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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】包装材及び包装袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20241008BHJP
   C09D 11/107 20140101ALI20241008BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20241008BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20241008BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B65D65/40 D
C09D11/107
B32B27/10
B32B27/30 A
B32B27/30 B
B32B29/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023012039
(22)【出願日】2023-01-30
(65)【公開番号】P2024107871
(43)【公開日】2024-08-09
【審査請求日】2024-04-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大谷 浩二
(72)【発明者】
【氏名】和泉 敦
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-005160(JP,A)
【文献】特開2022-156000(JP,A)
【文献】特開2022-169426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
C09D 11/107
C09D133/00
B32B 27/10-27/30
B32B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシール層、紙基材、及び表面保護層をこの順に有する包装材であって、
前記ヒートシール層が、炭化水素系ワックスを含み、
前記炭化水素系ワックスのJISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)が、12以下であり、
前記表面保護層が、ガラス転移温度が12℃以上のスチレン‐アクリル共重合樹脂(A)を含み、
前記表面保護層中の前記スチレン-アクリル共重合樹脂(A)の含有量が、表面保護層100質量%中、50質量%以上である、包装材。
【請求項2】
ヒートシール層が、エチレン‐酢酸ビニル共重合樹脂、及び/又はアクリル樹脂を含む、請求項1に記載の包装材。
【請求項3】
更に、バリア層を有する、請求項1又は2に記載の包装材。
【請求項4】
バリア層が、ポリビニルアルコール系樹脂を含む、請求項3に記載の包装材。
【請求項5】
表面保護層が、更に、グリコール系化合物を含む、請求項1又は2に記載の包装材。
【請求項6】
グリコール系化合物が、ブチルセルソルブ、プロピレングリコール、及びエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項5に記載の包装材。
【請求項7】
表面保護層中のグリコール系化合物の含有量が、表面保護層100質量%中、0.01~15質量%である、請求項5に記載の包装材。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の包装材から形成された包装袋。
【請求項9】
ヒートシール層、紙基材、及び表面保護層をこの順に有する包装材の製造方法であって、
紙基材の一方の面に、炭化水素系ワックスを含むヒートシール剤を印刷してヒートシール層を形成する工程と、
紙基材の他方の面に、ガラス転移温度が12℃以上のスチレン‐アクリル共重合樹脂(A)を含むオーバーコート剤を印刷して前記スチレン-アクリル共重合樹脂(A)の含有量が、表面保護層100質量%中、50質量%以上である、表面保護層を形成する工程と、
を含み、
前記炭化水素系ワックスのJISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)が、12以下である、包装材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包装材、包装袋及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商品パッケージその他の包装物には装飾や表面保護のために印刷が施されているのが一般的である。また、印刷物の意匠性、美粧性、高級感等の印刷品質は、そのでき如何によって、消費者の購入意欲を促進させるものであり、産業上の価値は大きい。
【0003】
一般的に、パッケージの構成には主にプラスチックフィルムが用いられ、透明であるため中身を視認できる使用方法もあり、特にラミネート包装材が用いられることが多かった。例えば、特許文献1においては、基材、印刷層、接着剤層及びシーラント層からなるラミネート包装材であって、印刷層及び接着剤層にバイオマス樹脂が使用された発明が記載されている。しかし、ラミネート型包装材は、石油由来プラスチックフィルムの使用量が多いという課題がある。このため、カーボンニュートラルであって、プラスチックの使用量を削減可能な包装材が望まれており、技術開発がなされている。
【0004】
一方で、包装材は、紙管に巻き取られた状態で保管されるため、保管時は表面保護層とヒートシール層が接し、かつ荷重がかかる状態となる。特に巻取りの中心部ほど包装材にかかる荷重が大きくなり、ブロッキングが非常に発生しやすくなるため、高い耐ブロッキング性が求められる。
【0005】
特許文献2には、ヒートシール層/紙基材/表面保護層の構成を有し、表面保護層がスチレン‐アクリル共重合樹脂を含む紙化包材の記載がある。また、特許文献3には、紙基材/印刷層/表面保護層の構成を有し、表面保護層が、スチレン‐アクリル共重合樹脂を含む紙化包材の記載がある。
【0006】
しかし、特許文献2の包装材は、荷重10kgf/cmでの耐ブロッキング性の記載はあるが、巻取り中心部での高荷重を想定した耐ブロッキング性については何ら記載がなく、耐水摩擦性及び酸素バリア性についても何ら記載されていない。また、特許文献3の包装材は、包装材を折って食品等を包むことを想定しているため、ヒートシール層を有さず、ヒートシール性及び耐ブロッキング性についても何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-051796号公報
【文献】国際公開第2022/071261号
【文献】特開2021-38022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、酸素バリア性、ヒートシール性、耐ブロッキング性、耐水摩擦性に優れた包装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は前記課題に対して鋭意研究を重ねた結果、以下に記載の包装材を用いることで上記課題を解決することを見出し、本発明を成すに至った。
【0010】
すなわち本発明は、
ヒートシール層、紙基材、及び表面保護層をこの順に有する包装材であって、
前記ヒートシール層が、炭化水素系ワックスを含み、
前記炭化水素系ワックスのJISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)が、12以下であり、
前記表面保護層が、ガラス転移温度が12℃以上のスチレン‐アクリル共重合樹脂(A)を含む、包装材に関する。
【0011】
また、本発明は、ヒートシール層が、エチレン‐酢酸ビニル共重合樹脂、及び/又はアクリル樹脂を含む、前記包装材に関する。
【0012】
また、本発明は、更に、バリア層を有する、前記包装材に関する。
【0013】
また、本発明は、バリア層が、ポリビニルアルコール系樹脂を含む、前記包装材に関する。
【0014】
また、本発明は、表面保護層が、更に、グリコール系化合物を含む、前記包装材に関する。
【0015】
また、本発明は、グリコール系化合物が、ブチルセルソルブ、プロピレングリコール、及びエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、前記包装材に関する。
【0016】
また、本発明は、表面保護層中のグリコール系化合物の含有量が、表面保護層100質量%中、0.01~15質量%である、前記包装材に関する。
