(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】信号情報提供装置、信号情報提供方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
G08G1/09 D
(21)【出願番号】P 2023109765
(22)【出願日】2023-07-04
(62)【分割の表示】P 2022513032の分割
【原出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】須藤 弘康
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-148284(JP,A)
【文献】特開2010-009235(JP,A)
【文献】特開2008-149786(JP,A)
【文献】特開2012-059139(JP,A)
【文献】特開2017-182311(JP,A)
【文献】特開2016-085651(JP,A)
【文献】特開2008-203913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
灯器の表示方向に存在する車両を検出可能なセンサからセンサデータを取得する情報取得部と、
前記センサデータに基づいて、前記センサにより検出された車両の存在により前記灯器の表示状態を視認できない車両が存在するか否かを判定する判定部と、
前記灯器の表示状態を視認できない車両が存在すると判定した場合、前記車両に対して、前記灯器の表示状態を示す信号情報を送信する情報提供部と、
を備え
、
前記情報提供部は、前記灯器の表示状態が切り替わるタイミングを送信する、
信号情報提供装置。
【請求項2】
灯器の表示方向に存在する車両を検出可能なセンサからセンサデータを取得する情報取得部と、
前記センサデータに基づいて、前記センサにより検出された車両の存在により前記灯器の表示状態を視認できない車両が存在するか否かを判定する判定部と、
前記灯器の表示状態を視認できない車両が存在すると判定した場合、前記車両に対して、前記灯器の表示状態を示す信号情報を送信する情報提供部と、
を備え
、
前記情報提供部は、前記車両の進行方向に存在する1つ先の信号機の灯器の表示状態をさらに送信する
信号情報提供装置。
【請求項3】
灯器の表示方向に存在する車両を検出可能なセンサからセンサデータを取得する情報取得部と、
前記センサデータに基づいて、前記センサにより検出された車両の存在により前記灯器の表示状態を視認できない車両が存在するか否かを判定する判定部と、
前記灯器の表示状態を認識できない車両が存在すると判定した場合、所定の範囲に存在する車両の情報をネットワークを介して取得し、前記灯器の表示状態を示す信号情報を送信する対象の車両の送信先を特定する送信先特定部と、
前記灯器の表示状態を視認できない車両が存在すると判定した場合、
特定した前記
対象の車両に対して、前記灯器の表示状態を示す
前記信号情報を送信する情報提供部と、
を備えた信号情報提供装置。
【請求項4】
前記情報提供部は、移動体通信網、路車間インフラ又は車車間通信を介して、前記車両に情報を送信する請求項1ないし請求項
3のいずれか一項に記載の信号情報提供装置。
【請求項5】
灯器の表示方向に存在する車両を検出可能なセンサからセンサデータを取得し、
前記センサデータに基づいて、前記センサにより検出された車両の存在により前記灯器の表示状態を視認できない車両が存在するか否かを判定し、
前記灯器の表示状態を視認できない車両が存在すると判定した場合、前記車両に対して、前記灯器の表示状態を示す信号情報を送信する、
前記送信する処理では、前記灯器の表示状態が切り替わるタイミングを送信する
信号情報提供方法。
【請求項6】
灯器の表示方向に存在する車両を検出可能なセンサからセンサデータを取得し、
前記センサデータに基づいて、前記センサにより検出された車両の存在により前記灯器の表示状態を視認できない車両が存在するか否かを判定し、
前記灯器の表示状態を視認できない車両が存在すると判定した場合、前記車両に対して、前記灯器の表示状態を示す信号情報を送信
し、
前記送信する処理では、前記車両の進行方向に存在する1つ先の信号機の灯器の表示状態をさらに送信する
信号情報提供方法。
【請求項7】
灯器の表示方向に存在する車両を検出可能なセンサからセンサデータを取得し、
前記センサデータに基づいて、前記センサにより検出された車両の存在により前記灯器の表示状態を視認できない車両が存在するか否かを判定し、
前記灯器の表示状態を認識できない車両が存在すると判定した場合、所定の範囲に存在する車両の情報をネットワークを介して取得し、前記灯器の表示状態を示す信号情報を送信する対象の車両の送信先を特定し、
前記灯器の表示状態を視認できない車両が存在すると判定した場合、
特定した前記
対象の車両に対して、前記灯器の表示状態を示す
前記信号情報を送信する、
