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特許7567961流体制御装置、燃料電池車両及び流体制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】流体制御装置、燃料電池車両及び流体制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04029 20160101AFI20241008BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20241008BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20241008BHJP
   B60L 58/33 20190101ALN20241008BHJP
   B60L 58/34 20190101ALN20241008BHJP
【FI】
H01M8/04029
H01M8/0432
H01M8/10 101
B60L58/33
B60L58/34
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023050881
(22)【出願日】2023-03-28
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 大智
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-187940(JP,A)
【文献】特開2021-190310(JP,A)
【文献】特開2022-065695(JP,A)
【文献】特開2009-140731(JP,A)
【文献】特開2017-224578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04-8/0668
B60L 58/30-58/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水を加熱するヒータと、
前記ヒータで加熱された冷却水によって温められるヒータコアと、
燃料電池を含む燃料電池ユニットと、
前記冷却水と熱交換を行うラジエータと、
前記ヒータ、前記ヒータコア及び前記燃料電池ユニットを前記冷却水が通過して循環し、前記ラジエータを通過しない第1流路を前記ヒータで加熱された前記冷却水が循環する第1制御モードと、前記ヒータ及び前記ヒータコアを前記冷却水が通過して循環する第2流路、並びに、前記燃料電池ユニット及び前記ラジエータを前記冷却水が通過して循環する、前記第2流路と独立する第3流路のそれぞれに前記冷却水を循環させる第2制御モードと、前記第2流路、並びに、前記第2流路と独立する前記第3流路のうち前記ラジエータを通過させずにバイパス流路を通過させる流路のそれぞれに前記冷却水を循環させる前記冷却水が通過して循環する第3制御モードと、を含む複数の制御モードのうちいずれかで、前記冷却水の循環を制御する制御部と、
を備え
前記制御部は、前記燃料電池ユニットの温度が、前記燃料電池ユニットの発電効率が低下する温度より低い温度値である閾値Th1未満であるか否かを判定する判定処理を行い、前記燃料電池ユニットの温度が前記閾値Th1より低いと判定すると、前記第1制御モードで制御処理を行い、前記燃料電池ユニットの温度が前記閾値Th1以上と判定すると、前記燃料電池ユニットの温度が冷却を要する温度である閾値Th2以上であるか否かを判定する判定処理を行い、前記燃料電池ユニットの温度が前記閾値Th2以上であると判定すると、前記第2制御モードで制御処理を行い、前記燃料電池ユニットの温度が前記閾値Th2未満であると判定すると、前記第3制御モードで制御処理を行う、流体制御装置。
【請求項2】
前記燃料電池ユニットの温度を検出する温度センサを有し、
前記制御部は、前記温度センサで検出した前記燃料電池ユニットの温度に基づいて前記判定処理を行う請求項1に記載の流体制御装置。
【請求項3】
前記第3流路を循環する前記冷却水の温度を検出する温度センサを有し、
前記制御部は、前記温度センサで検出した温度を前記燃料電池ユニットの温度として前記判定処理を行う、請求項1に記載の流体制御装置。
【請求項4】
外気温を検出する温度センサを有し、
前記制御部は、前記温度センサで検出した温度を前記燃料電池ユニットの温度として前記判定処理を行う、請求項1に記載の流体制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の流体制御装置を備える燃料電池車両。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の流体制御装置の流体制御方法であって、
前記燃料電池ユニットの温度が、前記燃料電池ユニットの発電効率が低下する温度より低い温度値である前記閾値Th1未満であるか否かを判定する判定処理を行い、
前記燃料電池ユニットの温度が前記閾値Th1より低いと判定すると、前記第1制御モードで前記冷却水の循環の制御処理を行い、
前記燃料電池ユニットの温度が前記閾値Th1以上と判定すると、前記燃料電池ユニットの温度が冷却を要する温度である前記閾値Th2以上であるか否かを判定する判定処理を行い、
前記燃料電池ユニットの温度が前記閾値Th2以上であると判定すると、前記第2制御モードで前記冷却水の循環の制御処理を行い、
前記燃料電池ユニットの温度が前記閾値Th2未満であると判定すると、前記第3制御モードで前記冷却水の循環の制御処理を行う、
流体制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素を燃料とした燃料電池ユニットを含む流体制御装置、燃料電池車両及び流体制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素を燃料とした燃料電池で動作する車両が知られている。燃料電池から発生した熱を放熱するため、冷却水(冷却媒体)を循環させて、燃料電池を含む燃料電池ユニットであるFC(Fuel Cell)スタックの温度を調整する技術が知られている。
