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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/06 20060101AFI20241008BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
F04B39/06 G
F04B39/00 106A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023159413
(22)【出願日】2023-09-25
(62)【分割の表示】P 2019236674の分割
【原出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2023165828
(43)【公開日】2023-11-17
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】舩渡 基伸
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】早川 賢治
(72)【発明者】
【氏名】木下 雄介
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-067064(JP,A)
【文献】特開2007-306671(JP,A)
【文献】特開2013-021918(JP,A)
【文献】特開2019-143604(JP,A)
【文献】特開2009-156213(JP,A)
【文献】特開2011-163232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00-39/16
H02K 11/00-11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部を駆動する電動モータと、
前記電動モータを駆動するために電子部品が実装された回路基板を有する駆動回路と、
前記圧縮部、前記電動モータ、及び前記駆動回路を収容するハウジングと、
前記回路基板を載置する載置面を有するとともに前記電子部品を保持する樹脂部材と、を備えた電動圧縮機であって、
前記電子部品は、前記回路基板と共に前記樹脂部材を挟み込んだ状態で前記樹脂部材に保持されており、
前記電子部品に接触するとともに前記ハウジングと熱的に結合されている板状の第1金属部材と、
前記樹脂部材に一体的に設けられるとともに前記第1金属部材と協働して前記電子部品を挟み込む板状の第2金属部材と、
前記第1金属部材と前記第2金属部材とを締結するボルトと、を備え、
前記電子部品は、スイッチング素子を含み、
前記ボルトは、第1のボルトと第2のボルトを備え、
前記第1のボルトと前記第2のボルトとは、前記スイッチング素子を間に挟む位置に配置されており、
前記第2金属部材には、前記第1のボルトが貫通される孔と前記第2のボルトが貫通される孔とが形成されており、
前記第1のボルト及び前記第2のボルトは前記電動モータから前記駆動回路に向かう方向に前記第1金属部材、前記スイッチング素子、前記第2金属部材の順に貫通していることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記樹脂部材は、前記第2金属部材のうち前記電子部品を前記第1金属部材と挟み込む面以外の部分を埋設する凹部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記圧縮部、前記電動モータ、及び前記駆動回路は、前記圧縮部、前記電動モータ、及び前記駆動回路の順に並ぶように前記ハウジング内に収容され、
前記ハウジングは、前記駆動回路と前記電動モータとを区画する底壁と、前記駆動回路を収容する周壁と、前記周壁の開口を覆うカバーと、を備え、
前記底壁、前記第1金属部材、前記電子部品、前記第2金属部材、前記樹脂部材、前記回路基板、及び前記カバーの順に並ぶように配列されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮部と、圧縮部を駆動する電動モータと、電動モータを駆動するために電子部品が実装された回路基板を有する駆動回路と、圧縮部、電動モータ、及び駆動回路を収容するハウジングと、を備えている。