(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】パルプモールド成形体
(51)【国際特許分類】
D21J 5/00 20060101AFI20241008BHJP
D21J 3/00 20060101ALI20241008BHJP
D21J 7/00 20060101ALI20241008BHJP
D21H 27/30 20060101ALI20241008BHJP
B32B 29/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
D21J5/00
D21J3/00
D21J7/00
D21H27/30 C
B32B29/00
(21)【出願番号】P 2023112903
(22)【出願日】2023-07-10
(62)【分割の表示】P 2020098548の分割
【原出願日】2020-06-05
【審査請求日】2023-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2019208064
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 由貴
(72)【発明者】
【氏名】高木 瑞江
(72)【発明者】
【氏名】椎橋 礼子
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-129921(JP,A)
【文献】特開2005-002528(JP,A)
【文献】国際公開第2019/163659(WO,A1)
【文献】特開2019-081994(JP,A)
【文献】特開2013-234406(JP,A)
【文献】特開2002-129499(JP,A)
【文献】特開2004-204397(JP,A)
【文献】特開2002-138397(JP,A)
【文献】特開2004-100048(JP,A)
【文献】特開2005-059905(JP,A)
【文献】特開平07-292600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21J 5/00
D21J 3/00
D21J 7/00
D21H 27/30
B32B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプモールド成形体を構成するパルプが、木材パルプおよび非木材パルプの混合パルプであり、
該木材パルプが、広葉樹パルプを含有し、
該広葉樹パルプが、アカシア属およびユーカリ属から選択される少なくともいずれかの木材パルプ
であり、
該混合パルプのカナダ標準ろ水度が、100mL以上600mL以下である、
パルプモールド成形体。
【請求項2】
前記非木材パルプが、バガスおよび竹から選択される少なくともいずれかを含む、請求項1に記載のパルプモールド成形体。
【請求項3】
前記木材パルプが、さらに針葉樹パルプを含む、請求項1または2に記載のパルプモールド成形体。
【請求項4】
前記混合パルプ中の前記木材パルプの含有量が15質量%以上である、請求項1~
3のいずれかに記載のパルプモールド成形体。
【請求項5】
混合パルプ中の木材パルプの含有量が
45質量%以上80質量%以下である、請求項1~4のいずれかに記載のパルプモールド成形体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のパルプモールド成形体を表面加工した、二次加工パルプモールド成形体。
【請求項7】
前記表面加工が、直刷法、ラミネート法、転写法、および蒸着法の少なくとも1つの表面加工法による表面加工である、請求項6に記載の二次加工パルプモールド成形体。
【請求項8】
前記表面加工が、真空ラミネート法およびホットスタンプ転写法の少なくとも1つの表面加工法による表面加工である、請求項6または7に記載の二次加工パルプモールド成形体。
【請求項9】
請求項1~5のいずれかに記載のパルプモールド成形体の製造方法であり、
パルプ懸濁液を準備するパルプ懸濁液準備工程と、
パルプ懸濁液から抄型を介してパルプを抄き上げる抄き上げ工程と、
前記抄き上げ工程後に得られたモールド中間体を加熱しながら第1のプレス金型と前記第1のプレス金型とは反対方向に位置する第2のプレス金型とによりホットプレスするホットプレス工程とを有する、パルプモールド成形体の製造方法。
【請求項10】
前記ホットプレス工程における圧力が、0.1MPa以上3.0MPa以下である、請求項9に記載のパルプモールド成形体の製造方法。
【請求項11】
前記ホットプレス工程における温度が、130℃以上280℃以下である、請求項9または10に記載のパルプモールド成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプモールド成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄物等の増加に関わる環境問題の意識の高まりに鑑み、プラスチック容器や金属容器に代わり、各種の包装材料として、パルプを原料として、そのパルプスラリーを湿式吸引成形方式により成形したパルプモールド成形体が注目されている。パルプモールド成形体は、省資源および省エネルギーに貢献し、かつ、廃棄に際してもリサイクル性に優れ、仮に廃棄する場合であっても焼却処理に適するなど、環境保全に貢献する包装材料である。
【0003】