【0017】
また、本発明は、前記包装材から形成された包装袋に関する。
【0018】
また、本発明は、ヒートシール層、紙基材、及び印刷層をこの順に有する包装材の製造方法であって、
紙基材の一方の面に、炭化水素系ワックスを含むヒートシール剤を印刷して印刷層を形成する工程と、
紙基材の他方の面に、ガラス転移温度が12℃以上のスチレン‐アクリル共重合樹脂(A)を含むオーバーコート剤を印刷して表面保護層を形成する工程と、
を含み、
前記炭化水素系ワックスのJISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)が、12である、包装材の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、酸素バリア性、ヒートシール性、耐ブロッキング性、耐水摩擦性に優れた包装材を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0021】
なお、以下の説明において「部」は特に断らない限り「質量部」、「%」は「質量%」を示す。また、包装材を「積層体」と記載する場合があるが同義である。
また、「印刷インキ」とは、印刷層を形成するための顔料その他の着色剤を含有するインキをいう。「オーバーコート剤」とは、表面保護層を形成するための、顔料その他の着色剤を含有しないコート剤をいうが、意図せず混入した僅かな着色剤等を排除するものではない。
【0022】
[包装材]
本発明は、ヒートシール層、紙基材、及び表面保護層をこの順に有する包装材であって、前記ヒートシール層が、炭化水素系ワックスを含み、前記炭化水素系ワックスのJISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)が、12以下であり、前記表面保護層が、ガラス転移温度が12℃以上のスチレン‐アクリル共重合樹脂(A)を含む、包装材に関する。
【0023】
本願では、ガラス転移温度が高いスチレン‐アクリル共重合樹脂を表面保護層に用いることで、表面保護層の硬度を高めており、かつ、ヒートシール層に硬い炭化水素系ワックスを含むことで、表面保護層とヒートシール層の密着性を低下させている。これらの相乗効果により、巻取り時の耐ブロッキング性が優れた包装材が実現できた。さらに、表面保護層が、ガラス転移温度が12℃以上のスチレン-アクリル共重合樹脂(A)樹脂を含むことにより、耐水摩擦性及び酸素バリア性が向上した。なお、本説明はあくまで推測に基づくものであり、何ら発明を限定するものではない。
【0024】
本願における、包装材の積層構成の例として、以下のものを好適に挙げることができるが、何ら本発明を限定するものではない。下記の例において、「/」は各層の境界を意味する。
ヒートシール層/紙基材/表面保護層
ヒートシール層/紙基材/印刷層/表面保護層
ヒートシール層/紙基材/バリア層/印刷層/表面保護層
ヒートシール層/紙基材/印刷層/バリア層/表面保護層
ヒートシール層/バリア層/紙基材/印刷層/表面保護層
【0025】
[表面保護層]
本願において表面保護層は、ガラス転移温度が12℃以上のスチレン-アクリル共重合樹脂(A)を含む。また、造膜性の観点からグリコール系化合物を含むことが好ましい。表面保護層は紙基材のヒートシール層を具備した面の反対側に位置し、ガラス転移温度が12℃以上のスチレン-アクリル共重合樹脂(A)を含むオーバーコート剤により形成することができる。形成方法は、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式等、公知の印刷方式から適宜選択でき、好ましくはフレキソ印刷方式である。
表面保護層の塗工量は、0.5~9g/mであることが好ましく、1~5g/mであることがより好ましく、1.5~2.5g/mであることが更に好ましい。表面保護層の塗工量が0.5g/m以上である場合、酸素バリア性及び耐水摩擦性が良好となり、塗工量が8g/m以下である場合、表面保護層内の残留溶剤量が減少するため、耐ブロッキング性が良好となる。
【0026】
<スチレン-アクリル共重合樹脂(A)>
スチレン-アクリル共重合樹脂(A)は、水性樹脂であることが好ましく、当該水性樹脂は水溶性樹脂であっても水性エマルジョン樹脂であってもよいが、水性エマルジョン樹脂であることが好ましい。
【0027】
スチレン-アクリル共重合樹脂(A)のガラス転移温度は、12℃以上であり、12~80℃であることが好ましく、15~60℃であることがより好ましく、20~50℃であることが更に好ましい。ガラス転移温度が上記範囲である場合、酸素バリア性、耐ブロッキング性、及び耐水摩擦性が良好となる。スチレン-アクリル共重合樹脂(A)の酸価は、20~200mgKOH/gであることが好ましく、30~150mgKOH/gであることがより好ましく、70~120mgKOH/gであることが更に好ましい。上記範囲である場合、耐ブロッキング性が良好となる。スチレン-アクリル共重合樹脂(A)の重量平均分子量は、10000~600000であることが好ましく、50000~500000であることがより好ましく、100000~400000であることが更に好ましく、200000~300000であることが特に好ましい。上記範囲である場合、耐水摩擦性が良好となる。
【0028】
《酸価の測定》
本願において酸価は、樹脂固形分1g中に含有する酸性基を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JISK0070に準拠して測定される。
【0029】
《ガラス転移温度の測定》
本願においてガラス転移温度は、島津製作所社製DTG-60Aを用いた、熱重量・示差熱同時測定(TG-DTA)により測定した。詳細には、窒素雰囲気下、測定温度範囲-100~200℃、昇温速度1℃/分の条件において、ベースラインシフトにおける変曲点の温度をガラス転移温度とした。
【0030】
《重量平均分子量の測定》
本願において重量平均分子量は、ポリエチレングリコールを標準物質に用いた換算分子量として求めることができ、測定器はGPC装置:昭和電工社製 Shodex GPC-401、カラムは昭和電工社製Shodex OHpak LB-805、検出器はRI(示差屈折計)を用いた。溶離液は0.1規定のNaNO水溶液を使用し、カラム温度は35℃、流速は3mL/分で実施した。
【0031】
表面保護層に含まれるスチレン-アクリル共重合樹脂(A)は、市販品を用いてもよく、例えば、星光PMC社製 HE-1335、X-436、QE-1042等を使用することができる。
【0032】
表面保護層中のスチレン-アクリル共重合樹脂(A)の含有量は、表面保護層100質量%中、50~99質量%であることが好ましく、70~97質量%であることがより好ましく、90~95質量%であることが更に好ましい。上記範囲である場合、耐ブロッキング性及び耐水摩擦性が向上する。
【0033】
<スチレン-アクリル共重合樹脂(A)以外の樹脂>
表面保護層は、さらにスチレン-アクリル共重合樹脂(A)以外の樹脂を含んでよく、例えば、ウレタン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ロジン系樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン-アクリル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0034】
<グリコール系化合物>
本発明において、表面保護層はグリコール系化合物を含むことが好ましい。後述の<表面保護層の形成>で説明するように、表面保護層はオーバーコート剤を塗工、乾燥することで形成することができるが、乾燥時にグリコール系化合物の一部は表面保護層中に残留し、表面保護層の造膜性を向上させる。
グリコール系化合物の沸点は240℃以下であることが好ましく、130~240℃であることがより好ましく、150~200であることが更に好ましい。上記範囲である場合、表面保護層の造膜性とタックのバランスが良好となり、耐水摩擦性及び耐ブロッキング性が良好となる。
【0035】
