(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】機能制御装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
G08G1/16 F
(21)【出願番号】P 2023190331
(22)【出願日】2023-11-07
(62)【分割の表示】P 2021030063の分割
【原出願日】2021-02-26
【審査請求日】2023-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2020051518
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】林 哲洋
(72)【発明者】
【氏名】久米 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 有華里
(72)【発明者】
【氏名】和泉 一輝
(72)【発明者】
【氏名】間根山 しおり
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-177064(JP,A)
【文献】特開2018-118603(JP,A)
【文献】特開2002-056489(JP,A)
【文献】国際公開第2019/235274(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/011866(WO,A1)
【文献】特開2017-151907(JP,A)
【文献】国際公開第2020/003788(WO,A1)
【文献】特開2018-177188(JP,A)
【文献】特開2017-207859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 30/00 - 60/00
B60R 16/00 - 16/08
B60R 21/00 - 21/017
B60N 2/00 - 2/90
B60K 28/00 - 28/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバに代わって運転行為を実施可能な自動運転機能を備える車両(1)に用いられ、制御対象機器(CE)の機能を制御する機能制御装置であって、
前記自動運転機能の作動時に前記ドライバにより実施され得る前記運転行為とは異なる運転以外の行為のうち、前記ドライバに許容される許容行為を判別する許容行為判別部(Y6)と、
前記運転以外の行為のうち前記許容行為以外の行為を実現可能な前記制御対象機器の機能を制限する機能制限部(Y7)と、を備え、
前記制御対象機器は、前記ドライバが着座する運転席(38)を含み、
前記機能制限部は、前記運転行為の実施主体が前記車両となる自動運転期間において、前記運転席のリクライニングが可能な角度を、前記ドライバの覚醒度が睡眠状態に近い値となるほど制限する機能制御装置。
【請求項2】
前記制御対象機器は、前記ドライバへ向けて表示を行なうディスプレイ(21)を含み、
前記機能制限部は、前記ディスプレイの表示内容を、前記許容行為の判別結果に応じて制限する請求項1に記載の機能制御装置。
【請求項3】
前記制御対象機器は、前記ドライバへ向けて音を出力するスピーカ(22)を含み、
前記機能制限部は、前記スピーカの音量を、前記許容行為の判別結果に応じて制限する請求項1又は2に記載の機能制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書による開示は、自動運転機能を備える車両において許容されるドライバの運転操作とは異なる行為の実施支援に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドライバに代わって運転行為を実施可能な自動運転機能を備える車両において、自動運転機能が作動中であると判定されている場合に、アプリ画像を情報提示機器に表示することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の車両のドライバは、自動運転機能の作動時に、運転以外の行為として、前述のアプリ画像の観賞及び操作を実施することができる。
【0005】
一方で、自動運転機能の作動時において、運転以外の行為の中には、許容されるべき行為と、許容されるべきでない行為とが存在し得る。さらに、こうした行為の許容範囲は、例えば車両の走行環境、ドライバの状態等、様々な状況に応じて変化し得る。ところが、様々な状況を的確に認識して、運転以外の行為がどこまで許容されているかを正確に判断することは、ドライバにとって困難な場合がある。
【0006】
この明細書の開示による目的のひとつは、ドライバが自動運転機能の作動時に適切な行為を取り易くなる機能制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示された態様のひとつは、ドライバに代わって運転行為を実施可能な自動運転機能を備える車両(1)に用いられ、制御対象機器(CE)の機能を制御する機能制御装置であって、
自動運転機能の作動時にドライバにより実施され得る運転行為とは異なる運転以外の行為のうち、ドライバに許容される許容行為を判別する許容行為判別部(Y6)と、
運転以外の行為のうち許容行為以外の行為を実現可能な制御対象機器の機能を制限する機能制限部(Y7)と、を備え、
制御対象機器は、ドライバが着座する運転席(38)を含み、
機能制限部は、運転行為の実施主体が車両となる自動運転期間において、運転席のリクライニングが可能な角度を、ドライバの覚醒度が睡眠状態に近い値となるほど制限する。
【0008】
このような態様によると、ドライバは、自動運転機能の作動時に適切な行為を取り易くなる。
【0009】
【0010】
【0011】
なお、上記及び特許請求の範囲における括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】HCUによる処理を示すフローチャートである。
【
図4】自動運転ECU及びHCUの作動の一例を示すタイムチャートである。
【
図5】自動運転ECU及びHCUの作動の他の一例を示すタイムチャートである。
【
図6】第2実施形態のHCUによる処理を示すフローチャートである。
【
図7】第3実施形態の自動運転ECUの概略的な構成を示す図である。
【
図8】第3実施形態の自動運転ECUによる処理を示すフローチャートである。
【
図9】第4実施形態の自動運転ECU及びHCUの作動の一例を示すタイムチャートである。
【
図10】第4実施形態の自動運転ECU及びHCUの作動の他の一例を示すタイムチャートである。
【
図11】第5実施形態の車載ネットワークの全体像を示す図である。
【
図12】自動運転ECU及びHCUの作動の一例を示すタイムチャートである。
【
図13】第5実施形態のHCUによる情報提示処理を
図14と共に示すフローチャートである。
【
図14】第5実施形態のHCUによる情報提示処理を
図13と共に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0014】
(第1実施形態)
図1に示すように、本開示の第1実施形態による情報提示制御装置は、HCU(Human Machine Interface Control Unit)10となっている。HCU10は、情報提示機器20等と共に、情報提示システムIPSを構成している。HCU10は、情報提示機器20を制御し、情報提示機能及びセカンドタスク等の運転以外の行為の実施を支援する行為実施支援機能等を複合的に実現する電子制御装置である。HCU10は、車両1に用いられ、例えば車両1に搭載されている。
【0015】
HCU10は、車両1に搭載された車載ネットワークの通信バス99に通信可能に接続されている。HCU10は、車両1に搭載された車載ネットワークに設けられた複数のノードのうちの1つである。車載ネットワークの通信バス99には、DSM31、座席センサ32、周辺監視センサ33、ロケータ34、車外通信機35、走行制御ECU36、運転支援ECU37、及び自動運転ECU40等がそれぞれノードとして接続されている。
【0016】
DSM(Driver Status Monitor)31は、ドライバの状態を検出する状態検出装置である。DSM31は、近赤外光源及び近赤外カメラと、これらを制御する制御ユニットとを含む構成である。DSM31は、運転席のヘッドレスト部分に近赤外カメラを向けた姿勢にて、例えばステアリングコラム部の上面又はインスツルメントパネルの上面等に設置されている。DSM31は、近赤外光源によって近赤外光を照射されたドライバの頭部を、近赤外カメラによって撮影する。近赤外カメラによる撮像画像は、制御ユニットによって画像解析される。制御ユニットは、ドライバのアイポイントの位置、視線方向、瞳孔のぶれ、さらにはドライバの姿勢等の状態情報を撮影画像から抽出し、抽出したドライバの状態情報を、通信バス99を通じてHCU10等に提供する。あるいは制御ユニットは、撮像画像そのものを、通信バス99を通じてHCU10等に提供することができる。
【0017】
座席センサ32は、ドライバの運転席への着座状態を検出するセンサである。座席センサ32は、運転席にドライバが着座しているか否かを検出する機能、ドライバがシートベルトを装着しているか否かを検出する機能、運転席のリクライニング角度を検出する機能等を有する。座席センサ32は、着座状態の情報を、通信バス99を通じてHCU10等に提供する。
【0018】
周辺監視センサ33は、車両1の周辺環境を監視する自律センサである。周辺監視センサ33は、自車周囲の検出範囲から、歩行者、サイクリスト、人間以外の動物、及び他車両等移動物体、さらに路上の落下物、ガードレール、縁石、道路標識、走行区画線等の路面標示、及び道路脇の構造物等の静止物体を検出可能である。周辺監視センサ33は、自車周囲の物体の検出情報を、通信バス99を通じて、運転支援ECU37、自動運転ECU40及びHCU10等に提供する。
【0019】
周辺監視センサ33には、例えばカメラユニット及びミリ波レーダが含まれている。カメラユニットは、単眼カメラを含む構成であってもよく、複眼カメラを含む構成であってもよい。カメラユニットは、車両1の前方範囲、側方範囲及び後方範囲等を撮影可能なように車両1に搭載されている。カメラユニットは、自車周囲を撮影した撮像データ及び撮像データの解析結果の少なくとも一方を、検出情報として出力する。ミリ波レーダは、ミリ波又は準ミリ波を自車周囲へ向けて照射する。ミリ波レーダは、移動物体及び静止物体等で反射された反射波を受信する処理によって生成した検出情報を出力する。周辺監視センサ33は、カメラユニット及びミリ波レーダに対し追加又は入換される形態で、ライダ及びソナー等を備えていてもよい。
【0020】
ロケータ34は、GNSS(Global Navigation Satellite Systems)受信機及び慣性センサ等を含む構成である。ロケータ34は、GNSS受信機で受信する測位信号、慣性センサの計測結果、及び通信バス99に出力された車速情報等を組み合わせ、車両1の自車位置及び進行方向等を逐次測位する。ロケータ34は、測位結果に基づく車両1の位置情報及び方角情報を、ロケータ情報として、通信バス99に逐次出力する。
【0021】
ロケータ34は、地図データベース34aをさらに有している。地図データベース34aは、多数の3次元地図データ及び2次元地図データを格納した大容量の不揮発性の記憶媒体を主体とする構成である。3次元地図データは、いわゆる高精度地図データであり、道路の3次元形状情報及び各レーンの詳細情報等、高度運転支援及び自動運転に必要な情報を含んでいる。ロケータ34は、現在位置周辺の地図データを地図データベース34aから読み出し、運転支援ECU37及び自動運転ECU40等に、ロケータ情報と共に提供する。なお、ロケータ34に代えて、スマートフォン等のユーザ端末又はナビゲーション装置等が、位置情報、方角情報及び地図データ等を運転支援ECU37及び自動運転ECU40に提供してもよい。
【0022】
車外通信機35は、車両1に搭載される通信モジュール(Data Communication Module)である。車外通信機35は、LTE(Long Term Evolution)及び5G等の通信規格に沿った無線通信により車両1と周囲の基地局との間で電波を送受信する。車外通信機35の搭載により、車両1は、インターネットに接続されたコネクテッドカーとなる。車外通信機35は、クラウド上に設けられたプローブサーバから、各種のデータを取得する。各種のデータとしては、車両1が走行する道路の最新の地図データ、交通情報のデータ、天候情報のデータ、情報提示機器20に再生させる映画等のコンテンツの再生データ等が挙げられる。交通情報のデータには、例えば車両1が走行する道路の交通量、交通事故及び工事による交通規制等の道路情報等が含まれる。