特許文献1には、パルプモールドを構成するパルプ成分中の50~100%(絶乾)がハンター白色度65~85%の脱墨古紙パルプであり、残余のパルプが晒パルプであることを特徴とするパルプモールド包装用材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パルプモールド成形体は、耐油性に劣るという問題がある。また、パルプモールド成形体は、表面平滑性に劣る場合があった。
特許文献1に記載されたパルプモールド成形体は、鮮やかな白さや色調を有するパルプモールドを得ることを目的とするものであり、十分な耐油性や表面平滑性を得られていなかった。
本発明の目的は、耐油性および表面平滑性に優れるパルプモールド成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、鋭意検討の結果、パルプモールド成形体を構成するパルプを特定の混合パルプとすることにより、上記の課題が解決されることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の<1>~<11>に関する。
<1> パルプモールド成形体を構成するパルプが、木材パルプおよび非木材パルプの混合パルプであり、該木材パルプが、広葉樹パルプを含有し、該混合パルプのカナダ標準ろ水度が、100mL以上600mL以下である、パルプモールド成形体。
<2> 前記広葉樹パルプが、アカシア属、ユーカリ属およびブナ属から選択される少なくとも1種の木材パルプを含む、<1>に記載のパルプモールド成形体。
<3> 前記非木材パルプが、バガスおよび竹から選択される少なくともいずれかを含む、<1>または<2>に記載のパルプモールド成形体。
<4> 前記木材パルプが、さらに針葉樹パルプを含む、<1>~<3>のいずれかに記載のパルプモールド成形体。
<5> 前記混合パルプ中の前記木材パルプの含有量が15質量%以上である、<1>~<4>のいずれかに記載のパルプモールド成形体。
<6> <1>~<5>のいずれかに記載のパルプモールド成形体を表面加工した、二次加工パルプモールド成形体。
<7> 前記表面加工が、直刷法、ラミネート法、転写法、および蒸着法の少なくとも1つの表面加工法による表面加工である、<6>に記載の二次加工パルプモールド成形体。
<8> 前記表面加工が、真空ラミネート法およびホットスタンプ転写法の少なくとも1つの表面加工法による表面加工である、<6>または<7>に記載の二次加工パルプモールド成形体。
<9> <1>~<5>のいずれかに記載のパルプモールド成形体の製造方法であり、
パルプ懸濁液を準備するパルプ懸濁液準備工程と、
パルプ懸濁液から抄型を介してパルプを抄き上げる抄き上げ工程と、
前記抄き上げ工程後に得られたモールド中間体を加熱しながら第1のプレス金型と前記第1のプレス金型とは反対方向に位置する第2のプレス金型とによりホットプレスするホットプレス工程とを有する、パルプモールド成形体の製造方法。
<10> 前記ホットプレス工程における圧力が、0.1MPa以上3.0MPa以下である、<9>に記載のパルプモールド成形体の製造方法。
<11> 前記ホットプレス工程における温度が、130℃以上280℃以下である、<9>または<10>に記載のパルプモールド成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐油性および表面平滑性に優れるパルプモールド成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例で作製したパルプモールド蓋の斜視図である。
【
図2】
図2は、実施例で作製した包装用ボックスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[パルプモールド成形体]
本発明のパルプモールド成形体は、パルプモールド成形体を構成するパルプ(以下、「パルプモールド成形体を構成するパルプ」を、「原料パルプ」ともいう)が、木材パルプおよび非木材パルプの混合パルプであり、該木材パルプが、広葉樹パルプを含有し、該混合パルプのカナダ標準ろ水度が、100mL以上600mL以下である。
<原料パルプ>
本発明において、原料パルプとして、木材パルプおよび非木材パルプを含有し、かつ、木材パルプが広葉樹パルプを含有する。
木材パルプとしては、一般に製紙用途で使用されている木材パルプが挙げられ、その調製法の違いにより、クラフトパルプ(KP)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)等の化学パルプ;セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグランドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ;砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)、リファイナーグランドウッドパルプ(RGP)等の機械パルプ;古紙パルプ;等に分類される。
木材パルプとしては、原料により、針葉樹パルプおよび広葉樹パルプが例示される。針葉樹パルプとしては、モミ属、マツ属等から得られるパルプが例示される。また、広葉樹パルプとしては、アカシア属、ユーカリ属、ブナ属、ヤマナラシ属(たとえば、ポプラ)等から得られるパルプが例示される。
これらの中でも、木材パルプとしては、針葉樹クラフトパルプ(NKP)、広葉樹クラフトパルプ(LKP)がより好ましい。