信号情報提供方法。
【請求項8】
コンピュータに、
灯器の表示方向に存在する車両を検出可能なセンサからセンサデータを取得する処理と、
前記センサデータに基づいて、前記センサにより検出された車両の存在により前記灯器の表示状態を視認できない車両が存在するか否かを判定する処理と、
前記灯器の表示状態を視認できない車両が存在すると判定した場合、前記車両に対して、前記灯器の表示状態を示す信号情報を送信する処理と、
を実行させ
、
前記送信する処理では、前記灯器の表示状態が切り替わるタイミングを送信する
プログラム。
【請求項9】
コンピュータに、
灯器の表示方向に存在する車両を検出可能なセンサからセンサデータを取得する処理と、
前記センサデータに基づいて、前記センサにより検出された車両の存在により前記灯器の表示状態を視認できない車両が存在するか否かを判定する処理と、
前記灯器の表示状態を視認できない車両が存在すると判定した場合、前記車両に対して、前記灯器の表示状態を示す信号情報を送信する処理と、
を実行させ
、
前記送信する処理では、前記車両の進行方向に存在する1つ先の信号機の灯器の表示状態をさらに送信する
プログラム。
【請求項10】
コンピュータに、
灯器の表示方向に存在する車両を検出可能なセンサからセンサデータを取得する処理と、
前記センサデータに基づいて、前記センサにより検出された車両の存在により前記灯器の表示状態を視認できない車両が存在するか否かを判定する処理と、
前記灯器の表示状態を認識できない車両が存在すると判定した場合、所定の範囲に存在する車両の情報をネットワークを介して取得し、前記灯器の表示状態を示す信号情報を送信する対象の車両の送信先を特定する処理と、
前記灯器の表示状態を視認できない車両が存在すると判定した場合、
特定した前記
対象の車両に対して、前記灯器の表示状態を示す
前記信号情報を送信する処理と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号情報提供装置、信号情報提供方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
交通信号機(以下、単に「信号機」ともいう。)の灯器の設置位置は、車両からの視認性と、車両の通行を妨げないこと、その他、個別の交差点の状況を考慮して決定される。具体的には、各都道府県の交通信号機工事仕様書で定められており、灯器の最下部が地上から5.0~5.6mとなるように設置されることが多い。
【0003】
加えて、近年、灯器のLED(Light Emitting Diode)化が進んでおり、直径300mmの灯器に代えて、より小型の直径250mmの灯器への置き換えが進んでいる。このため、信号機全体が小型化している状況にある。
【0004】
一方で、車両を運転中のドライバーの視線の高さ(アイポイント)は、乗用車の場合、地上から約1.2m、トラックやバスでもその多くが2m程度である。このため、大型車の真後ろにつくと、大型車の車体により、後続する車両から、信号機の灯器が見えなくなるということがしばしば起こりうる。
【0005】
このような観点から、特許文献1に、サイドミラーやルーフ上に設置したカメラを用いて撮影した画像から信号機が示す信号情報を検出し、車載端末に表示することができるという信号情報提示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以下の分析は、本発明者によって与えられたものである。特許文献1等に記載された信号情報提示装置は、サイドミラーやルーフ上に設置したカメラによって撮影する構成であるため、前車の大きさや前車との位置関係によっては信号機の灯器の表示状態を撮影できない場合がある。例えば、乗用車の場合、ルーフ上にカメラを設置したとしても、その高さは高々1.5m程度であり、前車が大型バスやトラックである場合には、前方の信号機を撮影することは不可能である。
【0008】
本発明は、上記のように、前車による前方の視界が遮られている車両に対し、交通信号機の灯器の表示状態を知らせることができる信号情報提供装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の視点によれば、灯器の表示方向に存在する車両を検出可能なセンサからセンサデータを取得する情報取得部と、前記センサデータに基づいて、前記灯器の表示状態を認識できない車両が存在するか否かを判定する判定部と、前記灯器の表示状態を認識できない車両が存在すると判定した場合、前記車両に対して、前記灯器の表示状態を示す信号情報を送信する情報提供部と、を備えた信号情報提供装置が提供される。
【0010】
第2の視点によれば、灯器の表示方向に存在する車両を検出可能なセンサからセンサデータを取得し、前記センサデータに基づいて、前記灯器の表示状態を認識できない車両が存在するか否かを判定し、前記灯器の表示状態を認識できない車両が存在すると判定した場合、前記車両に対して、前記灯器の表示状態を示す信号情報を送信する、信号情報提供方法が提供される。本方法は、車両に対して、灯器の表示状態を知らせる信号情報を送信可能な信号情報提供装置という、特定の機械に結びつけられている。