グリコール系化合物としては、エチレングリコール(沸点197℃)、エチレングリコールモノメチルエーテル(沸点124℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(沸点135℃)、エチレングリコールモノプロピルエーテル(沸点150℃)、ブチルセルソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル(沸点168℃))、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点193℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点202℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点231℃)、トリエチレングリコール(沸点177℃)、プロピレングリコール(沸点188℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点120℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点132℃)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(沸点149℃)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点170℃)、ジプロピレングリコール(沸点230℃)、ジピロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点189℃)、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(沸点210℃)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点230℃)等が挙げられ、ブチルセルソルブ、プロピレングリコール、及びエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。また、これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
表面保護層中のグリコール系化合物の含有量は、表面保護層100質量%中、0.01~15質量%であることが好ましく、0.1~10質量%であることがより好ましく、1~5質量%であることが更に好ましく、1.5~3.5質量%であることが特に好ましい。上記範囲である場合、造膜性とタックのバランスが良好となり、耐水摩擦性及び耐ブロッキング性が良好となる。
【0037】
<表面保護層に含まれる添加剤>
本発明の表面保護層には、必要に応じて各種添加剤を含有させることができる。例えば、分散剤、ワックス、体質顔料、レベリング剤、消泡剤、撥水剤、剥離剤である。
具体的には、耐ブロッキング性及び耐水摩擦性を向上させるために、ポリエチレンワックス等の炭化水素系ワックスのワックス樹脂微粒子分散体、乾燥性や塗膜隠蔽性を向上させるために、シリカ、硫酸バリウム、樹脂ビーズ、炭酸カルシウム、タルク等の体質顔料、防滑性を付与するために無機系微粒子及び粘着性樹脂(アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等)、レベリング性を向上させるためにレベリング剤、消泡性を付与するために消泡剤、再溶解性を付与するためにアンモニア、アミン系化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基性化合物等の各種添加剤を添加することができ、耐水摩擦性や耐ブロッキング性向上の観点から、ポリエチレンワックス等の炭化水素系ワックスを含むことが好ましい。炭化水素系ワックスについては、後述の[ヒートシール層]で説明する<炭化水素系ワックス>の態様を援用することができる。
【0038】
表面保護層中の炭化水素系ワックスの含有量は、表面保護層100質量%中、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましく、1~3質量%であることが更に好ましい。上記範囲である場合、耐ブロッキング性が良好となる
【0039】
<オーバーコート剤>
表面保護層は、オーバーコート剤により形成されることが好ましい。オーバーコート剤は、水性オーバーコート剤であることが好ましい。当該オーバーコート剤はスチレン-アクリル共重合樹脂(A)及び水性媒体を含み、更に上述のグリコール系化合物及び炭化水素系ワックスを含むことが好ましい。加えて、スチレン‐アクリル共重合樹脂(A)以外の樹脂、及び/又は上述の表面保護層に含まれる添加剤を含んでもよい。オーバーコート剤の粘度は、印刷適性等の観点から、20~200mPa・sであることが好ましい。
【0040】
オーバーコート剤におけるスチレン-アクリル共重合樹脂(A)の固形分の含有量は、オーバーコート剤の全質量中、10~70質量%であることが好ましく、25~75質量%であることがより好ましい。オーバーコート剤におけるグリコール系化合物の含有量は、オーバーコート剤の全質量中、0.1~10質量%であることが好ましく、1~8質量%であることがより好ましい。オーバーコート剤における炭化水素系ワックスの含有量は、オーバーコート剤の全質量中、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。
【0041】
(水性媒体(グリコール系化合物を除く))
オーバーコート剤は、水性媒体を含むことが好ましい。水性媒体の主成分は水であることが好ましいが、水に加えて、水溶性有機溶剤を使用できる。具体的には、印刷条件(スピード、版深、デザイン、乾燥温度)に応じて、グリコール系化合物以外のアルコール系有機溶剤等を含有させることができる。水性媒体の含有量は、オーバーコート剤全量に対して30質量%以下であることが好ましい。
ここで、本発明において、主成分が水であるとは、水性媒体中、水の含有量が最も多いことをいう。また、水溶性有機溶剤とは、25℃で液体であり、かつ、25℃の水に対する溶解度が1質量%以上であるものを指す。
【0042】
上記アルコール系有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、ノルマルブタノール、tert-ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール等が挙げられる。
【0043】
<オーバーコート剤の製造方法>
オーバーコート剤は、攪拌羽根、回転翼等を供えた攪拌機に、樹脂を溶剤に溶解又は分散させた樹脂溶液、溶剤、添加剤を仕込み、混合、攪拌して得ることができる。撹拌速度としては特に制限されることはなく、50~2000rpmで行うことが可能である。オーバーコート剤の取り扱い、塗布性等の向上のために、さらに水性媒体を適宜追加することもできる。
【0044】
<表面保護層の形成>
表面保護層は、例えば、紙基材上、又は後述の印刷層上に、オーバーコート剤を用いて印刷した後、水性媒体を除去することによって形成することができる。印刷方法としてはフレキソ印刷方式やグラビア印刷方式等の公知の印刷方法が使用でき、フレキソ印刷方式が好ましい。例えば、オーバーコート剤がフレキソ印刷に適した粘度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給され、塗布される。その後、オーブン等による乾燥によって水性媒体を除去することで表面保護層を形成することができる。
【0045】
(フレキソ印刷)
フレキソ印刷に使用される版としてはUV光源による紫外線硬化を利用する感光性樹脂版又はダイレクトレーザー彫刻方式を使用するエラストマー素材版が挙げられる。フレキソ版の画像部の形成方法に関わらず版のスクリーン線数において30lpi以上のものが使用される。版を貼るスリーブやクッションテープについては任意のものを使用することができる。
【0046】
フレキソ印刷機としてはCI型多色フレキソ印刷機、ユニット型多色フレキソ印刷機等があり、インキとしてのヒートシール剤の供給方式についてはチャンバー方式、2ロール方式等を挙げることができ、適宜の印刷機を使用することができる。
【0047】
[ヒートシール層]
本願におけるヒートシール層は、JISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)が、12以下である炭化水素系ワックスを含む。ヒートシール層は、紙基材上の表面保護層を具備した面の反対側に位置し、JISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)が、12以下である炭化水素系ワックスを含むヒートシール剤を紙基材上又は後述のバリア層上に印刷、乾燥することで形成することができる。ヒートシール剤の塗工量は、1~18g/mであり、2~12g/mであることが好ましく、3~8g/mであることが特に好ましい。上記範囲である場合、ヒートシール性及び耐ブロッキング性が良好となる。
