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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023133564
(22)【出願日】2023-08-18
(62)【分割の表示】P 2022001025の分割
【原出願日】2022-01-06
(65)【公開番号】P2023144102
(43)【公開日】2023-10-06
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】神▲崎▼ 健豪
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 成祥
【審査官】小林 直暉
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-083392(JP,A)
【文献】特開2020-099224(JP,A)
【文献】米国特許第06314348(US,B1)
【文献】特開2020-018238(JP,A)
【文献】特開2020-065469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00-69/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体を走行させる走行装置(2)と、作業者が搭乗する操縦部(5)を備え、
前記操縦部(5)に、前記走行装置(2)の左右方向の旋回を操作する旋回操作部材(12)と、前記旋回操作部材(12)の操作に依らずに前記走行装置(2)の旋回させるコントローラ(30)を有し、
前記コントローラ(30)は、前記作業者により指定された第1基準点(42)と、前記第1基準点(42)から機体の進行方向に所定の距離隔てた第2基準点(43)を通る直線である基準経路(41)に沿って機体が進行するように前記走行装置(2)を制御し、
前記基準経路(41)に沿って進行するように前記走行装置(2)を制御されているときに、前記旋回操作部材(12)の操作量が所定以下で前記操縦部(5)の設定部材(11B)が入力操作された場合には新たな第2基準点(43)を取得し、前記第1基準点(42)と前記新たな第2基準点(43)に基づいて新たな基準経路(41)を設定することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記コントローラ(30)は、前記旋回操作部材(12)の操作量が所定量を超える場合には機体の自動走行を停止させる、請求項1に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動走行可能な作業車両に関して、圃場に植立された穀稈条列上に第1基準点を設け、穀稈条列上の第1基準点から所定の距離隔てた部位に第2基準点を設け、第1基準点と第2基準点を通る直線状の基準経路に沿ってコンバインを自動走行させる技術が知られている。(特許文献1)
また、従来の穀稈の刈取作業方法では、コンバインの走行位置が基準経路上から所定寸法以上に離間した場合や、コンバインの進行方向が基準経路の延在方向から所定角度以上離間した場合には、基準経路の再設定を行う技術が知られている。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-99224号公報
【文献】特開2020―103094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1,2の穀稈の刈取作業方法では、基準経路の再設定を行う場合には、穀稈条列上に新たに第1基準点と第2基準点を設けるので、作業者の作業負担が増加し、また、コンバインの進行方向が大きく変更されてコンバインの自動運転が不安定になるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、作業者の作業負担を軽減して、作業車両の自動運転の安定性を高めることを課題としている
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
【0007】
