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特許7568032エレクトロクロミックシートおよびエレクトロクロミック装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】エレクトロクロミックシートおよびエレクトロクロミック装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/153 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
G02F1/153
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023183711
(22)【出願日】2023-10-26
(62)【分割の表示】P 2022177604の分割
【原出願日】2022-11-04
(65)【公開番号】P2024068139
(43)【公開日】2024-05-17
【審査請求日】2024-02-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】西野 哲史
(72)【発明者】
【氏名】中村 匡志
(72)【発明者】
【氏名】松井 智紀
【審査官】植田 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-514799(JP,A)
【文献】国際公開第2019/066042(WO,A1)
【文献】特開2017-111380(JP,A)
【文献】国際公開第2017/090614(WO,A1)
【文献】特開2013-148687(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0321565(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/15-1/163
G02F 1/13
G02F 1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体層と、
前記支持体層上に設けられた電解質層と、
前記電解質層の少なくとも一方の面に設けられたエレクトロクロミック層と、
少なくとも前記電解質層の側面を覆うように設けられた封止部と、
を備えるエレクトロクロミックシートであって、
前記電解質層は、光硬化ゲルを含み、
当該支持体層は、透明樹脂と紫外線吸収剤とを含む樹脂材料により構成され、かつ、波長380nmにおける光線透過率が10%以下であって、かつ、波長430nmにおける光線透過率が80%以上である、エレクトロクロミックシート。
【請求項2】
請求項1に記載のエレクトロクロミックシートであって、
前記支持体層は、エピスルフィド系樹脂、チオウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ノルボルネン系樹脂、およびシリコーン系樹脂の中から選ばれる1種または2種以上を含む、エレクトロクロミックシート。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエレクトロクロミックシートであって、
前記電解質層の厚みは、10μm以上100μm以下である、エレクトロクロミックシート。
【請求項4】
請求項1または2に記載のエレクトロクロミックシートであって、
前記封止部は、熱硬化性樹脂を含む封止材料を用いて形成される、エレクトロクロミックシート。
【請求項5】
請求項4に記載のエレクトロクロミックシートであって、
前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、マレイミド樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、シアネート樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、および不飽和ポリエステル樹脂の中から選ばれる1種または2種以上を含む、エレクトロクロミックシート。
【請求項6】
請求項1または2に記載のエレクトロクロミックシートであって、
前記エレクトロクロミックシートの前記電解質層の上下面に前記エレクトロクロミック層がそれぞれ設けられている、エレクトロクロミックシート。
【請求項7】
請求項1または2に記載のエレクトロクロミックシートであって、
前記エレクトロクロミックシートの厚みは、0.3mm以上10.0mm以下である、エレクトロクロミックシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロクロミックシートおよびエレクトロクロミック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロクロミック素子は、電圧を印加することで、可逆的に酸化還元反応が起こり、可逆的に透過率が変化する現象であるエレクトロクロミズムを利用した素子として知られる。例えば、エレクトロクロミック素子にプラス電圧を印加することで発色がえられ、マイナス電圧を印加することで消色して透明にすることができることから、プラス電圧とマイナス電圧との印加の切り替えを行うことが可能なスイッチを設けることで、エレクトロクロミック素子における発色と消色とを、任意のタイミングで行い得るようになる。
【0003】
このようなエレクトロクロミック素子は、大きく2つの種類の層構成に分けることができる。一つは、エレクトロクロミック材料および電解質材料が混合された層構成であり、二つは、エレクトロクロミック材料および電解質材料を各々の層とし形成した多層構成である。また、後者の多層構成のエレクトロクロミック素子は、エレクトロクロミック材料が層状に固定化されているため、エレクトロクロミック材料中に注入された電荷は、外部回路を通して逆反応を行うこととなる。これにより、一度発色させると消色駆動を行うまで発色状態を保持することができ、消費電力を少なくできるというメリットがある。
【0004】
例えば、特許文献1に記載のものがある。特許文献1には、基板上に配置された電圧電流を印加するための電極層と、エレクトロクロミック材料を含むエレクトロクロミック素子と、エレクトロクロミック素子の周辺を覆う封止シールとを備えることが開示されている。また、特許文献1には、電極層および基板は「透明」であり光を透過できることが開示されている。
【0005】
ところで、光学レンズ等の分野において、ブルーライトと呼ばれる波長420~450nmの光線はヒトの眼の健康を害するものとして知られている。そのため、波長420~450nmの光線をカットできる光学レンズの開発が注目されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-106786号公報
【文献】国際公開第2017/077359号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、エレクトロクロミックシートが屋外で使用される場合における耐光性について新たに着目した。しかしながら、特許文献1に記載されるようなエレクトロクロミック素子は光を通すことに着目したものであり、耐光性において不十分であった。また、特許文献2に開示されるように、従来の光学レンズはブルーライトをカットすることに着目したものであり、耐光性において不十分であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、エレクトロクロミックシートの耐光性を向上させる点から検討を進めたところ、支持体層の波長380nmにおける光線透過率を指標とし、これを10%以下とすることが有効であることを見出し、本発明を完成させた。これにより、ブルーライトよりも短波長側の紫外線を効果的に低減でき、エレクトロクロミックシートの耐光性を向上できる。