【0048】
<炭化水素系ワックス>
ヒートシール層は、炭化水素系ワックスを含み、前記炭化水素系ワックスのJISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)は、12以下である。炭化水素系ワックスは、以下に限定されるものではないが、ポリエチレンワックス、およびフィッシャー・トロプシュ・ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。中でも、ポリエチレンワックス及び/又はフィッシャー・トロプシュ・ワックスであることが好ましい。
【0049】
炭化水素系ワックスのJISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)は、12以下であり、0.5~8であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、2~4であることが更に好ましく、2.5~3.5であることが特に好ましい。上記範囲である場合、ヒートシール性と耐ブロッキング性が良好となる。炭化水素系ワックスのJISK7112(B法)に規定された23℃における密度は、900~990kg/mであることが好ましく、925~990kg/mであることがより好ましい。上記範囲である場合、耐ブロッキング性が良好となる。炭化水素系ワックスのDSC測定における融点は、90~150℃であることが好ましく、100~125℃であることがより好ましい。上記範囲である場合、ヒートシール性及び耐ブロッキング性が良好となる。なお、炭化水素系ワックスの融点は、DSC昇温曲線における吸熱ピークのピークトップ(極小値)の融点を表す。炭化水素系ワックスの平均粒子径は、0.5~12μmであることが好ましく、1~10μmであることがより好ましく、1.5~4μmであることが更に好ましい。なお、炭化水素系ワックスにおける平均粒子径とは、レーザー回折・光散乱法での測定におけるD50の値を表す。
【0050】
ヒートシール層中の炭化水素系ワックスの含有量は、ヒートシール層100質量%中、0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましく、1~3質量%であることが更に好ましい。上記範囲である場合、ヒートシール性及び耐ブロッキング性が良好となる。
【0051】
(ポリエチレンワックス)
ポリエチレンワックスは、特に限定されるわけではないが、例えば、高密度重合ポリエチレン、低密度重合ポリエチレン、酸化ポリエチレン、酸変性ポリエチレン、および特殊モノマー変性ポリエチレン等が挙げられる。ポリエチレンワックスは、JISK7112(B法)に規定された23℃における密度が、925~990kg/mであることが好ましく、JISK6862に準拠して測定された140℃における溶融粘度が、50~8000mPa・sであることが好ましい。また、ポリエチレンワックスは、酸価を有していてもよい。酸価を有する場合、酸価は0.5~70mgKOH/gであることが好ましい。また、ポリエチレンワックスは、DSC測定における融点が90~150℃であることが好ましく、更に好ましくは100~125℃である。
【0052】
フィッシャー・トロプシュ・ワックスとは、フィッシャー・トロプシュ製法により一酸化炭素と水素を原料に製造されたワックスであり、ほぼ飽和の、分枝を有しない直鎖の分子構造からなる。その直鎖構造により、高融点、低粘度、硬質である。フィッシャー・トロプシュ・ワックスは長期間熱に晒されても劣化がほとんどなく、極めて高い熱安定性を示す。フィッシャー・トロプシュ・ワックスは、数平均分子量が400~2000であることが好ましい。また、フィッシャー・トロプシュ・ワックスは、JISK7112(B法)に規定された23℃における密度が、925~990kg/mであることが好ましい。また、フィッシャー・トロプシュ・ワックスは、酸価を有していてもよい。酸価を有する場合、好ましくは0.5~50mgKOH/gである。また、フィッシャー・トロプシュ・ワックスは、DSC測定における融点が90~130℃であることが好ましく、更に好ましくは100~120℃である。
【0053】
ヒートシール層は樹脂を含むことが好ましく、樹脂としては、アクリル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等を使用することができ、耐ブロッキング性とヒートシール性の両立の観点からアクリル樹脂、エチレン‐酢酸ビニル共重合樹脂であることが好ましく、エチレン‐酢酸ビニル共重合樹脂であることがより好ましい。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
<エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂>
エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂は、エチレンと酢酸ビニルからなる共重合体である。エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂中の酢酸ビニル含有量は、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂100質量%中、5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、20~30質量%であることが特に好ましく。エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂の最低造膜温度は、40~120℃であることが好ましく、60~100℃であることがより好ましい。酢酸ビニル含有量、及び最低造膜温度が上記範囲である場合、ヒートシール性が良好となる。エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂のガラス転移温度は、-60~20℃であることが好ましく、-25~5℃であることがより好ましく、-20~-10℃であることが特に好ましい。
【0055】
《最低造膜温度の測定》
本願において、JIS K 6828-1:2003に準拠し、テスター産業社製 TP-801MFTテスターで測定した温度を最低造膜温度とした。
【0056】
上記エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂は例えば、ジャパンコーティングレジン社製 アクアテックスECシリーズ、住友化学工業社製 スミカフレックスS-201HQ、S-305、S-305HQ、S-328HQ、S-400HQ、S-401HQ、S-408HQE、S-410HQ、S-450HQ、S-455HQ、S-456HQ、S-460HQ、S-467HQ、S-470HQ、S-480HQ、S-510HQ、S-520HQ、S-752、S-755を使用することができる。
【0057】
<アクリル樹脂>
アクリル樹脂とは、アクリルモノマー由来の構成単位を含む樹脂である。アクリル樹脂はカルボキシル基その他の酸性基を有していることが好ましい。アクリル樹脂の酸価は、20~120mgKOH/gであることが好ましく、30~100mgKOH/gであることがより好ましく、40~80mgKOH/gであることが特に好ましい。上記範囲である場合、耐ブロッキング性が良好となる。アクリル樹脂のガラス転移温度は、-40~10℃であることが好ましく、-30~5℃であることがより好ましく、-20~0℃であることが特に好ましい。上記範囲である場合、耐ブロッキング性及びヒートシール性が良好となる。
【0058】
アクリル樹脂は、市販品を用いてもよく、例えば、BASF社製 JONCRYL PDX-7356、PDX-7326、PDX-7430、星光PMC社製 PE-1126、JE-1113、KE1148、ジャパンコーティングレジン社製 AC-3100等を使用することができる。
【0059】
ヒートシール層中の樹脂の含有量は、ヒートシール層100質量%中、80~99.5質量%であることが好ましく、85~99質量%であることがより好ましい。上記範囲である場合、ヒートシール性が良好となる。
【0060】
<炭化水素系ワックス以外の添加剤>
ヒートシール層は、更に、消泡剤、乳化剤、防腐剤、可塑剤、造膜助剤、及びキレート架橋剤等の任意の添加剤を含むことができ、消泡剤を含むことが好ましい。
【0061】