【0010】
本発明において、木材パルプが、広葉樹パルプを含有する。広葉樹パルプとしては、少なくともアカシア属、ユーカリ属およびブナ属の少なくともいずれかの木材パルプを含有することが好ましい。本発明において、原料パルプとして、アカシア属、ユーカリ属およびブナ属の少なくともいずれかに属する木材から得られた木材パルプを含有することが好ましく、たとえば、アカシア属に属する木材から得られた木材パルプと、ユーカリ属に属する木材から得られた木材パルプとを併用してもよいが、前記いずれかの属の木材パルプのみを含有することが好ましい。木材パルプとして、広葉樹パルプを含有することにより、平滑性に優れたパルプモールド成形体が得られる。また、広葉樹パルプが、アカシア属、ユーカリ属およびブナ属の少なくともいずれかの木材パルプを含むことによって、より表面平滑性に優れたパルプモールド成形体が得られる。これらの中でも、広葉樹パルプは、表面平滑性および耐油性の観点から、アカシア属およびユーカリ属から選ばれる少なくとも1つであることがより好ましい。
原料パルプ中の広葉樹(好ましくはアカシア属、ユーカリ属およびブナ属の少なくともいずれかに属する木材パルプ)の含有量は、パルプモールド成形体の表面平滑性および耐油性をより向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上、よりさらに好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0011】
本発明において、原料パルプとして、針葉樹パルプを含有してもよく、針葉樹パルプとしては、針葉樹クラフトパルプが好ましい。針葉樹パルプを含有することにより、より強度に優れたパルプモールド成形体が得られる。
針葉樹パルプとしては、マツ属の針葉樹パルプが好ましく、ラジアータパインがより好ましい。
原料パルプが針葉樹パルプを含有する場合、その含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0012】
原料パルプ中の針葉樹パルプおよび広葉樹パルプを合計した木材パルプの含有量は、パルプモールド成形体の表面平滑性および耐油性をより向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、よりさらに好ましくは20質量%以上、よりさらに好ましくは45質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下、よりさらに好ましくは55質量%以下である。
【0013】
非木材パルプは、植物の皮、茎、葉、葉鞘から採取した繊維である。具体的には、コットンリンター、木綿、リネン、大麻、ラミー、わら、エスパルト、マニラ麻、ザイザル麻、黄麻、亜麻、ケナフ、竹、バガス、がんぴ、みつまた、こうぞ、桑から得られるパルプが挙げられる。
非木材パルプは、パルプモールド成形体の耐油性を向上させる観点から、バガスおよび竹から選択される少なくともいずれかを含むことが好ましく、バガスおよび竹から選択される少なくともいずれかであることがより好ましく、バガスであることがさらに好ましい。
原料パルプ中の非木材パルプの含有量は、パルプモールド成形体の表面平滑性および耐油性をより向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、よりさらに好ましくは45質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下、よりさらに好ましくは55質量%以下である。
【0014】
本発明において、上述のように、パルプ原料として、木材パルプと非木材パルプとの混合パルプを使用する。ここで、パルプ原料に古紙や段古紙等の古紙を使用してもよいが、古紙の含有量が多いと、古紙の繊維は毛羽立ち、変形しているため、表面平滑性や表面の意匠性に劣るという問題がある。パルプモールド成形体の表面平滑性、および表面の意匠性を向上させる観点から、原料パルプ中の古紙の含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下であり、使用しないことがよりさらに好ましい。
【0015】
本発明において、混合パルプのカナダ標準ろ水度は、パルプ原料の生産性、およびパルプモールド成形体を製造時の抄紙性の観点から、100mL以上、好ましくは150mL以上、より好ましくは200mL以上であり、そして、表面平滑性の観点から、600mL以下、好ましくは500mL以下、より好ましくは450mL以下である。
カナダ標準ろ水度が上記範囲内となるように、叩解の程度を調整すればよい。
カナダ標準ろ水度は、JIS P 8121-2:2012に準拠して測定される。
【0016】
<その他の成分>
パルプモールド成形体は、上述したパルプを主原料として形成されている。パルプモールド成形体は、パルプ100%から形成されていてもよいが、パルプに加えて、各種内添助剤等の他の材料を添加することが可能である。
内添剤としては、タルク、カオリン等の無機物、ガラス繊維やカーボン繊維等の無機繊維、ポリオレフィン等の合成樹脂の粉末または繊維、カルボキシメチルセルロース等の多糖類、サイズ剤、湿潤紙力増強剤、耐油剤、歩留剤、濾水向上剤、嵩高剤、硫酸バンド、pH調整剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤、顔料等の着色剤等が例示される。これらの中でも、サイズ剤を含有することが好ましい。
