(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ヒートシール紙
(51)【国際特許分類】
D21H 19/40 20060101AFI20241008BHJP
D21H 19/82 20060101ALI20241008BHJP
D21H 19/58 20060101ALI20241008BHJP
B65D 65/42 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
D21H19/40
D21H19/82
D21H19/58
B65D65/42 C
(21)【出願番号】P 2023066942
(22)【出願日】2023-04-17
(62)【分割の表示】P 2020113018の分割
【原出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯▲崎▼ 友史
(72)【発明者】
【氏名】野一色 泰友
(72)【発明者】
【氏名】鶴原 正啓
(72)【発明者】
【氏名】社本 裕太
(72)【発明者】
【氏名】田中 三代子
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-278189(JP,A)
【文献】特開平09-158089(JP,A)
【文献】特開2015-124464(JP,A)
【文献】特開2010-229562(JP,A)
【文献】特開2019-065412(JP,A)
【文献】特開2012-132119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 11/00- 27/42
B65D 65/00- 65/46
B32B 1/00- 43/00
C09D 1/00- 10/00
101/00-201/10
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材の少なくとも一方の面に水分散性樹脂バインダーおよび顔料を含有するヒートシール層を有するヒートシール紙であり、
顔料が、アスペクト比が20以上の顔料を含み、
該紙基材が、坪量が110g/m
2以上である未晒クラフト紙であり、
該水分散性樹脂バインダーが、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含み、
該顔料が、カオリンを含み、
該ヒートシール層が、エチレン-酢酸ビニル共重合体を50質量%以上含有し、
該ヒートシール層が、水分散性樹脂バインダー100質量部に対して、顔料を3質量部以上20質量部以下含有し、
該ヒートシール層の塗工量が7g/m
2以上である、
ヒートシール紙。
【請求項2】
ヒートシール層が、水分散性樹脂バインダー100質量部に対して、滑剤を10質量部以上30質量部以下含有する、請求項
1に記載のヒートシール紙。
【請求項3】
紙基材の少なくとも一方の面に、ヒートシール層が2層以上形成されてなる、請求項1
または2に記載のヒートシール紙。
【請求項4】
紙基材の少なくとも一方の面の最上層に前記ヒートシール層を有する、請求項1~3のいずれかに記載のヒートシール紙。
【請求項5】
ヒートシール層同士を、160℃、0.2MPa、1秒の条件でヒートシールしたときのヒートシール剥離強度が、9.0N/15mm以上である、請求項1~
4のいずれかに記載のヒートシール紙。
【請求項6】
ヒートシール紙再離解後のパルプ回収率が85%以上である、請求項1~
5のいずれかに記載のヒートシール紙。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれかに記載のヒートシール紙を用いてなる、包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシール紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷低減を目的として、各種プラスチック製品の紙製品への転換が望まれている。その対策として、プラスチックを紙に代替することが提案されているが、紙を袋や容器に加工する際には、ヒートシール性が要求される。
従来、ヒートシール性を付与するために、紙基材にポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムをラミネートしたラミネート紙が、使用されてきたが、再生時にポリエチレンフィルムの除去が困難であり、再生利用性に劣るという問題があった。
このような問題に対応するために、特許文献1には、プラスチックの使用量を低減することができる包装用紙を提供することを目的として、紙基材の少なくとも一方の面に少なくとも1層のヒートシール層を有する包装用紙であって、前記ヒートシール層がアイオノマーを含み、前記ヒートシール層の乾燥塗工量が全層で2~10g/m2であり、前記ヒートシール層が少なくとも一方の面に2層以上形成されていることを特徴とする包装用紙が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒートシール紙は、用途によって、高いヒートシール剥離強度が求められると共に、包装袋とした場合に、耐衝撃性が求められる。このような課題について、特許文献1では検討されていない。
