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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】車両及び車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20241008BHJP
   F01P 3/12 20060101ALI20241008BHJP
   F01P 7/16 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
F01N3/08 B
F01P3/12
F01P7/16 504D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023136051
(22)【出願日】2023-08-24
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 聖
(72)【発明者】
【氏名】横井 健
(72)【発明者】
【氏名】伊東 光
(72)【発明者】
【氏名】今村 稔朗
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-154092(JP,A)
【文献】特開2017-071910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
F01P 3/12
F01P 7/16
E02F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
モータと、
前記モータに供給する電力を蓄えるバッテリと、
前記エンジンから排出された排出ガスを浄化するために前記排出ガスに尿素水を噴霧するSCR装置と、
前記バッテリ又は前記モータに冷却液を供給することにより前記バッテリ又は前記モータを冷却する冷却システムと、
前記冷却システムの動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記冷却システムは、
前記冷却液が流れ、前記冷却液と前記モータ又は前記バッテリとの間で熱交換する第1流路と、
前記冷却液が流れ、前記冷却液と前記尿素水との間で熱交換をする第2流路と、
前記冷却液が前記第1流路を流れる状態と、前記冷却液が前記第1流路及び前記第2流路を流れる状態とを切り換えるバルブと、
を有し、
前記制御装置は、
前記尿素水の温度が第1閾値以下の場合、前記冷却液が尿素水タンクに供給されるように、前記バルブの状態を、前記冷却液が前記第1流路及び前記第2流路を流れる状態に制御し、かつ、
前記バッテリからの電力で前記モータを動作させて車両を走行させるモータ駆動モードの状態で前記バッテリの残量が閾値以下であり、前記尿素水の温度が前記第1閾値以下の場合、前記冷却液が前記尿素水タンクに供給されるように前記バルブの状態を前記冷却液が第1流路及び前記第2流路を流れる状態に切り替える、
車両。
【請求項2】
前記制御装置は、前記尿素水の温度が第1閾値より高い場合、前記バルブの状態を、前記冷却液が前記第1流路を流れ、前記第2流路を流れない状態に制御する、
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記尿素水の温度が第1閾値以下の場合に、単位時間当たり第1量の前記冷却液を圧送する解凍モードで冷却液を圧送するポンプを動作させ、
前記尿素水の温度が前記第1閾値を超え、前記第1閾値より大きい第2閾値以下の場合、単位時間当たりの排出量が前記第1量よりも少量の第2量の前記冷却液を圧送する凍結防止モードで前記ポンプを動作させる、
請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記制御装置は、前記尿素水の温度が第2閾値より高い場合、前記バルブの状態を、前記冷却液が前記第1流路を流れ、前記第2流路を流れない状態に制御する、
請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記モータに電力を供給するためのインバータをさらに備え、
前記冷却システムは、前記インバータにも前記冷却液を供給する、
請求項1に記載の車両。
【請求項6】
エンジンと、
モータと、
前記モータに供給する電力を蓄えるバッテリと、
前記エンジンから排出された排出ガスを浄化するために前記排出ガスに尿素水を噴霧するSCR装置と、
前記バッテリ又は前記モータに冷却液を供給することにより前記バッテリ又は前記モータを冷却する冷却システムと、
を備え、
前記冷却システムは、
前記冷却液が流れ、前記冷却液と前記モータ又は前記バッテリとの間で熱交換する第1流路と、
前記冷却液が流れ、前記冷却液と前記尿素水との間で熱交換をする第2流路と、
前記冷却液が前記第1流路を流れる状態と、前記冷却液が前記第1流路及び前記第2流路を流れる状態とを切り換えるバルブと、