【0023】
走行制御ECU36は、マイクロコンピュータを主体として含む電子制御装置である。走行制御ECU36は、各車輪のハブ部分に設けられた車輪速センサの検出信号に基づき、車両1の現在の走行速度を示す車速情報を生成し、通信バス99に逐次出力する。加えて走行制御ECU36は、運転アクチエータの動作を制御する。
【0024】
運転アクチエータは、運転操作を実施するための車両操舵装置、車両駆動装置、車両制動装置を含む構成である。運転操作には、車両操舵、車両駆動及び車両制動が含まれる。車両操舵装置は、車両1の例えば前輪に与える操舵角を制御する装置である。車両駆動装置は、車両1の動力源から提供された動力を用いて、車両1の例えば前輪を駆動する装置である。車両制動装置は、摩擦制動、回生制動等の制動方法にて、車両1の例えば前輪を制動する装置である。
【0025】
運転支援ECU37及び自動運転ECU40は、車両1において自動運転システムADSを構成している。自動運転システムADSの搭載により、車両1は、自動運転機能を備える。
【0026】
運転支援ECU37は、ドライバの運転操作を支援する運転支援機能を実現する電子制御装置である。運転支援ECU37は、自動運転レベルにおいてレベル2程度の高度運転支援又は部分的な自動走行制御を可能にする。運転支援ECU37は、処理部、RAM(Random Access Memory)、記憶部、入出力インターフェース及びこれらを接続するバス等を備えたコンピュータを主体として含む構成である。運転支援ECU37は、処理部によるコンピュータプログラムを実行し、走行制御ECU36へ制御信号を出力することにより、高度運転支援を実現する複数の機能部を有する。具体的に、運転支援ECU37は、ACC(Adaptive Cruise Control)機能を実現するACC機能部、LTA(Lane Tracing Assist)機能を実現するLTA機能部を有する。さらに、運転支援ECU37は、LCA(Lane Change Assist)機能を実現するLCA機能部等を有する。
【0027】
自動運転ECU40は、ドライバの運転操作を代行可能な自動運転機能を実現させる電子制御装置である。自動運転ECU40は、予め設定された限定的な運行設計領域(Operational Design Domain,以下、限定領域)に限り、車両1のシステムが制御主体となるレベル3の自律走行を可能にする。
【0028】
ここで限定領域は、自動運転ECU40による自律走行を正常に作動させるために前提となる走行環境条件を含んでいる。一例として、限定領域は、車両1が走行する国及び地域の道路交通法、条例に基づき設定されることがあり、車両1が走行する道路のインフラ整備状態、道路形状等を原因とした技術的な制約に基づき設定されることがある。以上の道路条件及び地理条件等に基づく限定領域の区分は、例えば前述の地図データに紐付けられて、地図データベース34aの情報に含まれている。
【0029】
自動運転ECU40は、処理部41、RAM42、記憶部43、入出力インターフェース44、及びこれらを接続するバス等を備えたコンピュータを主体として含む構成である。処理部41は、RAM42と結合された演算処理のためのハードウエアである。処理部41は、CPU(Central Processing Unit)及びGPU(Graphic Processing Unit)等の演算コアを少なくとも1つ含む構成である。処理部41は、RISC(Reduced Instruction Set Computer)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)及び他の専用機能を備えたIPコア等をさらに含む構成であってもよい。処理部41は、RAM42へのアクセスにより、後述する各機能部の機能を実現するための種々の処理を実行する。記憶部43は、例えば半導体メモリ等の不揮発性の記憶媒体をすくなくとも1つ含む構成である。記憶部43には、処理部41によって実行される種々のコンピュータプログラム(例えば自動運転プログラム)等が格納されている。
【0030】
自動運転ECU40は、記憶部43に記憶されたコンピュータプログラムを処理部41によって実行することにより、自動運転を実現する複数の機能部を有する。具体的に自動運転ECU40は、
図2に示すように、状態管理部Y1及び運転制御部Y2を有する。
【0031】
状態管理部Y1は、ロケータ34から取得したロケータ情報及び地図情報、周辺監視センサ33から取得した検出情報、車外通信機35を通じて取得された交通情報及び天候情報、さらにはHCU10からの退避要求等に基づき、自動運転の状態を管理する。特に第1実施形態の状態管理部Y1は、自動運転の状態としての自動運転レベルを管理し、適時切り替える。第1実施形態において自動運転レベルは、0以上3以下の整数である離散的な数値をとる。自動運転レベルは、数値が大きくなるに従って、運転行為のうちシステムが制御主体となる範囲が大きくなることを意味する。ここで運転行為とは、前述の運転操作に、周辺監視を加えた概念として定義される。状態管理部Y1が切り替える自動運転レベルは、米国自動車技術会が規定する自動運転レベルに準じている。
【0032】
例えば自動運転レベルがレベル0の場合では、運転行為の全てについてドライバが実施主体となる。いわゆる手動運転が実施される。自動運転レベルがレベル1の場合では、運転行為のうち、車両操舵か、車両駆動及び車両制動かのいずれか一方の実施主体が車両1(詳細には運転支援ECU37)であり、その他の運転行為の全ての実施主体がドライバとなる。自動運転レベルがレベル2の場合では、車両操舵、車両駆動及び車両制動の運転操作の実施主体が車両1(詳細には運転支援ECU37)である。この場合、ドライバは、周辺監視の実施主体となると共に、車両1による運転操作の実施状況を監視し、当該運転操作に常に介入できるよう、ステアリングホイールを握る等の即時運転操作可能な状態を保つ必要がある。
【0033】
自動運転レベルがレベル3の場合では、車両操舵、車両駆動、車両制動及び周辺監視の全ての運転行為の実施主体が車両1となり、車両1側の自動運転ECU40がこれら運転行為を実施する。このとき、ドライバは、自動運転ECU40による運転行為の実施状況を常時監視することなく、運転とは異なる運転以外の行為を、安全上許容された範囲で実施することができる。安全上許容された範囲は、法規的に定められてもよく、実際の運転における安全性に基づいて定められてもよい。
【0034】
ドライバが実施し得る運転以外の行為には、コンテンツの観賞、コンピュータゲーム、電子メールの閲覧及び送信作業、ウェブサイトの閲覧、携帯電話又はスマートフォンの操作、食事、メイク(化粧)、読書、睡眠等が含まれる。コンテンツには、例えば映画等の動画、音楽、オーディオブック等が含まれる。これらは、セカンドタスク、セカンダリータスク、セカンダリーアクティビティ、アザーアクディビティと呼称されることがある。但し、これらの呼称は、運転以外の行為そのものを示す場合があり、運転以外の行為のうち一般的に安全上許容された行為を示す場合があり、運転以外の行為のうち各種状況に応じて個別具体的に安全上許容された行為を示す場合がある。以下では、運転以外の行為のうち各種状況に応じて個別具体的に安全上許容された行為を、許容行為と定義して説明を続ける。許容行為と認められる範囲は、各種状況の経時的な変化に応じて、変わり得る。
【0035】
状態管理部Y1は、こうした自動運転レベルを適時切り替える。自動運転レベルがレベル0の場合では、運転支援ECU37及び自動運転ECU40が運転行為に実質的に介入せず、ドライバの運転行為により直接的に走行制御ECU36及び運転アクチエータが制御される。自動運転レベルがレベル1又は2の場合では、ドライバの運転行為を運転支援ECU37が支援する態様にて、走行制御ECU36及び運転アクチエータが制御される。自動運転レベルがレベル3の場合では、自動運転ECU40の計算に基づき走行制御ECU36及び運転アクチエータが制御される。
【0036】
前述の限定領域を車両1が走行する場合に、状態管理部Y1は、自動運転レベルの上限をレベル3とする。逆に、限定領域外を車両1が走行する場合に、状態管理部Y1は、基本的に自動運転レベルの上限をレベル2とし、例外条件下にて自動運転レベルの上限をレベル3とする。この例外条件は、例えば車両1が走行する道路が渋滞し、かつ、車両1が所定速度未満の低速走行をしているという条件である。以上のことから、地図データベース34aの示す限定領域と、低速走行となる渋滞区間とが、少なくとも一部のセカンドタスクの許可される許可エリアとなる。
【0037】
状態管理部Y1は、車両1が限定領域を走行する場合であっても、自動運転レベルをレベル3からレベル2以下に引き下げる場合がある。例えば状態管理部Y1は、自動運転機能がその使用条件から外れた場合又は使用条件から外れることが予測される場合に、突発的に、自動運転レベルをレベル2以下に引き下げる。例えば、大雨、降雪、濃霧及び砂嵐等の悪天候による環境条件の悪化により周辺監視センサ33の検出精度が低下する場合等では、自動運転機能の作動の前提となる使用条件から外れることがある。また、自車周囲にて交通事故が発生した場合には、自動運転機能が使用条件から外れることがある。
【0038】
状態管理部Y1は、許可エリアの終了予定又は使用条件からの逸脱により、自動運転レベルをレベル3からレベル2以下に引き下げることを決定した場合、情報提示機器20がドライバへ向けて運転交代を予告する情報を提示するように、HCU10へ要求する。運転交代にドライバが応じた場合、状態管理部Y1は、実際に、自動運転レベルをレベル3からレベル2以下に引き下げる。運転交代の予告後、所定時間待機しても運転交代にドライバが応じない場合、状態管理部Y1は、車両1をMRM(Minimal Risk Manoeuvre)制御することを決定可能である。MRM制御は、非常時において、リスクを最小に抑制した車両制御であり、具体的には、退避場所を探索及び設定し当該退避場所に自車を移動及び停車させる制御を意味する。
【0039】
運転制御部Y2は、状態管理部Y1が自動運転レベルをレベル3に設定した場合に、運転行為の実施主体として機能し、走行制御ECU36を制御する。具体的に、運転制御部Y2は、ロケータ34から取得したロケータ情報及び地図情報、周辺監視センサ33から取得した検出情報等に基づき、車両1が走行する道路形状及び他車両の位置等を認識する。運転制御部Y2は、道路形状及び他車両の位置等の認識結果に基づき、車両1を走行させる予定走行ラインを生成する。運転制御部Y2は、走行制御ECU36との連携により、生成された予定走行ラインに沿って車両1を走行させる。
【0040】
前述のMRM制御が実施される場合、運転制御部Y2は、自車周囲に対してサイレン等の警報を車両1に発声させつつ、車両1の走行速度を漸次低下させ、車両1を道路脇等の比較的安全な場所に停車させる。
【0041】
次に、情報提示システムIPSに含まれる情報提示機器20及びHCU10の各詳細を、順に説明する。
【0042】
情報提示機器20は、ドライバへ向けて情報を提示する機器である。
図1に示すように、情報提示機器20は、複数のディスプレイ21及び複数のスピーカ22を含む構成である。複数のディスプレイ21は、例えばインスツルメントパネルに設置されている。複数のディスプレイ21には、例えばグラフィックメータ(Graphic Meter)、及びセンターインフォメーションディスプレイ(Center Information Display,CID)等が含まれている。さらに、ヘッドアップディスプレイ(Head Up Display,HUD)がディスプレイ21に含まれていてもよい。各ディスプレイ21は、ドライバへ向けて視覚的情報を提示するデバイスであり、画像を表示可能に構成されている。複数のディスプレイ21のうち少なくとも一部のディスプレイ(例えばCID)は、表示機能と、タッチ操作等を受け付ける操作機能とを、複合的に有する。
【0043】
複数のスピーカ22は、例えばインスツルメントパネルにおけるディスプレイ画面の近傍、ドアパネル、リヤクォーターパネル等に配置されている。各スピーカ22は、ドライバへ向けて聴覚的情報を提示するデバイスである。具体的に各スピーカ22は、入力された電気信号を、ボイスコイル及び振動板を用いて物理信号に変換することにより、音を吹鳴可能となっている。スピーカ22は、各ディスプレイ21に対応して個別に設けられてもよく、各ディスプレイ21のうち一部又は全部に対して共通に設けられてもよく、ディスプレイ21とは全く独立して設けられてもよい。
【0044】
