の光線制御素子を含む。本実施形態では、空間光信号の到来方向が水平方向に限定されるものとし、その到来方向に合わせて、光線制御素子の形状を水平方向に細長い形状とする。本実施形態の受光装置は、第2の実施形態のライトパイプと組み合わせてもよい。
【0045】
(構成)
図12は、本実施形態の受光装置30の構成の一例を示す概念図である。受光装置30は、集光レンズ31、光線制御素子33、および受光素子35を備える。
図12は、受光装置30の内部構成を横方向から見た図である。
図13は、受光装置30によって受光される光の軌跡の一例について説明するための概念図である。
図13は、受光装置30の内部構成を、斜め前方から見た斜視図である。
【0046】
集光レンズ31は、外部から到来した空間光信号を集光する光学素子である。集光レンズ31によって集光された光信号は、光線制御素子33の入射面に向けて集光される。集光レンズ31は、第1の実施形態の集光レンズ11と同様の構成である。集光レンズ31は、光線制御素子33の形状に合わせて光を集光するように構成されてもよい。
【0047】
光線制御素子33は、集光レンズ31の後段に配置される。光線制御素子33は、その入射面が集光レンズ31の出射面と対面するように配置される。光線制御素子33は、空間光信号の到来方向に合わせた形状に設定される。例えば、水平方向から空間光信号が到来する場合、光線制御素子33は、水平方向に長軸を有し、垂直方向に短軸を有する形状に設定される。例えば、水平面に対して垂直な方向(以下、垂直方向とよぶ)から空間光信号が到来する場合、光線制御素子33は、垂直方向に長軸を有し、水平方向に短軸を有する形状に設定される。光線制御素子33の形状は、空間光信号の到来方向に合わせて設定されればよい。
【0048】
光線制御素子33の入射面から入射された光信号は、至近距離の所定領域に向けて出射される。光線制御素子33の入射面から入射された光信号は、その出射方向が制御され、受光素子35の受光部350に向けて出射される。光線制御素子33は、形状以外は、第1の実施形態の光線制御素子13と同様の構成である。
【0049】
受光素子35は、光線制御素子33の後段に配置される。受光素子35は、光線制御素子33から出射された光信号を受光する受光部350を有する。受光素子35は、その受光部350が光線制御素子33の出射面と対面するように配置される。光線制御素子33から出射された光信号は、受光素子35の受光部350で受光される。受光素子35は、受光された光信号を電気信号に変換する。受光素子35は、変換後の電気信号を、デコーダ(図示しない)に出力する。受光素子35は、第1の実施形態の受光素子15と同様の構成である。
【0050】
以上のように、本実施形態の受光装置は、集光レンズ、光線制御素子、および受光素子を備える。集光レンズは、空間光信号を受光する。光線制御素子は、空間光信号の到来方向に合わせた形状を有する。光線制御素子は、集光レンズによって集光された空間光信号に由来する光信号を、所定領域に向けて出射する。受光素子は、所定領域に受光部を向けて配置される。受光素子は、光信号を受光する。
【0051】
本実施形態の受光装置によれば、空間光信号の到来方向に合わせた形状を有する光線制御素子を用いることによって、到来方向が限られた空間光信号を効率よく受光できる。例えば、通信対象からの空間光信号の到来方向が、水平方向や垂直方向などに限られている場合、それらとは異なる方向から到来する光を受光する必要はない。本実施形態では、空間光信号の到来方向が水平方向に限定されるものとし、その到来方向に合わせて、光線制御素子の形状を水平方向に沿って細長い形状とした。空間光信号の到来方向が垂直方向に限定される場合は、その到来方向に合わせて、光線制御素子の形状を垂直方向に沿って細長い形状とすればよい。また、通信対象からの空間光信号の到来方向とは異なる方向から到来する光は、雑音成分や攪乱成分であるとみなすことができる。そのため、本実施形態によれば、雑音成分や攪乱成分の光を受光しないため、通信対象からの空間光信号をより効率よく受光できる。
【0052】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る受光装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の受光装置は、集光レンズによって集光された光信号を、回折して、所定領域に反射して導光する光線制御素子を含む。本実施形態においては、空間光信号の到来方向に合わせて設定された、細長い形状の光線制御素子を含む例について説明するが、任意の方向から到来する空間光信号に対応できる光線制御素子(第1の実施形態)を適用してもよい。また、本実施形態の受光装置は、第2の実施形態のライトパイプと組み合わせてもよい。
【0053】
(構成)
図14は、本実施形態の受光装置40の構成の一例を示す概念図である。受光装置40は、集光レンズ41、光線制御素子43、および受光素子45を備える。
図14は、受光装置40の内部構成を横方向から見た図である。
図15は、受光装置40によって受光される光の軌跡の一例について説明するための概念図である。
図15は、受光装置40の内部構成を、斜め前方から見た斜視図である。
【0054】
集光レンズ41は、外部から到来した空間光信号を集光する光学素子である。集光レンズ41によって集光された光信号は、光線制御素子43の入射面に向けて集光される。集光レンズ41は、第1の実施形態の集光レンズ11と同様の構成である。集光レンズ41は、光線制御素子43の形状に合わせて光を集光するように構成されてもよい。
【0055】
光線制御素子43は、集光レンズ41の後段に配置される。光線制御素子43は、反射型の回折光学素子である。光線制御素子43は、光信号の波長帯の光を回折して反射する反射面を有する。例えば、光線制御素子43は、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)によって実現される。例えば、光線制御素子43の母材は、石英である。例えば、光線制御素子43の反射面には、シリコンや金などで形成された反射層が形成される。空間光信号の波長帯が赤外領域である場合、光線制御素子43の反射面に形成される反射層は、金で形成されることが好ましい。光線制御素子43の反射面は、集光レンズ41から出射された光信号が、受光素子45の受光部450に向けて反射されるように配置される。光線制御素子43は、空間光信号の到来方向に合わせた形状に設定される。例えば、空間光信号が水平方向から到来する場合、光線制御素子43は、水平方向に長軸を有し、垂直方向に短軸を有する形状に設定される。例えば、空間光信号が垂直方向から到来する場合、光線制御素子43は、垂直方向に長軸を有し、水平方向に短軸を有する形状に設定される。光線制御素子43の形状は、空間光信号の到来方向に合わせて設定されればよい。なお、任意の方向から到来する空間光信号に対応するように構成される場合、光線制御素子43の形状には特に限定を加えない。
【0056】
集光レンズ41によって集光された光信号は、光線制御素子43の反射面に入射される。光線制御素子43の反射面に入射された光信号は、回折されて、至近距離の所定領域に向けて反射される。光線制御素子43の反射面で回折/反射された光信号は、その進行方向が制御され、受光素子45の受光部450に向けて出射される。
【0057】
受光素子45は、光線制御素子43の後段に配置される。受光素子45は、光線制御素子43によって反射された光信号を受光する受光部450を有する。受光素子45は、光線制御素子43によって反射された光信号が受光部450に受光されるように配置される。光線制御素子43によって反射された光信号は、受光素子45の受光部450で受光される。受光素子45は、受光された光信号を電気信号に変換する。受光素子45は、変換後の電気信号を、デコーダ(図示しない)に出力する。受光素子45は、第1の実施形態の受光素子15と同様の構成である。