また、回路基板を載置する載置面を有するとともに電子部品を保持する樹脂部材を備えた電動圧縮機が、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-21918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子部品から生じる熱は、例えば、ハウジングに放熱されるが、電子部品自身が熱によって変形すると、電子部品から生じる熱がハウジングに伝達され難くなる場合がある。すると、電子部品から生じる熱をハウジングに効率良く放熱することができなくなる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、電子部品から生じる熱をハウジングに効率良く放熱することができる電動圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部を駆動する電動モータと、前記電動モータを駆動するために電子部品が実装された回路基板を有する駆動回路と、前記圧縮部、前記電動モータ、及び前記駆動回路を収容するハウジングと、前記回路基板を載置する載置面を有するとともに前記電子部品を保持する樹脂部材と、を備えた電動圧縮機であって、前記電子部品は、前記回路基板と共に前記樹脂部材を挟み込んだ状態で前記樹脂部材に保持されており、前記電子部品に接触するとともに前記ハウジングと熱的に結合されている板状の第1金属部材と、前記樹脂部材に一体的に設けられるとともに前記第1金属部材と協働して前記電子部品を挟み込む板状の第2金属部材と、前記第1金属部材と前記第2金属部材とを締結するボルトと、を備え、前記電子部品は、スイッチング素子を含み、前記ボルトは、第1のボルトと第2のボルトを備え、前記第1のボルトと前記第2のボルトとは、前記スイッチング素子を間に挟む位置に配置されており、前記第2金属部材には、前記第1のボルトが貫通される孔と前記第2のボルトが貫通される孔とが形成されている。
【0007】
これによれば、電子部品が第1金属部材と第2金属部材とによって挟み込まれており、第1金属部材と第2金属部材とがボルトによって締結されているため、電子部品自身が熱によって変形しようとしても、電子部品の変形が第1金属部材及び第2金属部材によって抑制される。そして、第1金属部材が電子部品に接触するとともにハウジングに熱的に結合されているため、電子部品から生じる熱が、第1金属部材を介してハウジングに放熱される。したがって、電子部品から生じる熱をハウジングに効率良く放熱することができる。
【0008】
上記電動圧縮機において、前記樹脂部材は、前記第2金属部材のうち前記電子部品を前記第1金属部材と挟み込む面以外の部分を埋設する凹部を備えているとよい。
これによれば、樹脂部材が、第2金属部材のうち電子部品を第1金属部材と挟み込む面以外の部分を凹部によって埋設しているため、第2金属部材に雌ねじ孔が形成されたことにより生じる削り屑が第2金属部材と樹脂部材との間から排出され難くなる。したがって、第2金属部材に雌ねじ孔が形成されたことにより生じる削り屑が回路基板に付着してしまうことをさらに回避し易くすることができる。
【0009】
上記電動圧縮機において、前記圧縮部、前記電動モータ、及び前記駆動回路は、前記圧縮部、前記電動モータ、及び前記駆動回路の順に並ぶように前記ハウジング内に収容され、前記ハウジングは、前記駆動回路と前記電動モータとを区画する底壁と、前記駆動回路を収容する周壁と、前記周壁の開口を覆うカバーと、を備え、前記底壁、前記第1金属部材、前記電子部品、前記第2金属部材、前記樹脂部材、前記回路基板、及び前記カバーの順に並ぶように配列されているとよい。
【0010】
これによれば、第1金属部材を、駆動回路と電動モータとを区画する底壁に最も近い位置に配置することができるため、電子部品から生じる熱を、第1金属部材からハウジングの底壁へ効率良く放熱することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、電子部品から生じる熱をハウジングに効率良く放熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態における電動圧縮機を一部破断して示す側断面図。
図2】電動圧縮機の一部分を示す断面図。
図3】別の実施形態における電動圧縮機の一部分を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、電動圧縮機を具体化した一実施形態を図1及び図2にしたがって説明する。本実施形態の電動圧縮機は、例えば、車両空調装置に用いられる。