【0003】
また、車両内部(キャビン)の空調のため、ヒータを用いて加熱した水をヒータコアに供給し、車両内部に放熱する技術も知られている。また、特許文献1では、燃料電池を冷却するための冷却水の流路と、車両内部の空調のための流路の一部を共有する流路構成が開示されている。
【0004】
一方で、燃料電池は、低温環境下では、発電効率が低下することが知られている。先行文献では、低温時に燃料電池スタック(FCスタック)の発熱量を増加させて熱を発生させて、燃料電池スタックの温度を上昇させる。しかしながら、発熱させるために燃料電池スタックを動作させると、水素消費が増加し、車両としての航続可能距離が短くなる懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2022-122631
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、水素を燃料とした燃料電池ユニットの水素消費を抑制しつつ、燃料電池ユニットの温度を所定の温度範囲に昇温することができる流体制御装置、燃料電池車両及び流体制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る流体制御装置は、冷却水を加熱するヒータと、前記ヒータで加熱された冷却水によって温められるヒータコアと、燃料電池を含む燃料電池ユニットと、前記冷却水と熱交換を行うラジエータと、前記ヒータ、前記ヒータコア及び前記燃料電池ユニットを前記冷却水が通過して循環し、前記ラジエータを通過しない第1流路を前記ヒータで加熱された前記冷却水が循環する第1制御モードと、前記ヒータ及び前記ヒータコアを前記冷却水が通過して循環する第2流路、並びに、前記燃料電池ユニット及び前記ラジエータを前記冷却水が通過して循環する、前記第2流路と独立する第3流路のそれぞれに前記冷却水を循環させる第2制御モードと、前記第2流路、並びに、前記第2流路と独立する前記第3流路のうち前記ラジエータを通過させずにバイパス流路を通過させる流路のそれぞれに前記冷却水を循環させる前記冷却水が通過して循環する第3制御モードと、を含む複数の制御モードのうちいずれかで、前記冷却水の循環を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記燃料電池ユニットの温度が、前記燃料電池ユニットの発電効率が低下する温度より低い温度値である閾値Th1未満であるか否かを判定する判定処理を行い、前記燃料電池ユニットの温度が前記閾値Th1より低いと判定すると、前記第1制御モードで制御処理を行い、前記燃料電池ユニットの温度が前記閾値Th1以上と判定すると、前記燃料電池ユニットの温度が冷却を要する温度である閾値Th2以上であるか否かを判定する判定処理を行い、前記燃料電池ユニットの温度が前記閾値Th2以上であると判定すると、前記第2制御モードで制御処理を行い、前記燃料電池ユニットの温度が前記閾値Th2未満であると判定すると、前記第3制御モードで制御処理を行う。
【0008】
本発明の一態様に係る燃料電池車両は、上記の流体制御装置を備える。
【0009】
本発明の一態様に係る流体制御方法は、上述する流体制御装置の流体制御方法であって、前記燃料電池ユニットの温度が、前記燃料電池ユニットの発電効率が低下する温度より低い温度値である閾値Th1未満であるか否かを判定する判定処理を行い、前記燃料電池ユニットの温度が前記閾値Th1より低いと判定すると、前記第1制御モードで前記冷却水の循環の制御処理を行い、前記燃料電池ユニットの温度が前記閾値Th1以上と判定すると、前記燃料電池ユニットの温度が冷却を要する温度である閾値Th2以上であるか否かを判定する判定処理を行い、前記燃料電池ユニットの温度が前記閾値Th2以上であると判定すると、前記第2制御モードで前記冷却水の循環の制御処理を行い、前記燃料電池ユニットの温度が前記閾値Th2未満であると判定すると、前記第3制御モードで前記冷却水の循環の制御処理を行う
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水素を燃料とした燃料電池ユニットの水素消費を抑制しつつ、燃料電池ユニットの温度を所定の温度範囲に昇温することができる流路制御装置、車両及び流路制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る燃料電池車両の構成を概略的に示す説明図。
図2】第1実施形態に係る燃料電池車両の構成を概略的に示すブロック図。
図3】第1実施形態に係る燃料電池車両に用いられる流体制御装置の第1制御モードを示す説明図。
図4】第1実施形態に係る流体制御装置の第2制御モードを示す説明図。
図5】第1実施形態に係る流体制御装置を用いた制御の一例を示す流れ図。
図6】本発明の第2実施形態に係る燃料電池車両の流体制御装置の構成を概略的に示す説明図。
図7】本発明の第3実施形態に係る燃料電池車両の流体制御装置の構成を概略的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の第1実施形態に係る燃料電池車両1の流体制御装置2の構成を図1乃至図5を用いて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る燃料電池車両1の構成を概略的に示す説明図であり、図2は、燃料電池車両1の構成を概略的に示すブロック図である。図3は、燃料電池車両1に用いられる流体制御装置2の第1制御モードを示す説明図であり、図4は、流体制御装置2の第2制御モードを示す説明図である。図5は、流体制御装置2を用いた制御の一例を示す流れ図である。
【0013】
図1及び図2に示すように、燃料電池車両1は、水素ステーション100等においてタンク15に充填された水素と、外気等から取り入れた酸素とを用いて燃料電池ユニット31で発電するFCV(Fuel Cell Vehicle)である。燃料電池車両1は、発電した電力を用いて、各種構成要素を駆動制御する。例えば、燃料電池車両1は、モータ14を駆動して走行するとともに、空調システム11を駆動して、キャビン(車両内部)7の空調を行う。なお、燃料電池車両には、トラック、バス、乗用車、特殊用途自動車等が含まれる。以下、燃料電池車両1の具体例を説明する。
