(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20241008BHJP
C08K 5/3415 20060101ALI20241008BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241008BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K5/3415
C08K3/013
H05K1/03 610L
(21)【出願番号】P 2023138908
(22)【出願日】2023-08-29
(62)【分割の表示】P 2020066030の分割
【原出願日】2020-04-01
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川合 賢司
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-210527(JP,A)
【文献】特開平05-247202(JP,A)
【文献】特許第6799803(JP,B2)
【文献】特開2018-184595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00- 101/14
C08K 3/00- 13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)マレイミド化合物、(B)エポキシ樹脂、(C)活性エステル系硬化剤、及び、(D)無機充填剤を含み、
(A)マレイミド化合物が、(A-1)トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物を含み、
(A-1)成分が、下記式(A4)で表される構造を含み、
(A-1)成分の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、2質量%以上50質量%以下であり、
(A-1)成分の量が、樹脂組成物中の(B)エポキシ樹脂100質量%に対して、60質量%以上200質量%以下であり、
(B)成分の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、20質量%以上
40質量%以下であり、
(C)成分の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、30質量%以上
60質量%以下であり、
(D)成分の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、50質量%以上90質量%以下であり、
200℃にて90分間加熱した樹脂組成物の硬化物を空洞共振摂動法により、測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて測定した誘電正接Dfが0.004以下である、樹脂組成物。
【化1】
(式(A4)において、
Ar
a1は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表し;
R
a1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、又は、メルカプト基を表し;
R
a2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又は、メルカプト基を表し;
R
a3は、それぞれ独立に、2価の脂肪族炭化水素基を表し;
n
a1は、正の整数を表し;
n
a2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表し;
n
a3は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。
R
a1のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
R
a2のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
n
a2が2~4の場合、R
a1は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。
n
a3が2~3の場合、R
a2は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。)
【請求項2】
(A)成分の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、2質量%以上50質量%以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
絶縁層形成用である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項5】
支持体と、該支持体上に請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物で形成された樹脂組成物層と、を備える、樹脂シート。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層を含む、プリント配線板。
【請求項7】
請求項6に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。さらには、本発明は、当該樹脂組成物の硬化物、並びに、当該樹脂組成物を用いて得られる樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造技術として、絶縁層と導体層を交互に積み重ねるビルドアップ方式による製造方法が知られている。ビルドアップ方式による製造方法において、一般に、絶縁層は、樹脂組成物を硬化させて形成される。このような樹脂組成物としては、例えば、特許文献1に開示される樹脂組成物が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂組成物を硬化することによって形成される硬化物は、半導体装置のプリント配線板の絶縁層として用いられうる。そのため、当該硬化物の誘電正接を低くすることが求められる。また、耐熱性の向上の観点から、硬化物のガラス転移温度は高いことが望ましい。
【0005】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、誘電正接が低く且つガラス転移温度が高い硬化物を得ることができる樹脂組成物;前記樹脂組成物の硬化物;前記樹脂組成物を含む樹脂組成物層を備える樹脂シート;前記樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層を含むプリント配線板;並びに、前記プリント配線板を含む半導体装置;を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、(A)マレイミド化合物、(B)エポキシ樹脂、及び、(C)活性エステル系硬化剤、を含み、且つ、(A)マレイミド化合物が、(A-1)トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物を含む樹脂組成物が、前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
【0007】
〔1〕 (A)マレイミド化合物、(B)エポキシ樹脂、及び、(C)活性エステル系硬化剤、を含み、
(A)マレイミド化合物が、(A-1)トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物を含む、樹脂組成物。
〔2〕 (A-1)成分が、下記式(A4)で表される構造を含む、〔1〕に記載の樹脂組成物。
【化1】
(式(A4)において、
Ar
a1は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表し;
R
a1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、又は、メルカプト基を表し;
R
a2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又は、メルカプト基を表し;
R
a3は、それぞれ独立に、2価の脂肪族炭化水素基を表し;
n
a1は、正の整数を表し;
n
a2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表し;
n
a3は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。
R
a1のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
R
a2のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
n
a2が2~4の場合、R
a1は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。
n
a3が2~3の場合、R
a2は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。)
〔3〕 (A-1)成分の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、0.5質量%以上70質量%以下である、〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔4〕 (A)成分の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、0.5質量%以上70質量%以下である、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔5〕 (B)成分の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、3質量%以上50質量%以下である、〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔6〕 (C)成分の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、6質量%以上80質量%以下である、〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔7〕 さらに、(D)無機充填材を含む、〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔8〕 (D)成分の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、20質量%以上90質量%以下である、〔7〕に記載の樹脂組成物。
〔9〕 絶縁層形成用である、〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
〔10〕 〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
〔11〕 支持体と、該支持体上に〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載の樹脂組成物で形成された樹脂組成物層と、を備える、樹脂シート。
〔12〕 〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層を含む、プリント配線板。
〔13〕 〔12〕に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、誘電正接が低く且つガラス転移温度が高い硬化物を得ることができる樹脂組成物;前記樹脂組成物の硬化物;前記樹脂組成物を含む樹脂組成物層を備える樹脂シート;前記樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層を含むプリント配線板;並びに、前記プリント配線板を含む半導体装置;を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して説明する。ただし、本発明は、下記に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施されうる。
【0010】
[1.樹脂組成物の概要]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、(A)マレイミド化合物、(B)エポキシ樹脂、及び、(C)活性エステル系硬化剤、を含む。また、(A)マレイミド化合物は、(A-1)トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物を含む。
【0011】
このような樹脂組成物によれば、誘電正接が低く、且つ、ガラス転移温度が高い硬化物を得ることができる。また、前記の樹脂組成物の硬化物は、通常、誘電率を低くできる。さらに、前記の樹脂組成物の硬化物で絶縁層を形成した場合には、通常、当該絶縁層の表面粗さを小さくしたりメッキピール強度を高くしたりできる。
【0012】
前記の樹脂組成物は、更に必要に応じて、(D)無機充填材、(E)任意の硬化剤、(F)硬化促進剤、などの任意の成分を含んでいてもよい。
【0013】
[2.(A)マレイミド化合物]
樹脂組成物が含む(A)成分としてのマレイミド化合物は、分子中に、1個以上のマレイミド基を含む化合物を表す。マレイミド基は、下記式(A2)で表される。式(A2)において、*は、結合手を表す。(A)マレイミド化合物の分子1つが含むマレイミド基の数は、通常1以上、好ましくは2以上である。上限は、特段の制限は無く、例えば、22以下、10以下、6以下、4以下、又は3以下でありうる。
【0014】
【0015】
本実施形態に係る樹脂組成物が含む(A)マレイミド化合物は、(A-1)トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物を含む。以下の説明では、「トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物」を、「特定マレイミド化合物」と呼ぶことがある。トリメチルインダン骨格とは、下記式(A3)に示す骨格を表す。
【0016】
【0017】
トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環には、置換基が結合していてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、及び、メルカプト基が挙げられる。
アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~10である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、等が挙げられる。
アルキルオキシ基の炭素原子数は、好ましくは1~10である。アルキルオキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
アルキルチオ基の炭素原子数は、好ましくは1~10である。アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基等が挙げられる。
アリール基の炭素原子数は、好ましくは6~10である。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
アリールオキシ基の炭素原子数は、好ましくは6~10である。アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。
アリールチオ基の炭素原子数は、好ましくは6~10である。アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