HCU10は、自動運転ECU40及び情報提示機器20と連携して、ドライバ等の乗員へ向けた情報提示を、統合的に制御する電子制御装置である。HCU10は、処理部11、RAM12、記憶部13、入出力インターフェース14、及びこれらを接続するバス等備えたコンピュータを主体として含む構成である。処理部11は、RAM12と結合された演算処理のためのハードウエアである。処理部11は、CPU、GPU、RISC等の演算コアを少なくとも1つ含む構成である。処理部11は、FPGA及び他の専用機能を備えたIPコア等をさらに含む構成であってもよい。RAM12は、映像生成のためのビデオRAMを含む構成であってもよい。処理部11は、RAM12へのアクセスにより、後述する各機能部の機能を実現するための種々の処理を実行する。記憶部13は、例えば半導体メモリ等の不揮発性の記憶媒体をすくなくとも1つ含む構成である。記憶部13には、処理部11によって実行される種々のコンピュータプログラム(例えば情報提示プログラム)等が格納されている。
【0045】
HCU10は、記憶部13に記憶されたプログラムを処理部11によって実行することで、複数の機能部を有する。具体的にHCU10は、
図2に示すように、走行環境推定部X1、覚醒度推定部X2、ストレス推定部X3、許容行為判別部X4、乗員監視部X5、警報判断部X6、退避要求部X7及び情報提示内容制御部X8を有する。
【0046】
走行環境推定部X1は、周辺監視センサ33から取得した検出情報、ロケータ34から取得したロケータ情報及び地図データ、車外通信機35を通じて取得された交通情報等に基づき、車両1が走行する道路の走行環境を推定する。道路の走行環境の推定には、自動運転ECU40の運転制御部Y2が認識した道路形状、他車両の位置等の情報、及び予定走行ラインの情報がさらに用いられてよい。
【0047】
走行環境は、道路形状及び走行シーンを含む概念である。道路形状には、道路幅、道路傾斜、道路曲率、道路区画線形状等が含まれる。走行シーンには、限定領域の設定、交通量等が含まれる。こうして走行環境推定部X1が推定した走行環境情報は、許容行為判別部X4へ提供される。走行環境推定部X1は、最新の情報に基づき、走行環境情報を適時更新する。
【0048】
推定対象の走行環境には、車両1が現在走行中の道路の走行環境が含まれる。また第1実施形態では、推定対象の走行環境には、車両1が走行予定の道路の走行環境がさらに含まれる。
【0049】
覚醒度推定部X2は、DSM31から取得したドライバの状態情報に基づき、ドライバの覚醒度を推定する。ドライバの覚醒度とは、ドライバの眠気をレベルによって示す指標である。覚醒度は、高いレベルとなる程、ドライバが睡眠状態に近いことを示す。覚醒度は、0以上3以下の整数である離散的な数値をとる。
【0050】
例えばドライバの視線の移動が早く、頻繁である状態、瞬きの周期が安定している状態、ドライバの動きが活発である状態等が認められる場合、覚醒度推定部X2は、覚醒度をレベル0と推定する。
【0051】
ドライバの唇が開いている状態、視線移動の動きが遅い状態、瞬きがゆっくりと頻発している状態、座り直しが頻発する状態、顔に手をやる状態等が認められる場合、覚醒度推定部X2は、覚醒度をレベル1と推定する。
【0052】
ドライバに意識的と思われる瞬きがある状態、頭を振る、肩の上下運動等無用な身体の動きがある状態、あくび又は深呼吸が頻発する状態、瞬き及び視線の動きが遅い状態等が認められる場合、覚醒度推定部X2は、覚醒度をレベル2と推定する。
【0053】
ドライバの頭が前に傾く状態、頭が後ろに倒れる状態、瞼を数秒以上閉じる状態が認められる場合、覚醒度推定部X2は、覚醒度をレベル3と推定する。こうして覚醒度推定部X2が推定した覚醒度情報は、許容行為判別部X4へ提供される。覚醒度推定部X2は、最新の情報に基づき、覚醒度情報を適時更新する。
【0054】
ストレス推定部X3は、DSM31から取得したドライバの状態情報に基づき、ドライバのストレスを推定する。具体的に、ストレス推定部X3は、ドライバのストレスの有無を推定する。ドライバのストレスの有無の推定には、例えばドライバの目のぶれ状態の解析が用いられる。さらに運転席、ステアリングホイール等にドライバの心拍数を検出する生体センサを設け、当該生体センサが検出した心拍数の情報を用いて、ストレス推定部X3による推定精度を向上させることができる。ストレス推定部X3が推定したストレス情報は、許容行為判別部X4へ提供される。ストレス推定部X3は、最新の情報に基づき、ストレス情報を適時更新する。
【0055】
許容行為判別部X4は、走行環境推定部X1から取得した走行環境情報、覚醒度推定部X2から取得した覚醒度情報、ストレス推定部X3から取得したストレス情報に基づき、ドライバに許容される許容行為を判別する。許容行為判別部X4は、ドライバに現在許容される許容行為を判別する。許容行為判別部X4による許容行為の判別結果は、これら走行環境情報、覚醒度情報及びストレス情報の変化、すなわち各種状況の変化に応じて変わり得る。許容行為判別部X4は、自動運転機能が作動している間、提供される最新の情報に基づき、走行環境情報の変化、覚醒度情報の変化又はストレス情報の変化に対応して、判別結果を適時更新する。
【0056】
具体的に許容行為判別部X4による判別理論は、自動運転レベルがレベル3である受動運転機能が作動している場合に、ドライバが「最低限の安全姿勢であり、かつ、緊急時運転交代可能な状態」を保つことができることを指針として、構築されている。すなわち、レベル3の自動運転に突発的な運転交代原因が発生した場合に、ドライバが安全に運転を引き継げるような範囲で、運転以外の行為が許容行為として許容される。
【0057】
許容行為判別部X4は、許容行為の判別において、複数の判別観点を設定している。そして、許容行為判別部X4は、一旦、判別観点毎に個別の判別結果を、暫定的に算出する。その後、許容行為判別部X4は、暫定的に算出された判別観点毎に個別の許容行為のうち各判別観点間にて共通して許容行為と判別された行為を、確定的に許容行為と判別する。
【0058】
許容行為の範囲が以下に説明するドライバ要件として段階的に規定されている第1実施形態では、許容行為判別部X4は、各判別観点に対する暫定的な結果のうち、最も許容行為の範囲が狭い(換言すると最も許容度の低い)判定結果を抽出する。許容行為判別部X4は、許容行為の範囲が最も狭い判定結果を確定的な判別結果(最終結果)とする。許容行為判別部X4は、確定的な判別結果の情報を情報提示内容制御部X8へ提供する。
【0059】
ドライバ要件は、前述の判別理論に基づき、運転以外の行為を段階的に区分けした指標である。ドライバ要件は、高いレベルとなる程、許容行為の範囲が広い(換言すると許容度が高い)ことを示す。ドライバ要件は、0以上4以下の整数である離散的な数値をとる。ドライバ要件レベル0は、運転以外の行為が許容されず、禁止されることを意味する。
【0060】
ドライバ要件レベル1の行為は、ドライバが容易に運転可能な状態に戻れる行為である。例えば、携帯電話、スマートフォン又はCIDに対する片手での操作、左右に体が倒れない状態を保持可能な行為、複数のディスプレイ21が全て視認可能な眼の位置を保持可能な行為が、ドライバ要件レベル1の行為に挙げられる。さらに、スピーカ22の音量が小音量から中音量である音を用いた運転交代要求を即時に察知可能な行為、運転席のリクライニングを略倒していない状態を保持可能な行為等も、ドライバ要件レベル1の行為に挙げられる。即ち、運転行動に戻っても五感を全て使用可能である行為が、ドライバ要件レベル1の行為とされる。
【0061】
ドライバ要件レベル2の行為は、ドライバが多少の動作で運転可能な状態に戻れる行為である。例えば、携帯電話、スマートフォン又はCIDに対する両手での操作、左右に体を±20度程度まで倒す行為、複数のディスプレイ21のうち1つを除いて視認可能な眼の位置を保持可能な行為等が、ドライバ要件レベル2の行為とされる。さらに、スピーカ22の音量が中音量から大音量である音を用いた行為、運転席のリクライニングを45度程度まで倒した状態で実施する行為等も、ドライバ要件レベル2の行為として挙げられる。
【0062】
ドライバ要件レベル3の行為は、ドライバが緊急時に運転に戻れる行為である。例えば、膝に物をおいて実施する行為、左右に体を±130度程度まで倒す行為、複数のディスプレイ21のうち2つを除いて視認可能な眼の位置を保持可能な行為が挙げられる。
【0063】
ドライバ要件レベル4の行為は、レベル3の自動運転の実施が蓋然的に禁止される行為である。例えば、睡眠行為、飲酒行為、席を外す行為、シートベルトを解除する行為、運転席のリクライニングを90度程度まで倒した状態で実施する行為、イヤホンを装着する行為が挙げられる。なお、ドライバ要件レベル4の行為を、許容行為判別部X4が許容行為と判別することは、自動運転レベル3の自動運転機能作動時において通常ない。
【0064】
以下、許容行為判別部X4による許容行為の判別について具体的に説明する。許容行為判別部X4には、4つの判別観点が設定されている。第1の判別観点は、走行環境のうち道路形状である。許容行為判別部X4は、走行環境推定部X1から取得した道路形状の情報に基づき、許容行為を判別する。詳細に、許容行為判別部X4は、道路幅、道路傾斜、道路曲率、道路区画線形状等から、車両1が走行する道路の道路形状を特定する。
【0065】
そして、許容行為判別部X4は、道路形状が直線道路である場合には、ドライバ要件レベル3までの行為が許容行為であると判別する。許容行為判別部X4は、道路形状が曲線道路である場合には、ドライバ要件レベル2までの行為が許容行為であると判別する。詳細には、車両1の走行する道路がカーブ形状であり、かつ、カーブ区間の長さが所定距離を超える場合に、許容行為判別部X4は、許容行為と判別する範囲を狭くし、ドライバ要件レベル2までの行為が許容行為であると判別する。また、許容行為判別部X4は、道路形状がレーンチェンジを要する形状の場合には、ドライバ要件レベル1までの行為が許容行為であると判別する。すなわちドライバが運転を引き継ぐ仮定において、運転の引き継ぎ直後の運転行為の難易度が高い程、許容行為の範囲は狭くされる。
【0066】
第2の判別観点は、走行環境のうち走行シーンである。許容行為判別部X4は、走行環境推定部X1から取得した走行シーンの情報に基づき、許容行為を判別する。詳細に、許容行為判別部X4は、限定領域の設定、交通量等から、車両1の走行シーンを特定する。
【0067】
そして、許容行為判別部X4は、走行シーンが限定領域内の非渋滞時走行である場合には、ドライバ要件レベル3までの行為が許容行為であると判別する。許容行為判別部X4は、走行シーンが限定領域内の渋滞時走行である場合には、ドライバ要件レベル3までの行為が許容行為であると判別する。許容行為判別部X4は、走行シーンが限定領域外の渋滞時走行である場合には、ドライバ要件レベル2までの行為が許容行為であると判別する。すなわちドライバへの突発的な運転交代の可能性が高い程、許容行為の範囲は狭くされる。
【0068】
また、走行シーンが限定領域内から限定領域外にこれから移行しようとする場面では、許容行為判別部X4は、車両1から限定領域の境界までの距離又は到達時間に基づき、許容行為を判別する。許容行為判別部X4は、境界までの距離又は到達時間が短くなる程、許容行為の範囲を狭くする。
【0069】
第3の判別観点は、覚醒度である。許容行為判別部X4は、覚醒度推定部X2から取得したドライバの覚醒度に基づき、許容行為を判別する。許容行為判別部X4は、ドライバの覚醒度がレベル0である場合には、ドライバ要件レベル3までの行為が許容行為であると判別する。許容行為判別部X4は、ドライバの覚醒度がレベル1である場合には、ドライバ要件レベル2までの行為が許容行為であると判別する。許容行為判別部X4は、ドライバの覚醒度がレベル2である場合には、ドライバ要件レベル1の行為が許容行為であると判別する。すなわち、突発的な運転交代に対応するドライバの対応力が低下している程、許容行為の範囲は狭くされる。
【0070】
なお、ドライバの覚醒度がレベル3である場合には、緊急時運転交代不能な状態と推定されるため、許容行為判別部X4は、警報を実施すべき命令を、警報判断部X6へ出力する。
【0071】
第4の判別観点は、ストレスである。許容行為判別部X4は、ストレス推定部X3から取得したドライバのストレスに基づき、許容行為を判別する。許容行為判別部X4は、ドライバがストレス無しの場合には、ドライバ要件レベル3までの行為が許容行為であると判別する。許容行為判別部X4は、ドライバがストレス有りの場合には、ドライバ要件レベル2までの行為が許容行為であると判別する。すなわち、ドライバが運転を引き継ぐ仮定において、引き継ぎ直後の運転行為の操作ミスの可能性が高い程、許容行為の範囲は狭くされる。