《消泡剤》
本願において、消泡剤を含むことが好ましく、消泡剤を含む場合、ヒートシール層の平滑性が向上することで、ヒートシール性が良好となる。消泡剤は、シリコン系消泡剤及び非シリコン系消泡剤が挙げられ、ヒートシール層中の消泡剤の含有量は、ヒートシール層100質量%中、0.01~1質量%であることが好ましく、0.05~0.5質量%であることがより好ましく、0.1~0.3質量%であることが特に好ましい。
【0062】
消泡剤は、市販品を用いてもよく、例えば、BYK社製 BYK-024、BYK-025、BYK-028等を使用することができる。
【0063】
<ヒートシール剤>
ヒートシール層は、ヒートシール剤により形成されることが好ましい。ヒートシール剤は、水性ヒートシール剤であることが好ましい。当該ヒートシール剤は、JISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)が、12以下である炭化水素系ワックス及び水性媒体を含み、ヒートシール剤が含む樹脂は、エチレン‐酢酸ビニル共重合樹脂及び/又はアクリル樹脂が好ましい。加えて、エチレン‐酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル樹脂以外の樹脂、及び/又は炭化水素系ワックス以外の添加剤を含んでもよい。ヒートシール剤の粘度は、印刷適性等の観点から、20~200mPa・sであることが好ましい。なお、水性媒体の態様については、[表面保護層]で説明した(水性媒体)を援用することができる。
【0064】
<ヒートシール剤の製造方法>
ヒートシール剤の製造方法は、[表面保護層]で説明した<オーバーコート剤の製造方法>を援用することができる。
【0065】
<ヒートシール層の形成>
本発明におけるヒートシール層は、例えば、紙基材上、又は後述のバリア層上に、JISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)が、12以下である炭化水素系ワックスを含むヒートシール剤を用いて印刷した後、水性媒体を除去することによって形成することができる。印刷方法としては、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式等、公知の印刷方式から適宜選択でき、フレキソ印刷方式であることが好ましい。例えば、フレキソ印刷に適した粘度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給され、塗布される。その後、オーブン等による乾燥によって被膜を定着させることでヒートシール層を得ることができる。
【0066】
[紙基材]
紙基材は、特に制限されず、公知のものを用いることができる。このような紙基材としては、例えば、中質紙、上質紙、新聞用紙、各種コート紙、裏打ち紙、含浸紙、ボール紙やアート紙、キャスト紙、クラフト紙、コートボール、アイボリー紙、カード紙、カップ原紙、キャスト紙、遮光紙、及びこれらの表面処理された紙基材が挙げられる。
なお、紙基材の坪量は、好ましくは50~150g/m、より好ましくは55~120g/m、更に好ましくは60~90g/mである。
【0067】
包装材は、表面保護層と紙基材の間に、更に、印刷インキを塗工してなる印刷層を有しても良い。なお、本願において、「印刷インキ」は顔料等の着色剤を含有するものを表す。また、包装材は、ヒートシール層と表面保護層の間にバリア層を有することが好ましい。
【0068】
[印刷層]
印刷層は着色剤及びスチレン-アクリル共重合樹脂(A’)を含むことが好ましい。印刷層の膜厚は0.1~10g/mであることが好ましく、1~6g/mであることがより好ましく、1.5~3g/mであることが更に好ましい。本発明では、単一の印刷層だけでなく、複数の印刷層が重なった層も印刷層とし、色相の異なる印刷層を任意に組み合わせることができる。
【0069】
(スチレン-アクリル共重合樹脂(A’))
スチレン-アクリル共重合樹脂(A’)は、水溶性のスチレン-アクリル共重合樹脂(a’1)であってもよいし、水性エマルジョンのスチレン-アクリル共重合樹脂(a’2)であってもよい。スチレン-アクリル共重合樹脂(A’)は、上述の[表面保護層]で説明したスチレン-アクリル共重合樹脂(A)と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0070】
(水溶性のスチレン-アクリル共重合樹脂(a’1))
スチレン-アクリル共重合樹脂(a’1)の酸価は、150~350mgKOH/gであることが好ましく、200~300mgKOH/gであることがより好ましい。上記範囲である場合、耐水摩擦性が良好になる。スチレン-アクリル共重合樹脂(a’1)の重量平均分子量は1500~50000であることが好ましく、1500~30000であることがより好ましく、1500~8000であることが更に好ましい。上記範囲である場合、耐ブロッキング性が良好となる。スチレン-アクリル共重合樹脂(a’1)のガラス転移温度は、40~130℃が好ましく、60~100℃がより好ましい。上記範囲である場合、耐ブロッキング性が良好になる。
【0071】
スチレン-アクリル共重合樹脂(a’1)は、市販品を用いてもよく、例えば、星光PMC社製 GL-2439、YL-1098が使用できる。
【0072】
(水性エマルジョンのスチレン-アクリル共重合樹脂(a’2))
スチレン-アクリル共重合樹脂(a’2)の酸価は、5~80mgKOH/gであることが好ましく、20~60mgKOH/gであることがより好ましい。上記範囲である場合、密着性が良好となる。スチレン-アクリル共重合樹脂(a’2)の重量平均分子量は、10000~600000であることが好ましく、50000~500000であることがより好ましく、100000~400000であることが更に好ましく、200000~300000であることが特に好ましい。上記範囲である場合、耐水摩擦性が良好となる。スチレン-アクリル共重合樹脂(a’2)のガラス転移温度は、-20~60℃が好ましく、0~40℃がより好ましい。上記範囲である場合、耐ブロッキング性が良好となる。
【0073】
スチレン-アクリル共重合樹脂(a’2)は、市販品を用いてもよく、例えば、星光PMC社製 HE-1335、X-436、QE-1042等を使用することができる。
【0074】
印刷層は、上記スチレン-アクリル共重合樹脂(a’1)とスチレン-アクリル共重合樹脂(a’2)とを両方含むことが好ましい。a’1とa’2の固形分比率は、1:99~75:25であることが好ましく、1:99~55:45であることがより好ましく、15:85~35:65であることが更に好ましい。上記比率の場合、耐水摩擦性及び耐ブロッキング性が良好となる。
【0075】
<スチレン-アクリル共重合樹脂(A’)以外の樹脂>
印刷層は、スチレン-アクリル共重合樹脂(A’)以外の樹脂を含むことができ、例えば、アクリル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、ウレタン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ひまし油系樹脂、ロジン系樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。中でも、印刷層が、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0076】
<印刷層に含まれる着色剤>
印刷層は、着色剤を含む。前記着色剤の含有量は、印刷層全質量中、1~60質量%であることが好ましく、30~50質量%であることがより好ましい。着色剤としては顔料が好ましく、当該顔料としては、有機顔料、無機顔料いずれでも使用可能である。
【0077】
有機顔料として具体的な例をカラーインデックス(Colour Index International、略称C.I.)のC.I.ナンバーで示す。
好ましくは、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブラック7であり、これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
(無機顔料)
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化アルミニウム、シリカ、カオリン、クレー、タルク、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、酸化チタン、酸化亜鉛が挙げられ、アルミニウムはリーフィングタイプ又はノンリーフィングタイプがあるが、ノンリーフィングタイプが好ましい。