図1に示すように、電動圧縮機10は、有底筒状である金属製のハウジング11を備えている。ハウジング11は、有底筒状の吐出ハウジング12と、吐出ハウジング12に連結される有底筒状のモータハウジング13と、モータハウジング13に連結されるインバータケース14と、を有している。吐出ハウジング12、モータハウジング13、及びインバータケース14は、例えば、アルミニウム製である。
【0014】
モータハウジング13は、板状の底壁13aと、底壁13aの外周部から筒状に延びる周壁13bと、を有している。モータハウジング13の底壁13aの外面13eは、最外面131eと、最外面131eから凹んだ位置に配置される凹設面132eと、を有している。最外面131eは、外面13eの外周部に位置するとともに全周に亘って延びる環状である。最外面131eと凹設面132eとは、モータハウジング13の軸線方向に延びる環状の段差面133eによって接続されている。モータハウジング13の周壁13bには、モータハウジング13内に流体としての冷媒を吸入する吸入口13hが形成されている。
【0015】
モータハウジング13内には、回転軸15が収容されている。回転軸15は、回転軸15の軸線がモータハウジング13の周壁13bの軸心に一致した状態でモータハウジング13内に収容されている。また、モータハウジング13内には、回転軸15の回転によって駆動して冷媒を圧縮する圧縮部16と、回転軸15を回転させて圧縮部16を駆動する電動モータ17と、が収容されている。したがって、ハウジング11は、圧縮部16及び電動モータ17を収容している。圧縮部16及び電動モータ17は、回転軸15の軸線が延びる方向である軸線方向に並んで配置されている。電動モータ17は、圧縮部16よりもモータハウジング13の底壁13a側に配置されている。
【0016】
圧縮部16は、例えば、モータハウジング13内に固定された図示しない固定スクロールと、固定スクロールに対向配置される図示しない可動スクロールとから構成されるスクロール式である。
【0017】
電動モータ17は、筒状のステータ18と、ステータ18の内側に配置されるロータ19とから構成されている。ロータ19は、回転軸15と一体的に回転する。ステータ18は、ロータ19を取り囲んでいる。ロータ19は、回転軸15に止着されたロータコア19aと、ロータコア19aに設けられた図示しない複数の永久磁石と、を有している。ステータ18は、筒状のステータコア18aと、ステータコア18aに巻回されたモータコイル21と、を有している。
【0018】
吸入口13hには、外部冷媒回路22の一端が接続されている。吐出ハウジング12には、吐出口12hが形成されている。吐出口12hには、外部冷媒回路22の他端が接続されている。外部冷媒回路22から吸入口13hを介してモータハウジング13内に吸入された冷媒は、圧縮部16の駆動により圧縮部16で圧縮されて、吐出口12hを介して外部冷媒回路22へ流出する。そして、外部冷媒回路22へ流出した冷媒は、外部冷媒回路22の図示しない熱交換器や膨張弁を経て、吸入口13hを介してモータハウジング13内に還流する。電動圧縮機10及び外部冷媒回路22は、車両空調装置23を構成している。
【0019】
インバータケース14は、有底筒状のケース本体30と、ケース本体30の開口を閉塞するカバー40と、を有している。ケース本体30は、板状のケース底壁31、及びケース底壁31の外周部から筒状に延びるケース周壁32を有している。ケース本体30は、ケース底壁31がモータハウジング13の底壁13aに取り付けられることにより、モータハウジング13に連結されている。ケース底壁31の面積は、モータハウジング13の底壁13aの面積よりも大きい。このため、ケース底壁31の一部は、モータハウジング13の底壁13aの縁部よりも外側にはみ出している。ケース底壁31におけるモータハウジング13の底壁13aの縁部よりもはみ出した部位には、筒状のコネクタ接続部33が突設されている。
【0020】
カバー40は、ケース周壁32の開口を覆う板状である。カバー40は、ケース本体30と共にインバータ収容室41を形成している。ケース周壁32におけるケース底壁31とは反対側の端面とカバー40との間には、環状のガスケット42が介在されている。ガスケット42は、ケース周壁32におけるケース底壁31とは反対側の端面とカバー40との間をシールしている。
【0021】
電動圧縮機10は、駆動回路43を備えている。駆動回路43は、回路基板44を有している。回路基板44には、電動モータ17を駆動するために電子部品としてのコンデンサ45やパワーモジュール46が実装されている。コンデンサ45は、LCフィルタを構成する電子部品である。また、パワーモジュール46は、複数のスイッチング素子46aをモジュール化した電子部品である。駆動回路43は、インバータ収容室41内に収容されている。ケース周壁32は、駆動回路43を収容する周壁である。