【0072】
以上の各暫定的な判別結果のうち、ドライバ要件におけるレベルの低い判別観点に対する結果が確定的な判別結果に採用される。各判別観点による安全性基準を通過した行為のみが許容されることで、後述する許容行為に関する情報提示の妥当性が高まるからである。
【0073】
さらに許容行為判別部X4は、複数の判別観点のうち、未来予測可能な判別観点に基づき、目的地までの走行経路における許容行為の範囲の推移を大まかに予測する。第1実施形態では、車両1が走行予定の道路の走行環境を推定可能となっているため、当該走行環境が未来予測可能な判別観点に該当する。
【0074】
乗員監視部X5は、DSM31から取得したドライバの状態情報、座席センサ32からのドライバの着座情報等に基づき、ドライバの行為を監視する。乗員監視部X5は、DSM31による撮像画像の画像解析結果と、着座情報を総合的に判断して、ドライバの行為を特定してよい。ドライバの行為の特定には、ニューラルネットワークを主体として構築された学習済みの人工知能モデルが用いられてもよい。乗員監視部X5は、ドライバの行為の監視結果を警報判断部X6及び情報提示内容制御部X8へ提供する。
【0075】
警報判断部X6は、乗員監視部X5から取得したドライバの行為の監視結果と許容行為判別部X4から取得した許容行為の判別結果とを照らし合わせ、ドライバへ向けた警報を実施するか否かを判断する。例えば運転以外のうち許容行為判別部X4による許容行為ではないと判別された許容行為以外の行為(以下、非許容行為)を、ドライバが所定の警報設定時間以上継続して実施している場合、警報判断部X6は、ドライバへ向けた警報の実施を決定する。
【0076】
また、許容行為判別部X4から前述のように警報を実施すべき命令が入力された場合に、警報判断部X6は、ドライバへ向けた警報を実施することを決定する。警報判断部X6は、警報実施情報を情報提示内容制御部X8へ提供する。
【0077】
退避要求部X7は、警報の実施開始後に、さらにドライバが非許容行為を所定の退避設定時間以上継続して実施している場合に、自動運転ECU40に対して、車両1を強制的に退避させることを要求する。ここでいう退避とは、例えば前述のMRM制御である。
【0078】
情報提示内容制御部X8は、情報提示機器20に情報提示させる内容を制御する。情報提示内容制御部X8は、許容行為判別部X4から判別結果を取得し、当該判別結果に関する情報を情報提示機器20に提示させる提示要求を、情報提示機器20へ出力する。情報提示内容制御部X8は、前述の確定的な判別結果を取得し、当該確定的な判別結果に関する情報を情報提示機器20に提示させるようになっている。
【0079】
情報提示内容制御部X8は、判別結果に関する情報のうち、許容行為と判別された行為を示す情報を情報提示機器20に提示させることができる。許容行為と判別された行為を示す情報とは、例えばドライバ要件レベル2までの行為が許容行為と判別された場合、運転席のリクライニングを45度まで倒してよい旨を示す情報である。
【0080】
また例えば、ドライバ要件レベル3までの行為が許容行為と判別された場合、情報提示内容制御部X8は、ディスプレイ21(例えばCID)にて映画の上映が可能である旨を示す情報を、情報提示機器20に提示させる。このような状況下、情報提示機器20を用いる許容行為を実現するための機能的な制限が情報提示機器20に加えられている場合に、情報提示内容制御部X8は、制限の解除を要求することができる。情報提示内容制御部X8は、情報提示機器20又は情報提示機器20に対して制限を加えている制限主体である装置に対し、制限の解除を要求する。例えば、ディスプレイ21にて映画の上映に対する機能的な制限が加えられている場合、情報提示内容制御部X8は、ディスプレイ21が映画の上映を実施できるよう、機能的な制限の解除を要求する。
【0081】
また情報提示内容制御部X8は、判別結果に関する情報のうち、非許容行為と判別された行為を示す情報を情報提示機器20に提示させることができる。非許容行為と判別された行為を示す情報とは、例えばドライバ要件レベル2までの行為が許容行為と判別された場合、運転席のリクライニングを、45度を超えて倒してはいけない旨を示す情報である。
【0082】
許容行為の判別結果が更新され、許容行為の範囲(換言するとドライバ要件レベル)が変化することに応じたタイミングにて、情報提示内容制御部X8は、許容行為の判別結果に関する情報を情報提示機器20に提示させることが可能である。このタイミングの提示において情報提示内容制御部X8は、許容行為の範囲の変化量が大きくなる程、情報提示をトーンアップさせる。変化量が大きな程、情報提示におけるトーンアップ化が図られる。例えばドライバ要件レベルの上限が3から1に変化した場合、変化量は2であり、ドライバ要件レベルの上限が2から3に変化した場合、変化量は1である。
【0083】
ここでトーンアップとしては、画像による表示であれば、彩度を向上すること、輝度を向上すること、表示サイズを大きくすること、表示に用いる線を太くすること等が挙げられる。またトーンダウンとしては、音による通知であれば、音量を上げること、高音域の使用すること、音声のアクセントを強めること等が挙げられる。
【0084】
情報提示内容制御部X8は、判別結果に関する情報を提示させる際、乗員監視部X5から取得したドライバの行為の監視結果に基づき、情報提示機器20のうち情報提示に用いるデバイスを選択する。すなわち、ドライバの運転以外の行為の性質を考慮し、比較的、情報提示機器20のうち注意が及び易いデバイスが情報提示に用いられる。
【0085】
例えばドライバが映画を鑑賞している場合には、情報提示はディスプレイ21による表示によって実施される。より詳細に、ドライバがCIDで映画を鑑賞している場合、情報提示はCIDによる表示によって実施される。また例えばドライバがスマートフォンの操作、食事等をしている場合には、情報提示はスピーカ22による通知によって実施される。
【0086】
また、情報提示内容制御部X8は、判別結果に関する情報を提示させる際、乗員監視部X5から取得したドライバの行為の監視結果に基づき、提示における詳細な内容を決定することができる。例えばドライバが非許容行為を実施している場合に、情報提示内容制御部X8は、当該非許容行為を実施してはならない理由及び非許容行為を許容行為へ移行させるための助言のうち少なくとも1つを、情報提示機器20に提示させることができる。こうした情報提示は、ドライバが非許容行為を中止するまでの間、例えば継続的に提示される。
【0087】
一例として、ドライバ要件レベル1~2の行為が許容行為と判別され、許容行為として認められるリクライニングの角度が45度以下であり、かつ、ドライバがリクライニングの角度を70度まで倒している場合について説明する。この場合、当該非許容行為を実施してはならない理由の例として、「道路形状がカーブなのでドライバが運転を引き継いだ直後の負担を考慮すると、多少の動作で運転行為可能な状態に戻れるようにすべきだから」との理由が挙げられる。またこの場合、非許容行為を許容行為へ移行させるための助言の例として、「リクライニングの角度を45度以下に戻して下さい」との理由が挙げられる。
【0088】
こうして情報提示機器20を通じてドライバへ許容行為の判別結果に関する情報を提示したにも関わらず、ドライバが非許容行為を継続する場合、こうした非許容行為の継続を乗員監視部X5が監視する。非許容行為が所定の警報設定時間以上継続されると、前述のように警報判断部X6が警報の実施を決定する。そして、情報提示内容制御部X8は、情報提示機器20にドライバへ向けた警報を実施させる。情報提示内容制御部X8は、情報提示機器20のうち警報に用いるデバイスを、複数選択することが好ましい。さらに情報提示内容制御部X8は、警報を、前述の情報提示の場合よりも、トーンアップさせる。こうした警報に加えて、情報提示内容制御部X8は、自動運転レベルを低下させること、換言すると周辺監視義務のない自動運転を終了させる運転交代の予告を情報提示機器20に提示させてもよい。
【0089】
一方、ドライバが許容行為を実施している場合には、情報提示内容制御部X8は、必要以上に判別結果に関する情報を提示させなくてよい。但し、情報提示内容制御部X8は、情報提示の頻度を規制するように設定された時間間隔としての規制時間間隔を開けた上で、時々(例えば定期的に)、判別結果に関する情報を提示させる。
【0090】
こうした提示においては、ドライバの許容行為の実施を阻害しないように、ドライバが非許容行為を実施している場合よりもトーンダウンされた態様にて情報が提示されることが好ましい。ここでトーンダウンとは、トーンアップの対義語である。トーンダウンとしては、画像による表示であれば、彩度を低下すること、輝度を低下すること、表示サイズを小さくすること、表示に用いる線を細くすること等が挙げられる。またトーンダウンとしては、音による通知であれば、音量を下げること、高音域の使用を避けること、音声のアクセントを弱めること等が挙げられる。
【0091】
次に、記憶部13に記憶され、処理部11に実行される情報提示プログラムに基づき、情報提示する方法を、
図3のフローチャートの各ステップに基づき説明する。
【0092】
まず、S10では、HCU10の例えば許容行為判別部X4は、自動運転ECU40の状態管理部Y1が管理する自動運転レベルがレベル3の状態であるか、又はレベル3になる予定があるかどうかを判定する。S10にて肯定判定が下されると、S11へ移る。S10にて否定判定が下されると、例えば所定の再判定時間が経過した後に、再度S10の処理が実施される。
【0093】
S11では、各判別観点に関する推定が実施される。具体的に、走行環境推定部X1は、車両1が走行する道路の走行環境を推定する。覚醒度推定部X2は、ドライバの覚醒度を推定する。ストレス推定部X3は、ドライバのストレスを推定する。S11の処理後、S12へ移る。
【0094】
S12では、許容行為判別部X4は、ドライバに許容される許容行為を判別する。S12の処理後、S13へ移る。
【0095】
S13では、情報提示内容制御部X8は、許容行為の判別結果に関する情報を情報提示機器20に提示させる。ドライバは、許容行為の判別結果に関する情報を得ることができる。S13の処理後、S14へ移る。
【0096】
S14では、乗員監視部X5及び警報判断部X6は、ドライバが非許容行為を警報設定時間以上継続して実施しているか否かを判定する。S14にて肯定判定が下されると、警報の実施が決定され、S15へ移る。S14にて否定判定が下されると、S11の処理に戻る。
【0097】
S15では、情報提示内容制御部X8は、情報提示機器20にドライバへ向けた警報を実施させる。ドライバは、警報を認識することができる。S15の処理後、S16へ移る。
【0098】
S16では、退避要求部X7は、警報の実施開始後に、ドライバが非許容行為を退避設定時間以上継続して実施しているか否かを判定する。S16にて肯定判定が下されると、S17へ移る。S16にて否定判定が下されると、S11の処理に戻る。
【0099】
S17では、退避要求部X7は、自動運転ECU40に対して、車両1を強制的に退避させることを要求する。自動運転ECU40は、MRM制御を実施する。S17を以て一連の処理を終了する。
【0100】
次に、自動運転ECU40及びHCU10の作動の例について、
図4及び
図5のタイムチャートに基づき説明する。
図4及び
図5に示す運転以外の行為を示すチャートにおいて、実線は、ドライバが実際に実施している運転以外の行為を、ドライバ要件レベルに当てはめたときに、当該行為がそのレベルに相当するかを示している。一点鎖線は、許容行為判別部X4が判別した結果を、ドライバ要件レベルとして示している。
【0101】
図4の作動例は、自動運転レベルがレベル0の状態から、レベル3へ移行し、さらにMRM制御へ移行する場面を示す。
【0102】
まず、運転制御において、自動運転レベルがレベル0からレベル1,2と徐々に上がっていく。この時点では、運転以外の行為が実質的に許容されていないため、ドライバが実施している行為は、ドライバ要件レベルのレベル0に相当する行為とみなされる。
【0103】
自動運転レベルがレベル3になると、許容行為判別部X4の判別結果による許容行為の範囲は、ドライバ要件レベル3までの行為に設定される。このとき、HCU10の要求に基づき情報提示機器20により情報を提示するイベント(以下、情報提示イベント)として、イベントP1が実施される。イベントP1は、自動運転レベルがレベル3に移行したことを表す情報、及び許容行為の範囲がドライバ要件レベル3までの行為であることを表す情報をドライバへ提示するイベントである。こうした情報提示に対応して、ドライバは、運転以外の行為として、ドライバ要件レベル1の行為、レベル2の行為、レベル3の行為を徐々に実施するものとする。