【0017】
サイズ剤としては、ロジン系サイズ剤(たとえば、酸性ロジン系サイズ剤、中性ロジン系サイズ剤)、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、スチレン-(メタ)アクリレート共重合体などのスチレン含有ポリマーが挙げられ、アルキルケテンダイマーが好ましい。
【0018】
湿潤紙力増強剤としては、内添用の湿潤紙力増強剤として、ポリアミドアミン・エピクロロヒドリン樹脂、エポキシ化ポリアミドポリアミン、ジアルデヒドでんぷん、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド、ポリアクリルアミド、メチロール化ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン等が例示される。
また、撥水剤としては、ワックスエマルジョン、金属石けん(ナトリウム、カリウム、亜鉛、リチウム、マグネシウム等のアルカリ塩)、脂肪酸クロム錯塩(ミリスチン錯塩、ステアリン酸クロミッククロライド錯塩等)、ジルコニウム撥水剤、シリコーンエマルジョン等が例示される。
本発明のパルプモールド成形体は、非木材パルプを含有しており、パルプ原料のみで耐油性および耐水性を向上させることが可能であることから、湿潤紙力増強剤、撥水剤および耐水剤の添加量を減少しても、または添加しなくても、十分な耐油性を得ることが可能である。なお、より高い耐油性および耐水性を得ることを目的として、湿潤紙力増強剤または撥水剤または耐油剤を添加する態様を排除するものではない。
【0019】
<二次加工パルプモールド成形体>
本発明のパルプモールド成形体を表面加工して、二次加工パルプモールド成形体としてもよい。なお、本発明において、二次加工パルプモールド成形体とは、パルプモールド成形体に、表面加工を施したものである。なお、本発明のパルプモールド成形体は、表面平滑性に優れるため、表面加工を容易に施すことができるという利点をも有する。
二次加工の方法としてはとくに限定されず、パルプモールドの表面加工が可能な方法であればとくに限定されないが、二次加工パルプモールド成形体は、直刷法、ラミネート法、転写法、および蒸着法の少なくとも1つの表面加工法により表面加工されたものであることが好ましく、直刷法、ラミネート法、および転写法の少なくとも1つの表面加工法により表面加工されたものであることがより好ましく、ラミネート法および転写法の少なくとも1つの表面加工法により表面加工されたものであることがさらに好ましい。
なお、これらの方法に限定されず、予め印刷されたシール等を貼付してもよい。
【0020】
(直刷法)
直刷法は、色、柄、模様等の付与や、防水性、防湿性等の付与を目的として、直接パルプモールド成形体の表面にインクや樹脂を付与するものであり、含浸、印刷等により、パルプモールド成形体を表面加工する方法が挙げられる。
印刷としては、ゴム版や樹脂版による凸版印刷、シルクスクリーン印刷、タンポ印刷、静電印刷、熱転写印刷などのいずれの印刷手段であってもよい。印刷により、得られたパルプモールド成形体の表面に、図柄や文字等を設けることができる。
また、パルプモールド成形体への刷毛、スプレーなどによって直刷してもよい。これらの中でも、均一に樹脂等を付与する観点から、スプレー塗布が好ましい。スプレー塗布はエアスプレー、エアレススプレー、静電スプレー等のいずれにより行ってもよい。
パルプモールド成形体の表面に防水・防湿性を付与する場合には、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、オレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等の樹脂を固形分に含む水系エマルジョン塗料、またはこれらの樹脂の水溶液塗料若しくは有機溶剤系塗料等を塗工すればよい。
【0021】
(ラミネート法)
ラミネート加工は、樹脂フィルムで被覆することにより行われることが好ましく、使用される樹脂フィルムとしては、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル等のポリビニル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル等の熱可塑性樹脂フィルム、変性ポリエチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステル等の生分解性樹脂フィルムが挙げられる。製造コスト、成形性等を考慮すると、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、環境に配慮した廃棄性の点からは、生分解性樹脂フィルムが好ましい。ラミネート加工は、これらの樹脂フィルムの2種以上を積層させて形成してもよい。
樹脂フィルムの厚みはとくに限定されないが、10μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0022】
上記の樹脂フィルムをラミネート加工することにより、耐水性、耐油性、ガスバリア性等の機能を向上または付与することができる。
また、ラミネート加工する樹脂フィルムに、予め絵柄を印刷してもよく、着色性のある顔料、微細粒子(パール顔料、ホログラム等)、夜光染料・夜光顔料等を添加しておいてもよい。このような樹脂フィルムを使用することにより、パルプモールド成形体の表面に、光沢性や意匠性を付与することができる。