【0009】
本発明によれば、以下のエレクトロクロミックシートおよびこれに関する技術が提供される。
【0010】
[1] 支持体層と、
前記支持体層上に設けられた電解質層と、
前記電解質層の少なくとも一方の面に設けられたエレクトロクロミック層と、
少なくとも前記電解質層の側面を覆うように設けられた封止部と、
を備えるエレクトロクロミックシートであって、
当該支持体層は、波長380nmにおける光線透過率が10%以下である、エレクトロクロミックシート。
[2] [1]に記載のエレクトロクロミックシートであって、
前記支持体層は、波長430nmにおける光線透過率が80%以上である、エレクトロクロミックシート。
[3] [1]または[2]に記載のエレクトロクロミックシートであって、
前記支持体層は、紫外線吸収剤を含む、エレクトロクロミックシート。
[4]
[1]乃至[3]いずれか一つに記載のエレクトロクロミックシートであって、
前記支持体層は、エピスルフィド系樹脂、チオウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ノルボルネン系樹脂、およびシリコーン系樹脂の中から選ばれる1種または2種以上を含む、エレクトロクロミックシート。
[5] [1]乃至[4]いずれか一つに記載のエレクトロクロミックシートであって、
前記封止部は、熱硬化性樹脂を含む封止材料を用いて形成される、エレクトロクロミックシート。
[6][5] に記載のエレクトロクロミックシートであって、
前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、マレイミド樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、シアネート樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、および不飽和ポリエステル樹脂の中から選ばれる1種または2種以上を含む、エレクトロクロミックシート。
[7] [1]乃至[6]いずれか一つに記載のエレクトロクロミックシートであって、
前記エレクトロクロミックシートの前記電解質層は、固体またはゲルである、エレクトロクロミックシート。
[8] [1]乃至[7]いずれか一つに記載のエレクトロクロミックシートであって、
前記エレクトロクロミックシートの前記電解質層の上下面に前記エレクトロクロミック層がそれぞれ設けられている、エレクトロクロミックシート。
[9] [1]乃至[8]いずれか一つに記載のエレクトロクロミックシートであって、
前記エレクトロクロミックシートは、前記支持体層と前記エレクトロクロミック層との間に電極層をさらに備える、エレクトロクロミックシート。
[10] [1]乃至[9]いずれか一つに記載のエレクトロクロミックシートを用いた、エレクトロクロミック装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、耐光性が向上されたエレクトロクロミックシートを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態のエレクトロクロミックシートを模式的に示した断面図である。
図2】実施例1の支持体層の光線透過スペクトルを示す図である。
図3】比較例1の支持体層の光線透過スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
煩雑さを避けるため、同一図面内に同一の構成要素が複数ある場合には、その1つのみに符号を付し、全てには符号を付さない場合がある。すべての図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比等は、必ずしも現実の物品と対応するものではない。
【0014】
本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。また、数値範囲の下限値および上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値および上限値と任意に組み合わせられる。
【0015】
本明細書に例示する各成分および材料は、特に断らない限り、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
本実施形態において「覆う」とは連続的である場合に限られず、一部に非連続的な部分があってもよいことを意味する。
【0017】
<エレクトロクロミックシート>
図1は、エレクトロクロミックシート100の実施形態の一例を示す模式断面図である。
図1に示すように、エレクトロクロミックシート100は、電解質層4、第1のエレクトロクロミック層3および第2のエレクトロクロミック層5が順に積層した積層体(以下、「エレクトロクロミック素子10」ともいう)と、エレクトロクロミック素子10の側面を覆う封止部8と、エレクトロクロミック素子10と封止部8の上下面を挟む一対の支持体層(第1の支持体層1、および第2の支持体層7)と、を備える。
換言すると、エレクトロクロミックシート100は、第1の支持体層1上に、順次積層された第1のエレクトロクロミック層3、電解質層4、第2のエレクトロクロミック層5、および第2の支持体層7を備え、第1のエレクトロクロミック層3、電解質層4および第2のエレクトロクロミック層5の側面がそれぞれ封止部8により覆われている。
【0018】
本実施形態において、エレクトロクロミックシート100はさらに、第1の支持体層1と第1のエレクトロクロミック層3との間に第1の電極2を有し、第2の支持体層7と第2のエレクトロクロミック層5との間に第2の電極6を有している。
【0019】
本実施形態において、エレクトロクロミックシート100は、電解質層4の両面に第1のエレクトロクロミック層3および第2のエレクトロクロミック層5が積層された例を挙げて説明するが、エレクトロクロミック層はいずれか一方のみであってもよい。
【0020】
また、本実施形態において、エレクトロクロミックシート100は、第1の支持体層1および第2の支持体層7のいずれもが波長380nmにおける光線透過率が10%以下である例を挙げて説明するが、第1の支持体層1および第2の支持体層7のいずれか一方のみが波長380nmにおける光線透過率が10%以下であり、他方がこれを満たさないものであってもよい。この場合、例えば、波長380nmにおける光線透過率が10%以下を満たさない支持体層側から紫外線照射を行って封止材料を光硬化させてもよい。
【0021】
以下、各構成について説明する。
【0022】
[支持体層]
第1の支持体層1および第2の支持体層7は、第1の電極2、第1のエレクトロクロミック層3、電解質層4、第2のエレクトロクロミック層5、第2の電極6、および封止部8を支持する機能を有する。また、エレクトロクロミックシート100の最外層となる。
【0023】
また、第1の支持体層1および第2の支持体層7は、エレクトロクロミックシート100の最外層を構成する。すなわち、少なくとも第1のエレクトロクロミック層3、電解質層4、第2のエレクトロクロミック層5は、外部に露出しないこととなる。そのため、第1のエレクトロクロミック層3、電解質層4、第2のエレクトロクロミック層5を外部からの水分や酸素ガス、物理的な衝撃・摩擦等から保護することができる。
【0024】
本実施形態において第1の支持体層1および第2の支持体層7は、波長380nmにおける光線透過率が10%以下であり、好ましくは5%以下であり、更に好ましくは1%以下である。これにより、紫外線を効果的に低減でき、エレクトロクロミックの耐光性を向上できる。