【0104】
許容行為判別部X4は、未来予測可能な判別観点に基づき、許容行為の範囲について、ドライバ要件レベル2までの行為に狭まることを予測する。そうすると、情報提示イベントとして、イベントP2が実施される。イベントP2は、許容行為がドライバ要件レベル3からレベル2までの行為に狭まる予定である予告情報をドライバへ提示するイベントである。
【0105】
そして、現在許容される許容行為の範囲がドライバ要件レベル2までの行為に狭まると、情報提示イベントとして、イベントP3が実施される。イベントP3は、許容行為がドライバ要件レベル3からレベル2までの行為に狭まったことを表す情報をドライバへ提示するイベントである。
【0106】
こうしたイベントP2,P3に関わらず、警報設定時間以上、ドライバ要件レベル3の行為をドライバが継続すると、情報提示イベントとして、イベントW1が実施される。イベントW1は、ドライバ要件レベル3の行為を中止するように、ドライバに対して警報するイベントである。イベントW1に対応して、ドライバがドライバ要件レベル3の行為を中止し、例えばドライバ要件レベル1の行為に移行すると、退避設定時間のカウントは停止される。
【0107】
その後、許容行為の範囲がドライバ要件レベル3までの行為に拡がったとする。こうした状況下、ドライバがドライバ要件レベル4の行為、すなわち、レベル3の自動運転の実施が禁止される行為を実施していると判断された場合には、直ちにイベントW2が実施される。イベントW2は、ドライバ要件レベル4の行為を中止するように、ドライバに対して警報するイベントである。この警告は、ドライバの姿勢が最低限の安全姿勢を満たしていないことに対する警告であるといえる。
【0108】
イベントW2にも関わらず、ドライバが、退避設定時間以上、ドライバ要件レベル4の行為を継続すると、情報提示イベントとして、イベントM1が実施される。イベントM1は、運転制御がMRM制御に移行したことを表す情報をドライバへ提示するイベントである。これと共に、自動運転ECU40による運転制御はMRM制御へ移行する。以上により、
図4の作動例の説明を終了する。
【0109】
図5の作動例は、車両1が限定領域内から限定領域外へ移動するのに伴い、自動運転レベルがレベル3からレベル2へ移行する、いわゆる車両1からドライバへの運転交代の場面を示す。
【0110】
車両1が限定領域内を自動運転レベルがレベル3の状態で走行している。車両1から限定領域の境界までの距離が近づくにつれて、許容行為判別部X4による許容行為の範囲がドライバ要件レベル3までの行為から、段階的に狭くなる。
【0111】
許容行為の範囲がドライバ要件レベル3までの行為から狭められることが予定されると、情報提示イベントとして、イベントP4が実施される。イベントP4は、運転交代に備えて、運転以外の行為を中止するように推奨する情報をドライバへ提示するイベントである。
【0112】
こうしたイベントP4に対応して、ドライバが運転以外の行為を中止し、車両1が限定領域の境界へ接近すると、イベントC1が実施される。イベントC1は、車両1からドライバへの運転交代を要求する情報をドライバへ提示するイベントである。イベントC1に応じてドライバが運転を引き継ぐと、運転制御における自動運転レベルはレベル2以下となる。以上により、
図5の作動例の説明を終了する。
【0113】
(作用効果)
以上説明した第1実施形態の作用効果を以下に改めて説明する。
【0114】
第1実施形態によると、許容行為判別部X4によって判別された許容行為の判別結果に関する情報が情報提示機器20によって提示される。ドライバにとって車両1の走行環境等の状況の把握必要性が低下している自動運転機能の作動時において、ドライバが情報提示機器20を介して許容行為の判別結果に関する情報を得ることができる。故に、ドライバは、こうした情報を参考にすることで、自動運転機能の作動時に適切な行為を取り易くなる。
【0115】
また、第1実施形態によると、運転以外の行為のうち許容行為を表す情報が情報提示機器20によって提示される。許容行為が直接的に示されることにより、ドライバが当該行為を実施する際の安心感を高めることができる。
【0116】
また、第1実施形態によると、運転以外の行為のうち非許容行為を表す情報が情報提示機器20によって提示される。非許容行為が直接的に示されることにより、ドライバが運転以外の行為を実施する際に、非許容行為の実施を回避することの容易性を高めることができる。
【0117】
また、第1実施形態によると、許容行為は、走行環境に基づいて判別される。ドライバにとって車両1の走行環境の把握必要性が低下している自動運転機能の作動時において、ドライバに代わり、許容行為の判断における走行環境の考慮が補完的に実施される。故に、ドライバの運転以外の行為の実施における妥当性を高めることができる。
【0118】
また、第1実施形態によると、許容行為は、車両1が走行する道路の形状に基づいて判別される。すなわち、許容行為の判別結果は、ドライバが運転を引き継ぐ仮定における運転の引き継ぎ直後の運転行為の難易度に応じたものとなる。故に、運転交代後のドライバによる運転行為の安全性を高めつつ、ドライバに運転以外の行為を実施させることが可能となる。
【0119】
また、第1実施形態によると、車両1の走行する道路がカーブ形状であり、かつ、カーブ区間の長さが所定距離を超える場合に、許容行為と判別される範囲が狭く変更される。すなわち、走行する道路がカーブ形状であっても、カーブ区間が短い場合には、許容行為となる範囲は、ドライバ要件レベル3に維持される。故に、例えばドライバが背もたれを倒して寛いでいるシーンにおいて、短いカーブ区間を走行するたびに警告を受けるような事態は、回避される。一方で、カーブ区間が所定距離以上継続する場合、ドライバ要件レベルが低く変更されるため、ドライバへ向けた適切な警報が実施され得る。
【0120】
また、第1実施形態によると、許容行為は、車両1の走行シーンに基づいて判別される。すなわち、許容行為の判別結果は、ドライバへの突発的な運転交代の可能性に応じたものとなる。故に、運転交代時の安全性を高めつつ、ドライバに運転以外の行為を実施させることが可能となる。
【0121】
また、第1実施形態によると、許容行為は、ドライバの覚醒度に基づいて判別される。すなわち、許容行為の判別結果は、突発的な運転交代に対応するドライバの対応力に応じたものとなる。故に、運転交代時の安全性を高めつつ、ドライバに運転以外の行為を実施させることが可能となる。
【0122】
また、第1実施形態によると、許容行為は、ドライバのストレスに基づいて判別される。すなわち、許容行為の判別結果は、ドライバが運転を引き継ぐ仮定における引き継ぎ直後の運転行為の操作ミスの可能性に応じたものとなる。故に、運転交代後のドライバによる運転行為の安全性を高めつつ、ドライバに運転以外の行為を実施させることが可能となる。
【0123】
また、第1実施形態によると、複数の判別観点について個別の許容行為が暫定的に判別される。その後、各判別観点間にて共通して許容行為と判別された行為が、確定的な許容行為と判別される。複数の判別観点により多角的な判別が実施され、さらに、最小限の共通した行為が、確定的に許容行為と判別されるので、許容行為の判別における妥当性を格段に高めることができる。
【0124】
また、第1実施形態によると、許容行為判別部X4は、運転以外の行為におけるドライバの姿勢に応じて、運転以外の行為と、許容行為の許容度の高低とが関連付けられた判別指標としてのドライバ要件に基づき、許容行為を判別する。ドライバが「最低限の安全姿勢であり、かつ、緊急時運転交代可能な状態」を保つことができることを指針とした判別理論が比較的に簡潔な処理演算にて具現されることが可能となる。故に、妥当性の高い許容行為の判別を、容易に実現することができる。
【0125】
また、第1実施形態によると、許容行為判別部X4は、運転以外の行為における運転席ポジションに応じて、運転以外の行為と、許容行為の許容度の高低とが関連付けられた判別指標としてのドライバ要件に基づき、許容行為を判別する。この場合の運転席のポジションは、例えばリクライニングの角度である。ドライバが「最低限の安全姿勢であり、かつ、緊急時運転交代可能な状態」を保つことができることを指針とした判別理論が比較的に簡潔な処理演算にて具現されることが可能となる。故に、妥当性の高い許容行為の判別を、容易に実現することができる。
【0126】
また、第1実施形態によると、情報提示機器20を用いる許容行為を実現するための機能的な制限が情報提示機器20に加えられている場合に、制限の解除が要求される。故に、ドライバは、情報提示機器20を用いる許容行為を円滑に実施することができる。
【0127】
また、第1実施形態によると、情報提示機器20による情報提示に用いるデバイスは、ドライバが現在実施していると推定される運転以外の行為に応じて、視覚的情報を提示するデバイス及び聴覚的情報を提示するデバイスの中から選択される。こうした選択によって、提示する情報がよりドライバに認識され易くなる。認識され易い情報提示によって、適切な行為へドライバを誘導し易くなる。
【0128】
また、第1実施形態によると、ドライバが非許容行為を実施していると推定される場合、非許容行為を実施してはならない理由が情報提示機器20によって提示される。ドライバに理由を理解させることにより、適切な行為へドライバを誘導し易くなる。
【0129】
また、第1実施形態によると、ドライバが非許容行為を実施していると推定される場合、ドライバが現在実施している非許容行為を許容行為へ移行させるための助言が情報提示機器によって提示される。こうした助言により、ドライバの行為を円滑に許容行為へと移行させることができる。
【0130】
また、第1実施形態によると、ドライバが非許容行為を継続して実施していると推定される場合、ドライバへ向けた警報が情報提示機器20によって実施される。ドライバに警報を認識させることにより非許容行為の中止を促すことができる。
【0131】
また、第1実施形態によると、警報の実施と共に、自動運転機能を終了させる運転交代の予告が情報提示機器20によって提示される。ドライバにこのままだと自動運転機能が終了してしまうことを認識させることにより、非許容行為の中止促進効果を高めることができる。
【0132】
また、第1実施形態によると、警報の実施開始後、ドライバが非許容行為をさらに継続して実施していると推定される場合、車両1を強制的な退避が要求される。車両1を退避させることにより、自動運転機能の作動中にて不適切な非許容行為の継続状態を、強制的に回避することができる。
【0133】
また、第1実施形態によると、ドライバが許容行為を実施していると推定される場合、規制時間間隔を空けた上で、時々、許容行為の判別結果に関する情報が情報提示機器20により提示される。規制時間間隔を空けることにより、情報提示の高頻度化が規制されるので、ドライバが感じる情報提示の煩わしさを軽減することができる。
【0134】
また、第1実施形態によると、判別された許容行為の範囲が変化した場合に、許容行為の範囲の変化量が大きくなる程、情報提示機器20による情報提示がトーンアップする。ドライバの運転以外の行為への影響度に応じて、情報提示の強弱が適切に設定されるので、ドライバが感じる情報提示の煩わしさを軽減することができる。
【0135】
(第2実施形態)
図6に示すように、第2実施形態は第1実施形態の変形例である。第2実施形態について、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0136】
第2実施形態において許容行為判別部X4は、状態管理部Y1による自動運転レベルがレベル3になることに対応して、自動運転機能が連続的に作動する予定の連続作動区間を推定する。連続作動区間は、自動運転ECU40によって生成された予定走行ラインによって、自動運転レベルがレベル3の状態を維持して、車両1が走行可能であるひとかたまりの区間を意味する。
【0137】
さらに許容行為判別部X4は、未来予測可能な判別観点に基づき、連続作動区間内において許容行為の判別結果の許容度が最も低くなるポイントを推定する。第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、許容行為の判別結果は、ドライバ要件によって規定されている。したがって、ドライバ要件レベルが判別結果の許容度に対応する。すなわち、許容行為の判別結果の許容度が最も低くなるポイントは、許容行為として認められるドライバ要件レベルの上限が最も低くなるポイントである。許容行為判別部X4は、こうした連続作動区間の情報、許容度が最も低くなるポイントの情報、及び当該ポイントにおける許容行為の判別結果の情報を、情報提示内容制御部X8に提供する。