【0023】
ラミネート加工は、パルプモールド成形体に対して押出ラミネーション、熱ラミネーション、ドライラミネーション、またはウェットラミネーション等の公知の方法で行えばよい。
これらの中でも、熱ラミネーションが好ましく、真空ラミネーション、真空プレスが好ましく、真空ラミネーションがより好ましい。
真空ラミネーションは、基材側(パルプモールド側)からの吸引により、その上部に置かれたシートを変形させてラミネートを行ってもよく、また、予め真空にされた上下チャンバーを樹脂フィルムで2分割しておき、樹脂フィルム加熱装置を備えた上部チャンバーを圧空とすることにより、下部チャンバーに置かれた基材(パルプモールド成形体)にラミネートする方法でもよい。
また、真空プレスは、シリコンラバー等を基材(パルプモールド成形体)側からの真空吸引、場合により上部より圧空力を加えて基材形状に変形させ、シリコンゴム等と基材との間に挟まれた樹脂フィルムがシリコンゴムの圧力により基材にラミネートされる。
また、樹脂フィルムを、パルプモールド成形体の形状に合わせて、金型により予備成形し、パルプモールド成形体とラミネートしてもよい。
【0024】
ラミネート加工は、従来公知の方法で行えばよく、真空ラミネーション装置としては、TOM成形機(布施真空株式会社製)などが例示される。
また、ラミネーションの際の温度、圧力などの条件は、ラミネートする樹脂フィルムの素材および厚み、基材の形状、接着剤の有無等により適宜選択すればよいが、たとえば、ヒーターの加熱温度は80~200℃で、貼合を行う。
【0025】
ラミネートの際に、樹脂フィルムとパルプモールド成形体との間に、接着剤を付与してもよく、また、付与しなくてもよい。接着剤としては、ポリウレタン系接着剤、ポリアクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、セルロース系接着剤、その他のラミネート用接着剤をしようすることができる。接着剤を付与する場合には、接着剤に着色性を有する顔料、パール顔料、微細粒子(ホログラム等)、夜光顔料、夜光染料等を添加してもよい。
【0026】
(転写法)
転写法としては、ホットスタンプ転写法、インモールド転写法、水圧転写法などの種々の転写法が例示され、乾式転写法、湿式転写法のいずれでもよい。またインモールド転写法において、予備成形工程を加えてもよい。
転写法の中では、ホットスタンプ転写法(以下、単に「ホットスタンプ法」ともいう)が好ましい。ホットスタンプ法は、「箔」と呼ばれる金属を蒸着したり、顔料を塗布したフィルムを使用し、箔表面に設けた熱接着層を介して基材に熱転写する方法である。ホットスタンプ法に使用される箔は、離型性を有するベースフィルム(たとえば、二軸延伸ポリエステルフィルム)、剥離層(保護層)、絵柄層・蒸着層、熱接着層の順に積層されており、必要に応じて、ベースフィルムと保護層との間に離形層が設けられる。ホットスタンプ法としては、(i)アップダウン方式、(ii)ロール転写方式が挙げられ、熱圧の存在する部分の絵柄層・蒸着層が、基材(パルプモールド成形体)に転移するという原理は同じである。アップダウン方式では、ヒーターが内蔵された型板を、ベースフィルム側から基材に押し付け、熱接着層を介して、絵柄層・蒸着層を基材に転写する。同様に、ロール転写方式では、加熱したローラをベースフィルム側から押し付けることで、絵柄層・蒸着層を基材に転写する。また、ベースフィルム側に研削加工、艶差処理、凹凸加工等を施すことにより、転写時に、絵柄層、蒸着層に賦形(凹凸を付す)を行うことも可能である。
【0027】
(蒸着)
蒸着は、従来公知の蒸着法を採用すればよく、物理蒸着でも化学蒸着でもよく、とくに限定されないが、パルプモールド成形体に金属光沢を付与する目的で蒸着することが好ましく、物理蒸着である真空蒸着がより好ましい。
蒸着材料は、アルミニウム、クロム、亜鉛、金、銀、プラチナ、ニッケルなどの金属類、SiO2、TiO2、ZrO2、MgF2などの酸化物やフッ化物を使用することが好ましい。
蒸着層の厚みは、とくに限定されないが、0.1μm以上であることが好ましい。
【0028】
[パルプモールド成形体の製造方法]
パルプモールド成形体の製造方法はとくに限定されないが、以下の工程1~工程3をこの順で有する製造方法により製造することが好ましい。
工程1:パルプ懸濁液を準備するパルプ懸濁液準備工程
工程2:パルプ懸濁液から抄型を介してパルプを抄き上げる抄き上げ工程
工程3:前記抄き上げ工程後に得られたモールド中間体を加熱しながら第1のプレス金型と前記第1のプレス金型とは反対方向に位置する第2のプレス金型とによりホットプレスするホットプレス工程
工程1では、パルプ原料、サイズ剤等のその他の添加剤を加えて、パルプ懸濁液(パルプスラリー)を調製する。該懸濁液の濃度(スラリー濃度)は、表面平滑性、寸法安定性、および生産性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、そして、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0029】
工程2は、パルプ懸濁液から抄型を介してパルプを抄き上げる抄き上げ工程である。
パルプ懸濁液中に真空引き通水性構造の金網張り金型などの成形金型を浸漬し、パルプ懸濁液を成形金型に吸引して水を排出させると同時にパルプ繊維を型に積層吸着させて型に対称な立体的な湿紙を形成し、次いで、成形金型をパルプ懸濁液から引き上げ、含水した立体的な湿紙の吸引脱水または加圧脱水を行う。