【0014】
図1に示すように、燃料電池車両1は、シャーシ3及び車体4を備える。シャーシ3は、フレームと、4つ以上の車輪5と、を備える。また、図1及び図2に示すように、燃料電池車両1は、空調システム11と、燃料電池システム12と、バッテリ13と、モータ14と、タンク15と、外気温センサ16と、制御装置17と、を備える。
【0015】
燃料電池車両1は、シャーシ3及び車体4に、空調システム11と、燃料電池システム12と、バッテリ13と、モータ14と、タンク15と、外気温センサ16と、制御装置17を搭載する。また、空調システム11、燃料電池システム12、外気温センサ16及び制御装置17は、流体制御装置2を構成する。
【0016】
空調システム11は、車体4の空調用の空気を加熱し、ブロア等によって車体4内部に加熱した空気を送風することで、車体4内の温度を調整する。図2は、燃料電池車両1の流体制御装置2の要部の構成を概略的に示すブロック図である。空調システム11は、例えば、ヒータ21と、ヒータコア22と、三方弁23と、ポンプ24と、循環流路25と、を備える。空調システム11の循環流路25を流れる媒体は、例えば、冷却水である。
【0017】
ヒータ21は、例えば、冷却水を加熱する電気ヒータである。ヒータコア22は、車体4のキャビン7の空調器の空気を加熱するための熱交換器である。
【0018】
三方弁23は、3つのポート23a、23b、23cを有する。三方弁23は、ボディ内に設けられた弁体を切り替えることで、3つのポート(ポート23a、ポート23b、ポート23c)のうちいずれか2つのポートを開き、開いた2つのポートを流体的に接続する。本実施形態において、三方弁23は、3つのポート23a、23b、23cのうち、ポート23a及びポート23bが循環流路25に接続され、ポート23cが、燃料電池システム12と接続される後述する連絡流路51に接続される。三方弁23は、例えば、制御装置17に電気的に接続され、制御装置17から出力される信号に基づいて、接続する2つのポートを切り替える。
【0019】
ポンプ24は、冷却水を圧送する。ポンプ24は、制御装置17に電気的に接続され、制御装置17から出力される駆動信号に基づいて駆動する。循環流路25は、ヒータ21、ヒータコア22、三方弁23のポート23a及びポート23b、並びに、ポンプ24を接続する。循環流路25は、ポンプ24から圧送された冷却水がヒータ21、ヒータコア22、三方弁23のポート23a及びポート23bを通過してポンプ24に戻る流路を形成する管である。このように、循環流路25は、ポンプ24から圧送された冷却水を、ヒータ21及びヒータコア22を通過させて循環させる。
【0020】
燃料電池システム12は、燃料電池ユニット31と、三方弁32と、ラジエータ33と、ポンプ34と、循環流路35と、バイパス流路36と、水温センサ(温度センサ)37と、を備える。燃料電池システム12は、三方弁32、ラジエータ33、ポンプ34、循環流路35に冷却水を通過させることで、燃料電池ユニット31の冷却を行う。
【0021】
燃料電池ユニット31は、燃料電池スタック(FCスタック)41と、FC温度センサ(温度センサ)42と、を備える。燃料電池スタック41は、例えば固体高分子形燃料電池である。燃料電池スタック41は、複数の単セルを積層したスタック構造を有する。ここで、単セルは、例えば、イオン交換膜からなる電解質膜と、電解質膜の一方の面に形成された空気極と、電界質膜の他方の面に形成された燃料極とを接合した膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)と、を備える。膜電極接合体は、一対のセパレータにより挟まれることで形成される。燃料電池スタック41は、酸化ガス(酸素)を空気極に、燃料ガス(水素)を燃料極に供給することによって発電する。
【0022】
FC温度センサ42は、燃料電池スタック41の温度を検出する。FC温度センサ42は、制御装置17に接続され、検出した温度に対応する信号を制御装置17に出力する。
【0023】
三方弁32は、燃料電池ユニット31の下流側に設けられ、循環流路35の、燃料電池ユニット31の下流側を開閉する。三方弁32は、3つのポート32a、32b、32cを有する。三方弁32は、ボディ内に設けられた弁体を切り替えることで、3つのポート(ポート32a、ポート32b、ポート32c)のうちいずれか2つのポートを開き、開いた2つのポートを流体的に接続する。本実施形態において、三方弁32は、3つのポート32a、32b、32cのうち、ポート32a及びポート32cが循環流路25に接続され、ポート32bが、バイパス流路36に接続される。三方弁32は、例えば、制御装置17に電気的に接続され、制御装置17から出力される信号に基づいて、接続する2つのポートを切り替える。なお、三方弁32は、サーミスタによって3つのポートを切り替え可能に形成され、所定の温度以上の場合にポート32a及びポート32cを接続し、所定の温度未満の場合にポート32a及びポート32bを接続する構成であってもよい。
【0024】
ラジエータ33は、熱交換器である。ラジエータ33は、内部を通過する冷却水を冷却風と熱交換することで、冷却水を冷却する。
【0025】
ポンプ34は、冷却水を圧送する。ポンプ34は、制御装置17に電気的に接続され、制御装置17から出力される駆動信号に基づいて駆動する。
【0026】
循環流路35は、燃料電池ユニット31、三方弁32のポート32a及びポート32c、ラジエータ33、及び、ポンプ34を接続する。循環流路35は、ポンプ34から圧送された冷却水が燃料電池ユニット31、三方弁32のポート32a及びポート32c、ラジエータ33を通過してポンプ34に戻る流路を形成する管である。このように、循環流路35は、ポンプ34から圧送された冷却水を、燃料電池ユニット31、ラジエータ33を通過させて循環させる。
【0027】