【0138】
そして、情報提示内容制御部X8は、連続作動区間に対応して自動運転機能が作動している間、一貫して、許容度が最も低くなるポイントに対する許容行為の判別結果に関する情報を、情報提示機器20に提示させる。
【0139】
例えば、当該ポイントにおいて、ドライバ要件レベル2までの行為が許容されている場合、連続作動区間において一時的にドライバ要件レベル3までの行為が許容される状態になったとする。この一時的な状態においても、情報提示内容制御部X8は、ドライバ要件レベル2までの行為が許容されていることを表す情報を、情報提示機器20に提示させる。
【0140】
次に、記憶部13に記憶され、処理部11に実行される情報提示プログラムに基づき、情報提示する方法を、
図6のフローチャートの各ステップに基づき説明する。
【0141】
S20は、第1実施形態のS10と同様である。S20にて肯定判定が下されると、S21へ移る。S20にて否定判定が下されると、例えば所定の再判定時間が経過した後に、再度S20の処理が実施される。
【0142】
S21では、許容行為判別部X4は、連続作動区間を推定する。S21の処理後、S22へ移る。
【0143】
S22では、許容行為判別部X4は、連続作動区間内において、許容行為として認められるドライバ要件レベルの上限が最も低くなるポイントを推定する。S22の処理後、S23へ移る。
【0144】
S23では、情報提示内容制御部X8は、S22にて推定されたポイントにおける許容行為の判別結果に関する情報を情報提示機器20に提示させる。ドライバは、許容行為の判別結果に関する情報を得ることができる。S23を以て一連の処理を終了する。あるいは、S23の処理後、第1実施形態のS14~S17に相当する処理を実施してもよい。
【0145】
以上説明した第2実施形態によると、連続作動区間において、提示される許容行為の範囲が頻繁に変更され、ドライバが実施する運転以外の行為を都度変更しなければならない事態の発生を抑制できる。ドライバは、連続作動区間に最適化され、かつ一貫した運転以外の行為を、継続的に実施できるようになる。
【0146】
(第3実施形態)
図7及び
図8に示すように、第3実施形態は第1実施形態の変形例である。第3実施形態について、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0147】
本開示の第3実施形態では、
図7に示すように、機能制御装置が制御対象機器CEの機能を制御する。第3実施形態において機能制御装置は、車両1に用いられる自動運転ECU340となっている。第3実施形態の自動運転ECU340は、自動運転の実現だけでなく、自動運転レベルがレベル3の状態でのドライバによる運転以外の行為の適切な実施を支援するための制御対象機器CEの機能を、制御可能となっている。
【0148】
ここで制御対象機器CEは、ドライバの運転以外の行為を支援可能に構成された1つ以上の車載機器が含まれる。一例として、運転席38、ディスプレイ21、スピーカ22等の複数の車載機器が制御対象機器CEに含まれている。
【0149】
自動運転ECU340は、第1実施形態の自動運転ECU40に設けられた状態管理部Y1及び運転制御部Y2等の機能部に加えて、走行環境推定部Y3、覚醒度推定部Y4、ストレス推定部Y5、許容行為判別部Y6、機能制限部Y7等の機能部を有する。
【0150】
走行環境推定部Y3、覚醒度推定部Y4、ストレス推定部Y5及び許容行為判別部Y6は、第1実施形態のHCU10に設けられた走行環境推定部X1、覚醒度推定部X2、ストレス推定部X3及び許容行為判別部X4と同様である。ただし、許容行為判別部Y6による許容行為の判別結果は、機能制限部Y7に提供される。
【0151】
機能制限部Y7は、許容行為の判別結果に基づいて、ドライバに対して非許容行為を実現させるような制御対象機器CEの機能を制限する。機能制限部Y7は、運転席38のリクライニングが可能な角度を、許容行為の判別結果に基づいて制限する。例えば、許容行為判別部Y6によりドライバ要件レベル2までの行為が許容されている場合には、機能制限部Y7は、運転席38に設けられたリクライニング駆動装置を通じて、運転席38のリクライニングの角度が45度を超えることを制限する。リクライニングの角度制限により、ドライバは、突発的な運転交代原因に備えるために求められる安全姿勢を、容易に維持可能となる。
【0152】
機能制限部Y7は、ディスプレイ21の表示内容を、許容行為の判別結果に基づき制限する。例えば、許容行為判別部Y6によりドライバ要件レベル1までの行為が許容されている場合には、機能制限部Y7は、ディスプレイ21(例えばCID)に対して両手でのタッチ操作が必要なゲームの機能を、制限する。ディスプレイ21の表示内容の制限により、ドライバは、状況に応じた緊急時運転交代可能な状態を、容易に維持可能となる。
【0153】
機能制限部Y7は、スピーカ22の音量を、許容行為の判別結果に基づき制限する。例えば、許容行為判別部Y6によりドライバ要件レベル1までの行為が許容されている場合には、機能制限部Y7は、スピーカ22の音量が大音量とならないように、スピーカ22が運転以外の行為の実施に関連して出力可能な音量の上限を設定する。音量の上限が設定されることにより、ドライバは、状況に応じた緊急時運転交代可能な状態を、容易に維持可能となる。
【0154】
次に、記憶部43に記憶され、処理部41に実行される機能制御プログラムに基づき、制御対象機器CEの機能を制限する方法を、
図8のフローチャートの各ステップに基づき説明する。
【0155】
S30~S32にて実施される各処理は、第1実施形態のS10~S12に実施される各処理と実質的に同一である。S32の処理後、実施されるステップは、S33へ移る。
【0156】
S33では、機能制限部Y7は、S32での許容行為の判別結果に基づき、運転席38、ディスプレイ21及びスピーカ22に対して、必要に応じて機能を制限する。S33を以て一連の処理を終了する。
【0157】
なお、第3実施形態においてHCU10には、許容行為の判別結果に関する情報を情報提示機器に提示させる機能が備わっていてもよく、備わっていなくてもよい。
【0158】
以上説明した第3実施形態によると、許容行為判別部Y6によって判別された許容行為に基づき、運転以外の行為のうち許容行為以外の行為を実現可能な制御対象機器CEの機能は、制限される。ドライバにとって車両1の走行環境等の状況の把握必要性が低下している自動運転機能の作動時において、ドライバがうっかり許容行為以外の行為を実施してしまう事態は、機能的制限によって抑制される。故に、ドライバは、自動運転機能の作動時に適切な行為を取り易くなる。
【0159】
(第4実施形態)
図9及び
図10に示す第4実施形態による自動運転ECU40及びHCU10の作動例は、
図4及び
図5に示す第1実施形態の変形例である。
図9及び
図10においても、実線は、ドライバによって実施されている行為が該当するドライバ要件レベルを示しており、一点鎖線は、許容行為判別部X4の判別結果であるドライバ要件レベルとして示している。
【0160】
図9に示す作動例において、情報提示内容制御部X8は、レベル3自動運転への移行を通知するイベントP1、並びにドライバ要件レベル2への変更を予告及び通知するイベントP2,P3を順次実施する。さらに、情報提示内容制御部X8は、許容行為判別部X4によって判別されたドライバ要件レベルを超えた行為をドライバが継続実施すると、実施中の行為の中止を要請するイベントW1を実施する。
【0161】
許容行為判別部X4は、情報提示内容制御部X8によって許容されない行為の警告が実施された場合、予め規定された所定の期間、ドライバ要件レベルを所定のレベルに固定する。具体的に、許容行為判別部X4は、車両1のメイン電源又はイグニッションがオフされるまでの期間(以下、制限期間LT)とし、制限期間LTのうちはドライバ要件レベルを警告が実施されない通常のケース(
図4参照)よりも低く設定する。許容行為判別部X4は、制限期間LTの終了まで、ドライバ要件レベルを最低のレベル1に固定する。情報提示内容制御部X8は、制限期間LTにて、許容行為判別部X4によってドライバ要件レベルが意図的に低く固定されていることを表す情報をドライバへ提示する。
【0162】
図10に示す作動例のシーンでは、許可エリア(限定領域)の終了予定又は使用条件からの逸脱により、状態管理部Y1は、自動運転レベルをレベル3からレベル2以下に引き下げることを決定する。加えて、状態管理部Y1は、ドライバが許容行為以外の行為を継続して実施していると推定される場合にも、レベル3の自動運転の終了を決定する。状態管理部Y1は、自動運転ECU40からドライバへの運転交代が行われる時刻(イベントC1参照)又は地点を基準とし、運転交代が行われる以前に交代準備区間STRを設定する。状態管理部Y1は、ドライバ要件レベルを狭めることを通知するイベントP4が完了する時刻又は地点から、運転交代が開始される時刻又は地点までを交代準備区間STRとする。
【0163】
許容行為判別部X4は、運転交代以前の交代準備区間STRにおいて、ドライバ要件を所定レベル以下に固定する。一例として、許容行為判別部X4は、情報提示内容制御部X8によるイベントP4の情報提示の後に、許容行為と判別する範囲を、ドライバ要件レベル3等のから、交代準備範囲として予め設定されたドライバ要件レベル1又は0まで狭くする。許容行為判別部X4は、ドライバ要件レベルを最低のレベル1以下に固定した状態を継続した後、運転以外の行為を禁止したドライバ要件レベル0に遷移させる。
【0164】
情報提示内容制御部X8は、許可エリアの終了、使用条件からの逸脱、及び不適切な行為の継続等により、レベル3の自動運転の終了予定を把握した場合、イベントP4での情報提示において、自動運転機能を終了させる運転交代の予告を少なくとも実施する。情報提示内容制御部X8は、予告した自動運転終了以前の交代準備区間STRにおいて、交代準備範囲まで制限されたドライバ要件レベルを表す情報をドライバに提示する。さらに、情報提示内容制御部X8は、イベントC1にて、運転交代を要請する情報をドライバに提示する。
【0165】
ここまで説明した第4実施形態でも、第1実施形態と同様の効果を奏し、ドライバは、許容行為の判別結果に関する情報を得ることができるため、適切な行為を取り易くなる。
【0166】
加えて第4実施形態によると、許容されていない行為に対する警告が提示された場合には、それ以降の制限期間LTにおいて、ドライバ要件レベルがレベル1に固定される。こうした制裁制御によれば、許容されないセカンドタスクを実施しないようにドライバを意識付けることが可能になる。その結果、ドライバによる自動運転機能の過信が回避され得るため、ドライバは、自動運転期間において適切な行為を取り易くなる。
【0167】
また第4実施形態によると、情報提示内容制御部X8は、許可エリアの終了予定を把握した場合に、自動運転機能を終了させる運転交代の予告を情報提示機器20に提示させる。故に、許容行為判別部X4によって許容行為の範囲が狭められるのに合わせて、ドライバに運転以外の行為を終了させて、運転操作を円滑に開始させることが可能になる。
【0168】
さらに第4実施形態によると、許容行為判別部X4は、自動運転機能からドライバへの運転交代が行われる以前の交代準備区間STRにおいて、許容行為と判別する範囲を所定の交代準備範囲まで狭くする。故に、実施中の運転以外の行為を早期に終了させて、円滑な運転操作の開始をドライバに促すことが可能になる。
【0169】
(第5実施形態)
図11~
図14に示す第5実施形態は、第1実施形態のさらに別の変形例である。
図11に示す第5実施形態の運転支援ECU37には、デッドマン機能部Z1が設けられている。デッドマン機能部Z1は、覚醒度推定部X2、ストレス推定部X3及び乗員監視部X5等に類似する機能部である。デッドマン機能部Z1は、DSM31から取得するドライバの状態情報に基づき、急病等の予め予測困難な理由によってドライバが運転困難な状態となったことを自動で検知する異常検知装置として機能する。デッドマン機能部Z1は、ドライバが運転困難状態に陥ったことを診断するため、ドライバの上体の傾き及び頭部の上体に対する傾き等を検出し、ドライバの姿勢崩れを把握する。デッドマン機能部Z1は、ドライバの姿勢崩れが継続した場合に、運転困難な状態であると判断し、異常状態を示す検知結果を通信バス99に出力する。尚、以下の説明におけるドライバの異常状態は、ドライバの姿勢が運転に不適切な姿勢に崩れた状態を示す。
【0170】
