(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】眼科用製品及び粘度低下抑制方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/27 20060101AFI20241008BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20241008BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20241008BHJP
A61K 31/07 20060101ALI20241008BHJP
A61K 31/135 20060101ALI20241008BHJP
A61K 31/14 20060101ALI20241008BHJP
A61K 31/17 20060101ALI20241008BHJP
A61K 31/185 20060101ALI20241008BHJP
A61K 31/355 20060101ALI20241008BHJP
A61K 31/4174 20060101ALI20241008BHJP
A61K 31/4415 20060101ALI20241008BHJP
A61K 31/4418 20060101ALI20241008BHJP
A61K 31/555 20060101ALI20241008BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20241008BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20241008BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20241008BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20241008BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20241008BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241008BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20241008BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20241008BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20241008BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
A61K31/27
A61K9/08
A61K31/05
A61K31/07
A61K31/135
A61K31/14
A61K31/17
A61K31/185
A61K31/355
A61K31/4174
A61K31/4415
A61K31/4418
A61K31/555
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/18
A61K47/20
A61K47/26
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/38
A61P27/02
(21)【出願番号】P 2023098849
(22)【出願日】2023-06-16
(62)【分割の表示】P 2021210334の分割
【原出願日】2017-06-27
【審査請求日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2016130614
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 隆
(72)【発明者】
【氏名】内藤 香菜
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-237638(JP,A)
【文献】国際公開第2011/001951(WO,A1)
【文献】特開2004-123634(JP,A)
【文献】特開2015-101582(JP,A)
【文献】特開2011-021002(JP,A)
【文献】国際公開第2011/150812(WO,A1)
【文献】特開2005-343893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 27/00-27/16
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ヒアルロン酸及びその塩から選ばれる1種以上、
(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、
(C)ビタミンA、ビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン及び清涼化剤から選ばれる1種以上の成分、及び
(D)下記(D-1)及び(D-2
)
(D-1)プロピレングリコール
(D-2)ネオスチグミンメチル硫酸
塩
を含有する眼科用組成物と、この眼科用組成物が充填された容器と、この容器を包装する包囲体とを有する眼科用製品であって、
(1)包囲体内への不活性ガス注入、(2)包囲体内への酸素吸収剤の同梱、(3)酸素吸収能を有する容器又は(4)酸素吸収能を有する包囲体のいずれかの手段を用いた眼科用製品。
【請求項2】
(A)成分の含有量が組成物中0 .02~1W/V%である、請求項
1記載の眼科用製品。
【請求項3】
(C)成分が、レチノールパルミチン酸エステル、酢酸d-α-トコフェロール、ジブ チルヒドロキシトルエン及びメントールから選ばれる1種以上である請求項1
又は2記載の眼科用製品。
【請求項4】
(A)ヒアルロン酸及びその塩から選ばれる1種以上、
(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、