本発明は、高いヒートシール剥離強度を有し、包装袋とした場合に耐衝撃性に優れ、さらに、再離解後のパルプ回収率に優れるヒートシール紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、紙基材上に水分散性樹脂バインダーを含有するヒートシール層を有し、該紙基材の坪量が所定値以上であり、ヒートシール層の塗工量が所定量以上であることにより、高いヒートシール剥離強度を有し、包装体とした場合に耐衝撃性に優れ、さらに、再離解後のパルプ回収率に優れるヒートシール紙が得られることを見出した。
本発明は以下の<1>~<9>に関する。
<1> 紙基材の少なくとも一方の面に水分散性樹脂バインダーを含有するヒートシール層を有するヒートシール紙であり、該紙基材が、坪量が110g/m2以上である未晒クラフト紙であり、該ヒートシール層の塗工量が7g/m2以上である、ヒートシール紙。
<2> ヒートシール層が、水分散性樹脂バインダー100質量部に対して、顔料を3質量部以上70質量部以下含有する、<1>に記載のヒートシール紙。
<3> ヒートシール層が、水分散性樹脂バインダー100質量部に対して、滑剤を10質量部以上30質量部以下含有する、<1>または<2>に記載のヒートシール紙。
<4> 水分散性樹脂バインダーが、エチレン-酢酸ビニル共重合体である、<1>~<3>のいずれかに記載のヒートシール紙。
<5> ヒートシール層が、エチレン-酢酸ビニル共重合体を50質量%以上含有する、<1>~<4>のいずれかに記載のヒートシール紙。
<6> 紙基材の少なくとも一方の面に、ヒートシール層が2層以上形成されてなる、<1>~<5>のいずれかに記載のヒートシール紙。
<7> ヒートシール層同士を、160℃、0.2MPa、1秒の条件でヒートシールしたときのヒートシール剥離強度が、9.0N/15mm以上である、<1>~<6>のいずれかに記載のヒートシール紙。
<8> ヒートシール紙再離解後のパルプ回収率が85%以上である、<1>~<7>のいずれかに記載のヒートシール紙。
<9> <1>~<8>のいずれかに記載のヒートシール紙を用いてなる、包装袋。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高いヒートシール剥離強度を有し、包装袋とした場合に耐衝撃性に優れ、さらに、再離解後のパルプ回収率に優れるヒートシール紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[ヒートシール紙]
本発明のヒートシール紙は、紙基材の少なくとも一方の面に水分散性樹脂バインダーを含有するヒートシール層を有するヒートシール紙であり、該紙基材が、坪量が110g/m2以上である未晒クラフト紙であり、該ヒートシール層の塗工量が7g/m2以上である。
本発明によれば、高いヒートシール剥離強度を有し、包装袋とした場合に耐衝撃性に優れ、さらに、再離解後のパルプ回収率に優れるヒートシール紙を提供することができる。
上述した効果が得られる詳細な理由は不明であるが、一部は以下のように考えられる。本発明では、紙基材として、坪量が110g/m2以上の未晒クラフト紙を使用しており、未晒クラフト紙は、繊維強度に優れる。また、ヒートシール層が、水分散性樹脂バインダーを含有し、かつ、ヒートシール層の塗工量が7g/m2以上であることから、ヒートシール層が紙基材である未晒クラフト紙のパルプ繊維と一部複合化し、ヒートシール剥離強度に優れたヒートシール紙が得られると考えられる。また、坪量の高い未晒クラフト紙を紙基材として使用することにより、ヒートシールの剥離が面全体で進行するため、ヒートシール剥離強度が高くなると考えられる。また、紙力に優れる紙基材を使用することにより、該紙基材を有するヒートシール紙を用いて作製した包装袋は、耐衝撃性に優れると考えられる。
さらに、水分散性樹脂バインダーを含む塗工液、好ましくは水系塗工液によってヒートシール層を設けており、本発明のヒートシール紙は、再離解性に優れると共に、パルプの回収率にも優れる。その結果、再利用可能であり、環境負荷の少ないヒートシール紙が得られたものと考えられる。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0008】
<ヒートシール層>
本発明において、ヒートシール紙は、紙基材の少なくとも一方の面に、ヒートシール層を有する。
なお、本発明のヒートシール紙は、ヒートシール層を紙基材の両方の面に有していてもよい。また、ヒートシール性を付与する観点から、少なくとも一方の面の最上層にヒートシール層を有しており、ヒートシール層が一方の面に2層以上形成されていてもよい。
【0009】
〔水分散性樹脂バインダー〕
本発明において、ヒートシール層は、水分散性樹脂バインダーを含有する。
水分散性樹脂バインダーとしては、水分散性の樹脂であり、ヒートシール性を付与可能な樹脂であればとくに限定されない。また、水分散性樹脂バインダーは、ディスパージョン型の水分散性樹脂バインダーであってもよく、エマルション型の水分散性樹脂バインダーであってもよい。水分散性樹脂バインダーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明のヒートシール紙は、ヒートシール層が水分散性樹脂バインダーを含有することにより、水系塗工液を使用してヒートシール層を塗工することができるため、VOC(Volatile Organic Compound、揮発性有機化合物)の問題が抑制されるので好ましい。また、ヒートシール紙を再離解後のパルプ回収率に優れるので好ましい。