HCU10は、レベル3の自動運転におけるドライバ要件を確認する各機能部に加えて、ドライバ情報取得部X9をさらに有する。ドライバ情報取得部X9は、デッドマン機能部Z1による異常状態の検知結果を取得し、覚醒度推定部X2、ストレス推定部X3及び乗員監視部X5等と併行して、ドライバの状態を把握する。ドライバ情報取得部X9は、ドライバの運転困難な状態を把握すると、異常が検知されたことの報知の実施を情報提示内容制御部X8に要求する。情報提示内容制御部X8は、車室内のドライバ及び同乗者へ向けて、異常検知中である旨の報知を、音声及び表示等によって実施する。
【0171】
ここで、周辺監視義務のないレベル3の自動運転期間であれば、上述したように、睡眠、飲酒、シートベルト外すといった特異行為を除く運転以外の行為が車室内のドライバに許容され得る。そのため、自動運転期間におけるドライバは、例えば運転席の背もたれをリクライニングさせ、リラックスした姿勢で過ごす場合がある。こうした姿勢は、自動運転中のドライバ要件としては問題がない一方で、運転姿勢としては悪い状態となる。故に、デッドマン機能部Z1は、自動運転中のリラックスしたドライバの姿勢状態を、ドライバが姿勢崩れを起こしており運転困難な状態であると誤認識し、異常状態を示す検知結果を出力する可能性がある。
【0172】
こうした問題に対処するため、HCU10は、レベル3の自動運転期間中にドライバ情報取得部X9にて異常状態(姿勢崩れ)を示す検知結果を取得した場合、手動運転時又はレベル2以下の自動運転時とは異なる報知プロセスを実施する。以下、レベル3の自動運転中に異常状態を示す検知結果が取得された場合のHCU10及び自動運転ECU40の作動例を、
図12に基づき、
図11を参照しつつ説明する。
【0173】
情報提示内容制御部X8は、DSM31及びデッドマン機能部Z1の連携によるドライバの異常検知が有効な状態下、レベル3自動運転への移行が実施される場合、情報提示機器20による情報提示イベントとして、イベントN1を実施する。イベントN1は、レベル3自動運転への移行を報知するイベントP1以前、又はイベントP1と実質同時に開始される。イベントN1の情報提示は、イベントP1の情報提示と併行実施されてもよい。イベントN1では、DSM31による運転姿勢の検出が可能な姿勢をとるようにドライバに要請する情報提示が実施される。
【0174】
レベル3の自動運転期間にてドライバの運転姿勢が悪い場合、デッドマン機能部Z1からドライバ情報取得部X9にドライバの異常状態(姿勢崩れ)を示す検知結果が出力される。情報提示内容制御部X8は、ドライバ情報取得部X9による検知結果の取得に基づき、情報提示機器20による情報提示イベントN2を実施する。イベントN2では、崩れたドライバの姿勢がレベル3自動運転中に許容行為として許容される範囲内の姿勢であっても、ドライバの姿勢の崩れに関する姿勢異常情報が同乗者も含めた乗員へ向けて提示される。イベントN2では、ドライバの異常の有無を回答させる報知と、ドライバに異常の可能性があると判断した理由を示す報知とが少なくとも実施される。
【0175】
退避制限要求部X7aは、第1実施形態の退避要求部X7と実質同一の機能に加えて、走行制御に機能的な制限をかけるよう自動運転ECU40に要求する機能をさらに有している。退避制限要求部X7aは、異常状態を示す検知結果に基づき、イベントN2と実質同時に、走行制御の機能的な制限の実施を自動運転ECU40に要求する。具体的に、退避制限要求部X7aは、速度の抑制要求を自動運転ECU40に出力する。自動運転ECU40は、速度抑制要求に基づき、レベル3の自動運転の通常の設定速度よりも遅い(低い)設定速度に切り替え、減速制御を試みる。尚、ドライバの運転姿勢が悪いことで減速制御が実施されても、レベル3の自動運転は継続される。
【0176】
情報提示内容制御部X8は、イベントN2による異常の有無の回答要求の提示後、操作デバイス24へのユーザ操作の入力の有無を判定する。操作デバイス24は、ドライバ及び同乗者等によるユーザ操作を受け付ける入力部であり、例えばステアスイッチ、操作レバー及び音声入力装置等である。ドライバ及び同乗者等の乗員は、ドライバに異常がないことを回答するユーザ操作、又はドライバに異常があることを回答するユーザ操作を、操作デバイス24に入力可能である。
【0177】
情報提示内容制御部X8は、ドライバに異常がないことを回答するユーザ操作の入力情報を取得した場合、情報提示機器20による情報提示イベントN3を実施する。情報提示内容制御部X8は、イベントN3において、レベル3の自動運転の継続を示す報知と、運転姿勢の改善を促す報知とを実施する。イベントN3での情報提示では、デッドマン機能部Z1による誤認識を回避できる程度までの運転姿勢の改善が、ドライバに促される。
【0178】
情報提示内容制御部X8は、イベントN3による運転姿勢の改善要求の提示後、ドライバ情報取得部X9によって取得される検知結果の内容を参照し、ドライバの運転姿勢が改善されたか否かを判定する。情報提示内容制御部X8にてドライバの運転姿勢が改善されたと判定された場合、退避制限要求部X7aから自動運転ECU40に、速度抑制をキャンセルする要求が出力される。その結果、自動運転ECU40は、減速制御を終了し、通常の設定速度での走行を開始する。
【0179】
一方、情報提示内容制御部X8は、ドライバの運転姿勢が改善されない場合、運転姿勢の改善要求の提示を繰り返し実施する。この場合、自動運転ECU40による速度抑制制御も継続される。そして、情報提示内容制御部X8による改善要求にドライバが応じない場合、退避制限要求部X7aは、運転姿勢の改善が見込めないと判断し、自動運転ECU40にMRM制御への移行を要求する。情報提示内容制御部X8は、退避制限要求部X7aによるMRM制御を開始判断に基づき、情報提示イベントM1を実施し、運転制御がMRM制御に移行したことを表す情報をドライバへ提示する。
【0180】
情報提示内容制御部X8は、イベントN2による異常の有無の回答要求の提示後、ドライバに異常があることを回答するユーザ操作の入力情報を取得した場合、又は乗員からの回答がなかった場合、ドライバが運転困難状態にある旨の確定判定を実施する。退避制限要求部X7aは、情報提示内容制御部X8の確定判定に基づき、自動運転ECU40にMRM制御への移行を要求する。以上により、ドライバに急病等が生じた場合には、自動運転ECU40によるMRM制御が開始される。この場合、情報提示内容制御部X8は、情報提示イベントM1を実施し、MRM制御への移行を主に同乗者へ向けて報知する。
【0181】
さらに、
図11に示す第5実施形態の乗員監視部X5は、ドライバの存在に加えて、ドライバを除く車両1の乗員である同乗者の有無を把握する。乗員監視部X5は、助手席の座面等に設けられた座席センサ32の検出情報を取得し、助手席に同乗者が着座しているか否かを判定する。
【0182】
情報提示内容制御部X8は、乗員監視部X5によって同乗者の存在が把握されている場合、同乗者がドライバの状態を見ているとの前提に基づき、姿勢異常情報の提示を保留する。すなわち、ドライバ情報取得部X9によってドライバの異常状態を示す検知結果が取得されていても、情報提示内容制御部X8は、イベントN2の情報提示を直ちには実施しない。これにより、ドライバの異常の有無の回答要求の提示が、待機状態となる。
【0183】
情報提示内容制御部X8は、姿勢異常情報の提示の保留後、デッドマン機能部Z1による異常検知の要因となる運転姿勢の崩れが改善されない場合には、ドライバの異常の有無を回答させるイベントN2の情報提示を実施する。すなわち、ドライバの姿勢の改善がドライバ情報取得部X9によって把握されない状態の継続に基づき、情報提示内容制御部X8は、姿勢異常情報の提示の保留を解除する。この場合の情報提示は、ドライバだけでなく、助手席の同乗者へ向けても実施される。同乗者がいない場合の情報提示と同様に、助手席の同乗者には、ドライバに異常の可能性があると判断した理由が、回答要求と共に報知される。
【0184】
許容行為判別部X4は、レベル3の自動運転期間にて、ドライバ要件レベルをレベル1~3のいずれかに設定した場合、こうした許容行為の判別結果に基づき、ドライバが異常状態にあると判定する基準の緩和をデッドマン機能部Z1に要求する。デッドマン機能部Z1は、許容行為判別部X4からの緩和要求に基づき、レベル3の自動運転期間において、異常状態と判定し難くなるように、判定基準となる閾値を調整する。一例として、デッドマン機能部Z1は、所定時間(例えば、5秒)の姿勢崩れの継続によって異常状態と判定していた場合、この所定時間をより長い時間(例えば、10秒)に変更する閾値調整を実施する。以上により、デッドマン機能部Z1の判定基準が、レベル3の自動運転に最適化される。尚、判定基準(閾値)の緩和は、車両1が使用される国又は地域におけるデッドマン装置関連の法規及びガイドラインの範囲内で実施されることが望ましい。
【0185】
次に、ここまで説明したデッドマン関連の各イベントの情報提示を行う情報提示処理の詳細を、
図13及び
図14に示すフローチャートに基づき、
図11及び
図12を参照しつつ、以下説明する。
図13及び
図14に示す情報提示処理は、レベル3の自動運転開始に基づき、HCU10によって開始される。
【0186】
S51では、ドライバの異常状態を示す検知結果がドライバ情報取得部X9に取得されたか否かを判定する。異常状態を示す検知結果の取得がない場合、S51の判定を繰り返し、姿勢崩れの検知による異常状態の発生を待機する。一方、S51にて、異常状態を示す検知結果が取得されたと判定した場合、S52に進む。
【0187】
S52では、同乗者の有無を判定する。S52にて、同乗者が存在すると判定した場合、S55に進む。一方、S52にて、同乗者が存在しないと判定した場合、S55による情報提示を保留するため、S53に進む。S53では、ドライバの姿勢の改善がデッドマン機能部Z1及びドライバ情報取得部X9にて把握されたか否かを判定する。S53にて、ドライバの姿勢改善があったと判定した場合、S51に戻る。
【0188】
対して、S53にて、姿勢改善が把握されないと判定した場合、S54に進む。S54では、ドライバの姿勢崩れ(異常状態)を検知した後の経過時間が所定時間を超えたか否かを判定する。S54にて、姿勢崩れの検知後、所定時間が経過する前であると判定した場合、S53に戻る。一方、S54にて、姿勢崩れが検知されてから所定時間が経過した、言い替えると、ドライバの姿勢改善が把握されない状態が所定時間継続したと判定した場合、S55に進む。以上により、姿勢異常情報の提示の保留が解除される。
【0189】
S55では、上述したイベントN2の情報提示、すなわち、ドライバ異常の有無の回答要求の提示と、異常可能性を判断した理由の提示とを実施する。加えてS55では、自動運転ECU40へ向けて、設定速度の抑制による減速制御の実施要求を出力する。ここで、イベントN2の情報提示と、減速制御の実施要求を出力とは、異なるタイミングで実施されてもよい。一例として、イベントN2の情報提示後に、減速制御の実施要求が出力される。こうした変形例であれば、乗員は、ドライバの異常状態の検知を知ったうえで、減速制御を体感する。故に、減速制御に伴う挙動変化に対し、乗員のパニックは発生し難くなる。また、速度抑制制御の実施要求後に、イベントN2の情報提示が実施されてもよい。
【0190】
S55では、ドライバに異常があるか否かの回答結果を判定する。S56にて、ドライバに異常はなく、運転困難な状態でないとの回答があった場合、S58に進む。一方、ドライバに異常があり、運転困難な状態であるとの回答があった場合、S61に進む。さらに、乗員による回答の入力がない場合、S57に進む。
【0191】
S57では、回答要求を開始してからの経過時間が所定時間を超えたか否かを判定する。S57にて、回答要求の開始後、所定時間が経過する前であると判定した場合、S56に戻る。一方、S57にて、所定時間が経過したと判定した場合、S61に進む。
【0192】
S58では、S55にて開始したイベントN2による姿勢異常情報の提示を終了させ、上述したイベントN3の情報提示を実施する。具体的に、S58では、レベル3の自動運転の継続を示す報知と、運転姿勢の改善を促す報知とを順次実施し、S59に進む。自動運転の継続報知と運転姿勢の改善要求との実施順序は、適宜入れ替えられてよい。S59では、ドライバの姿勢崩れが改善されたか否かを判定する。S59にて、ドライバの姿勢崩れが改善されたと判定した場合、S62に進む。S62では、S55にて要求した走行制御の機能制限の解除、すなわち、減速制御の解除を自動運転ECU40に要求し、一連の処理を終了する。
【0193】
一方、S59にて、ドライバの姿勢崩れが改善されていないと判定した場合、S60に進む。S60では、運転姿勢の改善要求を開始してからの経過時間が所定時間を超えたか否かを判定する。S60にて、改善要求の開始後、所定時間が経過する前であると判定した場合、S59に戻る。一方、S60にて、所定時間が経過したと判定した場合、S61に進む。S61では、姿勢異常情報等の提示を終了し、上述したイベントW1の情報提示を実施する。具体的に、S61では、運転制御のMRM制御への移行が報知される。さらに、S61では、MRM制御への移行要求が自動運転ECU40へ向けて出力される。以上により、一連の処理が終了される。