この際、成形金型面にパルプを積層吸着した成形金型は、真空吸引を続けながら、パルプ吸着面と対向させて、真空吸引をきかせた取り型(離型装置)を接近させ、パルプモールド中間体を圧縮真空吸引して脱水した後、成形金型の真空圧をゼロにして、取り型にパルプモールド中間体を吸着させた状態で取り方を引き戻して離型する。
【0030】
工程3は、前記抄き上げ工程後に得られたモールド中間体を加熱しながら第1のプレス金型と前記第1のプレス金型とは反対方向に位置する第2のプレス金型とによりホットプレスするホットプレス工程である。
工程3は、工程2で得られた脱水後のパルプモールド中間体を、たとえば、多孔質金型からなるホットプレス用の第1のプレス金型に移し変える。前記第1のプレス金型に移し変えられたパルプモールド中間体は、第1のプレス金型と、第1のプレス金型とは反対方向に位置し、第1のプレス金型に係合するホットプレス用の第2のプレス金型とによって加熱、加圧されて、所定のパルプモールド成形体が得られる。
なお、ホットプレス用の第1のプレス金型および第2のプレス金型の少なくとも1つに内部に電熱ヒーターを内蔵させ、それにより前記第1のプレス金型および第2のプレス金型の少なくとも1つを加熱することが好ましい。また、第1のプレス金型および第2のプレス金型を含む金型全体を熱風を導入した炉内に収容することによって、型の内部にも熱風が通過するようにしてもよい。
【0031】
工程3(ホットプレス工程)において、第1のプレス金型および第2のプレス金型によるプレス時の圧力は、表面平滑性に優れるパルプモールド成形体を得る観点から、好ましくは0.1MPa・s以上、より好ましくは0.3MPa以上、さらに好ましくは0.4MPa・s以上、よりさらに好ましくは0.6MPa以上であり、そして、消費電力および装置負荷の観点から、好ましくは3.0MPa・s以下、より好ましくは2.0MPa以下、さらに好ましくは1.5MPa・s以下である。
【0032】
工程3(ホットプレス工程)において、ホットプレス時の温度は、表面平滑性に優れるパルプモールド成形体を得る観点から、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは170℃以上であり、そして、消費電力、装置負荷、および変色抑制の観点から、好ましくは280℃以下、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは230℃以下である。
【0033】
上記のようにして得られたパルプモールド成形体は、さらに、不要部分の断裁、必要に応じて穴あけ等の加工を施されてもよい。
本実施形態のパルプモールド成形体は、ファインモールドと呼ばれる平滑性に優れる成形体であり、優れた耐油性および表面平滑性を生かして、食品、医療品、電子部品等の包装用材料として好適に用いることができる。また、表面平滑性に優れ、表面に印刷、塗工、ラミネート等の加工を施しやすいことから、上記の用途に限定されず、小物入れ、コップの蓋、置物等にも広く応用可能である。
【実施例】
【0034】
以下に実施例と比較例とを挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、実施例および比較例中の「部」および「%」は、とくに断らない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を示す。
【0035】
実施例1
広葉樹パルプであるアカシアパルプ50質量部と、非木材パルプであるバガスパルプ50質量部の混合パルプスラリー(混合パルプのカナダ標準ろ水度(CSF):510mL)に対して、固形分換算でサイズ剤としてAKD(アルキルケテンダイマー、星光PMC株式会社製)を、0.8質量%添加し、撹拌後にスラリー濃度を0.7%質量に調整した。該スラリーを表面に金属メッシュを貼った抄紙金型を沈め、金型内部から真空吸引し、メッシュ上にパルプスラリーを吸い付け、立体的な湿紙を形成した。湿紙を脱水用金型へ移送し、0.7MPaの圧力で加圧脱水し、続いて180℃に加熱された金型へ湿紙を移送し、さらに1.2MPaの圧力で加圧乾燥し、余分の部分を断裁した後、
図1に示すパルプモールド蓋を得た。
パルプモールド蓋のサイズ(直径)は、約75mm、厚みは約1.0mm、密度は約0.65g/cm
3であった。また、実施例2~13、および比較例1~5についても同様であった。
【0036】
実施例2
パルプ原料中のアカシアをユーカリに変更した以外は実施例1と同様に、
図1に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0037】
実施例3
パルプ原料中のアカシアをブナに変更した以外は実施例1と同様に、
図1に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0038】
実施例4
混合パルプスラリーを、アカシア(LBKP)/バガス=50/50(質量比)の混合パルプスラリー(カナダ標準ろ水度(CSF):400mL)に変更した以外は実施例1と同様に、
図1に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0039】
実施例5
混合パルプスラリーを、アカシア(LBKP)/バガス=50/50(質量比)の混合パルプスラリー(カナダ標準ろ水度(CSF):320mL)に変更した以外は実施例1と同様に、