(C)ビタミンA、ビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン及び清涼化剤から選ばれる1種以上の脂溶性成分を含有する眼科用組成物と、この眼科用組成物が充填された容器と、この容器を包装する包囲体とを有する眼科用製品において、
(1)包囲体内への不活性ガス注入、(2)包囲体内への酸素吸収剤の同梱、(3)酸素吸収能を有する容器又は(4)酸素吸収能を有する包囲体のいずれかの手段を用いると共に、
(D)下記(D-1)及び(D-2)
(D-1)プロピレングリコール
(D-2)ネオスチグミンメチル硫酸
塩
を配合することを特徴とする、上記眼科用組成物の粘度低下抑制方法。
【請求項5】
(A)ヒアルロン酸及びその塩から選ばれる1種以上、
(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、
(C)ビタミンA、ビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン及び清涼化剤から選ばれる1種以上の脂溶性成分を含有する眼科用組成物と、この眼科用組成物が充填された容器と、この容器を包装する包囲体とを有し、(1)包囲体内への不活性ガス注入、(2)包囲体内への酸素吸収剤の同梱、(3)酸素吸収能を有する容器又は(4)酸素吸収能を有する包囲体のいずれかの手段を用いた眼科用製品において、上記眼科用組成物に、
(D)下記(D-1)及び(D-2)
(D-1)プロピレングリコール
(D-2)ネオスチグミンメチル硫酸
塩
を配合することを特徴とする、上記眼科用組成物の粘度低下抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性高分子化合物の粘度低下が抑制された眼科用製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
眼科用組成物において、有効性の向上や清涼感の持続のために高分子化合物等の粘稠剤を配合し、眼表面での薬物滞留性を高める方法が知られている。有効成分の眼表面での滞留性の向上は、ビタミンA等の眼表面の角膜上皮細胞に作用する有効成分において、特に有益であると考えられる。また、清涼感を持続させるためには、メントール等の清涼化剤が用いられる。さらに、ビタミンAや、メントール等の清涼化成分は脂溶性成分であるため、これらの成分を水性点眼剤に配合するためには、界面活性剤も同時に配合されることが多い。
【0003】
セルロース系高分子化合物の粘度低下抑制のために、ゴマ油等の植物油を配合する方法(特許文献1:特開2005-206598号公報)や、ヒマシ油を配合する方法(特許文献2:特開2005-206599号公報)、マンニトールや、グリセリンを添加する方法(特許文献3:特開平11-71478号公報)が知られている。しかしながら、高分子化合物配合の眼科用組成物の粘度低下は、様々な配合成分による影響を受けて生じるものであり、ビタミンAやメントール等の脂溶性成分の配合時に用いられる界面活性剤を添加した際には、粘度低下が特に生じやすく、上記のような方法では粘度低下抑制効果が十分ではなかった。
【0004】
眼科用組成物の粘度は、薬剤の有効性や清涼化剤の持続性向上に大きく寄与すると共に、粘度から生じる使用感にも大きく影響し、例えば、高すぎる粘度は粘つきやべたつき、使用後の視界のぼやけ感等を招く可能性がある。製剤の設計粘度を極力変化させることなく維持することは、眼科用組成物の品質維持において、有効性の面からも使用感の面からも非常に重要であり、そのような高い粘度安定化方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-206598号公報
【文献】特開2005-206599号公報
【文献】特開平11-71478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ビタミンAのような脂溶性成分、及び界面活性剤を配合した高分子化合物配合の眼科用組成物において、高分子化合物を配合すると、特に粘度低下が生じやすく、界面活性剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを用いた場合に、特に顕著であることを知見した。このような粘度低下を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、高分子化合物、界面活性剤及び脂溶性成分を含有する眼科用組成物において、特定の成分を配合し、特定の包装手段を用いることで、高い粘度低下抑制効果を発揮することを見出した。また、本発明によって提供される眼科用組成物は、点眼時に高い滞留性を発揮し、うるおい感の持続効果に優れている。
【0008】
従って、本発明は下記を提供する。
[1].(A)水溶性高分子化合物、
(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、
(C)ビタミンA、ビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン及び清涼化剤から選ばれる1種以上の成分、及び
(D)下記(D-1)及び(D-2)からなる群から選ばれる1種以上
(D-1)トロメタモール、プロピレングリコール
(D-2)エチレンジアミン酢酸誘導体、その塩、塩酸テトラヒドロゾリン、イプシロンアミノカプロン酸、アラントイン、グリチルリチン酸、その塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ピリドキシン塩酸塩、パンテノール、コンドロイチン硫酸、その塩、ネオスチグミンメチル硫酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩、シアノコバラミン、塩化ナトリウム、アスパラギン酸、その塩、アミノエチルスルホン酸
を含有する眼科用組成物と、この眼科用組成物が充填された容器と、この容器を包装する包囲体とを有する眼科用製品であって、
(1)包囲体内への不活性ガス注入、(2)包囲体内への酸素吸収剤の同梱、(3)酸素吸収能を有する容器又は(4)酸素吸収能を有する包囲体のいずれかの手段を用いた眼科用製品。