すなわち、請求項1記載の発明は、機体を走行させる走行装置(2)と、作業者が搭乗する操縦部(5)を備え、前記操縦部(5)に、前記走行装置(2)の左右方向の旋回を操作する旋回操作部材(12)と、前記旋回操作部材(12)の操作に依らずに前記走行装置(2)の旋回させるコントローラ(30)を有し、前記コントローラ(30)は、前記作業者により指定された第1基準点(42)と、前記第1基準点(42)から機体の進行方向に所定の距離隔てた第2基準点(43)を通る直線である基準経路(41)に沿って機体が進行するように前記走行装置(2)を制御し、前記基準経路(41)に沿って進行するように前記走行装置(2)を制御されているときに、前記旋回操作部材(12)の操作量が所定以下で前記操縦部(5)の設定部材(11B)が入力操作された場合には新たな第2基準点(43)を取得し、前記第1基準点(42)と前記新たな第2基準点(43)に基づいて新たな基準経路(41)を設定することを特徴とする作業車両である。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記コントローラ(30)は、前記旋回操作部材(12)の操作量が所定量を超える場合には機体の自動走行を停止させる、請求項1に記載の作業車両である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、旋回操作部材(12)の操作量が所定以下で前記操縦部(5)の設定部材(11B)が入力操作された場合には、第1基準点(42)と新たな第2基準点(43)に基づいて新たな基準経路(41)を設定するので、作業者の作業負担を軽減して、コントローラ(30)の自動操縦によるコンバインの自動走行を安定して行うことができる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、旋回操作部材(12)の操作量が所定量を超える場合には機体の自動走行を停止させるので、作業者の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】コンバインの左側面図である。
図2】コンバインの平面図である。
図3】測位ユニットの接続図である。
図4】コントローラの接続図である。
図5】基準経路と基準経路に基づいて設定された設定経路の説明図である。
図6】基準経路の設定方法の説明図である。
図7】コンバインの自動走行の説明図であり、(a)は基準経路と穀稈条列、(b)はコンバインの自動走行状態、(c)はコンバインの自動走行の停止状態、(d)は基準経路の再設定状態を示している。
図8】追刈り作業時のコンバインの自動走行の説明図であり、(a)はコンバインの前進時、(b)はコンバインの後進時を示している。
図9】基準外形と基準外形の内側に設定された設定経路の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1,2に示すように、コンバインは、機体フレーム1の下側に土壌面を走行する左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の前側に圃場の穀稈を刈取る刈取装置3が設けられ、刈取装置3の後方左側に刈取られた穀稈を脱穀・選別処理する脱穀装置4が設けられ、刈取装置3の後方右側に作業者が搭乗する操縦部5が設けられている。
【0013】
操縦部5の下側にはエンジンEを搭載するエンジンルーム6が設けられ、操縦部5の後側には脱穀・選別処理された穀粒を貯留するグレンタンク7が設けられ、グレンタンク7の後側に穀粒を外部に排出する上下方向に延在する揚穀部と前後方向に延在する横排出からなる排出オーガ8が設けられている。
【0014】
操縦部5の座席の前側のフロントパネルの中央部には、走行装置2の走行速度等を表示するモニタ11が設けられ、モニタ11の右側には、走行装置2を左右方向の旋回や刈取装置3の上下方向の移動等を操作する操作レバー12(「旋回操作部材」とも称する)が設けられ、モニタ11と操作レバー12の間には、走行装置2を後述する直線状の基準経路41上や設定経路45上を自動走行させる直線アシストスイッチ13が設けられている。また、操作レバー12の操作状態は、操作レバー12の基部に設けられたポテンションメータ等の角度センサ12Aによって測定されている。
【0015】
操縦部5の座席の左側のサイドパネルの前部には、走行装置2の走行速度の増減速を行う変速レバー15が設けられている。また、変速レバー15の操作状態は、変速レバー14の基部に設けられたポテンションメータ等の角度センサ15Aによって測定されている。
【0016】
図3に示すように、RTK-GPS測位方式である測位ユニット20は、測位衛星21と、既知の位置に設けられた基地局22と、コンバインに設けられた移動局26で構成されている。これにより、測位衛星21から移動局26に送信されてくる位置情報と基地局22から移動局26に送信されてくる補正用の位置情報から移動局26の位置、すなわちコンバインの位置を正確に得ることができる。