【0010】
本発明において、水分散性樹脂バインダーは、ヒートシール性の観点から、エチレン共重合体であることが好ましい。
エチレン共重合体として、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、およびエチレン-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体が例示され、これらの中でも、より高い剥離強度を有し、包装袋とした場合に耐衝撃性により優れるヒートシール紙を得る観点から、エチレン-酢酸ビニル共重合体が好ましい。
【0011】
(エチレン-酢酸ビニル共重合体)
エチレン-酢酸ビニル共重合体は、少なくともエチレンと酢酸ビニルとが共重合した共重合体であり、場合により他のモノマーがさらに共重合されていてもよい。他のモノマーに由来する構成単位の含有量は、共重合体全体の好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、よりさらに好ましくは1質量%以下である。
上記エチレン-酢酸ビニル共重合体は、ヒートシール強度の観点から、共重合体を構成する全モノマー中のエチレンの割合が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
また、エチレン-酢酸ビニル共重合体のガラス転移温度は、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下、さらに好ましくは10℃以下であり、そして、好ましくは-30℃以上、より好ましくは-20℃以上、さらに好ましくは-10℃以上である。
【0012】
(エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸共重合体)
上記エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸共重合体としては、例えば、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体などが挙げられる。エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体は、陽イオンによる凝集力を利用し、高分子凝集体としたアイオノマーであってもよい。
前記エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体アイオノマーとしては、例えば、ケミパールシリーズ(三井化学(株)製)、ザイクセンシリーズ(住友精化(株)製)等が例示される。
【0013】
(エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体)
上記エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体としては、例えば、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。上記エチレン-脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体としては、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、もしくはエチレン-メタクリル酸メチル共重合体が汎用性の面から好ましい。
【0014】
ヒートシール層の固形分中の水分散性樹脂バインダーの含有量は、高いヒートシール剥離強度を得る観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましく70質量%以上であり、そして、他の成分の含有量を確保する観点から、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは92質量%以下、とくに好ましくは80質量%以下である。
ヒートシール層の固形分中のエチレン-酢酸ビニル共重合体の含有量は、高いヒートシール強度を得る観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、そして、他の成分の含有量を確保する観点から、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは92質量%以下、とくに好ましくは80質量%以下である。
【0015】
〔顔料〕
本発明において、ヒートシール層は、上記水分散性樹脂バインダーに加えて、顔料を含有することが好ましい。顔料を含有することにより、ヒートシール紙を製造する際に、ヒートシール層塗工面が、ヒートシール紙の裏面に貼り付き、剥がれが生じる(ブロッキングする)という問題が抑制され、耐ブロッキング性に優れたヒートシール紙が得られる。
顔料としては、とくに限定されるものではなく、従来の顔料塗工層に使用されている各種顔料が例示される。顔料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。顔料としては、ヒートシール剥離強度の観点、および耐ブロッキング性の観点から、アスペクト比が20以上の顔料が好ましい。顔料のアスペクト比は、より好ましくは25以上、さらに好ましくは30以上、とくに好ましくは60以上であり、そして、入手容易性およびヒートシール層表面の平滑性の観点から、好ましくは10,000以下、より好ましくは1,000以下、さらに好ましくは300以下である。