また、本実施形態において第1の支持体層1および第2の支持体層7は、波長300~380nmにおける光線透過率の最大値が10%以下であり、好ましくは5%以下であり、更に好ましくは1%以下である。これにより、紫外線を効果的に低減でき、エレクトロクロミックの耐光性を向上できる。
また、第1の支持体層1および第2の支持体層7は、好ましくは波長430nmにおける光線透過率が80%以上である。
【0025】
第1の支持体層1および第2の支持体層7は、透明性を有する樹脂材料を主材料で構成されるものであれば、特に限定されないが、熱可塑性を有する透明樹脂(ベース樹脂)を主材料として含有するものであることが好ましい。
【0026】
透明樹脂としては、特に限定されないが、例えば、エピスルフィド系樹脂、チオウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ノルボルネン系樹脂、シリコーン系樹脂の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0027】
これらの中でも、ポリカーボネート系樹脂またはポリアミド系樹脂であるのが好ましく、特にポリカーボネート系樹脂であるのが好ましい。ポリカーボネート系樹脂は、透明性(透光性)や剛性等の機械的強度に富み、さらに耐熱性も高いため、透明樹脂にポリカーボネート系樹脂を用いることで、第1の支持体層1および第2の支持体層7における透明性や耐衝撃性、耐熱性を向上させることができる。
【0028】
このポリカーボネート系樹脂としては、各種の樹脂を用いることができるが、中でも、芳香族系ポリカーボネート系樹脂であることが好ましい。芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、その主鎖に芳香族環を備えており、これにより、より優れた強度を有する第1の支持体層1および第2の支持体層7を得ることができる。
【0029】
この芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、例えば、ビスフェノールとホスゲンとの界面重縮合反応、ビスフェノールとジフェニルカーボネートとのエステル交換反応等により合成される。
【0030】
ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールAや、以下の式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノール(変性ビスフェノール)等が挙げられる。
【0031】
【化1】
【0032】
(式(1A)中、Xは、炭素数1~18のアルキル基、芳香族基または環状脂肪族基であり、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基であり、mおよびnは、それぞれ0~4の整数であり、pは、繰り返し単位の数である。)
【0033】
なお、式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノールとしては、具体的には、例えば4,4’-(ペンタン-2,2-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ペンタン-3,3-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ブタン-2,2-ジイル)ジフェノール、1,1’-(シクロヘキサンジイル)ジフェノール、2-シクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、2,3-ビスシクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
なかでもポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールに由来する骨格を有するビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を主成分とするのが好ましい。かかるビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を用いることにより、第1の支持体層1および第2の支持体層7は、さらに優れた強度を発揮するとともに、後述の紫外線吸収剤を適用した際に耐光性を向上しやすくなる。
【0035】
・紫外線吸収剤
第1の支持体層1および第2の支持体層7はさらに、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。これにより、エレクトロクロミックシート100の耐光性を向上しやすくなる。
この場合、紫外線吸収剤は、第1の支持体層1および第2の支持体層7を構成する樹脂材料とともに混合され、紫外線吸収剤入り樹脂材料を成形することで第1の支持体層1および第2の支持体層7を形成してもよく、または、第1の支持体層1および第2の支持体層7がそれぞれ紫外線吸収剤を含む層を有する多層構造としてもよい。多層構造とする場合、例えば、ポリカーボネートを基材としてこれに紫外線吸収剤を塗布して多層化し、第1の支持体層1を形成してもよい。
【0036】
紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、公知の化合物を使用することできるが、例えば、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
トリアジン系化合物としては、2-モノ(ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン化合物や2,4-ビス(ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン化合物、2,4,6-トリス(ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン化合物が挙げられ、具体的には、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシエトキシ)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3-5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-エトキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-プロポキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-メトキシカルボニルプロピルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-エトキシカルボニルエチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-(1-(2-エトキシヘキシルオキシ)-1-オキソプロパン-2-イルオキシ)フェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ドデシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-エトキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ブトキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-プロポキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-メトキシカルボニルプロピルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-エトキシカルボニルエチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-(1-(2-エトキシヘキシルオキシ)-1-オキソプロパン-2-イルオキシ)フェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0038】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ペンチル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3,5-ジ(1,1-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]などが挙げられる。