シクロアルキル基の炭素原子数は、好ましくは3~10である。シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0018】
前記の置換基のうち、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及び、シクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0019】
トリメチルインダン骨格が含む1つのベンゼン環に結合する置換基の数は、1でもよく、2以上でもよい。トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環に結合する置換基の数は、通常、0以上3以下である。置換基の数が2以上である場合、それら2以上の置換基は、同じでもよく、異なっていてもよい。中でも、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環には、置換基が結合していないことが好ましい。
【0020】
(A-1)特定マレイミド化合物の1分子中に含まれるトリメチルインダン骨格の数は、1でもよく、2以上でもよい。上限は、例えば、10以下、8以下、7以下、又は6以下でありうる。
【0021】
(A-1)特定マレイミド化合物は、上述したトリメチルインダン骨格に加えて、更に芳香環骨格を含むことが好ましい。当該芳香環骨格の環構成炭素の数は、好ましくは6~10である。芳香環骨格としては、例えば、ベンゼン環骨格、ナフタレン環骨格、等が挙げられる。(A-1)特定マレイミド化合物の1分子中に含まれる前記の芳香環骨格の数は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、好ましくは6以下、より好ましくは4以下、特に好ましくは3以下である。(A-1)特定マレイミド化合物が2以上の芳香環骨格をトリメチルインダン骨格に加えて含む場合、それら芳香環骨格は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0022】
前記の芳香環骨格が含む芳香環には、置換基が結合していてもよい。置換基としては、例えば、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環に結合しうる置換基として上述した置換基、及び、ニトロ基が挙げられる。1つの芳香環に結合する置換基の数は、1でもよく、2以上でもよい。芳香環に結合する置換基の数は、通常、0以上4以下である。置換基の数が2以上である場合、それら2以上の置換基は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0023】
(A-1)特定マレイミド化合物は、上述したトリメチルインダン骨格に加えて、更に2価の脂肪族炭化水素基を含むことが好ましい。特に、(A-1)特定マレイミド化合物がトリメチルインダン骨格が含むベンゼン環以外の芳香環骨格を含む場合に、(A-1)特定マレイミド化合物が2価の脂肪族炭化水素基を含むことが好ましい。この場合、2価の脂肪族炭化水素基は、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環と芳香環骨格との間を連結することが好ましい。また、2価の脂肪族炭化水素基は、芳香環骨格同士の間を連結することが好ましい。
【0024】
2価の脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1以上であり、好ましくは12以下、より好ましくは8以下、特に好ましくは5以下である。2価の脂肪族炭化水素基としては、飽和脂肪族炭化水素基としてのアルキレン基がより好ましい。2価の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の直鎖アルキレン基;エチリデン基(-CH(CH3)-)、プロピリデン基(-CH(CH2CH3)-)、イソプロピリデン基(-C(CH3)2-)、エチルメチルメチレン基(-C(CH3)(CH2CH3)-)、ジエチルメチレン基(-C(CH2CH3)2-)等の分岐鎖アルキレン基;等が挙げられる。(A-1)特定マレイミド化合物が2以上の2価の脂肪族炭化水素基をトリメチルインダン骨格に加えて含む場合、それら2価の脂肪族炭化水素基は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0025】
(A-1)特定マレイミド化合物は、下記式(A4)で示す構造を含むことが好ましい。(A-1)特定マレイミド化合物の全体が式(A4)で示す構造を有していてもよく、(A-1)特定マレイミド化合物の部分が式(A4)で示す構造を有していてもよい。
【0026】
【0027】
(式(A4)において、Ara1は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表し;Ra1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、又は、メルカプト基を表し;Ra2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又は、メルカプト基を表し;Ra3は、それぞれ独立に、2価の脂肪族炭化水素基を表し;na1は、正の整数を表し;na2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表し;na3は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。Ra1のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。Ra2のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。na2が2~4の場合、Ra1は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。na3が2~3の場合、Ra2は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。)
【0028】
式(A4)において、Ara1は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表す。この2価の芳香族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは6以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは16以下である。2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基が挙げられる。2価の芳香族炭化水素基が有しうる置換基としては、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、及び、メルカプト基が挙げられる。各置換基の水素原子は、さらにハロゲン原子で置換されていてもよい。また、これらの置換基の具体例としては、例えば、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環に結合しうる置換基と同じ例が挙げられる。2価の芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、その置換基の数は、好ましくは1~4である。2価の芳香族炭化水素基が有する置換基の数が2以上である場合、それら2以上の置換基は、同じでもよく、異なっていてもよい。中でも、Ara1は、置換基を有さない2価の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0029】
式(A4)において、Ra1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、又は、メルカプト基を表す。アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。これらの基の具体例としては、例えば、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環に結合しうる置換基と同じ例が挙げられる。中でも、Ra1は、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数3~6のシクロアルキル基、及び、炭素原子数6~10のアリール基からなる群より選ばれる1種類以上の基であることがより好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基が特に好ましい。
【0030】
式(A4)において、Ra2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又は、メルカプト基を表す。アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。これら基の具体例としては、例えば、トリメチルインダン骨格が含むベンゼン環に結合しうる置換基と同じ例が挙げられる。中でも、Ra2は、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数3~6のシクロアルキル基、及び、炭素原子数6~10のアリール基からなる群より選択される1種類以上の基であることがより好ましい。
【0031】
式(A4)において、Ra3は、それぞれ独立に、2価の脂肪族炭化水素基を表す。好ましい2価の脂肪族炭化水素基の範囲は、上述した通りである。
【0032】
式(A4)において、na1は、正の整数を表す。na1は、好ましくは1以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。
【0033】
式(A4)において、na2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。na2は、好ましくは2又は3であり、より好ましくは2である。複数のna2は、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。na2が2以上の場合、複数のRa1は、同一環内で、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0034】
式(A4)において、na3は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。複数のna3は、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。na3は、好ましくは0である。
【0035】
(A-1)特定マレイミド化合物は、下記式(A5)で示す構造を含むことが特に好ましい。(A-1)特定マレイミド化合物の全体が式(A5)で示す構造を有していてもよく、(A-1)特定マレイミド化合物の部分が式(A5)で示す構造を有していてもよい。
【0036】
【0037】
(式(A5)において、Rb1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、又は、メルカプト基を表し;Rb2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又は、メルカプト基を表し;nb1は、正の整数を表し;nb2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表し;nb3は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。Rb1のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。Rb2のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。nb2が2~4の場合、Rb1は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。nb3が2~3の場合、Rb2は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。)
【0038】
式(A5)において、Rb1、Rb2、nb1、nb2及びnb3は、それぞれ、式(A4)におけるRa1、Ra2、na1、na2及びna3と同じである。
【0039】
(A-1)特定マレイミド化合物は、更に、下記式(A6)で示す構造を含んでいてもよい。
【0040】
【0041】
式(A6)において、Rc1、Rc2、nc2及びnc3は、それぞれ、式(A4)におけるRa1、Ra2、na2及びna3と同じである。また、式(A6)において、nc1は、繰り返し単位数であり、1~20の整数を表す。さらに、式(A6)において、*は、結合手を表す。例えば、(A-1)特定マレイミド化合物は、式(A4)において、na2が3以下であり、且つ、マレイミド基が結合するベンゼン環のマレイミド基に対するオルト位及びパラ位のうち、2つ以上に、Ra1が結合していない場合に、式(A4)で表される構造に組み合わせて前記の式(A6)で表される構造を含みうる。また、例えば、(A-1)特定マレイミド化合物は、式(A5)において、nb2が3以下であり、且つ、マレイミド基が結合するベンゼン環のマレイミド基に対するオルト位及びパラ位のうち、2つ以上に、Rb1が結合していない場合に、式(A5)で表される構造に組み合わせて前記の式(A6)で表される構造を含みうる。
【0042】
(A-1)成分としての(A-1)特定マレイミド化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0043】
(A-1)特定マレイミド化合物のマレイミド基当量は、好ましくは50g/eq.以上、より好ましくは100g/eq.以上、特に好ましくは200g/eq.以上であり、好ましくは2000g/eq.以下、より好ましくは1000g/eq.以下、特に好ましくは800g/eq.以下である。マレイミド基当量は、マレイミド基1当量あたりのマレイミド化合物の質量を表す。(A-1)特定マレイミド化合物のマレイミド基当量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0044】
樹脂組成物中の(A-1)特定マレイミド化合物の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。(A-1)特定マレイミド化合物の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0045】
樹脂組成物中の(A-1)特定マレイミド化合物の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、特に好ましくは2質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。樹脂組成物中の樹脂成分とは、樹脂組成物中の不揮発成分のうち、(D)無機充填材を除いた成分を表す。(A-1)特定マレイミド化合物の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0046】
樹脂組成物中の(A-1)特定マレイミド化合物の量は、樹脂組成物中の(B)エポキシ樹脂100質量%に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは100質量%以上であり、好ましくは200質量%以下、より好ましくは180質量%以下、特に好ましくは160質量%以下である。(A-1)特定マレイミド化合物の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0047】