【0058】
図16は、本実施形態の受光装置40の変形例について説明するための概念図である。
図16の変形例の受光装置は、曲線状に湾曲した光線制御素子43-2を備える。光線制御素子43-2は、受光素子45の受光部450の位置が焦点となる曲面や曲線に合わせて湾曲する。光線制御素子43(
図15)の中心から離れた位置に入射した光信号は、受光素子45の受光部450の位置(所定領域)に向けて反射されないため、受光素子45によって受光されない。それに対し、光線制御素子43-2(
図16)は、湾曲した形状をしていることにより、光信号が入射面に対して垂直入射に近い角度で入射する。そのため、光線制御素子43-2(
図16)では、中心から離れた位置に入射した光信号も、受光素子45の受光部450の位置(所定領域)に向けて反射されるため、受光素子45によって受光できる。すなわち、光線制御素子43(
図15)と比べて、光線制御素子43-2(
図16)の方が、広い範囲の光信号を受光素子45の受光部450に集光できる。
【0059】
以上のように、本実施形態の受光装置は、集光レンズ、光線制御素子、および受光素子を備える。集光レンズは、空間光信号を受光する。光線制御素子は、集光レンズによって集光された光信号を、所定領域に向けて反射する反射型の回折光学素子である。光線制御素子は、集光レンズによって集光された空間光信号に由来する光信号を、所定領域に向けて回折して反射する反射型の回折光学素子である。例えば、光線制御素子は、所定領域に焦点を有する曲線状に湾曲した形状を有する。受光素子は、所定領域に受光部を向けて配置される。受光素子は、光信号を受光する。
【0060】
本実施形態の受光装置によれば、集光レンズによって集光された光信号を、光線制御素子によって所定領域に導くように反射することによって、任意の方向から到来する空間光信号を効率よく受光できる。
【0061】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態の受光装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の受光装置は、光線制御素子から出射された光信号を、受光素子の受光部に導くファイババンドルを備える。ファイババンドルは、光線制御素子から出射された光信号を、受光素子の受光部に導光する部材である。
【0062】
(構成)
図17は、本実施形態の受光装置50の構成の一例を示す概念図である。受光装置50は、集光レンズ51、光線制御素子53、ファイババンドル54、および受光素子55を備える。
図17は、受光装置50の内部構成を横方向から見た図である。
図18は、受光装置50によって受光される光の軌跡の一例について説明するための概念図である。
図19は、受光装置50に含まれるファイババンドル54を、斜め前方から見た斜視図である。
【0063】
集光レンズ51は、外部から到来した空間光信号を集光する光学素子である。集光レンズ51によって集光された光信号は、光線制御素子53の入射面に向けて集光される。集光レンズ51は、第1の実施形態の集光レンズ11と同様の構成である。
【0064】
光線制御素子53は、集光レンズ51の後段に配置される。光線制御素子53は、その入射面が集光レンズ51の出射面と対面するように配置される。光線制御素子53の入射面から入射された光信号は、至近距離の所定領域に向けて出射される。光線制御素子53の入射面から入射された光信号は、その出射方向が制御され、ファイババンドル54の入射面に向けて出射される。光線制御素子53は、第1の実施形態の光線制御素子13と同様の構成である。
【0065】
ファイババンドル54は、複数の受光素子55に対応付けて設けられる。ファイババンドル54は、複数の光ファイバ540が束ねられた構造を有する。ファイババンドル54は、空間光信号が入射する入射面と、ファイババンドル54の内部で導光された光信号が出射される出射面とを有する。ファイババンドル54の入射面には、複数の光ファイバ540の入射端が配置される。ファイババンドル54の出射面には、複数の光ファイバ540の出射端が配置される。ファイババンドル54を構成する光ファイバ540の束は、複数の受光素子55の各々に対応付けて配置される。なお、ファイババンドル54は、単一の受光素子55に対応付けられて構成されてもよい。
【0066】
ファイババンドル54は、光線制御素子53から出射された光信号が照射される所定領域に入射面が位置するように配置される。ファイババンドル54の出射面は、対応付けられた複数の受光素子55のいずれかの受光部550に接するように配置される。なお、ファイババンドル54の出射面から出射される光信号が受光素子55の受光部550に入射しさえすれば、ファイババンドル54の出射面と受光素子55の受光部550が接していなくてもよい。
図17には、入射面と出射面が平行になる例を示すが、入射面から出射面に向けて光信号を導光できさえすれば、入射面と出射面は非平行でもよい。
【0067】
複数の光ファイバ540の束は、対応付けられた受光素子55の受光部550に向けて、ファイババンドル54の入射面から出射面にかけて先細りするように束ねられる。複数の光ファイバ540は、入射端から出射端にかけて、直線状に配置されてもよいし、曲線状に配置されてもよい。ファイババンドル54を構成する光ファイバ540は、入射端と出射端が同じ口径であってもよいし、入射端と出射端が異なる口径であってもよい。例えば、ファイババンドル54を構成する光ファイバ540には、入射端と比べて出射端の口径が小さいものを用いてもよい。
【0068】
光ファイバ540は、空間光の波長帯の光を透過しやすい素材で構成されることが好ましい。例えば、光ファイバ540は、一般的な光ファイバの素材で構成できる。例えば、光ファイバ540の入射端は、光信号の周波数帯の光が反射されにくいように、反射防止コーティングされていてもよい。ファイババンドル54の入射面から入射した光信号は、ファイババンドル54を構成する光ファイバ540の側面で全反射されながら、出射面に導光される。出射面に導光された光信号は、受光素子55の受光部550に向けて出射される。ファイババンドル54を構成する光ファイバ540の内部で導光される光信号は、光ファイバ540の側面から漏れることはないので、その大部分が出射面から出射される。
【0069】
受光素子55は、ファイババンドル54の後段に配置される。受光素子55は、ファイババンドル54から出射された光信号を受光する受光部550を有する。受光素子55は、その受光部550がファイババンドル54の出射面と対面するように配置される。ファイババンドル54から出射された光信号は、受光素子55の受光部550で受光される。受光素子55は、受光された光信号を電気信号に変換する。受光素子55は、変換後の電気信号を、デコーダ(図示しない)に出力する。受光素子55は、第1の実施形態の受光素子15と同様の構成である。
【0070】
ファイババンドル54を用いる場合、受光素子55の受光部550に向けて光信号を導光できる。そのため、受光素子55の受光部550の面積を小さくすることができる。そのため、同じ受光効率でありながら、受光面の小さい受光素子55を適用できる。例えば、ファイババンドル54を用いれば、受光部550の面積は小さいが、感度の高い受光素子55を採用できる。
【0071】
〔変形例〕
図20は、本実施形態の変形例の受光装置50-2の構成の一例を示す概念図である。受光装置50-2は、集光レンズ51、光線制御素子53、ファイババンドル54-2、および受光素子55を備える。
図20は、受光装置50の内部構成を横方向から見た図である。