【0039】
押出成形にて第1の支持体層1、第2の支持体層7を作製する際、良好な耐熱性の観点からトリアジン系化合物が好ましく用いられるが、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、およびシアノアクリレート系化合物でも、押出温度に対する耐熱性が十分なものであれば特に制限なく使用することができる。
【0040】
トリアジン系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、「チヌビン1577」「チヌビン460」「チヌビン477」(BASFジャパン製)、「アデカスタブLA-F70」(ADEKA製)等が挙げられる。
また、耐熱性の高いベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、「アデカスタブLA-31G」(ADEKA製)等が挙げられる。
【0041】
紫外線吸収剤の含有量は、第1の支持体層1全量に対して、0.05~8質量%であることが好ましく、0.06~7質量%であることがより好ましく、0.07~6質量%であることがさらに好ましい。これにより上記効果をより確実に発揮することができる。紫外線吸収剤の含有量を上記下限値以上とすることで、紫外線吸収効果が十分に得られるようになる。一方、紫外線吸収剤の含有量を上記上限値以下とすることで、紫外線吸収剤が凝集することを抑制できる。
紫外線吸収剤の含有量は、第2の支持体層7全量に対して、0.05~8質量%であることが好ましく、0.06~7質量%であることがより好ましく、0.07~6質量%であることがさらに好ましい。これにより上記効果をより確実に発揮することができる。紫外線吸収剤の含有量を上記下限値以上とすることで、紫外線吸収効果が十分に得られるようになる。一方、紫外線吸収剤の含有量を上記上限値以下とすることで、紫外線吸収剤が凝集することを抑制できる。
【0042】
・着色剤
第1の支持体層1および第2の支持体層7は、光透過性を有していれば、さらに着色剤を含んでもよく、その色は、無色であっても、赤色、青色、黄色等、如何なる色であってもよい。
【0043】
これらの色の選択は、第1の支持体層1および第2の支持体層7に染料または顔料といった着色剤を含有させることにより可能になる。
染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、および塩基性染料等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
染料の具体例としては、例えば、C.I.アシッドイエロー17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー9,45,249、C.I.アシッドブラック1,2,24,94、C.I.フードブラック1,2、C.I.ダイレクトイエロー1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクトブラック19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック3,4,35等が挙げられる。
【0045】
第1の支持体層1および第2の支持体層7は、必要に応じて、上述した、透明樹脂、染料または顔料の他に、さらに、酸化防止剤、フィラー、可塑剤、光安定剤、紫外線吸収剤、熱線吸収剤、難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0046】
また、第1の支持体層1および第2の支持体層7は、延伸されたものであってもよいし、非延伸のものであってもよい。
【0047】
さらに、第1の支持体層1および第2の支持体層7の波長589nmでの屈折率は、1.3以上1.8以下であるのが好ましく、1.4以上1.65以下であるのがより好ましい。第1の支持体層1および第2の支持体層7の屈折率n1を上記数値範囲とすることにより、エレクトロクロミックシート100の発消色機能が視認されやすくなる。
【0048】
第1の支持体層1および第2の支持体層7の平均厚さは、好ましくは0.1mm以上10.0mm以下、より好ましくは0.3mm以上5.0mm以下に設定される。
第1の支持体層1および第2の支持体層7の平均厚さがかかる範囲内に設定されることで、エレクトロクロミックシート100の薄型化を図りつつ、エレクトロクロミックシート100に撓みが生じるのを的確に抑制または防止することができる。
【0049】
第1の支持体層と第2の支持体層7は、互いに同じ構成材料としてもよく、また、異なるものとしてもよい。また、いずれも延伸されたものであってもよいし、一方のみを未延伸のものとしてもよい。
【0050】
第1の支持体層と第2の支持体層7は、互いに同じ屈折率としてもよく、また、異なるものとしてもよい。また、第1の支持体層と第2の支持体層7は、互いに同じ厚みとしてもよく、また、異なるものとしてもよい。
【0051】
[封止部]
封止部8は、電解質層4の側面と、第1のエレクトロクロミック層3および第2のエレクトロクロミック層5の側面とを一体に覆い、外部からエレクトロクロミック素子10への水分や酸素ガスの侵入を防ぐとともに、第1の支持体層1および第2の支持体層7と接着しエレクトロクロミック素子10との剥離を防ぐために用いられる。また、対向する第1の電極2および第2の電極6の間に形成された第1のエレクトロクロミック層3および第2のエレクトロクロミック層5の位置がずれると、動作時に発色品質が低下してしまうため、これを抑止するために用いられる。
【0052】
封止部8の平均厚さ(積層方向の長さ)は、エレクトロクロミック素子10の平均厚さに応じて調整されるが、例えば、好ましくは20μm以上100μm以下程度、より好ましくは30μm以上80μm以下程度に設定される。
【0053】
(封止材料)
本実施形態の封止材料は、絶縁性材料であれば、特に限定されないが、熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。これにより、加熱処理により、封止材料を硬化することができ、耐光性が向上したエレクトロクロミックシートを得ることができる。また、本実施形態においては、第1の支持体層1および第2の支持体層7のいずれもが波長380nmにおける光線透過率が10%以下であるため、第1の支持体層1および第2の支持体層7を介して紫外線照射を行っても封止材料が良好に光硬化できない場合があるが、熱硬化性樹脂を含むことで第1の支持体層1および第2の支持体層7を介して良好に熱硬化できるようなる。
【0054】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、マレイミド樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、シアネート樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、および不飽和ポリエステル樹脂の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0055】