(A-1)特定マレイミド化合物のマレイミド基の合計数と、(B)エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数との比(マレイミド基/エポキシ基)は、特定の範囲にあることが好ましい。前記の比(マレイミド基/エポキシ基)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.3以上、特に好ましくは0.5以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、特に好ましくは2以下である。「(A-1)特定マレイミド化合物のマレイミド基の合計数」とは、樹脂組成物中に存在する(A-1)特定マレイミド化合物の不揮発成分の質量を、マレイミド基当量で除した値を、全て合計した値である。また、「(B)エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数」とは、樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂の不揮発成分の質量を、エポキシ当量で除した値を、全て合計した値である。前記の比(マレイミド基/エポキシ基)が前記の範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0048】
樹脂組成物中の(A-1)特定マレイミド化合物の量は、樹脂組成物中の(C)活性エステル系硬化剤100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは160質量%以下、より好ましくは130質量%以下、特に好ましくは110質量%以下である。(A-1)特定マレイミド化合物の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0049】
(A-1)特定マレイミド化合物のマレイミド基の合計数と、(C)活性エステル系硬化剤の活性エステル基の合計数との比(マレイミド基/活性エステル基)は、特定の範囲にあることが好ましい。前記の比(マレイミド基/活性エステル基)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.3以上、特に好ましくは0.5以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、特に好ましくは2以下である。「(C)活性エステル系硬化剤の活性エステル基の合計数」とは、樹脂組成物中に存在する(C)活性エステル系硬化剤の不揮発成分の質量を、活性エステル当量で除した値を、全て合計した値である。前記の比(マレイミド基/活性エステル基)が前記の範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0050】
樹脂組成物中の(A-1)特定マレイミド化合物の量は、(A)マレイミド化合物の全体の量100質量%に対して、好ましくは30質量%~100質量%、より好ましくは40質量%~100質量%、特に好ましくは50質量%~100質量%である。(A-1)特定マレイミド化合物の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0051】
(A-1)特定マレイミド化合物の製造方法は、特に制限は無い。(A-1)特定マレイミド化合物は、例えば、発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載の方法によって製造できる。この発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載の製造方法によれば、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数に分布があるマレイミド化合物を得ることができる。この方法で得られるマレイミド化合物は、下記式(A1)で表される構造を含む。よって、(A)マレイミド化合物は、式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物を含んでいてもよい。
【0052】
【0053】
(式(A1)において、R1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、又は、メルカプト基を表し;R2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又は、メルカプト基を表し;n1は、0.95~10.0の平均繰り返し単位数を表し;n2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表し;n3は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。R1のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。R2のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。n2が2~4の場合、R1は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。n3が2~3の場合、R2は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。)
【0054】
式(A1)において、R1、R2、n2及びn3は、それぞれ、式(A4)におけるRa1、Ra2、na2及びna3と同じである。
【0055】
式(A1)において、n1は、平均繰り返し単位数を表し、その範囲は0.95~10.0である。発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載の製造方法によれば、式(A1)で表される構造を含む一群のマレイミド化合物が得られる。式(A1)中の平均繰り返し単位数n1が1.00より小さくなりうることから分かるように、こうして得られる式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物には、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数が0のマレイミド化合物が含まれうる。そこで、式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物から、精製により、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数が0のマレイミド化合物を除いて(A-1)特定マレイミド化合物を得て、その得られた(A-1)特定マレイミド化合物のみを樹脂組成物が含んでいてもよい。しかし、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数が0のマレイミド化合物が樹脂組成物に含まれている場合でも、本発明の効果を得ることができる。また、精製を省略した場合、コストの抑制が可能である。そこで、トリメチルインダン骨格の繰り返し単位数が0のマレイミド化合物を除くことなく、式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物を樹脂組成物が含むことが好ましい。
【0056】
式(A1)において、平均繰り返し単位数n1は、好ましくは0.95以上、より好ましくは0.98以上、更に好ましくは1.0以上、特に好ましくは1.1以上であり、好ましくは10.0以下、より好ましくは8.0以下、更に好ましくは7.0以下、特に好ましくは6.0以下である。平均繰り返し単位数n1が前記の範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。特に、樹脂組成物のガラス転移温度を効果的に高めることができる。
【0057】
式(A1)で表される構造の例としては、下記のものが挙げられる。
【0058】
【0059】
式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物は、更に、前記の式(A6)で示す構造を含んでいてもよい。例えば、式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物は、式(A1)において、n2が3以下であり、且つ、マレイミド基が結合するベンゼン環のマレイミド基に対するオルト位及びパラ位のうち、2つ以上に、R1が結合していない場合に、式(A1)で表される構造に組み合わせて式(A6)で表される構造を含みうる。
【0060】
式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定から算出される分子量分布Mw/Mnが、特定の範囲にあることが好ましい。分子量分布は、重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで割り算して求められる値であり、「Mw/Mn」で表される。具体的には、式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物の分子量分布Mw/Mnは、好ましくは1.0~4.0、より好ましくは1.1~3.8、更に好ましくは1.2~3.6、特に好ましくは1.3~3.4である。式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物の分子量分布Mw/Mnが前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0061】
式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物のうち、平均繰り返し単位数n1が0のマレイミド化合物の量は、特定の範囲にあることが好ましい。式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物の前記GPC測定を行った場合、平均繰り返し単位数n1が0のマレイミド化合物の量は、そのGPC測定の結果に基づいて面積%で表すことができる。詳細には、前記のGPC測定で得られるクロマトグラムにおいて、式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物のピークの総面積に対する、平均繰り返し単位数n1が0のマレイミド化合物のピークの面積の割合(面積%)により、平均繰り返し単位数n1が0のマレイミド化合物の量を表すことができる。具体的には、式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物の全量100面積%に対して、平均繰り返し単位数n1が0のマレイミド化合物の量は、好ましくは32面積%以下、より好ましくは30面積%以下、更に好ましくは28面積%以下である。平均繰り返し単位数n1が0のマレイミド化合物の量が前記の範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0062】
式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物のマレイミド基当量は、上述した(A-1)特定マレイミド化合物のマレイミド基当量と同じ範囲にあることが好ましい。式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物のマレイミド基当量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0063】
式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0064】
式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、特に好ましくは2質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0065】
式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物の量は、樹脂組成物中の(B)エポキシ樹脂100質量%に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは100質量%以上であり、好ましくは200質量%以下、より好ましくは180質量%以下、特に好ましくは160質量%以下である。式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0066】
式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物のマレイミド基の合計数と、(B)エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数との比(マレイミド基/エポキシ基)は、特定の範囲にあることが好ましい。前記の比(マレイミド基/エポキシ基)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.3以上、特に好ましくは0.5以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、特に好ましくは2以下である。「式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物のマレイミド基の合計数」とは、樹脂組成物中に存在する式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物の不揮発成分の質量を、マレイミド基当量で除した値を、全て合計した値である。前記の比(マレイミド基/エポキシ基)が前記の範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0067】
式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物の量は、樹脂組成物中の(C)活性エステル系硬化剤100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは160質量%以下、より好ましくは130質量%以下、特に好ましくは110質量%以下である。式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0068】
式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物のマレイミド基の合計数と、(C)活性エステル系硬化剤の活性エステル基の合計数との比(マレイミド基/活性エステル基)は、特定の範囲にあることが好ましい。前記の比(マレイミド基/活性エステル基)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.3以上、特に好ましくは0.5以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、特に好ましくは2以下である。前記の比(マレイミド基/活性エステル基)が前記の範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0069】
式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物の量は、(A)マレイミド化合物の全体の量100質量%に対して、好ましくは30質量%~100質量%、より好ましくは40質量%~100質量%、特に好ましくは50質量%~100質量%である。式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0070】
(A)マレイミド化合物は、上述した(A-1)特定マレイミド化合物に組み合わせて、更にトリメチルインダン骨格を含まない任意のマレイミド化合物を含んでいてもよい。任意のマレイミド化合物としては、例えば、(A-2)ビフェニル型マレイミド化合物、(A-3)脂肪族マレイミド化合物、が挙げられる。任意のマレイミド化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0071】