【0017】
基地局22は、固定用通信機23と、測位衛星21からの位置情報を受信する固定用GPSアンテナ24と、移動局26に補正用の位置情報を送信する固定用データ送信アンテナ25で構成されている。
【0018】
移動局26は、移動用通信機27と、測位衛星21からの位置情報を受信する移動用GPSアンテナ28と、基地局22からの補正用の位置情報を受信する移動用データ送信アンテナ29で構成されている。
【0019】
図4に示すように、コンバインのコントローラ30は、CPU等からなる処理部31と、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等からなる記憶部32と、外部とのデータ通信用の通信部33から形成されている。
【0020】
処理部31は、後述する第1基準点42と第2基準点43の位置に基づいて、第1基準点42と第2基準点43を結ぶ直線状の基準経路41を設定したり、走行装置2の走行状態の判断等を行う。
【0021】
記憶部32は、処理部31で算出された第1基準点42と第2基準点43の位置の保存等を行う。
【0022】
コントローラ30の入力側には、刈取装置3内の穀稈の有無を検出する穀稈センサ3Aと、刈取装置3の作業姿勢と退避姿勢を検出する高さセンサ3Bと、第1基準点42の設定を行う第1基準点設定スイッチ11Aと、第2基準点43の設定を行う第2基準点設定スイッチ11B(「設定部材」とも称する)と、第3基準点44の設定を行う第3基準点設定スイッチ11Cと、操作レバー12の操作量を測定する角度センサ12Aと、基準経路41に沿ってコンバインを自動走行させる直線アシストスイッチ13と、走行装置2の走行速度の増減や停止操作を行う変速レバー15の操作位置を測定する角度センサ15Aと、測位衛星21からのコンバインの位置情報を受信する移動用GPSアンテナ28と、基地局22からのコンバインの補正用の位置情報を受信する移動用データ送信アンテナ29が所定の入力インターフェース回路を介して接続されている。
【0023】
コントローラ30の出力側には、基準経路41に沿ってコンバインを自動走行させる自動操縦スイッチ35が所定の出力インターフェース回路を介して接続されている。
【0024】
図5には、圃場40の上部に設定された左右方向に延在する基準経路41と、基準経路41と上下方向に所定の間隔を隔てて、基準経路41と平行に設定された設定経路45を図示している。なお、符号40Aは、コンバイン等の搬入場所を示している。
【0025】
基準経路41は、圃場40のコンバイン等の搬入場所40Aの左側に設けられた第1基準点42と、第1基準点42の進行方向の左側に位置する第2基準点43をとおる直線を左右方向に延在させて設定される。なお、第1基準点42と第2基準点43の間隔は5m程度にするのが好ましい。
【0026】
第1基準点42の位置は、作業者がモニタ11のタッチパネル上に表示される第1基準点設定スイッチ11Aを入力操作すると、コントローラ30の処理部31が、その入力操作時に送信されてくる測位衛星21と基地局22から送信されてくるコンバインの位置情報に基づいてコントローラ30の処理部31で算出して記憶部32に保存される。なお、第1基準点設定スイッチ11Aに替えて、刈取装置3の引起装置に設けられた穀稈の有無を検出する穀稈センサ3Aや、刈取装置3の昇降状態を検出する高さセンサ3Bを使用することができる。すなわち、第1基準点設定スイッチ11Aの入力操作に替えて、穀稈センサ3Aが穀稈を検出してONになった状態や、高さセンサ3Bが刈取装置3の下降状態を検出してONになった状態を使用することができる。
【0027】
第2基準点43の位置は、作業者がモニタ11のタッチパネル上に表示される第2基準点設定スイッチ11Bを入力操作すると、コントローラ30の処理部31が、その入力操作時に送信されてくる測位衛星21と基地局22から送信されてくるコンバインの位置情報に基づいてコントローラ30の処理部31で算出して記憶部32に保存される。なお、第2基準点設定スイッチ11Bに替えて、刈取装置3の引起装置に設けられた穀稈の有無を検出する穀稈センサ3Aや、刈取装置3の昇降状態を検出する高さセンサ3Bを使用することができる。すなわち、第2基準点設定スイッチ11Bの入力操作に替えて、穀稈センサ3Aが穀稈を検出してONになった状態や、高さセンサ3Bが刈取装置3の下降状態を検出してONになった状態を使用することができる。
【0028】
基準経路41は、第1基準点42と第2基準点43をとおる左右方向に延在した直線における第1基準点42と第3基準点44の間に位置する部位である。