上記エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジルトルイジン、ジアミノジフェニルメタン型グリシジルアミン、アミノフェノール型グリシジルアミンなどの芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールプロパン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシド、アリサイクリックジエポキシ-アジペイドなどの脂環式エポキシなどの脂肪族エポキシ樹脂等の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0056】
また、本実施形態の封止材料は、熱硬化性樹脂に加え、紫外線反応性官能基を有する化合物や紫外線硬化型樹脂、1分子内に(メタ)アクリル基とエポキシ基とをそれぞれ少なくとも1つ以上有するエポキシ/(メタ)アクリル樹脂を含んでもよい。
【0057】
本実施形態の封止材料は、さらに無機粒子を含んでもよい。
【0058】
・無機粒子
無機粒子としては、シリカ、タルク、ガラスビーズ、石綿、石膏、珪藻土、スメクタイト、ベントナイト、モンモリロナイト、セリサイト、活性白土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、硫酸バリウム、珪酸カルシウム等の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0059】
無機粒子は、表面を疎水処理したものであってもよい。例えば、エポキンシラン、アミノシラン、(メタ)アクリルシラン、ビニルシラン、メチルクロロシラン、ジメチルポリシロキサン等を用いて、無機粒子を公知の方法で表面処理できる。無機粒子としては、疎水処理をしたものと、そうでないものとを混合して用いてもよい。
【0060】
無機粒子の含有量は、封止材料全量に対して、1~80質量%であり、好ましくは3~70質量%であり、20~60質量%である。
【0061】
・その他
本実施形態の封止材料は、上記熱硬化性樹脂、無機粒子の他、有機粒子、重合開始剤、熱硬化剤等を含んでもよい。
【0062】
上記有機粒子としては、例えば、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ビニル重合体微粒子、アクリル重合体微粒子、シリコーン微粒子、コアシェル型ゴム微粒子等の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0063】
上記重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤等が挙げられる。
【0064】
上記ラジカル重合開始剤としては、光照射によりラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤、加熱によりラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤等が挙げられる。
【0065】
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、チオキサントン等が挙げられる。
【0066】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物等からなるものが挙げられる。なかでも、高分子アゾ化合物からなる高分子アゾ開始剤が好ましい。
【0067】
上記カチオン重合開始剤としては、光カチオン重合開始剤を好適に用いることができる。
上記光カチオン重合開始剤は、光照射によりプロトン酸またはルイス酸を発生するものであれば特に限定されず、イオン性光酸発生タイプのものであってもよいし、非イオン性光酸発生タイプであってもよい。
上記光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩類、鉄-アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノール-アルミニウム錯体等の有機金属錯体類等が挙げられる。
【0068】
上記重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1~30重量部であり、より好ましくは1~10重量部である。
上記重合開始剤の含有量が上記下限値以上であることにより、封止材料が硬化性により優れるものとなる。一方、上記重合開始剤の含有量が上記上限値以下であることにより、封止材料が保存安定性により優れるものとなる。
【0069】
上記熱硬化剤は、加熱により上記硬化性樹脂中の熱反応官能基を反応させ、架橋させるためのものであり、硬化後の硬化性樹脂組成物の接着性、耐湿性を向上させる役割を有する。
上記熱硬化剤としては、例えば、有機酸ヒドラジド、イミダゾール誘導体、アミン化合物、多価フェノール系化合物、酸無水物等が挙げられる。なかでも、固形の有機酸ヒドラジドが好適に用いられる。
【0070】
上記熱硬化剤の含有量は、硬化性樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1~50重量部であり、より好ましくは1~30重量部である。
上記重合開始剤の含有量が上記下限値以上であることにより、封止材料が硬化性により優れるものとなる。一方、上記重合開始剤の含有量が上記上限値以下であることにより、封止材料の塗布性がより優れるものとなる。
【0071】
その他、必要に応じて、シランカップリング剤、遮光剤、反応性希釈剤、スペーサー、硬化促進剤、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤、その他のカップリング剤等の添加剤を含有してもよい。
【0072】
(封止材料の製法)
本実施形態の封止材料を製造する方法としては、例えば、混合機を用いて、熱硬化性樹脂と、必要に応じて添加する、無機粒子と、重合開始剤および/または熱硬化剤やシランカップリング剤等の添加剤とを混合する方法等が挙げられる。
上記混合機としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール、自転公転式ミキサー等が挙げられる。
【0073】
[エレクトロクロミック層]
第1のエレクトロクロミック層3および第2のエレクトロクロミック層5は、電解質層4の上下面にそれぞれ設けられ、電解質層4を挟むように配置され、エレクトロクロミック材料を含む層である。
【0074】
上記エレクトロクロミック材料としては、無機エレクトロクロミック化合物及び有機エレクトロクロミック化合物のいずれであっても構わない。また、エレクトロクロミズムを示すことで知られる導電性ポリマーを用いてもよい。
第1のエレクトロクロミック層3と第2のエレクトロクロミック層5には、これらエレクトロクロミック材料から適宜選択することが可能であるが、一方が酸化発色性を有するエレクトロクロミック材料を用いた場合には、他方は還元発色性を有するエレクトロクロミック材料を用いることが好ましい。
酸化発色性を有するエレクトロクロミック材料としては、ラジカル重合性化合物を含む酸化発色性エレクトロクロミック組成物を重合した重合物が好ましく、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含有するエレクトロクロミック組成物が特に好ましい。
【0075】
(第1のエレクトロクロミック層)
第1のエレクトロクロミック層3は、酸化反応によって着色を呈する材料を主材料として含有し、これにより、着色がなされる層である。