【0022】
したがって、ハウジング11は、圧縮部16、電動モータ17、及び駆動回路43を収容している。圧縮部16、電動モータ17、及び駆動回路43は、圧縮部16、電動モータ17、及び駆動回路43の順に回転軸15の軸線方向に並ぶようにハウジング11内に収容されている。そして、モータハウジング13の底壁13aは、駆動回路43と電動モータ17とを区画する。
【0023】
ケース本体30のケース底壁31には、コンデンサ45が挿通される貫通孔31hが形成されている。そして、コンデンサ45は、貫通孔31hに挿通されてモータハウジング13の凹設面132eに接触している。
【0024】
電動圧縮機10は、樹脂部材50を備えている。樹脂部材50は、コンデンサ45やパワーモジュール46等の回路基板44に実装される電子部品を保持するホルダ部材である。樹脂部材50は、回路基板44を載置する載置面51を有している。
【0025】
図2に示すように、パワーモジュール46は、スイッチング素子46aをモールドする樹脂製である板状のモールド部46bと、スイッチング素子46aに電気的に接続されるとともにモールド部46bから突出する複数のリード線46cと、を有している。パワーモジュール46は、回路基板44と共に樹脂部材50を挟み込んだ状態で樹脂部材50に保持されている。樹脂部材50は、回路基板44とパワーモジュール46との間に配置されている。樹脂部材50には、各リード線46cが挿通されるリード貫通孔50hが形成されている。そして、各リード線46cは、各リード貫通孔50hに挿通されて、回路基板44に電気的に接続されている。各リード貫通孔50hに各リード線46cが挿通されることにより、回路基板44に対する各リード線46cの位置決め精度が向上する。
【0026】
電動圧縮機10は、第1金属部材61、第2金属部材62、及びボルト63を備えている。第1金属部材61は板状である。第1金属部材61は、ケース本体30のケース底壁31に一体形成されている。したがって、本実施形態の第1金属部材61は、ケース底壁31の一部分である。第1金属部材61は、ケース底壁31の内面の一部を形成している。パワーモジュール46は、第1金属部材61の厚み方向とモールド部46bの厚み方向とが一致した状態で、第1金属部材61に対して配置されている。第1金属部材61は、パワーモジュール46のモールド部46bに面接触している。また、第1金属部材61は、ケース底壁31を介してモータハウジング13の底壁13aに間接的に接するように配置されており、ケース底壁31を介してモータハウジング13の底壁13aに熱的に結合されている。
【0027】
第2金属部材62は、板状である。第2金属部材62は、樹脂部材50に設けられている。第2金属部材62は、例えば、インサート成形により樹脂部材50に一体的に設けられている。パワーモジュール46は、第2金属部材62の厚み方向とモールド部46bの厚み方向とが一致した状態で、第2金属部材62に対して配置されている。したがって、第1金属部材61及び第2金属部材62は、第1金属部材61の厚み方向と第2金属部材62の厚み方向とが一致した状態で配置されている。
【0028】
第2金属部材62は、パワーモジュール46のモールド部46bに面接触している。そして、第2金属部材62は、第1金属部材61と協働してパワーモジュール46を挟み込んでいる。したがって、第2金属部材62は、パワーモジュール46を第1金属部材61と挟み込む面62aを有している。樹脂部材50は、第2金属部材62のうちパワーモジュール46を第1金属部材61と挟み込む面62a以外の部分を埋設する凹部52を備えている。したがって、第2金属部材62において、パワーモジュール46を第1金属部材61と挟み込む面62a以外の面は、凹部52の内面に面接触した状態で凹部52内に配置されている。
【0029】
ボルト63は、第1金属部材61と第2金属部材62とを締結している。第1金属部材61には、ボルト63が挿通される挿通孔61hが形成されている。また、ケース本体30のケース底壁31には、挿通孔61hに連通する連通孔31aが形成されている。連通孔31aの一端は、挿通孔61hに連通するとともに、連通孔31aの他端は、ケース底壁31の外面に開口し、モータハウジング13の底壁13aの凹設面132eに対向している。
【0030】