バイパス流路36は、循環流路35の、燃料電池ユニット31の下流側に設けられる三方弁32のポート32bと、ラジエータ33の下流側であって、且つ、ポンプ34の上流側と、を流体的に接続する管である。バイパス流路36は、燃料電池ユニット31とポンプ34とをバイパスし、三方弁32のポート32a及びポート32bが開いたときに、燃料電池ユニット31を通過した冷却水を、ラジエータ33を通過させずに、ポンプ34に戻す。
【0028】
水温センサ37は、例えば、循環流路35を流れる冷却水、具体例として、燃料電池ユニット31を通過した冷却水の温度を検出する。水温センサ37は、制御装置17に接続され、検出した温度に対応する信号を制御装置17に出力する。
【0029】
また、空調システム11及び燃料電池システム12は、循環流路25及び循環流路35を接続する連絡流路51と、開閉弁52と、を備える。連絡流路51は、例えば、連絡流路51aと、連絡流路51bと、を備える。
【0030】
連絡流路51aは、循環流路35のラジエータ33の下流側及びバイパス流路36の下流側であって、且つ、ポンプ34の上流側と、循環流路25の三方弁23のポート23bの下流側であって、且つ、ポンプ24の上流側と、を流体的に接続する管である。
【0031】
連絡流路51bは、三方弁23のポート23cと、循環流路35のポンプ34の下流側であって、且つ、燃料電池ユニット31の上流側と、を流体的に接続する管である。
【0032】
開閉弁52は、連絡流路51aに設けられ、連絡流路51aを開閉する。開閉弁52は、制御装置17に接続され、制御装置17から出力される信号により、連絡流路51aを開閉する。
【0033】
このように構成された空調システム11及び燃料電池システム12は、三方弁23、三方弁32及び開閉弁52を制御することで、燃料電池ユニット31を昇温する昇温流路(第1流路)C1、空調用の加温流路(第2流路)C2及び燃料電池ユニット31を冷却する冷却流路(第3流路)C3を形成する。なお、図3中において、冷却水が循環する昇温流路C1を実線の矢印で示し、図4中において、冷却水が循環する加温流路C2及び冷却流路C3を実線の矢印で示す。また、図3及び図4中において、冷却水が流れないか、又は、冷却水が流れても循環しない流路を破線で示す。
【0034】
昇温流路C1は、循環流路25の一部及び循環流路35の一部、バイパス流路36及び連絡流路51により形成される。図3に示すように、昇温流路C1は、冷却水がポンプ24、ヒータ21、ヒータコア22、三方弁23のポート23a及びポート23c、燃料電池ユニット31、三方弁32のポート32a及びポート32b、バイパス流路36、連絡流路51aを通過し、ポンプ24に戻る循環流路である。開閉弁52が開き、ポート23a及びポート23cが接続するように三方弁23が切り替えられ、ポート32a及びポート32bが接続するように三方弁32が切り替えられ、ポンプ24が駆動することで、昇温流路C1を冷却水が循環する。
【0035】
加温流路C2は、循環流路25により形成される。加温流路C2は、冷却水が、ポンプ24、ヒータ21、ヒータコア22、三方弁23のポート23a及びポート23bを通過し、ポンプ24に戻る循環流路である。ポート23a及びポート23bが接続するように三方弁23が切り替えられ、開閉弁52が閉じ、ポンプ24が駆動することで、加温流路C2を冷却水が循環する。
【0036】
冷却流路C3は、循環流路35により形成される。冷却流路C3は、冷却水が、ポンプ34、燃料電池ユニット31、三方弁32のポート32a及びポート32c、ラジエータ33を通過し、ポンプ34に戻る循環流路である。ポート32a及びポート32cが接続するように三方弁32が切り替えられ、開閉弁52が閉じ、ポンプ34が駆動することで、冷却流路C3を冷却水が循環する。
【0037】
バッテリ13は、二次電池である。バッテリ13は、燃料電池システム12で発電した電力を蓄電する。バッテリ13は、ポンプ24、ポンプ34、モータ14、制御装置17及び各種電装品等に給電する。
【0038】
モータ14は、制御装置17に接続され、制御装置17により駆動制御される。モータ14は、走行のために車輪5を駆動する。
【0039】
タンク15は、水素を圧縮して貯蔵する。
外気温センサ(温度センサ)16は、外気の温度を検出する。外気温センサ16は、制御装置17に接続され、検出した温度に対応する信号を制御装置17に出力する。
【0040】
制御装置17は、例えば、パワースイッチ(パワーSW)61と、GPS(Global Positioning System)センサ62と、入力インターフェース63と、メモリ64と、制御部65と、を備える。
【0041】
パワースイッチ61は、運転者が操作することで、操作した情報を制御部65に出力する。パワースイッチ61は、燃料電池車両1の停止時に操作を受け付けると、パワーON受付として、制御部65に信号を出力する。また、パワースイッチ61は、燃料電池車両1の駆動時に操作を受け付けると、パワーOFF受付として、制御部65に信号を出力する。
【0042】
GPSセンサ62は、パワースイッチ61が操作され、パワーON受付をすると、燃料電池車両1の現在位置情報を取得する。GPSセンサ62は、取得した現在位置情報を制御部65に出力する。
【0043】
入力インターフェース63は、操作者、例えば、運転者からの指令を入力する入力装置である。例えば、入力インターフェース63は、キャビン7に設けられるインストルメントパネル等に設けられるスイッチ、ダイヤル、タッチパネル等の入力手段である。
【0044】
メモリ64は、記憶媒体である。メモリ64は、燃料電池車両1を制御するための各種制御設定値や各種制御プログラムを記憶する。また、メモリ64は、温度センサとしての水温センサ37、FC温度センサ42及び外気温センサ16を含む各種センサで検出した情報を記憶する。また、メモリ64は、水素の使用量、取り込んだ酸素量、燃料電池ユニット31における発電量、バッテリ13における蓄電量及び使用電力等の、取得した各種情報を記憶する。
【0045】