図1に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0040】
実施例6
混合パルプスラリーを、アカシア(LBKP)/バガス=50/50(質量比)の混合パルプスラリー(カナダ標準ろ水度(CSF):180mL)に変更した以外は実施例1と同様に、
図1に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0041】
実施例7
パルプ原料中のバガスを竹に変更した以外は実施例1と同様に、
図1に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0042】
実施例8
パルプ原料中のバガスを竹に変更した以外は実施例2と同様に、
図1に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0043】
実施例9
広葉樹パルプであるアカシアパルプ50質量部と、針葉樹パルプであるラジアータパイン10質量部と、非木材パルプであるバガスパルプ40質量部の混合パルプスラリー(混合パルプのカナダ標準ろ水度(CSF):510mL)に対して、固形分換算でサイズ剤としてAKD(アルキルケテンダイマー、星光PMC株式会社製)を、0.8質量%添加し、撹拌後にスラリー濃度を0.7質量%に調整した。該スラリーを用いて、実施例1と同様に、
図1に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0044】
実施例10
パルプ原料を、アカシア(LBKP)/バガス=15/85(質量比)に変更した以外は実施例1と同様に、
図1に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0045】
実施例11
パルプ原料を、アカシア(LBKP)/バガス=30/70(質量比)に変更した以外は実施例1と同様に、
図1に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0046】
実施例12
パルプ原料を、アカシア(LBKP)/バガス=70/30(質量比)に変更した以外は実施例1と同様に、
図1に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0047】
実施例13
パルプ原料を、アカシア(LBKP)/バガス=85/15(質量比)に変更した以外は実施例1と同様に、
図1に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0048】
実施例14
金型を変えて、実施例13と同様の方法で
図2に示す包装用ボックスを作製した。
なお、包装用ボックスの箱の内側は、12.7cm×12.7cmであり、箱の外側は16.0cm×16.0cmであり、箱の外側の高さは5.0cm、箱の内側の深さは4.3cmであった。
【0049】
実施例14
金型を変えて、実施例13と同様の方法で
図2に示す包装用ボックスを作製した。
なお、包装用ボックスの箱の内側は、12.7cm×12.7cmであり、箱の外側は16.0cm×16.0cmであり、箱の外側の高さは5.0cm、箱の内側の深さは4.3cmであった。
【0050】
実施例15
原料パルプをアカシア/バガス=50/50に変更した以外は、実施例14と同様の方法で
図2に示す包装用ボックスを作製した。
【0051】
実施例16
原料パルプをアカシア/バガス=15/85に変更した以外は、実施例14と同様の方法で
図2に示す包装用ボックスを作製した。
【0052】
比較例1
混合パルプスラリーのカナダ標準ろ水度(CSF)を620mLに変更した以外は実施例7と同様に、
図1に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0053】
比較例2
アカシアをラジアータパインに変更した以外は実施例1と同様に、
図1に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0054】
比較例3
広葉樹パルプであるアカシアパルプ(カナダ標準ろ水度(CSF):510mL)に対して、固形分換算でサイズ剤としてAKD(アルキルケテンダイマー、星光PMC株式会社製)を、0.8質量%添加し、撹拌後にスラリー濃度を0.7質量%に調整した。該パルプスラリーを用いて、実施例1と同様に、
図1に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0055】
比較例4
アカシアをユーカリに変更した以外は比較例3と同様に、
図1に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0056】
比較例5
アカシアを竹に変更した以外は比較例3と同様に、
図1に示す形状のパルプモールド蓋を得た。
【0057】
[評価]
得られたパルプモールド成形体について、以下の評価を行った。
<平滑感(表面平滑性)の評価>
各実施例および比較例で作製したパルプモールド蓋を10個ずつ用意し、ISO 187:1990に準拠した環境(温度23℃±1℃、相対湿度50±2%)に24時間静置し、調温および調湿を行った。
上記環境でパルプモールド成形体表と裏を触り、下記のように評価した。評価は、訓練されたパネラー3名で行った。