[2].(D)成分が、(D-1)群から1種以上及び(D-2)群から1種以上である[1]記載の眼科用製品。
[3].(A)成分が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ヒアルロン酸及びその塩から選ばれる1種以上である[1]又は[2]記載の眼科用製品。
[4].(C)成分が、レチノールパルミチン酸エステル、酢酸d-α-トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン及びメントールから選ばれる1種以上である[1]~[3]のいずれかに記載の眼科用製品。
[5].(A)水溶性高分子化合物、
(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、
(C)ビタミンA、ビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン及び清涼化剤から選ばれる1種以上の脂溶性成分を含有する眼科用組成物と、この眼科用組成物が充填された容器と、この容器を包装する包囲体とを有する眼科用製品において、
(1)包囲体内への不活性ガス注入、(2)包囲体内への酸素吸収剤の同梱、(3)酸素吸収能を有する容器又は(4)酸素吸収能を有する包囲体のいずれかの手段を用いると共に、
(D)下記(D-1)及び(D-2)
(D-1)トロメタモール、プロピレングリコール
(D-2)エチレンジアミン酢酸誘導体、その塩、塩酸テトラヒドロゾリン、イプシロンアミノカプロン酸、アラントイン、グリチルリチン酸、その塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ピリドキシン塩酸塩、パンテノール、コンドロイチン硫酸、その塩、ネオスチグミンメチル硫酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩、シアノコバラミン、塩化ナトリウム、アスパラギン酸又はその塩、アミノエチルスルホン酸からなる群から選ばれる1種以上を配合することを特徴とする、上記眼科用組成物の粘度低下抑制方法。
[6].(A)水溶性高分子化合物、
(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、
(C)ビタミンA、ビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン及び清涼化剤から選ばれる1種以上の脂溶性成分を含有する眼科用組成物と、この眼科用組成物が充填された容器と、この容器を包装する包囲体とを有し、(1)包囲体内への不活性ガス注入、(2)包囲体内への酸素吸収剤の同梱、(3)酸素吸収能を有する容器又は(4)酸素吸収能を有する包囲体のいずれかの手段を用いた眼科用製品において、上記眼科用組成物に、
(D)下記(D-1)及び(D-2)
(D-1)トロメタモール、プロピレングリコール
(D-2)エチレンジアミン酢酸誘導体、その塩、塩酸テトラヒドロゾリン、イプシロンアミノカプロン酸、アラントイン、グリチルリチン酸、その塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ピリドキシン塩酸塩、パンテノール、コンドロイチン硫酸、その塩、ネオスチグミンメチル硫酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩、シアノコバラミン、塩化ナトリウム、アスパラギン酸又はその塩、アミノエチルスルホン酸
からなる群から選ばれる1種以上を配合することを特徴とする、上記眼科用組成物の粘度低下抑制方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高分子化合物、界面活性剤及び脂溶性成分を含有する組成物において、高い粘度低下抑制効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
[(A)成分]
水溶性高分子化合物としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系高分子化合物、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ポリビニルアルコール等のポリビニル系高分子化合物、ヒアルロン酸及びその塩、カルボキシビニルポリマー等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。このような成分を配合することで、組成物に粘度を付与し、配合された有効成分の眼表面での滞留性を向上し、眼表面に滞留することにより眼表面の乾燥を防止することができる。中でも、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ヒアルロン酸及びその塩が好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロースがより好ましい。
【0011】
水溶性高分子化合物の水溶性とは、水溶液に溶解可能な高分子化合物であり、その重量平均分子量は5,000~5,000,000が好ましく、10,000~2,500,000がより好ましい。なお、重量平均分子量の測定はGPCカラムを用いた液体クロマトグラフィーによる測定で求めることができる。
【0012】
(A)成分の配合量は、組成物中0.01~10%(W/V%(質量/容積%,g/100mL以下同様))が好ましく、0.05~3%がより好ましい。また、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを配合する場合は、組成物中0.05~5%が好ましく、0.1~3%がより好ましく、0.1~0.5%がさらに好ましい。メチルセルロースを配合する場合は、組成物中0.05~5%が好ましく、0.1~3%がより好ましく、0.1~1%がさらに好ましい。ヒドロキシエチルセルロースを配合する場合は、組成物中0.05~5%が好ましく、0.1~3%がより好ましく、0.1~1%がさらに好ましい。ポリビニルピロリドンを配合する場合は、組成物中0.01~10%が好ましく、0.05~5%がより好ましく、0.05~3%がさらに好ましい。カルボキシビニルポリマーを配合する場合は、組成物中0.01~5%が好ましく、0.05~3%がより好ましく、0.1~1%がさらに好ましい。ヒアルロン酸及びその塩を配合する場合は、組成物中0.01~3%が好ましく、0.01~1%がより好ましく、0.02~1%がさらに好ましい。上記以上とすることで粘度の付与効果が得られる。また、多すぎると粘度が高くなりすぎ、眼表面での流動性が悪く、ぼやけ、べたつき等の不具合を生じるおそれがある。