を有する車両の制御方法であって、
制御装置が、前記尿素水の温度が第1閾値以下の場合、前記冷却液が尿素水タンクに供給されるように、前記バルブの状態を、前記冷却液が前記第1流路及び前記第2流路を流れる状態に制御するステップと、
前記バッテリからの電力で前記モータを動作させて車両を走行させるモータ駆動モードの状態で前記バッテリの残量が閾値以下であり、前記尿素水の温度が前記第1閾値以下の場合、前記制御装置が、前記冷却液が前記尿素水タンクに供給されるように前記バルブの状態を前記冷却液が第1流路及び前記第2流路を流れる状態に切り替えるステップと、
を有する、
車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両及び車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンの排出ガス中のNOxを浄化するための排ガス浄化システムとして、SCR(Selective Catalytic Reduction:選択還元触媒)装置を用いたSCRシステムが知られている。
【0003】
SCRシステムは、尿素水を排出ガス中に供給する。排出ガスの熱によりアンモニアが生成され、このアンモニアによって、SCR触媒上でNOxが還元されることにより排出ガスが浄化される。尿素水は、約-11℃で凍る。したがって、寒冷地ではSCR装置がうまく機能しないおそれがある。その対策として、エンジンの冷却液を循環させる冷却ラインが尿素タンク内に通されて、この冷却液と尿素水との間での熱交換により尿素水を解凍する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-013060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術のように、エンジン冷却液を尿素水の解凍に用いる場合、例えばプラグインハイブリッド車ではエンジンの使用頻度が低くエンジン冷却液の温度が十分ではなく、尿素水を解凍できないという問題が生じる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、走行時のエンジンの使用頻度が比較的低い場合であっても、SCR装置の尿素水を良好に解凍できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態の車両は、エンジンと、モータと、前記モータに供給する電力を蓄えるバッテリと、前記エンジンから排出された排出ガスを浄化するために前記排出ガスに尿素水を噴霧するSCR装置と、前記バッテリ又は前記モータに冷却液を供給することにより前記バッテリ又は前記モータを冷却する冷却システムと、前記冷却システムの動作を制御する制御装置と、を備え、前記冷却システムは、前記冷却液が流れ、前記冷却液と前記モータ又は前記バッテリとの間で熱交換する第1流路と、前記冷却液が流れ、前記冷却液と前記尿素水との間で熱交換をする第2流路と、前記冷却液が前記第1流路を流れる状態と、前記冷却液が前記第1流路及び前記第2流路を流れる状態とを切り換えるバルブと、を有し、前記制御装置は、前記尿素水の温度が第1閾値以下の場合、前記冷却液が尿素水タンクに供給されるように、前記バルブの状態を、前記冷却液が前記第1流路及び前記第2流路を流れる状態に制御する。
【0008】
前記制御装置は、前記尿素水の温度が第1閾値より高い場合、前記バルブの状態を、前記冷却液が前記第1流路を流れ、前記第2流路を流れない状態に制御してもよい。
【0009】
前記制御装置は、前記尿素水の温度が第1閾値以下の場合に、単位時間当たり第1量の前記冷却液を圧送する解凍モードで冷却液を圧送するポンプを動作させ、前記尿素水の温度が前記第1閾値を超え、前記第1閾値より大きい第2閾値以下の場合、単位時間当たりの排出量が前記第1量よりも少量の第2量の前記冷却液を圧送する凍結防止モードで前記ポンプを動作させてもよい。
【0010】
前記制御装置は、前記尿素水の温度が第2閾値より高い場合、前記バルブの状態を、前記冷却液が前記第1流路を流れ、前記第2流路を流れない状態に制御してもよい。
【0011】
前記制御装置は、前記バッテリからの電力で前記モータを動作させて車両を走行させるモータ駆動モードの状態で前記バッテリの残量が閾値以下であり、前記尿素水の温度が前記第1閾値以下の場合、前記冷却液が前記尿素水タンクに供給されるように前記バルブの状態を前記冷却液が第1流路及び前記第2流路を流れる状態に切り替えてもよい。
【0012】
本発明の一形態の車両は、前記モータに電力を供給するためのインバータをさらに備え、前記冷却システムは、前記インバータにも前記冷却液を供給してもよい。
【0013】