顔料のアスペクト比は、長径/短径を意味し、下記の方法により測定してもよい。
【0016】
顔料は、アスペクト比20以上の層状無機化合物であることが好ましい。層状無機化合物の形態は、平板状である。顔料が平板状であると、顔料のヒートシール層表面からの突出が抑制され、ヒートシール性を維持しつつ、耐ブロッキング性に優れたヒートシール層が得られる。
【0017】
顔料は、長さ(平均粒子径)が0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。長さが0.1μm以上であると、顔料が紙基材に対して平行に配列し易い。また、長さが100μm以下であると顔料の一部がヒートシール層から突出する懸念が少ない。顔料の長さは、より好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上、とくに好ましくは1.0μm以上であり、そして、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下、とくに好ましくは15μm以下である。
ここで、ヒートシール層中に含まれている状態での顔料の長さは、以下のようにして求められる。ヒートシール層の断面について、電子顕微鏡を用いて拡大写真を撮影する。このとき、画面内に顔料が20~30個程度含まれる倍率とする。画面内の顔料の個々の長さを測定する。そして、得られた長さの平均値を算出して、顔料の長さとする。なお、顔料の長さは、粒子径という表現で記載されることもある。
【0018】
顔料は、厚さが200nm以下であることが好ましい。顔料の厚さは、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは80nm以下、よりさらに好ましくは50nm以下、とくに好ましくは30nm以下である。また、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。顔料の平均厚さが小さい方が、高いヒートシール剥離強度が得られる。ここで、ヒートシール層中に含まれている状態での顔料の厚さは、以下のようにして求められる。ヒートシール層の断面について、電子顕微鏡を用いて拡大写真を撮影する。このとき、画面内に顔料が20~30個程度含まれる倍率とする。画面内の顔料の個々の厚さを測定する。そして、得られた厚さの平均値を算出して、顔料の厚さとする。
【0019】
顔料の具体例としては、マイカ、ベントナイト、カオリン、パイロフィライト、タルク、スメクタイト、バーミキュライト、緑泥石、セプテ緑泥石、蛇紋石、スチルプノメレーン、モンモリロナイト、重質炭酸カルシウム(粉砕炭酸カルシウム)、軽質炭酸カルシウム(合成炭酸カルシウム)、炭酸カルシウムと他の親水性有機化合物との複合合成顔料、サチンホワイト、リトポン、二酸化チタン、シリカ、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、ケイ酸塩、コロイダルシリカ、中空もしくは密実である有機顔料のプラスチックピグメント、バインダーピグメント、プラスチックビーズ、マイクロカプセルなどが挙げられる。
マイカの具体例としては、合成マイカ(例えば、膨潤性合成マイカ)、白雲母(マスコバイト)、絹雲母(セリサイト)、金雲母(フロコパイト)、黒雲母(バイオタイト)、フッ素金雲母(人造雲母)、紅マイカ、ソーダマイカ、バナジンマイカ、イライト、チンマイカ、パラゴナイト、ブリトル雲母などが挙げられる。また、ベントナイトの具体例としては、モンモリロナイトが挙げられる。
カオリンの具体例としては、カオリン、焼成カオリン、構造化カオリン、デラミネーテッドカオリン等の各種カオリンが例示される。
これらの中でもとくに、ヒートシール剥離強度の観点、耐ブロッキング性の観点および経済性の観点から、アスペクト比が20以上の顔料が好ましく、マイカ、ベントナイト、カオリンおよびタルクのうちいずれか1種以上を含有することがより好ましく、カオリンがさらに好ましい。
【0020】
本発明において、ヒートシール層は、耐ブロッキング性の観点から、水分散性樹脂バインダー100質量部に対する顔料の含有量は、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは8質量部以上である。また、高いヒートシール剥離強度を得る観点から、水分散性樹脂バインダー100質量部に対するアスペクト比が20以上の顔料の含有量は、好ましくは70質量部以下、より好ましくは60質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下、とくに好ましくは20質量部以下である。
なお、前記水分散性樹脂バインダーは、固形分量を意味し、水分散性樹脂バインダーの固形分100質量部に対する、アスペクト比が20以上の含有量の含有量を規定している。
【0021】
〔滑剤〕
ヒートシール層は、上述した水分散性樹脂バインダーおよび顔料に加えて、滑剤を含有することが好ましい。滑剤を含有することにより、耐ブロッキング性により優れたヒートシール層が得られる。また、滑剤を含有することにより、表面の滑り性が向上し、また、汚れ防止性が向上するので好ましい。