【0076】
第1のエレクトロクロミック層3の平均厚さは、特に限定されないが、0.1μm以上30μm以下程度であるのが好ましく、0.4μm以上10μm以下程度であるのがより好ましい。
【0077】
第1のエレクトロクロミック層3に、主材料として含まれる、酸化反応によって着色を呈する材料としては、特に限定されず、例えば、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む組成物を重合した重合物、ビスアクリダン化合物、プルシアンブルー型錯体、および酸化ニッケルが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0078】
トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む組成物を重合した重合物としては、例えば、特開2022-25243号公報、特開2016-45464号公報、特開2020-138925号公報等に記載のものが挙げられる。
【0079】
また、プルシアンブルー型錯体としては、例えば、Fe(III)[Fe(II)(CN)からなる材料が挙げられる。
【0080】
これらの中でも、定電圧で動作可能であり、繰返し耐久性に優れ、高コントラストなエレクトロクロミック素子が得られる点から、特に、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む組成物を重合した重合物が好ましく用いられる。
【0081】
なお、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物を含む組成物は、トリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物とは異なる他のラジカル重合性化合物を含み、かかる組成物を重合した重合物は、これらのラジカル重合性化合物が架橋した架橋物で構成されていてもよい。
【0082】
(第2のエレクトロクロミック層)
第2のエレクトロクロミック層5は、還元反応によって透明から着色を呈するエレクトロクロミック材料を主材料として含有し、これにより、着色がなされる層である。
【0083】
第2のエレクトロクロミック層5の平均厚さは、特に限定されないが、0.2μm以上5.0μm以下程度であるのが好ましく、1.0μm以上4.0μm以下程度であるのがより好ましい。前記平均厚さが、0.2μm未満であると、エレクトロクロミック材料の種類によっては、発色濃度が得にくくなるおそれがあり、5.0μmを超えると、製造コストが増大すると共に、エレクトロクロミック材料の種類によっては、着色によって視認性が低下するおそれがある。
【0084】
第2のエレクトロクロミック層5は、第1のエレクトロクロミック層3と同じ色調のレクトロクロミック材料を用いることが好ましい。これにより、最大発色濃度の向上が図られ、その結果、コントラストを改善することできる。
【0085】
また、これに対して、異なる色調の材料を用いた場合には、混色が可能となる。また、第1の電極2および第2の電極6との両極側で、酸化反応と還元反応とにより着色させることで、エレクトロクロミック層3、電解質層4、および第2のエレクトロクロミック層5における駆動電圧を効果的に低減し得ることから、エレクトロクロミックシート100の繰返し耐久性の向上が図れる。
【0086】
第2のエレクトロクロミック層5に、主材料として含まれる、還元反応によって着色を呈する材料としては、特に限定されず、例えば、無機エレクトロクロミック化合物、有機エレクトロクロミック化合物、導電性ポリマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0087】
無機エレクトロクロミック化合物としては、例えば、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化イリジウム、酸化チタン等が挙げられ、中でも、酸化タングステンが好ましい。酸化タングステンは、還元電位が低いことに基づいて、発消色電位が低く、さらに、無機材料であるため耐久性に優れることから、好ましく用いられる。
【0088】
また、有機エレクトロクロミック化合物としては、例えば、アゾベンゼン系、アントラキノン系、ジアリールエテン系、ジヒドロプレン系、ジピリジン系、スチリル系、スチリルスピロピラン系、スピロオキサジン系、スピロチオピラン系、チオインジゴ系、テトラチアフルバレン系、テレフタル酸系、トリフェニルメタン系、トリフェニルアミン系、ナフトピラン系、ビオロゲン系、ピラゾリン系、フェナジン系、フェニレンジアミン系、フェノキサジン系、フェノチアジン系、フタロシアニン系、フルオラン系、フルギド系、ベンゾピラン系、メタロセン系等の低分子系有機エレクトロクロミック化合物等が挙げられ、中でも、ビオロゲン系化合物、ジピリジン系化合物が好ましい。これらの化合物は、発消色電位が低く、良好な色値を示すことから好ましく、用いられる。
【0089】
ビオロゲン系化合物としては、例えば、特開2022-025243号公報、特許第3955641号公報、特開2007-171781号公報等に記載のものが挙げられる。また、ジピリジン系化合物としては、例えば、特開2007-171781号公報、特開2008-116718号公報等に記載のものが挙げられる。
【0090】
導電性ポリマーとしては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、またはこれらの誘導体等が挙げられる。
【0091】
[電解質層]
電解質層4は、第1のエレクトロクロミック層3と第2のエレクトロクロミック層5との間に配置され、イオン電導性を有する電解質を含有するものである。
【0092】
電解質層4の平均厚さは、特に限定されないが、好ましくは10μm以上100μm以下、より好ましくは20μm以上80μm以下、更に好ましくは30μm以上70μm以下に設定される。
【0093】
電解質層は、バインダー樹脂、および電解質を含む。
【0094】
前記バインダー樹脂は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、重合膜としての相分離温度、膜強度の点で、ウレタン樹脂ユニットを含むことが好ましい。またポリエチレンオキシド(PEO)鎖を含むことで、電解質との相溶性が向上し、相分離温度を高めることができる。また、ポリメチルメタリクレート(PMMA)鎖を含むことで、PEO鎖を含むのと同様に、電解質との相溶性が向上し、相分離温度を高めることができる。
【0095】
電解質としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩、4級アンモニウム塩や酸類、アルカリ類の支持塩等が挙げられ、具体的には、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LiCFSO、LiCFCOO、KCl、NaClO、NaCl、NaBF、NaSCN、KBF、Mg(ClO、Mg(BF等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0096】
これらの他、電解質の材料としては、イオン性液体を用いることもできる。このイオン性液体の中でも、有機のイオン性液体は、室温を含む幅広い温度領域で液体を示す分子構造を有していることから、取り扱いが容易であるため好ましく用いられる。
【0097】