【0079】
<印刷層に含まれる添加剤>
本発明の印刷層には、必要に応じて各種添加剤を含有させることができる。例えば、分散剤、ワックス、体質顔料、レベリング剤、消泡剤、造膜助剤が挙げられる。
具体的には、耐水摩擦性を向上させるために、ポリエチレンワックス等のワックス樹脂微粒子分散体、防滑性を付与するために無機系微粒子及び粘着性樹脂、酢酸ビニル樹脂、レベリング性を向上させるためにレベリング剤、消泡性を付与するために消泡剤、再溶解性を付与するために水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性化合物、グリコール系化合物等の造膜助剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0080】
<印刷インキ>
印刷インキは、上述の着色剤、上記スチレン-アクリル共重合樹脂(A’)、及び水性媒体を含む。更に、上述のスチレン‐アクリル共重合樹脂(A’)以外の樹脂、及び/又は印刷層に含まれる添加剤を含んでもよい。水性媒体の態様については、[表面保護層]で説明した(水性媒体)を援用することができる。
【0081】
<印刷インキの製造方法>
印刷層の形成に用いられる印刷インキは、例えば、顔料を樹脂等により分散機を用いて有機溶剤中に分散させ、得られた顔料分散体に樹脂、各種添加剤や有機溶剤等を混合して製造できる。分散機としては一般に使用される、例えばローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルを用いることができる。顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度等を適宜調節することにより、調整することができる。25℃における印刷インキの粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から50mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から300mPa・s以下の範囲であることが好ましい。
【0082】
<印刷層の形成>
印刷層は、例えば、ヒートシール層と反対側の紙基材面上に、印刷インキを用いて印刷した後、揮発成分を除去することによって形成することができる。印刷方法としてはフレキソ印刷方式やグラビア印刷方式等の公知の方法を使用でき、フレキソ印刷方式が好ましい。例えば、フレキソ印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給され、塗布される。その後、オーブン等による乾燥によって被膜を定着させることで印刷層を得ることができる。
【0083】
[バリア層]
本願の包装材は、更に、バリア層を有することが好ましい。バリア層は、光、磁気、各種気体など、バリアすべき対象が包装材を透過するのを制御するために存在し、バリア成分を含む。前記バリア成分を、蒸着法やTダイキャスト法、液状にして印刷・乾燥等の公知の方法によって形成することができ、紙基材へ染み込みやすさの観点から、バリアコート剤を印刷・乾燥してバリア層を形成することが好ましい。なお、紙基材へバリア成分が染み込むことで、紙基材の凝集力が向上するため、ヒートシール強度が良好になる。バリア層は、包装材の最外層以外に位置することができ、上記の紙基材の凝集力向上作用を発現するために、ヒートシール層と紙基材の間に位置することが好ましい。バリア成分として、例えば、アルミニウム蒸着膜、鉄、シリカ、アルミナ、体質顔料、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、バリアナイロン樹脂(MXD)等が挙げられるが、紙基材へ染み込みやすい、ポリビニルアルコール系樹脂であることが好ましい。バリア層は、単層構成でも複層構成でもよく、1つの層中に2種以上の化合物を含んでも良い。
【0084】
(ポリビニルアルコール系樹脂)
バリア成分として用いられるポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルアルコール単位を有する樹脂であればよく、さらに、エチレン由来の構造単位を含んでいてもよい。
例えば、ポリビニルアルコール樹脂やエチレン‐ビニルアルコール共重合樹脂等挙げられ、エチレン‐ビニルアルコール共重合樹脂が好ましい。
【0085】
ポリビニルアルコール系樹脂のエチレン由来の構造単位含有量は、1~40モル%であることが好ましく、3~20モル%であることがより好ましく、5~15モル%であることが更に好ましい。上記範囲である場合、酸素バリア性が良好となる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、100~3000であることが好ましく、500~2400であることがより好ましい。上記範囲である場合、水への溶解性が向上するため、分離性が良好となる。
【0086】
ポリビニルアルコール系樹脂は、変性基を有することができ、カルボニル変性、ケイ素変性等の公知の変性基が挙げられ、これらに限定されない。
【0087】
ポリビニルアルコール系樹脂は架橋剤で架橋されたものを使用することができ、使用される架橋剤としては、イソシアネート系、エポキシ系、メラミン系、オキサゾリン系、シランカップリング系等の公知の架橋が挙げられ、オキサゾリン系、シランカップリング系が好ましい。
【0088】
ポリビニルアルコール系樹脂のけん化度は、以下式1で表され、80モル%以上であることが好ましく、90モル%であることがより好ましく、95モル%であることが好ましい。上記範囲である場合、酸素バリア性が良好となる。

<式1>
けん化度:(水酸基数)/{(水酸基数)+(酢酸基数)}×100 [モル%]
【0089】
ポリビニルアルコール系樹脂は、クラレポバールRシリーズ(クラレ社製、ポリビニルアルコール樹脂)、クラレエバールL104B、F104B(クラレ社製、エチレン‐ビニルアルコール共重合樹脂)等を使用することができる。
【0090】
バリア層は、バリア成分として、体質顔料を含むことが好ましく、体質顔料は無機層状フィラーであることがより好ましい。ここでいう無機層状フィラーとは、単位結晶層が重なって層状構造を形成する無機フィラーであり、特に溶媒中で膨潤、劈開するものが好ましい。
【0091】
無機層状フィラーの好ましい例としては、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、バーミキュライト、マイカ、パラゴナイト、レピドライト、マーガライト、クリントナイト、アナンダイト、緑泥石、ドンバサイト、スドーアイト、クッケアイト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト、テトラシリリックマイカ、タルク、パイロフィライト、ナクライト、カオリナイト、ハロイサイト、クリソタイル、ナトリウムテニオライト、ザンソフィライト、アンチゴライト、ディッカイト、ハイドロタルサイトなどがあり、カオリン、モンモリロナイト、マイカであることが好ましく、モンモリロナイトであることがより好ましい。
【0092】
これらの無機層状化合物は、天然に産するものであっても、人工的に合成あるいは変性されたものであってもよく、またそれらをオニウム塩などの有機物で処理したものであってもよい。
【0093】
バリア層中の無機層状フィラーの含有量は、バリア層100質量%中、1~40質量%であることが好ましく、10~35質量%であることがより好ましく、20~30質量%であることが更に好ましい。
【0094】
(バリア層に含まれる添加剤)
バリア層は、バリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、あるいは分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤など公知の添加剤を加えることができる。
【0095】
<バリアコート剤>
バリアコート剤は、上述のバリア成分及び水性媒体を含み、バリア層に含まれる添加剤を含んでもよい。バリアコート剤の粘度は、印刷適性等の観点から、20~200mPa・sであることが好ましい。バリアコート剤におけるバリア剤の固形分の含有量は、バリアコート剤の全質量中、5~50質量%であることが好ましく、10~30質量%であることがより好ましい。
【0096】
<バリアコート剤の製造方法>