【0011】
第3の視点によれば、上記した信号情報提供装置の機能を実現するためのコンピュータプログラムが提供される。なお、このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な(非トランジトリーな)記憶媒体に記録することができる。即ち、本発明は、コンピュータプログラム製品として具現することも可能である。
第4の観点によれば、ネットワークを介して位置管理センターに位置情報を報告する報告部と、信号情報提供装置が灯器の表示状態を認識できない車両が存在すると判定した場合に、前記位置管理センターに格納された位置情報に基づいて信号情報提供装置から送信される、灯器の表示状態を示す信号情報を取得する取得部と、前記信号情報を出力する出力部と、を備える車両が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、前車による前方の視界が遮られている車両に対し、交通信号機の灯器の点灯状態を知らせる方法の豊富化に貢献することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本発明の第1の実施形態の信号制御装置の構成を示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態の信号制御装置に入力される交差点画像の一例を示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態の信号制御装置に入力される交差点画像の別の一例を示す図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態の位置管理センターが管理する車両情報の一例を示す図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図7】本発明の第2の実施形態の信号制御装置の構成を示す図である。
【
図8】本発明の第3の実施形態の信号制御装置の構成を示す図である。
【
図9】本発明の信号情報提供装置を構成するコンピュータの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
はじめに本発明の一実施形態の概要について図面を参照して説明する。なお、この概要に付記した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではない。また、以降の説明で参照する図面等のブロック間の接続線は、双方向及び単方向の双方を含む。一方向矢印については、主たる信号(データ)の流れを模式的に示すものであり、双方向性を排除するものではない。また、図中の各ブロックの入出力の接続点には、ポート乃至インターフェースがあるが図示省略する。また、以下の説明において、「A及び/又はB」は、A及びBの少なくともいずれかという意味で用いる。
【0015】
本発明は、その一実施形態において、
図1に示すように、情報取得部11と、判定部12と、情報提供部13と、を備えた信号情報提供装置10にて実現できる。
【0016】
より具体的には、情報取得部11は、灯器40の表示方向(
図1の右方向)に存在する車両を検出可能なセンサ20から第1のセンサデータを取得する。そして、判定部12は、前記第1のセンサデータに基づいて、前記センサ20で捉えた車両31の背後に、前車の存在により灯器40の表示状態を視認することができない後続車両32が存在するか否かを判定する。
【0017】
そして、情報提供部13は、灯器40の表示状態を視認することができない後続車両32が存在すると判定した場合、前記後続車両に対して、前記灯器の表示状態を知らせる信号情報を送信可能に構成される。
【0018】
以上のように動作する信号情報提供装置10によれば、前車の存在により灯器40の表示状態を視認することができない後続車両32が存在することを捉え、その後続車両32に対し、進行方向にありながら、前車の存在により見えない灯器40の表示状態を知らせることが可能となる。
【0019】
これにより、後続車両32が、赤信号であるのに、交差点に進入したり、無理な右左折をしたりすることを抑止することが可能となる。
【0020】
[第1の実施形態]
続いて、センサとしてカメラを用いた第1の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態の信号制御装置の構成を示す図である。
図2を参照すると、クラウド(基盤)600を介して、信号制御装置100と、位置管理センター500と、車両31、32とが相互に通信可能に接続された構成が示されている。
【0021】