パワーモジュール46のモールド部46bには、ボルト63が挿通されるモールド挿通孔46hが形成されている。モールド挿通孔46hは、モールド部46bの厚み方向でモールド部46bを貫通している。モールド挿通孔46hは、第1金属部材61の挿通孔61hに連通している。
【0031】
第2金属部材62には、ボルト63が螺合される雌ねじ孔62hが形成されている。雌ねじ孔62hは、第2金属部材62を厚み方向に貫通した状態で第2金属部材62に形成されている。樹脂部材50の一部は、雌ねじ孔62hにおける回路基板44側の開口を閉塞している。ボルト63は、連通孔31a、挿通孔61h、及びモールド挿通孔46hを通過して雌ねじ孔62hに螺合されている。これにより、第1金属部材61と第2金属部材62とがボルト63によって締結されるとともに、パワーモジュール46が、第1金属部材61及び第2金属部材62に挟み込まれた状態で、樹脂部材50に保持されている。モータハウジング13の底壁13a、第1金属部材61、パワーモジュール46、第2金属部材62、樹脂部材50、回路基板44、及びカバー40は、底壁13a、第1金属部材61、パワーモジュール46、第2金属部材62、樹脂部材50、回路基板44、及びカバー40の順に回転軸15の軸線方向に並ぶように配列されている。
【0032】
パワーモジュール46は、ボルト63、ケース底壁31、及びモータハウジング13を介してグランドに電気的に接続されている。また、パワーモジュール46の各リード線46cは、樹脂部材50の各リード貫通孔50hを貫通して回路基板44に電気的に接続されている。そして、スイッチング素子46aのスイッチング動作が行われることにより直流電圧が交流電圧に変換されて、交流電圧が駆動電圧として各リード線46c、回路基板44を経由して電動モータ17に印加される。これにより、電動モータ17が駆動し、電動モータ17の駆動に伴う回転軸15の回転によって、圧縮部16が駆動して冷媒が圧縮部16により圧縮される。
【0033】
次に、本実施形態の作用について説明する。
パワーモジュール46が第1金属部材61と第2金属部材62とによって挟み込まれており、第1金属部材61と第2金属部材62とがボルト63によって締結されている。このため、パワーモジュール46自身が熱によって変形しようとしても、パワーモジュール46の変形が第1金属部材61及び第2金属部材62によって抑制される。そして、第1金属部材61がパワーモジュール46に接触するとともにモータハウジング13に熱的に結合されている。モータハウジング13は、吸入口13hが吸入される冷媒によって冷やされているため、パワーモジュール46から生じる熱が、第1金属部材61を介してモータハウジング13に放熱される。したがって、パワーモジュール46から生じる熱がモータハウジング13に効率良く放熱される。
【0034】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)電動圧縮機10は、パワーモジュール46に接触するとともにモータハウジング13と熱的に結合されている板状の第1金属部材61と、樹脂部材50に設けられるとともに第1金属部材61と協働してパワーモジュール46を挟み込む板状の第2金属部材62と、第1金属部材61と第2金属部材62とを締結するボルト63と、を備えている。これによれば、パワーモジュール46が第1金属部材61と第2金属部材62とによって挟み込まれており、第1金属部材61と第2金属部材62とがボルト63によって締結されているため、パワーモジュール46自身が熱によって変形しようとしても、パワーモジュール46の変形が第1金属部材61及び第2金属部材62によって抑制される。そして、第1金属部材61がパワーモジュール46に接触するとともにモータハウジング13に熱的に結合されているため、パワーモジュール46から生じる熱が、第1金属部材61を介してモータハウジング13に放熱される。したがって、パワーモジュール46から生じる熱をモータハウジング13に効率良く放熱することができる。
【0035】
(2)第1金属部材61には、ボルト63が挿通される挿通孔61hが形成されている。第2金属部材62には、ボルト63が螺合される雌ねじ孔62hが貫通した状態で形成されている。ボルト63は、挿通孔61hを通過して雌ねじ孔62hに螺合されており、樹脂部材50は、雌ねじ孔62hにおける回路基板44側の開口を閉塞している。これによれば、樹脂部材50が雌ねじ孔62hにおける回路基板44側の開口を閉塞しているため、第2金属部材62に雌ねじ孔62hが形成されたことにより生じる削り屑が回路基板44に付着してしまうことを回避することができる。