滑剤としては、具体的にはパラフィン、ワックス等の炭化水素系滑剤、高級脂肪酸、オキシ脂肪酸等の脂肪酸系滑剤、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド等の脂肪酸アミド系滑剤、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル等のエステル系滑剤、脂肪アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロール等のアルコール系滑剤、金属石鹸、混合系滑剤等が挙げられる。これらの滑剤は、天然由来でも合成品でもよく、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ヒートシール層における分散性の観点から、炭化水素系滑剤が好ましく、ポリオレフィンワックスがより好ましく、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスがさらに好ましく、低分子量ポリエチレンワックス、低分子量ポリプロピレンワックスがさらに好ましい。また、滑剤を溶液あるいは分散液とするために、可溶化剤、分散剤、乳化剤を併用してもよい。
滑剤として、市販されている製品を使用してもよく、具体的には、低分子量ポリエチレンワックスディスパージョン(三井化学(株)製、ケミパールW-310、ケミパールW-410、ケミパールW-800)などが例示される。
【0022】
ヒートシール層における滑剤の含有量は、耐ブロッキング性、表面の滑り性、および汚れ防止性向上の観点から、水分散性樹脂バインダー100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは14質量部以上、さらに好ましくは18質量部以上であり、そして、高いヒートシール剥離強度を維持する観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは26質量部以下、さらに好ましくは22質量部以下である。
【0023】
本発明において、ヒートシール層は、上記水分散性樹脂バインダー、顔料、および滑剤に加えて、他の成分を添加してもよい。
他の成分としては、例えば、消泡剤;粘度調整剤;界面活性剤、アルコール等のレベリング剤;着色染料等の着色剤などが例示される。
なお、これらの他の成分は、ヒートシール性を悪化させる傾向があることから、他の成分の含有量の合計は、ヒートシール層の固形分中、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0024】
〔ヒートシール層の形成方法〕
ヒートシール層は、少なくとも水分散性樹脂バインダーを含有するヒートシール層用塗工液を調製し、これを、紙基材の少なくとも一方の面に塗工することにより得られる。
ヒートシール層用塗工液は、自己乳化型ディスパーションであってもよく、界面活性剤等の乳化剤、分散剤を含有していてもよい。
【0025】
ヒートシール層用塗工液を塗工する方法としては、とくに限定されず、一般に使用されている塗工装置から適宜選択して使用すればよい。例えば、エアナイフコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、チャンプレックスコーター、メータリングブレード式のサイズプレスコーター、ショートドウェルコーター、スプレーコーター、ゲートロールコーター、リップコーター等の公知の各種塗工装置が挙げられる。
また、塗工液を塗工後、乾燥前に、塗工された塗工膜に発生する気泡や、該気泡が破泡した痕跡を、スムージングバーにより平滑化することが好ましい。具体的には、塗工液を塗工したした後、かつ乾燥装置に至る前に、塗工膜の表面にスムージングバーが接触するよう設ける。スムージングバーは、必要に応じて回転を加えて、塗工膜の表面に接するように設ける。これにより、ヒートシール層表面を平滑にすることができ、また、ピンホール等の発生を抑制することができ、高いヒートシール強度が得られる。また、顔料の配向性も向上し、ヒートシール層表面からの顔料の脱離なども抑制することができる。
【0026】
〔ヒートシール層の好ましい態様〕
本発明のヒートシール紙は、紙基材の少なくとも一方の面にヒートシール層を有していればよく、紙基材の両面に有していてもよい。ヒートシール層は、ヒートシール性を付与する観点から、少なくとも最上層に設けられていることが好ましい。
【0027】
ヒートシール紙は、少なくとも一方の面にヒートシール層を有し、紙基材の少なくとも一方の面に、ヒートシール層が2層以上形成されていることが好ましい。ヒートシール層を2層以上形成することにより、ピンホール等の発生が抑制され、また、平滑な表面が得やすい。この結果、欠点の少ないヒートシール紙が得られる。
なお、2層以上のヒートシール層を有する場合、2層以上のヒートシール層は、直接に接触する層として設けられていることが好ましく、最上層のシール層が、ヒートシール紙の最上層を構成していることが好ましい。
なお、ヒートシール層は、2層以上形成されていることが好ましく、製造容易性および多層とすることによる効果の観点から、好ましくは5層以下、より好ましくは4層以下、さらに好ましくは3層以下であり、2層であることが最も好ましい。
【0028】
ヒートシール層の塗工量は、ヒートシール剥離強度に優れ、包装袋とした際に耐衝撃性に優れるヒートシール紙とする観点から、好ましくは7g/m2以上、より好ましくは7.5g/m2以上であり、そして、好ましくは20g/m2以下、より好ましくは15g/m2以下、さらに好ましくは10g/m2以下である。