信号制御装置100は、灯器400の灯器の表示状態を制御する灯器制御部105を備えた装置である。さらに、信号制御装置100は、情報取得部101と、判定部102と、情報提供部103と、送信先特定部104とを備え、信号情報提供装置として機能する。
【0022】
さらに、信号制御装置100は、信号機の灯器400の表示方向と同一方向を撮影可能に設置されたカメラ200と接続されている。また、信号制御装置100は、クラウド(基盤)600を介して、位置管理センター500に接続可能となっている。
【0023】
続いて信号制御装置100の各部について説明する。情報取得部101は、灯器400の表示方向を撮影可能に、灯器400の近傍に設置されたカメラ200から、第1のセンサデータとして撮影画像を取得する。
【0024】
判定部102は、情報取得部101が取得した撮影画像に基づいて、カメラ200で捉えた車両31の背後に、前車の存在により灯器400の表示状態を視認することができない後続車両32が存在するか否かを判定する。
【0025】
図3は、本発明の第1の実施形態の信号制御装置100に入力される交差点画像の一例を示す図である。
図3の例では、交差点の手前に止まっている車両31が大型車両(バス)であるため、後続車両32はその陰に隠れてしまい、そのルーフ部分のみが写っている状況となっている。前述のように、カメラ200は、灯器400の近傍、かつ、その表示方向に向けて併設されているため、このような状況下では、後続車両32からも信号機の表示状態を視認することができないと推認される。この場合、判定部102は、車両31の背後に、後続車両32が存在すると判定する。なお、車両31が大型車両(バス)であるか否かは、カメラ200と車両との距離及び画像に写っている車両の高さ(車高)t等により判定することができる。
【0026】
図4は、本発明の第1の実施形態の信号制御装置100に入力される交差点画像の別の一例を示す図である。
図4の例では、交差点の手前に止まっている車両31が乗用車であるため、後続車両32は、その陰に隠れていない。このような状況下では、後続車両32のドライバーは、信号機の表示状態を視認することができると推認される。この場合、判定部102は、車両31の背後に隠れている車両は存在しないと判定する。
【0027】
送信先特定部104は、車両31の背後に、後続車両32が存在すると判定した場合に、クラウド(基盤)600上の位置管理センター500に対して、該当する位置に所在する車両の情報を問い合わせる。送信先特定部104は、情報提供部103に対し、前記問い合わせの結果、得られた後続車両32の情報送信先に関する情報を送信する。
【0028】
情報提供部103は、車両31の背後に、後続車両32が存在すると判定した場合に、送信先特定部104から得られた送信先に、灯器400の表示状態を知らせる信号情報を送信する。なお、この信号情報は、灯器制御部105から灯器の表示状態情報を入手して、これを元に作成することが可能である。
【0029】
図5は、本発明の第1の実施形態の位置管理センターが管理する車両情報の一例を示す図である。
図5を参照すると、車両IDと、車両の位置と、送信先とを対応付けた車両情報が示されている。この車両情報は、車両の動きに応じて車両からの報告を受けて、リアルタイムに更新される。例えば、車両31の背後に隠れている車両32の位置を指定することで、後続車両32向けのデータの送信先を特定することが可能となっている。この送信先を用いることで、後続車両32に信号情報を送信することが可能となる。なお、本実施形態では、車両の位置として、絶対座標(緯度経度)を用いるものとして説明するが、位置管理センターにおける位置の表現形態はこれに限られない。例えば、車両が在圏する基地局のセル情報を用いることもできる。この場合、信号制御装置は、自身が制御する信号機の手前の基地局セルを指定して車両を問い合わせることになる。
【0030】
なお、信号情報の送信形態としては、PS-LTE(Public Safety LTE)や商用の移動体通信網を用いて転送する形態が考えられる。さらに、信号情報の別の送信形態としては、路車間通信で用いられている道路側の通信装置を用いて、信号制御装置から信号情報を後続車両32に送信する形態が考えられる。さらに、信号情報の別の送信形態としては、信号制御装置から車両31に送信した信号情報を、車車間通信を用いて、後続車両32に転送させる形態も考えられる。
【0031】
位置管理センター500は、
図5に例示する車両情報を管理し、外部から位置や範囲を指定した車両の情報の問い合わせに応じて、該当する車両を割り出して車両情報を応答する。
【0032】
続いて、本発明の第1の実施形態の動作について図面を参照して詳細に説明する。
図6は、本発明の第1の実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。
図6を参照すると、信号制御装置100は、所定の時間間隔で、カメラ200から、灯器400の表示方向の撮影画像を取得する(ステップS001)。