図20には、光線制御素子53から出射され、ファイババンドル54-2の出射面に向けて進行する光信号の概念的な進行方向(光軸)を矢印で示す。本変形例の受光装置50-2は、ファイババンドル54-2に含まれる複数の光ファイバ545の構成が、受光装置50とは異なる。
【0072】
ファイババンドル54-2は、複数の光ファイバ545を含む。ファイババンドル54-2は、複数の光ファイバ545が束ねられた構造を有する。ファイババンドル54-2の入射面に配置された入射端の断面に対して、光線制御素子53から出射された光信号の光軸が略垂直方向から入射するように、複数の光ファイバ545が配置される。例えば、複数の光ファイバ545は、入射端から出射端にかけて滑らかな曲線を描くように配置される。複数の光ファイバ545の入射端から進入した光信号は、複数の光ファイバ545の内部を出射端に向けて進行し、複数の光ファイバ545の出射端から出射される。複数の光ファイバ545の出射端から出射された光信号は、受光素子55によって受光される。
【0073】
光ファイバ545の入射端の断面に対して斜めに入射する光信号は、その入射端において反射されやすい。本変形例では、光線制御素子53から出射される光信号の入射方向が、光ファイバ545の入射端の断面に対して略垂直になるように光ファイバ545を配置する。そのため、本変形例によれば、光ファイバ545の入射端における光信号の反射する割合が減少し、光ファイバ545の入射端から内部に光信号が入射しやすくなる。そのため、本変形例によれば、受光素子55による受光効率が向上する。
【0074】
以上のように、本実施形態の受光装置は、集光レンズ、光線制御素子、ファイババンドル、および受光素子を備える。集光レンズは、空間光信号を受光する。光線制御素子は、集光レンズによって集光された空間光信号に由来する光信号を、所定領域に向けて出射する。ファイババンドルは、光線制御素子から出射された光信号を、所定領域に配置された受光部に導光する複数の光ファイバの束を含む。例えば、ファイババンドルに含まれる複数の光ファイバの各々の入射端の断面が、光線制御素子から出射された光信号の光軸に対して略垂直になるように、複数の光ファイバの各々が配置される。受光素子は、所定領域に受光部を向けて配置される。受光素子は、光信号を受光する。
【0075】
本実施形態の受光装置によれば、集光レンズによって集光された光信号を、ファイババンドルを介して受光素子の受光部に導光することによって、空間光信号に由来する光信号をより効率よく受光できる。
【0076】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態に係る受光装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の受光装置は、受光素子によって受光された光信号をデコードするデコーダを備える。本実施形態においては、空間光信号の到来方向に合わせて設定された、細長い形状の光線制御素子を含む例について説明するが、任意の方向から到来する空間光信号に対応できる光線制御素子を適用してもよい。また、本実施形態の受光装置には、第4の実施形態のように、反射型の光線制御素子を適用してもよい。また、本実施形態の受光装置は、第2の実施形態のライトパイプや、第5の実施形態のファイババンドルと組み合わせてもよい。
【0077】
(構成)
図21は、本実施形態の受光装置60の構成の一例を示す概念図である。受光装置60は、集光レンズ61、光線制御素子63、受光素子65、およびデコーダ66を備える。
図21は、受光装置60の内部構成を横方向から見た図である。
図22は、受光装置60によって受光される光の軌跡の一例について説明するための概念図である。
図22は、受光装置60の内部構成を、斜め前方から見た斜視図である。なお、デコーダ66の位置については、特に限定を加えない。デコーダ66は、受光装置60の内部に配置されてもよいし、受光装置60の外部に配置されてもよい。
【0078】
集光レンズ61は、外部から到来した空間光信号を集光する光学素子である。集光レンズ61によって集光された光信号は、光線制御素子63の入射面に向けて集光される。集光レンズ61は、第1の実施形態の集光レンズ11と同様の構成である。集光レンズ61は、光線制御素子63の形状に合わせて光信号を集光するように構成されてもよい。
【0079】
光線制御素子63は、集光レンズ61の後段に配置される。光線制御素子63は、その入射面が集光レンズ61の出射面と対面するように配置される。例えば、光線制御素子63は、第3の実施形態のように、空間光信号の到来方向に合わせた形状に設定される。なお、光線制御素子63は、第1の実施形態のように、任意の方向から到来する空間光信号に対応するように構成してもよい。また、光線制御素子63は、第4の実施形態のように、反射型であってもよい。光線制御素子63は、第1~第5の実施形態のいずれかと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0080】
受光素子65は、光線制御素子63の後段に配置される。受光素子65は、光線制御素子63から出射された光信号を受光する受光部650を有する。受光素子65は、その受光部650が光線制御素子63の出射面と対面するように配置される。光線制御素子63から出射された光信号は、受光素子65の受光部650で受光される。受光素子65は、受光された光信号を電気信号(以下、信号とも呼ぶ)に変換する。受光素子65は、変換後の信号を、デコーダ66に出力する。受光素子65は、第1の実施形態の受光素子15と同様の構成である。
【0081】
デコーダ66は、受光素子65から出力された信号を取得する。デコーダ66は、受光素子65からの信号を増幅する。デコーダ66は、増幅された信号をデコードし、通信対象からの信号を解析する。デコーダ66によってデコードされた信号は、任意の用途に使用される。デコーダ66によってデコードされた信号の使用については、特に限定を加えない。
【0082】
〔デコーダ〕
次に、受光装置60が備えるデコーダ66の詳細構成の一例について図面を参照しながら説明する。
図23は、デコーダ66の構成の一例を示すブロック図である。デコーダ66は、増幅回路661およびデコード回路665を有する。
【0083】
増幅回路661は、受光素子65からの信号を取得する。増幅回路661は、選択された信号を増幅する。なお、増幅回路661は、空間光信号の波長帯の信号を選択的に通過させてもよい。例えば、増幅回路661は、取得した信号のうち、太陽光などの環境光に由来する信号をカットし、空間光信号の波長帯に相当する高周波成分の信号を選択的に通過させてもよい。増幅回路661は、増幅された信号をデコード回路665に出力する。
【0084】
デコード回路665は、増幅回路661から信号を取得する。デコード回路665は、取得された信号をデコードする。デコード回路665は、デコードされた信号に何らかの信号処理を加えるように構成してもよいし、外部の信号処理装置等(図示しない)に出力するように構成したりしてもよい。複数の通信対象からの空間光に由来する複数の信号をデコードする場合、第2処理回路は、それらの信号を時分割で読み取るように構成すればよい。
【0085】
以上のように、本実施形態の受光装置は、集光レンズ、光線制御素子、受光素子、およびデコーダを備える。集光レンズは、空間光信号を受光する。光線制御素子は、集光レンズによって集光された空間光信号に由来する光信号を、所定領域に向けて出射する。例えば、光線制御素子は、集光レンズによって集光された光信号を、所定領域に向けて回折するニアフィールド回折光学素子である。受光素子は、所定領域に受光部を向けて配置される。受光素子は、光信号を受光する。デコーダは、受光素子によって受光された光信号に基づく信号をデコードする。
【0086】