【0029】
第3基準点44の位置は、作業者がモニタ11のタッチパネル上に表示される第3基準点設定スイッチ11Cを入力操作すると、コントローラ30の処理部31が、その入力操作時に送信されてくる測位衛星21と基地局22から送信されてくるコンバインの位置情報に基づいてコントローラ30の処理部31で算出されて記憶部32に保存される。
【0030】
基準経路41における第1基準点42と第2基準点43の間の経路では、作業者がコンバインを操縦して走行させる。また、基準経路41における第2基準点43と第3基準点44の間の経路では、作業者が直線アシストスイッチ13を入力操作すると処理部31がコンバインを自動操縦して基準経路41上を自動走行させる。これにより、コンバインの蛇行走行を抑制して、コンバインの蛇行走行による隣接する条に植立された穀稈を踏み倒すのを防止することができる。なお、直線アシストスイッチ13に替えて、刈取装置3の引起装置に設けられた穀稈の有無を検出する穀稈センサ3Aや、刈取装置3の昇降状態を検出する高さセンサ3Bを使用することができる。すなわち、直線アシストスイッチ13の入力操作に替えて、穀稈センサ3Aが穀稈を検出してONになった状態や、高さセンサ3Bが刈取装置3の下降状態を検出してONになった状態を使用することができる。
【0031】
作業者は、操作レバー12を操作しコンバインを下方右側に向かって旋回させて、コンバインを基準経路41の第3基準点44から離脱させた後に、コンバインを基準経路41の下側に設定された設定経路45の左端部に移動させる。これにより、直線アシストスイッチ13の入力は解除されて、処理部31の自動操縦から作業者の操縦に切替わる。
【0032】
作業者は、コンバインを設定経路45の左端部に移動させた後に、直線アシストスイッチ13を入力操作すると処理部31がコンバインを自動操縦して設定経路45上を自動走行させる。これにより、コンバインの蛇行走行を抑制して、コンバインの蛇行走行による隣接する条に植立された穀稈を踏み倒すのを防止することができる。なお、設定経路45は、基準経路41と平行に設定され、その設定経路45の経路長さも基準経路41の経路長さ、すなわち第1基準点42から第3基準点44の長さと同一長さに設定されている。
【0033】
<基準経路の設定方法>
図6に示すように、ステップS1で、コントローラ30の処理部31は、第1基準点設定スイッチ11Aが入力操作されたか否か判断する。第1基準点設定スイッチ11Aが入力操作されたと判断した場合にはステップS2に進み、第1基準点設定スイッチ11Aが入力操作されていないと判断した場合にはステップS1を繰返す。なお、処理部31が処理を開始する前に、コンバインは、作業者の操縦により走行している。
【0034】
ステップS2で、処理部31は、測位衛星21から送信されてくるコンバインの位置情報と、基地局22から送信されてくるコンバインの位置情報に基づいて第1基準点42の位置を算出して、第1基準点42の位置を記憶部32に保存してステップS3に進む。なお、測位衛星21から送信されてくるコンバインの位置情報は、移動用GPSアンテナ28を介してコントローラ30に入力され、基地局22から送信されてくるコンバインの位置情報は、移動用データ送信アンテナ29を介してコントローラ30に入力される。
【0035】
ステップS3で、処理部31は、第2基準点設定スイッチ11Bが入力操作されたか否か判断する。第2基準点設定スイッチ11Bが入力操作されたと判断した場合にはステップS4に進み、第2基準点設定スイッチ11Bが入力操作されていないと判断した場合にはステップS3を繰返す。
【0036】
ステップS4で、処理部31は、測位衛星21から送信されてくるコンバインの位置情報と、基地局22から送信されてくるコンバインの位置情報に基づいて第2基準点43の位置を算出して、第2基準点43の位置を記憶部32に保存してステップS5に進む。
【0037】
ステップS5で、処理部31は、直線アシストスイッチ13が入力操作されたか否か判断する。直線アシストスイッチ13が入力操作されたと判断した場合にはステップS6に進み、直線アシストスイッチ13が入力操作されていないと判断した場合にはステップS5を繰返す。
【0038】
ステップS6で、図7(a)に示すように、処理部31は、記憶部32に保存された第1基準点42と第2基準点43の位置を読出して、第1基準点42と第2基準点43の位置に基づいて、第1基準点42と第2基準点43を結ぶ直線状の基準経路41を設定してステップS7に進む。