本発明の一形態の車両の制御方法は、エンジンと、モータと、前記モータに供給する電力を蓄えるバッテリと、前記エンジンから排出された排出ガスを浄化するために前記排出ガスに尿素水を噴霧するSCR装置と、前記バッテリ又は前記モータに冷却液を供給することにより前記バッテリ又は前記モータを冷却する冷却システムと、を備え、前記冷却システムは、前記冷却液が流れ、前記冷却液と前記モータ又は前記バッテリとの間で熱交換する第1流路と、前記冷却液が流れ、前記冷却液と前記尿素水との間で熱交換をする第2流路と、前記冷却液が前記第1流路を流れる状態と、前記冷却液が前記第1流路及び前記第2流路を流れる状態とを切り換えるバルブと、を有する車両の制御方法であって、制御装置が、前記尿素水の温度が第1閾値以下の場合、前記冷却液が尿素水タンクに供給されるように、前記バルブの状態を、前記冷却液が前記第1流路及び前記第2流路を流れる状態に制御するステップを有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、走行時のエンジンの使用頻度が比較的低い場合であっても、SCR装置の尿素水を良好に解凍できる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】車両の構成を模式的に示す図である。
図2】尿素水を解凍するための動作を示すフローチャートである。
図3】解凍モードと凍結防止モードとの切り換えを行うための動作を示すフローチャートである。
図4】エンジン駆動モードに備えて尿素水を解凍するための動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、車両S100の構成を模式的に示す図である。図1において実線の矢印は第1流路を流れる冷却液の流れを示し、破線の矢印は第2流路を流れる冷却液の流れを示す。車両S100は、一例として、動力源としてエンジン及びモータを有するプラグインハイブリッド車両である。車両S100は、例えばトラック等の大型車両である。
【0017】
車両S100は、主要な構成要素として、エンジン10と、モータ21と、インバータ22と、バッテリ23と、SCR装置30と、冷却システム40と、制御装置50と、を備えている。
【0018】
車両S100の特徴の1つは、SCR装置30の尿素水を解凍するのに、エンジン冷却液ではなく、モータ21、インバータ22及びバッテリ23を冷却するための冷却液を用いる点にある。このような構成によれば、エンジン10の使用頻度が低くエンジン冷却液の温度が十分でない場合でも、モータ21等の冷却によって昇温した冷却液によって尿素水を良好に解凍させることができる。
【0019】
エンジン10は、例えばディーゼルエンジンである。エンジン10は、気筒内で燃料と吸気の混合気を燃焼させて、駆動力を発生させる。エンジン10は、この駆動力により、回転軸であるクランクシャフトを回転させる。エンジン10の駆動力は、自動変速機構を介して、プロペラシャフトに伝達される。プロペラシャフトが回転することにより、一対の車輪が回転し、車両S100が前進又は後進する。
【0020】
モータ21は、車両S100の走行状態に応じて電動機又は発電機として動作する。モータ21は、プロペラシャフトを回転させる駆動力を発生させる。モータ21の駆動力はプロペラシャフトに伝達され、上記同様、プロペラシャフトの回転に応じて一対の車輪が回転する。
【0021】
バッテリ23は、例えばリチウムイオンバッテリである。バッテリ23は、モータ21に供給する電力を蓄える。バッテリ23は、モータ21が発電機として動作する際、モータ21が発電した電力(具体的には、運動エネルギを電気エネルギに変換して発生した回生電力)によって充電される。バッテリ23は、外部の商用電源からの電力により充電されてもよい。バッテリ23は、ポンプ45に対してポンプ45が動作するための電力を供給する。
【0022】
バッテリ23には、バッテリ残量を計測する残量センサ71が設けられている。残量センサ71は、例えばバッテリ23の充電率(SOC)を計測する。残量センサ71は、計測したバッテリ残量を制御装置50に出力する。
【0023】
インバータ22は、直流電力を交流電力に変換し、交流電力を直流電力に変換する。インバータ22は、モータ21が電動機として動作する際には、バッテリ23の直流電力を交流電力に変換して、モータ21に電力を供給する。インバータ22は、モータ21が発電機として動作する際には、モータ21が発電する交流電力を直流電力に変換して、バッテリ23に電力を供給する。
【0024】
SCR装置30は、排出ガスを浄化する触媒として選択式還元触媒を有するSCR(Selective Catalytic Reduction)を有する浄化装置である。SCR装置30は、尿素水タンク31と、噴霧部32とを有している。
【0025】
尿素水タンク31は、尿素水を貯留するタンクである。尿素水タンク31には、温度センサ72が設けられている。温度センサ72は、尿素水タンク31に貯留された尿素水の温度を計測する。温度センサ72は、計測した温度を制御装置50に出力する。