有機のイオン性液体の分子構造として、カチオン成分としては、例えば、N,N-ジメチルイミダゾール塩、N,N-メチルエチルイミダゾール塩、N,N-メチルプロピルイミダゾール塩等のイミダゾール誘導体;N,N-ジメチルピリジニウム塩、N,N-メチルプロピルピリジニウム塩等のピリジニウム誘導体;トリメチルプロピルアンモニウム塩、トリメチルヘキシルアンモニウム塩、トリエチルヘキシルアンモニウム塩等の脂肪族4級アンモニウム系等が挙げられる。また、アニオン成分としては、大気中での安定性を考慮して、フッ素を含んだ化合物を用いることが好ましく、例えば、BF 、CFSO 、PF 、(CFSO等が挙げられる。
【0098】
このような電解質の材料としては、カチオン成分とアニオン成分とを任意に組み合わせたイオン性液体であることが好ましい。
【0099】
イオン性液体は、光重合性モノマー、オリゴマー、および液晶材料のいずれかに直接溶解させてもよい。なお、これらの材料に対する溶解性が悪い場合には、少量の溶媒に溶解させた溶液を得た後に、この溶液を光重合性モノマー、オリゴマー、および液晶材料のいずれかと混合することで溶解させてもよい。
【0100】
溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、γ-ブチロラクトン、エチレンカーボネート、スルホラン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,2-ジメトキシエタン、1,2-エトキシメトキシエタン、ポリエチレングリコール、アルコール類、またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0101】
電解質層4として充填される電解質は、固体、液体のいずれであってもよいが、電解質が低粘性の液体である場合の他、例えば、ゲル状や高分子架橋型、液晶分散型等の様々な形態をとることが可能である。中でも、電解質は、ゲル状、固体状に形成することが好ましい。これによりエレクトロクロミック素10の素子強度向上や、信頼性向上等を図ることができる。
【0102】
電解質層4を、固体状をなすものとする方法としては、例えば、電解質と溶媒とを含む液体をバインダー樹脂中に保持する方法が好ましい。これにより、電解質層4の高いイオン伝導度と固体強度との双方を得ることができる。また、ポリマー樹脂としては、例えば、光硬化性樹脂であることが好ましい。これにより、熱重合や、溶媒の気化により固体状をなす電解質層4を得る場合と比較して、低温かつ短時間で、固体状をなす電解質層4を得ることができる。
【0103】
電解質層4がゲル状である場合、例えば、以下のようにして作製することができる。
まず、組成物溶液を作製し、作製した組成物溶液を型やフィルムに挟んで重合させるキャスト重合法等を用いた重合反応により製造することができる。前記組成物溶液は、前記イオン液体あるいは固体電解質を溶媒と混合した電解液と、重合性材料とウレタンアクリレートモノマー、及び必要に応じて、PEO鎖を有するアクリレートモノマー、及び必要に応じて、PMMA鎖を有するアクリレートモノマーを所望比率で混合し、必要に応じて、前記重合開始剤、及びその他の成分を混合することができる。
その他の作製方法としては、重合前の組成物溶液を、一方のエレクトロクロミック層上に塗布し、紫外線照射や加熱によって重合させる方法も用いることができる。また、前記エレクトロクロミック層を形成した前記支持体を5μm以上150μm以下のギャップを保持した状態で対向させ、組成物溶液を充填した後で紫外線照射や加熱によって重合させる方法も用いることができる。
【0104】
[電極]
第1の電極2および第2の電極6は、それぞれ第1のエレクトロクロミック層3、電解質層4、第2のエレクトロクロミック層5にプラス電圧またはマイナス電圧を印加した際に、第1の電極2と第2の電極6との間に電子を供給するか、または、第1の電極2と第2の電極6との間から電子を受け取る電極である。
第1の電極2は第1のエレクトロクロミック層3の電解質層4側とは反対側の面上に設けられている。第2の電極6は第2のエレクトロクロミック層5の電解質層4側とは反対側の面上に設けられている。
【0105】
これら第1の電極2および第2の電極6の構成材料としては、透明性を有する導電材料であれば、特に限定されるものではないが、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、FTO(F-doped Tin Oxide)、ATO(Antimony Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0106】
第1の電極2および第2の電極6の各々の作製方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等が挙げられる。また、第1の電極2および第2の電極6の各々の材料が塗布形成できるものであれば、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の各種印刷法等が挙げられる。
【0107】
第1の電極2および第2の電極6は、その平均厚さが、第1のエレクトロクロミック層3、および第2のエレクトロクロミック層5の酸化還元反応に必要な電気抵抗値が得られるように調整され、例えば、第1の電極2および第2の電極6の構成材料としてITOを用いた場合には、それぞれ独立して、好ましくは50nm以上200nm以下程度、より好ましくは100nm以上150nm以下程度に設定される。
【0108】
なお、第1の電極2および第2の電極6との間における各層の間には、例えば、絶縁性多孔質層、保護層等の中間層が設けられていてもよい。
【0109】
本実施形態のエレクトロクロミックシート100の総厚は、特に限定されないが、0.3mm以上10.0mm以下であるのが好ましく、0.5mm以上5.0mm以下であるのがより好ましい。
エレクトロクロミックシート100の総厚を上記下限値以上とすることにより、強度を保持しつつ、層厚を上記上限値以下とすることで、エレクトロクロミックシート100を切断したり、湾曲させる等の加工性を良好にすることができる。
【0110】
なお、エレクトロクロミックシート100が備える各層は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換し、または他の層をさらに備えるものであってもよい。
【0111】
[作用効果]
エレクトロクロミックシート100は、上記のような構成を備えることで、例えば、第1の電極2と第2の電極6との間にプラス電圧を印加することにより、エレクトロクロミック素子10を所定の色に発色させることができ、一方で、第1の電極2と第2の電極6との間にマイナス電圧を印加することにより、エレクトロクロミック素子10を消色させ透明にすることができる。
【0112】
<エレクトロクロミックシートの製造方法>
本実施形態のエレクトロクロミックシートの製造方法は、エレクトロクロミック層が1つの場合に限られず、エレクトロクロミック層が複数の場合にも適用可能である。
以下、エレクトロクロミックシート100の製造方法の一例について説明する。
【0113】
エレクトロクロミックシート100の製造方法は、以下の工程を有する。
第1の支持体1上に第1の電極2を形成し、第1の電極2上に第1のエレクトロクロミック層3を積層する工程と、
第2の支持体7上に第2の電極6を形成し、第2の電極6上に、第2のエレクトロクロミック層5を形成する工程と、
前記第1のエレクトロクロミック層3の外縁を囲うように第1の電極2上に封止材料を塗布する、または、前記第2のエレクトロクロミック層5の外縁を囲うように第2の電極6上に封止材料を塗布する工程と、
電解質層4を準備し、電解質層4が介在するように第1のエレクトロクロミック層3および第2のエレクトロクロミック層5を対向させて、第1の支持体1および第2の支持体2を貼り合わせる工程と、
前記封止材料を硬化させて封止部8を形成する工程と、
を有し、