(A-2)ビフェニル型マレイミド化合物は、ビフェニル骨格を含むマレイミド化合物を表す。(A-2)ビフェニル型マレイミド化合物を(A-1)特定マレイミド化合物と組み合わせて用いた場合、メッキピール強度を効果的に高めることができる。
【0072】
(A-2)ビフェニル型マレイミド化合物が含むビフェニル骨格のベンゼン環には、1又は2以上の置換基が結合していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、-OH、-O-C1-10アルキル基、-N(C1-10アルキル基)2、C1-10アルキル基、C6-10アリール基、-NH2、-CN、-C(O)O-C1-10アルキル基、-COOH、-C(O)H、-NO2等が挙げられる。ここで、「Cx-y」(x及びyは正の整数であり、x<yを満たす。)という用語は、この用語の直後に記載された有機基の炭素原子数がx~yであることを表す。例えば、「C1-10アルキル基」という表現は、炭素原子数1~10のアルキル基を示す。これら置換基は、互いに結合して環を形成していてもよい。前記の環は、スピロ環や縮合環も含む。上述の置換基は、さらに置換基(以下、「二次置換基」という場合がある。)を有していてもよい。二次置換基としては、上述の置換基と同じものを用いうる。中でも、(A-2)ビフェニル型マレイミド化合物が含むビフェニル骨格のベンゼン環には、置換基が結合していないことが好ましい。
【0073】
(A-2)ビフェニル型マレイミド化合物は、ビフェニル骨格に組み合わせて、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基のいずれかを含むことが好ましく、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基の両方を有することがより好ましい。好ましい(A-2)ビフェニル型マレイミド化合物としては、下記式(A7)で表されるマレイミド化合物が挙げられる。
【0074】
【0075】
(式(A7)において、Rd1は、それぞれ独立に、アルキレン基を表し;Rd2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基を表し;Rd3は、それぞれ独立に、置換基を表し;nd1は、1~100の整数を表し;nd2は、それぞれ独立に、0~2の整数を表し;nd3は、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。)
【0076】
式(A7)において、Rd1は、それぞれ独立に、アルキレン基を表す。アルキレン基の炭素原子数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~6、更に好ましくは1~3である。アルキレン基としては、直鎖アルキレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
【0077】
式(A7)において、Rd2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~6、特に好ましくは1~3である。アルキル基は、直鎖状、分枝状又は環状のいずれであってもよい。また、アルキル基が有しうる置換基としては、例えば、ビフェニル骨格のベンゼン環に結合しうる置換基として上述したものと同じ例が挙げられる。
アリール基の炭素原子数は、好ましくは6~20、より好ましくは6~15、特に好ましくは6~10である。アリール基が有しうる置換基としては、例えば、ビフェニル骨格のベンゼン環に結合しうる置換基として上述したものと同じ例が挙げられる。
【0078】
式(A7)において、Rd3は、それぞれ独立に、置換基を表す。この置換基としては、例えば、ビフェニル骨格のベンゼン環に結合しうる置換基として上述したものと同じ例が挙げられる。
【0079】
式(A7)において、nd1は、1~100の整数を表し、好ましくは1~50、より好ましくは1~20、さらに好ましくは1~5である。
【0080】
式(A7)において、nd2は、それぞれ独立に、0~2の整数を表し、好ましくは0である。
【0081】
式(A7)において、nd3は、それぞれ独立に、0~4の整数を表し、好ましくは0~3、より好ましくは0又は1、特に好ましくは0である。
【0082】
式(A7)で表される(A-2)ビフェニル型マレイミド化合物としては、例えば、日本化薬社製の「MIR-3000-70MT」(主成分:下記式(A8)の化合物)が挙げられる。下記の式(A8)において、nd4は、1又は2を示す。
【0083】
【0084】
(A-2)ビフェニル型マレイミド化合物の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1.0質量%以上であり、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下、特に好ましくは4.0質量%以下である。(A-2)ビフェニル型マレイミド化合物の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0085】
(A-2)ビフェニル型マレイミド化合物の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1.0質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。(A-2)ビフェニル型マレイミド化合物の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0086】
(A-3)脂肪族マレイミド化合物は、炭素原子数が5以上の脂肪族炭化水素基を含むマレイミド化合物を表す。(A-3)脂肪族マレイミド化合物を(A-1)特定マレイミド化合物と組み合わせて用いた場合、メッキピール強度を効果的に高めることができる。
【0087】
(A-3)脂肪族マレイミド化合物が含む脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、通常5以上、好ましくは6以上、より好ましくは8以上であり、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。
【0088】
(A-3)脂肪族マレイミド化合物が含む脂肪族炭化水素基は、飽和でもよく、不飽和でもよいが、中でも飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。また、脂肪族炭化水素基は、鎖状の基であってもよく、環状の基であってもよい。さらに、脂肪族炭化水素基は、1価の基であってもよく、2価の基であってもよい。
【0089】
(A-3)脂肪族マレイミド化合物が含む脂肪族炭化水素基としては、例えば、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、ヘプタデシレン基、ヘキサトリアコンチレン基、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基等のアルキレン基;が挙げられる。
【0090】
(A-3)脂肪族マレイミド化合物が含む脂肪族炭化水素基には、置換基が結合していてもよい。置換基としては、例えば、(A-2)ビフェニル型マレイミド化合物の説明においてビフェニル骨格のベンゼン環に結合しうる置換基として上述したものと同じ例が挙げられる。中でも、(A-3)脂肪族マレイミド化合物が含む脂肪族炭化水素基には、置換基が結合していないことが好ましい。
【0091】
(A-3)脂肪族マレイミド化合物は、ポリイミド構造を含むことが好ましい。好ましい(A-3)脂肪族マレイミド化合物としては、下記式(A9)で表されるマレイミド末端ポリイミド化合物が挙げられる。
【0092】
【0093】
(式(A9)において、Re1は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数5以上のアルキレン基を表し;Re2は、それぞれ独立に、2価の連結基を表し;ne1は、1~10の整数を表す。)
【0094】
式(A9)において、Re1は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数5以上のアルキレン基を表す。Re1の炭素原子数は、詳細には、通常5以上、好ましくは6以上、より好ましくは8以上であり、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。アルキレン基が有しうる置換基としては、例えば、(A-2)ビフェニル型マレイミド化合物の説明においてビフェニル骨格のベンゼン環に結合しうる置換基として上述したものと同じ例が挙げられる。中でも、Re1は、置換基を有さないアルキレン基であることが好ましい。
【0095】
式(A9)において、Re2は、それぞれ独立に、2価の連結基を表す。2価の連結基としては、酸素原子、アリーレン基、アルキレン基、又はこれらの基の2以上の組み合わせからなる2価の基が好ましい。アリーレン基の炭素原子数は、好ましくは6~24、より好ましくは6~18、更に好ましくは6~14、特に好ましくは6~10である。好ましいアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基等が挙げられる。アルキレン基の炭素原子数は、好ましくは1~50、より好ましくは1~45、更に好ましくは1~40である。このアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。好ましいアルキレン基としては、例えば、メチルエチレン基、シクロヘキシレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、ヘプタデシレン基、ヘキサトリアコンチレン基、オクチレン-シクロヘキシレン構造を有する基、オクチレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、プロピレン-シクロヘキシレン-オクチレン構造を有する基、等が挙げられる。中でも、Re2としては、酸素原子が好ましい。
【0096】
式(A9)において、ne1は、1~10の整数を表す。
【0097】
式(A9)で表される(A-3)脂肪族マレイミド化合物としては、例えば、デザイナーモレキュールズ社製の「BMI-1500」(式(A10)の化合物)、「BMI-1700」(式(A11)の化合物)、が挙げられる。下記の式(A10)及び式(A11)において、ne2及びne3は、それぞれ独立に、1~10の整数を表す。
【0098】
【0099】
(A-3)脂肪族マレイミド化合物の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1.0質量%以上であり、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下、特に好ましくは4.0質量%以下である。(A-3)脂肪族マレイミド化合物の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0100】
(A-3)脂肪族マレイミド化合物の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1.0質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。(A-3)脂肪族マレイミド化合物の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0101】
(A-2)ビフェニル型マレイミド化合物、(A-3)脂肪族マレイミド化合物等の任意のマレイミド化合物のマレイミド基当量は、上述した(A-1)特定マレイミド化合物のマレイミド基当量と同じ範囲にあることが好ましい。任意のマレイミド化合物のマレイミド基当量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0102】
(A)マレイミド化合物の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。(A)マレイミド化合物の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0103】
(A)マレイミド化合物の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、特に好ましくは2質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。(A)マレイミド化合物の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0104】
(A)マレイミド化合物の量は、樹脂組成物中の(B)エポキシ樹脂100質量%に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは100質量%以上であり、好ましくは200質量%以下、より好ましくは180質量%以下、特に好ましくは160質量%以下である。(A)マレイミド化合物の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0105】
(A)マレイミド化合物のマレイミド基の合計数と、(B)エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数との比(マレイミド基/エポキシ基)は、特定の範囲にあることが好ましい。前記の比(マレイミド基/エポキシ基)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.3以上、特に好ましくは0.5以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、特に好ましくは2以下である。「(A)マレイミド化合物のマレイミド基の合計数」とは、樹脂組成物中に存在する(A)マレイミド化合物の不揮発成分の質量を、マレイミド基当量で除した値を、全て合計した値である。前記の比(マレイミド基/エポキシ基)が前記の範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0106】
(A)マレイミド化合物の量は、樹脂組成物中の(C)活性エステル系硬化剤100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは160質量%以下、より好ましくは130質量%以下、特に好ましくは110質量%以下である。(A)マレイミド化合物の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0107】
(A)マレイミド化合物のマレイミド基の合計数と、(C)活性エステル系硬化剤の活性エステル基の合計数との比(マレイミド基/活性エステル基)は、特定の範囲にあることが好ましい。前記の比(マレイミド基/活性エステル基)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.3以上、特に好ましくは0.5以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、特に好ましくは2以下である。前記の比(マレイミド基/活性エステル基)が前記の範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0108】
[3.(B)エポキシ樹脂]
樹脂組成物が含む(B)成分としてのエポキシ樹脂は、エポキシ基を有する硬化性樹脂であり、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、イソシアヌラート型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂、フェノールフタレイン型エポキシ樹脂等が挙げられる。(B)エポキシ樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0109】