【0033】
次に、信号制御装置100は、前記取得した画像に基づいて、前車の存在により灯器400の表示状態を視認することができない車両が存在するか否かを判定する(ステップS002)。本実施形態では、カメラ200の撮影範囲内に大型車両が写っている場合に、前車の存在により灯器400の表示状態を視認することができない車両が存在すると判定するものとして説明する。
【0034】
なお、カメラ200の向きが固定されている場合、撮影画像に写った車両が大型車両であるか否かは、撮影画像内における車両の像の大きさに基づいて判定することができる。また、このときに、誤判定を避けるため、カメラ200と車両の距離を計算してもよい。このカメラ200と車両の距離は、撮影画像内における車両の前端部(バンパー、ヘッドライト、前輪など)の位置から求めることができる。例えば、
図4のように、車両31が画像の停止線の上側に写っている場合、画像中の停止線と車両の前端部の離れ具合によって、車両31と停止線(カメラ200)との実距離を計算することができる。なお、カメラ200の撮影範囲内に大型車両が写っていないと判定した場合、信号制御装置100は、ステップS001に戻って撮影画像の監視を継続する(ステップS002のNO)。
【0035】
前車の存在により灯器400の表示状態を視認することができない車両が存在すると判定した場合(ステップS002のYES)、信号制御装置100は、信号情報の送信先、即ち、後続車両32の車載端末32aを特定する(ステップS003)。この後続車両の特定は、信号制御装置100が位置管理センター500に対し、後続車両32が位置すると推定される範囲を指定して、その範囲に所在する車両情報(
図5参照)を問い合わせることで行うことができる。この問い合わせの範囲は、例えば、撮影画像に写った車両(例えば、
図4の車両31)の推定位置を基準に、灯器の表示方向に、信号機から離れた方向の位置(例えば、車両31から4~10m後ろなど)を用いることができる。前記特定の結果、複数の車両が特定された場合、これらのすべての車両を対象車両としてもよいし、そのうちの先頭の車両(即ち、大型車両の真後ろの車両)のみを対象車両としてもよい。
【0036】
次に、信号制御装置100は、ステップS003で特定した送信先に対して、灯器400の表示状態を知らせる信号情報を送信する(ステップS004)。例えば、対象車両において本来見えるべき灯器の表示状態が赤信号である場合、信号制御装置100は、ステップS003で特定した送信先に対して、進行方向の信号が赤信号であることを示す信号情報を送信する。これにより、送信先として特定された後続車両32は、無理な交差点侵入や右左折をせずに済むことになる。
【0037】
なお、上記した信号情報は、灯器400の表示状態のみに限られず、種々の情報を付加することができる。例えば、信号制御装置100は、灯器制御部105から取得した情報に基づいて、灯器の表示状態とともに、灯器400の表示状態が切り替わるタイミングを送信してもよい。例えば、青信号であることと、黄色信号に切り替わるまでの時間を知らせることで、後続車両32に、交差点に進入してよいか否かの判断材料を与えることが可能となる。また、例えば、信号制御装置100は、灯器400の表示状態とともに、1つ先の信号機(隣接する信号機)の灯器の表示状態やその間の渋滞状況を取得して、後続車両32に知らせてもよい。
【0038】
以上説明したように、本実施形態によれば、前車による前方の視界が遮られている車両に対し、交通信号機の灯器の表示状態を知らせ、事故の発生や渋滞の原因となる交差点への無理な進入を防ぐことが可能となる。
【0039】
なお、上記した実施形態では、車載端末32aに対して、信号情報を送信する例を挙げて説明したが、
図5に例示した車両情報の連絡先に、ドライバーや同乗者の携帯端末32bの情報が設定されている場合には、ドライバーや同乗者のスマートフォンにも信号情報を送ることが可能となる。
【0040】
[第2の実施形態]
続いて、灯器の表示方向に対して側方の位置に配置したカメラを併用して後続車両を確認するようにした第2の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図7は、本発明の第2の実施形態の信号制御装置の構成を示す図である。
図2に示した第1の実施形態との相違点は、信号制御装置100aに交差点側方の歩行者用信号機401に併設されたカメラ201が第2のセンサとして接続されている点である。その他の構成は、基本的に第1の実施形態と同様であるので、以下、その相違点を中心に説明する。
【0041】
情報取得部101aは、カメラ200から、第1のセンサデータとして撮影画像を取得するとともに、交差点の灯器400の表示方向側の手前に位置に配置され側方から撮影を行うカメラ201から、第2のセンサデータとして撮影画像を取得する。
【0042】