【0039】
ステップS7で、処理部31は、自動操縦スイッチ35を入力操作して、処理部31の自動操縦による自動走行を開始してステップS8に進む。
【0040】
処理部31の自動操縦による自動走行の場合には、処理部31が走行装置2の走行方向の操作を行い、作業者が変速レバー15を操作して走行装置2の走行速度の増減や走行停止の操作を行う。これにより、作業者の運転作業の負担を削減することができる。また、図7(b)に示すように、操縦者は、操作レバー12を操作して基準経路41上の自動走行するコンバインを穀稈条列46に近づけることができる。なお、符号47は、操縦者が操作レバー12を操作してコンバインを走行させた実際の走行経路を示している。
【0041】
ステップS8で、処理部31は、走行装置2が走行しているか否か判断する。走行装置2が走行していると判断した場合にはステップS9に進み、走行装置2の走行が停止していると判断した場合にはステップS10に進む。なお、本実施形態では、走行装置2が走行しているか否かの判断は、角度センサ15Aの測定値に基づいて行われ、角度センサ15Aの測定値が、変速レバー15の前側傾斜姿勢を示す場合には走行していると判断し、角度センサ15Aの測定値が変速レバー15の中立傾斜姿勢を示す場合には走行が停止している判断している。なお、角度センサ15Aの測定値に替えて、走行装置2に設けられた走行装置2の走行速度を測定する速度センサを使用することもできる。
【0042】
ステップS9で、処理部31は、作業者が操作する操作レバー12の操作量が所定の範囲内であるか否か判断する。作業者が操作する操作レバー12の操作量が所定の範囲内の場合にはステップS11に進み、作業者が操作する操作レバー12の操作量が所定の範囲を超えている場合にはステップS13に進む。これにより、図7(b)に示すように、コンバインが自動走行する基準経路41が穀稈条列46と一致しない、すなわち、基準経路41と穀稈条列46が平行でない場合、基準経路41と穀稈条列46は平行であるか所定の距離隔たっている場合には、操作レバー12を操作してコンバインを穀稈条列46に近づけて未刈穀稈の発生を抑制することができる。また、図7(c)に示すように、コンバインが自動走行する基準経路41が穀稈条列46と大きく一致しない場合には、コンバインの自動走行を停止して、自動走行が不安定になって蛇行走行するのを防止することができる。
【0043】
ステップS10で、処理部31は、走行装置2の走行停止時間が所定の時間以内であるか否か判断する。走行装置2の走行停止時間が所定の時間以内であると判断した場合にはステップS6に戻り、走行装置2の走行停止時間が所定の時間よりも長いと判断した場合にはステップS13に進む。
【0044】
ステップS11で、処理部31は、第2基準点設定スイッチ11Bが入力操作されていないか否か判断する。第2基準点設定スイッチ11Bが入力操作されていないと判断した場合にはステップS12に進み、第2基準点設定スイッチ11Bが入力操作されたと判断した場合にはステップS14に進む。これにより、作業者が、コンバインが自動走行する基準経路41が穀稈条列46と大きく一致しないと判断した場合、新たに第2基準点43を算出して、第1基準点42と新たに第2基準点43を結ぶ新たな直線状の基準経路41を設定して、未刈穀稈の発生を抑制することができる。
【0045】
ステップS12で、処理部31は、第3基準点設定スイッチ11Cが入力操作されたか否か判断する。第3基準点設定スイッチ11Cが入力操作されたと判断した場合にはステップS13に進み、第3基準点設定スイッチ11Cが入力操作されていないと判断した場合にはステップS11を繰返す。
【0046】
ステップS13で、処理部31は、自動操縦スイッチ35の入力を解除操作して、処理部31は、処理部31の自動操縦による自動走行を停止する。これにより、操縦者の操縦による走行によってコンバインの旋回移動等を行うことができる。
【0047】
ステップS14で、処理部31は、基準経路41の設定を取消してステップS15に進む。
【0048】
ステップS15で、処理部31は、測位衛星21から送信されてくるコンバインの位置情報と、基地局22から送信されてくるコンバインの位置情報に基づいて第2基準点43の位置を算出して、第2基準点43の位置を記憶部32に保存してステップS5に進む。
これにより、図7(d)に示すように、新たに設定された基準経路41を穀稈条列46の近位部に設定して未刈穀稈の発生をより抑制することができる。
【0049】
<追刈り作業>