【0013】
[(B)成分]
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしては、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール、ポリオキシエチレン(120)ポリオキシプロピレン(40)グリコール、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコールが挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコールが好ましい。
【0014】
(B)成分の配合量は、組成物中0.1~10%が好ましく、0.1~5%がより好ましく、0.4~3%がさらに好ましい。上記以上とすることで(C)成分等を安定に配合することができる。上限以下とすることで、(B)成分による刺激感のおそれがない。
【0015】
[(C)成分]
ビタミンA、ビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン及び清涼化剤から選ばれる1種以上の成分であり、この脂溶性成分を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。ビタミンAには角膜創傷治癒効果等があり、ビタミンAそれ自体の他に、ビタミンA油等のビタミンA含有混合物、ビタミンA脂肪酸エステル等のビタミンA誘導体等が挙げられる。具体的には、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステル、レチノール、レチノイン酸、レチノイド等が挙げられる。中でも、レチノールパルミチン酸エステルが好ましい。
【0016】
ビタミンAを配合する場合、その配合量は、眼科用組成物100mL中5,000~500,000国際単位(IU)が好ましく、10,000~100,000国際単位(IU)がより好ましく、10,000~75,000国際単位(IU)がさらに好ましい。下限値以上でビタミンAによる角膜創傷治癒効果が期待でき、上限値以下で、ビタミンAの安定性をより得ることができる。
【0017】
ビタミンEとしては、酢酸トコフェロール(酢酸dl-α-トコフェロール、酢酸d-α-トコフェロール(ビタミンE))、コハク酸トコフェロール及びこれらの誘導体等が挙げられる。中でも、酢酸d-α-トコフェロールが好ましい。
【0018】
ビタミンEを配合する場合、その配合量は、眼科用組成物中0.005~0.5%が好ましく、0.01~0.1%がより好ましい。上記範囲で効果と安定性をより図ることができる。
【0019】
ジブチルヒドロキシトルエンを配合する場合、その配合量は、眼科用組成物中0.001~0.05%が好ましく、0.003~0.01%がより好ましい。上記範囲で効果と安定性をより図ることができる。
【0020】
清涼化剤としては、メントール、カンフル、クールミント、ゲラニオール、ハッカ水、ボルネオール、ユーカリ油、ウイキョウ油、ローズ油、ベルガモット油、ペパーミント油、スペアミント油、リナロール、アネトール、オイゲノール、シネオール、N-エチル-p-メンタン-カルボキシアミド等が挙げられる。中でも、メントールが好ましい。
【0021】
清涼化剤を配合する場合、その配合量は、眼科用組成物中0.001~0.5%が好ましく、0.005~0.3%がより好ましい。上記範囲で効果と点眼時の良好な清涼感を得ることができる。
【0022】
[(D)成分]
(D)下記(D-1)及び(D-2)からなる群から選ばれる1種以上である。(D)成分の配合により、上記(A),(B)成分を併用することによる粘度低下を抑制することができる。
(D-1)トロメタモール、プロピレングリコール
(D-2)エチレンジアミン酢酸誘導体又はその塩、塩酸テトラヒドロゾリン、イプシロンアミノカプロン酸、アラントイン、グリチルリチン酸又はその塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ピリドキシン塩酸塩、パンテノール、コンドロイチン硫酸又はその塩、ネオスチグミンメチル硫酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩、シアノコバラミン、塩化ナトリウム、アスパラギン酸又はその塩、アミノエチルスルホン酸
【0023】
エチレンジアミン酢酸誘導体又はその塩としては、例えば、エデト酸(エチレンジアミン四酢酸)、エチレンジアミン二酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸、エデト酸ナトリウム(エチレンジアミン四酢酸ナトリウム)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、これらの水和物等が挙げられる。グリチルリチン酸又はその塩としては、例えば、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸二アンモニウム等が挙げられる。コンドロイチン硫酸又はその塩としては、例えば、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン多硫酸エステル、コンドロイチン硫酸エステルナトリウム等が挙げられる。アスパラギン酸又はその塩としては、例えば、L-アスパラギン酸ナトリウム、L-アスパラギン酸カリウム、L-アスパラギン酸マグネシウム、L-アスパラギン酸カルシウム、L-アスパラギン酸マグネシウム・カリウム(L-アスパラギン酸マグネシウムとL-アスパラギン酸カリウムとの等量混合物)等が挙げられる。