制御部65は、演算装置である。制御部65は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)である。制御部65は、シャーシ制御、モータ制御、ヘッドライト制御、空調システム制御、燃料電池システム制御、ブレーキシステム制御、車線維持システム制御、車間距離制御システム制御、カーナビ制御等の種々の電装品の制御のうち、少なくともいずれかの制御を行う。
【0046】
制御部65は、例えば、空調システム制御及び燃料電池システム制御の一部として、冷却水を制御する流体制御を行う。制御部65は、燃料電池ユニット31の温度に基づいて、第1制御モード及び第2制御モードにより、冷却水を循環させて、燃料電池ユニット31の昇温(加熱)及び冷却を行う制御を行う。また、制御部65は、燃料電池ユニット31の温度に基づいて、第3制御モードにより、燃料電池ユニット31の温度を維持する制御を行ってもよい。
【0047】
ここで、第1制御モードは、燃料電池ユニット31の温度Tfcが、メモリ64に記憶された、燃料電池ユニット31の昇温を要する温度である閾値Th1よりも低い場合に行われる、燃料電池ユニット31の昇温を行う動作制御である。例えば、第1制御モードは、パワースイッチ61により燃料電池車両1の起動時に行われる制御である。ここで、閾値Th1は、例えば、燃料電池ユニット31の発電効率が低下する燃料電池ユニット31の温度である。
【0048】
ここで、燃料電池ユニット31の温度とは、例えば、燃料電池スタック41の温度である。燃料電池ユニット31の温度Tfcは、FC温度センサ42で直接取得した燃料電池スタック41の温度値であってもよく、水温センサ37で取得した冷却水の温度値、又は、外気温センサ16で取得した外気温を燃料電池ユニット31の温度と推定してもよい。また、燃料電池ユニット31の温度Tfcは、FC温度センサ42、水温センサ37及び外気温センサ16のいずれかで取得してもよく、FC温度センサ42、水温センサ37及び外気温センサ16のいくつか又は全てで取得してもよい。
【0049】
図3に示すように、第1制御モードは、ポンプ24を駆動し、昇温流路C1に冷却水を循環させるとともに、ヒータ21で冷却水を加熱することで、加熱された冷却水により燃料電池ユニット31を加熱する動作制御である。
【0050】
第2制御モードは、燃料電池ユニット31の温度Tfcが、閾値Th1以上である場合に行われる、燃料電池ユニット31を冷却する動作制御である。例えば、第2制御モードは、燃料電池ユニット31の温度Tfcが、閾値Th1以上であって、且つ、メモリ64に記憶された、燃料電池ユニット31の冷却を要する温度である閾値Th2以上である場合に行われる。
【0051】
図4に示すように、第2制御モードは、ポンプ34を駆動し、冷却流路C3に冷却水を循環させるとともに、ラジエータ33により冷却水を冷却することで、燃料電池ユニット31を冷却する動作制御である。また、図4に示すように、第2制御モードは、例えば、冷却流路C3に循環させることに加え、ポンプ24を駆動し、加温流路C2に冷却水を循環させるとともに、ヒータ21により冷却水を加熱する、動作制御である。
【0052】
第3制御モードは、燃料電池ユニット31の温度Tfcが、閾値Th1以上であって、且つ、閾値Th2以上である場合に行われる。第3制御モードは、ポンプ34を駆動し、ラジエータ33を通過させずに、バイパス流路36に冷却水を通過させて冷却水を循環させることで、燃料電池ユニット31を所定の温度に維持する動作制御である。また、第3制御モードは、例えば、ポンプ24を駆動し、加温流路C2に冷却水を循環させるとともに、ヒータ21により冷却水を加熱する処理を含む構成としてもよい。
【0053】
次に、このように構成された燃料電池車両1の流体制御装置2を用いた流体制御方法の一例を、図3乃至図5を用いて説明する。図3は流体制御装置2の第1制御モードを示す説明図である。図4は流体制御装置2の第2制御モードを示す説明図である。図5は流体制御装置2を用いた流体制御方法の一例を示す流れ図である。なお、図5中、三方弁23及び三方弁32のポート23a、32a、ポート23b、32b及びポート23c、32cを、それぞれaポート、bポート及びcポートとして示す。
【0054】
停止中における燃料電池車両1において、運転者がパワースイッチ61を操作すると、制御部65は、パワーON受付を行い、バッテリ13から各電装品に電力を供給する。そして、制御部65は、水温センサ37、FC温度センサ42及び/又は外気温センサ16による検出値から、燃料電池ユニット31の燃料電池スタック41の温度値Tfcを取得する(ステップST1)。制御部65は、取得した燃料電池スタック41の温度値Tfcを閾値Th1と比較し、閾値Th1未満であるか否かを判定する(ステップST2)。即ち、制御部65は、判定手段として機能し、燃料電池スタック41の温度が昇温を要する低温であるか否かを判定する判定処理を行う。
【0055】
燃料電池スタック41の温度が昇温を要する低温(Tfc<Th1)である場合(ステップST2のYES)には、制御部65は、流体制御装置2を第1制御モードで制御する(ステップST3)。
【0056】
第1制御モード(ステップST3)の具体例として、制御部65は、先ず、開閉弁52を開制御し(ステップST31)、三方弁32のポート32a及びポート32bを開制御し(ステップST32)、三方弁23のポート23a及びポート23cを開制御する(ステップST33)。なお、ステップST31、ST32、ST33の各弁の切り替えは、同時であってもよく、順次行っても良い。
【0057】
そして、制御部65は、ポンプ24を駆動制御し(ステップST34)、ヒータ21により冷却水を加熱する。これにより、冷却水は、ヒータ21より加熱され、図3に示すように、昇温流路(第1流路)C1を循環し、加熱した冷却水と燃料電池ユニット31の燃料電池スタック41とを熱交換させて、燃料電池スタック41を昇温させる。
【0058】
制御部65は、第1制御モードにより流体制御装置2を制御するとともに、パワースイッチ61の操作を監視する(ステップST4)。パワースイッチ61が操作され、パワーOFF受付をする(ステップST4のYES)と、制御部65は、電装品への電力の供給を停止し、燃料電池車両1の運転を停止する。パワースイッチ61が操作されない場合(ステップST4のNO)には、制御部65は、ステップST1に戻る。