本実施形態の受光装置によれば、任意の方向から到来する空間光信号に基づく信号をデコードできる。例えば、本実施形態の受光装置によれば、シングルチャンネルの受信装置を実現できる。例えば、本実施形態の受光装置によれば、空間光信号に基づく信号を時分割でデコードすることによって、マルチチャンネルの受信装置を実現することもできる。
【0087】
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態に係る受光装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の受光装置は、受光素子によって受光された光信号をデコードするデコーダを複数備える。本実施形態においては、空間光信号の到来方向に合わせて設定された、細長い形状の光線制御素子を含む例について説明するが、任意の方向から到来する空間光信号に対応できる光線制御素子を適用してもよい。また、本実施形態の受光装置には、第4の実施形態のように、反射型の光線制御素子を適用してもよい。また、本実施形態の受光装置は、第2の実施形態のライトパイプや、第5の実施形態のファイババンドルと組み合わせてもよい。
【0088】
(構成)
図24は、本実施形態の受光装置70の構成の一例を示す概念図である。受光装置70は、集光レンズ71、光線制御素子73、複数の受光素子75-1~M、およびデコーダ76を備える(Mは、2以上の自然数)。
図24は、受光装置70の内部構成を上方向から見た平面図である。
図25は、受光装置70によって受光される光の軌跡の一例について説明するための概念図である。
図25は、受光装置70の内部構成を、斜め前方から見た斜視図である。なお、デコーダ76の位置については、特に限定を加えない。デコーダ76は、受光装置70の内部に配置されてもよいし、受光装置70の外部に配置されてもよい。
【0089】
集光レンズ71は、外部から到来した空間光信号を集光する光学素子である。集光レンズ71によって集光された光信号は、光線制御素子73の入射面に向けて集光される。集光レンズ71は、第1の実施形態の集光レンズ11と同様の構成である。集光レンズ71は、光線制御素子73の形状に合わせて光を集光するように構成されてもよい。
【0090】
光線制御素子73は、集光レンズ71の後段に配置される。光線制御素子73は、その入射面が集光レンズ71の出射面と対面するように配置される。例えば、光線制御素子73は、第3の実施形態のように、空間光信号の到来方向に合わせた形状に設定される。なお、光線制御素子73は、第1の実施形態のように、任意の方向から到来する空間光信号に対応するように構成してもよい。また、光線制御素子73は、第4の実施形態のように、反射型であってもよい。
【0091】
光線制御素子73の入射面には、集光レンズ71によって集光された光信号が入射される。光線制御素子73には、複数の光線制御領域730-1~Mが設定される。光線制御素子73に設定される複数の光線制御領域730-1~Mの各々は、複数の受光素子75-1~Mの各々に対応付けられる。複数の光線制御領域730-1~Mの各々に入射した光信号は、それぞれの光線制御領域730に対応する受光素子75-1~Mの受光部750が配置された所定領域に向けて出射される。
【0092】
図25の例では、異なる方向から到来する空間光信号A及び空間光信号B、が集光レンズ71に入射する。空間光信号A及び空間光信号Bに由来する光信号は、集光レンズ71によって集光されて、光線制御素子73の異なる光線制御領域730に入射される。光線制御素子13は、異なる光線制御領域730に入射された光信号を、それぞれの光線制御領域730に対応付けられた所定領域に向けて出射する。その結果、空間光信号A及び空間光信号Bに由来する光信号は、異なる受光素子75によって受光される。
【0093】
複数の受光素子75-1~Mは、光線制御素子73の後段に配置される。複数の受光素子75-1~Mの各々は、光線制御素子73から出射された光信号を受光する受光部750を有する。複数の受光素子75-1~Mは、光線制御素子73の出射面と受光部750が対面するように配置される。複数の受光素子75-1~Mの各々の受光部750は、複数の光線制御領域730-1~Mの各々に対面するように配置される。光線制御素子73の、複数の光線制御領域730-1~Mの各々から出射された光信号は、複数の受光素子75-1~Mの各々の受光部750で受光される。複数の受光素子75-1~Mの各々は、受光された光信号を電気信号(以下、信号とも呼ぶ)に変換する。複数の受光素子75-1~Mの各々は、変換後の信号を、デコーダ76に出力する。複数の受光素子75-1~Mの各々は、第1の実施形態の受光素子15と同様の構成である。
【0094】
デコーダ76は、複数の受光素子75-1~Mの各々から出力された信号を取得する。デコーダ76は、複数の受光素子75-1~Mの各々からの信号を増幅する。デコーダ76は、増幅された信号をデコードし、通信対象からの信号を解析する。例えば、デコーダ76は、複数の受光素子75-1~Mごとの信号をまとめて解析する。複数の受光素子75-1~Mごとの信号をまとめて解析する場合は、単一の通信対象と通信するシングルチャンネルの受光装置70を実現できる。例えば、デコーダ76は、複数の受光素子75-1~Mごとに、個別に信号を解析する。複数の受光素子75-1~Mごとに個別に信号を解析する場合、複数の通信対象と同時に通信するマルチチャンネルの受光装置70を実現できる。デコーダ76によってデコードされた信号は、任意の用途に使用される。デコーダ76によってデコードされた信号の使用については、特に限定を加えない。
【0095】
〔デコーダ〕
次に、受光装置70が備えるデコーダ76の詳細構成の一例について図面を参照しながら説明する。
図26は、デコーダ76の構成の一例を示すブロック図である。デコーダ76は、複数の第1処理回路761-1~M、制御回路762、セレクタ763、および複数の第2処理回路765-1~Nを有する(Nは自然数)。
図26においては、複数の第1処理回路761-1~Mのうち、第1処理回路761-1のみ内部構成を図示しているが、複数の第1処理回路761-2~Mの内部構成も第1処理回路761-1と同様である。
【0096】
第1処理回路761は、複数の受光素子75-1~Mのいずれか一つに対応付けられる。第1処理回路761は、ハイパスフィルタ7611、増幅器7613、および積分器7615を含む。
図26においては、ハイパスフィルタ7611をHPF(High Path Filter)と表記し、増幅器7613をAMP(Amplifier)と表記し、積分器7615をINT(Integrator)と表記する。複数の第1処理回路761-1~Mの各々のハイパスフィルタ7611は、複数の第1処理回路761-1~Mの各々に対応付けられた受光素子75-1~Mのいずれかから信号を取得する。複数の受光素子75-1~Mの各々と、それらに対応する複数の第1処理回路761-1~Mの各々は、単位ユニットを構成する。複数の第1処理回路761-1~Mの各々のハイパスフィルタ7611を通過した信号は、増幅器7613と積分器7615に並列で入力される。
【0097】
ハイパスフィルタ7611は、受光素子75からの信号を取得する。ハイパスフィルタ7611は、取得した信号のうち、空間光信号の波長帯に相当する高周波成分の信号を選択的に通過させる。ハイパスフィルタ7611は、太陽光などの環境光に由来する信号をカットする。なお、ハイパスフィルタ7611の替わりに、空間光信号の波長帯の信号を選択的に通過させるバンドパスフィルタを構成してもよい。また、受光素子75は、強烈な太陽光で飽和してしまうと、光信号は読み取り不能となる。そのため、受光素子75の受光面の前段に、空間光信号の波長帯の光を選択的に通過させる色フィルタを設置してもよい。ハイパスフィルタ7611を通過した信号は、増幅器7613および積分器7615に供給される。
【0098】