判定部102aは、情報取得部101aが取得した各撮影画像に基づいて、カメラ200で捉えた車両31の背後に、前車の存在により灯器400の表示状態を視認することができない後続車両32が存在するか否かを判定する。第2の実施形態の第1の実施形態との相違点は、判定部102aが、カメラ201からの撮影画像に基づいて、車両31の背後に後続車両32が存在するか否かを確認する点である。
【0043】
また、カメラ201からの撮影画像は、位置管理センター500に対する対象車両の車両情報を問い合わせる際の車両の位置の割り出しにも用いることができる。例えば、大型車両の背後に複数の後続車両32が存在する場合、位置管理センター500に対し、その最先頭の送信先を照会する構成を採ることができる。また、大型車両と後続車両32との間の車間が大きく空いている場合にも有効であり、位置管理センター500に対し、その車間を考慮した位置を照会することで、後続車両を正しく特定することができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、大型車が存在しているが後続車両32が存在しない場合、位置管理センター500への照会を止め、信号情報の送信を抑止することも可能となる。これにより、信号制御装置100や関連する装置のリソースの消費を抑えることが可能となる。
【0045】
その他の本実施形態の動作は第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。本実施形態によれば、第1の実施形態との比較において、後続車両32の有無とその位置の判定をより精度良く行うことが可能となる。
【0046】
[第3の実施形態]
続いて、信号情報として送信する情報に変更を加えた第3の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図8は、本発明の第3の実施形態の信号制御装置の構成を示す図である。
図2に示した第1の実施形態との相違点は、信号制御装置100bがカメラ200に加えてカメラ202と接続されている点と、信号制御装置100bの情報提供部103bに変更が加えられている点である。その他の構成は、基本的に第1の実施形態と同様であるので、以下、その相違点を中心に説明する。
【0047】
カメラ202は、カメラ200と反対の方向(後続車両の進行方向)を指向し、信号機の灯器400の表示面を撮影可能に設置されたカメラである。カメラ202は、カメラ200と反対の方向を指向することで灯器400の表示状態に加えて交差点内の状況を撮影可能となっている。
【0048】
情報提供部103bは、後続車両の車載端末32aやドライバーの携帯端末32bに対して、信号情報として、情報取得部101bで取得されたカメラ202の撮影画像を送信する。
【0049】
本実施形態によれば、前車の存在により灯器400の表示状態を視認することができない後続車両32に対して信号機の灯器400の表示状態に加えて、交差点内の状況を伝えることが可能となる。具体的には、信号制御装置100bは、例えば、
図8の車載端末32aや携帯端末32bの表示画面内に示されたように、後続車両32のドライバーに、交差点内を移動中の車両や自転車の存在を伝えることができる。これにより、後続車両32のドライバーは、信号制御装置100bから送られた信号情報が青信号であっても、交差点を渡り切っていない車両や自転車の存在を確認した上で運転を行うことができる。
【0050】
なお、上記した実施形態では、カメラ202が灯器400の表示状態に加えて交差点内の状況を撮影可能な位置に配置されているものとして説明したが、カメラ202の位置によっては灯器400の表示状態を撮影できない場合もある。その場合は、第1、第2の実施形態と同様に、別途、信号制御装置100bから、車載端末32aや携帯端末32bに対して、灯器400の表示状態を示す信号情報を送信する構成も採用可能である。
【0051】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の基本的技術思想を逸脱しない範囲で、更なる変形・置換・調整を加えることができる。例えば、各図面に示したネットワーク構成、各要素の構成、データ等の表現形態は、本発明の理解を助けるための一例であり、これらの図面に示した構成に限定されるものではない。
【0052】
また、上記した実施形態では、信号制御装置100、100a、100bが、信号情報提供装置として機能するものとして説明したが、信号情報提供装置と信号制御装置とをそれぞれ独立して設けた構成も採用可能である。
【0053】
また、上記した実施形態では、信号制御装置100、100a、100bが、カメラ200の撮影画像に写った像に基づいて、大型車両の検出を行うものとして説明したが、事前に作成した車種判別用の判別器を用いて、大型車両の検出を行う構成も採用可能である。このような車種判別用の判別器は、事前に、カメラ200の撮影画像と、これらの画像に写った車両の車種についての教師ラベルを付与した訓練データを、所望のアルゴリズムを用いた機械学習により作成することができる。