樹脂組成物は、(B)エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。(B)エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0110】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物は、(B)エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよい。中でも、(B)エポキシ樹脂として、液状状エポキシ樹脂のみを用いることがより好ましい。
【0111】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0112】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0113】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP-4032」、「HP-4032-D」、「HP-4032-SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「828EL」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」、「604」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「ED-523T」(グリシロール型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-3950L」、「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-4088S」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」、日本曹達社製の「JP-100」、「JP-200」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0114】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0115】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂、フェノールフタレイン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0116】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「HP-7200L」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3000FH」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトール型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN375」(ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YX4000HK」、「YL7890」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX7700」(フェノールアラルキル型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「WHR991S」(フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0117】
(B)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。エポキシ当量は、エポキシ基1当量当たりのエポキシ樹脂の質量を表す。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0118】
(B)エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0119】
樹脂組成物中の(B)エポキシ樹脂の量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。(B)エポキシ樹脂の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0120】
樹脂組成物中の(B)エポキシ樹脂の量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは3質量%以上、より好ましくは10質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。(B)エポキシ樹脂の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0121】
[4.(C)活性エステル系硬化剤]
樹脂組成物が含む(C)成分としての活性エステル系硬化剤は、分子中に1個以上の活性エステル基を有する化合物であり、(B)エポキシ樹脂と反応しうる。(C)活性エステル系硬化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0122】
(C)活性エステル系硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。当該活性エステル化合物は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル化合物が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル化合物がより好ましい。
【0123】
カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0124】
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0125】
具体的には、(C)活性エステル系硬化剤としては、ジシクロペンタジエン型活性エステル化合物、ナフタレン構造を含むナフタレン型活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が好ましい。中でも、ジシクロペンタジエン型活性エステル化合物、及び、ナフタレン型活性エステル化合物から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、ジシクロペンタジエン型活性エステル化合物がさらに好ましい。ジシクロペンタジエン型活性エステル化合物としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物が好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0126】
(C)活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、DIC社製の「EXB-9451」、「EXB-9460」、「EXB-9460S」、「HPC-8000」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L」、「EXB-8000L-65M」、「HPC-8000L-65TM」、「EXB-8000L-65TM」;ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB-8100L-65T」、「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」、「EXB-8150-60T」、「EXB-9416-70BK」(DIC社製)、「PC1300-02」(エア・ウォーター社製);りん含有活性エステル化合物として「EXB9401」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル化合物として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);スチリル基を含む活性エステル化合物として「PC1300-02-65MA」(エア・ウォーター社製);等が挙げられる。
【0127】
(C)活性エステル系硬化剤の活性エステル基当量は、好ましくは50g/eq.~500g/eq.、より好ましくは50g/eq.~400g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。活性エステル基当量は、活性エステル基1当量あたりの活性エステル化合物の質量を表す。
【0128】
樹脂組成物中の(C)活性エステル系硬化剤の量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは3質量%以上、より好ましくは6質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。(C)活性エステル系硬化剤の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0129】
樹脂組成物中の(C)活性エステル系硬化剤の量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは6質量%以上、より好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。(C)活性エステル系硬化剤の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0130】
(C)活性エステル系硬化剤の活性エステル基の合計数と、(B)エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数との比(活性エステル基/エポキシ基)は、特定の範囲にあることが好ましい。前記の比(活性エステル基/エポキシ基)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、特に好ましくは0.8以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、特に好ましくは2以下である。前記の比(活性エステル基/エポキシ基)が前記の範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0131】
[5.(D)無機充填材]
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に(D)無機充填材を含んでいてもよい。(D)成分としての無機充填材は、通常、粒子の状態で樹脂組成物に含まれる。
【0132】
(D)無機充填材の材料としては、無機化合物を用いうる。(D)無機充填材の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては球形シリカが好ましい。(D)無機充填材は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0133】
(D)無機充填材の市販品としては、例えば、電化化学工業社製の「UFP-30」;新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;デンカ社製の「UFP-30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;デンカ社製の「DAW-03」、「FB-105FD」などが挙げられる。
【0134】
(D)無機充填材の平均粒径は、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。(D)無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出できる。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0135】
(D)無機充填材の比表面積は、本発明の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.1m2/g以上、より好ましくは0.5m2/g以上、さらに好ましくは1m2/g以上、特に好ましくは3m2/g以上であり、好ましくは100m2/g以下、より好ましくは70m2/g以下、さらに好ましくは50m2/g以下、特に好ましくは40m2/g以下である。無機充填材の比表面積は、BET法に従って、BET全自動比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0136】
(D)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。また、表面処理剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0137】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製の「KBM-1003」、「KBE-1003」(ビニル系シランカップリング剤);「KBM-303」、「KBM-402」、「KBM-403」、「KBE-402」、「KBE-403」(エポキシ系シランカップリング剤);「KBM-1403」(スチリル系シランカップリング剤);「KBM-502」、「KBM-503」、「KBE-502」、「KBE-503」(メタクリル系シランカップリング剤);「KBM-5103」(アクリル系シランカップリング剤);「KBM-602」、「KBM-603」、「KBM-903」、「KBE-903」、「KBE-9103P」、「KBM-573」、「KBM-575」(アミノ系シランカップリング剤);「KBM-9659」(イソシアヌレート系シランカップリング剤);「KBE-585」(ウレイド系シランカップリング剤);「KBM-802」、「KBM-803」(メルカプト系シランカップリング剤);「KBE-9007N」(イソシアネート系シランカップリング剤);「X-12-967C」(酸無水物系シランカップリング剤);「KBM-13」、「KBM-22」、「KBM-103」、「KBE-13」、「KBE-22」、「KBE-103」、「KBM-3033」、「KBE-3033」、「KBM-3063」、「KBE-3063」、「KBE-3083」、「KBM-3103C」、「KBM-3066」、「KBM-7103」(非シランカップリング-アルコキシシラン化合物)等が挙げられる。
【0138】
表面処理剤による表面処理の程度は、(D)無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、(D)無機充填材100質量%は、0.2質量%~5質量%の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量%~3質量%で表面処理されていることがより好ましく、0.3質量%~2質量%で表面処理されていることがさらに好ましい。
【0139】
表面処理剤による表面処理の程度は、(D)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上がさらに好ましい。一方、樹脂組成物の溶融粘度やシート形態での溶融粘度の上昇を防止する観点から、1.0mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下がさらに好ましい。
【0140】
(D)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、不揮発成分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0141】