増幅器7613は、ハイパスフィルタ7611から出力された信号を取得する。増幅器7613は、取得された信号を増幅する。増幅器7613は、増幅された信号をセレクタ763に出力する。セレクタ763に出力された信号のうち受信対象の信号は、制御回路762の制御に応じて、複数の第2処理回路765-1~Nのいずれかに割り当てられる。受信対象の信号は、通信対象の通信装置(図示しない)からの空間光信号である。空間光信号の受光に用いられない受光素子75からの信号は、第2処理回路765に出力されない。
【0099】
積分器7615は、ハイパスフィルタ7611から出力された信号を取得する。積分器7615は、取得された信号を積分する。積分器7615は、積分された信号を制御回路762に出力する。
【0100】
積分器7615は、受光素子75が受光する空間光信号の強度を測定するために配置される。本実施形態では、ビーム径に広がりのある状態の空間光信号を、集光レンズ71の入射面において面で受光することによって、通信対象をサーチする速度を高速化する。ビーム径が絞られていない状態で受光される空間光信号は、ビーム径が絞られている場合と比べて強度が微弱であるため、増幅器7613のみで増幅された信号の電圧測定は困難である。積分器7615を用いれば、例えば、数msec(ミリ秒)~数十msec積分することによって、電圧測定できるレベルまで信号の電圧を大きくすることができる。
【0101】
制御回路762は、複数の第1処理回路761-1~Mの各々に含まれる積分器7615から出力された信号を取得する。言い換えると、制御回路762は、複数の受光素子75-1~Mの各々が受光した光信号に由来する信号を取得する。例えば、制御回路762は、互いに隣接し合う複数の受光素子75からの信号の読み取り値を比較し、信号強度が最大の受光素子75を選択する。制御回路762は、選択された受光素子75に由来する信号を、複数の第2処理回路765-1~Nのいずれかに割り当てるように、セレクタ763を制御する。
【0102】
制御回路762が受光素子75を選択することは、空間光信号の到来方向を推定することに相当する。すなわち、制御回路762が受光素子75を選択することは、空間光信号の送光元の通信装置を特定することに相当する。また、制御回路762によって選択された受光素子75からの信号を複数の第2処理回路のいずれかに割り当てることは、特定された通信対象と、その通信対象からの空間光信号を受光する受光素子75とを対応付けることに相当する。すなわち、制御回路762は、複数の受光素子750-1~Mによって受光された光信号に基づいて、その光信号(空間光信号)の送光元の通信装置を特定する。なお、通信対象の位置が予め特定されている場合は、空間光信号の到来方向を推定する処理を行わず、受光素子75-1~Mから出力された信号をそのままデコードすればよい。
【0103】
セレクタ763には、複数の第1処理回路761-1~Mの各々に含まれる増幅器7613によって増幅された信号が入力される。セレクタ763は、制御回路762の制御に応じて、入力された信号のうち受信対象の信号を、複数の第2処理回路765-1~Nのうちいずれかに出力する。受信対象ではない信号は、セレクタ763から出力されない。
【0104】
複数の第2処理回路765-1~Nには、制御回路762によって割り当てられた、複数の受光素子75-1~Nのいずれかからの信号が入力される。複数の第2処理回路765-1~Nの各々は、入力された信号をデコードする。複数の第2処理回路765-1~Nの各々は、デコードされた信号に何らかの信号処理を加えるように構成してもよいし、外部の信号処理装置等(図示しない)に出力するように構成したりしてもよい。
【0105】
制御回路762によって選択された受光素子75に由来する信号をセレクタ763で選択することにより、1つの通信対象に対して1つの第2処理回路765が割り当てられる。すなわち、制御回路762は、複数の受光素子75-1~Mが受光する、複数の通信対象からの空間光信号に由来する信号を、複数の第2処理回路765-1~Nのいずれかに割り当てる。これにより、受光装置70は、複数の通信対象からの空間光信号に由来する信号を、個別のチャネルで同時に読み取ることが可能になる。第6の実施形態の場合、複数の通信対象と同時に通信するためには、複数の通信対象からの空間光信号を1つのチャネルにおいて時分割で読み取る。それに対し、本実施形態の手法では、複数の通信対象からの空間光信号を、複数のチャネルにおいて同時に読み取るので、伝送速度が向上する。なお、本実施形態の手法においても、状況に応じて、時分割で信号を受光するように構成してもよい。
【0106】
例えば、通信対象のスキャンを1次的なスキャンとして行い、空間光信号の到来方向を粗い精度で特定してもよい。そして、特定された方向に細かい精度の2次的なスキャンを行って、通信対象のより正確な位置を特定してもよい。通信対象との間で通信可能な状況になれば、通信対象との信号のやり取りによって、その通信対象の正確な位置を確定できる。なお、通信対象の位置が予め特定されている場合は、その通信対象の位置を特定する処理を省略してもよい。
【0107】
以上のように、本実施形態の受光装置は、集光レンズ、光線制御素子、複数の受光素子、および複数のデコーダを備える。集光レンズは、空間光信号を受光する。光線制御素子は、複数の所定領域の各々に対応付けられた複数の光線制御領域を含む。光線制御素子は、複数の光線制御領域の各々に入射された光信号を、光線制御領域に対応付けられた所定領域に向けて出射する。複数の受光素子の各々は、複数の所定領域のうちいずれかに受光部を向けて配置される。複数の受光素子の各々は、光信号を受光する。複数のデコーダの各々は、複数の受光素子のうちいずれかに接続される。デコーダは、受光素子によって受光された光信号に基づく信号をデコードする。
【0108】
本実施形態の受光装置によれば、任意の方向から到来する空間光信号に基づく信号を、到来方向ごとにデコードできる。例えば、本実施形態の受光装置によれば、空間光信号の到来方向に応じたマルチチャンネルの受信装置を実現できる。
【0109】
(第8の実施形態)
次に、第8の実施形態に係る通信装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の通信装置は、第6の実施形態の受光装置と、受光された空間光信号に応じた空間光信号を送光する送光部とを備える。以下においては、位相変調型の空間光変調器を含む送光部を備える通信装置の例について説明する。なお、本実施形態の通信装置は、位相変調型の空間光変調器ではない送光機能を含む送光部を備えてもよい。また、本実施形態の通信装置は、無線通信機能を備えてもよい。本実施形態の通信装置は、第7の実施形態の受光装置と、送光部とを組み合わせた構成としてもよい。本実施形態の通信装置には、第4の実施形態のように、反射型の光線制御素子を適用してもよい。本実施形態の通信装置は、第2の実施形態のライトパイプや、第5の実施形態のファイババンドルと組み合わせてもよい。
【0110】
(構成)
図27は、本実施形態の通信装置80の構成の一例を示す概念図である。通信装置80は、集光レンズ81、光線制御素子83、受光素子85、デコーダ86、および送光部87を備える。
図27は、通信装置80の内部構成を横方向から見た図である。なお、デコーダ86および送光部87の位置については、特に限定を加えない。デコーダ86および送光部87は、通信装置80の内部に配置されてもよいし、通信装置80の外部に配置されてもよい。
【0111】
集光レンズ81は、外部から到来した空間光信号を集光する光学素子である。集光レンズ81によって集光された光信号は、光線制御素子83の入射面に向けて集光される。集光レンズ81は、第1の実施形態の集光レンズ11と同様の構成である。集光レンズ81は、光線制御素子83の形状に合わせて光を集光するように構成されてもよい。
【0112】