なお、ヒートシール層の塗工量は、固形分での塗工量であり、また、ヒートシール紙が2層以上のヒートシール層を有する場合には、合計した塗工量を意味する。
2層のヒートシール層を有する場合、それぞれのヒートシール層の塗工量は、下層の塗工量は、上層の塗工量以上であることが好ましく、下層の塗工量と上層の塗工量が同じであることがより好ましい。
【0029】
<その他の層>
本発明において、ヒートシール紙は、ヒートシール層に加えて、紙基材とヒートシール層との間に、例えば、下塗り層を有していてもよい。下塗り層は、紙基材とヒートシール層との密着性を向上させる目的や、ヒートシール紙に耐水性等を付与する目的で設けることができる。すなわち、ヒートシール紙が下塗り層を有する場合、ヒートシール紙は、下塗り層およびヒートシール層をこの順で有することが好ましい。
【0030】
<紙基材>
本発明のヒートシール紙は、紙基材上の少なくとも一方の面の最上層にヒートシール層を有する。
本発明において、紙基材として、坪量が110g/m2以上である未晒クラフト紙を使用する。
未晒クラフト紙は、未漂白パルプを使用しており、未漂白パルプとしては、未晒針葉樹パルプ(NUKP)、未晒広葉樹パルプ(LUKP)が挙げられる。これらのパルプは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
パルプの叩解度は、とくに限定するものではないが、離解パルプのカナダ標準濾水度(CSF)として、好ましくは300mL以上800mL以下、より好ましくは400mL以上750mL以下、さらに好ましくは500mL以上700mL以下である。パルプのCSFが前記範囲内であれば、包装袋とする際に、必要な紙力が得られやすく、耐衝撃性に優れる包装袋が得られる。
離解パルプのCSFは、紙基材をJIS P 8220-1:2012に準拠して離解したパルプについて、JIS P 8121-2:2012「パルプ-ろ水度試験方法-第2部:カナダ標準ろ水度法」に従って測定される。
【0032】
離解パルプのカッパー価は、好ましくは20以上80以下、より好ましくは25以上70以下、さらに好ましくは30以上60以下である。カッパー価が上記範囲内であると、包装袋とした際に耐衝撃性に優れ、また、包装袋への加工適性に優れるので好ましい。
離解パルプのカッパー価は、紙基材をJIS P 8220-1:2012に準拠して離解したパルプについて、JIS P 8211:2011に準拠して測定される。
【0033】
紙基材への添加剤としては、例えばpH調整剤(炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム等)、乾燥紙力剤(ポリアクリルアミド、澱粉等)、湿潤紙力剤(ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂のいずれか)、内添サイズ剤(ロジン系、アルキルケテンダイマー等)、濾水歩留り向上剤、消泡剤、填料(炭酸カルシウム、タルク等)、染料等が挙げられる。これらの添加剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
添加剤の含有量は、とくに限定されず、通常用いられている範囲であってよい。
【0034】
紙基材の坪量は、包装袋としたときに耐衝撃性に優れるヒートシール紙とする観点から、110g/m2以上であり、好ましくは115g/m2以上であり、より好ましくは120g/m2以上である。また、上限はとくに限定されないが、包装袋にする際の加工性、製造上の観点から、好ましくは200g/m2以下、より好ましくは180g/m2以下、さらに好ましくは160g/m2以下、とくに好ましくは150g/m2以下である。
紙基材の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。
【0035】
紙基材の厚みは、加工性および製造上の観点から、好ましくは100μm以上、より好ましくは110μm以上であり、そして、好ましくは250μm以下、より好ましくは230μm以下である。
紙基材の厚みは、JIS P 8118:2014に準拠して測定される。
【0036】
〔紙基材の製造方法〕
紙基材を製造する方法としては、パルプを含有する紙料を抄紙する方法が挙げられる。なお、紙料は、添加剤をさらに含有してもよい。添加剤としては、例えば前記で挙げた添加剤が挙げられる。
紙料は、パルプスラリーに添加剤を添加することにより調製できる。
パルプスラリーは、パルプを水の存在下で叩解することにより得られる。パルプの叩解方法、叩解装置はとくに限定されず、公知の叩解方法、叩解装置と同様であってよい。
紙料におけるパルプの含有量は、とくに限定されず、通常用いられている範囲であってよい。例えば、紙料の総質量に対して、60質量%以上100質量%未満である。
【0037】
紙料の抄紙は定法により実施できる。例えば、紙料をワイヤ等に流延させ、脱水して湿紙を得て、必要に応じて複数の湿紙を重ね、この単層または多層の湿紙をプレスし、乾燥させる方法が挙げられる。このとき、複数の湿紙を重ねない場合は単層抄きの紙が得られ、複数の湿紙を重ねる場合は多層抄きの紙が得られる。
複数の湿紙を重ねる際に、湿紙の表面(他の湿紙を重ねる面)に接着剤を塗布してもよい。
【0038】
<ヒートシール紙の物性>
本発明のヒートシール紙は、ヒートシール性を有する。