図8(a)に示すように、追刈り作業では、倒伏している穀稈の根元側から穂先側に向けてコンバインを自動走行させる基準経路41を設定する。次に、図8(b)に示すように、第3基準点44に到達したコンバインを基準経路41上に沿って後側に向かって自動走行させる基準経路41Aを設定する。これにより、刈取装置3の引起装置で激しく倒伏した穀稈を引起こして効率良く刈取ることができる。
【0050】
コンバインを前側に向かって自動走行させる基準経路41の距離L1よりもコンバインを後側に向かって自動走行させる基準経路41Aの距離L2を短く設定するのが好ましい。これにより、コンバインを後側に向かって自動走行させた場合に、コンバインが圃場の外周部の畦に衝突するのを防止することができる。
【0051】
<回刈り作業>
操縦者は、圃場の外周部に沿ってコンバインを反時計周りに走行させて圃場の外周部に植立した穀稈の刈取作業を行いながらコンバインのαターン等の旋回領域を確保して基準外形50の設定を行う。これにより、自動走行中のコンバインが圃場の外周部の畦等と衝突するのを防止することができる。
【0052】
図9に示すように、基準外形50は、圃場の上部に左右方向に延在する基準経路51と、圃場の左部に上下方向に延在する基準経路52と、圃場の下部に左右方向に延在する基準経路53と、圃場の右部に上下方向に延在する基準経路54から形成されている。
【0053】
コントローラ30の処理部31は、刈取装置3に設けられた穀稈センサ3Aが穀稈を検出したON信号と、刈取装置3に設けられた高さセンサ3Bが刈取装置3が下降して作業姿勢を検出したON信号が入力された場合に、移動用GPSアンテナ28を介して測位衛星21から送信されてくるコンバインの位置情報と、移動用データ送信アンテナ29を介して基地局22から送信されてくるコンバインの位置情報に基づいて始点51A~54Aの位置情報を算出し、始点51A~54Aの位置情報を記憶部32に保存する。これにより、穀稈センサ3AのON信号と高さセンサ3BのON信号が入力された場合に自動的に始点51A~54Aの位置情報を算出されるので作業者の作業負担を軽減することができる。
【0054】
次に、処理部31は、刈取装置3に設けられた穀稈センサ3Aが穀稈を検出しないOFF信号と、刈取装置3に設けられた高さセンサ3Bが刈取装置3が上昇して待避姿勢を検出してOFF信号が入力された場合に、移動用GPSアンテナ28を介して測位衛星21から送信されてくるコンバインの位置情報と、移動用データ送信アンテナ29を介して基地局22から送信されてくるコンバインの位置情報に基づいて終点51B~54Bの位置情報を算出し、終点51B~54Bの位置情報を記憶部32に保存する。これにより、穀稈センサ3AのOFF信号と高さセンサ3BのOFF信号が入力された場合に自動的に終点51B~54Bの位置情報を算出されるので作業者の作業負担を軽減することができる。
【0055】
処理部31は、記憶部32から始点51A~54Aの位置情報と終点51B~54Bの位置情報を読出した後に、始点51Aと終点51Bの位置情報に基づいて基準経路51を設定し、始点52Aと終点52Bの位置情報に基づいて基準経路52を設定し、始点53Aと終点53Bの位置情報に基づいて基準経路53を設定し、始点54Aと終点54Bの位置情報に基づいて基準経路54を設定する。
【0056】
処理部31は、基準経路54と基準経路51の交点を算出して隅点P1とし、基準経路51と基準経路52の交点を算出して隅点P2とし、基準経路52と基準経路53の交点を算出して隅点P3とし、基準経路53と基準経路54の交点を算出して隅点P4とする。
【0057】
次に、処理部31は、基準外形50を、基準経路51における隅点P1と隅点P2の間の部位と、基準経路52における隅点P2と隅点P3の間の部位と、基準経路53における隅点P3と隅点P4の間の部位と、基準経路54における隅点P4と隅点P1の間の部位で形成する。
【0058】
処理部31は、基準外形50から刈取装置3の刈幅隔てた内側に、処理部31が自動操縦してコンバインを自動走行させる反時計回りの設定経路55を設定する。これにより、基準外形50の内側に設定経路55を容易に設定することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 機体フレーム
2 走行装置
3 刈取装置
5 操縦部
11B 第2基準点設定スイッチ
12 操作レバー
30 コントローラ
41 基準経路
42 第1基準点
43 第2基準点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9