光線制御素子83は、集光レンズ81の後段に配置される。光線制御素子83は、その入射面が集光レンズ81の出射面と対面するように配置される。例えば、光線制御素子83は、第3の実施形態のように、空間光の到来方向に合わせた形状に設定される。なお、光線制御素子83は、第1の実施形態のように、任意の方向から到来する空間光に対応するように構成してもよい。また、光線制御素子83は、第4の実施形態のように、反射型であってもよい。また、光線制御素子83は、第7の実施形態のように、複数の光線制御領域を含んでいてもよい。光線制御素子83は、第1~第7の実施形態のいずれかと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0113】
受光素子85は、光線制御素子83の後段に配置される。受光素子85は、光線制御素子83から出射された光信号を受光する受光部850を有する。受光素子85は、その受光部850が光線制御素子83の出射面と対面するように配置される。光線制御素子83から出射された光信号は、受光素子85の受光部850で受光される。受光素子85は、受光された光信号を電気信号(以下、信号とも呼ぶ)に変換する。受光素子85は、変換後の信号を、デコーダ86に出力する。受光素子85は、第1の実施形態の受光素子15と同様の構成である。なお、第7の実施形態のように、複数の受光素子85を配置してもよい。
【0114】
デコーダ86は、受光素子85から出力された信号を取得する。デコーダ86は、受光素子85からの信号を増幅する。デコーダ86は、増幅された信号をデコードし、通信対象からの信号を解析する。デコーダ86は、信号の解析結果に応じた光信号を送光するための制御信号を、送光部87に出力する。
【0115】
送光部87は、デコーダ86から制御信号を取得する。送光部87は、制御信号に応じた空間光信号を投射する。送光部87から投射された空間光信号は、通信対象(図示しない)によって受光される。例えば、送光部87は、位相変調型の空間光変調器を備える。また、送光部87は、位相変調型の空間光変調器ではない送光機能を含んでいてもよい。
【0116】
〔送光部〕
次に、送光部87の詳細構成の一例について図面を参照しながら説明する。
図28は、送光部87の詳細構成の一例を示す概念図である。送光部87は、照射部871、空間光変調器873、制御部875、および投射光学系877を備える。照射部871、空間光変調器873、および投射光学系877は、投光部800を構成する。投光部800は、制御部875の制御に応じて、空間光信号を投射する。なお、
図28は概念的なものであり、各構成要素間の位置関係や、光の進行方向などを正確に表したものではない。
【0117】
照射部871は、特定波長のコヒーレントな光802を出射する。
図28のように、照射部871は、光源8711とコリメートレンズ8712を含む。
図28のように、照射部871が出射した光801は、コリメートレンズ8712を通過してコヒーレントな光802となり、空間光変調器873の変調部8730に入射される。例えば、光源8711は、レーザ光源を含む。例えば、光源8711は、赤外領域の光801を出射するように構成される。なお、光源8711は、可視領域や紫外領域などの赤外領域以外の光801を出射するように構成されてもよい。照射部871は、制御部875の制御に応じて駆動される電源(光源駆動電源とも呼ぶ)に接続される。光源駆動電源が駆動されると、光源8711から光801が出射される。
【0118】
空間光変調器873は、制御部875の制御に応じて、空間光信号を投射するためのパターン(空間光信号に対応する位相分布)を自身の変調部8730に設定する。本実施形態においては、空間光変調器873の変調部8730に所定のパターンが表示された状態で、その変調部8730に光802を照射する。空間光変調器873は、変調部8730に入射した光802の反射光(変調光803)を投射光学系877に向けて出射する。
【0119】
図28のように、本実施形態においては、空間光変調器873の変調部8730の入射面に対して光802の入射角を非垂直にする。すなわち、本実施形態においては、照射部871からの光802の出射軸を空間光変調器873の変調部8730に対して斜めにし、ビームスプリッタを用いずに空間光変調器873の変調部8730に光802を入射させる。
図28の構成では、光802がビームスプリッタを通過することによって減衰することがないため、光802の利用効率を向上させることができる。
【0120】
空間光変調器873は、位相がそろったコヒーレントな光802の入射を受け、入射された光802の位相を変調する位相変調型の空間光変調器によって実現できる。位相変調型の空間光変調器873を用いた投射光学系877からの出射光は、フォーカスフリーであるため、複数の投射距離に光を投射することになっても投射距離ごとに焦点を変える必要がない。
【0121】
位相変調型の空間光変調器873の変調部8730には、制御部875の駆動に応じて、空間光信号に対応する位相分布が表示される。位相分布が表示された空間光変調器873の変調部8730で反射された変調光803は、一種の回折格子が集合体を形成したような画像になり、回折格子で回折された光が集まるように像が形成される。
【0122】
空間光変調器873は、例えば、強誘電性液晶やホモジーニアス液晶、垂直配向液晶などを用いた空間光変調器によって実現される。空間光変調器873は、具体的には、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)によって実現できる。例えば、空間光変調器873は、MEMS(Micro Electro Mechanical System)によって実現されてもよい。
【0123】
位相変調型の空間光変調器873では、投射光を投射する箇所を順次切り替えるように動作させることによって、エネルギーを像の部分に集中することができる。そのため、位相変調型の空間光変調器873を用いれば、光源の出力が同じであれば、その他の方式のものよりも表示情報を明るく表示させることができる。
【0124】
制御部875は、デコーダ86からの制御信号に応じて、空間光信号に対応するパターンを空間光変調器873の変調部8730に表示させる。制御部875は、空間光変調器873の変調部8730に照射される光801の位相と、変調部8730で反射される変調光803の位相との差分を決定づけるパラメータが変化するように空間光変調器873を駆動する。
【0125】
位相変調型の空間光変調器873の変調部8730に照射される光802の位相と、変調部8730で反射される変調光803の位相との差分を決定づけるパラメータは、例えば、屈折率や光路長などの光学的特性に関するパラメータである。例えば、制御部875は、空間光変調器873の変調部8730に印可する電圧を変化させることによって、変調部8730の屈折率を変化させる。変調部8730の屈折率を変化させれば、変調部8730に照射された光802は、変調部8730の各部の屈折率に基づいて適宜回折される。すなわち、位相変調型の空間光変調器873に照射された光802の位相分布は、変調部8730の光学的特性に応じて変調される。なお、制御部875による空間光変調器873の駆動方法はここで挙げた限りではない。
【0126】
投射光学系877は、空間光変調器873で変調された変調光803を投射光807(空間光信号とも呼ぶ)として投射する。
図28のように、投射光学系877は、フーリエ変換レンズ8771、アパーチャ8773、および投射レンズ8775を含む。空間光変調器873で変調された変調光803は、投射光学系877によって投射光807として照射される。なお、投射範囲に像を形成できさえすれば、投射光学系877の構成要素のうちいずれかを省略してもよい。例えば、空間光変調器873の変調部8730に設定される位相分布に対応する画像を、仮想レンズを用いて拡大する場合、フーリエ変換レンズ8771を省略できる。また、必要に応じて、フーリエ変換レンズ8771、アパーチャ8773、および投射レンズ8775以外の構成を投射光学系877に追加してもよい。