ヒートシールの条件はとくに限定されないが、ヒートシール時の温度は、例えば、好ましくは60℃以上300℃以下、より好ましくは70℃以上200℃以下、さらに好ましくは80℃以上180℃以下である。ヒートシール時の圧力は、例えば、好ましくは0.05MPa以上10MPa以下、より好ましくは0.1MPa以上2MPa以下である。加圧時間は、例えば、好ましくは0.1秒以上15秒以下、より好ましくは0.2秒以上5秒以下である。
【0039】
本発明のヒートシール紙は、ヒートシール剥離強度に優れる観点から、ヒートシール層同士を、160℃、0.2MPa、1秒の条件でヒートシールしたときのヒートシール剥離強度は、好ましくは9.0N/15mm以上、より好ましくは9.5N/15mm以上、さらに好ましくは10.0N/15mm以上であり、そして、上限はとくに限定されないが、達成容易性の観点から、好ましくは20.0N/15mm以下、より好ましくは18.0N/15mm以下、さらに好ましくは15.0N/15mm以下である。
剥離強度は、実施例に記載の方法により測定される。
【0040】
本発明のヒートシール紙は、再離解によるパルプの回収率に優れており、ヒートシール紙再離解後のパルプの回収率は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、とくに好ましくは98%以上が達成される。上限はとくに限定されず、100%以下である。再離解後のパルプの回収率が上記範囲内であると、リサイクル性に優れ、環境負荷の低減性に優れる。
本発明のヒートシール紙は、紙基材上にヒートシール層を、好ましくは塗工により設けており、また、該塗工液が好ましくは水系塗工液であることから、樹脂フィルムをラミネートした場合等に比べて、再離解後のパルプ回収率に格段に優れる。
再離解後のパルプの回収率は、実施例に記載の方法により測定される。
【0041】
本発明のヒートシール紙は、ヒートシール性を有し、また、加工適性に優れることから、包装袋にとくに好適であり、その中でもとくに、耐衝撃性が要求される包装袋として好適である。
より具体的には、内容物の質量が大きい場合や、輸送等に提供される包装袋として好適である。
【実施例】
【0042】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0043】
実施例および比較例で使用した原材料は、以下の通りである。
[エチレン-酢酸ビニル共重合体]
・S-470HQ:エチレン-酢酸ビニル共重合体(住化ケムテックス(株)製、スミカフレックスS-470HQ、固形分55%)
[滑剤]
・W-310:低分子量ポリエチレンワックスディスパージョン(三井化学(株)製、ケミパールW-310、固形分38.5%)
[顔料]
・カオリンA:平均粒子径8μm、アスペクト比80~100
・カオリンB:平均粒子径1.5μm、アスペクト比30
【0044】
[実施例1]
<ヒートシール層塗料の調製>
エチレン-酢酸ビニル共重合体(住化ケムテックス(株)製、スミカフレックスS-470HQ、固形分55%)182部、低分子量ポリエチレンワックスディスパージョン(三井化学(株)製、ケミパールW-310、固形分38.5%)52部、カオリンA(平均粒子径8μm)の濃度50%水分散液20部を混合し、固形分濃度が40%になるよう水を加えて撹拌し、ヒートシール層塗料(濃度40%)を得た。
<ヒートシール紙の製造>
得られたヒートシール層塗料を、坪量120g/m2の未晒クラフト紙(王子マテリア(株)製、厚み170μm、離解パルプのCSF630mL)にヒートシール層の乾燥後の塗工量が4g/m2となるように、グラビアコーター(スムージングバーを使用)で塗工し、1層目のヒートシール層を形成した。その後、同じ面に対して、ヒートシール層の乾燥後の塗工量が4g/m2となるように、再度グラビアコーター(スムージングバーを使用)で塗工し、2層目のヒートシール層を形成した。
【0045】
[実施例2]
1層目のヒートシール層の塗工量を8g/m2とし、2層目のヒートシール層の塗工を行わなかった以外は実施例1と同様にしてヒートシール紙を得た。
【0046】
[実施例3]
W-310の配合部数を0部に変更した以外は実施例1と同様にしてヒートシール紙を得た。
【0047】
[実施例4]
基材を、坪量130g/m2の未晒クラフト紙(王子マテリア(株)製、厚み200μm、離解パルプのCSF630mL)に変更した以外は実施例1と同様にしてヒートシール紙を得た。
【0048】
[実施例5]
カオリンAをカオリンB(平均粒子径1.5μm)に変更した以外は実施例4と同様にしてヒートシール紙を得た。
【0049】
[実施例6]
基材を、坪量150g/m2の未晒クラフト紙(王子マテリア(株)製、厚み230μm、離解パルプのCSF630mL)に変更した以外は実施例1と同様にしてヒートシール紙を得た。
【0050】
[比較例1]
基材を、坪量100g/m2の未晒クラフト紙(王子マテリア(株)製、厚み140μm、離解パルプのCSF630mL)に変更した以外は実施例1と同様にしてヒートシール紙を得た。
【0051】
[比較例2]
1層目のヒートシール層の塗工量を3g/m2、2層目のヒートシール層の塗工量を3g/m2に変更した以外は実施例1と同様にしてヒートシール紙を得た。
【0052】
[比較例3]
1層目のヒートシール層の塗工量を2g/m2、2層目のヒートシール層の塗工量を2g/m2に変更した以外は実施例1と同様にしてヒートシール紙を得た。
【0053】
[比較例4]