前記貼り合わせる工程において、前記封止材料を押し広げることによって、第1のエレクトロクロミック層3および第2のエレクトロクロミック層5が当該封止材料によって覆われるものである。
これにより、エレクトロクロミックシート100が得られる。
【0114】
<エレクトロクロミック装置>
本実施形態のエレクトロクロミック装置は、上記のエレクトロクロミックシート100を有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
その他の手段としては、特に制限はなく、用途に応じて適宜選択することができ、例えば、電源、固定手段、制御手段などが挙げられる。
エレクトロクロミック装置としては、例えば、アイウエア、調光眼鏡、双眼鏡、オペラグラス、自転車用ゴーグル、時計、電子ペーパー、電子アルバム、電子広告板などが挙げられる。
【0115】
例えば、上記のエレクトロクロミックシート100を用いていわゆるUVカットレンズを作製した場合、第1の支持体層1をレンズの凸部側とし、第2の支持体層7側をレンズの凹部とすると、第1の支持体層1を波長380nmにおける光線透過率が10%以下とし、第2の支持体層7の光線透過率は第1の支持体層1とは異なるものとしてもよい。この場合、さらにUVカットレンズの凹部側(第2の支持体層7上)にさらにUVカット樹脂層を設けてもよい。
【0116】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例
【0117】
次に、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。
【0118】
<実施例1>
(1)支持体層の準備
以下の支持体層を準備し、光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
・第1の支持体層および第2の支持体層:100質量部のビスフェノールA型ポリカーボネート(三菱瓦斯化学社製「ユーピロン E2000F-N」)と0.35質量部の紫外線吸収剤(ADEKA製「アデカスタブLA-31G」)を混合した後に、押出機にて溶融混錬してTダイより押出成形を行い300μmのシートを得た。
【0119】
(2)エレクトロクロミックシートの作製
図1に示すようなエレクトロクロミックシートを以下の手順で作製した。
-第1の電極の形成-
上記(1)で用意した第1の支持体上に、ITO膜をスパッタ法により厚み約100nmに製膜して、第1の電極を形成した。
酸化チタン(石原産業株式会社製、ST-21)3g、アセチルアセトン0.2g、界面活性剤(和光純薬工業株式会社製、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)0.3gを、水5.5g、エタノール1.0gと共に12時間ビーズミル処理した。
得られた分散液にポリエチレングリコール(#20,000、日油株式会社製)1.2gを加えてペーストを作製した。
第1の電極上に、得られたペーストを、厚みが2μmになるようにスクリーン印刷法によって塗布し、80℃で乾燥させた後、UVオゾン処理90℃で20分間実施し、多孔質酸化チタン粒子膜からなる電子輸送層を形成した。
【0120】
-第1のエレクトロクロミック層の形成-
続いて、以下の化学式で示される還元発色性のエレクトロクロミック化合物Iを1.5質量%含む2,2,3,3-テトラフロロプロパノール溶液をスピンコート法により塗布した後、80℃で10分間アニール処理を行うことにより、上記の多孔質酸化チタン粒子膜に担持(吸着)させて、第1のエレクトロクロミック層を形成した。
【0121】
【化2】
【0122】
-第2の電極の形成-
上記(1)で用意した第2の支持体上に、ITO膜をスパッタ法により厚み約100nmに製膜して、第2の電極を形成した。
【0123】
-第2のエレクトロクロミック層の形成-
第2の電極であるITO膜上に、ポリエチレングリコールジアクリレート(日本化薬株式会社製、PEG400DA)と、光開始剤(BASF社製、IRGACURE 184)
と、酸化発色性のエレクトロクロミック材料として、以下の式で示されるトリアリールアミンを有するラジカル重合性化合物IIと、2-ブタノンとを質量比(57:3:140:800)で混合した溶液を調製した。その後、調製した溶液をITOガラス基板上にスピンコート法により塗布した。
【0124】
【化3】
(式中、Meはメチル基を示す)
【0125】
次に、窒素雰囲気下で、Cr層のパターンがついた石英基板を介して、UV硬化させて第2の電極上に上記のラジカル重合性化合物IIで表される化合物を含む厚み1.2μmのパターン化された第2のエレクトロクロミック層を選択形成した。
【0126】
-ゲル電解質の作製-
離型処理したPETフィルム(NP75C、パナック株式会社製)表面に、重合性材料(V3877、大同化成工業株式会社製)と、電解質(1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラシアノボレート(EMIMTCB))とを質量比(20:80)で混合し、光重合開始剤(irgacure184、日本化薬株式会社製)を前記重合性材料に対して0.5質量%混合した溶液を塗布し、離型処理したPETフィルム(NP75A、パナック株式会社製)と貼り合わせて、紫外線(UV)硬化させてゲル電解質を作製した。
【0127】
-貼合プロセス-
作製したゲル電解質について、離型フィルムを剥離し、第1のエレクトロクロミック層の表面に貼合処理した。
続いて、封止材料(エポキシ樹脂「CRM-1576AW」住友ベークライト社製)を、第1のエレクトロクロミック層の側面周辺を囲うように、ディスペンサ方式により塗布した。
その後、第2の支持体の第2のエレクトロミック層とゲル電解質の表面とを合わせて貼合し、封止材料を押し広げることで、第1のエレクトロミック層および第2のエレクトロミック層の側面を封止材料によって覆い、100℃で1時間の熱硬化処理を行い、封止材料を硬化させて封止部を形成し、エレクトロクロミックシートを作製した。
【0128】
(3)評価・測定
得られたエレクトロクロミックシートの耐光性について評価した。
・耐光性
エレクトロクロミックシートを1.6Vの電圧を15秒間かけて発色させ、光線透過率を測定した。その後に、ISO12311:2013に準拠して28℃の環境下、光量450Wのキセノンランプを51時間照射し、耐光性試験を行った。その後、エレクトロクロミックシートを一度消色状態にした後に、再度1.6Vの電圧を15秒間かけて発色させ、再度、光線透過率を測定し、耐光性試験前後の発色時透過率の差を求めた。
耐光性試験前後の発色時透過率の差が小さいほど、耐光性が良好なことを示す。
なお、光線透過率の測定は、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、V-670)を用いて行った。
【0129】
・光線透過率の測定
紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、V-670)を用いて、各支持体層の透過率を測定し、光線透過率を算出した。測定波長は280nm~780nmとした。
結果を図2(実施例1)、図3(比較例1)に示す。
【0130】
<比較例1>
第1の支持体層および第2の支持体層に紫外線吸収剤(ADEKA製「アデカスタブLA-31G」)を用いなかった以外は実施例1と同様に実施した。
【0131】
【表1】
【符号の説明】
【0132】
1 第1の支持体層
2 第2の電極
3 第1のエレクトロクロミック層
4 電解質層
5 第2のエレクトロクロミック層
6 第2の電極
7 第2の支持体層
8 封止部
10 エレクトロクロミック素子
100 エレクトロクロミックシート
図1
図2
図3