【0127】
フーリエ変換レンズ8771は、空間光変調器873の変調部8730で反射された変調光803を無限遠に投射した際に形成される像を、近傍の焦点に結像させるための光学レンズである。
図28では、アパーチャ8773の位置に焦点が形成されている。
【0128】
アパーチャ8773は、フーリエ変換レンズ8771によって集束された光に含まれる高次光を遮蔽し、投射光807が表示される範囲を特定する。アパーチャ8773の開口部は、アパーチャ8773の位置における表示領域の最外周よりも小さく開口され、アパーチャ8773の位置における表示情報の周辺領域を遮るように設置される。例えば、アパーチャ8773の開口部は、矩形状や円形状に形成される。アパーチャ8773は、フーリエ変換レンズ8771の焦点位置に設置されることが好ましいが、高次光を消去する機能を発揮できれば焦点位置からずれていても構わない。
【0129】
投射レンズ8775は、フーリエ変換レンズ8771によって集束された光を拡大して投射する光学レンズである。投射レンズ8775は、空間光変調器873の変調部8730に表示された位相分布に対応する表示情報が投射範囲内に投影されるように投射光807を投射する。
【0130】
単純な記号などの線画を投射する場合、投射光学系877から投射された投射光807は、投射範囲全体に向けて均一に投射されるのではなく、画像を構成する文字や記号、枠などの部分に集中的に投射される。そのため、本実施形態の通信装置80によれば、光801の出射量を実質的に減らせるため、全体的な光出力を抑えることができる。すなわち、通信装置80は、小型かつ低電力な照射部871で実現できるため、その照射部871を駆動する光源駆動電源(図示しない)を低出力にでき、全体的な消費電力を低減できる。
【0131】
また、複数の波長の光を出射するように照射部871が構成されれば、照射部871から出射する光の波長を変えることができる。照射部871から出射する光の波長を変えれば、空間光信号の色を多色化できる。また、異なる波長の光を同時に出射する照射部871を用いれば、複数色の空間光信号を用いた通信が可能になる。
【0132】
〔適用例〕
図29は、本実施形態の通信装置80の適用例について説明するための概念図である。本適用例では、通信装置80を電柱の上部に配置する。なお、本適用例において、通信装置80は、無線通信する機能を有するものとする。
【0133】
電柱間には障害物が少ないため、電柱の上部は、通信装置80を設置するのに適している。また、電柱の上部の同じ高さに通信装置80を設置すれば、空間光信号の到来方向が水平方向に限定されるので、第3~第7の実施形態のように、光線制御素子の形状を水平方向に細長い構造にすることができる。通信をやり取りする二つの通信装置80は、一方の通信装置80が、他方の通信装置80から送光された空間光信号を受光するように配置される。通信装置80が二つのみの場合、空間光信号を互いに送受光するように配置されればよい。複数の通信装置80で空間光信号の通信網が構成される場合、中間に位置する通信装置80は、他の通信装置80から送光された空間光信号を、別の通信装置80に中継するように配置すればよい。
【0134】
本適用例によれば、異なる電柱に設置された複数の通信装置80の間で、空間光信号を用いた通信が可能になる。例えば、本適用例によれば、異なる電柱に設置された通信装置80の間における通信に応じて、自動車や家屋などに設置された無線装置と通信装置80との間で、無線通信による通信を行うこともできる。
【0135】
以上のように、本実施形態の通信装置は、集光レンズ、光線制御素子、受光素子、デコーダ、および送光部を備える。集光レンズは、空間光信号を受光する。光線制御素子は、集光レンズによって集光された空間光信号に由来する光信号を、所定領域に向けて出射する。受光素子は、所定領域に受光部を向けて配置される。受光素子は、光信号を受光する。デコーダは、受光素子によって受光された光信号に基づく信号をデコードする。送光部は、デコーダによってデコードされた信号に応じた空間光信号を送光する。
【0136】
本実施形態の通信装置によれば、空間光信号を用いた通信が可能になる。例えば、空間光信号を送受信し合えるように複数の通信装置を配置すれば、空間光信号を用いた通信網を構築できる。
【0137】
本実施形態の一態様において、送光部は、光源、空間光変調器、制御部、および投射光学系を有する。光源は、平行光を出射する。空間光変調器は、光源から出射された平行光の位相を変調する変調部を有する。制御部は、空間光信号に対応する位相画像を変調部に設定し、位相画像が設定された変調部に向けて平行光が照射されるように光源を制御する。投射光学系は、変調部で変調された光を投射する。
【0138】
本態様の通信装置は、位相変調型の空間光変調器を含むので、一般的な送光機構を含む通信装置と比べて、同じ程度の明るさの空間光信号を低消費電力で送光できる。
【0139】
(第9の実施形態)
次に、第9の実施形態に係る受光装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の受光装置は、第1~第8の実施形態の受光装置を簡略化した構成である。
図30は、本実施形態の受光装置90の構成の一例を示す概念図である。受光装置90は、集光レンズ91、光線制御素子93、および受光素子95を備える。
【0140】
集光レンズ91は、空間光信号を受光する。光線制御素子93は、集光レンズ91によって集光された空間光信号に由来する光信号を、所定領域に向けて出射する。受光素子95は、所定領域に受光部を向けて配置され、光信号を受光する。
【0141】
本実施形態の受光装置によれば、集光レンズによって集光された光信号を、光線制御素子によって所定領域に導くことによって、任意の方向から到来する空間光信号を効率よく受光できる。
【0142】
(ハードウェア)
ここで、本開示の各実施形態に係る制御や処理を実行するハードウェア構成について、
図31の情報処理装置100を一例として挙げて説明する。なお、
図31の情報処理装置100は、各実施形態の制御や処理を実行するための構成例であって、本開示の範囲を限定するものではない。
【0143】
図31のように、情報処理装置100は、プロセッサ101、主記憶装置102、補助記憶装置103、入出力インターフェース105、および通信インターフェース106を備える。
図31においては、インターフェースをI/F(Interface)と略して表記する。プロセッサ101、主記憶装置102、補助記憶装置103、入出力インターフェース105、および通信インターフェース106は、バス108を介して互いにデータ通信可能に接続される。また、プロセッサ101、主記憶装置102、補助記憶装置103および入出力インターフェース105は、通信インターフェース106を介して、インターネットやイントラネットなどのネットワークに接続される。
【0144】
プロセッサ101は、補助記憶装置103等に格納されたプログラムを主記憶装置102に展開し、展開されたプログラムを実行する。各実施形態においては、情報処理装置100にインストールされたソフトウェアプログラムを用いる構成とすればよい。プロセッサ101は、各実施形態に係る制御や処理を実行する。
【0145】
主記憶装置102は、プログラムが展開される領域を有する。主記憶装置102は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリとすればよい。また、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)などの不揮発性メモリを主記憶装置102として構成・追加してもよい。