【0024】
上記は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができ、中でも、トロメタモール、プロピレングリコール、アラントイン、パンテノールが好ましい。また、2種以上を組み合わせる場合は、(D-1)群から1種以上及び(D-2)群から1種以上であることが好ましい。
【0025】
(D)成分の配合量は、眼科用組成物中0.001~10%が好ましく、0.01~5%がより好ましく、0.01~3%がさらに好ましい。この範囲とすることで、上記(A),(B)成分を併用することによる粘度低下をより抑制することができる。
【0026】
各成分の眼科用組成物中のより好ましい配合量を下記に示す。トロメタモールは、0.01~10%、さらに好ましくは0.1~5%である。プロピレングリコールは、0.01~10%、さらに好ましくは0.1~5%である。エチレンジアミン酢酸誘導体又はその塩は、0.001~2%であり、さらに好ましくは0.01~1.5%である。塩酸テトラヒドロゾリンは、0.001~2%、さらに好ましくは0.01~1%である。イプシロンアミノカプロン酸は、0.01~10%であり、さらに好ましくは0.1~5%である。アラントインは、0.001~5%であり、さらに好ましくは0.01~1%である。グリチルリチン酸又はその塩は、0.001~5%であり、さらに好ましくは0.01~1%である。クロルフェニラミンマレイン酸塩は、0.001~1%であり、さらに好ましくは0.003~0.1%である。ピリドキシン塩酸塩は、0.001~2%であり、さらに好ましくは0.01~1%である。パンテノールは、0.001~2%であり、さらに好ましくは0.01~1%である。コンドロイチン硫酸又はその塩は、0.001~5%であり、さらに好ましくは0.01~2%である。ネオスチグミンメチル硫酸塩は、0.0001~0.05%であり、さらに好ましくは0.001~0.01%である。ジフェンヒドラミン塩酸塩は、0.001~0.5%であり、さらに好ましくは0.01~0.1%である。シアノコバラミンは、0.001~0.5%であり、さらに好ましくは0.005~0.05%である。塩化ナトリウムは、0.01~5%であり、さらに好ましくは0.05~1%である。アスパラギン酸又はその塩は、0.01~10%であり、さらに好ましくは0.05~5%である。アミノエチルスルホン酸は、0.01~5%であり、さらに好ましくは0.05~3%である。
【0027】
本発明眼科用組成物には、眼科用組成物に用いられる各種成分を、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。好ましい配合成分としては、薬物、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、抗酸化剤、防腐剤等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができ、適量を配合することができる。
【0028】
薬物としては、例えば、(D)成分以外の充血除去成分、眼筋調節薬成分、抗炎症薬成分又は収斂薬成分、抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分、ビタミン類、アミノ酸類、抗菌薬成分又は殺菌薬成分、糖類、(A)成分以外の多糖類又はその誘導体、多価アルコール、局所麻酔薬成分、ステロイド成分、緑内障治療成分、白内障治療成分、散瞳成分等が挙げられる。具体例を下記に示す。
【0029】
充血除去成分:α-アドレナリン作動薬、例えば、イミダゾリン誘導体(ナファゾリン、テトラヒドロゾリン等)、β-フェニルエチルアミン誘導体(フェニレフリン、エピネフリン、エフェドリン、メチルエフェドリン等)、及びそれらの薬学上又は生理的に許容される塩(例えば、ナファゾリン塩酸塩、ナファゾリン硝酸塩、硝酸テトラヒドロゾリン、フェニレフリン塩酸塩、塩酸エピネフリン、エフェドリン塩酸塩、メチルエフェドリン塩酸塩等の無機酸塩;酒石酸水素エピネフリン等の有機酸塩等)等が挙げられる。
【0030】
眼筋調節薬成分:アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、トロピカミド、アトロピン硫酸塩等が挙げられる。
【0031】
抗炎症薬成分又は収斂薬成分:プラノプロフェン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、インドメタシン、ジクロフェナク、ジクロフェナクナトリウム、ピロキシカム、メロキシカム、アスピリン、メフェナム酸、インドメタシンファルネシル、アセメタシン、イブプロフェン、チアプロフェン酸、ロキソプロフェンナトリウム、塩酸チアラミド、亜鉛塩(例えば、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、乳酸亜鉛、等)、リゾチーム、リゾチーム塩酸塩、サリチル酸メチル、アズレンスルホン酸ナトリウム、ベルベリン塩化物、ベルベリン硫酸塩等が挙げられる。
【0032】
抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分:例えば、ケトチフェン、アシタザノラスト、レボカバスチン、クロモグリク酸、トラニラスト、イブジラスト、アンレキサノクス、ペミロラスト及びそれらの薬学上又は生理的に許容される塩(ケトチフェンフマル酸塩、クロモグリク酸ナトリウム等)等が挙げられる。
【0033】
ビタミン類:例えば、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム(活性型ビタミンB2)、アスコルビン酸等が挙げられる。
【0034】
アミノ酸類:例えば、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、トレオニン、アラニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、グリシン、セリン、プロリン、チロシン、システイン、ヒスチジン、オルニチン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、グリシルグリシン、γ-アミノ酪酸、グルタミン酸又はその塩(例えば塩酸システイン等)等が挙げられる。