【0194】
ここまで説明した第5実施形態でも、第1実施形態と同様の効果を奏し、ドライバは、許容行為の判別結果に関する情報を得ることができるため、適切な行為を取り易くなる。
【0195】
加えて第5実施形態によると、ドライバの異常状態を示す検知結果がドライバ情報取得部X9によって取得される。その結果、レベル3の自動運転中にドライバが急病等で運転困難な状態となった場合でも、レベル3の自動運転からMRM制御への確実な移行が実行可能になる。
【0196】
また第5実施形態によると、レベル3の自動運転機能の作動時にドライバの姿勢の崩れを示す検知結果が取得された場合、崩れたドライバの姿勢が許容行為として許容される範囲内の姿勢であっても、姿勢異常情報が情報提示機器に提示される。故に、急病による姿勢崩れが自動運転中のドライバ要件を満たしていても、ドライバ等の乗員へ向けた体調確認の問い合わせが実施され得る。その結果、レベル3の自動運転中であっても、デッドマン機能部Z1を主体としたデッドマンシステムを正常に作動させることが可能になる。
【0197】
さらに第5実施形態によると、運転困難な状態か否かの回答の入力が乗員に要求された後、当該入力の要求に対して回答があった場合に、姿勢異常情報の提示が終了される。故に、ドライバの運転困難状態が確定した後は、MRM制御の状態等の有用性の高い情報を、不安を抱えた同乗者へ向けて分かり易く提示することが可能になる。
【0198】
加えて第5実施形態によると、レベル3の自動運転機能の作動時にドライバの姿勢の崩れを示す検知結果が取得された場合、崩れたドライバの姿勢が許容行為として許容される範囲内の姿勢であっても、走行制御に機能的な制限が加えられる。故に、急病による姿勢崩れが自動運転中のドライバ要件を満たしていても、自動運転ECU40は、自動運転を継続しつつ、MRM制御に移行し易い走行状態に予め移行させておくことができる。その結果、ドライバが本当に運転困難な状態となっていた場合、レベル3の自動運転からMRM制御への移行が円滑に実施され得る。
【0199】
また第5実施形態によると、ドライバの姿勢の改善がドライバ情報取得部X9にて把握された場合、走行制御の機能的な制限の解除が自動運転ECU40に要求される。故に、ドライバの姿勢崩れが改善された場合、車両1の走行状態は、通常のレベル3の自動運転による走行状態に復帰する。故に、デッドマンシステムが有効な車載システムであっても、自動運転機能の利便性が損なわれ難い。
【0200】
さらに第5実施形態によると、同乗者の存在が把握されている場合、異常状態か否かの回答要求を含む姿勢異常情報の提示が保留される。このように、同乗者が存在する場合、同乗者がドライバを見ることができる。故に、ドライバの姿勢崩れを厳密に報知しなくても、ドライバに生じた不測の事態への迅速な対応が可能になる。以上によれば、頻繁な回答要求によって乗員に煩わしさを感じさせてしまう事態が回避される。
【0201】
加えて第5実施形態によると、同乗者の存在が把握されていた場合でも、ドライバの姿勢の改善されない状態が継続した場合、姿勢異常情報の提示の保留が解除される。故に、ドライバが急病となり、同乗者による対処が困難となるケースでは、同乗者がいない場合と同様に、デッドマンシステムを正常に作動させて、MRM制御に移行させることが可能になる。
【0202】
また第5実施形態によると、レベル3の自動運転中にドライバに許容される許容行為の判別結果に基づき、許容行為判別部X4からデッドマン機能部Z1に、異常状態を判定する基準の緩和が要求される。こうした判定基準の調整処理によれば、自動運転中でのドライバのリラックスした姿勢が急病による姿勢崩れと誤認され難くなる。その結果、頻繁な回答要求の提示によって乗員に煩わしさを感じさせてしまう事態が回避される。
【0203】
尚、第5実施形態において、乗員監視部X5が「乗員把握部」に相当し、退避制限要求部X7aが「制御要求部」に相当し、デッドマン機能部Z1が「異常検知装置」に相当する。
【0204】
(他の実施形態)
以上、複数の実施形態について説明したが、本開示は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0205】
具体的に変形例1としては、許容行為判別部X4,Y6による判別観点は、1つのみであってもよい。
【0206】
変形例2としては、許容行為判別部X4,Y6は、ニューラルネットワークを主体として構築された学習済みの人工知能モデルを用いて、許容行為を判別してもよい。例えば、走行環境情報、覚醒度情報及びストレス情報を含む入力データと、これらに対応した許容行為の判別結果を含む出力データとの対からなる教師データを用いて、予め人工知能モデルを学習させておくことができる。こうした学習済み人工知能モデルによって、複数の判別観点に対して個別の暫定的な判別結果を算出する必要なく、複数の判別観点を総合的に評価することができる。
【0207】
変形例3としては、許容行為判別部X4,Y6は、未来予測可能な判別観点に基づき、目的地までの走行経路における許容行為の範囲の推移を予測しなくてもよい。
【0208】
変形例4としては、許容行為判別部X4,Y6は、例えば自動運転レベル3の自動運転機能の作動開始時に、目的地までの走行経路における許容行為の範囲の推移を予測し、その後、ドライバに現在許容される許容行為を判別しない構成となっていてもよい。
【0209】
変形例5としては、情報提示機器20及び制御対象機器CEの少なくとも一方に、車両1に持ち込まれる機器(例えばスマートフォン)等が含まれていてもよい。
【0210】
第1,2実施形態に関する変形例6としては、情報提示機器20に、例えば運転席を振動させるバイブレータ等、触覚的情報を提示するデバイスが補助的に含まれていてもよい。
【0211】
上記第5実施形態の変形例7では、同乗者が把握される場合の姿勢異常情報の提示の保留が実施されない。また、上記第5実施形態の変形例8では、許容行為判別部X4からデッドマン機能部Z1へ基準緩和を要求する処理が省略される。さらに、上記第5実施形態の変形例9では、ドライバへ向けた姿勢異常情報の提示が省略される。変形例9では、デッドマン機能部Z1とHCU10との連携処理として、許容行為判別部X4からデッドマン機能部Z1へ基準緩和を要求する処理のみが実施される。
【0212】
上記第5実施形態の変形例10によるデッドマン機能部Z1は、DSM31によるドライバ状態情報に加えて、車両挙動及び運転行動等の情報を、ドライバの異常検知に用いることができる。また、変形例11によるデッドマン機能部Z1は、運転支援ECU37とは別の一つの独立した車載ECUに実装され、ドライバの異常状態を示す検知結果を通信バス99に出力する。さらに、変形例12によるデッドマン機能部Z1は、DSM31の制御回路に実装され、ドライバの状態情報と共に、異常状態を診断した検知結果を通信バス99に出力する。
【0213】
変形例13としては、HCU10及び自動運転ECU40,340によって提供されていた各機能は、ソフトウエア及びそれを実行するハードウエア、ソフトウエアのみ、ハードウエアのみ、あるいはそれらの複合的な組み合わせによっても提供可能である。さらに、こうした機能がハードウエアとしての電子回路によって提供される場合、各機能は、多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によっても提供可能である。
【0214】
変形例14としては、上述の情報提示及び機能制御を実現可能なプログラム等を記憶する記憶媒体の形態も、適宜変更されてよい。例えば記憶媒体は、回路基板上に設けられた構成に限定されず、メモリカード等の形態で提供され、スロット部に挿入されて、HCU10又は自動運転ECU40,340の制御回路に電気的に接続される構成であってもよい。さらに記憶媒体は、HCU10又は自動運転ECU40,340へのプログラムのコピー基となる光学ディスク及びハードディスク等であってもよい。
【0215】
変形例15としては、第3実施形態において自動運転ECU340に設けられていた機能制限部Y7が第1実施形態のHCU10に設けられてもよい。第1実施形態においてHCU10に設けられていた情報提示内容制御部X8が第3実施形態の自動運転ECU340に設けられていてもよい。すなわち、許容行為判別部X4,Y6を利用した情報提示及び機能制限が、1つの電子制御装置により複合的に実現されていてもよい。
【0216】
変形例16としては、情報提示制御装置は、車両1に搭載されていなくてもよい。例えば、情報提示制御装置がHCU10である場合、HCU10は、車両1に搭載されず、車両1の外に固定配置されているか、又は他車両に搭載されていてもよい。こうした変形例16では、情報提示機器20は、インターネット、路車間通信、車車間通信等の通信によって遠隔制御される。同様に、機能制御装置が車両1に搭載されていなくてもよい。
【0217】
変形例17としては、車両1は、それぞれの国及び地域の道路交通法に応じて最適化されてよい。さらに情報提示制御装置によって提示される情報、及び機能制御装置によって制限される機能は、それぞれの国及び地域の道路交通法に応じて最適化されてよい。
【0218】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウエア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウエア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
ここまで説明した実施形態及び変形例から把握される技術的思想を、以下に「付記」として記載する。
(付記1-1)
ドライバに代わって運転行為を実施可能な自動運転機能を備える車両(1)に用いられ、前記ドライバへ向けて情報を提示する情報提示機器(20)を制御する情報提示制御装置であって、
前記自動運転機能の作動時に前記ドライバにより実施され得る前記運転行為とは異なる運転以外の行為のうち、前記ドライバに許容される許容行為を判別する許容行為判別部(X4)と、
前記許容行為の判別結果に関する情報を前記情報提示機器に提示させる情報提示内容制御部(X8)と、を備える情報提示制御装置。
(付記1-34)
ドライバに代わって運転行為を実施可能な自動運転機能を備える車両(1)に用いられ、制御対象機器(CE)の機能を制御する機能制御装置であって、
前記自動運転機能の作動時に前記ドライバにより実施され得る前記運転行為とは異なる運転以外の行為のうち、前記ドライバに許容される許容行為を判別する許容行為判別部(Y6)と、
前記運転以外の行為のうち前記許容行為以外の行為を実現可能な前記制御対象機器の機能を制限する機能制限部(Y7)と、を備える機能制御装置。
(付記2-39)
ドライバに代わって運転行為を実施可能な自動運転機能を備える車両(1)に用いられ、制御対象機器(CE)の機能を制御する機能制御装置であって、
前記自動運転機能の作動時に前記ドライバにより実施され得る前記運転行為とは異なる運転以外の行為のうち、前記ドライバに許容される許容行為を判別する許容行為判別部(Y6)と、
前記運転以外の行為のうち前記許容行為以外の行為を実現可能な前記制御対象機器の機能を制限する機能制限部(Y7)と、を備え、
前記制御対象機器は、前記ドライバが着座する運転席(38)を含み、
前記機能制限部は、前記運転席のリクライニングが可能な角度を、前記許容行為の判別結果に応じて制限する機能制御装置。
(付記2-40)
前記制御対象機器は、前記ドライバへ向けて表示を行なうディスプレイ(21)を含み、
前記機能制限部は、前記ディスプレイの表示内容を、前記許容行為の判別結果に応じて制限する付記39に記載の機能制御装置。
(付記2-41)
前記制御対象機器は、前記ドライバへ向けて音を出力するスピーカ(22)を含み、
前記機能制限部は、前記スピーカの音量を、前記許容行為の判別結果に応じて制限する付記39又は40に記載の機能制御装置。
【符号の説明】
【0219】
1:車両、10:HCU(情報提示制御装置)、20:情報提示機器、21:ディスプレイ(デバイス)、22:スピーカ(デバイス)、38:運転席、340:自動運転ECU(機能制御装置)、CE:制御対象機器、STR:交代準備区間、X4,Y6:許容行為判別部、X5:乗員監視部(乗員把握部)、X7:退避要求部、X7a:退避制御要求部(制限要求部)、X8:情報提示内容制御部、X9:ドライバ情報取得部、Y7:機能制限部、Z1:デッドマン機能部(異常検知装置)