【0146】
補助記憶装置103は、種々のデータを記憶する。補助記憶装置103は、ハードディスクやフラッシュメモリなどのローカルディスクによって構成される。なお、種々のデータを主記憶装置102に記憶させる構成とし、補助記憶装置103を省略することも可能である。
【0147】
入出力インターフェース105は、情報処理装置100と周辺機器とを接続するためのインターフェースである。通信インターフェース106は、規格や仕様に基づいて、インターネットやイントラネットなどのネットワークを通じて、外部のシステムや装置に接続するためのインターフェースである。入出力インターフェース105および通信インターフェース106は、外部機器と接続するインターフェースとして共通化してもよい。
【0148】
情報処理装置100には、必要に応じて、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力機器を接続するように構成してもよい。それらの入力機器は、情報や設定の入力に使用される。なお、タッチパネルを入力機器として用いる場合は、表示機器の表示画面が入力機器のインターフェースを兼ねる構成とすればよい。プロセッサ101と入力機器との間のデータ通信は、入出力インターフェース105に仲介させればよい。
【0149】
また、情報処理装置100には、情報を表示するための表示機器を備え付けてもよい。表示機器を備え付ける場合、情報処理装置100には、表示機器の表示を制御するための表示制御装置(図示しない)が備えられていることが好ましい。表示機器は、入出力インターフェース105を介して情報処理装置100に接続すればよい。
【0150】
また、情報処理装置100には、ドライブ装置を備え付けてもよい。ドライブ装置は、プロセッサ101と記録媒体(プログラム記録媒体)との間で、記録媒体からのデータやプログラムの読み込み、情報処理装置100の処理結果の記録媒体への書き込みなどを仲介する。ドライブ装置は、入出力インターフェース105を介して情報処理装置100に接続すればよい。
【0151】
以上が、各実施形態に係る制御や処理を実行するためのハードウェア構成の一例である。なお、
図31のハードウェア構成は、各実施形態に係る制御や処理を実行するためのハードウェア構成の一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。また、各実施形態に係る制御や処理をコンピュータに実行させるプログラムも本発明の範囲に含まれる。さらに、各実施形態に係るプログラムを記録したプログラム記録媒体も本発明の範囲に含まれる。記録媒体は、例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体で実現できる。また、記録媒体は、USB(Universal Serial Bus)メモリやSD(Secure Digital)カードなどの半導体記録媒体や、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、その他の記録媒体によって実現してもよい。プロセッサが実行するプログラムが記録媒体に記録されている場合、その記録媒体はプログラム記録媒体に相当する。
【0152】
各実施形態の制御や処理を実行する構成要素は、任意に組み合わせることができる。また、各実施形態の制御や処理を実行する構成要素は、ソフトウェアによって実現してもよいし、回路によって実現してもよい。
【0153】
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0154】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
空間光信号を集光する集光レンズと、
前記集光レンズによって集光された前記空間光信号に由来する光信号を、所定領域に向けて出射する光線制御素子と、
前記所定領域に受光部を向けて配置され、前記光信号を受光する受光素子と、を備える受光装置。
(付記2)
前記光線制御素子は、
前記集光レンズによって集光された前記光信号を、前記所定領域に向けて回折するニアフィールド回折光学素子である付記1に記載の受光装置。
(付記3)
前記光線制御素子は、
前記集光レンズによって集光された前記光信号を、前記所定領域に向けて回折して反射する反射型の回折光学素子である付記1に記載の受光装置。
(付記4)
前記光線制御素子から出射された前記光信号を、前記所定領域に配置された前記受光部に導光するライトパイプを備える付記1乃至3のいずれか一項に記載の受光装置。
(付記5)
前記ライトパイプは、
中空構造であり、内側の面上のうち少なくとも入射面近傍に、前記所定領域に配置された前記受光部に向けて前記光信号を指向的に導光する指向性導光体を有する付記4に記載の受光装置。
(付記6)
前記光線制御素子から出射された前記光信号を、前記所定領域に配置された前記受光部に導光する複数の光ファイバの束を含むファイババンドルを備える付記1乃至3のいずれか一項に記載の受光装置。
(付記7)
前記ファイババンドルに含まれる複数の前記光ファイバの各々の入射端の断面が、前記光線制御素子から出射された前記光信号の光軸に対して略垂直になるように、複数の前記光ファイバの各々が配置される付記6に記載の受光装置。
(付記8)
前記光線制御素子は、
前記空間光信号の到来方向に合わせた形状を有する付記1乃至7のいずれか一項に記載の受光装置。
(付記9)
前記受光素子によって受光された前記光信号に基づく信号をデコードするデコーダを備える付記1乃至8のいずれか一項に記載の受光装置。
(付記10)
複数の前記受光素子と、
複数の前記デコーダと、を備え、
複数の前記受光素子の各々は、
複数の前記所定領域のうちいずれかに前記受光部を向けて配置され、
複数の前記デコーダの各々は、
複数の前記受光素子のうちいずれかに接続され、
前記光線制御素子は、
複数の前記所定領域の各々に対応付けられた複数の光線制御領域を含み、複数の前記光線制御領域の各々に入射された前記光信号を、前記光線制御領域に対応付けられた前記所定領域に向けて出射する付記9に記載の受光装置。
(付記11)
付記9または10の受光装置と、
デコーダによってデコードされた信号に応じた空間光信号を送光する送光部と、を備える通信装置。
(付記12)
前記送光部は、
平行光を出射する光源と、
前記光源から出射された平行光の位相を変調する変調部を有する空間光変調器と、
前記空間光信号に対応する位相画像を前記変調部に設定し、前記位相画像が設定された前記変調部に向けて前記平行光が照射されるように前記光源を制御する制御部と、
前記変調部で変調された光を投射する投射光学系と、を有する付記11に記載の通信装置。
【0155】
この出願は、2021年1月5日に出願された日本出願特願2021-000310及び2021年6月28日に出願された日本出願特願2021-106392を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0156】
10、20、30、40、50、60、90 受光装置
11、21、31、41、51、61、71、81、91 集光レンズ
13、23、33、43、53、63、73、83、93 光線制御素子
15、25、35、45、55、65、75、85、95 受光素子
24 ライトパイプ
54 ファイババンドル
66、76、86 デコーダ
80 通信装置
87 送光部
661 増幅回路
665 デコード回路
761 第1処理回路
765 第2処理回路
762 制御回路
763 セレクタ
800 投光部
871 照射部
873 空間光変調器
877 投射光学系
7611 ハイパスフィルタ
7613 増幅器
7615 積分器
8711 光源
8712 コリメートレンズ
8771 フーリエ変換レンズ
8773 アパーチャ
8775 投射レンズ