【0035】
抗菌薬成分又は殺菌薬成分:スルホンアミド類(例えば、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルフイソミジン及び薬理学的に許容される塩(スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソミジンナトリウム等)等)、アクリノール、アルキルポリアミノエチルグリシン、ニューキノロン剤(ロメフロキサシン、レボフロキサシン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、シプロフロキサシン塩酸塩等)、ベルベリン又はその塩(例えば、ベルベリン塩化物、ベルベリン硫酸塩等)、βラクタム系抗菌薬(スルベニシリン、セフメノキシム等)、アミノグリコシド系抗菌薬(カナマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、シソマイシン、ジベカシン、ベカナマイシン、ミクロノマイシン等)、テトラサイクリン系抗菌薬(オキシテトラサイクリン等)、マクロライド系抗菌薬(エリスロマイシン等)、クロラムフェニコール系抗菌薬(クロラムフェニコール等)、ポリペプチド系抗菌薬(コリスチン等)等。また、抗ウイルス薬(イドクスウリジン、アシクロビル、アデニンアラビノシド、ガンシクロビル、ホスカルネット、バラシクロビル、トリフルオロチミジン、シドフォビル、カルボサイクリック・オキセタノシンG等)、抗真菌薬(ピマリシン、フルコナゾール、イトラコナゾール、ミコナゾール、フルシトシン、アムホテリシンB等)等が挙げられる。
【0036】
糖類としては、ラクツロース、ラフィノース、プルラン、グルコース、マルトース、トレハロース、スクロース、シクロデキストリン、キシリトール、マンニトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0037】
多糖類又はその誘導体:アラビアゴム、カラヤガム、キサンタンガム、キャロブガム、グアーガム、グアヤク脂、クインスシード、ダンマルガム、トラガント、ベンゾインゴム、ローカストビーンガム、カゼイン、寒天、アルギン酸、デキストリン、デキストラン、カラギーナン、ゼラチン、コラーゲン、ペクチン、デンプン、ポリガラクツロン酸(アルギン酸)、キチン及びその誘導体、キトサン及びその誘導体、エラスチン等が挙げられる。
【0038】
多価アルコール:グリセリン、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0039】
局所麻酔薬成分:クロロブタノール、リドカイン、オキシブプロカイン、ジプカイン、プロカイン、アミノ安息香酸エチル、メプリルカイン、メピバカイン、ブピバカイン、コカイン及びそれらの塩(リドカイン塩酸塩、オキシブプロカイン塩酸塩等)等が挙げられる。
【0040】
ステロイド成分:ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、コルチゾール、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、パラメタゾン、ベタメタゾン及びそれらの塩等が挙げられる。
【0041】
緑内障治療成分:ジスチグミン臭化物、チモロールマレイン酸塩、カルテオロール塩酸塩、ベタキソロール塩酸塩、ラタノプロスト、イソプロピルウノプロストン、ジピベフリン塩酸塩、アプラクロニジン塩酸塩、ピロカルピン塩酸塩、カルバコール、ドルゾラミド塩酸塩、アセタゾラミド、メタゾラミド等が挙げられる。
【0042】
白内障治療成分:ピレノキシン、グルタチオン、唾液腺ホルモン、チオプロニン、Dihydro azapentacene disulfonate及びそれらの塩(例えばSodium5,12-dihydro azapentacene disulfonate等)等が挙げられる。
【0043】
散瞳成分:シクロペントラート塩酸塩、トロピカミド等が挙げられる。
【0044】
薬物を配合する場合、その配合量は、各薬物の有効な適性量を選択することができるが、眼への刺激性、組成物の安定性等の点から、眼科用組成物中0.001~5%の範囲であることが好ましい。
【0045】
緩衝剤としては、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂、リン酸、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、氷酢酸、炭酸水素ナトリウムを使用することが好ましい。緩衝剤を配合する場合、その配合量は組成物中0.003~4%の範囲であることが好ましい。
【0046】
安定化剤としては、例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン等が挙げられる。安定化剤を配合する場合、その配合量は組成物中0.003~2%の範囲であることが好ましい。
【0047】
等張化剤としては、例えば塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等が挙げられる。等張化剤を配合する場合、その配合量は組成物中0.001~3%の範囲であることが好ましい。
【0048】
抗酸化剤としては、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ヒドロキノン、没食子酸プロピル、亜硫酸水素ナトリウム等が挙げられる。抗酸化剤を配合する場合、その配合量は組成物中0.001~1%の範囲であることが好ましい。
【0049】
防腐剤としては、例えば塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、クロロブタノール、パラオキシ安香酸エステル等のパラベン類、塩化ポリドロニウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、ポリヘキサメチレンビグアニド等が挙げられる。防腐剤を配合する場合、その配合量は組成物中0.0001~0.5%の範囲であることが好ましく、0.001~0.5%の範囲がより好ましい。