バリアコート剤の製造方法は、[表面保護層]で説明した<オーバーコート剤の製造方法>を援用することができる。
【0097】
<バリア層の形成>
バリア層は、例えば、基材上に、バリアコート剤を用いて印刷した後、水性媒体を除去することによって形成することができる。印刷方法として、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、ディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法等従来公知の手段が挙げられるが、フレキソ印刷方式が好適であり、例えば、フレキソ印刷に適した粘度にまで希釈溶剤で希釈され、単独で又は混合されて各印刷ユニットに供給され、塗布される。その後、オーブン等による乾燥によって水性媒体を揮発させることで印刷層を得ることができる。
【0098】
<包装材中の紙基材量>
包装材全量中の紙基材含有量は、リサイクル性の観点から、50~99質量%であることが好ましく、65~95質量%であることがより好ましく、80~90質量%であることが更に好ましい。
【0099】
<包装袋>
本願において、包装材は、所定のサイズにカットされて、ヒートシール層同士を互いに合わせた形で縁部分をヒートシールされて包装袋となる。ヒートシールの温度としては50~250℃であることが好ましく、80~180℃であることがなお好ましい。ヒートシール圧力としては1~5kg/cm等の条件であればよい。1枚の包装材を折り曲げて縁をヒートシールしたり、2枚以上の包装材をヒートシールしたりすることで包装袋を形成できる。また、包装袋は、中身を包装した後、すべての開口部をヒートシールすることでも包装袋を形成できる。この包装袋は、食品、医薬品等の包装袋として幅広く利用する事ができる。
【実施例
【0100】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本願において、部及び%は、特に注釈の無い場合、質量部及び質量%を表す。また、「NV.」とは不揮発性分の質量%を表す。
【0101】
<合成例1>ウレタン樹脂溶液PU1の合成
温度計、撹拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンアジペート)ジオール(数平均分子量2000) 173.7部、ポリエチレングリコール(数平均分子量2000) 9.1部、2,2-ジメチロールプロピオン酸 21.5部およびイソホロンジイソシアネート 84部をメチルエチルケトン 200部を仕込み、攪拌しながら6時間加熱還流させた後、40℃まで冷却してからアセトン100部を加えて、末端イソシアネートプレポリマーの溶液を得た。次に、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン 8.7部、イソホロンジアミン 2.9部およびアセトン400部を混合したものに、得られた末端イソシアネートプレポリマー溶液を、室温で徐々に添加して50℃で3時間反応させ、溶剤型ウレタン樹脂溶液を得た。次に、28%アンモニア水9.8部および脱イオン水700部を、上記溶剤型ウレタン樹脂溶液に徐々に添加して中和することにより水溶化し、さらに共沸下でメチルエチルケトン、アセトンの全量を留去した後、水を加えて粘度調整を行ない、酸価30mgKOH/g、固形分40%、重量平均分子量30000のウレタン樹脂PU1を得た。
【0102】
<製造例1>オーバーコート剤X1の製造
水11.5部、スチレン-アクリル共重合樹脂SAC1(エマルジョン型、酸価71mgKOH/g、ガラス転移温度:40℃、NV.40%) 85部、ブチルセルソルブ 2部、ポリエチレンワックス 1.5部となるように添加、撹拌混合してオーバーコート剤X1を得た。
【0103】
<製造例2~13、比較製造例1及び2>オーバーコート剤X2~15の製造
表1に記載した原料及び配合比を使用した以外は製造例1と同様の方法で、オーバーコート剤X2~15を得た。なお、使用した原料の性状は以下の通りである。
・スチレン-アクリル共重合樹脂SAC2(水性エマルジョン、酸価:100mgKOH/g、ガラス転移温度:16℃、NV.40%)
・スチレン-アクリル共重合樹脂SAC3(水性エマルジョン、酸価:110mgKOH/g、ガラス転移温度:85℃、NV.40%)
・スチレン-アクリル共重合樹脂SAC4(水性エマルジョン、酸価:104mgKOH/g、ガラス転移温度:113℃、NV.40%)
・スチレン-アクリル共重合樹脂SAC5(水性エマルジョン、酸価:88mgKOH/g、ガラス転移温度:10℃、NV.40%)
【0104】
【表1】
【0105】
<製造例14>ヒートシール剤HS1の製造
エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンEVA1(ジャパンコーティングレジン社製、アクアテックスMC-3800、最低造膜温度:100℃、NV.=40%) 85部、水/イソプロピルアルコール混合溶剤(質量比率1:1) 11.9部、ケミパールW400(三井化学社製、ポリエチレンワックス、針入度:3、密度:920Kg/m3、粒径:4μm) 3.0部、BYK-024(BYK社製、消泡剤) 0.1部となるように添加、撹拌混合してヒートシール剤HS1を得た。
【0106】
<製造例15~20、比較製造例3及び4>ヒートシール剤HS2~9の調整
表2に記載した原料及び配合比を使用した以外は製造例14と同様の方法で、ヒートシール剤HS2~9を得た。なお、使用した原料の性状は以下の通りである。
・エチレン-アクリル共重合樹脂エマルジョンAC1(ガラス転移温度:-30℃、NV.40%)
・ケミパールW100(三井化学社製、ポリエチレンワックス、針入度:1、密度:970Kg/m、粒径:3μm)
・ケミパールW500(三井化学社製、ポリエチレンワックス、針入度:10、密度:920Kg/m、粒径:2.5μm)
・Paraffin Wax‐130(日本精密蝋社製、パラフィンワックス、針入度:13、融点56℃、NV.100%)
【0107】
【表2】
【0108】
<製造例22>印刷インキW1の製造
水31.6部、PigmentBlack7を18部、尿素化合物5部、スチレン-アクリル共重合樹脂溶液SAC6(水溶性、酸価:213mgKOH/g、重量平均分子量:8000、ガラス転移温度:73℃、固形分:28%)15部の混合物をビーズミルで混練分散後、スチレン-アクリル共重合樹脂SAC7(水性エマルジョン、酸価:36mgKOH/g、ガラス転移温度:14℃、固形分:40%)を27部、ポリエチレンワックス3部となるように添加、撹拌混合して印刷インキW1を得た。
【0109】
<調整例23>バリアコート剤V1
ポリビニルアルコール系樹脂PVA1(エチレン含有率:8モル%) 6部、混合溶剤(水/IPA=8/2) 92部を攪拌しながら加熱し、95℃で1時間、加熱攪拌を継続し、その後、加熱を停止して、常温に戻るまで攪拌を継続し、ポリビニルアルコール系樹脂PVA1水溶液を得た。前記ポリビニルアルコール樹脂PVA1水溶液にモンモリロナイト(膨潤性、粒子アスペクト比:500、粒子厚み:1μm、粒子広がり:500nm) 2部を加え、混合攪拌することで、バリアコート剤V1を得た。
【0110】
<調整例24>バリアコート剤V2
・アクリル樹脂エマルジョンAC1(酸価:108mgKOH/g、ガラス転移温度:56℃、NV.=50%、溶媒:水) 3部、混合溶剤(水/IPA=8/2) 95部、モンモリロナイト(膨潤性、粒子アスペクト比:500、粒子厚み:1μm、粒子広がり:500nm) 2部を加え、混合攪拌することで、バリアコート剤V2を得た。
【0111】
以下実施例にて包装材の製造方法を示す。
【0112】
<各層の塗工量測定>
得られた中間積層体における紙基材/印刷層の構成部分から、10cm角に5枚切り出し、紙基材から、10cm角に5枚切り出した。それぞれのサンプルの重量を測定し、式2で印刷層の塗工量を算出した。なお、紙基材には、クラフト紙(日本製紙社製、両更クラフトK、坪量70g/m)を使用した。

<式2>
印刷層の塗工量(mg)=(紙基材/印刷層の5サンプルの平均重量)-(紙基材の5サンプルの平均重量)
【0113】
印刷層以外の層について、計算式及びサンプルの切り出し箇所が異なる以外は、印刷層の塗工量測定>と同様の方法で塗工量を算出した。

<式3>
表面保護層の塗工量(mg)=(紙基材/印刷層/表面保護層の5サンプルの平均重量)-(紙基材/印刷層の5サンプルの平均重量)

<式4>
バリア層の塗工量(mg)=(バリア層/紙基材/印刷層/表面保護層の5サンプルの平均重量)-(紙基材/印刷層/表面保護層の5サンプルの平均重量)