【0026】
噴霧部32は、尿素水タンク31に接続されている。噴霧部32は、エンジン10からの排出ガスを浄化するために、選択式還元触媒の上流位置において、尿素水タンク31からの尿素水を、排気管路11を通過する排出ガスに対して噴霧する。
【0027】
(冷却システム40)
冷却システム40は、モータ21、インバータ22及びバッテリ23のうち少なくともいずれかに冷却液を供給することによってそれらの構成要素を冷却する。冷却システム40は、図1の例では、モータ21、インバータ22及びバッテリ23の全てを冷却する。冷却システム40は、第1流路41と、第2流路42と、ポンプ45と、バルブ46とを有している。
【0028】
第1流路41は、ポンプ45から送り出された冷却液をバッテリ23、インバータ22及びモータ21に向けて流す循環流路である。バッテリ23、インバータ22及びモータ21において、各構成要素で発生した熱と第1流路41を流れる冷却液との間で熱交換が行われることによって、バッテリ23、インバータ22及びモータ21が冷却される。モータ21を通過した第1流路41は、ポンプ45の上流側に接続される。図1では、バルブ46とポンプ45との間の第1流路41が流路41aとして示されている。なお、冷却液が供給される順序は、バッテリ23、インバータ22及びモータ21の順に限定されるものではなく適宜変更可能である。
【0029】
第2流路42は、冷却液を尿素水タンク31に向けて流す流路である。モータ21等を通過して、凍結した尿素水を解凍できる程度に昇温した冷却液が尿素水タンク31に供給されることで、尿素水を解凍することができる。本実施形態では、第2流路42は、第1流路41の途中から分岐して第2の循環流路を形成するように設けられている。第2流路42の末端は、ポンプ45の上流側に接続されている。
【0030】
ポンプ45は、冷却液を圧送する。ポンプ45の動作は制御装置50によって制御される。本実施形態では、ポンプ45は、制御装置50からの制御信号に応じて、単位時間当たり第1量の冷却液を圧送する。この動作モードを、本明細書では解凍モードという。解凍モードでは、後述する凍結防止モードよりも単位時間当たりの冷却液の排出量が多いため、より短時間で尿素水を解凍することができる。また、ポンプ45は、単位時間当たりの冷却液の排出量が第1量よりも少量の第2量で冷却液を圧送する。この動作モードを、凍結防止モードという。
【0031】
バルブ46は、例えば電磁バルブである。バルブ46は、流路の連通状態を、冷却液が第1流路41の流路41aを流れてポンプ45に戻る状態と、冷却液が第2流路42を流れてポンプ45に戻る状態とに切り換える。バルブ46の動作は制御装置50によって制御される。
【0032】
(制御装置50)
制御装置50は、プロセッサと記憶部を有し、車両S100の各部の動作を制御する。記憶部は、メモリ、ハードディスク、又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置を含む。記憶部は、コンピュータプログラムを記憶している。プロセッサは、記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより後述する制御装置50の機能を実現する。
【0033】
制御装置50は、残量センサ71が出力したバッテリ23の残量を取得する。制御装置50は、温度センサ72が出力した尿素水の温度を取得する。
【0034】
(尿素水の解凍)
寒冷地では車両S100のSCR装置30の尿素水が凍結する場合がある。車両S100が、走行モードを、モータ21の駆動力で走行するモータ駆動モードから、エンジン10の駆動力で走行するエンジン駆動モードに切り換えた場合、尿素水が凍結しているとSCR装置30が正常に機能せず、排出ガスを浄化できない。そこで、制御装置50は、次のようにポンプ45及びバルブ46を制御する。
【0035】
図2は、尿素水を解凍するための動作を示すフローチャートである。ステップS1において、制御装置50はインバータ22を制御し、車両S100をモータ駆動モードで走行させる。この状態では、制御装置50は、ポンプ45及びバルブ46を制御し、冷却液を第1流路41に流し、バッテリ23、インバータ22及びモータ21を冷却する。
【0036】
次いで、ステップS2において、制御装置50は、温度センサ72から尿素水の温度を取得し、尿素水の温度が第1閾値以下であるかを判定する。第1閾値は例えば尿素水の凍結温度である。ステップS2でNoの場合、一連の動作を終了する。制御装置50は、一例として、尿素水の温度が第1閾値より高い場合(ステップS2でNo)、バルブ46の状態を、冷却液が第1流路41を流れ、第2流路42を流れない状態に制御してもよい。ここで、制御装置がバルブ46をある状態に制御するとは、バルブ46をある状態にすることをいう。
【0037】