【0050】
本発明の眼科用組成物は、残部を水とし、公知の製造方法で製造することができる。例えば上記各成分を滅菌精製水、イオン交換水等の水、又は水との混合溶媒等に溶解させて得ることができる。好ましくは、(C)成分等の脂溶性成分を(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールに溶解した後、他の水溶液成分を溶解した高温(70~95℃)の水溶液に投入した後、pHを調整し、さらに必要に応じて浸透圧等をpH調整剤、等張化剤により適宜調整することによって得ることができる。
【0051】
pH調節剤としては、塩酸、硫酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。本発明の眼科用組成物のpH(20℃)は、3.5~8.0が好ましく、より好ましくは4.5~7.7、さらに好ましくは5.5~7.5である。pHが低すぎても、高すぎても、刺激感が強くなる可能性がある。なお、pHの測定は、20℃でpH浸透圧計(HSMO-1、東亜ディーケーケー(株))を用いて行う。pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸等が好ましい。
【0052】
本発明の眼科用組成物は液体が好ましく、20℃における粘度は、1~400mPa・sが好ましく、1~100mPa・sがより好ましく、1~60mPa・sがさらに好ましく、1~50mPa・s、1~20mPa・sが特に好ましい。なお、粘度の測定方法はB型粘度計を用いて測定する。
【0053】
[眼科用製品]
本発明は、眼科用組成物と、この眼科用組成物が充填された容器と、この容器を包装する包囲体とを有する眼科用製品であって、眼科用組成物中の酸素濃度が低減された状態で保存される手段を用いて、上記(A),(B)成分を併用することによる粘度低下をより抑制することができる。手段としては、(1)包囲体内への不活性ガス注入、(2)包囲体内への酸素吸収剤の同梱、(3)酸素吸収能を有する容器又は(4)酸素吸収能を有する包囲体等が挙げられる。このような手段により、上記(A),(B)成分を併用することによる粘度低下をより抑制することができる。なお、包囲体は容器を密封できるものが好ましい。
【0054】
容器としては、プラスチック製容器が好ましく、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、塩化ビニル等の材質またはこれら材質の複合体からなるもの等を用いることができる。特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。容器の酸素透過係数は、10cc/(m2・24hr・atm)以上が好ましい。
【0055】
包囲体としては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ナイロン、セロファン、ポリ塩化ビニルフィルム、アルミ箔、アルミニウムを蒸着したポリビニルアルコール系・ポリアミド系フィルム、ポリ塩化ビニリデンをコートしたフィルムまたはラミネートフィルム等、これらの複合、多層フィルム等が挙げられる。包囲体の酸素透過係数は、10cc/(m2・24hr・atm)以下(即ち、0~10cc/(m2・24hr・atm))の酸素非透過性包囲体が好ましい。
【0056】
(1)包囲体内への不活性ガス注入
不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等が挙げられる。中でも窒素ガスが好ましい。不活性ガスの濃度は、包囲体とプラスチック製容器との間に形成された空間容積中、好ましくは50容積%以上、より好ましくは80容積%以上、さらに好ましくは90容積%以上である。上限は特に限定されず、100容積%以下である。このような濃度にするためには、包囲体とプラスチック製容器との間に形成された空間を、不活性ガスで置換すればよい。
【0057】
(2)包囲体内への酸素吸収剤の同梱
具体的には三菱ガス化学(株)製のエージレス(登録商標)(FX、SP、SS、SPE、ZP、Z-PT、Z-PKC、GLS、GL-M、Z-20PKヤ)、ファーマキープ、(株)常盤産業製のバイタロン、(株)博洋製のサンソレス、パウダーテック(株)製のワンダーキープ、アイリス・ファインプロダクツ(株)製のサンソカット等を用いることができる。
【0058】
(3)酸素吸収能を有する容器
東洋製罐(株)製のオキシブロック、三菱ガス化学(株)製のオキシヴァニッシュ等を用いることができる。
【0059】
(4)酸素吸収能を有する包囲体
共同印刷(株)製のオキシキャッチ(登録商標)ICA、シールドエアー社製のCryovac(登録商標)OSフィルム、スタープラスチック工業(株)製のハイスターO2、三菱ガス化学(株)製のエージレスオーマック、東洋製罐(株)製のオキシデック等を用いることができる。
【0060】
上記手段は適宜組み合わせることができ、(2)が好ましく、(1)+(2)、(1)+(4)がより好ましい。
【0061】
本発明は、
(A)水溶性高分子化合物、
(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、
(C)ビタミンA、ビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン及び清涼化剤から選ばれる1種以上の脂溶性成分を含有する眼科用組成物と、この眼科用組成物が充填された容器と、この容器を包装する包囲体とを有する眼科用製品において、
(1)包囲体内への不活性ガス注入、(2)包囲体内への酸素吸収剤の同梱、(3)酸素吸収能を有する容器又は(4)酸素吸収能を有する包囲体のいずれかの手段を用いると共に、
(D)下記(D-1)及び(D-2)
(D-1)トロメタモール、プロピレングリコール