<式5>
ヒートシール層の塗工量(mg)=(ヒートシール層/バリア層/紙基材/印刷層/表面保護層の5サンプルの平均重量)-(バリア層/紙基材/印刷層/表面保護層の5サンプルの平均重量)
【0114】
<表面保護層中のグリコール系化合物含有量>
得られた中間積層体における紙基材/印刷層/表面保護層の構成部分から、50mm×10mmで10枚切り出し、ヘッドスペースバイアル瓶(Agilent社製、75.5mm×23mm)に入れ、密栓した状態で150℃、30分加熱した後、マイクロシリンジで一定量の溶剤蒸気を取り出し、ガスクロマトグラフィーでグリコール系化合物量を定量した。
【0115】
<実施例1>包装材P1の製造
クラフト紙(日本製紙社製、両更クラフトK、坪量70g/m、原反幅:100cm、原反長:500m)に対し、150線のフレキソ版を備えたフレキソ印刷機を用いて、印刷速度200m/分、インラインオーブン90℃の条件下で、印刷インキW1を印刷して紙基材上全面に印刷層を形成し、次に、印刷層上に対し、版の片側半分に非画像部を有する150線のフレキソ版を備えたフレキソ印刷機を用いて、印刷速度200m/分、インラインオーブン90℃の条件下で、オーバーコート剤X1を印刷して表面保護層を形成し、紙基材/印刷層/表面保護層の構成である中間積層体p1(長さ:500m)を得た。中間積層体p1は、紙基材/印刷層の構成部分と、紙基材/印刷層/表面保護層の構成部分とがあり、塗布量測定用のサンプルを得ることができた。
次に、中間積層体p1における、基材上の印刷層がない面に対し、150線のフレキソ版を備えたフレキソ印刷機を用いて、印刷速度200m/分、インラインオーブン90℃の条件下で、バリアコート剤V1を3度印刷して紙基材上全面にバリア層を形成し、次に、150線のフレキソ版を備えたフレキソ印刷機を用いて、印刷速度200m/分、インラインオーブン90℃の条件下で、ヒートシール剤HS1を2度印刷してバリア層上全面にヒートシール層を形成して、ヒートシール層/バリア層/紙/印刷/表面保護層の構成である包装材P1を得た。なお、中間積層体p1の全長500mの内、最後の100mはヒートシール剤を印刷しないことで、バリア層/紙/印刷/表面保護層の構成部分と、ヒートシール層/バリア層/紙/印刷/表面保護層の構成部分とがあり、塗布量測定用のサンプルを得ることができた。
包装材P1の印刷層の塗工量は2g/m、表面保護層の塗工量も2g/m、バリア層の塗工量は4g/m、ヒートシール層の塗工量も4g/mであり、グリコール系化合物残留量は54.6g/mであった。なお、表面保護層中のグリコール系化合物の含有比率は、表面保護層100質量%中、2.7質量%であった。
【0116】
<実施例2~26、比較例1~6>包装材P2~32の製造
表3及び4に示したオーバーコート剤、バリアコート剤、及びヒートシール剤を使用した以外は、実施例1と同様の手順で、同様の構成を有する包装材P2~32をそれぞれ作製した。
【0117】
【表3】
【0118】
【表4】
【0119】
[包装材の評価]
得られた包装材P1~32について、以下に記載の評価を行った。結果を表3及び4に示す。
【0120】
<耐ブロッキング性評価>
得られた包装材を40mm角に2枚切り出し、1枚の包装材片のヒートシール層面と、もう1枚の包装材片の表面保護層面を完全に重ね、アズワン社製、小型熱プレス機 H30-10Dを使用して、温度40℃、荷重100Kg/cmの条件で加圧した。その状態で12時間静置したのち、2枚重ねた包装材同士を剥離し、印刷層の剥離状態を目視で観察し、下記基準にて評価した。なお、A、B、Cが実用上問題ない範囲である。
《評価基準》
A.ヒートシール層面への印刷層の転移量が1面積%未満である。
B.ヒートシール層面への印刷層の転移量が1面積%以上、10面積%未満である。
C.ヒートシール層面への印刷層の転移量が10面積%以上、30面積%未満である。
D.ヒートシール層面への印刷層の転移量が30面積%以上である。
【0121】
<耐水摩擦性>
得られた包装材を25mm×150mmの大きさに切り出し、テスター産業(株)製学振型摩擦堅牢度試験器を用いて、以下基準にて耐水摩擦性を評価した。なお、A、B、Cが実用上問題ない範囲である。
《試験条件》
荷重:200g、往復回数:2回、当紙:カナキン布に水を5滴滴下したもの
《評価基準》
A.紙基材の露出面積比率が1%未満であるもの。
B.紙基材の露出面積比率が1%以上、5%未満であるもの。
C.紙基材の露出面積比率が5%以上、10%未満であるもの。
D.紙基材の露出面積比率が10%以上であるもの。
【0122】
<ヒートシ-ル性評価>
得られた包装材を15mm×100mmの大きさに切り取り、ヒートシール層面同士が重なるように折り曲げ、以下の装置及び条件でヒートシールし、シールされていない両端部を小型引張試験機に固定し、ヒートシール強度を評価した。なお、A、B、Cが実用上問題ない範囲である。
《ヒートシール条件》
装置:テスター産業株式会社製ヒートシールテスター、シール幅:折り曲げ部より
10mm、ヒーター温度:160℃、シール圧力:2kg/cm
シール時間:1sec
《ヒートシール強度測定条件》
装置:インテスコ社製 小型引張試験機(モデル;IM-20)、試験片幅:15mm、
剥離モード:90°剥離、引張速度:300mm/min
《評価基準》
A.ヒートシール強度が5.0N以上である。
B.ヒートシール強度が3.5N以上、5.0N未満である。
C.ヒートシール強度が1.0N以上、3.5N未満である。
D.ヒートシール強度が1.0N未満である。
【0123】
<酸素バリア性評価>
得られた包装材について、JIS K 7126-2:2006に準拠した方法で酸素透過度測定を行い、下記基準にて評価した。なお、A、B、Cが実用上問題ない範囲である。
《評価基準》
A.酸素透過度が100g/m・24h未満である。
B.酸素透過度が100g/m・24h以上、1000g/m・24h未満である。
C.酸素透過度が1000g/m・24h以上、10000g/m・24h未満である。
D.酸素透過度が10000g/m・24h以上である。
【0124】
上記結果から、比較例1は、表面保護層中のスチレン-アクリル共重合樹脂がガラス転移温度を満たさず、かつ、バリア層を有さないため、耐ブロッキング性、耐水摩擦性及び酸素バリア性が不良であった。比較例2も、表面保護層中のスチレン-アクリル共重合樹脂がガラス転移温度を満たさないため、耐ブロッキング性及び耐水摩擦性が不良であった。比較例3は、表面保護層中にスチレン‐アクリル共重合樹脂が含まれないため、耐ブロッキング性及び耐水摩擦性が不良であった。比較例4は、ヒートシール層を有さないため、耐ブロッキング性及びヒートシール性が不良であった。比較例5は、ヒートシール層が炭化水素系ワックスを含まないため、耐ブロッキング性が不良であった。比較例6は、ヒートシール層に含まれる炭化水素系ワックスにおける、JISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)を満たさないため、耐ブロッキング性が不良であった。
一方実施例は、表面保護層にスチレン‐アクリル共重合樹脂を含み、前記スチレン‐アクリル共重合樹脂のガラス転移温度を満たし、ヒートシール層に炭化水素系ワックスを含み、前記炭化水素系ワックスがJISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)を満たすため、耐ブロッキング性、耐水摩擦性、ヒートシール性、酸素バリア性が良好であった。
特に、表面保護層に含まれるスチレン‐アクリル共重合樹脂のTgが20~50℃であり、グリコール系化合物がブチルセルソルブ、プロピレングリコール、エチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、表面保護層の塗工量が、1.5~2.5g/mであり、表面保護層中のグリコール系化合物の含有量が、表面保護層100質量%中、1.5~3.5質量%であり、ヒートシール層がエチレン‐酢酸ビニル共重合樹脂及びポリエチレンワックスを含み、前記ポリエチレンワックスのJISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)が2.5~3.5であり、塗工量3~8g/mであり、バリア層がポリビニルアルコール系樹脂を含み、バリア層がヒートシール層と紙基材との間に位置する実施例1、6、及び7が優れた耐ブロッキング性、耐水摩擦性、ヒートシール性、酸素バリア性を有していた。