尿素水の温度が第1閾値以下の場合(ステップS2でYes)、ステップS3において、制御装置50は、冷却液が尿素水タンク31に供給されるようにバルブ46の状態を切り替える。具体的には、制御装置50は冷却液が第2流路42を流れるように、バルブ46の状態を切り替える。これにより、バッテリ23、インバータ22及びモータ21との熱交換により昇温した冷却液が尿素水タンク31に供給され、尿素水が解凍される。
【0038】
次いで、ステップS4において、制御装置50は、温度センサ72から尿素水の温度を取得し、尿素水の温度が、尿素水が解凍された温度として設定された終了閾値を超えたか否かを判定する。ステップS4でNoの場合、制御装置50はステップS4を繰り返す。ステップS4でYesの場合、ステップS5において、制御装置50はバルブ46の状態を切り替え、尿素水タンク31への冷却液の供給を停止する。
【0039】
以上一連の動作により、尿素水タンク31に冷却液が供給され、凍結した尿素水を解凍することができる。
【0040】
(解凍モードと凍結防止モードとの切り換え)
車両S100においては、尿素水タンク31内の尿素水が凍結している場合と、凍結する可能性がある場合とが想定される。尿素水が凍結している場合には、速やかに尿素水を解凍できるように解凍モードで冷却液を供給し、尿素水が凍結する可能性がある場合には、凍結しないように凍結防止モードで冷却液を供給することが好ましい。そこで、制御装置50は、次のようにポンプ45及びバルブ46を制御する。
【0041】
図3は、解凍モードと凍結防止モードとの切り換えを行うための動作を示すフローチャートである。ステップS11では、図2のフローチャートのステップS1と同様、制御装置50はインバータ22を制御し、車両S100をモータ駆動モードで走行させる。
【0042】
次いで、ステップS12では、制御装置50は、温度センサ72から尿素水の温度を取得し、尿素水の温度が第1閾値以下であるかを判定する。このステップは図2のフローチャートのステップS2と同じである。
【0043】
ステップS12でYesの場合、ステップS13において、解凍モードで冷却液が尿素水タンク31に供給されるように、制御装置50はポンプ45及びバルブ46を制御する。解凍モードでは、ポンプ45は、例えば、単位時間当たりの排出量が凍結防止モードの第2量よりも多い第1量の冷却液を圧送する。
【0044】
ステップS12でNoの場合、ステップS14において、制御装置50は、尿素水の温度が第2閾値以下であるかを判定する。第2閾値は、尿素液が凍結する可能性がある温度として設定された値であり、一例として、第1閾値より大きい値である。ステップS14でNoの場合、一連の動作を終了する。制御装置50は、一例として、尿素水の温度が第2閾値より高い場合(S14でNo)、バルブ46の状態を、冷却液が第1流路41を流れ、第2流路42を流れない状態に制御してもよい。
【0045】
ステップS14でYesの場合、ステップS15において、凍結防止モードで冷却液が尿素水タンク31に供給されるように、制御装置50はポンプ45及びバルブ46を制御する。凍結防止モードでは、ポンプ45は、単位時間当たりの排出量が前記第1量よりも少量の第2量の冷却液を圧送する。
【0046】
ステップS16では、図2のフローチャートのステップS4と同様、制御装置50は、尿素水の温度が所定の終了閾値を超えたか否かを判定する。ステップS16でNoの場合、ステップS16を繰り返す。ステップS16でYesの場合、ステップS17において、制御装置50はポンプ45を停止させるとともにバルブ46の状態を切り替え、尿素水タンク31への冷却液の供給を停止する。
【0047】
以上一連の動作により、解凍モード又は凍結防止モードで冷却液を供給し、尿素水を解凍し又は尿素水の凍結を防止することができる。このような動作制御によれば、凍結防止のために尿素水タンク31に供給する冷却水の量が少なくて済むのでポンプ45の出力を抑えることができる。
【0048】
(エンジン駆動モードに備えた尿素水の解凍)
プラグインハイブリッド車では、バッテリ23に十分な残量があるときにはモータ駆動モードで車両S100を走行させ、バッテリ23の残量が少なくなったら走行モードがエンジン駆動モードに切り換えられる。このようにしてエンジン駆動モードが開始される際に、尿素水が凍結しているとSCR装置30を正常に動作させることができない。そこで、制御装置50は、次のようにポンプ45及びバルブ46を制御する。
【0049】
図4は、エンジン駆動モードに備えて尿素水を解凍するための動作を示すフローチャートである。ステップS21では、図2のフローチャートのステップS1と同様、制御装置50はインバータ22を制御し、車両S100をモータ駆動モードで走行させる。
【0050】
次いで、ステップS22で、制御装置50は、バッテリ23の残量が閾値以下であるか否かを判定する。この閾値は、例えば、走行モードをモータ駆動モードからエンジン駆動モードに変更するべきバッテリ23の残量として設定された値に所定のマージン値を追加した値である。ステップS22でNoの場合、一連の動作を終了する。