(D-2)エチレンジアミン酢酸誘導体、その塩、塩酸テトラヒドロゾリン、イプシロンアミノカプロン酸、アラントイン、グリチルリチン酸、その塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ピリドキシン塩酸塩、パンテノール、コンドロイチン硫酸、その塩、ネオスチグミンメチル硫酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩、シアノコバラミン、塩化ナトリウム、アスパラギン酸又はその塩、アミノエチルスルホン酸からなる群から選ばれる1種以上を配合することを特徴とする、上記眼科用組成物の粘度低下抑制方法を提供する。好適なもの、量等は上記と同様である。
【0062】
さらに、本発明は、
(A)水溶性高分子化合物、
(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、
(C)ビタミンA、ビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン及び清涼化剤から選ばれる1種以上の脂溶性成分を含有する眼科用組成物と、この眼科用組成物が充填された容器と、この容器を包装する包囲体とを有し、(1)包囲体内への不活性ガス注入、(2)包囲体内への酸素吸収剤の同梱、(3)酸素吸収能を有する容器又は(4)酸素吸収能を有する包囲体のいずれかの手段を用いた眼科用製品において、上記眼科用組成物に、
(D)下記(D-1)及び(D-2)
(D-1)トロメタモール、プロピレングリコール
(D-2)エチレンジアミン酢酸誘導体又はその塩、塩酸テトラヒドロゾリン、イプシロンアミノカプロン酸、アラントイン、グリチルリチン酸又はその塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ピリドキシン塩酸塩、パンテノール、コンドロイチン硫酸又はその塩、ネオスチグミンメチル硫酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩、シアノコバラミン、塩化ナトリウム、アスパラギン酸又はその塩、アミノエチルスルホン酸からなる群から選ばれる1種以上を配合することを特徴とする、眼科用組成物の粘度低下抑制方法を提供する。好適なもの、量等は上記と同様である。
【実施例】
【0063】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0064】
[実施例、比較例]
下記表に示す組成の眼科用組成物を、脂溶性成分をポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールに溶解した後、他の水溶液成分を溶解した高温(70~95℃)の水溶液に投入することによって下記表に示す組成の眼科用組成物を製造した。得られた眼科用組成物をポリエチレンテレフタレート製の点眼剤容器に充填した後、酸素吸収剤(エージレス:Z-20PKヤ 三菱ガス化学株式会社製)を同梱したフィルム包装を施した。保存前の粘度(20℃)をB型粘度計(デジタル粘度計DV2T、英弘精機株式会社製)にて粘度を測定し、50℃・75%RH環境下で2ヶ月保存した。保存後、点眼剤を常温(20℃)に戻し、保存前と同様に測定した。得られた粘度から下記式に基づき、各実施例の粘度維持率(%)を求め、比較例1に対する粘度維持率増強効果(%)を算出した。
粘度維持率(%)=保存後の粘度/保存前の粘度×100
粘度維持率増強効果(%)=[各実施例の粘度維持率(%)/各表に記載された比較例の粘度維持率(%)-1]×100
なお、「各表に記載された比較例」とは、各実施例に対応する(D)成分を含まない比較例をいう。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
表14,15に記載の眼科用製品を、上記実施例と同様の方法で製造、充填、保存した結果、いずれも粘度低下が抑制されていた。
【0081】
上記実施例を、フィルム包装と容器との間に形成された空間容積中、60容積%を窒素ガスで置換したもの、フィルム包装を、三菱ガス化学(株)製のエージレスオーマックにしたものも、組成物の粘度安定性に優れていた。このような効果を有するこれらの眼科用製品は、組成物の粘度安定性に優れ、有効成分や清涼化剤等の眼表面での滞留効果を維持することができる。
【0082】
上記結果から明らかであるように、上記眼科用製品において、(A),(B)成分配合による眼科用組成物の粘度低下を、上記手段及び(D)成分の添加、又は(D)成分の添加により抑制し、(C)成分の有効成分や清涼化剤等の眼表面での滞留効果を維持することができる。
【0083】
上記例で使用した原料を下記に示す。なお、特に明記がない限り、表中の各成分の量は純分換算量である。
ヒドロキシプロピルメチルセルロース:ヒプロメロース(60SH-4000)、メトローズ60SH-4000、日局、信越化学工業(株)、重量平均分子量30万(g/mol)
ポリビニルピロリドン:コリドン90F、日局、BASF(株)、重量平均分子量100万(g/mol)
ヒドロキシエチルセルロース:HEC CF-V、薬添規、住友精化(株)、重量平均分子量90万(g/mol)
メチルセルロース:メトローズSM-400、日局、信越化学工業(株)
ヒアルロン酸ナトリウム:バイオヒアルロン酸ナトリウム、資生堂
カルボキシビニルポリマー:Carbopol(登録商標)971PNF、薬添規、ルーブリゾール社
ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール:ユニルーブ70DP-950B、薬添規、日油(株)又はLutrol F127,薬添規、BASF(株)
レチノールパルミチン酸エステル:日局品、(レチノールパルミチン酸エステル,DSMニュートリション ジャパン(株))
酢酸d-α-トコフェロール:局外規品、(理研Eアセテートα,理研ビタミン(株))
ジブチルヒドロキシトルエン:薬添規品、(ジブチルヒドロキシトルエン,和光純薬工業(株))
(D)成分は、公定書(日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格等)規格に適合した各種原料を使用した。