【0054】
また、上記した実施形態では、灯器の表示方向に存在する車両を検出可能なセンサとして、カメラを用いた例を挙げて説明したが、同センサはカメラに限られない。例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)と呼ばれる自動運転用のセンサをカメラの代わりに用いることもできる。また、例えば、TOF(Time Of Flight)センサを用いた距離画像をセンサデータとして用いることも可能である。
【0055】
また、上記した実施形態では、灯器400の表示状態を車載端末32a等に表示するものとして説明したが、灯器400の表示状態の出力形態は、ディスプレイ等への表示に限られない。例えば、車載端末32aや携帯端末32bに備えられたスピーカーから灯器400の表示状態を音声で出力する形態も採用可能である。この場合、車載端末32aや携帯端末32bは、音声で、「信号は現在青です。残り5秒で黄色に変わります。」などと音声で通知を行うことになる。
【0056】
また、上記した各実施形態に示した手順は、信号制御装置又は信号情報提供装置として機能するコンピュータ(
図9の9000)に、これらの装置としての機能を実現させるプログラムにより実現可能である。このようなコンピュータは、
図9のCPU(Central Processing Unit)9010、通信インターフェース9020、メモリ9030、補助記憶装置9040を備える構成に例示される。すなわち、
図9のCPU9010にて、車種判定プログラムや情報提供プログラムを実行させればよい。
【0057】
即ち、上記した信号制御装置又は信号情報提供装置の各部(処理手段、機能)は、これらの装置に搭載されたプロセッサに、そのハードウェアを用いて、上記した各処理を実行させるコンピュータプログラムにより実現することができる。
【0058】
最後に、本発明の好ましい形態を要約する。
[第1の形態]
(上記第1の視点による信号情報提供装置参照)
[第2の形態]
上記した信号情報提供装置において、
前記センサは、前記灯器の表示方向を撮影可能に、前記灯器の近傍に設置されている構成を採用することができる。
[第3の形態]
上記した信号情報提供装置において、
情報取得部が、前記後続車両の有無を側方から検出可能な位置に配設された第2のセンサから第2のセンサデータを取得可能であり、
判定部が、前記第1のセンサデータ及び前記第2のセンサデータに基づいて、前記センサで捉えた車両の背後に、前車の存在により前記灯器の表示状態を視認することができない後続車両が存在するか否かを判定する構成を採用することができる。
[第4の形態]
上記した信号情報提供装置において、
前記情報提供部は、前記灯器の表示状態を知らせる信号情報として、
前記後続車両に対し、当該後続車両の進行方向を指向したカメラで撮影した画像を送信する構成を採ることができる。
[第5の形態]
上記した信号情報提供装置において、
前記判定部は、車高が所定の高さを超える車両の存在を検出した場合、前車の存在により前記灯器の表示状態を視認することができない後続車両が存在すると判定する構成を採ることができる。
[第6の形態]
上記した信号情報提供装置において、
前記判定部は、事前に作成した判別器を用いて判別した車種に基づいて、前車の存在により前記灯器の表示状態を視認することができない後続車両が存在すると判定する構成を採ることができる。
[第7の形態]
上記した信号情報提供装置において、
前記情報提供部は、移動体通信網、路車間インフラ又は車車間通信を介して、前記後続車両に情報を送信する請求項1から5いずれか一の信号情報提供装置。
[第8の形態]
(上記第2の視点による信号情報提供方法参照)
[第9の形態]
(上記第3の視点によるコンピュータプログラム参照)
なお、上記第8~第9の形態は、第1の形態と同様に、第2~第6の形態に展開することが可能である。
【0059】
なお、上記の特許文献の開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし選択(部分的削除を含む)が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0060】
10 信号情報提供装置
11、101、101a 情報取得部
12、102、102a 判定部
13、103、103b 情報提供部
20 センサ
31、32 車両
32a 車載端末
32b 携帯端末
40、400 灯器
100、100a、100b 信号制御装置
104 送信先特定部
105 灯器制御部
200、201、202 カメラ
400、灯器
401 歩行者用信号機
500 位置管理センター
600 クラウド(基盤)
9000 コンピュータ
9010 CPU
9020 通信インターフェース
9030 メモリ
9040 補助記憶装置