【0059】
ステップST2において、燃料電池スタック41の温度が昇温を要する低温でない(Tfc≧Th1)場合(ステップST2のNO)には、制御部65は、取得した燃料電池スタック41の温度値Tfcを閾値Th2と比較し、閾値Th2未満であるか否かを判定する(ステップST5)。即ち、制御部65は、燃料電池スタック41の温度が冷却を要する高温であるか否かを判定する判定処理を行う。
【0060】
燃料電池スタック41の温度が冷却を要する高温(Tfc≧Th2)である場合(ステップST5のYES)には、制御部65は、流体制御装置2を第2制御モードで制御する(ステップST6)。
【0061】
第2制御モードの具体例として、制御部65は、先ず、開閉弁52を閉制御し(ステップST61)、三方弁32のポート32a及びポート32cを開制御し(ステップST62)、三方弁23のポート23a及びポート23bを開制御する(ステップST63)。なお、ステップST61、ST62、ST63の各弁の切り替えは、同時であってもよく、順次行っても良い。
【0062】
そして、制御部65は、ポンプ24及びポンプ34を駆動制御し(ステップST64)、加温流路(第2流路)C2を流れる冷却水をヒータ21により加熱するとともに、冷却流路(第3流路)C3を流れる冷却水をラジエータ33で冷却する。冷却流路C3を流れる冷却水と燃料電池スタック41とが熱交換を行うことで、燃料電池スタック41が冷却されるとともに、燃料電池スタック41で加熱された冷却水はラジエータ33で熱交換を行うことで冷却される。これらのように、第2制御モードとして、図4に示すように、加温流路C2を冷却水が循環することで、ヒータコア22によりキャビン7を加温可能となるとともに、燃料電池スタック41を冷却する。
【0063】
なお、第2制御モードは、例えば、外気温が高い場合等の所定の条件下において、ヒータ21を駆動せず、加温流路C2を流れる冷却水をヒータ21により加熱しないか、又は、ポンプ24及びヒータ21を駆動しない構成としてもよい。
【0064】
制御部65は、第2制御モードにより流体制御装置2の構成要素を制御するとともに、パワースイッチ61の操作を監視する(ステップST4)。パワースイッチ61が操作され、パワーOFF受付をすると、制御部65は、電装品への電力の供給を停止し、燃料電池車両1の駆動を停止する。パワースイッチ61が操作されない場合には、制御部65は、ステップST1に戻る。
【0065】
ステップST5において、燃料電池スタック41の温度が冷却を要する高温でない(Tfc<Th1)場合(ステップST5のNO)には、制御部65は、流体制御装置2を3制御モードで制御する(ステップST7)。
【0066】
第3制御モードの具体例として、制御部65は、先ず、開閉弁52を閉制御し(ステップST71)、三方弁32のポート32a及びポート32bを開制御し(ステップST72)、三方弁23のポート23a及びポート23bを開制御する(ステップST73)。なお、ステップST71、ST72、ST73の各弁の切り替えは、同時であってもよく、順次行っても良い。
【0067】
そして、制御部65は、ポンプ24及びポンプ34を駆動制御し(ステップST74)、加温流路(第2流路)C2を流れる冷却水をヒータ21により冷却水を加熱するとともに、冷却流路(第3流路)C3側を流れる冷却水を、ラジエータ33を通過させずにバイパス流路36を通過させる。これにより、冷却流路C3を流れる冷却水は、燃料電池スタック41と熱交換を行うが、ラジエータ33で冷却されないことから、燃料電池スタック41が冷却されずに、燃料電池スタック41の温度が維持される。これらのように、第3制御モードとして、加温流路(第2流路)C2を冷却水が循環することで、ヒータコア22によりキャビン7を加温可能となるとともに、燃料電池スタック41の冷却を行わない。なお、第3制御モードは、例えば、外気温が高い場合等の所定の条件下において、ヒータ21を駆動せず、加温流路C2を流れる冷却水をヒータ21により加熱しないか、又は、ポンプ24及びヒータ21を駆動しない構成としてもよい。
【0068】
また、制御部65は、第3制御モードにより流体制御装置2の構成要素を制御するとともに、パワースイッチ61の操作を監視する(ステップST4)。パワースイッチ61が操作され、OFF受付をすると、制御部65は、電装品への電力の供給を停止し、燃料電池車両1の駆動を停止する。パワースイッチ61が操作されない場合には、制御部65は、ステップST1に戻る。
【0069】
これらのように、制御部65は、制御手段として機能し、パワースイッチ61の操作によりOFF受付を行うまで、第1制御モード、第2制御モード及び第3制御モードのいずれかで、流体制御装置2の制御処理を行う。
【0070】
このように構成された燃料電池車両1及び流体制御装置2によれば、燃料電池ユニット31の発電効率が低下する低温環境下において、第1制御モードとして、ヒータ21で加熱した冷却水で、燃料電池ユニット31を加熱する。このように、燃料電池ユニット31は、発電時における燃料電池スタック41の発熱による昇温でなく、ヒータ21で加熱された冷却水と熱交換することで燃料電池スタック41を昇温させることができる。よって、流体制御装置2は、水素の消費量を増加させることがなく、燃料電池スタック41を高い発電効率となる所定の温度範囲とすることができる。燃料電池車両1は、燃料電池スタック41における水素の消費量を抑えることができるため、航続可能距離が短くなることを抑制できる。
【0071】