【0036】
(3)樹脂部材50は、第2金属部材62のうちパワーモジュール46を第1金属部材61と挟み込む面62a以外の部分を埋設する凹部52を備えている。これによれば、樹脂部材50が、第2金属部材62のうちパワーモジュール46を第1金属部材61と挟み込む面62a以外の部分を凹部52によって埋設しているため、第2金属部材62に雌ねじ孔62hが形成されたことにより生じる削り屑が第2金属部材62と樹脂部材50との間から排出され難くなる。したがって、第2金属部材62に雌ねじ孔62hが形成されたことにより生じる削り屑が回路基板44に付着してしまうことをさらに回避し易くすることができる。
【0037】
(4)モータハウジング13の底壁13a、第1金属部材61、パワーモジュール46、第2金属部材62、樹脂部材50、回路基板44、及びカバー40の順に並ぶように配列されているため、第1金属部材61を、駆動回路43と電動モータ17とを区画する底壁13aに最も近い位置に配置することができる。したがって、パワーモジュール46から生じる熱を、第1金属部材61からモータハウジング13の底壁13aへ効率良く放熱することができる。
【0038】
(5)例えば、ボルト63が、樹脂部材50、第2金属部材62、及びモールド部46bの順に貫通して、第1金属部材61に螺合することで、第1金属部材61と第2金属部材62とをボルト63によって締結することが考えられる。この場合、ボルト63の頭部と回路基板44との絶縁距離を確保するために、ボルト63の頭部と回路基板44との距離を十分に離す必要があるため、その分、電動圧縮機10の体格が大型化してしまう虞がある。そこで、本実施形態では、ボルト63を、連通孔31a、挿通孔61h、及びモールド挿通孔46hを通過して雌ねじ孔62hに螺合させ、第1金属部材61と第2金属部材62とをボルト63によって締結したため、上述した問題が起こらず、電動圧縮機10の体格が大型化することが無い。
【0039】
(6)パワーモジュール46は、ボルト63、ケース底壁31、及びモータハウジング13を介してグランドに電気的に接続されている。これによれば、スイッチング素子46aからのノイズを、ボルト63、ケース底壁31、及びモータハウジング13を介してグランドに流すことができるため、スイッチング素子46aからのノイズが放射されてしまうことを抑制することができる。
【0040】
(7)第2金属部材62は、パワーモジュール46のモールド部46bに面接触している。これによれば、パワーモジュール46から生じる熱が、第2金属部材62にも放熱されるため、パワーモジュール46から生じる熱を効率良く放熱することができる。
【0041】
(8)パワーモジュール46が第1金属部材61と第2金属部材62とによって挟み込まれた状態で、第1金属部材61と第2金属部材62とがボルト63によって締結されている。これによれば、パワーモジュール46の耐振性が向上するため、各リード線46cと回路基板44との接続状態を良好なものとすることができる。
【0042】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0043】
図3に示すように、第1金属部材71が、ケース本体30のケース底壁31とは別部材であってもよい。第1金属部材71は、板状である。第1金属部材71は、ケース底壁31の内面の一部に載置されている。第1金属部材71の厚み方向とケース底壁31の厚み方向とは一致している。パワーモジュール46は、第1金属部材71の厚み方向とモールド部46bの厚み方向とが一致した状態で、第1金属部材71に対して配置されている。第1金属部材71は、パワーモジュール46のモールド部46bに面接触している。また、第1金属部材71は、ケース底壁31を介してモータハウジング13の底壁13aに熱的に結合されている。
【0044】
○ 実施形態において、パワーモジュール46のモールド部46bに、ボルト63が挿通されるモールド挿通孔46hが形成されていなくてもよい。要は、電動圧縮機10は、ボルト63が、パワーモジュール46に干渉しない位置で、第1金属部材61と第2金属部材62とを締結する構成であってもよい。
【0045】
○ 実施形態において、例えば、ボルト63が、樹脂部材50、第2金属部材62、及びモールド部46bの順に貫通して、第1金属部材61に螺合することで、第1金属部材61と第2金属部材62とをボルト63によって締結するようにしてもよい。
【0046】