樹脂組成物中の(D)無機充填材の量は、本発明の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
【0142】
(D)無機充填材100質量%に対する(A-1)特定マレイミド化合物の量は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、特に好ましくは8質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。このような関係を満たす量の(D)無機充填材を用いた場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0143】
(D)無機充填材100質量%に対する式(A1)で表される構造を含むマレイミド化合物の量は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、特に好ましくは8質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。このような関係を満たす量の(D)無機充填材を用いた場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0144】
(D)無機充填材100質量%に対する(A)マレイミド化合物の量は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。このような関係を満たす量の(D)無機充填材を用いた場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0145】
[6.(E)任意の硬化剤]
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に(E)任意の硬化剤を含んでいてもよい。ただし、(E)任意の硬化剤には、(C)活性エステル系硬化剤は含めない。(E)成分としての任意の硬化剤としては、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤などが挙げられる。中でも、本発明の効果を顕著に得る観点から、(E)任意の硬化剤は、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、及びカルボジイミド系硬化剤のいずれか1種類以上であることが好ましく、フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤のいずれか1種類以上であることがより好ましく、フェノール系硬化剤が特に好ましい。(E)任意の硬化剤は、1種類を単独で用いてもよく、又は2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0146】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。
【0147】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金化学社製の「SN170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-495V」、「SN-375」、「SN-395」、DIC社製の「TD-2090」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA3018-50P」、「EXB-9500」等が挙げられる。
【0148】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OP100D」、「ODA-BOZ」;昭和高分子社製の「HFB2006M」;四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」などが挙げられる。
【0149】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0150】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル社製の「V-03」、「V-07」等が挙げられる。
【0151】
酸無水物系硬化剤としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する硬化剤が挙げられ、1分子内中に2個以上の酸無水物基を有する硬化剤が好ましい。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物系硬化剤の市販品としては、新日本理化社製の「HNA-100」、「MH-700」等が挙げられる。
【0152】
樹脂組成物中の(E)任意の硬化剤の量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、特に好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。(E)任意の硬化剤の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0153】
樹脂組成物中の(E)任意の硬化剤の量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、特に好ましくは6質量%以下である。(E)任意の硬化剤の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0154】
(E)任意の硬化剤の活性基の合計数と、(B)エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数との比(活性基/エポキシ基)は、特定の範囲にあることが好ましい。前記の比(活性基/エポキシ基)は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、特に好ましくは0.1以上であり、好ましくは3以下、より好ましくは1以下、特に好ましくは0.5以下である。「(E)任意の硬化剤の活性基の合計数」とは、樹脂組成物中に存在する(E)任意の硬化剤の不揮発成分の質量を、活性基当量で除した値を、全て合計した値である。前記の比(活性基/エポキシ基)が前記の範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0155】
[7.(F)硬化促進剤]
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に(F)硬化促進剤を含んでいてもよい。硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、ウレア系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤等が挙げられる。(F)硬化促進剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0156】
リン系硬化促進剤としては、例えば、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムラウレート、ビス(テトラブチルホスホニウム)ピロメリテート、テトラブチルホスホニウムハイドロジェンヘキサヒドロフタレート、テトラブチルホスホニウム2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノラート、ジ-tert-ブチルメチルホスホニウムテトラフェニルボレート等の脂肪族ホスホニウム塩;メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、プロピルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、p-トリルトリフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラp-トリルボレート、トリフェニルエチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(3-メチルフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(2-メトキシフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等の芳香族ホスホニウム塩;トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン等の芳香族ホスフィン・ボラン複合体;トリフェニルホスフィン・p-ベンゾキノン付加反応物等の芳香族ホスフィン・キノン付加反応物;トリブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、ジ-tert-ブチル(2-ブテニル)ホスフィン、ジ-tert-ブチル(3-メチル-2-ブテニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の脂肪族ホスフィン;ジブチルフェニルホスフィン、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリス(4-エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチル-4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル-2-ピリジルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)アセチレン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル等の芳香族ホスフィン等が挙げられる。
【0157】
ウレア系硬化促進剤としては、例えば、1,1-ジメチル尿素;1,1,3-トリメチル尿素、3-エチル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロヘキシル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロオクチル-1,1-ジメチル尿素等の脂肪族ジメチルウレア;3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(2-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジメチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-イソプロピルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メトキシフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-ニトロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-メトキシフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-クロロフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、N,N-(1,4-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)、N,N-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)〔トルエンビスジメチルウレア〕等の芳香族ジメチルウレア等が挙げられる。
【0158】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。
【0159】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、四国化成工業社製の「1B2PZ」、「2MZA-PW」、「2PHZ-PW」、三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0160】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0161】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられる。アミン系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、味の素ファインテクノ社製の「MY-25」等が挙げられる。
【0162】
樹脂組成物中の(F)硬化促進剤の量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、特に好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。(F)硬化促進剤の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0163】
樹脂組成物中の(F)硬化促進剤の量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。(F)硬化促進剤の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。
【0164】
[8.(G)溶剤]
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に(G)溶剤を含んでいてもよい。溶剤は、通常、揮発性成分であり、有機溶剤を用いうる。(G)溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル系溶剤;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール系溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶剤;等が挙げられる。(G)溶剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0165】
(G)溶剤の量は、特に限定されない。(G)溶剤の量は、樹脂組成物中の全成分100質量%に対して、例えば、60質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下等でありうる。
【0166】
[9.その他の成分]
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に任意の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、熱可塑性樹脂、有機充填材、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、難燃剤等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0167】
[10.樹脂組成物の製造方法]
樹脂組成物は、例えば、上述した成分を、任意の順で混合することによって、製造することができる。また、各成分を混合する過程で、温度を適切に調整することにより、加熱及び/又は冷却を行ってもよい。また、各成分の混合中又は混合後に、ミキサー等の撹拌装置を用いて撹拌を行って、各成分を均一に分散させてもよい。さらに、必要に応じて、樹脂組成物に脱泡処理を行ってもよい。
【0168】
[11.樹脂組成物の特性]
上述した樹脂組成物によれば、誘電正接が低く、且つ、ガラス転移温度が高い硬化物を得ることができる。
【0169】
例えば、後述する実施例に記載の条件で樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の誘電正接Dfは、好ましくは0.010以下、より好ましくは0.005以下、特に好ましくは0.004以下である。前記の硬化物の誘電正接Dfの下限値は、特に限定されないが、0.001以上でありうる。硬化物の誘電正接は、実施例において説明する方法によって測定できる。