また、燃料電池車両1及び流体制御装置2は、循環流路25及び循環流路35を連絡流路51により接続し、空調システム11に用いるヒータ21により燃料電池スタック41を昇温させる。このため、燃料電池システム12に燃料電池スタック41の昇温用のヒータを設ける必要がない。また、第1制御モードにおいて、三方弁32のポート32a及びポート32bを開くことで、ヒータ21で加熱され、そして、燃料電池スタック41と熱交換を行った冷却水がラジエータ33を通過せずに、バイパス流路36を通過して、ヒータ21に戻る。よって、燃料電池スタック41を加温する冷却水がラジエータ33により冷却されないことから、燃料電池スタック41を加温する冷却水の温度が低下することを防止できるため、ヒータ21の消費電力を抑制できるとともに、FCスタック41の昇温効率を向上させることができる。
【0072】
また、第2制御モードにおいて、ヒータ21及びヒータコア22でキャビン7を加熱する系統としての加温流路(第2流路)C2と、ラジエータ33を用いて燃料電池スタック41を冷却する系統としての冷却流路(第3流路)C3とを、流体的に独立する構成とする。これにより、第2制御モードにおいては、各系統において、温度を高精度で制御することができる。
【0073】
上述したように、第1実施形態に係る燃料電池車両1及び流体制御装置2によれば、水素を燃料とした燃料電池ユニット31の水素消費を抑制しつつ、燃料電池ユニット31の温度を所定の温度範囲に昇温することができる。
【0074】
なお、本発明は上述した第1実施形態に限定されない。例えば、上述した例では、燃料電池車両1(流体制御装置2)が第1制御モードを行うために判定する燃料電池ユニット31の温度Tfcを、FC温度センサ42、水温センサ37及び外気温センサ16の少なくともいずれかで取得する構成を説明した。しかしながら、燃料電池ユニット31の温度Tfcは、FC温度センサ42、水温センサ37及び外気温センサ16に加え、又は、FC温度センサ42、水温センサ37及び外気温センサ16に変えて、GPSセンサ62から取得した位置情報や制御部65のカレンダ機能や時計機能により、燃料電池車両1の環境温度を推定し、推定した環境温度を燃料電池ユニット31の温度Tfcとして、第1制御モードを行うか否かを判定してもよい。また、第1制御モードは、入力インターフェース63からユーザにより入力された指令に応じて実行可能とする構成としてもよい。また、燃料電池車両1は、無線通信機器を有し、無線通信機器を介して、ユーザの携帯端末等の外部から、環境温度等を取得し、取得した環境温度に基づいて第1制御モードを行うか否かを判定してもよい。
【0075】
また、流体制御装置2の空調システム11の流路(循環流路25)及び燃料電池システム12の流路(循環流路35)により形成される昇温流路C1は、上述した例に限定されない。即ち、上述した昇温流路C1は、三方弁23、三方弁32及び開閉弁52により形成される構成を説明したがこれに限定されない。例えば、図6に示すように、三方弁23及び三方弁32を設けず、複数の開閉弁やバイパス流路により昇温流路C1を形成する構成としてもよい。
【0076】
例えば、図6に示す第2実施形態の燃料電池車両1(流体制御装置2)の例においては、連絡流路51は、循環流路25のヒータコア22の上流側及び下流側と、循環流路35のFCスタック41及びラジエータ33の間の流路と、を連絡流路51a及び連絡流路51bで接続する。燃料電池車両1(流体制御装置2)は、連絡流路51aに設けられた開閉弁52に加え、連絡流路51bに開閉弁53を有する。制御部65は、第1制御モードにおいては、開閉弁52及び開閉弁53を開き、ポンプ24を駆動することで、ヒータ21、燃料電池ユニット31、ラジエータ33を通過して循環する昇温流路C1を形成し、この昇温流路C1により燃料電池ユニット31を昇温させる第1制御モードで動作制御を行う。また、第2制御モードにおいては、制御部65は、開閉弁52及び開閉弁53を閉じて、ポンプ24及びポンプ34を駆動して、加温流路C2及び冷却流路C3で冷却水を循環させる。
【0077】
また、例えば、図7に示す第3実施形態の燃料電池車両1(流体制御装置2)の例においては、連絡流路51は、循環流路25のヒータコア22の上流側及び下流側と、循環流路35のFCスタック41及びラジエータ33の間の流路と、を連絡流路51a及び連絡流路51bで接続する。燃料電池車両1(流体制御装置2)は、連絡流路51bに設けられた開閉弁53、ヒータ21の上流側及び開閉弁53をバイパスするバイパス流路54、バイパス流路54に設けられた開閉弁55、並びに、燃料電池ユニット31及びラジエータ33の間に設けられた開閉弁56を備える。
【0078】
制御部65は、第1制御モードにおいては、開閉弁53及び開閉弁56を閉じ、開閉弁52及び開閉弁55を開く。これにより、制御部65は、燃料電池ユニット31、バイパス流路54ヒータ21、ヒータコア22、ラジエータ33、を通過して循環する昇温流路C1を形成し、この昇温流路C1により燃料電池ユニット31を昇温させる第1制御モードで動作制御を行う。また、制御部65は、第2制御モードにおいては、開閉弁52、開閉弁53及び開閉弁55を閉じ、開閉弁56を開き、ポンプ24及びポンプ34を駆動して、加温流路C2及び冷却流路C3で冷却水を循環させる。
【0079】
即ち、これら異なる複数の実施形態に示す様に、燃料電池車両1及び流体制御装置2は、第1制御モードとして、FCスタック41を昇温させる冷却水を、ラジエータ33を通過させて循環する構成としてもよい。上述した複数の実施形態のように、第1制御モードは、空調システム11の循環流路25及び燃料電池システム12の循環流路35を選択的に接続し、空調システム11のヒータ21により加熱した冷却水により、燃料電池ユニット31を加熱(昇温)できる構成であれば、適宜設定可能である。但し、FCスタック41の昇温のために加熱した冷却水の不要な冷却を抑制するために、第1制御モードにおいて、昇温流路C1は、冷却水がラジエータ33を通過しない構成が好ましい。
【0080】
また、上述した例では、燃料電池車両1(流体制御装置2)の制御部65が制御する冷却水の循環の制御処理として、第1制御モード、第2制御モード及び第3制御モードを含む構成を説明したがこれに限定されない。例えば、燃料電池車両1(流体制御装置2)3制御モードを含まず、第1制御モード及び第2制御モードにより、冷却水の循環を制御処理する構成としてもよく、また、第1制御モード、第2制御モード及び第3制御モード以外の制御モードを有する構成としてもよい。