○ 実施形態において、第1金属部材61と協働して第2金属部材62と挟み込まれる電子部品の一例として、パワーモジュール46を挙げて説明したが、これに限らず、回路基板44に実装される電子部品であれば、電子部品の種類は特に限定されるものではない。
【0047】
○ 実施形態において、電動圧縮機10は、例えば、モータハウジング13の底壁13aに、有底筒状のカバー部材が取り付けられており、モータハウジング13の底壁13aの外面、及びカバー部材の内面により、駆動回路43を収容するインバータ収容室41が形成されている構成であってもよい。この場合、カバー部材は、ハウジング11の一部である。そして、板状の第1金属部材61が、例えば、ポッティング樹脂を介してモータハウジング13の底壁13aの外面に接着されていてもよい。
【0048】
○ 実施形態において、第2金属部材62が、パワーモジュール46を第1金属部材61と挟み込む面62a以外の面の一部分が凹部52からはみ出している状態で凹部52内に配置されていてもよい。
【0049】
○ 実施形態において、樹脂部材50が凹部52を備えていなくてもよい。そして、第2金属部材62は、第2金属部材62全体が樹脂部材50から露出した状態で樹脂部材50に設けられていてもよい。
【0050】
○ 実施形態において、電動圧縮機10は、例えば、駆動回路43が、モータハウジング13に対して回転軸15の径方向外側に配置されている構成であってもよい。要は、圧縮部16、電動モータ17、及び駆動回路43が、この順で、回転軸15の軸線方向に並んで配置されていなくてもよい。
【0051】
○ 実施形態において、圧縮部16は、スクロール式に限らず、例えば、ピストン式やベーン式等であってもよい。
○ 実施形態において、電動圧縮機10は、車両空調装置23を構成していたが、これに限らず、例えば、電動圧縮機10は、燃料電池車に搭載されており、燃料電池に供給される流体としての空気を圧縮部16により圧縮するものであってもよい。
【0052】
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)流体を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部を駆動する電動モータと、前記電動モータを駆動するために電子部品が実装された回路基板を有する駆動回路と、前記圧縮部、前記電動モータ、及び前記駆動回路を収容するハウジングと、前記回路基板を載置する載置面を有するとともに前記電子部品を保持する樹脂部材と、を備えた電動圧縮機であって、前記電子部品は、前記回路基板と共に前記樹脂部材を挟み込んだ状態で前記樹脂部材に保持されており、前記電子部品に接触するとともに前記ハウジングと熱的に結合されている板状の第1金属部材と、前記樹脂部材に設けられるとともに前記第1金属部材と協働して前記電子部品を挟み込む板状の第2金属部材と、前記第1金属部材と前記第2金属部材とを締結するボルトと、を備えたことを特徴とする電動圧縮機。
【0053】
これによれば、電子部品が第1金属部材と第2金属部材とによって挟み込まれており、第1金属部材と第2金属部材とがボルトによって締結されているため、電子部品自身が熱によって変形しようとしても、電子部品の変形が第1金属部材及び第2金属部材によって抑制される。そして、第1金属部材が電子部品に接触するとともにハウジングに熱的に結合されているため、電子部品から生じる熱が、第1金属部材を介してハウジングに放熱される。したがって、電子部品から生じる熱をハウジングに効率良く放熱することができる。
【0054】
(ロ)前記第1金属部材には、前記ボルトが挿通される挿通孔が形成されており、前記第2金属部材には、前記ボルトが螺合される雌ねじ孔が貫通した状態で形成されており、前記ボルトは、前記挿通孔を通過して前記雌ねじ孔に螺合されており、前記樹脂部材は、前記雌ねじ孔における前記回路基板側の開口を閉塞していることを特徴とする(イ)に記載の電動圧縮機。
【0055】
これによれば、樹脂部材が雌ねじ孔における回路基板側の開口を閉塞しているため、第2金属部材に雌ねじ孔が形成されたことにより生じる削り屑が回路基板に付着してしまうことを回避することができる。
【符号の説明】
【0056】
10…電動圧縮機、11…ハウジング、13a…底壁、16…圧縮部、17…電動モータ、32…周壁であるケース周壁、40…カバー、43…駆動回路、44…回路基板、45…電子部品としてのコンデンサ、46…電子部品としてのパワーモジュール、50…樹脂部材、51…載置面、52…凹部、61,71…第1金属部材、61h…挿通孔、62…第2金属部材、62a…面、62h…雌ねじ孔、63…ボルト。
図1
図2
図3