【0170】
例えば、後述する実施例に記載の条件で樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物のガラス転移温度Tgは、好ましくは130℃以上、より好ましくは140℃以上、特に好ましくは150℃以上である。前記の硬化物のガラス転移温度Tgの上限値は、特に限定されないが、260℃以下でありうる。
【0171】
樹脂組成物の硬化物は、通常、小さい誘電率を有することができる。例えば、後述する実施例に記載の条件で樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の誘電率Dkは、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.2以下、特に好ましくは3.0以下である。前記の硬化物の誘電率の下限値は、特に限定されないが、例えば、2.0以上でありうる。硬化物の誘電率は、実施例において説明する方法によって測定できる。
【0172】
樹脂組成物の硬化物で絶縁層を形成した場合、その絶縁層の粗化処理後の表面粗さを小さくすることができる。例えば、後述する実施例に記載の方法で絶縁層の形成及び粗化処理を行った場合、その絶縁層の表面の算術平均粗さRaは、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下、特に好ましくは70nm以下である。算術平均粗さRaの下限値は、特に限定されないが、例えば、10nm以上でありうる。絶縁層の表面の算術平均粗さRaは、実施例において説明する方法によって測定できる。
【0173】
樹脂組成物の硬化物で絶縁層を形成し、その絶縁層上にメッキにより導体層を形成した場合、絶縁層と導体層との間の密着強度としてのメッキピール強度を高くできる。例えば、後述する実施例に記載の方法で絶縁層及び導体層の形成を行った場合、絶縁層及び導体層の間のメッキピール強度は、好ましくは0.3kgf/cm以上、より好ましくは0.4kgf/cm以上、特に好ましくは0.5kgf/cm以上でありうる。メッキピール強度の上限値は、特に限定されないが、例えば、2.0kgf/cm以下でありうる。絶縁層及び導体層の間のメッキピール強度は、実施例において説明する方法によって測定できる。
【0174】
[12.樹脂組成物の用途]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、絶縁用途の樹脂組成物として好適であり、中でも、絶縁層形成用の樹脂組成物として特に好適である。よって、例えば、樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶縁層形成用の樹脂組成物)として好適である。また、樹脂組成物は、絶縁層上に形成される導体層(再配線層を含む)を形成するための当該絶縁層を形成するための樹脂組成物(導体層を形成するための絶縁層形成用の樹脂組成物)として好適である。樹脂組成物はまた、樹脂シート、プリプレグ等のシート状積層材料、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が使用されうる用途で広範囲に使用できる。
【0175】
また、例えば、以下の(1)~(6)工程を経て半導体チップパッケージが製造される場合、本実施形態に係る樹脂組成物は、再配線層を形成するための絶縁層としての再配線形成層を形成するための樹脂組成物(再配線形成層形成用の樹脂組成物)、及び半導体チップを封止するための樹脂組成物(半導体チップ封止用の樹脂組成物)としても好適である。半導体チップパッケージが製造される際、封止層上に、更に再配線層が形成されてもよい。
(1)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(2)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(3)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(4)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(5)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程、及び
(6)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程
【0176】
上述した樹脂組成物は、プリント配線板が部品内蔵回路板である場合にも、使用することができる。
【0177】
[13.シート状積層材料]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、ワニス状態で塗布して使用することもできるが、工業的には、樹脂組成物を含有するシート状積層材料の形態で用いることが好ましい。シート状積層材料としては、以下に示す樹脂シート、プリプレグが好ましい。
【0178】
樹脂シートは、支持体と、この支持体上に上述した樹脂組成物層で形成された樹脂組成物層と、を含む。
【0179】
樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板の薄型化、及び当該樹脂組成物の硬化物が薄膜であっても絶縁性に優れた硬化物を提供できるという観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、例えば、3μm以上、5μm以上等でありうる。
【0180】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0181】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0182】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0183】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理等の表面処理を施してあってもよい。
【0184】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0185】
支持体の厚さは、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0186】
一実施形態において、樹脂シートは、さらに必要に応じて、任意の層を含んでいてもよい。斯かる任意の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、支持体に準じた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0187】
樹脂シートは、例えば、溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等の塗布装置を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。溶剤としては、例えば、樹脂組成物が含みうる(G)成分として説明したものと同じものが挙げられる。溶剤は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて使用してもよい。
【0188】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で1分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0189】
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0190】
一実施形態において、プリプレグは、シート状繊維基材に樹脂組成物を含浸させて形成される。
【0191】
プリプレグに用いるシート状繊維基材は特に限定されず、例えば、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等が挙げられる。プリント配線板の薄型化の観点から、シート状繊維基材の厚さは、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下である。シート状繊維基材の厚さの下限は特に限定されないが、通常10μm以上である。
【0192】
プリプレグは、ホットメルト法、ソルベント法等の公知の方法により製造することができる。
【0193】
プリプレグの厚さは、上述の樹脂シートにおける樹脂組成物層と同様の範囲でありうる。
【0194】
[14.プリント配線板]
本発明の一実施形態に係るプリント配線板は、上述した樹脂組成物を硬化して得られる硬化物で形成された絶縁層を含む。
【0195】
プリント配線板は、例えば、上述の樹脂シートを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、樹脂シートを、樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成する工程
【0196】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も、「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用してもよい。
【0197】
内層基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール等)が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0198】
内層基板と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施され得る。
【0199】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0200】
積層の後に、大気圧下、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0201】
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
【0202】
工程(II)において、樹脂組成物層を硬化して、樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を形成する。樹脂組成物層の硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して採用される条件を使用してよい。通常は、樹脂組成物層の硬化は、熱硬化として進行しうる。
【0203】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類によっても異なるが、一実施形態において、硬化温度は好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~210℃である。硬化時間は好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間とすることができる。
【0204】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃~120℃、好ましくは60℃~115℃、より好ましくは70℃~110℃の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上、好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間予備加熱してもよい。
【0205】
プリント配線板を製造する方法は、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程を、さらに含んでいてもよい。支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。また、必要に応じて、工程(I)~工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層配線板を形成してもよい。
【0206】
他の実施形態において、プリント配線板は、上述のプリプレグを用いて製造することができる。製造方法は基本的に樹脂シートを用いる場合と同様である。
【0207】
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0208】
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。通常、この工程(IV)において、スミアの除去も行われる。粗化処理の手順、条件は特に限定されない。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。
【0209】
粗化処理に用いる膨潤液としては、例えば、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液である。アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
【0210】
粗化処理に用いる酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0211】
粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0212】
一実施形態において、粗化処理後の絶縁層表面の算術平均粗さRaは、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されるものではなく、例えば、1nm以上、2nm以上等でありうる。また、粗化処理後の絶縁層表面の二乗平均平方根粗さ(Rq)は、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されるものではなく、例えば、1nm以上、2nm以上等とし得る。絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)及び二乗平均平方根粗さ(Rq)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0213】
工程(V)は、導体層を形成する工程であり、絶縁層上に導体層を形成する。導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0214】
導体層は、単層構造であってもよく、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0215】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0216】
導体層は、メッキによって形成することが好ましい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の方法により絶縁層の表面にメッキして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0217】
絶縁層の表面に、無電解メッキによりメッキシード層を形成する。次いで、形成されたメッキシード層上に、所望の配線パターンに対応してメッキシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出したメッキシード層上に、電解メッキにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なメッキシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0218】
[15.半導体装置]
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、上述したプリント配線板を含む。この半導体装置は、上述したプリント配線板を用いて製造することができる。