【0081】
また、上述した例では、第2制御モードは、加温流路C2に冷却水を循環させてヒータ21により加温流路C2の冷却水を加熱するとともに、冷却流路C3に冷却水を循環させて、ラジエータ33で冷却水を冷却する構成とした。しかしながら、第2制御モードにおいては、冷却流路C3に冷却水を循環させて、燃料電池ユニット31の冷却のみを行い、加温流路C2に冷却水を循環させるが、ヒータ21で冷却水を加熱しないか、又は、加温流路C2に冷却水を循環させない構成としてもよい。このような場合には、他の制御モードとして、空調用パネル等の入力インターフェース63をユーザが操作した場合や、外気温に基づいて、ポンプ24を駆動し、加温流路C2に冷却水を循環させるとともに、ヒータ21により冷却水を加熱する動作制御を行う構成としてもよい。
【0082】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明と同等の記載を付記する。
[1] 冷却水を加熱するヒータと、
前記ヒータで加熱された冷却水によって温められるヒータコアと、
燃料電池を含む燃料電池ユニットと、
前記冷却水と熱交換を行うラジエータと、
前記ヒータ、前記ヒータコア及び前記燃料電池ユニットを前記冷却水が通過して循環する第1流路を前記ヒータで加熱された前記冷却水が循環する第1制御モードと、前記ヒータ及び前記ヒータコアを前記冷却水が通過して循環する第2流路、並びに、前記燃料電池ユニット及び前記ラジエータを前記冷却水が通過して循環する、前記第2流路と独立する第3流路のそれぞれに前記冷却水を循環させる第2制御モードと、を含む複数の制御モードのうちいずれかで、前記冷却水の循環を制御する制御部と、
を備える流体制御装置。
[2] 前記第1流路は、前記ラジエータを通過しない、[1]に記載の流体制御装置。
[3] 前記制御部は、前記燃料電池ユニットの温度が、前記燃料電池ユニットの発電効率が低下する温度より低い温度値である閾値未満であるか否かを判定する判定処理を行い、前記燃料電池ユニットの温度が前記閾値より低いと判定すると、前記第1制御モードで制御処理を行う[1]に記載の流体制御装置。
[4] 前記燃料電池ユニットの温度を検出する温度センサを有し、
前記制御部は、前記温度センサで検出した前記燃料電池ユニットの温度に基づいて前記判定処理を行う[3]に記載の流体制御装置。
[5] 前記第3流路を循環する前記冷却水の温度を検出する温度センサを有し、
前記制御部は、前記温度センサで検出した温度を前記燃料電池ユニットの温度として前記判定処理を行う、[3]に記載の流体制御装置。
[6] 外気温を検出する温度センサを有し、
前記制御部は、前記温度センサで検出した温度を前記燃料電池ユニットの温度として前記判定処理を行う、[3]に記載の流体制御装置。
[7] 前記制御部は、前記燃料電池ユニットの温度が前記閾値以上と判定すると、前記第2制御モードで制御処理を行う、[3]に記載の流体制御装置。
[8] [1]乃至[7]のいずれか一項に記載の流体制御装置を備える燃料電池車両。
[9] 冷却水を加熱するヒータと、前記ヒータで加熱された冷却水によって温められるヒータコアと、燃料電池を含む燃料電池ユニットと、前記冷却水と熱交換を行うラジエータと、を備える流体制御装置の流体制御方法であって、
前記ヒータ、前記ヒータコア及び前記燃料電池ユニットを前記冷却水が通過して循環する第1流路を前記ヒータで加熱された前記冷却水が循環する第1制御モードと、前記ヒータ及び前記ヒータコアを前記冷却水が通過して循環する第2流路、並びに、前記燃料電池ユニット及び前記ラジエータを前記冷却水が通過して循環する、前記第2流路と独立する第3流路のそれぞれに前記冷却水を循環させる第2制御モードと、を含む複数の制御モードのうちいずれかを選択し、
選択した前記制御モードで、前記冷却水の循環の制御処理を行う、
流体制御方法。
【符号の説明】
【0083】
1…燃料電池車両、2…流体制御装置、3…シャーシ、4…車体、5…車輪、7…キャビン(車両内部)、11…空調システム、12…燃料電池システム、13…バッテリ、14…モータ、15…タンク、16…外気温センサ(温度センサ)、17…制御装置、21…ヒータ、22…ヒータコア、23…三方弁、23a…ポート、23b…ポート、23c…ポート、24…ポンプ、25…循環流路、31…燃料電池ユニット、32…三方弁、32a…ポート、32b…ポート、32c…ポート、33…ラジエータ、34…ポンプ、35…循環流路、36…バイパス流路、37…水温センサ(温度センサ)、41…燃料電池スタック(FCスタック)、42…FC温度センサ(温度センサ)、51…連絡流路、51a…連絡流路、51b…連絡流路、52…開閉弁、53…開閉弁、54…バイパス流路、55…開閉弁、56…開閉弁、61…パワースイッチ(パワーSW)、62…GPSセンサ、63…入力インターフェース、64…メモリ、65…制御部、100…水素ステーション、C1…昇温流路(第1流路)、C2…加温流路(第2流路)、C3…冷却流路(第3流路)。
【要約】
【課題】水素を燃料とした燃料電池ユニットの水素消費を抑制しつつ、燃料電池ユニットの温度を所定の温度範囲に昇温することができる流体制御装置、燃料電池車両及び流体制御方法を提供すること。
【解決手段】流体制御装置は、冷却水を加熱するヒータと、前記ヒータで加熱された冷却水によって温められるヒータコアと、燃料電池を含む燃料電池ユニットと、前記冷却水と熱交換を行うラジエータと、前記ヒータ、前記ヒータコア及び前記燃料電池ユニットを前記冷却水が通過して循環する第1流路を前記ヒータで加熱された前記冷却水が循環する第1制御モードと、前記ヒータ及び前記ヒータコアを前記冷却水が通過して循環する第2流路、並びに、前記燃料電池ユニット及び前記ラジエータを前記冷却水が通過して循環する、前記第2流路と独立する第3流路のそれぞれに前記冷却水を循環させる第2制御モードと、を含む複数の制御モードのうちいずれかで、前記冷却水の循環を制御する制御部と、を備える。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7