4:非常に平滑であり、つるつるしている
3:表面にわずかに繊維があるが、平滑である
2:表面に繊維を多く感じるが、平滑感がある
1:表面に繊維が非常に多く感じるレベルか、表面にざらつき感があるレベル。
表中の数値は、1名あたり10個ずつ評価し、3名の合計30個の結果の平均値である。
【0058】
<耐油性の評価>
ひまし油/トルエン/ヘプタン=50/25/25の比率で試験液200mL(JAPAN TAPPI No.41:2000のキットナンバー6の配合相当)を作製し、実験に用いた。なお、実施例14については評価を行わなかった。
各実施例および比較例で作製したパルプモールド蓋を5個ずつ用意し、ISO 187:1990に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)に24時間静置し、調温および調湿を行った、上記環境でパルプモールド蓋の裏(裏面)に、上記試験液を25mmの高さから試薬瓶のスポイト(JAPAN TAPPI No.41:2000と同様の試薬瓶)を用いて1滴落とし、15秒後にパルプモールド蓋の表から観察した。
4:蓋の表に液の浸透が全く見られなかった
3:蓋の表に液の浸透がわずかに確認されたが、その面積は、裏の液の広がりの15%以下であった
2:蓋の表に液の浸透が見られ、その面積は、裏の液の広がりの15%を超え、50%以下であった
1:蓋の表に液の浸透が見られ、その面積は,裏の液の広がりの50%を超えるものであった
表中の数字は、5個のパルプモールド蓋で評価した結果の平均値である。
【0059】
【0060】
実施例および比較例の結果から、パルプモールド成形体のパルプ原料として、特定の木材パルプと非木材パルプとの混合パルプを使用し、カナダ標準ろ水度が特定の範囲である原料パルプを使用した実施例では、耐油性および表面平滑性に優れるパルプモールド成形体が得られた。
一方、特定の木材パルプと非木材パルプとの混合パルプを使用していても、カナダ標準ろ水度が本発明の範囲を外れる比較例1では、十分な表面平滑性が得られなかった。また、木材パルプとして針葉樹パルプであるラジアータパインを使用した比較例2では、十分な表面平滑性が得られなかった。
また、非木材パルプを使用していない比較例3および4では、耐油性に劣るものであった。さらに、木材パルプを使用していない比較例5では、表面平滑性に劣るものであった。
【0061】
実施例2-1
実施例14で得られた包装用ボックスに対して、真空ラミネーション法を用いて、PETフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、東レ株式会社製、フィルム膜厚=70μm)を真空ラミネートし、二次加工パルプモールド成形体を得た。
その結果、表面に艶が出て、意匠性が良好であるとともに、耐水性、強度が向上した。
【0062】
実施例2-2
実施例14で得られた包装用ボックスの平坦部に対して、アップダウン式のホットスタンプ法を用いて、アルミ蒸着層を転写し、二次加工モールド成形体を得た。アルミ蒸着層の膜厚は5μmであった。
その結果、意匠性が向上した。
【0063】
実施例2-3
実施例14で得られた包装用ボックスに対して、真空ラミネーション法を用いて、樹脂フィルムの内側に印刷を施したPPフィルム(ポリプロピレン、東レ株式会社製、フィルム膜厚=100μm)をラミネートし、二次加工パルプモールド成形体を得た。
その結果、印刷柄が鮮明で、光沢を持ち、装飾性が向上した。また印刷を樹脂フィルムの内側に施したことで、耐傷性や耐汚染性の表面性能が向上した。
【0064】
実施例2-4
実施例14で得られた包装用ボックスに対して、真空ラミネーション法を用いて、樹脂の外側に印刷を施したPPフィルム(ポリプロピレン、東レ株式会社製、フィルム膜厚=100μm)をラミネートし、二次加工パルプモールド成形体を得た。
その結果、意匠性が向上した。
【0065】
実施例2-5
実施例15で得られた包装用ボックスに対して、真空ラミネーション法を用いて、樹脂の内側に印刷を施したPPフィルム(ポリプロピレン、東レ株式会社製、フィルム膜厚=100μm)をラミネートし、二次加工パルプモールド成形体を得た。
その結果、印刷柄が鮮明で、光沢を持ち、装飾性が向上した。また印刷を樹脂フィルムの内側に施したことで、耐傷性や耐汚染性の表面性能が向上した。
【0066】
実施例2-6
実施例16で得られた包装用ボックスに対して、真空ラミネーション法を用いて、樹脂の内側に印刷を施したPPフィルム(ポリプロピレン、東レ株式会社製、フィルム膜厚=100μm)をラミネートし、二次加工パルプモールド成形体を得た。
その結果、印刷柄が鮮明で、光沢を持ち、装飾性が向上した。また印刷を樹脂フィルムの内側に施したことで、耐傷性や耐汚染性の表面性能が向上し、かつ実施例2-4よりも画像の光沢が優れていた。ただし、パルプモールド成形体と樹脂フィルムとの接着性は、実施例2-3および2-5よりは劣り、印刷された画像に歪みが生じた。これは、パルプモールドの表面平滑性がやや劣るため、パルプモールド成形体と樹脂フィルムとの密着性が低下し、印刷部分と成形体の間にわずかな空間が生まれたためと推察される。また、これにより、ラミネート後のフィルム表面の平滑性も低下した。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のパルプモールド成形体は、表面平滑性および耐油性に優れ、食品等の包装材料を含めた、種々の用途への応用が期待される。