【0219】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例】
【0220】
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものでは無い。以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示の無い限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。また、以下に説明する操作は、別途明示の無い限り、常温常圧の環境で行った。
【0221】
[マレイミド化合物の用意]
発明協会公開技報公技番号2020-500211号の合成例1に記載の方法で合成されたマレイミド化合物A1のMEK溶液(不揮発成分70質量%)を用意した。このマレイミド化合物A1は、下記式で表される。
【0222】
【0223】
マレイミド化合物A1のFD-MSスペクトルを測定すると、M+=560、718及び876のピークが確認される。これらのピークは、それぞれ、n1が0、1及び2の場合に相当する。また、マレイミド化合物A1をGPCによって分析して、インダン骨格部分の繰り返し単位数n1の値を数平均分子量に基づいて求めると、n1=1.47であり、分子量分布(Mw/Mn)=1.81である。さらに、マレイミド化合物A1の全量100面積%中、平均繰り返し単位数n1が0のマレイミド化合物の含有割合は、26.5面積%である。
【0224】
前記のマレイミド化合物A1のFD-MSスペクトルは、下記の測定装置及び測定条件で測定されたものを表す。
(FD-MSスペクトルの測定装置及び測定条件)
測定装置:JMS-T100GC AccuTOF
測定条件
測定範囲:m/z=4.00~2000.00
変化率:51.2mA/min
最終電流値:45mA
カソード電圧:-10kV
記録間隔:0.07sec
【0225】
前記のマレイミド化合物A1のGPCは、下記の測定装置及び測定条件で測定されたものを表す。
測定装置:東ソー社製「HLC-8320 GPC」
カラム:東ソー社製ガードカラム「HXL-L」、東ソー社製「TSK-GEL G2000HXL」、東ソー社製「TSK-GEL G2000HXL」、東ソー社製「TSK-GEL G3000HXL」、及び、東ソー社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー社製「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準:前記「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の単分散ポリスチレンを用いる。
試料:マレイミド化合物の不揮発成分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0226】
マレイミド化合物A1の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))、及び、マレイミド化合物中のインダン骨格に寄与する平均繰り返し単位数「n1」は、前記のGPC測定により得られたGPCチャートから算出されたものを表す。また、平均繰り返し単位数「n1」は、数平均分子量(Mn)に基づき算出されたものを表す。具体的には、n1が0~4の化合物について、理論分子量と、GPCにおける実測値分子量とを散布図上にプロットし、その近似直線を引く。そして、この直線上の実測値Mn(1)が示す点より数平均分子量(Mn)を求め、更に平均繰り返し単位する「n1」を算出する。さらに、GPC測定の結果に基づき、マレイミド化合物A1の全量100面積%中、平均繰り返し単位数n1が0のマレイミド化合物の含有割合(面積%)が、算出される。詳細については、発明協会公開技報公技番号2020-500211号を参照しうる。
【0227】
[実施例1]
上述したマレイミド化合物A1(不揮発成分70質量%の溶液)20部、液状のナフタレン骨格含有エポキシ樹脂(DIC社製「HP-4032-SS」、エポキシ当量144g/eq.)10部、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」、不揮発成分65質量%のトルエン溶液、活性エステル基当量223g/eq.)30部、無機充填材(アミン系アルコキシシラン化合物(信越化学工業社製「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m2/g)80部、及び、硬化促進剤(四国化成社製のイミダゾール化合物「1B2PZ」)0.5部を混合し、高速回転ミキサーを用いて均一に分散して、樹脂ワニスを得た。
【0228】
支持体として、離型層を備えたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。この支持体の離型層上に、前記の樹脂ワニスを、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが40μmとなるように均一に塗布した。その後、樹脂ワニスを80℃~100℃(平均90℃)で4分間乾燥させて、支持体及び樹脂組成物層を含む樹脂シートを得た。
【0229】
[実施例2]
ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」)の代わりに、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8150-62T」、不揮発成分62質量%のトルエン溶液、活性エステル基当量229g/eq.)30部を用いた。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを製造した。
【0230】
[実施例3]
マレイミド化合物A1(不揮発成分70質量%の溶液)の量を、20部から15部に変更した。また、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」)の代わりに、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8150-62T」、不揮発成分62質量%のトルエン溶液、活性エステル基当量229g/eq.)30部を用いた。さらに、樹脂組成物に、ビフェニルアラルキル型マレイミド化合物(日本化薬社製「MIR-3000-70MT」、マレイミド基当量:275g/eq.、不揮発分70%のMEK/トルエン混合溶液)5部を加えた。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを製造した。
【0231】
[実施例4]
マレイミド化合物A1(不揮発成分70質量%の溶液)の量を、20部から18部に変更した。また、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」)の代わりに、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8150-62T」、不揮発成分62質量%のトルエン溶液、活性エステル基当量229g/eq.)30部を用いた。さらに、樹脂組成物に、液状の脂肪族マレイミド化合物(デザイナーモレキュールズ社製「BMI-1500」、マレイミド基当量750g/eq.)2部を加えた。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを製造した。
【0232】
[実施例5]
ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」)の代わりに、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8150-62T」、不揮発成分62質量%のトルエン溶液、活性エステル基当量229g/eq.)25部を用いた。また、硬化促進剤(四国化成社製のイミダゾール化合物「1B2PZ」)の量を、0.5部から0.1部に変更した。さらに、樹脂組成物に、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、水酸基当量:約151、不揮発成分50%の2-メトキシプロパノール溶液)5部を加えた。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを製造した。
【0233】
[比較例1]
マレイミド化合物A1を使用しなかった。また、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」)の代わりに、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8150-62T」、不揮発成分62質量%のトルエン溶液、活性エステル基当量229g/eq.)30部を用いた。さらに、無機充填材の量を、80部から55部に変更した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを製造した。
【0234】
[比較例2]
マレイミド化合物A1(不揮発成分70質量%の溶液)20部の代わりに、ビフェニルアラルキル型マレイミド化合物(日本化薬社製「MIR-3000-70MT」、マレイミド基当量:275g/eq.、不揮発分70%のMEK/トルエン混合溶液)20部を用いた。また、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」)の代わりに、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8150-62T」、不揮発成分62質量%のトルエン溶液、活性エステル基当量229g/eq.)30部を用いた。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを製造した。
【0235】
[比較例3]
マレイミド化合物A1(不揮発成分70質量%の溶液)20部の代わりに、液状の脂肪族マレイミド化合物(デザイナーモレキュールズ社製「BMI-1500」、マレイミド基当量750g/eq.)14部を用いた。また、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル硬化剤(DIC社製「HPC-8000-65T」)の代わりに、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8150-62T」、不揮発成分62質量%のトルエン溶液、活性エステル基当量229g/eq.)30部を用いた。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、樹脂シートを製造した。
【0236】
[誘電特性の測定]
実施例及び比較例で作製した樹脂シートを、200℃にて90分間加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させた。その後、支持体を剥離して、樹脂組成物の硬化物を得た。この硬化物を、幅2mm、長さ80mmの試験片に切断した。該試験片について、アジレントテクノロジーズ社製「HP8362B」を用いて、空洞共振摂動法により、測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて誘電率Dk及び誘電正接Dfを測定した。3本の試験片について測定を行い、その平均値を下記表に示した。
【0237】
[メッキピール強度の測定]
(1)内層回路基板の下地処理:
内層回路基板として、内層回路(銅箔)を両面に有するガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板厚み0.4mm、パナソニック社製「R1515A」)を用意した。この内層回路基板の両面を、メック社製「CZ8101」にて1μmエッチングして、銅表面の粗化処理を行った。
【0238】
(2)樹脂シートのラミネート:
樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、2ステージビルドアップラミネーター、CVP700)を用いて、内層回路基板の両面にラミネートした。このラミネートは、樹脂シートの樹脂組成物層が内層回路基板と接するように実施した。また、このラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、130℃、圧力0.74MPaにて45秒間圧着させることにより、実施した。次いで、120℃、圧力0.5MPaにて75秒間、熱プレスを行った。
【0239】
(3)樹脂組成物の硬化:
ラミネートされた樹脂シート及び内層回路基板を130℃で30分間加熱し、続けて170℃で30分間加熱して、樹脂組成物を硬化して、絶縁層を形成した。その後、支持体を剥離して、絶縁層、内層回路基板及び絶縁層をこの順で備える積層基板を得た。
【0240】
(4)粗化処理:
前記の積層基板を、膨潤液(アトテックジャパン社製のジエチレングリコールモノブチルエーテル含有のスエリングディップ・セキュリガントP(グリコールエーテル類、水酸化ナトリウムの水溶液))に、60℃で10分間浸漬した。次に、積層基板を、粗化液(アトテックジャパン社製のコンセントレート・コンパクトP(KMnO4:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に、80℃で20分間浸漬した。その後で、積層基板を、中和液(アトテックジャパン社製のリダクションショリューシン・セキュリガントP(硫酸の水溶液))に、40℃で5分間浸漬した。その後、積層基板を、80℃で30分乾燥して、「評価基板A」を得た。
【0241】
(5)セミアディティブ工法によるメッキ:
評価基板Aを、PdCl2を含む無電解メッキ用溶液に40℃で5分間浸漬し、次に、無電解銅メッキ液に25℃で20分間浸漬した。その後、150℃にて30分間加熱して、アニール処理を行った。その後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによるパターン形成を行った。その後、硫酸銅電解メッキを行い、20μmの厚さで導体層を形成した。次に、アニール処理を200℃にて60分間行って、「評価基板B」を得た。
【0242】
(6)メッキピール強度の測定:
評価基板Bの導体層に、幅10mm、長さ100mmの矩形部分を囲む切込みを形成した。矩形部分の一端を剥がして、つかみ具(ティー・エス・イー社製、オートコム型試験機「AC-50C-SL」)で掴んだ。つかみ具により、室温中にて、50mm/分の速度で前記の矩形部分を垂直方向に引きはがし、35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)をメッキピール強度として測定した。
【0243】
[表面粗さRaの測定]
前記の[メッキピール強度の測定]で作製した評価基板Aの絶縁層の表面の算術平均粗さRaを測定した。測定は、非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製WYKO NT3300)を用いて、VSIモード、50倍レンズにより、測定範囲を121μm×92μmとして測定した。この測定は、10か所の測定点で行い、その平均値を下記の表に示した。
【0244】
[ガラス転移温度Tgの測定]
樹脂シートを190℃のオーブンで90分加熱して樹脂組成物層を硬化させた。その後、支持体を剥離して、樹脂組成物層の硬化物を得た。この硬化物を、長さ20mm、幅6mmに切り出して、評価用硬化物を得た。
この評価用硬化物について、リガク社製の熱機械分析装置(TMA)を用い、引張加重法で25℃から250℃まで5℃/分の昇温速度で1回目のTMA曲線を得た。その後、同一の評価用硬化物について同じ測定を行い、2回目のTMA曲線を得た。2回目に得られたTMA曲線から、ガラス転移温度Tg(℃)の値を求めた。
【0245】
[結果]
実施例及び比較例の結果を、下記の表1に示す。
【0246】