基材を、坪量120g/m2の晒クラフト紙(王子マテリア(株)製、厚み170μm、離解パルプのCSF630mL)に変更した以外は実施例1と同様にしてヒートシール紙を得た。
【0054】
[比較例5]
坪量120g/m2の未晒クラフト紙(王子マテリア(株)製、厚み170μm、離解パルプのCSF630mL)上に、押出ラミネーターによって低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製、ノバテックLD LC600A)をTダイ温度320℃、加工速度80m/minで、塗布量が19g/m2となるように押出ラミネートで積層しヒートシール紙を得た。
【0055】
[測定および評価]
<紙基材の坪量、厚み>
紙基材の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定した。また、紙基材の厚みは、JIS P 8118:2014に準拠して測定した。
【0056】
<紙基材の離解パルプのCSF>
紙基材の離解パルプのCSFは、紙基材をJIS P 8220-1:2012に準拠して離解し、得られた離解パルプについて、JIS P 8121-2:2012「パルプ-ろ水度試験方法-第2部:カナダ標準ろ水度法」に従って、CSFを測定した。
【0057】
<ヒートシール剥離強度の測定>
1組のヒートシール紙を、ヒートシール層が向き合うように重ね、ヒートシールテスター(テスター産業製、TP-701-B)を用いて、160℃、0.2MPa、1秒の条件でヒートシールした。続いて、JIS Z 0238:1998の記載に準拠してヒートシール剥離強度を測定した。具体的には、ヒートシールされた試験片を15mm幅にカットし、引張試験機を用いて、引張速度300mm/minでT字剥離し、記録された最大荷重をヒートシール剥離強度とした。
【0058】
<再離解性(再離解後のパルプ回収率)の評価>
絶乾質量30gのヒートシール紙を手で3~4cm角に破き、20℃の水道水に一晩浸漬した。ヒートシール紙の濃度を2.5%になるよう希釈後、TAPPI標準離解機(熊谷理機(株)製)を用いて3000rpmの回転数で20分間離解処理した。得られたパルプスラリーを6カット(スリット幅0.15mm)のスクリーンプレートをセットしたフラットスクリーン(熊谷理機(株)製)に供し、8.3L/minの水流中で精選処理した。スクリーンプレート上に残った未離解物を回収して105℃のオーブンで乾燥して重量を測定し、以下の計算式:
パルプ回収率(%)={試験に供したヒートシール紙の絶乾重量(g)-未離解物の絶乾重量(g)}/試験に供したヒートシール紙の絶乾重量×100
からパルプ回収率を算出した。
【0059】
<耐衝撃性の評価>
縦400mm×横760mmに切ったヒートシール紙を、縦400mm×横380mmになるようにヒートシール層面同士が向き合う形で2つ折りにし、内部に3kgの砂利を入れた状態でシール幅10mmのインパルスシーラー(富士インパルス(株)製、VG-400)でシールして、三方シール袋を5袋作製した。60cmの高さから「1:底角→2:ボトム→3:サイド→4:サイド→5:トップ→6:表面→7:裏面」の順で三方シール袋をコンクリート床へ落下させ、袋の破損状態を以下の基準で目視にて評価した。
A:上記1から7までを1セットとして、2セット落下させても袋は破損しない(5袋全てが2セットで破損しない)
B:上記1から7までを1セットとして、1セット以内に袋が破損することはないが、2セットで破損する袋がある(5袋中1袋以上が2セットで破損する)
C:上記1から7までを1セットとして、1セット以内に破損する袋がある(5袋中1袋以上4袋以下が1セット以内に破損する)
D:上記1から7までを1セットとして、5袋全てが1セット以内に袋が破損する
【0060】
【0061】
実施例1~6に示すように、水分散性樹脂バインダーを含有するヒートシール層を有し、紙基材が、坪量が110g/m2以上である未晒クラフト紙であり、ヒートシール層の塗工量が7g/m2以上である場合には、ヒートシール剥離強度が高く、また、包装袋とした場合に耐衝撃性に優れ、さらに、再離解後のパルプ回収率に優れたヒートシール紙が得られた。
一方、紙基材の坪量が110g/m2未満である比較例1では、包装袋とした場合に、十分なヒートシール剥離強度が得られず、また、耐衝撃性にも劣るものであった。
また、ヒートシール層の塗工量が7g/m2未満である比較例2(塗工量=6g/m2)および比較例3(塗工量=4g/m2)では、十分なヒートシール剥離強度が得られず、また、包装袋とした場合に、耐衝撃性に劣るものであった。
紙基材として未晒クラフト紙ではなく、晒クラフト紙を使用した比較例4では、坪量が110g/m2以上、ヒートシール層の塗工量が7g/m2以上であっても、十分なヒートシール剥離強度が得られず、また、包装袋とした場合の耐衝撃性に劣るものであった。
さらに、坪量が110g/m2以上の未晒クラフト紙に低密度ポリエチレン(LDPE)フィルムをラミネートした比較例5では、再離解後パルプの回収ができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、ヒートシール剥離強度に優れ、さらに、再離解後のパルプ回収率にも優れたヒートシール紙が得られ、さらに、該ヒートシール紙から得られた包装袋の耐衝撃性に優れるヒートシール紙が得られる。
本発明のヒートシール紙は、とくに、耐衝撃性が要求される各種の包装袋に好適に使用される。