【0051】
ステップS22でYesの場合、次いでステップS23で、制御装置50は、温度センサ72から尿素水の温度を取得し、尿素水の温度が第1閾値以下であるかを判定する。このステップは図2のフローチャートのステップS2と同じである。
【0052】
ステップS24、ステップS25及びステップS26はそれぞれ図2のフローチャートのステップS3、ステップS4及びステップS5と同じであるため説明は省略する。
【0053】
以上一連の動作により、バッテリ23の残量が減少してエンジン駆動モードに移行する場合に、前もって尿素水を解凍しておくことができるので、エンジン駆動モードに移行した後にSCR装置で良好に排出ガスを浄化することができる。
【0054】
(車両S100の効果)
以上説明したように本実施形態の構成によれば、尿素水の温度が所定の閾値(例えば尿素水の凍結温度)以下の場合に、モータ等を通過して昇温した冷却液が尿素水タンク31に供給されるので、凍結した尿素水を解凍することができる。本実施形態の車両S100は、エンジン10の冷却水で尿素水を解凍する構成ではないため、エンジン10の使用頻度に関わらず良好に尿素水を解凍することができる。
【0055】
(変形例)
制御装置50は、尿素水タンク31に冷却液を供給するようにバルブ46を制御する前に、第1流路41を流れる冷却液の温度を所定の温度センサから取得して、当該温度が凍結した尿素水を解凍できる程度の温度として設定された閾値以下である場合、冷却液がその閾値を超えるまで冷却液を第1流路41に循環させ、その後、バルブ46の状態を切り替えて冷却液を尿素水タンク31に供給するようにしてもよい。
【0056】
上記の実施形態では、バルブ46を通過した冷却液が流路41aを流れるか、又は、第2流路42を流れる流路の構成であったが、本発明はこれに限定されない。例えば、バルブ46を通過した冷却液が流路41aと第2流路42との両方に流れる流路の構成であってもよい。この場合、バルブ46は、流路41aへと流れる流量と、第2流路42へと流れる流量との比率を任意の比率に変更できるものであってもよい。制御装置50がバルブ46のこの比率を変更することで、各流路を流れる冷却液の量をより精密に制御することができる。
【0057】
制御装置50は、車両S100の走行条件、時刻、運転者の運転特性、及びバッテリの残量などのパラメータの1つ以上とエンジン駆動モードが使用されるタイミングとを関連付けたテーブルを有するか、又は、車両S100の走行条件、時刻、運転者の運転特性、及びバッテリの残量などのパラメータの1つ以上が入力された場合にエンジン駆動モードが使用されるタイミングを出力する学習済モデルを有し、取得した車両S100のパラメータに基づき、上記テーブル又は上記学習済モデルを用いてエンジン駆動モードが使用されるタイミングを決定し、そのタイミングに先立って上述したような尿素水の解凍を行ってもよい。
【0058】
なお、エンジン駆動モードに移行した後においては、尿素タンク内に設けられたエンジンを冷却する冷却水を循環させる冷却ライン(不図示)を用いて、この冷却液と尿素水との間での熱交換により尿素水の温度低下や凍結を抑制してもよい。
【0059】
以上、本発明の一形態を説明したが、本明細書は、プロセッサが実行するコンピュータプログラムの発明及び車両の制御方法の発明をも開示する。
【0060】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0061】
10 エンジン
11 排気管路
21 モータ
22 インバータ
23 バッテリ
30 SCR装置
31 尿素水タンク
32 噴霧部
40 冷却システム
41 第1流路
41a 流路
42 第2流路
45 ポンプ
46 バルブ
50 制御装置
71 残量センサ
72 温度センサ
S100 車両
【要約】
【課題】走行時のエンジンの使用頻度が比較的低い場合であっても、SCR装置の尿素水を良好に解凍できる技術を提供する。
【解決手段】この車両S100は、エンジン10と、モータ21と、バッテリ23と、SCR装置30と、バッテリ23又はモータ21に冷却液を供給することによりバッテリ23又はモータ21を冷却する冷却システム40と、制御装置50を備え、冷却システム40は、ポンプ45と、第1流路41と、第2流路42と、冷却液が第1流路41を流れる状態と、冷却液が第1流路41及び第2流路42を流れる状態とに切り換えるバルブ46とを有し、制御装置50は、尿素水の温度が第1閾値以下の場合、冷却液が尿素水タンク31に供給されるようにバルブ46の状態を冷却液が第1流路41及び第2流路42を流れる状態に制御する。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4